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特許7601499NCOCのEMI保護のためのSWIR-MWIR透明導電性コーティング
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  • 特許-NCOCのEMI保護のためのSWIR-MWIR透明導電性コーティング 図1
  • 特許-NCOCのEMI保護のためのSWIR-MWIR透明導電性コーティング 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】NCOCのEMI保護のためのSWIR-MWIR透明導電性コーティング
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/08 20060101AFI20241210BHJP
   G02B 1/115 20150101ALI20241210BHJP
   G02B 1/16 20150101ALI20241210BHJP
【FI】
C23C14/08 C
G02B1/115
G02B1/16
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023546204
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022014114
(87)【国際公開番号】W WO2022165048
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】17/164,157
(32)【優先日】2021-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】リーデル,エリック
(72)【発明者】
【氏名】コレンステイン,ラルフ
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表平04-504027(JP,A)
【文献】特表2019-532248(JP,A)
【文献】特表2015-535892(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0315808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/08
G02B 1/115
G02B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学または赤外(EO/IR)センサ用の短波赤外~中波赤外(SWIR-MWIR)光学ウィンドウであって、
ナノコンポジット光学セラミック材料から形成された基板と、
電磁干渉(EMI)保護を提供するために前記基板上に配置されたコーティングであって、導電性かつSWIR-MWIR透明であり、且つドープされた酸化亜鉛材料を有する、コーティングと、
を備えた、SWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項2】
前記ドープされた酸化亜鉛材料のドーパントが、+3の酸化状態を有する、請求項1に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項3】
前記ドーパントが、アルミニウムである、請求項2に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項4】
前記ドープされた酸化亜鉛材料が、最大3重量%のドーパントを含む、請求項2に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項5】
前記ドープされた酸化亜鉛のドーパントが、前記コーティング中に均一に分布している、請求項1に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項6】
前記コーティングが、前記光学ウィンドウの外側に薄膜として適用される、請求項5に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項7】
前記コーティングが、最大1ミクロンの厚さを有する、請求項6に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項8】
前記コーティングが、20~30オーム/スクエアの導電率を有する、請求項1に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項9】
前記基板と前記コーティングとの間に配置された中間層を更に備え、前記中間層が、前記コーティングの屈折率と前記基板の屈折率の間の屈折率を有する、請求項1に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項10】
前記中間層が、酸化物である、請求項9に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項11】
前記基板が、湾曲形状を有する、請求項1に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項12】
前記基板の内側上に配置された反射防止コーティングを更に備えた、請求項1に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【請求項13】
WIR-MWIR光学ウィンドウを備えた、電気光学または赤外(EO/IR)センサであって、
前記SWIR-MWIR光学ウィンドウは、
ナノコンポジット光学セラミック材料から形成された基板と、
電磁干渉(EMI)保護を提供するために前記基板上に配置されたコーティングであって、導電性かつSWIR-MWIR透明であり、且つドープされた酸化亜鉛材料を有する、コーティングと、
を有する、
EO/IRセンサ
【請求項14】
EO/IRセンサを電磁干渉(EMI)から保護する方法であって、
前記EO/IRセンサの光学ウィンドウの表面上に導電性かつSWIR-MWIR透明薄膜コーティングを堆積することを含み、
前記光学ウィンドウが、ナノコンポジット光学セラミック材料から形成されており、
前記導電性かつSWIR-MWIR透明薄膜コーティングが、導電性酸化亜鉛材料を有し、かつ
前記光学ウィンドウの表面が、湾曲している、
方法。
【請求項15】
前記導電性酸化亜鉛材料が、原子価3の元素の群から選択されるドーパントを有するドープされた酸化亜鉛を有し、前記光学ウィンドウが、酸化物系セラミック材料である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記導電性かつSWIR-MWIR透明薄膜コーティングが、マグネトロンスパッタリングによって堆積され、ターゲット材料が、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムを有する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は概して、センサの電磁干渉(EMI)保護に関し、より詳細には、短波赤外~中波赤外(SWIR-MWIR)透明ウィンドウのEMI保護に関する。
【0002】
電磁スペクトルで動作するセンシングシステムは、外部発生源からのEMIまたは高周波干渉に対して脆弱である。EMIは、センサの性能に悪影響を及ぼして破損を生じさせ得るか、またはセンサを妨害して機能喪失もしくは故障を生じさせ得る。したがって、多くの高感度電子センシングシステムにはEMI保護が必要とされる。EMI保護を提供するための現行のソリューションには、金属またはカーボンナノチューブのグリッドのセクションを光学素子に適用することが含まれる。導電性グリッドは望ましくない電磁エネルギーを反射するが、その一方でグリッドの開口部は光学素子の透明さを維持している。グリッド構造は、概して平坦なウィンドウには有効であるが、半球状またはオジーブ状のドームなどの湾曲形態への適用は容易ではない。湾曲した表面への金属またはカーボンナノチューブのグリッドの適用は、労働集約的である故に高価であるため、適用は、概してドーム状光学素子の一部のみを覆うことに限定される。
【0003】
ドーム状光学素子の全領域にわたってEMI保護を提供するには、新たなEMI保護システムが必要であり、より具体的には、SWIR-MWIR透明ドーム状光学素子のための新たなEMI保護システムが必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、短波赤外~中波赤外(SWIR-MWIR)光学ウィンドウは、ナノコンポジット光学セラミック材料から形成された基板と、電磁干渉(EMI)保護を提供するために基板上に配置されたコーティングと、を含む。コーティングは導電性かつSWIR-MWIR透明であり、ドープされた酸化亜鉛材料を有する。
【0005】
別の態様では、EO/IRセンサを電磁干渉(EMI)から保護する方法は、EO/IRセンサの光学ウィンドウの表面上に導電性かつSWIR-MWIR透明薄膜コーティングを堆積することを含む。光学ウィンドウは、ナノコンポジット光学セラミック材料から形成されており、湾曲した表面を有する。導電性かつSWIR-MWIR透明薄膜コーティングは、導電性酸化亜鉛材料を有する。
【0006】
この発明の概要は例としてのみ提供されており、限定されるものではない。本開示の他の態様は、本文全体、特許請求の範囲、及び添付図面を含む本開示の全体を考慮して理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】半球ドーム状であり、導電性かつ短波赤外~中波赤外(SWIR-MWIR)透明なコンフォーマルコーティングを有する、電気光学または赤外(EO/IR)センサ光学素子の断面図(拡大近接図付)である。
図2】オジーブドーム状であり、導電性かつSWIR-MWIR透明なコンフォーマルコーティングを有する、EO/IRセンサ光学素子の断面図である。
【0008】
上で特定された図は本発明の実施形態を明らかにするものであるが、考察で述べられるように、他の実施形態も企図される。いかなる場合も、本開示は、本発明を代表として提示するものであり、限定するものではない。当業者であれば、本発明の原理の範囲及び趣旨に収まる他の多数の修正及び実施形態を考案することができることを理解されたい。図面は一定の縮尺で描かれていない場合があり、本発明の応用及び実施形態には、図面に具体的に示されていない特質、工程、及び/または構成要素が含まれる場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
誘導システムを含む多くの光学アプリケーションは、電磁スペクトルの赤外(IR)領域でエネルギーを送受信する。これらのシステムで使用されるドーム及びウィンドウなどの光学素子は、IRスペクトルで透過可能でなければならず、かつそれらが遮蔽する電気光学または赤外(electro-optical or infrared,EO/IR)センサ及び他の構成要素を過酷な環境条件から保護可能でなければならない。更に、EO/IRセンサを電磁干渉(EMI)から保護するための光学素子への需要がある。平面ウィンドウに使用される従来のEMIグリッドは、ドームへの適用が容易ではなく、適用した場合でも概して範囲が制限され、光学素子の一部のみが覆われる。ここに開示される導電性かつ短波IR~中波IR(SWIR-MWIR)透明な薄膜コーティングは、SWIR-MWIRウィンドウ及びドームに完全なEMI保護を提供することができる。導電性SWIR-MWIR透明コーティングは、複雑な湾曲形態に均一に適用することができる。
【0010】
図1は、半球ドーム状であり、導電性かつSWIR-MWIR透明なコンフォーマル薄膜コーティングを有する、電気光学または赤外(EO/IR)センサ光学素子の断面図である。図1には更に、この赤外(EO/IR)センサ光学素子の拡大近接図が含まれている。図2は、オジーブドーム状であり、導電性かつSWIR-MWIR透明なコンフォーマル薄膜コーティングを有する、EO/IRセンサ光学素子の断面図である。ここでは、図1及び2を一緒に考察する。ここに開示される光学素子は、ターゲットの捕捉、識別、及び誘導のための航空機搭載光学イメージングシステムなどの商業用途及び軍事用途を含むがこれらに限定されない、様々な用途においてEO/IRセンサを保護するために使用することができる。開示された導電性かつSWIR-MWIR透明コンフォーマル薄膜コーティングの適用は、図1及び2に図示される光学素子形状に限定されない。当業者には理解されるように、開示された導電性かつSWIR-MWIR透明コーティングは、空気力学的ドーム、平面ウィンドウ、及び種々の湾曲した(例えば、凸状及び凹状)形態を含むがこれらに限定されない、様々な光学素子形状に適用することができる。
【0011】
図1は、基板12と、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14と、オプションの中間層16と、オプションの反射防止コーティング18と、を有する光学素子10を示す。図2は、基板22と、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング24と、を有する光学素子20を示す。中間層16及び反射防止コーティング18は、光学素子20の図では省略されているが、図1のドーム10に関して説明したように、任意選択的に含めることができる。基板12は、内側26及び外側28を有する。基板22は、内側30及び外側32を有する。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14は、光学素子10の外側28上に配置され得る。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング24は、光学素子20の外側32上に配置され得る。オプションの中間層16は、基板12と導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14との間に配置され得る。オプションの反射防止コーティング18は、基板12の内側26上に配置され得る。光学素子10及び20は、EO/IRセンサ38を遮蔽する。
【0012】
基板12、22は、SWIRまたはMWIRナノコンポジット光学セラミック(nanocomposite optical ceramic,NCOC)であるとすることができる。NCOC材料は、サファイア、スピネル、多結晶アルミナ、酸窒化アルミニウムなどの従来の光学素子材料よりも向上した機械的強度及び耐熱衝撃性を付与することが示されており、軍用光学イメージングシステムでの使用のために開発されている。NCOCは、互いに不溶な2つ以上のセラミック相の混合物で形成された多相複合材料であり、それにより2つの構成成分間に明確な相分離を有する多相粒子構造を形成している。多相粒子構造は加工後も依然として明確であるため、相間の分離を観察することができる。
【0013】
ドーム及びウィンドウを含むNCOC光学素子は、ニアネットシェイプ粉末加工技術を使用して成功裏に製造されている。ナノサイズのセラミック粉末を鋳型に充填してプレスし、光学素子の一般的形状を有するが厚さが増大した未焼結体を生成する。次に、未焼結体を焼結し、粉末加工中に追加されたあらゆる有機物を除去して、高密度(96%超)に到達させる。最後に、焼結体に熱間等方圧加工(圧力及び熱を適用する)を行うことにより、光学素子の最終形状に近い形状を有する完全に緻密化されたブランクを形成する。光学素子の最終形状を得るために、精密研削及び研磨を含めた最終形状の仕上げを施すことができる。
【0014】
一実施形態では、基板12、22は、イットリア(Y)、マグネシア(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウムアルミニウム(MgAl)、ジルコニア(ZrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ベリリウム(BeO)、シリカ(SiO)、及び酸化ゲルマニウム(GeO)から選択される第1及び第2の酸化物ナノ粒子材料から形成されるNCOCである。例えば、第1の酸化物ナノ粒子材料はイットリアであり得、第2の酸化物ナノ粒子材料はマグネシアであり得る。NCOC材料は、開示されたセラミック相のいずれか2つ以上から構成され得る(但し、セラミック相が互いに不溶である場合に限る)。屈折率を変化させるために、ドーパントを一方または両方の相に添加することができる。NCOCの材料組成は、特定の用途に対する所望の光学的及び機械的特性をもたらすように選択され得る。例えば、IRスペクトルの特定の部分における光透過度に基づいて、2つ以上のナノ粒子材料が選択され得る。具体的には、NCOCの材料組成は、ターゲット波長範囲が約2μm~約8μmであるSWIR-MWIRスペクトルにおいて透過性をもたらすように選択される。一実施形態では、MWIR NCOC光学素子は、Y:MgOの混合物(例えば、体積比およそ50:50の混合物)から形成され得る。別の実施形態では、SWIR NCOC光学素子は、MgO相に酸化ニッケルドーパントを含んだY:MgOの混合物から形成され得る。
【0015】
導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、基板12の外側28及び基板22の外側32の上に薄膜コンフォーマルコーティングとして適用することができる、SWIR-MWIR透明かつ導電性のコーティングである。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、基板12、22の外表面に直接適用することができ、または中間層16などの1つ以上の中間層の外表面に適用することができる。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、実質的に均一な厚さで外側28、32を完全に覆うように適用することができ、それにより光学素子10、20の全ての部分にわたり実質的に均一なEMI保護を提供する。
【0016】
代替実施形態では、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、基板12、22の内側26、30上に薄膜コンフォーマルコーティングとして適用することができる。上述したように、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、内側26、30側の基板12、22の外表面に直接適用することができ、または内側26、30に適用された1つ以上の中間層(例えば、中間層16)の外表面に適用することができる。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、実質的に均一な厚さで内側26、30を完全に覆うように適用することができ、それにより光学素子10、20の全ての部分にわたり実質的に均一なEMI保護を提供する。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24を内側26、30に適用することは、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24を環境的損傷から保護するために望ましい場合がある。
【0017】
導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、導電性の材料がドープされた酸化亜鉛を有する導電性酸化亜鉛材料であるとすることができる。理想的には、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、光学情報の伝達における損失がほとんどまたは全くないように、基板12、22と同じまたは実質的に同様の光学特性を呈する。酸化亜鉛は、SWIR-MWIR透明材料である。酸化亜鉛は、中間の接着または結合コーティングを追加することなく、酸化物系セラミック基板12、22の表面に直接適用することができる。
【0018】
導電性ドーパントを酸化亜鉛材料内に均一に分散させて、高周波電磁放射がEO/IRセンサに到達するのを実質的に遮断するのに十分な導電性シールドを提供することができる。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24中の導電性ドーパントの量は、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24を中の必要なSWIR-MWIR透過度を維持しながら、必要な程度のEMI保護を提供するように選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、最大約5重量%のドーパント、または最大約3重量%のドーパント、または約1重量%~3重量%のドーパントを含み得る。
【0019】
導電性ドーパントは、酸化亜鉛の伝導帯に電子を与える+3の酸化状態を有する元素を含むことができ、SWIR-MWIR透明コーティング14、24を導電性にする。例えば、一実施形態では、導電性ドーパントは、酸化アルミニウムであり得る。他の実施形態では、導電性ドーパントは、ガリウムまたはインジウムの酸化物であり得る。更に他の実施形態では、導電性ドーパントは、イットリアまたはガドリニアなどの希土類酸化物であり得る。更に他の実施形態では、+3の酸化状態を有する他の希土類元素を使用して、酸化亜鉛にドープすることができる。概して、+3の酸化状態を有する任意の元素を酸化亜鉛のドープに使用することができる(但し、元素が酸化亜鉛格子内の亜鉛と置き換わるほど大きすぎない場合に限る)。酸化物は製造の容易さの点で好ましい場合があるが、ドーパントには、元素アルミニウム、または3つの価電子を有する他の元素などの元素材料を代わりに含めることもできる。
【0020】
導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、RFマグネトロンスパッタリングによって堆積され得る。RFマグネトロンスパッタリングは、薄膜酸化物の堆積に使用される従来技術である。スパッタリング装置は、1つ以上のターゲットを備えたチャンバ、RF電力供給源、及び基板12、22を含む。一実施形態では、ターゲットは、所定量のドーパントを有する、所望の導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング組成物(例えば、酸化アルミニウムをドープされた酸化亜鉛)を含み得る。例えば、ターゲットは、最大3重量%の酸化アルミニウムを有する導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24を形成するために、3重量%の酸化アルミニウムをドープされた酸化亜鉛源を含み得る。操作中、1つ以上のRF電源を使用して、ターゲットからの種を回転基板12、22上にスパッタリングすることができる。ある特定の原子は、他の原子よりも効率的にスパッタリングされる。したがって、得られる導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24に、所望の重量パーセントのドーパントとは異なる重量パーセントのドーパントを有するターゲットを使用することが望ましい場合がある。例えば、3重量%のドーパントを有するターゲットは、3重量%未満のドーパントを有するコーティングを生成する可能性がある。
【0021】
他の実施形態では、第1のターゲットは酸化亜鉛源を含み得、第2のターゲットはドーパント源、例えば元素アルミニウムを含み得る。操作中、1つ以上のRF電源を使用して、第1及び第2のターゲットの各々からの種を回転基板12、22上に共スパッタリングすることができる。個々のターゲット材料種の、得られる導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24での組成比は、RF電源の制御を通じて制御され得る。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング材料の組成、結晶構造、粒子サイズ、及びコーティング厚さは、ターゲットの組成、ならびに堆積温度、圧力、電力、及び堆積時間を含む操作パラメータを制御することによって最適化され得る。
【0022】
当該技術分野で公知の物理的及び化学的堆積技術を含む、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24を堆積する他の方法は、本開示の範囲内である。例えば、1つ以上の実施形態では、酸化亜鉛は、RFマグネトロンスパッタリングまたは当該技術分野で公知の他の方法によって堆積することができ、またイオン注入によりドープして導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24を形成することができる。例えば、アルミニウム、ガリウム、またはインジウムのイオンを酸化亜鉛コーティングに注入することができる。いくつかの実施形態では、ドーピングイオンは、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24の厚さの一部分に存在し得る。
【0023】
導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、所望の厚さ及び使用される堆積技術に応じて、単層または複数層で堆積され得る。1つ以上の実施形態によれば、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、最大約1ミクロン、または約0.5ミクロン~約1ミクロンの厚さを有し得る。概して、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24の厚さが増大すると、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24中のドーパントの量が増加した結果として電気伝導率が増大し得るが、光透過の低減ももたらし得る。
【0024】
導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、約20~30オーム/スクエアの電気伝導率または約10-4オーム・cmの抵抗率を有し得る。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、約2μm~約5μmの範囲のターゲット波長での用途に対し、SWIRスペクトル及び一部のMWIRスペクトルにわたって光透過度をもたらすことができる。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24中のドーピングイオンの量を増加または減少させることにより、所望の電気伝導率を提供することができる。導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24の最適な光透過度は、堆積パラメータ及び焼鈍温度を注意深く制御することにより実現することができる。
【0025】
中間層16は、任意選択的に、外側28、32側の基板12、22の外表面に設けることができる。中間層16は、異なる屈折率を有する材料間に遷移層を設けるために基板12、22と導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24との間に配置することができ、及び/または基板12、22と導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24との間の接着を改善するために設けることができる。中間層16は、隣接する導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24と基板12、22との間に共有元素を提供して、隣接する材料間の接着を促進することができる。例えば、イットリアを含む中間層16は、NCOC基板12、22と、及び導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24の酸化亜鉛と、共通元素である酸素を共有して、NCOCと酸化亜鉛との間の接着を促進することができる。いくつかの実施形態では、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、基板12、22の屈折率と実質的に同様の屈折率を有し得る。そのような実施形態では、中間層16は必要がない場合がある。いくつかの実施形態では、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24は、基板12、22とは異なる屈折率を有することができ、2つの材料間の円滑な遷移をもたらすために、中間層16の適用を通じた光学インピーダンス整合が必要な場合がある。中間層16は、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24の屈折率と基板12、22の屈折率の間である屈折率を有する酸化物材料とすることができ、それにより材料界面での反射による光損失を最小限に抑えることができる。中間層16の厚さは、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24と基板12、22の屈折率の差に応じて変化させることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の中間層16を設けることができる。中間層16の化学組成は、当該技術分野で公知のように、従来のモデリングソフトウェアを使用して選択することができる。
【0026】
反射防止コーティング18は、任意選択的に、基板12、22の内側26、30側の、基板12、22の内表面に直接設けることができ、またはコーティング14、24が内側26、30上に適用される場合には、導電性かつSWIR-MWIR透明コーティング14、24の外部に設けることができる。反射防止コーティング18を使用して光透過度を増大させることができ、EO/IRセンサの保護を更に補助することができる。反射防止コーティング18は、当該技術分野で公知であり光学装置に通常使用される、酸化物コーティングであり得る。反射防止コーティング18は、RFマグネトロンスパッタリングまたは当該技術分野で公知の他の堆積技術によって堆積され得る。
【0027】
開示された導電性かつSWIR-MWIR透明薄膜コーティングは、SWIR-MWIRウィンドウ及びドームに完全なEMI保護を提供することができる。導電性SWIR-MWIR透明コーティングは、複雑な湾曲形態に均一に適用することができるため、従来のEMIグリッドよりも改善したEMI保護を提供することができる。
【0028】
本発明を例示的実施形態(複数可)に関して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更を行うことができ、また均等物をその要素に対して置き換えることができることを当業者ならば理解するであろう。加えて、本発明の必須の範囲から逸脱することなく、多くの修正を行って特定の状況または材料を本発明の教示に適合させることができる。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態(複数可)に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲内に収まる全ての実施形態を含むことが意図される。本明細書に開示される実施形態は、他の実施形態と組み合わせることができ、「ある実施形態」、「一例」、「いくつかの実施形態」、「いくつかの例」、「代替実施形態」、「種々の実施形態」、「一実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」、「本実施形態及び他の実施形態」、「特定の実施形態」などへの言及は、必ずしも相互に排他的ではなく、記載される特定の特質、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを示すことが意図される。本明細書におけるそのような用語の出現は、必ずしもその全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。
【0029】
本明細書で使用されるあらゆる相対的用語または程度に関する用語、例えば、「実質的に」、「本質的に」、「概して」、「およそ」などは、本明細書に明示的に記載されている任意の適用可能な定義または制限に準拠して解釈され、かつそれに従う必要がある。全ての場合において、本明細書で使用されるあらゆる相対的用語または程度に関する用語は、あらゆる関連する開示される実施形態、及び本開示の全体を考慮して当業者によって理解されるような範囲または変動を広く包含するものと、例えば、通常の製造公差の変動、偶発的なアラインメントの変動、熱、回転、または振動の作動条件によって引き起こされる一時的なアラインメントまたは形状の変動などを包含するものと、解釈されるべきである。更に、本明細書で使用されるあらゆる相対的用語または程度に関する用語は、あたかも所与の開示または詳細説明において適格な相対的用語または程度に関する用語が使用されていないかのように、変動を伴わない指定された品質、特徴、パラメータ、または値を明示的に含む範囲を包含するものと解釈されるべきである。
【0030】
可能な実施形態の考察
以下は、本発明の可能な実施形態の非排他的な説明である。
【0031】
短波赤外~中波赤外(SWIR-MWIR)光学ウィンドウは、ナノコンポジット光学セラミック材料から形成された基板と、電磁干渉(EMI)保護を提供するために基板上に配置されたコーティングと、を含む。コーティングは導電性かつSWIR-MWIR透明であり、ドープされた酸化亜鉛材料を有する。
【0032】
先行段落のSWIR-MWIR光学ウィンドウは、任意選択的に、追加的及び/または代替的に、以下の特質、構成、及び/または追加の構成要素のうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0033】
前記ドープされた酸化亜鉛材料のドーパントが、+3の酸化状態を有する、先行段落に記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0034】
前記ドーパントが、アルミニウムである、先行段落のいずれかに記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0035】
前記ドープされた酸化亜鉛材料が、最大3重量%のドーパントを含む、先行段落のいずれかに記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0036】
前記ドープされた酸化亜鉛のドーパントが、前記コーティング中に均一に分布している、先行段落のいずれかに記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0037】
前記コーティングが、前記光学ウィンドウの外側に薄膜として適用される、先行段落のいずれかに記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0038】
前記コーティングが、最大1ミクロンの厚さを有する、先行段落のいずれかに記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0039】
前記コーティングが、20~30オーム/スクエアの導電率を有する、先行段落のいずれかに記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0040】
先行段落のいずれかのSWIR-MWIR光学ウィンドウは、基板とコーティングとの間に配置された中間層を更に含むことができ、中間層は、コーティングの屈折率と基板の屈折率の間の屈折率を有する。
【0041】
前記中間層が、酸化物である、先行段落のいずれかに記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0042】
前記基板が、湾曲形状を有する、先行段落のいずれかに記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0043】
前記基板の内側上に配置された反射防止コーティングを更に含み得る、先行段落のいずれかに記載のSWIR-MWIR光学ウィンドウ。
【0044】
電気光学または赤外(EO/IR)センサは、先行段落のいずれかのSWIR-MWIR光学ウィンドウを備え得る。
【0045】
EO/IRセンサを電磁干渉(EMI)から保護する方法は、EO/IRセンサの光学ウィンドウの表面上に導電性かつSWIR-MWIR透明薄膜コーティングを堆積することを含む。光学ウィンドウは、ナノコンポジット光学セラミック材料から形成されており、湾曲した表面を有する。導電性かつSWIR-MWIR透明薄膜コーティングは、導電性酸化亜鉛材料を有する。
【0046】
前述の段落の方法は、任意選択的に、追加的及び/または代替的に、以下の工程、特質、構成、及び/または追加の構成要素のうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0047】
前記導電性酸化亜鉛材料が、原子価3の元素の群から選択されるドーパントを有するドープされた酸化亜鉛を有し、前記光学ウィンドウが、酸化物系セラミック材料である、先行段落に記載の方法。
【0048】
前記導電性かつSWIR-MWIR透明薄膜コーティングが、マグネトロンスパッタリングによって堆積され、ターゲット材料が、酸化亜鉛及び酸化アルミニウムを有する、先行段落のいずれかに記載の方法。
図1
図2