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特許7601456制御装置、飛行体制御方法およびプログラム
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  • 特許-制御装置、飛行体制御方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】制御装置、飛行体制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20241210BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G08G5/00
G01C21/34
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023508166
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011708
(87)【国際公開番号】W WO2022201245
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390001454
【氏名又は名称】NECネッツエスアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390001041
【氏名又は名称】NECネクサソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】米田 有輝
(72)【発明者】
【氏名】八巻 伊織
(72)【発明者】
【氏名】山本 菜奈美
(72)【発明者】
【氏名】川添 将寛
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-018085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0225781(US,A1)
【文献】特開2005-304560(JP,A)
【文献】特開2018-078677(JP,A)
【文献】特開2009-008489(JP,A)
【文献】特開2020-024103(JP,A)
【文献】特開2017-017768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池および光発電装置を動力源として備える飛行体の制御装置であって、
前記電池を動力源として飛行しているときに、前記電池の残量が基準値以下になったか否かを判定する判定手段と、
前記電池の残量が前記基準値以下になったと判定された場合に、前記飛行体に搭載されるセンサから得られる光学情報および熱情報を用いて光量が基準以上となる場所を推定し、推定した場所を目的地点として特定する目的地点特定手段と、
前記飛行体の機構を制御して、前記目的地点に前記飛行体を移動させる飛行体制御手段と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記飛行体制御手段は、前記飛行体を前記目的地点に着陸させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記電池の残量が飛行再開の基準値を超えたか否かを更に判定し、
前記飛行体制御手段は、前記飛行体が前記目的地点に着陸した後、前記電池の残量が前記飛行再開の基準値を超えた場合に、前記飛行体に飛行を再開させる、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記飛行体制御手段は、前記飛行体に、前記目的地点の空域を経由するルートで飛行を継続させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記目的地点特定手段は、前記センサとして前記飛行体に搭載されたイメージセンサにより生成されるイメージデータを前記光学情報として用いて、前記光量が基準以上となる場所を推定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記目的地点特定手段は、
前記センサを用いて前記飛行体の位置を示す位置情報を取得し、
地物の形状および高さに関する情報を含む地図情報と、現在日時を示す情報と、取得した前記位置情報と、に基づいて、前記光量が基準以上となる場所を推定する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記目的地点特定手段は、
前記飛行体が飛行時に避けるべき場所を定義する情報に基づいて、前記光量が基準以上となる場所として推定された場所と前記避けるべき場所とが少なくとも一部において重なっているか否かを判定し、
前記推定された場所と前記避けるべき場所とが重ならないと判定された場合に、前記推定された場所を前記目的地点として特定する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記飛行体が飛行時に避けるべき場所は、飛行体の飛行が禁止されている場所および飛行体が安定して飛行できない可能性のある場所の少なくともいずれかを含む、
請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
電池および光発電装置を動力源として備える飛行体に搭載されるコンピュータが、
前記飛行体が前記電池を動力源として飛行しているときに、前記電池の残量が基準値以下になったか否かを判定し、
前記電池の残量が前記基準値以下になったと判定された場合に、前記飛行体に搭載されるセンサから得られる光学情報および熱情報を用いて光量が基準以上となる場所を推定し、推定した場所を目的地点として特定し、
前記飛行体の機構を制御して、前記目的地点に前記飛行体を移動させる、
ことを含む飛行体制御方法。
【請求項10】
電池および光発電装置を動力源として備える飛行体に搭載されるコンピュータを、
前記電池を動力源として飛行しているときに、前記電池の残量が基準値以下になったか否かを判定する判定手段、
前記電池の残量が前記基準値以下になったと判定された場合に、前記飛行体に搭載されるセンサから得られる光学情報および熱情報を用いて光量が基準以上となる場所を推定し、推定した場所を目的地点として特定する目的地点特定手段、
前記飛行体の機構を制御して、前記目的地点に前記飛行体を移動させる飛行体制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛行体の挙動を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物流分野において、人ではなくドローンなどの無人飛行体を活用して、物品を配送する技術が検討されている。このような無人飛行体の飛行制御に関する技術の一例が、下記特許文献1乃至3に開示されている。
【0003】
下記特許文献1には、無人飛行体を用いた海上探索システムが開示されている。特許文献1は、無人飛行体のバッテリ残量が閾値を下回った場合に、当該無人飛行体の位置から最も近いにブイに設定されている離着陸台に着陸するよう、無人飛行体を制御する技術が開示されている。
【0004】
下記特許文献2には、飛行ロボットの飛行中のバッテリ切れを極力防止するための技術が開示されている。特許文献2は、飛行ロボットのバッテリ残量が所定の閾値未満となった場合に、飛行ロボットが自力で到達可能な場所にある所定の充電地点へ帰還する動作を行うモードに設定し、飛行ロボットを充電地点へ向かわせる技術を開示している。
【0005】
下記特許文献3には、飛行ロボットの飛行中のバッテリ切れを極力防止するための技術が開示されている。特許文献3は、飛行ロボットの周囲の風速およびバッテリ残量に基づいて、予め設定されたルートを継続して飛行するか、バッテリ消費の少ない別のルートを計算して新たな飛行ルートを設定する技術を開示している。また、特許文献3は、風速が基準値以上である状態が所定時間継続した場合、飛行ロボットの飛行を中止して、飛行ロボットをその場に着陸させる技術を開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-21357号公報
【文献】特開2018-55463号公報
【文献】特開2018-52341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無人の飛行体は、主に電池を動力源として推力発生装置を駆動させることによって、飛行する。動力源である電池に蓄積されている電気エネルギーが枯渇または大きく減少した場合、十分な揚力が得られず、飛行体が高度を維持できなくなる可能性がある。特に物品を配送中に十分な揚力が得られず高度が下がってしまうと、地面等に配送中の物品が接触して損壊してしまうこともある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一つは、飛行体を用いて物品を配送する際に、当該飛行体に安定して電力を供給するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示における制御装置は、
電池および光発電装置を動力源として備える飛行体の制御装置であって、
前記電池を動力源として飛行しているときに、前記電池の残量が基準値以下になったか否かを判定する判定手段と、
前記電池の残量が前記基準値以下になったと判定された場合に、前記飛行体に搭載されるセンサからの情報を用いて光量が基準以上となる場所を推定し、推定した場所を目的地点として特定する目的地点特定手段と、
前記飛行体の機構を制御して、前記目的地点に前記飛行体を移動させる飛行体制御手段と、
を備える。
【0010】
本開示における飛行体制御方法は、
電池および光発電装置を動力源として備える飛行体に搭載されるコンピュータが、
前記飛行体が前記電池を動力源として飛行しているときに、前記電池の残量が基準値以下になったか否かを判定し、
前記電池の残量が前記基準値以下になったと判定された場合に、前記飛行体に搭載されるセンサからの情報を用いて光量が基準以上となる場所を推定し、推定した場所を目的地点として特定し、
前記飛行体の機構を制御して、前記目的地点に前記飛行体を移動させる、
ことを含む。
【0011】
本開示におけるプログラムは、
電池および光発電装置を動力源として備える飛行体に搭載されるコンピュータを、
前記電池を動力源として飛行しているときに、前記電池の残量が基準値以下になったか否かを判定する判定手段、
前記電池の残量が前記基準値以下になったと判定された場合に、前記飛行体に搭載されるセンサからの情報を用いて光量が基準以上となる場所を推定し、推定した場所を目的地点として特定する目的地点特定手段、
前記飛行体の機構を制御して、前記目的地点に前記飛行体を移動させる飛行体制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、飛行体を用いて物品を配送する際に、当該飛行体に安定して電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】飛行体の構成例を示す図である。
図2】制御装置のハードウエア構成を例示するブロック図である。
図3】第1実施形態の制御装置により実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
図4】目的地点特定部の動作例を説明するための図である。
図5】第2実施形態の目的地点特定部により実行される、目的地点を特定するための処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、特に説明する場合を除き、各ブロック図において、各ブロックは、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位の構成を表している。また、図中に矢印がある場合、その矢印の向きは、情報の流れを分かり易く示すためのものに過ぎず、特に説明のない限り通信の方向(一方向/双方向)を限定しない。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、飛行体1の構成例を示す図である。図1に例示されるように、制御装置10は、動力源として、電池部20および光発電装置30を備えている。なお、図1には示されていないが、飛行体1は、自律飛行のために使用されるその他の構成(各種センサ、無線送受信機、動力モーター、プロペラ、フライトコントローラーなど)を更に備えている。また、飛行体1は、後述する機能を有する制御装置10を備えている。なお、制御装置10は、上述のフライトコントローラーとしての機能を兼ね備えていてもよい。
【0016】
<制御装置10の機能構成例>
図1に例示される制御装置10は、判定部110、目的地点特定部120および飛行体制御部130を有する。判定部110は、飛行体1が電池部20を動力源として飛行しているときに、電池部20の残量を監視している。判定部110による監視の結果、電池部20の残量が所定の基準値以下となったと判定された場合、目的地点特定部120は、飛行体1に搭載される各種センサからの情報を用いて、当該センサの検出範囲内において光量が基準以上となる場所を推定する。そして、目的地点特定部120は、「光量が基準以上となる場所」として推定された場所を臨時の目的地点として特定する。目的地点特定部120により臨時の目的地点が設定されると、飛行体制御部130は、飛行体1に搭載される動力モーターといった機構を制御して、設定された目的地点に向けて飛行体1を移動させる。
【0017】
<制御装置10のハードウエア構成例>
制御装置10の各機能構成部は、各機能構成部を実現するハードウエア(例:ハードワイヤードされた電子回路など)で実現されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせ(例:電子回路とそれを制御するプログラムの組み合わせなど)で実現されてもよい。以下、制御装置10の各機能構成部がハードウエアとソフトウエアとの組み合わせで実現される場合について、さらに説明する。
【0018】
図2は、制御装置10のハードウエア構成を例示するブロック図である。制御装置10は、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060を有する。
【0019】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0020】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit) やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0021】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0022】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス1040は制御装置10の各機能(判定部110、目的地点特定部120、飛行体制御部130など)を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、各プログラムモジュールに対応する各機能が実現される。
【0023】
入出力インタフェース1050は、制御装置10と各種入出力機器とを接続するためのインタフェースである。例えば、入出力インタフェース1050には、イメージセンサ、赤外線センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、音波センサ、気圧センサ、磁気方位センサ、温度センサ、GPS(Global Positioning System)センサなどの各種センサ類が接続される。
【0024】
ネットワークインタフェース1060は、制御装置10をネットワーク上の他の装置に接続するためのインタフェースである。例えば、ネットワークインタフェース1060には、LTE(Long Term Evolution)ネットワークや5G(5th Generation)ネットワークといった各種ネットワークに接続するための通信モジュールが接続される。制御装置10は、ネットワークインタフェース1060を介して接続された通信モジュールを用いて、ネットワークに接続された他の装置と通信することができる。
【0025】
なお、図2に示されるハードウエア構成はあくまで一例である。本開示に係る制御装置10のハードウエア構成は、図2の例に限定されない。
【0026】
<処理の流れ>
図3を用いて、本実施形態の制御装置10により実行される処理の流れを説明する。図3は、第1実施形態の制御装置10により実行される処理の流れを例示するフローチャートである。
【0027】
判定部110は、飛行体1が電池部20を動力源として飛行を開始すると、その後、電池部20を動力源として飛行している間、電池部20の残量を監視する処理を実行する(S102)。なお、判定部110は、例えば、電圧測定方式、クーロン・カウンタ方式、電池セル・モデリング方式、インピーダンス・トラック方式など既知の測定手法を用いて、電池部20の残量を測定することができる。そして、判定部110は、電池部20の残量を監視する処理において、測定された電池部20の残量が基準以下であるか否かを判定する(S104)。なお、電池部20の残量の基準に関する情報は、例えば、メモリ1030やストレージデバイス1040などの記憶領域に記憶されている。この場合、判定部110は当該記憶領域から基準に関する情報を読み出し、当該基準と測定された電池部20の残量とを比較することができる。
【0028】
電池部20の残量が基準を超えていると判定された場合(S104:NO)、S102の処理に戻り、電池部20を動力源として飛行している間、判定部110による電池部20の残量を監視する処理が継続される。
【0029】
一方、電池部20の残量が基準以下であると判定された場合(S104:YES)、目的地点特定部120は、飛行体1に搭載されたセンサの情報を用いて、光量が基準以上となる場所を推定し、当該場所を臨時の目的地点として特定する(S106)。
【0030】
ここで、目的地点特定部120は、基準以上の光量が当たっている場所を、例えばイメージセンサから得られる情報、赤外線センサから得られる情報、または、これらの組み合わせなどを用いて推定することができる。一例として、目的地点特定部120はイメージセンサから得られる飛行体1の飛行位置周辺の画像(イメージデータ)を解析して、画像の全領域における明るさの分布を示す情報を得る。そして、目的地点特定部120は、画像内の明るさの分布を示す情報に基づいて、一定以上の明るさを有する画像領域(画素の集合)に対応する場所を、光量が基準以上の場所として推定する。他の一例として、目的地点特定部120は、赤外線センサから、飛行体1の飛行位置周辺の地面の表面温度の分布を示す情報を取得する。そして、目的地点特定部120は、飛行位置周辺の地面の表面温度の分布を示す情報に基づいて、表面温度が一定以上である領域に対応する場所を光量が基準以上の場所として推定する。更に他の一例として、目的地点特定部120は、イメージセンサから得られる画像を解析することによって飛行体1の飛行位置周辺の地面の物質を識別するとともに、飛行体1の飛行位置周辺の地面の表面温度の分布を示す情報を赤外線センサから取得する。ここで、目的地点特定部120は、例えば、既知の機械学習アルゴリズムに基づいて物質の種類を識別可能に学習されたモデルを用いて、イメージセンサから得られる画像を、当該画像に写る物質の種類(カテゴリ)に基づいてセグメント化できる。そして、目的地点特定部120は、識別した物質の種類に応じた熱収支モデルと赤外線センサから得られる温度分布の情報とに基づいて、光量が基準以上の場所を推定する。例えば、目的地点特定部120は、ある画像領域に対応する温度を赤外線センサから得られる温度分布の情報から特定し、特定した温度と当該画像領域において識別された物質の熱収支モデルとに基づいて、当該画像領域における光量(熱エネルギーの強度)を推定する。そして、目的地点特定部120は、推定された光量が所定の基準を超えるか否かによって、当該画像領域に対応する場所が「光量が基準以上の場所」か否かを推定することができる。なお、この場合は、イメージセンサと赤外線センサは各々のセンシング範囲が略完全に重なるように調整されるか、各々のセンシング範囲の対応関係を示す情報が所定の記憶領域(メモリ1030やストレージデバイス1040)に記憶される。
【0031】
その他にも、目的地点特定部120は、飛行体1の現在の飛行位置と、飛行環境を示す情報と、に基づいて、光量が基準以上となる場所を推定してもよい。この場合、目的地点特定部120は、例えば、以下のように動作する。まず、目的地点特定部120は、飛行体1に搭載された各種センサを用いて、飛行体1の現在の飛行位置を示す情報を取得する。目的地点特定部120は、例えば、自律飛行時に各種センサからの出力を用いて行っている自己位置推定処理により得られる飛行体1の推定位置を示す情報を、飛行体1の現在の飛行位置を示す情報として取得することができる。各種センサを用いた自己位置推定処理としては、既知の技術が利用できる。また、飛行体1にGPSセンサが搭載されている場合、目的地点特定部120は、当該GPSセンサから得られるGPS情報を、飛行体1の現在位置を示す情報として取得してもよい。また、目的地点特定部120は、飛行環境を示す情報として、地物の形状および高さに関する情報を含む地図情報と、現在日時を示す情報と、を取得する。地物の形状および高さに関する情報を含む地図情報は、例えば、メモリ1030やストレージデバイス1040に予め記憶されている。目的地点特定部120は、ネットワークインタフェース1060を介して、ネットワークに存在する地図情報を提供するシステムと通信し、当該システムから地図情報を取得してもよい。また、目的地点特定部120は、現在日時を示す情報を、制御装置10にインストールされているOS(Operating System)によって管理されるシステムクロックや、制御装置10の回路基板上に実装されるハードウエアクロックから取得できる。そして、目的地点特定部120は、飛行体1の現在の位置と、当該位置の周囲に位置する地物の形状および高さに関する情報と、現在日時を示す情報と、に基づいて、飛行体1の位置の周辺における日光の当たり方を推定する。この目的地点特定部120による動作の概要を、図4を用いて説明する。
【0032】
図4は、目的地点特定部120の動作例を説明するための図である。図4で示されるように、目的地点特定部120は、地図情報と飛行体1の現在位置を示す情報とに基づいて、飛行体1の現在位置の周辺(例えば、飛行体1の現在位置を中心として10m以内の範囲など)の地図情報を取得する。また、図示されるように、目的地点特定部120は、現在日時を示す情報に基づいて、太陽の位置(光の方向)を推定する。太陽の位置を示す情報は、例えば季節および時間帯を示す情報と対応付けて、メモリ1030やストレージデバイス1040などに記憶されている。目的地点特定部120は、現在日時の情報に基づいて記憶部に記憶されている情報を参照して、現在日時に対応する太陽の位置を示す情報を取得できる。そして、目的地点特定部120は、飛行体1の現在位置の周辺に存在する地物Fの形状および高さに関する情報と、太陽の位置(光の方向)を示す情報と、に基づいて、飛行体1の現在位置の周辺において日光が当たる場所(図中でハッチングされていない領域)と日光が当たらない場所(図中で斜線によりハッチングされている領域)とを計算する。そして、目的地点特定部120は、このように地図情報上で計算された日光が当たる場所を、光量が基準以上となる場所として推定し、臨時の目的地点として特定する。
【0033】
目的地点特定部120によって臨時の目的地点が特定されると、飛行体制御部130は、飛行体1の動力モーターなどの飛行動作に関する機構を制御して、当該目的地点に対して飛行体1を移動させる(S108)。飛行体制御部130は、目的地点特定部120により特定された目的地点に対応する空域を経由する形で飛行体1に自律飛行を継続させてもよいし、目的地点特定部120により特定された目的地点に飛行体1を着陸させてもよい。目的地点特定部120によって特定された目的地点を飛行体1が飛行している間、その目的地点に当たる光によって光発電装置30が電力を生成する。光発電装置30によって生成された電力は、電池部20の充電に利用されてもよいし、電池部20の残量が枯渇した場合は、臨時の動力源として利用されてもよい。
【0034】
なお、目的地点に飛行体1を着陸させる場合、判定部110は、電池部20の充電状態を監視し、残量が所定の基準(例えば、満充電容量の50%など)以上となった場合に、飛行体制御部130に通知を行うように構成されていてもよい。この場合、飛行体制御部130は、判定部110からの通知に応じて、飛行体1の飛行動作に関する機構を制御して、飛行体1に自律飛行を再開させる。その後、飛行体1は、当初の目的地点として設定されていた場所に向けて移動を開始する。
【0035】
<効果の例示>
以上、本実施形態では、電池部20を動力源として飛行体1が飛行しているときに、当該電池部20の残量が基準以下となった場合、飛行体1の周囲で光量が基準以上となる場所が推定され、その場所に向けて移動するように飛行体1が制御される。これにより、光発電装置30に電力を生成させ、推力や揚力を得るための機構に必要な電力を賄うことができる。これにより、飛行体1が十分な揚力を生み出せずに高度を落とし、配送している物品が地面や建造物などに接触して損壊してしまうといった問題が発生することを防止できる。
【0036】
[第2実施形態]
飛行体が飛行すべきではない空域も存在する。例えば、周囲の地形の構造や建造物の有無などの環境的要素によって気流が安定せず、飛行に適していない場所が存在することもある。その他にも、重要施設の周辺など、飛行体の飛行が制限される場所もある。本実施形態の制御装置10は、そのような飛行体が飛行すべきではない場所を避ける機能を更に備えている。
【0037】
<機能構成例>
本実施形態の制御装置10は、第1実施形態と同様の構成(例:図1)を有する。本実施形態の目的地点特定部120は、飛行体1が飛行時に避けるべき場所を定義する情報を用いて、第1実施形態で説明したように推定された「光量が基準以上となる場所」が臨時の目的地点として相応しいか否かを判定する。具体的には、目的地点特定部120は、飛行体が飛行時に避けるべき場所を定義する情報に基づいて、「光量が基準以上となる場所」として推定された場所と飛行時に避けるべき場所とが少なくとも一部において重なっているか否かを判定する。そして、目的地点特定部120は、判定の結果、「光量が基準以上となる場所」として推定された場所と飛行時に避けるべき場所とが重ならないと判定された場合に、当該推定された場所を目的地点として特定する。
【0038】
飛行体が飛行時に避けるべき場所は、例えば、国、地方自治体、または警察などによって設定される飛行禁止空域や、高層ビルの近傍のエリアなど風が強く気流が安定しない(飛行体が安定して飛行できない)虞がある場所を含んでいる。そのような場所を行時に避けるべき場所として定義する情報(以下、「飛行制限情報」とも表記)は、例えば、メモリ1030やストレージデバイス1040などに予め記憶されている。また、飛行時に避けるべき場所を定義する情報は、飛行体1が自律飛行時に利用する地図情報に含まれていてもよい。ここで、飛行制限情報は、飛行時に避ける場所として設定されている場所ごとに、座標値(または複数の座標値の組み合わせ)を含んでいる。この座標値(または複数の座標値の組み合わせ)は、例えば、飛行体1が自律飛行時に利用する座標系における座標値として定義される。
【0039】
<処理の流れ>
本実施形態の制御装置10により実行される処理の流れを、図5を用いて説明する。図5は、第2実施形態の目的地点特定部120により実行される、目的地点を特定するための処理の流れを例示するフローチャートである。図5では、図3のフローチャートに示されるS106の処理において、本実施形態の目的地点特定部120が実行する処理(S1061~S1065)の流れが示されている。以下では、図5に示されるS1061~S1065の処理について主に説明する。
【0040】
目的地点特定部120は、飛行体1に搭載される各種センサの情報を用いて、飛行体1の飛行位置の周辺において、光量が基準以上となる場所を推定する(S1061)。目的地点特定部120は、例えば第1実施形態で説明したような手法を用いて、光量が基準以上となる場所を推定することができる。また、目的地点特定部120は、メモリ1030やストレージデバイス1040に記憶されている、または、地図情報に予め含まれている、飛行制限情報を取得する(S1062)。
【0041】
そして、目的地点特定部120は、S1061の処理において「光量が基準以上となる場所」として推定された場所と、S1062の処理において取得された飛行制限情報によって「飛行体が飛行を避けるべき場所」として定義されている場所と、が重なっているか否かを判定する(S1063)。例えば、目的地点特定部120は、S1061の処理において推定された場所の座標値を、S1062の処理において取得された飛行制限情報で定義されている各場所の座標値と比較し、2つの場所が少なくとも一部において重なるか否かを判定することができる。
【0042】
「光量が基準以上となる場所」として推定された場所と「飛行体が飛行を避けるべき場所」として定義されている場所とが少なくとも一部において重なると判定された場合(S1063:YES)、目的地点特定部120は、新たに「光量が基準以上となる場所」を推定する(S1064)。このとき、目的地点特定部120は、前の処理において既に推定された場所が「光量が基準以上となる場所」として再び推定されないように、一度推定された場所に対応する領域を「光量が基準以上となる場所」を推定する領域から除外する。その後、処理はS1063に戻り、「光量が基準以上となる場所」として推定された場所と「飛行体が飛行を避けるべき場所」として定義されている場所との重なりに関する判定が再度実行される。
【0043】
「光量が基準以上となる場所」として推定された場所と「飛行体が飛行を避けるべき場所」として定義されている場所とが重ならないと判定された場合(S1063:NO)、目的地点特定部120は、「光量が基準以上となる場所」として推定された場所を目標地点として特定する(S1065)。このとき、目的地点特定部120は、例えば、「光量が基準以上となる場所」として推定された場所の座標値を、目的地点の座標値としてメモリ1030などに記憶する。その後、飛行体制御部130は、目標地点の座標値を示す情報を用いて、飛行体1の飛行動作に関する機構を制御して、飛行体1を目標地点に移動させる。
【0044】
<効果の例示>
以上、本実施形態では、光量が基準以上の場所として推定された場所が、飛行体が飛行時に避けるべき場所と重なっていない場合に、当該推定された場所が目的地点として特定される。これにより、飛行体1が、光発電装置30の発電のためにある程度の光量が見込める場所に移動する際、飛行が禁止されている空域や安定した飛行が望めない空域に誤って侵入してしまうことを防止できる。
【0045】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態について述べたが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、改良等を行うことができる。また、実施形態に開示されている複数の構成要素は、適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0046】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各実施形態で実行される工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。各実施形態では、図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【0047】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
1.
電池および光発電装置を動力源として備える飛行体の制御装置であって、
前記電池を動力源として飛行しているときに、前記電池の残量が基準値以下になったか否かを判定する判定手段と、
前記電池の残量が前記基準値以下になったと判定された場合に、前記飛行体に搭載されるセンサからの情報を用いて光量が基準以上となる場所を推定し、推定した場所を目的地点として特定する目的地点特定手段と、
前記飛行体の機構を制御して、前記目的地点に前記飛行体を移動させる飛行体制御手段と、
を備える制御装置。
2.
前記飛行体制御手段は、前記飛行体を前記目的地点に着陸させる、
1.に記載の制御装置。
3.
前記判定手段は、前記電池の残量が飛行再開の基準値を超えたか否かを更に判定し、
前記飛行体制御手段は、前記飛行体が前記目的地点に着陸した後、前記電池の残量が前記飛行再開の基準値を超えた場合に、前記飛行体に飛行を再開させる、
2.に記載の制御装置。
4.
前記飛行体制御手段は、前記飛行体に、前記目的地点の空域を経由するルートで飛行を継続させる、
1.に記載の制御装置。
5.
前記目的地点特定手段は、前記センサとして前記飛行体に搭載されたイメージセンサにより生成されるイメージデータを用いて、前記光量が基準以上となる場所を推定する、
1.から4.のいずれか1つに記載の制御装置。
6.
前記目的地点特定手段は、
前記センサを用いて前記飛行体の位置を示す位置情報を取得し、
地物の形状および高さに関する情報を含む地図情報と、現在日時を示す情報と、取得した前記位置情報と、に基づいて、前記光量が基準以上となる場所を推定する、
1.から5.のいずれか1つに記載の制御装置。
7.
前記目的地点特定手段は、
前記飛行体が飛行時に避けるべき場所を定義する情報に基づいて、前記光量が基準以上となる場所として推定された場所と前記避けるべき場所とが少なくとも一部において重なっているか否かを判定し、
前記推定された場所と前記避けるべき場所とが重ならないと判定された場合に、前記推定された場所を前記目的地点として特定する、
1.から6.のいずれか1つに記載の制御装置。
8.
前記飛行体が飛行時に避けるべき場所は、飛行体の飛行が禁止されている場所および飛行体が安定して飛行できない可能性のある場所の少なくともいずれかを含む、
7.に記載の制御装置。
9.
電池および光発電装置を動力源として備える飛行体に搭載されるコンピュータが、
前記飛行体が前記電池を動力源として飛行しているときに、前記電池の残量が基準値以下になったか否かを判定し、
前記電池の残量が前記基準値以下になったと判定された場合に、前記飛行体に搭載されるセンサからの情報を用いて光量が基準以上となる場所を推定し、推定した場所を目的地点として特定し、
前記飛行体の機構を制御して、前記目的地点に前記飛行体を移動させる、
ことを含む飛行体制御方法。
10.
前記コンピュータが、前記飛行体を前記目的地点に着陸させる、
ことを含む9.に記載の飛行体制御方法。
11.
前記コンピュータが、前記電池の残量が飛行再開の基準値を超えたか否かを更に判定し、
記飛行体が前記目的地点に着陸した後、前記電池の残量が前記飛行再開の基準値を超えた場合に、前記飛行体に飛行を再開させる、
ことを含む10.に記載の飛行体制御方法。
12.
前記コンピュータが、前記飛行体に、前記目的地点の空域を経由するルートで飛行を継続させる、
ことを含む9.に記載の飛行体制御方法。
13.
前記コンピュータが、前記センサとして前記飛行体に搭載されたイメージセンサにより生成されるイメージデータを用いて、前記光量が基準以上となる場所を推定する、
ことを含む9.から12.のいずれか1つに記載の飛行体制御方法。
14.
前記コンピュータが、
前記センサを用いて前記飛行体の位置を示す位置情報を取得し、
地物の形状および高さに関する情報を含む地図情報と、現在日時を示す情報と、取得した前記位置情報と、に基づいて、前記光量が基準以上となる場所を推定する、
ことを含む9.から13.のいずれか1つに記載の飛行体制御方法。
15.
前記コンピュータが、
前記飛行体が飛行時に避けるべき場所を定義する情報に基づいて、前記光量が基準以上となる場所として推定された場所と前記避けるべき場所とが少なくとも一部において重なっているか否かを判定し、
前記推定された場所と前記避けるべき場所とが重ならないと判定された場合に、前記推定された場所を前記目的地点として特定する、
ことを含む9.から14.のいずれか1つに記載の飛行体制御方法。
16.
前記飛行体が飛行時に避けるべき場所は、飛行体の飛行が禁止されている場所および飛行体が安定して飛行できない可能性のある場所の少なくともいずれかを含む、
15.に記載の飛行体制御方法。
17.
電池および光発電装置を動力源として備える飛行体に搭載されるコンピュータを、
前記電池を動力源として飛行しているときに、前記電池の残量が基準値以下になったか否かを判定する判定手段、
前記電池の残量が前記基準値以下になったと判定された場合に、前記飛行体に搭載されるセンサからの情報を用いて光量が基準以上となる場所を推定し、推定した場所を目的地点として特定する目的地点特定手段、
前記飛行体の機構を制御して、前記目的地点に前記飛行体を移動させる飛行体制御手段、
として機能させるためのプログラム。
18.
前記飛行体制御手段は、前記飛行体を前記目的地点に着陸させる、
17.に記載のプログラム。
19.
前記判定手段は、前記電池の残量が飛行再開の基準値を超えたか否かを更に判定し、
前記飛行体制御手段は、前記飛行体が前記目的地点に着陸した後、前記電池の残量が前記飛行再開の基準値を超えた場合に、前記飛行体に飛行を再開させる、
18.に記載のプログラム。
20.
前記飛行体制御手段は、前記飛行体に、前記目的地点の空域を経由するルートで飛行を継続させる、
17.に記載のプログラム。
21.
前記目的地点特定手段は、前記センサとして前記飛行体に搭載されたイメージセンサにより生成されるイメージデータを用いて、前記光量が基準以上となる場所を推定する、
17.から20.のいずれか1つに記載のプログラム。
22.
前記目的地点特定手段は、
前記センサを用いて前記飛行体の位置を示す位置情報を取得し、
地物の形状および高さに関する情報を含む地図情報と、現在日時を示す情報と、取得した前記位置情報と、に基づいて、前記光量が基準以上となる場所を推定する、
17.から21.のいずれか1つに記載のプログラム。
23.
前記目的地点特定手段は、
前記飛行体が飛行時に避けるべき場所を定義する情報に基づいて、前記光量が基準以上となる場所として推定された場所と前記避けるべき場所とが少なくとも一部において重なっているか否かを判定し、
前記推定された場所と前記避けるべき場所とが重ならないと判定された場合に、前記推定された場所を前記目的地点として特定する、
17.から22.のいずれか1つに記載のプログラム。
24.
前記飛行体が飛行時に避けるべき場所は、飛行体の飛行が禁止されている場所および飛行体が安定して飛行できない可能性のある場所の少なくともいずれかを含む、
23.に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0048】
1 飛行体
10 制御装置
1010 バス
1020 プロセッサ
1030 メモリ
1040 ストレージデバイス
1050 入出力インタフェース
1060 ネットワークインタフェース
110 判定部
120 目的地点特定部
130 飛行体制御部
20 電池部
30 光発電装置
図1
図2
図3
図4
図5