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特許7601466光学測定装置、光学測定装置のデータ管理方法、及び光学測定装置のデータ管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光学測定装置、光学測定装置のデータ管理方法、及び光学測定装置のデータ管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/21 20060101AFI20241210BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20241210BHJP
   G01N 21/19 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01N21/21
G01N21/27 Z
G01N21/19
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024015560
(22)【出願日】2024-02-05
【審査請求日】2024-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000232689
【氏名又は名称】日本分光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004484
【氏名又は名称】弁理士法人岩橋国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】中司 龍太
(72)【発明者】
【氏名】三好 有一
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-068758(JP,A)
【文献】特表2009-523232(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198345(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0236306(US,A1)
【文献】特開2005-331277(JP,A)
【文献】特表2008-516251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
G01N 15/00 - G01N 15/1492
G01N 35/00 - G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置であって、
複数の前記管理対象部品にそれぞれ取付けられ、前記管理対象部品の前記管理情報を記録するための複数の記録手段と、
前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着した時、又は前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着して前記測定手段で測定する時に、複数の前記管理対象部品における前記記録手段を取付けた箇所にそれぞれ配設され、前記記録手段に記録されている前記管理情報を読み取るための複数の読取手段と、
読み取られた前記管理情報と、前記測定手段で測定した前記測定データとを結合させた履歴データを保管するための保管手段と、
を有することを特徴とする光学測定装置。
【請求項2】
複数の前記管理対象部品が、光源、フィルタ、標準試料、セル、温度計及び付属品から選択される2以上である、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記管理情報が、管理対象部品の固有番号、管理対象部品の有効期限、管理対象部品の交換日時、管理対象部品の交換実施者、標準試料の校正情報、温度計の校正情報及びセルの校正情報から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の光学測定装置。
【請求項4】
複数の前記記録手段が、一次元コード、二次元コード、RFIDタグ及びEEPROMのいずれかである、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項5】
複数の前記読取手段が、バーコードリーダ、RFIDリーダ、光学カメラ及び読取装置のいずれかである、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項6】
前記利用・必要時が、日常点検時、定期点検時、適格性検査時、管理対象部品の交換時、標準試料の校正時、修理時及び使用者の要求時のいずれかである、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項7】
前記利用・必要時において該当する前記履歴データを提供するための提供手段を有する、請求項6に記載の光学測定装置。
【請求項8】
前記履歴データの提供が、光学測定装置の画面への前記履歴データの表示と警告、又は携帯端末での前記履歴データの表示と警告である、請求項7に記載の光学測定装置。
【請求項9】
前記光学測定装置が、旋光計、円二色性分散計、直線二色性分散計、複屈折測定装置、偏光測定装置、ラマン分光光度計、紫外可視近赤外分光光度計、赤外分光光度計及び分光蛍光光度計のいずれかである、請求項1から8のいずれかに記載の光学測定装置。
【請求項10】
光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置のデータ管理方法であって、
複数の前記管理対象部品にそれぞれ取付けられる複数の記録手段に対し前記管理対象部品の管理情報を記録する記録工程と、
前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着した時、又は前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着して前記測定手段で測定する時に、複数の前記管理対象部品における前記記録手段を取付けた箇所にそれぞれ配設される複数の読取手段により、前記記録手段に記録されている前記管理情報を読み取る読取工程と、
読み取られた前記管理情報と、前記測定手段で測定した前記測定データとを結合させた履歴データを保管する保管工程と、
を含むことを特徴とする光学測定装置のデータ管理方法。
【請求項11】
光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置のデータ管理プログラムであって、
複数の前記管理対象部品にそれぞれ取付けられる複数の記録手段に対し前記管理対象部品の管理情報を記録し、
前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着した時、又は前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着して前記測定手段で測定する時に、複数の前記管理対象部品における前記記録手段を取付けた箇所にそれぞれ配設される複数の読取手段により、前記記録手段に記録されている前記管理情報を読み取り、
読み取られた前記管理情報と、前記測定手段で測定した前記測定データとを結合させた履歴データを保管する処理、
をコンピュータに実行させることを特徴とする光学測定装置のデータ管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品業界で要求される厳格なトレーサビリティを実現できる光学測定装置、光学測定装置のデータ管理方法、及び光学測定装置のデータ管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品業界においては、医薬品が人の生命や健康に関わるという性格上、GxP(Good x practice)という厳格な規格基準に準拠する必要があり、医薬品の製造や管理に用いられる旋光計等の光学測定装置は納品時又は定期的に的確に動作することを検証しなければならない。また、医薬品業界では、製造された医薬品に異常が生じた場合には、医薬品の異常の発生原因を根本的に究明する必要があるため、旋光計等の光学測定装置の測定データ及び管理対象部品の管理情報などについても厳格なトレーサビリティの実施が必要とされている。
【0003】
そのため、例えば特許文献1には、旋光計のキュベット(以下、「セル」と称することもある)のセル壁に、セルの情報(長さ、直径、材質等の形状データ)、セル温度、セルの校正情報が記録されている情報提示手段が固定されており、セルを旋光計に装着すると、情報提示手段に記録されている情報がデータ受信機で読み取られ、制御部に転送されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,908,179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、旋光計のセルのみを管理対象部品としており、セル以外の旋光計本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報と、旋光計の測定手段で測定した測定データとを結合させた履歴データを保管していないため、医薬品業界で要求される厳格なトレーサビリティを実現することは極めて困難である。
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、医薬品業界で要求される厳格なトレーサビリティを実現できる光学測定装置、光学測定装置のデータ管理方法、及び光学測定装置のデータ管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が開示する光学測定装置は、光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置であって、
複数の前記管理対象部品にそれぞれ取付けられ、前記管理対象部品の前記管理情報を記録するための複数の記録手段と、
前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着した時、又は前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着して前記測定手段で測定する時に、複数の前記管理対象部品における前記記録手段を取付けた箇所にそれぞれ配設され、前記記録手段に記録されている前記管理情報を読み取るための複数の読取手段と、
読み取られた前記管理情報と、前記測定手段で測定した前記測定データとを結合させた履歴データを保管するための保管手段と、を有する。
【0008】
本発明の一態様において、複数の前記管理対象部品が、光源、フィルタ、標準試料、セル、温度計及び付属品から選択される2以上であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様において、前記管理情報が、管理対象部品の固有番号、管理対象部品の有効期限、管理対象部品の交換日時、管理対象部品の交換実施者、標準試料の校正情報、温度計の校正情報及びセルの校正情報から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様において、複数の前記記録手段が、一次元コード、二次元コード、RFIDタグ及びEEPROMのいずれかであることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様において、複数の前記読取手段が、バーコードリーダ、RFIDリーダ、光学カメラ及び読取装置のいずれかであることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様において、前記利用・必要時が、日常点検時、定期点検時、適格性検査時、管理対象部品の交換時、標準試料の校正時、修理時及び使用者の要求時のいずれかであることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、前記利用・必要時において該当する前記履歴データを提供するための提供手段を有することが好ましい。
【0014】
本発明の一態様において、前記履歴データの提供が、光学測定装置の画面への前記履歴データの表示と警告、又は携帯端末での前記履歴データの表示と警告であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様において、前記履歴データは変更禁止状態で前記保管手段に保管されることが好ましい。
【0016】
本発明が開示する光学測定装置のデータ管理方法は、光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置のデータ管理方法であって、
複数の前記管理対象部品にそれぞれ取付けられる複数の記録手段に対し前記管理対象部品の管理情報を記録する記録工程と、
前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着した時、又は前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着して前記測定手段で測定する時に、複数の前記管理対象部品における前記記録手段を取付けた箇所にそれぞれ配設される複数の読取手段により、前記記録手段に記録されている前記管理情報を読み取る読取工程と、
読み取られた前記管理情報と、前記測定手段で測定した前記測定データとを結合させた履歴データを保管する保管工程と、を含む。
【0017】
本発明が開示する光学測定装置のデータ管理プログラムは、光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置のデータ管理プログラムであって、
複数の前記管理対象部品にそれぞれ取付けられる複数の記録手段に対し前記管理対象部品の管理情報を記録し、
前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着した時、又は前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着して前記測定手段で測定する時に、複数の前記管理対象部品における前記記録手段を取付けた箇所にそれぞれ配設される複数の読取手段により、前記記録手段に記録されている前記管理情報を読み取り、
読み取られた前記管理情報と、前記測定手段で測定した前記測定データとを結合させた履歴データを保管する処理、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、医薬品業界で要求される厳格なトレーサビリティを実現できる光学測定装置、光学測定装置のデータ管理方法、及び光学測定装置のデータ管理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の光学測定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2図2は、本発明の光学測定装置の機能構成の一例を示す図である。
図3図3は、本発明の光学測定装置のデータ管理方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の光学測定装置の一実施形態である旋光計の概略図である。
図5図5は、旋光計の管理対象部品の一例である旋光板と、記録手段と、読取手段とを示す概略図である。
図6図6は、旋光計の管理対象部品の一例である温度計と、記録手段と、読取手段とを示す概略図である。
図7図7は、旋光計の管理対象部品の一例であるセルと、記録手段と、読取手段とを示す概略図である。
図8図8は、旋光計の管理対象部品の一例である付属品と、記録手段と、読取手段とを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(光学測定装置及び光学測定装置のデータ管理方法)
本発明の光学測定装置は、光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置であって、記録手段と、読取手段と、保管手段とを有し、測定手段及び提供手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0021】
本発明の光学測定装置のデータの管理方法は、光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置のデータ管理方法であって、記録工程と、読取工程と、保管工程とを含み、測定工程及び提供工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0022】
本発明の光学測定装置及び本発明の光学測定装置のデータ管理方法によると、光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡(提供)できるので、医薬品業界で要求される厳格なトレーサビリティを実現できると共に、管理対象部品の管理情報の入力ミス、管理対象部品の交換時の取り違え、校正期限の徒過、管理対象部品の交換期限の徒過、管理対象部品の発注間違い等のヒューマンエラーの発生を防止することもできる。
【0023】
<光学測定装置の種類>
前記光学測定装置としては、厳格なトレーサビリティが要求される医薬品業界で用いられる装置であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、旋光計、円二色性分散計、直線二色性分散計、複屈折測定装置、偏光測定装置、ラマン分光光度計、紫外可視近赤外分光光度計、赤外分光光度計、分光蛍光光度計などが挙げられる。
【0024】
<管理対象部品>
光学測定装置本体に着脱可能に装着される管理対象部品のうち、特定の一つの管理対象部品だけを対象とすると、医薬品業界で要求される厳格なトレーサビリティを実現することはできないことから、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品を対象とする。
【0025】
ここで、複数の前記管理対象部品とは、光学測定装置本体に着脱可能に装着される2以上の管理対象部品であることを意味し、管理対象部品の種類は問わないので同じ種類の管理対象部品が複数であってもよい。また、複数の管理対象品は3以上であることが好ましく、大部分の管理対象部品(管理対象部品の全体の60%以上;全体で10の管理対象部品が存在する場合には6以上の管理対象部品)であることが更に好ましく、すべての管理対象部品であることが特に好ましい。
なお、光学測定装置本体に着脱可能に装着される管理対象部品には、装置製造時に光学測定装置本体に取り付けられ原則交換されない長寿命な部品(例えば回転手段、ディスプレイ、コンピュータなど)、光学測定装置本体と一体不可分であるものは含まれない。
【0026】
前記管理対象部品は、光学測定装置本体に着脱可能に装着され、光学測定装置を構成する部品であり、光学測定装置の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、光源、フィルタ、標準試料、セル、温度計、付属品などが挙げられる。
【0027】
前記光源としては、光学測定装置の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、LED(Light Emitting Diode)、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、ナトリウムランプと水銀ランプの組合せなどが挙げられる。
【0028】
前記フィルタとしては、光学測定装置の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、干渉フィルタ、偏光子、検光子などが挙げられる。
【0029】
前記標準試料は、光学測定装置が正しい測定値を示しているかどうかを確認するために定期的測定される試料であり、光学測定装置の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、旋光計の旋光板、赤外分光光度計の標準ポリスチレンフィルム、紫外可視近赤外分光光度計の校正用光学フィルタなどが挙げられる。
【0030】
前記セルは、試料を充填する容器であり、ガラス製セル、石英製セル、フローセル、ステンレス(SUS)製セルなどが挙げられる。ガラス製セルは、波長340nm以下の紫外域の光を通しにくいので波長340nm以上の可視域測定用に使用される。一方、石英製セルは紫外・可視域の全波長の光を通すが、高価なため主に紫外域測定用として使用される。
【0031】
セル温度、セル内の試料温度、セルホルダ温度、旋光板の温度を測定する温度計としては、温度プローブ、熱電対、温度センサなどが挙げられる。
【0032】
前記付属品としては、光学測定装置の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、セルホルダなどが挙げられる。前記セルホルダとしては、例えばペルチェセルホルダ、恒温型セルホルダ、微量測定用セルホルダなどが挙げられる。
【0033】
光学測定装置が旋光計である場合、管理対象部品としては、例えば、光源、フィルタ(干渉フィルタ、偏光子、検光子)、セル、標準試料(旋光板)、付属品(セルホルダ)、変調器、検出器などが挙げられる。
旋光計は、旋光度の測定精度を保つため、標準試料として予め旋光度が判明しているショ糖溶液等の標準試料溶液が用いられるが、旋光度が異なる複数の標準試料溶液を作製する手間がかかり、また標準試料溶液を作製する際に旋光度にある程度の誤差が発生することから、旋光板が好適に用いられている。
旋光板としては、NIST(National Institute of Standards and Technology;アメリカ国立標準技術研究所)やPTB(Physikalisch-Technische Bundesanstalt;ドイツ物理工学研究所)の一次標準で校正された標準旋光計によって波長589nmにおける旋光度を正確に測定し、値付された(校正された)旋光板が用いられる。
【0034】
光学測定装置が円二色性分散計である場合、管理対象部品としては、例えば、光源、フィルタ、セル、標準試料、セルホルダ、検出器、付属品などが挙げられる。
光学測定装置がラマン分光光度計である場合、管理対象部品としては、例えば、光源、フィルタ、セル、標準試料(標準ポリスチレンフィルム)、セルホルダ、回折格子、検出器、付属品などが挙げられる。
光学測定装置が紫外可視近赤外分光光度計である場合、管理対象部品としては、光源、フィルタ、セル、標準試料(校正用光学フィルタ)、検出器、付属品などが挙げられる。
光学測定装置が赤外分光光度計である場合、管理対象部品としては、光源、フィルタ、セル、標準試料(標準ポリスチレンフィルム)、検出器、付属品などが挙げられる。
【0035】
<管理情報>
前記管理情報は、前記管理対象部品において管理することが必要な情報であり、管理対象部品の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、管理対象部品の固有番号、管理対象部品の有効期限、管理対象部品の交換日時、管理対象部品の交換実施者、標準試料の校正情報、温度計の校正情報、セルの校正情報などが挙げられる。
【0036】
前記管理対象部品の固有番号とは、光学測定装置の製造会社が、管理対象部品ごとに一意に付与した個別の番号であり、シリアル番号と称することもある。
【0037】
前記管理対象部品の有効期限とは、管理対象部品の製品寿命であり、管理対象部品の製造元業者より公表された技術データを使用することができる。
【0038】
管理対象部品の交換日時とは、管理対象部品の交換を行った日時である。
管理対象部品の交換実施者とは、管理対象部品の交換を行った担当者の氏名である。
なお、管理対象部品の交換理由が、管理対象部品の有効期限以外の場合には、管理対象部品の交換理由を記録することもできる。
【0039】
管理対象部品が光源である場合の管理情報としては、例えば、光源の種類、光源の固有番号、光源の有効期限、光源の交換日時、光源の交換実施者などが挙げられる。
光学測定装置が旋光計である場合には、光源の種類としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、ナトリウムランプと水銀ランプの組合せなどが挙げられる。
【0040】
管理対象部品がフィルタである場合の管理情報としては、例えば、フィルタの種類、フィルタの固有番号、フィルタの有効期限、フィルタの交換日時、フィルタの交換実施者などが挙げられる。
光学測定装置が旋光計である場合には、フィルタの種類としては、例えば、干渉フィルタ、偏光子、検光子が挙げられる。
【0041】
管理対象部品がフィルタである場合の管理情報としては、例えば、付属品の種類、付属品の固有番号、付属品の有効期限、付属品の交換日時、付属品の交換実施者などが挙げられる。
光学測定装置が旋光計である場合には、付属品としては、例えば、セルホルダなどが挙げられる。セルホルダの種類としては、例えばペルチェセルホルダ、恒温型セルホルダ、微量測定用セルホルダなどが挙げられる。
【0042】
定期的に校正を行う必要がある管理対象部品である標準試料、セル、温度計については、以下の校正情報を記録手段に記録する。
【0043】
標準試料の校正情報としては、例えば、標準試料の種類、標準試料の固有番号、標準試料の校正値、標準試料の校正日時、標準試料の校正期限、標準試料の校正実施者、標準試料の交換日時などが挙げられる。
前記標準試料の種類としては、光学測定装置の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、旋光計では旋光板、ラマン分光光度計と赤外分光光度計では標準ポリスチレンフィルム、紫外可視近赤外分光光度計では校正用光学フィルタなどが挙げられる。
前記標準試料の固有番号とは、標準試料の製造会社が、標準試料ごとに一意に付与した個別の番号であり、シリアル番号と称することもある。
前記標準試料の校正値としては、標準試料を校正した時の値であり、例えば、旋光計の旋光板では旋光度、赤外分光光度計の標準ポリスチレンフィルムでは波数、紫外可視近赤外分光光度計の校正用光学フィルタでは透過率(吸光度)などが挙げられる。
標準試料の校正日時とは、標準試料の校正を行った日時である。
標準試料の校正期限とは、標準試料の次の校正を行う期限であり、通常使用者が決定し、管理する。
標準試料の校正実施者とは、標準試料の校正を行った担当者の氏名である。
標準試料の交換日時とは、標準試料の交換を行った日時である。
【0044】
セルの校正情報としては、例えば、セルの種類、セルの固有番号、セルの温度、セルの光路長の校正値、セルの光路長の校正日時、セルの光路長の校正期限、セルの光路長の校正実施者、セルの交換日時などが挙げられる。
【0045】
前記温度計は、定期的にあるいは必要に応じて、温度計測の精度を管理するために校正する必要がある。
温度計の校正情報としては、例えば、温度計の種類、温度計の固有番号、温度計の校正値、温度計の校正日時、温度計の校正期限、温度計の校正実施者、温度計の交換日時などが挙げられる。
【0046】
<記録工程及び記録手段>
記録工程は、光学測定装置本体に着脱可能に装着される管理対象部品に取付けられる記録手段に対し前記管理対象部品の管理情報を記録する工程であり、記録手段により好適に実施される。
【0047】
前記記録手段としては、記録手段を取付ける管理対象部品の種類、大きさ、形状、構造及び記録される管理情報の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、一次元コード、二次元コード、RFIDタグ、EEPROMなどが挙げられる。
【0048】
前記一次元コードは、太さの異なる黒いバーと白いスペース(空白)を交互に並べて表現されたもので、横(水平)の一方向にのみ情報が書き込まれており、バーの高さ(垂直)方向に情報がないことから 「一次元バーコード」又は、「バーコード」と呼ばれている。
前記二次元コードは、横(水平)、縦(垂直)の両方向に情報を持っており、記憶密度が高く小さな面積に多くの情報を格納でき、QRコード(登録商標)などが挙げられる。
なお、一次元コード及び二次元コードは記録している管理情報の書き換えることができないので、管理情報を変更する場合には管理情報を書き換えた一次元コード及び二次元コードを新に発行して、管理対象部品に貼り付ける必要がある。
【0049】
前記RFID(Radio Frequency Identifier)は、電波や電磁波を情報交信の媒体として用いた非接触型のRFID(IC)タグを使用しているので、バーコードのように有機溶媒などによって溶解されるなどの影響を受けることがない。また、ケーブルの接続、引き回しが不要である。なお、RFIDタグはICタグと同義であり、RFタグと称することもある。
【0050】
前記EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)は、不揮発性メモリの1種であり、EPROMとも表記される。コンピュータなどの電子機器において、設定情報など電源を切っても保持すべきデータの記憶に用いられる。
【0051】
記録手段としてRFIDタグ、又はEEPROMを用いると管理情報の書き換えが可能となるので、利便性に優れる。なお、管理情報の書き換えは光学測定装置内で行ってもよく、また記録手段を光学測定装置外に取り出して行ってもよい。
【0052】
前記記録手段の前記管理対象部品への取付け方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シール貼付、接着剤による貼付、ネジ止め、ピン止めなどが挙げられる。前記記録手段は管理対象部品の内部に取り付けてもよく、管理対象部品に外付けしてもよい。
【0053】
<読取工程及び読取手段>
読取工程は、管理対象部品を光学測定装置本体に装着した時、又は管理対象部品を光学測定装置本体に装着して測定手段で測定する時に、記録手段に記録されている管理情報を読み取る工程であり、読取手段により好適に実施される。
【0054】
前記読取工程によると、管理対象部品の記録手段に記録された管理情報を自動で漏れなく読み取ることができるので、管理対象部品の管理情報の入力ミス、管理対象部品の交換時の取り違え、校正期限の徒過、管理対象部品の交換期限の徒過、管理対象部品の発注間違い等のヒューマンエラーの発生を防止できる。
【0055】
前記読取手段としては、前記記録手段の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば、バーコードリーダ、RFIDリーダ、光学カメラ、読取装置などが挙げられる。
バーコードリーダは、記録手段である一次元コード、二次元コードに記録されている管理情報を読み取る読取手段である。
RFIDリーダは、記録手段であるRFIDタグに記録されている管理情報を読み取る読取手段である。
光学カメラは、記録手段である一次元コード、二次元コードに記録されている管理情報を読み取る読取手段である。
読取装置は、記録手段であるEEPROMに記録されている管理情報を読み取る手段である。
【0056】
RFIDタグとRFIDリーダの非接触式の読取手段を用いると、ケーブルの接続、引き回し、水に対する腐食の防止に有効となり、セル、温度計、旋光板等の小型の管理対象部品にも適用することができる。
【0057】
<測定工程及び測定手段>
測定工程は、光学測定装置の測定手段によって試料の光学特性を測定して測定データを得る工程であり、測定手段により好適に実施される。
【0058】
前記測定データは、試料の光学特性を測定したデータであり、光学特性値の生データを意味する。
前記測定データには、例えば、「測定データID」、「試料の種類」、「光学特性値」、「測定日時」、「測定者」などの項目が含まれる。
前記「測定データID」は、測定データを識別するための、「0~9」の数字と「A~Z」のアルファベットとからなる符号であり、予め設定される。
前記「試料の種類」は、標準試料、通常の測定試料、対照試料などが挙げられる。
前記「光学特性値」は、光学測定装置の種類に応じて適宜選定することができるが、旋光計であれば旋光度、円二色性分散計であればCD値、分光光度計であれば透過率(吸光度)などが挙げられる。
前記「測定日時」は、試料の測定を行った日時である。
前記「測定者」は、試料の測定を行った担当者の氏名である。
【0059】
前記測定手段は、光学測定装置の種類に応じて適宜選択される。例えば、光学測定装置が、「旋光計」である場合には、偏光子を用いて光源からの光を直線偏光に変換し、旋光度を測定する物質を溶解した試料溶液に直線偏光を入射し、試料溶液を通過した直線偏光を検光子へ入射し、検光子を通過した光量を検出する。検光子を通過した光量を検出しながら検光子を回転させ、検光子を通過する光量がゼロとなる検光子の回転角度を求めることによって、試料溶液が直線偏光の偏光面を回転させた角度、即ち物質の旋光度を測定することができる。
【0060】
<保管工程及び保管手段>
保管工程は、読み取られた管理対象部品の管理情報と、測定手段で測定した測定データとを結合させた履歴データを保管する工程であり、保管手段により好適に実施される。
【0061】
前記履歴データは、測定データと管理情報とを結合させたデータであり、測定データと管理情報との結合は、光学測定装置のコンピュータに格納されているソフトウェアによって行うことができる。
【0062】
管理対象部品を光学測定装置本体に装着した時、記録手段に記録されている管理情報を読み取り、管理情報をコンピュータに保存しておき、測定手段で測定した測定データと結合させて履歴データを作成することができる。
また、管理対象部品を光学測定装置本体に装着して測定手段で測定する時に、記録手段に記録されている管理情報を読み取り、管理情報と測定データを結合させて履歴データを作成することができる。
【0063】
前記履歴データは変更禁止状態で保管されることが、医薬品業界で要求される厳格なトレーサビリティを実現する点から好ましい。
変更禁止状態で保管する方法としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、履歴データを読み取り専用で保管、履歴データの暗号化、又は履歴データのブロックチェーンなどが挙げられる。
【0064】
前記保管手段としては、履歴データを保管することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ(SSD)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。
【0065】
<提供工程及び提供手段>
提供工程は、利用・必要時において該当する前記履歴データを提供する工程であり、提供手段により好適に行われる。
前記利用・必要時としては、例えば、日常点検時、定期点検時、適格性検査時、管理対象部品の交換時、標準試料の校正時、修理時、又は使用者の要求時などが挙げられる。
【0066】
前記提供手段による提供としては、例えば、光学測定装置の画面への前記履歴データの表示と警告、又は携帯端末での前記履歴データの表示と警告などが挙げられる。
【0067】
前記警告の態様としては、例えば、管理対象部品の有効期限を経過した場合、標準試料の校正期限を経過した場合、標準試料の測定値が設定数値範囲を外れた場合、管理対象部品の有効期限や標準試料の校正期限の前の注意喚起(例えば「3ヶ月後に有効期限を迎えます」等)などが挙げられる。
前記警告方法としては、使用者及び管理者に異常を知らせることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画面への警告マークの表示、スピーカーによる警告音、ライトの点滅などが挙げられる。
【0068】
本発明の光学測定装置は、前記光学測定装置の使用状況を管理する管理システムと接続して用いることができる。前記管理システムとしては、例えば、LIMS(Laboratory Information Management System;ラボラトリー情報管理システム)、ERP(Enterprise Resource Planning;基幹系情報システム)などが挙げられる。
前記管理システムを備えていると、光学測定装置の測定手段で測定した測定データと、複数の管理対象部品の管理情報とを結合させた履歴データを、光学測定装置→LIMS→ERPと中央集権的に収集することができるので、管理対象部品の管理情報の入力ミス、管理対象部品の交換時の取り違え、校正期限の徒過、管理対象部品の交換期限の徒過、管理対象部品の発注間違い等のヒューマンエラーの発生を防止することができる。
【0069】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通信手段、入力手段などが挙げられる。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通信工程、入力工程などが挙げられる。
【0070】
前記通信手段としては、光学測定装置の外部と通信可能なものであれば特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、送受信機などが挙げられる。
【0071】
前記入力手段としては、光学測定装置に対する各種要求を受け付けることができれば特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどが挙げられる。
【0072】
(光学測定装置のデータ管理プログラム)
本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムは、光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置のデータ管理プログラムであって、
複数の前記管理対象部品にそれぞれ取付けられる複数の記録手段に対し前記管理対象部品の管理情報を記録し、
前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着した時、又は前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着して前記測定手段で測定する時に、複数の前記管理対象部品における前記記録手段を取付けた箇所にそれぞれ配設される複数の読取手段により、前記記録手段に記録されている前記管理情報を読み取り、
読み取られた前記管理情報と、前記測定手段で測定した前記測定データとを結合させた履歴データを保管する処理、をコンピュータに実行させる。
【0073】
本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムは、例えば、本発明の光学測定装置のデータ管理方法をコンピュータに実行させるプログラムとすることができる。また、本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムにおける好適な態様は、例えば、本発明の光学測定装置のデータ管理方法における好適な態様と同様とすることができる。
【0074】
本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムは、使用するコンピュータシステムの構成及びオペレーティングシステムの種類・バージョンなどに応じて、公知の各種のプログラム言語を用いて作成することができる。
【0075】
本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムは、内蔵ハードディスク、外付けハードディスクなどの記録媒体に記録しておいてもよいし、CD-ROM(Compact Disc ROM)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk ROM)、MOディスク(Magneto-Optical disk)、SDカード、USBメモリ〔USB(Universal Serial Bus) flash drive〕などの記録媒体に記録しておいてもよい。
更に、本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムを、上記の記録媒体に記録する場合には、必要に応じて、コンピュータシステムが有する記録媒体読取装置を通じて、これを直接又はハードディスクにインストールして使用することができる。また、コンピュータシステムから情報通信ネットワークを通じてアクセス可能な外部記憶領域(他のコンピュータなど)に本発明の光学測定装置の管理プログラムを記録しておいてもよい。この場合、外部記憶領域に記録された本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムは、必要に応じて、外部記憶領域から情報通信ネットワークを通じてこれを直接、又はハードディスクにインストールして使用することができる。
なお、本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムは、複数の記録媒体に、任意の処理毎に分割されて記録されていてもよい。
【0076】
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
本発明に関するコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムを記録してなる。
本発明に関するコンピュータが読み取り可能な記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内蔵ハードディスク、外付けハードディスク、CD-ROM、DVD-ROM、MOディスク、SDカード、USBメモリなどが挙げられる。
また、本発明に関するコンピュータが読み取り可能な記録媒体は、本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムが任意の処理毎に分割されて記録された複数の記録媒体であってもよい。
【0077】
以下では、本発明の光学測定装置の構成例やフローチャートなどを用いて、本発明で開示する技術の一例を更に詳細に説明する。
図1に、本発明の光学測定装置のハードウェア構成例を示す。
光学測定装置100においては、例えば、制御部101、主記憶装置102、補助記憶装置103、I/Oインターフェイス104、通信インターフェイス105、入力装置106、出力装置107、表示装置108が、システムバス109を介して接続されている。
【0078】
制御部101は、演算(四則演算、比較演算等)、ハードウェア、及びソフトウェアの動作制御などを行う。制御部101としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)であってもよいし、本発明の光学測定装置のデータ管理方法に用いるマシンの一部であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
制御部101は、例えば、主記憶装置102などに読み込まれたプログラム(例えば、本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムなど)を実行することにより、種々の機能を実現する。
本発明の光学測定装置の測定手段からなる測定部、光学測定装置の記録手段からなる記録部、光学測定装置の読取手段からなる読取部、及び光学測定装置の保管手段からなる保管部が行う処理は、例えば、制御部101により行うことができる。
【0079】
主記憶装置102は、各種プログラムを記憶するとともに、各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。主記憶装置102としては、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)の少なくともいずれかを有するものを用いることができる。
ROMは、例えば、BIOS(Basic Input/Output System)等の各種プログラムなどを記憶する。また、ROMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)などが挙げられる。
RAMは、例えば、ROMや補助記憶装置103などに記憶された各種プログラムが、制御部101により実行される際に展開される作業範囲として機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
【0080】
補助記憶装置103としては、各種情報を記憶できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ(SSD)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。また、補助記憶装置103は、CDドライブ、DVDドライブ、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)ドライブなどの可搬記憶装置としてもよい。また、本発明の光学測定装置のデータ管理プログラムは、例えば、補助記憶装置103に格納され、主記憶装置102のRAM(主メモリ)にロードされ、制御部101により実行される。
【0081】
I/Oインターフェイス104は、各種の外部装置を接続するためのインターフェイスである。I/Oインターフェイス104は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、MOディスク、SDカード、USBメモリなどのデータの入出力を可能にする。
【0082】
通信インターフェイス105としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、無線又は有線を用いた通信デバイスなどが挙げられる。
【0083】
入力装置106としては、光学測定装置100に対する各種要求や情報の入力を受け付けることができれば特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどが挙げられる。また、入力装置106がタッチパネル(タッチディスプレイ)である場合は、入力装置106が表示装置108を兼ねることができる。
【0084】
出力装置107としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、プリンタなどが挙げられる。
表示装置108としては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどが挙げられる。
【0085】
図2に、本発明の光学測定装置の機能構成例を示す。
図2に示すように、光学測定装置100は、通信機能部120と、入力機能部130と、出力機能部140と、表示機能部150と、記憶機能部160と、制御機能部170とを備える。
【0086】
通信機能部120は、例えば各種のデータを外部の装置と送受信する。また、通信機能部120は、例えば、外部の装置からデータを受信してもよい。
入力機能部130は、例えば光学測定装置100に対する各種指示を受け付ける。また、入力機能部130は、例えば追跡する履歴データに関する情報を受け付ける。
出力機能部140は、例えば該当する履歴データをプリントアウトする。
表示機能部150は、例えば該当する履歴データをディスプレイに表示する。
【0087】
記憶機能部160は、例えば、各種プログラムを記憶するプログラム格納用DB161と、読み取られた管理対象部品の管理情報と、測定部で測定した測定データとを結合させた履歴データを記憶する履歴データ用DB162とを有する。
【0088】
制御機能部170は、光学測定装置の測定手段からなる測定部171と、光学測定装置の記録手段からなる記録部172と、光学測定装置の読取手段からなる読取部173と、光学測定装置の保管手段からなる保管部174とを有する。制御機能部170は、例えば、記憶機能部160のプログラム格納用DB161に記憶された各種プログラムを実行するとともに、光学測定装置100全体の動作を制御する。
【0089】
測定部171は、例えば光学測定装置の測定手段によって試料の光学特性を測定した測定データを得る処理を行う。
記録部172は、例えば管理対象部品に取付けられる記録手段に対し管理対象部品の管理情報を記録する処理を行う。
読取部173は、例えば管理対象部品を光学測定装置本体に装着した時、又は管理対象部品を光学測定装置本体に装着して測定部171で測定する時に、記録部172に記録されている管理情報を読み取る処理を行う。
保管部174は、例えば読み取られた管理情報と、測定部171で測定した測定データとを結合させた履歴データを保管する処理を行う。
【0090】
ここで、図3は、本発明の光学測定装置のデータ管理方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、図2の光学測定装置の機能構成図を参照して、光学測定装置のデータ管理方法における処理の流れについて説明する。
【0091】
本発明の光学測定装置のデータ管理方法は、光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡する処理を行う。
【0092】
ステップS101では、光学測定装置100における制御機能部170の記録部172は、管理対象部品に取付けられる記録部172に対し前記管理対象部品の管理情報を記録すると、処理をS102に移行する。
【0093】
ステップS102では、光学測定装置100における制御機能部170の読取部173は、管理対象部品を光学測定装置本体に装着した時、又は管理対象部品を光学測定装置本体に装着して光学測定装置100における制御機能部170の測定部171で測定する時に、記録部172に記録されている管理情報を読み取ると、処理をS103に移行する。
【0094】
ステップS103では、光学測定装置100における制御機能部170の保管部174は、読み取られた管理対象部品の管理情報と、光学測定装置100における制御機能部170の測定部171で測定した測定データとを結合させた履歴データを保管すると、本処理を終了する。
【実施例
【0095】
以下の実施例では、本発明の光学測定装置の一実施形態である旋光計について具体的に説明するが、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。
【0096】
図4は、本発明の光学測定装置の一実施形態である旋光計の概略図である。この図4の旋光計10は、光源7、干渉フィルタ8、偏光子9、変調器11、セル5、検光子12、回転手段13、及び検出器14が光路に沿って並んで配置されている。なお、変調器11とセル5との並ぶ順番は逆であっても構わない。この旋光計10においては、標準試料である旋光板1は点検時・校正時などには、セル5の位置に配置される。
【0097】
光源7は、単色の光を発光するLED(Light Emitting Diode)であり、図示しない点灯回路から点灯用の電力が供給されて発光する。なお、光源7は、LED以外に、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、又は水銀ランプ等の光源であってもよい。
【0098】
干渉フィルタ8は、旋光度の測定に用いる波長(例えば589nm)の光を通過させ、その他の波長の光を遮断するバンドパス光学フィルタである。
偏光子9は、単一の透過軸に平行な直線偏光成分のみを透過させる偏光板であり、光源7が発光して干渉フィルタ8を通過して入射された光を直線偏光に変換する。これにより、直線偏光が発生する。偏光子9は旋光計内で固定されており、偏光子9に固有の透過軸の方向も固定されるので、偏光子9により発生される偏光の偏光面は一定である。
【0099】
変調器11は、直線偏光の偏光面を変調するファラデーコイルであり、このファラデーコイルは、内部を光路が通る位置に配置されており、交流電流を発信する発振器に接続されている。発振器は、所定の振動数の交流電流をファラデーコイルへ供給し、ファラデーコイルは、交流電流を供給されることによって内部に振動磁場を発生させる。ファラデーコイルを通過する直線偏光は、振動磁場により、交流電流に応じた振幅及び振動数で偏光面が振動する。
【0100】
変調器11を通過した変調された直線偏光は、液体試料が充填されたセル5を通過した後、検光子12を通過する。
セル5は、液体試料が注入される透明セルであり、液体試料内を光路が通る位置に配置されている。光源7からの光が偏光子9を通過することによって発生した直線偏光はセル5へ入射される。
【0101】
検光子12は、単一の透過軸を有する偏光板であり、偏光子9の偏光方向と検光子12の透過軸方向とが直交するように回転手段13としての回転ステージで回転され、角度調節して設置されている。検光子12に入射された直線偏光の内、透過軸に平行な直線偏光成分のみが検光子12を透過する。
【0102】
検光子12を通過した直線偏光は、検出器14へ入射される。検出器14は、光電子増倍管(PMT)、フォトダイオード等の受光素子を用いて構成されており、光を検出した場合に、光の検出量を電圧で示す検出信号を出力する。受光素子が出力する受光信号の強度は、受光素子が受光した受光量に対応する。検出器14で得られた電気信号に基づき、コンピュータ15により旋光度が求められる。
【0103】
セル5内に試料溶液がなく、偏光子9及び検光子12の透過軸が直交した状態では、光は全て検光子12で遮蔽され、受光素子は光を検出できない。旋光性を有する試料溶液がセル5に注入された場合、試料溶液によって直線偏光の偏光面が回転し、検光子12の透過軸に平行な直線偏光成分が検光子12を透過し、受光素子は光を検出する。この状態で検光子12を回転手段13によって回転させ、試料溶液を通過した直線偏光の偏光面と検光子12の透過軸とが直交するまで検光子12を回転手段13で回転させた回転角度を求める。求めた回転角度は、セル5内の試料溶液が直線偏光の偏光面を回転させた角度であり、これが試料溶液の旋光度である。
【0104】
コンピュータ15では、旋光計の制御(測定)プログラム及び本発明の光測定装置のデータ管理プログラムなどが起動している。
ディスプレイ16は、データや警告などを表示する。
【0105】
この図4の旋光計10において、旋光計本体に着脱可能に装着される管理対象部品としては、光源7、干渉フィルタ8、偏光子9、変調器11、セル5、旋光板1、検光子12、検出器14が該当する。
【0106】
管理対象部品である、光源7、干渉フィルタ8、偏光子9、変調器11、セル5、旋光板1、検光子12、検出器14は、それぞれ、管理情報が記録された記録手段2が取り付けられており、各管理対象部品を光学測定装置本体に装着した時、又は各管理対象部品を光学測定装置本体に装着して測定する時に、読取手段3によって記録手段2に記録されている管理情報が読み取られる。読み取られた管理情報は読取コントローラ17を介してコンピュータ15に転送される。測定手段で測定された測定データがコンピュータ15に転送される。コンピュータ15のソフトウェアによって、管理情報と測定データとが結合され、履歴データが作成される。この履歴データがコンピュータ15内の履歴データ用DB162に保管される。
【0107】
なお、得られた履歴データは、必要に応じてLIMS(Laboratory Information Management System;ラボラトリー情報管理システム)へ送信することができる。RS232Cなどの1対1の通信の場合はそのまま平文で送信し、社内LANなどを経由する場合はフォーマット情報とともにバイナリデータとして送信される。
履歴データをLIMSへ送信すると、コンピュータ内に履歴データを保管しないので、履歴データのバックアップなどの管理コストを削減することができる。LIMSで取得した履歴データはERPに送信され、校正情報、生産情報、校正の有効期限を加味し、使用者へ再校正などの伝票を発行することができる。
【0108】
記録手段2としては、一次元コード、二次元コード、RFIDタグ、及びEEPROMのいずれかが用いられる。
【0109】
読取手段3としては、記録手段2に対応させてバーコードリーダ、RFIDリーダ、光学カメラ、及び読取装置のいずれかが用いられる。
【0110】
図5は、旋光計10の管理対象部品の一例である旋光板1と、記録手段2と、読取手段3とを示す概略図である。この旋光板1には記録手段2としてRFIDタグが取り付けられており、このRFIDタグには管理情報として、旋光板の種類、旋光板の固有番号、旋光板の校正値(旋光度)、旋光板の校正日時、旋光板の校正期限、旋光板の校正実施者、旋光板の交換日時が記録されている。記録手段2としては、一次元コード又は二次元コードを用いることもできるが、RFIDタグは非接触式であり、管理情報の書き換えが可能であるため、利便性に優れる。
【0111】
旋光計本体に旋光板1を装着すると、読取手段3としてのRFIDリーダにより、旋光板1に取り付けられたRFIDタグの管理情報が読み取られ、読み取られた管理情報と、測定手段で測定された測定データとが結合された履歴データが履歴データ用DB162に保管される。
【0112】
図6は、旋光計10の管理対象部品の一例である温度計4と、記録手段2と、読取手段3とを示す概略図である。この温度計4には記録手段2として、RFIDタグが取り付けられており、RFIDタグには管理情報として、温度計の種類、温度計の固有番号、温度計の校正値(温度)、温度計の校正日時、温度計の校正期限、温度計の校正実施者、温度計の交換日時が記録されている。記録手段2としては、一次元コード又は二次元コードを用いることもできるが、RFIDタグは非接触式であり、管理情報の書き換えが可能であるため、利便性に優れる。
【0113】
旋光計本体に温度計4を装着すると、読取手段3としてのRFIDリーダにより、温度計に取り付けられたRFIDタグの管理情報が読み取られ、読み取られた管理情報と、測定手段で測定された測定データとが結合された履歴データが履歴データ用DB162に保管される。
【0114】
図7は、旋光計10の管理対象部品の一例であるセル5と、記録手段2と、読取手段3とを示す概略図である。このセル5には記録手段2としてRFIDタグが取り付けられており、RFIDタグには管理情報として、セルの種類、セルの固有番号、セルの温度、セルの光路長の校正値、セルの光路長の校正日時、セルの光路長の校正期限、セルの光路長の校正実施者、セルの交換日時が記録されている。記録手段2としては、一次元コード又は二次元コードを用いることもできるが、RFIDタグは非接触式であり、管理情報の書き換えが可能であるため、利便性に優れる。
【0115】
旋光計本体にセルを装着すると、読取手段3としてのRFIDリーダにより、セルに取り付けられたRFIDタグの管理情報が読み取られ、読み取られた管理情報と、測定データとが結合された履歴データが履歴データ用DB162に保管される。
【0116】
図8は、旋光計10の管理対象部品の一例である付属品6と、記録手段2と、読取手段3とを示す概略図である。付属品6としてはセルホルダが用いられる。このセルホルダには記録手段2として二次元コードが取り付けられており、二次元コードには管理情報として、セルホルダの種類、セルホルダの固有番号、セルホルダの温度、セルホルダの取付日時が記録されている。記録手段2としては、一次元コード又はRFIDタグを用いることもできる。
【0117】
旋光計本体にセルホルダを装着すると、読取手段3としてのバーコードリーダにより、セルホルダに取り付けられた二次元コードの管理情報が読み取られ、読み取られた管理情報と、測定手段で測定された測定データとが結合された履歴データが履歴データ用DB162に保管される。
【符号の説明】
【0118】
1 旋光板
2 記録手段
3 読取手段
4 温度計
5 セル
6 付属品
7 光源
8 干渉フィルタ
9 偏光子
10 旋光計
11 変調器
12 検光子
13 回転手段
14 検出器
15 コンピュータ
16 ディスプレイ
17 読取コントローラ
100 光学測定装置
101 制御部
102 主記憶装置
103 補助記憶装置
104 I/Oインターフェイス
105 通信インターフェイス
106 入力装置
107 出力装置
108 表示装置
109 システムバス
160 記憶機能部
161 プログラム格納用DB
162 履歴データ用DB
170 制御機能部
171 測定部
172 記録部
173 読取部
174 保管部
【要約】
【課題】医薬品業界で要求される厳格なトレーサビリティを実現できる光学測定装置、光学測定装置のデータ管理方法、及び光学測定装置のデータ管理プログラムの提供。
【解決手段】光学測定装置の測定手段で試料の光学特性を測定した測定データと、光学測定装置本体に着脱可能に装着される複数の管理対象部品における管理情報とを結合させた履歴データを保管して利用・必要時には前記履歴データを追跡できる光学測定装置であって、前記管理対象部品に取付けられ、前記管理対象部品の前記管理情報を記録するための記録手段と、前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着した時、又は前記管理対象部品を前記光学測定装置本体に装着して前記測定手段で測定する時に、前記記録手段に記録されている前記管理情報を読み取るための読取手段と、読み取られた前記管理情報と、前記測定手段で測定した前記測定データとを結合させた履歴データを保管するための保管手段と、を有する光学測定装置である。
【選択図】なし
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