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▶ ヒーズ アイピー ホールディングス エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】視力を高めるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241210BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20241210BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20241210BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20241210BHJP
   A61B 3/08 20060101ALI20241210BHJP
   G09B 19/00 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G09G5/00 510B
G09G5/37 320
G09G5/10 B
G09G5/00 550C
A61B3/08
G09B19/00 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022554308
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 US2022015717
(87)【国際公開番号】W WO2022170284
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】63/147,214
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/217,297
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520332841
【氏名又は名称】ヒーズ アイピー ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】イェ,フォン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グオ-シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ジウン-イーイン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イン
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ポ-ヤ
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0188021(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0149073(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 27/02
G09G 5/00
G09G 5/37
G09G 5/10
A61B 3/08
G09B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物体の第1の部分及び第2の部分の複数の画像ピクセル、並びに対応する奥行きを受け取る対象物体検出モジュールと、
複数の第1の眼の光信号を発して、見る人のために前記対象物体の前記第1の部分及び前記第2の部分の第1の眼の仮想画像を表示する第1の発光体と、
前記第1の発光体から発せられる前記複数の第1の眼の光信号の各々の光の方向をそれぞれ変えるための第1の光方向変更器と、
第1のコリメータであって、前記第1の発光体と前記第1の光方向変更器との間に配置されて、前記複数の第1の眼の光信号が互いから分離可能であるように、前記第1の光方向変更器と前記第1のコリメータとの間の距離を操作することによって前記複数の第1の眼の光信号の各々のビームウエスト位置を調整する第1のコリメータと、
前記見る人の第1の眼に前記複数の第1の眼の光信号を向け直し且つ収束させるための第1のコンバイナと、
を含むヘッドウェアラブルディスプレイシステムであって、
第1の視野における前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像は、第2の視野における前記対象物体の第2の部分の第1の眼の仮想画像よりも、1度あたりの前記複数の第1の眼の光信号の数が多く、
前記対象物体の第1の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数は、前記対象物体の対応する奥行きに基づき調整される、ヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項2】
光路の断面上の任意の2つの隣接する第1の眼の光信号の中心間の空間距離が、前記2つの隣接する第1の眼の光信号の最大直径の半分よりも大きい場合、前記複数の第1の眼の光信号は互いから分離可能である、請求項1に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項3】
前記第1の視野における対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数は120を超える、請求項1に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項4】
前記複数の第1の眼の光信号の各々に対する前記第1の発光体の投影持続時間を変えて、前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像に対する前記複数の第1の眼の光信号のスポットサイズを修正する、請求項1に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項5】
前記第1の眼の発光体の投影周波数を変えて、前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数を修正する、請求項1に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項6】
前記第1の光方向変更器のスイング周波数を変えて、前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数を修正する、請求項1に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項7】
光路の断面上の2つの隣接する第1の眼の光信号の各々のスポットエリアが、互いにほぼ隣接している、請求項1に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項8】
前記第1の発光体は、赤色レーザーダイオード、緑色レーザーダイオード、及び青色レーザーダイオードを含む、請求項1に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項9】
前記複数の第1の眼の光信号の光の方向は、前記対象物体の前記第1の眼の仮想画像を表示する時間に関して前記スイング周波数で変えられ、前記スイング周波数は非一定である、請求項に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項10】
前記光の方向は、第1の座標成分及び第2の座標成分を含み、
第1の眼の光信号の光の方向の第1の座標成分及び第2の座標成分は、前記対象物体の前記第1の眼の仮想画像を表示する時間に関して第1のスイング周波数及び第2のスイング周波数でそれぞれ変えられ、前記第1のスイング周波数又は前記第2のスイング周波数は非一定である、請求項に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項11】
前記複数の第1の眼の光信号の各々が、前記対象物体の前記第1の眼の仮想画像においてピクセルを形成し、前記第1の眼の仮想画像におけるピクセル密度は均一でない、請求項に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項12】
前記対象物体の第1の部分は中心部分であり、前記対象物体の第2の部分は周辺部分であり、前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像は、前記対象物体の第2の部分の第1の眼の仮想画像よりも高いピクセル密度を有する、請求項11に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項13】
前記複数の第1の眼の光信号に対応する複数の第2の眼の光信号を発して、前記見る人のために前記対象物体の前記第1の部分及び前記第2の部分の第2の眼の仮想画像を表示する第2の発光体と、
前記第2の発光体から発せられる前記複数の第2の眼の光信号の各々の光の方向をそれぞれ変えるための第2の光方向変更器と、
前記第2の発光体と前記第2の光方向変更器との間に配置されて、前記複数の第2の眼の光信号が互いから分離可能であるように、前記複数の第2の眼の光信号の各々のビームウエスト位置を調整する第2のコリメータと、
をさらに含み、
前記第1のコンバイナは、前記複数の第2の眼の光信号を受信し、前記見る人の第2の眼に向けて収束させ、
第3の視野における前記対象物体の第1の部分の第2の眼の仮想画像は、第4の視野における前記対象物体の第2の部分の第2の眼の仮想画像よりも、1度あたりの複数の第2の眼の光信号の数が多く、
第1の眼の光信号及び対応する第2の眼の光信号が前記見る人によって知覚されて、前記見る人の眼に投影される前記第1の眼の光信号と前記対応する第2の眼の光信号との間の角度に関連する奥行きを有する前記対象物体の双眼仮想画像の仮想双眼ピクセルを表示する、請求項1に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項14】
前記複数の第1の眼の光信号に対応する複数の第2の眼の光信号を発して、前記見る人のために前記対象物体の前記第1の部分及び前記第2の部分の第2の眼の仮想画像を表示する第2の発光体と、
前記第2の発光体から発せられる前記複数の第2の眼の光信号の各々の光の方向をそれぞれ変えるための第2の光方向変更器と、
前記第2の発光体と前記第2の光方向変更器との間に配置されて、前記複数の第2の眼の光信号が互いから分離可能であるように、前記複数の第2の眼の光信号の各々のビームウエスト位置を調整する第2のコリメータと、
前記見る人の第2の眼に前記複数の第2の眼の光信号を向け直し且つ収束させるための第2のコンバイナと、
をさらに含み、
第3の視野における前記対象物体の第1の部分の第2の眼の仮想画像は、第4の視野における前記対象物体の第2の部分の第2の眼の仮想画像よりも、1度あたりの複数の第2の眼の光信号の数が多く、
第1の眼の光信号及び対応する第2の眼の光信号が前記見る人によって知覚されて、前記見る人の眼に投影される前記第1の眼の光信号と前記対応する第2の眼の光信号との間の角度に関連する奥行きを有する前記対象物体の双眼仮想画像の仮想双眼ピクセルを表示する、請求項1に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項15】
前記見る人の第1の眼及び前記見る人の第2の眼の視軸をそれぞれ決定して、固定位置を決定するアイトラッキング装置をさらに含む、請求項14に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項16】
前記対象物体検出モジュールは、前記対象物体の第1の部分及び第2の部分の複数の画像ピクセルの各々に対する3次元座標を決定する、請求項14に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項17】
前記対象物体の双眼仮想画像が、前記対象物体に重ね合わせるように表示される、請求項14に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項18】
環境光が前記見る人の眼に入るのを実質的に減らすシャッターをさらに含む、請求項14に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項19】
前記シャッターは、前記第1のコンバイナ及び前記第2のコンバイナの透明度を低下させることによって作動される、請求項18に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項20】
前記固定位置に応じて、前記第1の発光体の投影周波数及び前記第2の発光体の投影周波数を変えて、前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数、及び前記対象物体の第1の部分の第2の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第2の眼の光信号の数をそれぞれ修正する、請求項15に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項21】
前記固定位置に応じて、前記第1の光方向変更器のスイング周波数及び前記第2の光方向変更器のスイング周波数を変えて、前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数、及び前記対象物体の第1の部分の第2の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第2の眼の光信号の数をそれぞれ修正する、請求項15に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項22】
前記固定位置に応じて、前記第1の発光体の投影周波数及び前記第2の発光体の投影周波数を変えて、前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数、及び前記対象物体の第1の部分の第2の眼の仮想画像に対する前記1度あたりの複数の第2の眼の光信号の数をそれぞれ修正する、請求項15に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項23】
前記固定位置に応じて、前記複数の第1の眼の光信号の各々に対する前記第1の発光体の投影持続時間、及び前記複数の第2の眼の光信号の各々に対する前記第2の発光体の投影持続時間を変えて、前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像に対する複数の第1の眼の光信号のスポットサイズ、及び前記対象物体の第1の部分の第2の眼の仮想画像に対する複数の第2の眼の光信号のスポットサイズをそれぞれ修正する、請求項15に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【請求項24】
前記固定位置に応じて、前記第1の光方向変更器と前記第1のコリメータとの間の第1の距離、及び前記第2の光方向変更器と前記第2のコリメータとの間の第2の距離を変えて、前記対象物体の第1の部分の第1の眼の仮想画像に対する複数の第1の眼の光信号のスポットサイズ、及び前記対象物体の第1の部分の第2の眼の仮想画像に対する複数の第2の眼の光信号のスポットサイズをそれぞれ修正する、請求項15に記載のヘッドウェアラブルディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、“AR/VR SYSTEM AND METHOD FOR IMPROVING VISUAL CAPABILITY”と題され、2021年2月8日に出願された米国仮特許出願第63/147,214号、及び“SYSTEM AND METHOD FOR IMPROVING VISUAL ACUITY IN AR/VR ENVIRONMENT”と題され、2021年7月1日に出願された米国仮特許出願第63/217,297号の優先権を主張する。
【0002】
加えて“VIRTUAL IMAGE DISPLAY SYSTEM FOR VIRTUAL REALITY AND AUGMENTED REALITY DEVICES”と題され、2021年9月30日に出願されたPCT国際出願PCT/US21/52750、“SYSTEM AND METHOD FOR DISPLAYING AN OBJECT WITH DEPTHS”と題され、2020年11月6日に出願されたPCT国際出願PCT/US2020/059317は、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0003】
本発明は、視力を高めるシステム及び方法に関し;より具体的には、複数のものを有する仮想画像において1.0を超える機械支援視覚力をもたらし得るシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
視覚能力は、ヒトの眼の解剖学的形態によって制限されることが多くある。特に、眼の水晶体の屈折ディオプター、眼球の軸長、並びに、角膜及び網膜の状態等のパラメータが視覚能力に大きく影響する。一般市場で入手可能な、通常より高い視覚能力を達成するためのマシンビジョンは提供されていない。さらに近年では、視力障害を有する人々の能力向上のために、多くの産業分野に対してマシンビジョンが開発及び適応されている。特に、緑内障及び近視性黄斑症等の失明又は視力障害状態の患者を支援するために、マシンビジョンは医療分野に応用されてきた。例えば、ピクセル化された画像の拡張は、患者が見ている物体の強度又はコントラストを高めることによって、視力回復において患者を支援することができる。しかし、これは、患者の視覚を部分的にしか修復できない。
【0005】
従って、日常使用に便利で、通常のヒトの視覚を超える視覚力をユーザに提供することによって、ヒトの自然な視覚に部分的又は実質的に代わる/それを強化することができる、ヘッドウェアラブルディスプレイ装置/システムを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のアイデアは、ヘッドウェアラブルディスプレイシステム/装置(例えば、ARメガネ若しくはVRゴーグル等)又は網膜スキャン装置において光信号スキャンベースの発光デバイスを使用して、視覚能力のない又は視覚障害を有する人々が通常の生活に戻るのを支援することである。特に、本発明は、見る人によって見られることになる対象物体又は見る人を取り巻く環境のリアルタイム画像情報をキャプチャすることができ、見る人に奥行き知覚を持たせる3次元デジタル(又はピクセル化)画像を再現する。さらに、本発明は、従来の処方眼鏡に代わって、近視又は老眼等を有する人々のために視力矯正を行うことができる。本発明はまた、視力を改善し、健常者の通常の視覚能力を超えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当該ヘッドウェアラブルディスプレイシステムは、対象物体検出モジュール、第1の発光体、第1の光方向変更器、第1のコリメータ、及び第1のコンバイナを含む。対象物体検出モジュールは、対象物体の第1の部分及び第2の部分の複数の画像ピクセルを受け取る。対象物体は、見る人の周囲環境、周囲環境の一部、又は周囲環境内の物体等であってもよい。第1の発光体は、対象物体に関連する複数の第1の眼の光信号を発する。例えば、複数の第1の眼の光信号は、見る人がヘッドウェアラブルディスプレイシステムを介して対象物体の第1の眼の仮想画像を見ることができるように、対象物体の画像ピクセルを直接再現することができる。第1の発光体は、ピクセル化された画像を作成するために光パルスを生成する能力を有し得る。一部の例において、発光体は、赤色レーザーダイオード、緑色レーザーダイオード、及び青色レーザーダイオードを含んでもよい。第1の光方向変更器は、第1の発光体によって発せられた複数の第1の眼の光信号を受信し、第1の発光体から発せられた複数の第1の眼の光信号の光の方向を変える。第1の光方向変更器の周期的スキャン動作を介して画像が作成されて、期間内の画像フレームを作成するように、光の方向を、複数の空間次元において時間に関して変えることができる。本発明において言及される光方向変更器は、時間に関して発光体によって発せられる光の方向を動的に変化させる能力を有する機械的又は光学的要素を指してもよい。第1のコリメータは、第1の発光体からの複数の第1の眼の光信号をコリメートするために、第1の発光体と第1の光方向変更器との間に提供されてもよい。別の実施形態において、第1のコリメータは、第1の光方向変更器と第1のコンバイナとの間に提供されてもよい。さらに、第1のコリメータは、第1の眼の光信号の光路長を変化させることができる。
【0008】
第1のコンバイナは、見る人の第1の眼に複数の第1の眼の光信号を向け直し且つ収束させるために提供される。一部の実施形態において、第1のコンバイナは、第1の光方向変更器から複数の第1の眼の光信号を受信し、見る人の第1の眼に複数の第1の眼の光信号を向け且つ収束させる。第1の光方向変更器は、角度範囲内で回転する、又は線形変位の範囲内で動くことができる。複数の第1の眼の光信号の光の方向も、特定の範囲内で変えられ;第1のコンバイナが第1の光方向変更器100から複数の第1の眼の光信号を受信すると、第1のコンバイナは、見る人の第1の眼に、異なる入射角を有するそれぞれの第1の眼の光信号を向ける。複数の第1の眼の光信号は、ヘッドウェアラブルディスプレイシステムによって生成される最大FOVに等しい、所定の範囲の入射角で見る人の第1の眼に向けられる。一部の実施形態では、網膜に投影される第1の眼の光信号のスポットサイズは、光方向変更器と第1のコリメータとの距離を変化させることを介して操作することができる。
【0009】
一実施形態では、スポットサイズを、単一ピクセルの投影持続時間を変えることによって調整することができる。その結果、スポットサイズをリアルタイムで調整して、異なる視力(VA)設定に対するレイリー基準を満たすことができる。本実施形態の一部の異形では、異なる行又は列のピクセルにおける同じピクセル又は画像ピクセルを繰り返し投影することによって、投影持続時間を効果的に長くすることができる。
【0010】
本発明の一実施形態によると、光方向変更器が方向を変える速度を修正して、投影される2つの隣接する光信号間の距離を変えることができる。本発明の一実施形態では、任意の2つの隣接する第1の眼の光信号の間にギャップがほとんど又は全く存在しないように、複数の第1の眼の光信号のスポットサイズを小さくすることができ;それによって、光方向変更器のスイング周波数又は発光体の放射周波数を変化させる必要がなくなる。
【0011】
本発明の別の実施形態では、FOAの単位角度あたり(例えば、1度あたり)より多くの数の光信号で、仮想画像フレームの一部のみが投影される。
【0012】
一部の実施形態において、本発明は、視力矯正又はビジョントレーニングのためのヘッドウェアラブル装置として実装することができる。本発明は、限定されることなく、近視、遠視、斜視、弱視、及び輻輳障害等の眼障害を矯正又は改善するために使用することができる。
【0013】
本発明は、対象物体又はその周囲環境のリアルタイム画像ピクセルをキャプチャし、AR/VRシステムの見る人に対して画質を高めた3次元デジタル画像を再現することができる。本発明の見る人は、通常の視力よりも良好な視力(例えば、20/20の視力以上又はVA1.0以上等)を達成するように画質を調整することができる。さらに、本発明は、視覚障害を有する人々を助ける、又は、近視又は遠視の人々に対して視力矯正を行う従来の処方眼鏡に代わることができる。本発明は、医療従事者、軍人、精密加工産業部門、航空宇宙パイロット、法執行人、救急救助人、及びアスリート等によって使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】レイリー基準の概略図である。
図2】異なる投影面におけるスポットサイズの変化を説明した概略図である。
図3】本発明の第1の実施形態によるディスプレイシステムの概略図である。
図4A】コリメータの位置を変化させた場合の効果を説明した概略図である。
図4B】コリメータの位置を変化させた場合の効果を説明した別の概略図である。
図5A】スポットサイズに対する発光持続時間を変化させた場合の効果を説明した概略図である。
図5B】スポットサイズに対する発光持続時間を変化させた場合の効果を説明した別の概略図である。
図6】FOVに対する隣接する光信号間の空間的分離を変化させた場合の効果を説明した概略図である。
図7】隣接する光信号間の空間的分離を変化させた場合の一実施形態を説明した概略図である。
図8】VAを変化させるために光方向変更器のスイング周波数を変化させた場合の一実施形態を説明した概略図である。
図9】本発明の別の実施形態によるディスプレイシステムの概略図である。
図10】本発明の別の実施形態によるディスプレイシステムの別の概略図である。
図11】本発明の別の実施形態によるディスプレイシステムの別の概略図である。
図12】本発明の別の実施形態によるディスプレイシステムの別の概略図である。
図13】本発明による光学アセンブリの一実施形態の概略図である。
図14】本発明による光学アセンブリの一実施形態の別の概略図である。
図15】本発明の用途を記載するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に示される記載において使用されている用語は、技術の特定の具体的な実施形態の詳細な説明と併せて使用されるとしても、その最も広範で合理的な様式で解釈されることを意図している。特定の用語が、以下において強調されることさえある;しかし、任意の制限された様式で解釈されることを意図したいかなる用語も、この詳細な説明の章においてそのようなものとして具体的に定義される。
【0016】
一態様において、本発明は、ヒトの視力を増加させ、健常者の通常の視覚能力(スーパービジョン)を超えることを目的とする。別の態様において、本発明は、近視又は乱視等の視覚障害を有する人々のために改善された視覚を提供するか、又は視覚を改善するために、障害を有する眼を訓練するのに寄与する。さらに別の態様において、本発明は、失明又は他の重度の視覚障害を有する人々に対する視覚に実質的に代わることができる。本発明は、見る人のヒトの視力を向上させる補助装置として役立ち得る。場合によっては、本発明は、眼の障害を有する人々のために、ヒトの眼の機能に部分的又はほぼ完全に代わることができる。さらに、眼の障害を有する見る人のために、本発明のシステム及び方法は、眼のダメージを受けた又は損なわれた組織を迂回し、見る人の網膜の健康な部分に鮮明な画像を提供することができる。本発明は、見る人の眼球の軸長及び角膜及び網膜の状態を考慮し、それらを本発明の設計に組み込む;それによって、様々なユーザに対して最良のユーザビリティを提供する。加えて、見る人が最高度のリアリズムを知覚することができるように、本発明は、複数の又は連続的な奥行き知覚を提供することができる。本発明は、近く又は遠くの対象物体の複数の画像ピクセルを受け取り、見る人に対してより高い視力で対象物体の仮想画像を再現することができる。
【0017】
「視力」という語句は、見る人による視野(FOV)の分(arc minute)において区別することができるクリティカルギャップの数に関連している。視力(VA)の一般的な定義は、以下の式:
視力=1/ギャップサイズ(分);及び
1分=1度の1/60
によって与えられる。
【0018】
1.0(又は20/20)の視力に対して、見る人の眼は視野(FOV)の1分以内でコントラストパターン(例えば、白黒パターン等)を区別することができる必要がある。言い換えると、1.0の視力に対して、見る人の眼は、視野の1度以内で60のコントラストパターンを区別することができる。例えば、視野の2分以内でしかコントラストパターンを区別することができない場合、視力は0.5である;さらに、視野の0.5分以内でしかコントラストパターンを区別することができない場合、視力は2である。本発明において記載される視力は、FOVの1/60度である1分の範囲内で、網膜に対して区別可能/分離可能なピクセルの数に関連している。言い換えると、ピクセル化されたディスプレイシステムで(VA1.0である)通常の視力よりも優れた視力を達成するために、目標は、視野の1度あたりの網膜に対する区別可能なピクセルの数を増加させた対象物体の少なくとも一部の画像を見る人に投影することである;又は、目標は、FOVの1度あたりに60を超える区別可能な網膜に対する光信号/ピクセルを有する対象物体の画像を投影することである。本発明は、見る人のために1.0より大きいVAで対象物体の少なくとも一部の仮想画像を生成することができるように設計されている。従って、本願の一部の例において、目標は、そのような仮想画像の少なくとも一部を有するFOVの1度あたり網膜に対して120(VA2.0)又は180(VA3.0)を超える区別可能な光信号/ピクセルを有する対象物体の仮想画像を投影することである。すなわち、可能な限り最良の視力を達成するために、ディスプレイシステムは、FOVの1度あたり可能な限り最大数の区別可能/分離可能なピクセルを見る人の眼の網膜に投影しなければならない。2つの隣接する(近くの)光信号/ピクセル間の空間的分離によって、それらが網膜上で区別可能/分離可能かどうかが決定される。網膜(又は見る人の眼の他の部分)上の2つの隣接する(近くの)光信号/ピクセル間の空間的分離は、光路の断面上の任意の2つの隣接する光信号/ピクセルの中心間の空間距離によって測定することができる。そのような空間距離は、2つの隣接する光信号が分離可能であるための基準を満たす必要がある。従って、視野の1分の範囲以内で網膜に対して増加した数の分離可能な光信号(区別可能なピクセル)を投影するためには、視野の1分の範囲以内でより分離可能な光信号を含有することができるように、網膜上の光信号/ピクセルのスポットサイズを制御する必要があり、通常は小さくする必要がある。
【0019】
図1を参照すると、本発明によって見る人のために仮想画像において再現されることを意図した対象物体の距離及びサイズにかかわらず、対象物体の仮想画像は見る人の網膜上で分解される必要がある。より具体的には、仮想画像を生成する光信号(光パルス信号又は光ビーム信号)は、区別可能/分離可能であるために分解され得る2つの光信号間の最小分離に対する仕様として知られるレイリー基準を満たす必要がある。ピクセル化されたディスプレイシステムにおいて、光信号は、仮想画像を生成するピクセルに対応する。例えば、各光信号は、対象物体の仮想画像のピクセルを含んでもよい。さらに、各光信号は、光路の断面(例えば、見る人の眼の網膜)に投影されたときに、ほぼ円形又は楕円形の断面積(「スポットサイズ」としても知られる)を有してもよい。レイリー基準によると、2つの光信号が分解するのを可能にするために、2つの隣接する光信号の中心間の空間距離/分離は、隣接する光信号の最大直径の半分(ほぼ半分のスポットサイズ)を超える必要がある。上記の理由に基づき、VAを増加させるためには、視野の単位内の(例えば、1度あたりの)光信号の数を増やすことが望ましいけれども、2つの隣接する光信号が区別可能/分離可能であるためには、2つの隣接する光信号間の分離を維持して、レイリー基準を満たす必要がある。FOVの1度あたりの光信号の数のみ(分解能の概念に類似している)は、見る人に対するVAを増加させる必要はない。システムはまた、光信号の適切なスポットサイズ、及び2つの隣接する光信号の中心間の空間距離/分離を維持して、それらを、区別可能/分離可能な光信号にしなければならない。
【0020】
光信号のスポットサイズは、分散角、及び発光体と光路の断面(投影面)との距離に関連している。図2を参照すると、光路全体を通して一定の分散角αで、発光体と投影面との距離が大きくなるに従い、投影面に投影されるスポットサイズは大きくなる(平面1上のスポットサイズは平面2上のスポットサイズよりも小さい)。同様に、一定の発光体と投影面との距離で、分散角が大きくなるに従い、スポットサイズは大きくなる。本発明では、眼に入る光信号の最終的な分散角、及び発光体と見る人の網膜との光路長を、いくつかの方法を用いて修正することができ、これは、以下においてさらに詳細に記載される。
【0021】
視力を向上させるためには、ピクセル密度を高くする必要があり、さらに、任意の2つの隣接する光信号は「分解される」(区別可能/分離可能である)必要がある。ピクセル密度は、単位面積に投影される光信号(例えば、ピクセル等)の数であり、FOVの単位角度(例えば、1度あたり)に比例する。
【0022】
本発明では、視力を向上させるためのシステム及び方法は、網膜上に仮想画像フレームを作成するように、(1度で測定される)FOVの単位角度で投影される分解され且つ分離可能な光信号の数を増加させることである。本発明の一実施形態では、視力を向上させるためのシステム及び方法は、AR/VRメガネ、ゴーグル、及びヘルメット、又は他の類似の市販の機器若しくは医療機器等、ヘッドウェアラブルディスプレイシステムとして実装することができる。一部の他の例では、本発明を、他の据え置き型の又はヘッドウェアラブルではないディスプレイ装置に適用することができる。以下では、本発明の実施形態を説明する目的でヘッドウェアラブルディスプレイシステムを使用し;さらに、ヘッドウェアラブルディスプレイシステムは、見る人にピクセル化された仮想画像を提供することができ;従って、発光体によって投影される光信号は、仮想画像のピクセルに対応し得る。しかし、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図3を参照すると、ヘッドウェアラブルディスプレイシステムは、対象物体検出モジュール300、第1の発光体10、第1の光方向変更器100、第1のコリメータ1000、及び第1のコンバイナ20を含む。対象物体検出モジュール300は、対象物体の第1の部分及び第2の部分の複数の画像ピクセルを受け取る。対象物体は、見る人の周囲環境、周囲環境の一部、又は周囲環境内の特定の物体であってもよい。対象物体検出モジュール300は、対象物体又は対象物体の少なくとも一部の奥行きを決定するための距離検出ユニット301をさらに含んでもよい。対象物体の3次元仮想画像をレンダリングするために、対象物体検出モジュール300は、対象物体上の複数の点を測定し、対象物体の3次元プロファイルを作成することができ得るため、対象物体の3次元仮想画像を後に生成することができる。
【0024】
対象物体検出モジュールは、様々な視野角から複数の画像ピクセルを受け取るためのものである。各対象物体検出モジュールは、対象物体検出モジュールの取り付け構造を介してヘッドウェアラブルディスプレイ装置のフレームの受け位置に取り付けられてもよく、受け位置は調整可能である。一実施形態では、対象物体検出モジュールを、取り付け構造を介して動かして、受け位置又は視野角を調整することができる。取り付け構造は、対象物体検出モジュールの視野角を調整するためにヒンジ結合を含んでもよい。対象物体検出モジュールは、取り付け構造を介してフレームに電気的に接続されて、電力供給を受ける又はデータを送信する。一部の実施形態において、標的物体検出モジュールは、様々な用途に対して、広角レンズ、ズームレンズ、魚眼レンズ、又は多目的レンズを組み込んだカメラであり得る。加えて、カメラは、光学カメラに限定されず、温度を測定するための赤外線カメラ、奥行きを測定するための距離イメージングセンサ(飛行時間型カメラ等)、及び他の物理パラメータ測定センシングモジュールも含む。
【0025】
一部の実施形態において、対象物体検出モジュールは回転可能である。対象物体検出モジュールは、第1の対象物体検出モジュール及び第2のイメージングモジュールを含んでもよい。この実施形態において、対象物体検出モジュールは、ユーザ又は環境の画像をキャプチャし、さらに、画像を認識するように処理する。
【0026】
第1の発光体10は、対象物体に関連している複数の第1の眼の光信号を発する。例えば、複数の第1の眼の光信号は、ヘッドウェアラブルディスプレイシステムを介して、見る人のために対象物体の第1の部分及び第2の部分の第1の眼の仮想画像を生成することができる。第1の発光体10は、ピクセル化された仮想画像を作成するために光パルスを生成する能力を有してもよい。例えば、第1の発光体10は、一度に光信号又はピクセルを発する能力を有するレーザーエミッターであってもよい。一例として、発光体は、赤色レーザーダイオード、緑色レーザーダイオード、及び青色レーザーダイオードを含んでもよい。第1の光方向変更器100は、第1の発光体10によって発せられた複数の第1の眼の光信号を受信し、これら複数の第1の眼の光信号の光の方向を変える。期間内に画像フレームを作成するために、第1の光方向変更器100の周期的なスキャン動作を介して画像が作成されるように、光の方向は、複数の空間次元において時間に関して変えられてもよい。本発明における光方向変更器は、発光体によって発せられる光の方向を時間に関して動的に変化させる能力を有する機械的又は光学的要素を指し得る。その例は、1次元、2次元、及び3次元の微小電気機械システム(MEMS)ミラーであってもよいが、これに限定されない。第1のコリメータ1000は、第1の発光体10からの複数の第1の眼の光信号をコリメートするために、第1の発光体10と第1の光方向変更器100との間に提供されてもよい。別の実施形態において、第1のコリメータ1000は、第1の光方向変更器100と第1のコンバイナ20との間に提供されてもよい。さらに、第1のコリメータ1000は、複数の第1の眼の光信号が互いから分離可能であるように、複数の第1の眼の光信号の各々のビームウエスト位置を調整することができる。
【0027】
第1のコンバイナ20は、見る人の第1の眼に複数の第1の眼の光信号を向け直し且つ収束させるために提供される。第1の眼は、見る人の右眼又は左眼であってもよい。一部の実施形態において、第1のコンバイナ20は、第1の光方向変更器100から複数の第1の眼の光信号を受信し、見る人の第1の眼50に複数の第1の眼の光信号を向け直し且つ収束させる。より具体的には、一例として、第1の光方向変更器100は、角度範囲内で回転するか、又は線形変位の範囲内で動くことができる。その結果、複数の第1の眼の光信号の光の方向も特定の範囲内で変えられる;第1のコンバイナ20が、第1の光方向変更器100から(それぞれが異なる入射角を有する)複数の第1の眼の光信号を受信すると、第1のコンバイナ20は、見る人の第1の眼50に、異なる入射角を有するそれぞれの第1の眼の光信号を向け直す。第1の光方向変更器100の回転又は線形変位は予め決定されているため、その結果、複数の第1の眼の光信号は、ヘッドウェアラブルディスプレイシステムによって生成される最大FOVに等しい予め決定された範囲の入射角で見る人の第1の眼50に向け直される。
【0028】
本発明の一部の実施形態において、ヘッドウェアラブルディスプレイシステムは、コンバイナのピッチ及びロール(水平方向及び垂直方向に沿った回転角度)を調整することができるように、コンバイナに対して2軸設計を有してもよい。さらに、個々の見る人の瞳孔間距離に合わせるように、コンバイナのX、Y、及びZの位置を調整することもできる。一部の他の実施形態において、コンバイナのX、Y、及びZの位置を、個々の見る人に対して調整することもできる。
【0029】
図4A~4Bを参照すると、第1のコンバイナ20から第1の眼50まで移動する第1の眼の光信号の各々の分散角αによって、見る人の網膜上にレンダリングされる光信号のスポットサイズが決定される。分散角が大きくなるに従い、スポットサイズは大きくなり、その逆も同様である。一実施形態によると、網膜に投影される第1の眼の光信号のスポットサイズは、第1の光方向変更器100と第1のコリメータ1000との距離を変化させることによって修正することができる。図4A~4Bを参照すると、図は、第1の光方向変更器100と第1のコリメータ1000との距離を変化させることが、どのようにスポットサイズに影響するかを説明している。図中の光ビームは、第1の発光体10によって投影された単一の第1の眼の光信号の光路を表している。第1の発光体10から見る人の第1の眼50まで移動する第1の眼の光信号の光路(ライトパス)全体を通して、第1の眼の光信号の光ビームはいくつかの発散/収束サイクルを経る。光ビームの断面積(スポットサイズに等しい)は、光路の異なる位置に沿って変わる。言い換えると、光路の位置によってスポットサイズは異なる。発光体と見る人の眼との間の全光路を変化させることによって、見る人の網膜に投影される断面積は変えられ、それによって、スポットサイズを変化させている。見る人の眼によって知覚されるスポットサイズは、眼の全体のジオプトリー度数、軸長、網膜の状態等、それぞれ個々の見る人の眼の仕様にも依存し得ることが明らかであり、異なるユーザ/見る人に対して初期較正が行われる場合には、これらの因子を考慮する必要がある。図4A及び4Bの両方において、第1の眼の光信号は、第1のコンバイナ20から出た後に徐々に収束するが、異なる位置においてビームウエスト(ビームの断面積が最小である場所)を形成する。図4Aにおいて、光信号は第1のコンバイナ20に入射する前にビームウエストを離れた後に発散する。光信号は、見る人の第1の眼50に入る前に、第1のコンバイナ20によって反射された後で、再び収束する。図4Bにおいては、ビームウエストは、第1のコンバイナ20と見る人の第1の眼50との間に形成されている。その結果、これら2つの図では、見る人の第1の眼50に提供される第1の眼の光信号のスポットサイズは異なる。この実施形態では、第1のコリメータ1000の位置を変化させることによってビームウエストの位置を調整することができるため、見る人の第1の眼50(例えば、網膜等)に投影される複数の第1の眼の光信号のスポットサイズは、レイリー基準に従って複数の第1の眼の光信号が分離可能であり且つ分解されるように調整される。一部の他の例では、ビームウエストの位置(それによって、スポットサイズ)は、第1の光方向変更器100と第1のコリメータ1000との距離を変化させることによって調整することができる。明らかに、第1の光方向変更器100と第1のコリメータ1000との距離を操作することによって、異なる眼の状態を有する見る人に対して、最も適したスポットサイズ及びビーム分離を評価及び決定することができる。一般に、コリメータ及びコンバイナの曲率は、これらのパラメータがスポットサイズにも影響を与え得るため、ユーザごとにカスタマイズすることができる。さらに、これら2つの図のスポットサイズは異なるため、2つの隣接する第1の眼の光信号の中心間の空間距離/分離がレイリー基準を満たすかどうかは変わり得る。
【0030】
以下においては、見る人のFOVにおける1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数を修正して、見る人によって知覚されるVAを変化させるいくつかの方法について記載される。これらの方法には、光信号のスポットサイズだけでなく、隣接する光信号間の空間的分離を修正することが含まれる。
【0031】
図5A及び5Bを参照すると、一実施形態において、スポットサイズは、(例えば、制御ソフトウェアによって)単一のピクセルの投影持続時間を変えることによって調整することができる。発光体は、一度に画像の1つの光信号/ピクセルを投影することによって、画像フレームを生成し;次に、発光体(固定)は、光方向変更器の動き(図示せず)を介して、投影の位置を変えて、新しい位置において別のピクセルの画像を生成する。従って、光信号の投影持続時間を短くすると、光方向変更器の回転方向におけるピクセルの幅は狭くなり;光信号の投影持続時間を長くすると、光方向変更器の回転方向におけるピクセルの幅は広くなる。その結果、スポットサイズをリアルタイムで調整して、様々なVA設定に対して、レイリー基準を満たすことができる。本実施形態の一部の異形では、異なる行又は列のピクセルにおける同じピクセル又は画像ピクセルを繰り返し投影することによって、投影持続時間を効果的に長くすることができる。図5Aにおいて、発光パルスは、図5Bと比較してより長い投影持続時間を有している。図5Aと5Bとの間の光方向変更器の同じスイング周波数では、投影持続時間が長くなると、光信号がより広い領域にわたって掃引するのが可能になり、これは、光信号に対するスポットサイズを大きくする。
【0032】
スポットサイズを変化させることによって、各光信号間のギャップも変化するということを考慮すると、各光信号間の距離の増減に対処する必要がある。以下においては、各光信号間のギャップを変化させるための異なる実施形態について記載される。
【0033】
本発明の一実施形態によると、光方向変更器が方向を変化させる割合(すなわち、スイング周波数)を修正して、投影される各光信号間の距離を変えることができる。上述のように、本発明における光方向変更器は、(例えば、2次元MEMSミラー等)1つの軸又は2つの別々の軸において光の方向を変化させることができてもよい。一例として、2次元MEMSミラーは、両軸において高速で、約30°までの光走査角まで光信号を偏向させることができてもよい。しかし、一方の軸における最大走査角(主走査軸)が、もう一方の軸(副走査軸)よりも大きいことがある。MEMSミラーに異なる駆動電圧/電磁場の周波数及び異なる駆動電圧/電磁場の振幅をそれぞれ印加することよって、MEMSミラーのスイング周波数又はスイング振幅を制御することができ、これは、当技術分野では容易に良く知られる。この実施形態によると、第1の光方向変更器100は、複数の第1の眼の光信号の第1の座標成分又は第2の座標成分を、非一定のスイング周波数(又は、光方向変更器が基準に対して回転するか又は動く速さであるスウィングレート)で変える。第1の座標成分又は第2の座標成分は、デカルト座標系ではx座標成分又はy座標成分、又は、極座標系ではθ座標成分及びφ座標成分であってもよい。本発明が、より高いVA設定で画像を表示する場合、光信号のスポットサイズを小さくすることができる。隣接する光信号の各々をより小さい角変位で投影することができるように、第1の光方向変更器100のスウィングレートを小さくすることができ、これは、次に、見る人の網膜に投影される光信号をより近くさせる(図6を参照)。その結果、FOAの単位角度あたり(例えば、1度あたり)の投影される光信号の数が増加し、見る人によって知覚されるVAを増加させる。光方向変更器のスイング角は一定であり、従って、同じフレームサイズを有するが光信号密度がより大きい仮想画像フレームが生成される。
【0034】
図6において示されているように、画像投影に対して同じフレームレートを維持しながらスイング周波数の減少に対処するために、光方向変更器の走査面積を小さくすることができる。これは、次に、投影された光信号の各々の中心間の空間的分離が減少した後で、FOVを減少させる。しかし、FOVの減少は、実際にはVAを向上させることができる。
【0035】
図7において示されているように、本発明の一実施形態では、複数の第1の眼の光信号のスポットサイズを、任意の2つの隣接する第1の眼の光信号間にギャップがほとんど又は全く存在しないように修正することができる。光信号が光路の断面に投影されると、スポットエリアが作成される。光路の断面上の2つの隣接する光信号の各々のスポットエリアは、図7において示されているように、互いにほぼ隣接している。それによって、光方向変更器のスイング周波数又は発光体の放射周波数を変化させる必要はない。しかし、この実施形態では、最小スポットサイズが制限されるため、最大VAが制限され得る。
【0036】
十分なフレームレートを維持するために、本発明の別の実施形態では、仮想画像フレームの一部のみが、FOAの単位角度あたり(例えば、1度あたり)より多くの光信号で投影される(これは、より高いVAである)。本実施形態の背景にあるアイデアは、ヒトの眼が対象物体を見ると、眼の視軸が対象物体に向けられ、対象物体の画像を(網膜のうち最も敏感な部分である)眼の黄斑部に集中させることであり;従って、対象物体は視覚の中心のFOVにあるように見える。画像内の対象物体と比較して、画像の他の部分は、光への感度が低い網膜の他の部分に投影される可能性があるため、鮮明さが低下することがある。上記のヒトの視力の性質に基づき、本実施形態は、対象物体の仮想画像のフレームの(中心部分である)第1の部分を表す中心のFOV(又は第1のFOV)に、対象物体の仮想画像のフレームの(周辺部分である)第2の部分を表す周辺のFOV(又は第2のFOV)と比較して、FOVの1度あたりより多い数の光信号を提供するため、本発明のユーザは、より高いピクセル密度(より高い視力)で対象物体の中心のFOVを見ることができ;いずれにせよヒトの眼は周辺のFOVにおいてより高品質な画像を知覚することはできないため、対象物体の周辺のFOVにおける画像は、中心のFOVほど鮮明である必要はない。言い換えると、第1のFOV内の対象物体の第1の部分は、第2のFOV内の対象物体の第2の部分の仮想画像よりも、1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数が多い。一実施形態では、中心のFOVにおいて投影される光信号(又はピクセル)の数は、第1の発光体10が中心のFOVに対して光信号を投影しているときに、光方向変更器のスイング周波数を変えることによって操作することができる。スイング周波数を変えることに加えて、中心のFOVにおいて投影される光信号(又はピクセル)の数は、上述のように、光信号の投影周波数又は投影持続時間を修正することによって、さらに変えることができる。これらの方法を実施することによって、発光体がフレームを生成するまでにかかる時間(フレームレート)を、より高速で保つことができる。この方法によって作成された結果として生じる仮想画像は、不均一のピクセル密度を有することになる。
【0037】
一例として、(スイング周波数がデフォルト値である)通常の状態では、第1の発光体10及び第1の光方向変更器100は、第1の空間範囲(例えば、水平方向に40度、又は垂直方向に22.5度)内のデフォルト解像度(例えば、1280×720ピクセル等)から構成される画像フレームを形成する能力を有してもよい。本開示において言及されている空間範囲は、第1の座標成分及び第2の座標成分の両方においての範囲を表し、これらは、2つの座標で表すことができる。本実施形態において、第1の空間範囲は、第1の眼50のFOVに対応する。第1の画像フレームは、周辺のFOV及び中心のFOVである2つのFOVに分割される。画像フレームの中心のFOVには、周辺のFOVと比較して、FOVの単位角度において(例えば、1度あたり)より多くの数の光信号が提供される(高光信号/ピクセル密度が網膜上に投影される)ことになる。一例として、両方の座標成分における中心のFOVは、両方の座標成分におけるFOV全体の10度として設定されてもよく;両側の周辺のFOVは、FOV全体の15度であるように設定されてもよい。見る人がより高いVA設定を選ぶと、中心のFOVにおける光信号のスポットサイズは小さくなることがあり;その間、各光信号間のギャップの増加を補正することに応答して、光方向変更器のスイングレートを減少させることができる。周辺のFOV内の光信号は、光方向変更器のデフォルトスイング周波数でデフォルトスポットサイズを有して生成することができる。その結果、見る人は、画像フレームF1内の周辺のFOVよりも中心のFOVにおいて多くのものが均一ではないことを知覚することができる。図8を参照すると、以下は、(例えば、水平方向又は垂直方向等)1つの座標成分におけるピクセル密度を変えるための1つの具体的な例を実証している。この例では、一方向におけるFOV全体が40度であってもよく、中心のFOVは、中心のFOVの10度であるように設定されてもよく、フレームごとに表示されることになるデフォルトの合計解像度は1280×720である。目標VAが2.0の場合、中心のFOVにおいてVA=2.0に必要とされるピクセルの総数は:
60×2×10=1200ピクセル
である(ここで、60はVA=1.0に必要とされるFOVの1度あたりのピクセルの数である)。
【0038】
FOVの残り(周辺のFOV)に対して、ピクセルの密度は元のピクセル密度と同じままである。周辺のFOVにおける上記の方向でのピクセルの総数は、
1280×30/40=960ピクセル
VA=960/30/60=0.53
である。
【0039】
第1の画像フレームの形成中に、第1の光方向変更器100は連続的に回転し、第1の発光体10の投影方向を変化させて、行ごと又は列ごとの様式で第1の画像フレームを生成する。特に、第1の発光体10は、一度に1つのピクセルの画像を投影することによって、第1の画像フレームを生成し;次に、第1の光方向変更器100は、第1の眼の光信号1000の方向を変えて、新しい位置において別のピクセルの画像を生成する。新しい位置は、前のピクセルの画像の横に水平又は垂直に右になることが多くある。従って、ある期間の後に、第1の発光体10は、ピクセル画像の行又はピクセル画像の列(例えば、1280×1又は1×720等)を生成する。次に、第1の光方向変更器100は、第1の眼の光信号1000の方向を次の行又は列に変化させ、ピクセル画像の第2の行又は第2の列を生成し続ける。このプロセスは、完全な画像フレームが生成される(例えば、1280×720のピクセル画像を完成させる)まで繰り返される。
【0040】
一部の実施形態では、一定の発光体の光の投影周波数で、光方向変更器のスイング周波数を減らして、光方向変更器の副走査方向においてピクセル密度を(隣接するピクセル間の空間的分離を減らすことによって)増やすことができる。主走査方向におけるピクセル密度を高くするために、発光体の光投影周波数を増やすことができる。一例として、光方向変更器のスイング周波数を1/2減らして、副走査方向におけるピクセルの数を720pから1440pまで増やすことができる。光投影周波数を2倍増やして、主走査方向におけるピクセルの数を720pから1440pまで増やすことができる。
【0041】
他の例では、水平方向及び垂直方向の両方における光方向変更器のスイング周波数をFOVの異なる領域に従って変えることができるように、2つの1次元光方向変更器を実装することが有益であり得る。上述のように、水平方向及び垂直方向における光方向変更器のスイング周波数は、水平方向及び垂直方向の位置に従って変えられる。より高い密度のピクセル若しくは画像ピクセルを中心のFOVにおいて投影する(次に、中心のFOVにおいてVAを増加する)ことができるように、中心のFOVにおいて画像を投影しながら、投影速度を増加することができる、及び/又は、水平方向及び垂直方向の両方における光方向変更器のスイング周波数を減少させることができる。投影の速度及び/又は両方向における光方向変更器のスイング周波数は、周辺のFOVにおいて正常に戻ることができる。
【0042】
上記の実施形態の異形では、中心のFOVにおける画像はより高いVAで生成され得るが、発光体は、周辺のVAに関連するいかなる光信号も発しない。特に、ARのヘッドウェアラブルディスプレイシステムでは、対象物体(例えば、より遠い距離にある対象等)の一部のみを見る人が選択して、より高いVAで表示することができ;対象物体の他の部分は見る人が自然な視覚で見ることができる。従って、FOV全体のうちごく一部のみが、FOV内の1度あたりより多くの数の光信号で表示される必要があり、残りのFOVは、FOVあたり0の光信号で表示される。より小さいFOVが光方向変更器によってスキャンされる必要があるため、フレームレートは比較的高く維持されてもよい。
【0043】
上述のように、通常のヒトの視力を超える視力を達成するためには、見る人の網膜に投影されるFOVあたりの分解される光信号の数を増やす必要がある。これを達成するために、以下の因子、すなわち:見る人の網膜に投影される光信号のスポットサイズ;見る人によって知覚されるFOVのサイズ、及び各光信号間の空間的分離;が本発明によって考慮される。本発明の一実施形態において、スポットサイズは、網膜に投影されたピクセルの各々のサイズに関連する。スポットサイズが大きすぎる、又は、隣接するピクセル間の空間的分離(例えば、隣接するピクセルの中心間の空間的分離、又は隣接するピクセルの端間の空間的分離等)が小さすぎる場合、ピクセルは互いに重なり、さらに、ピクセル若しくはイメージを未分解にさせることがあり;一方で、スポットサイズが小さすぎる、又は各ピクセル間のギャップが大きすぎる場合、FOVの単位角度内(又は、次に、網膜の領域内)に詰め込むことができるピクセルの総数は減少する。いずれの場合も、VAは低下する。例として、以下の表は、VAと上記の主要な要因との関係を例示している。レーザープロジェクターが、この例では発光体として使用される。本発明におけるレーザープロジェクターの解像度は、典型的には、1280×720又は1920×1080ピクセルである。しかし、発光体の解像度は、これらの値に限定されない。以下の表に示されているデータは、実験結果に基づいている。
【0044】
【表1】
上記の表によると、1のVAを達成するためには、必要とされる視野の1度内の分解される(レイリー基準を満たす)ピクセルの数は60である。1280×720pの解像度をもたらす能力を有するレーザープロジェクターが使用される場合、2.0のVAをもたらすためには、10.67度のFOV内で分解される必要がるピクセルの数は120である。3.0のVAに対しては、180ピクセルが、7.1度のFOV内で分解される必要がある。4.0のVAに対しては、240ピクセルが、5.33度のFOV内で分解される必要がある。1920×1080pの解像度をもたらす能力を有するレーザープロジェクターが使用される場合、2.0のVAをもたらすためには、120ピクセルが16度のFOV内で分解される必要がある。4.0のVAに対しては、240ピクセルが、8度のFOV内で分解される必要がある。
【0045】
さらに、正常な視覚を超えるVAを達成するためには、コンバイナの適切な曲率(それによって、焦点距離)が、様々なユーザに合うように選択される必要がある。選択されると、所望のVA設定を体験することができる見る人に対して、適切なスポットサイズで光信号を投影するように、光方向変更器とコリメータとの距離を調整することができる。
【0046】
以下は、本発明の例示的な実装を記載している。ヘッドウェアラブルディスプレイシステムは、通常のヒトの視覚よりも高い(例えば、VA1.0よりも高い)視覚能力を得るために、見る人による視覚補助として使用されてもよい。対象物体検出モジュール300は、対象物体の複数の画像ピクセルをキャプチャする。画像ピクセルは、対象物体の物理的サイズに応じて、対象物体の一部又は対象物体全体に関連し得る。対象物体の各部分は、見る人に対して可変の位置及び奥行きを有することがあるため、対象物体検出モジュール300は、対象物体の少なくとも一部の距離又は対応する奥行きを決定する。本願をより良く理解するために、見る人の周囲環境に同じ物理的サイズを有する2つの物体があると仮定して、いずれも見る人によって見られる場合、見る人から遠い(より奥行きがある)ものが、見る人に近い(奥行きが少ない)ものと比較して、FOV全体のうちより小さい部分を占める。見る人により近い物体と同じ詳細さで、見る人からより遠い物体を見るために、見る人からより遠い物体は、(例えば、VA1.0を超える)より高いVAで表示される必要がある。従って、上述したように、奥行きの異なる対象物体の異なる部分の仮想画像をレンダリングするためには、複数の光信号の各々の分散角と、対象物体の画像をレンダリングする任意の2つの隣接する光信号の中心間の空間的分離とを、奥行きの変化に従って修正する必要がある。さらに、本明細書において言及される対象物体とは、見る人の周囲環境又は周囲環境内の個々の物体を指し得る。対象物体が見る人のFOV全体のうち比較的大きな部分を占める場合、対象物体の仮想画像は、複数のFOVに分割されることがある。対象物体の異なる部分の奥行きに応じて、対象物体の第1の部分を含有する第1の視野内の1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数は、対象物体の第2の部分を含有する第2の視野内の1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数を超えてもよい。この実施形態において、第1の視野及び第2の視野は、対象物体の異なる部分をそれぞれ表すことができる。
【0047】
上述の実施形態の異形において、見る人に相対的に対象物体が動いている場合、対象物体検出モジュール300は動いている対象物体の画像ピクセルをキャプチャする。対象物体検出モジュール300の距離検出ユニット301は、周囲の動いている対象物体の距離又は奥行きを動的に決定する。動いている対象物体の仮想画像のFOVは、動いている対象物体の位置に従って変わる。複数の光信号の各々の分散角と、動いている対象物体の画像をレンダリングする任意の2つの隣接する光信号の中心間の空間的分離とは、FOVの変化を補うために物体の奥行きに従って修正する必要がある。その結果、(例えば、対象物体が遠くにある場合の)対象物体の第1の視野における1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数は、(例えば、対象物体が近くにある場合の)対象物体の第2の視野における1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数を超えてもよい。この実施形態において、第1の視野及び第2の視野は、動いている対象物体の異なる時間における異なる仮想画像をそれぞれ表すことができる。
【0048】
本発明の別の態様は、高いVAの(VA1.0よりも高い)対象物体の一部又は対象物体の画像を奥行き知覚で生成する能力である。
【0049】
図9を参照すると、一部の実施形態において、本発明は、第1の光プロジェクター1、第1の光方向変更器100、第1のコリメータ1000を含む第1の光プロジェクト1、及び第1のコンバイナを含む。加えて、本発明は、複数の第1の眼の光信号に対応する複数の第2の眼の光信号を発して対象物体の第2の眼の仮想画像を表示する第2の光プロジェクター3;複数の第2の眼の光信号が互いから分離可能であるように、複数の第2の眼の光信号の各々のビームウエスト位置を調整するための第2のコリメータ3000;第2の光プロジェクター3から発せられる複数の第2の眼の光信号の各々の光の方向を変える第2の光方向変更器300;を含む第2の光プロジェクト3をさらに含む。本発明は、見る人の第2の眼60に複数の第2の眼の光信号を向け直し且つ収束させるための第2のコンバイナ40をさらに含む。第2の光プロジェクター3、第2のコリメータ3000、第2の光方向変更器300、及び第2のコンバイナ40は、それらの対応するものとして機能が類似している。一例として、複数の第2の眼の光信号が見る人の左眼に提供され、さらに、複数の第1の眼の光信号が見る人の右眼に提供される(又はその逆も可能である)。複数の第2の眼の光信号の各々は、対応する第1の眼の光信号を有し;すなわち、第1の眼の光信号及び対応する第2の眼の光信号は融合して、双眼仮想画像の仮想双眼ピクセルを生成する。第1の眼の光信号の各々及び第2の眼の光信号の各々は、第1の眼50及び第2の眼60に入るそれぞれの入射角を有する。さらに、第2の光プロジェクター3、第2のコリメータ3000、第2の光方向変更器300、及び第2のコンバイナ40は、複数の第2の眼の光信号のビームウエストの位置と、それらの対応するものと類似の隣接する第2の眼の光信号間の空間的分離とを変化させることによって、スポットサイズを変化させることができる。第1の眼50及び第2の眼60は、第1の眼の光信号と、対応する第2の眼の光信号とを知覚して双眼視覚を生成し、そこでは、第1の眼の光信号と、対応する第2の眼の光信号とが融合して、見る人のための双眼ピクセルを形成する。特に、本実施形態では、図10及び11を参照すると、第1の光プロジェクター1によって発せられ、第1のコンバイナ20から向き直された第1の眼の光信号が、見る人の第1の眼50に入る。第2の光プロジェクター3によって発せられ、第2のコンバイナ20から向き直された対応する第2の眼の光信号が、見る人の第2の眼に入る。第1の眼の光信号及び第2の眼の光信号は、見る人によって知覚されて、向き直された第1の眼の光信号及び向き直された第2の眼の光信号の光路延長間の第1の角度(θ1)に関連する第1の奥行き(d1)を有して物体70の仮想双眼ピクセル72が表示される。より具体的には、第1及び第2のコンバイナ40の反対側の第1の眼の光信号及び第2の眼の光信号のライトパスの延長は、位置P1において仮想的に収束する。第1の眼の光信号及び第2の眼の光信号の2つの光路の延長間の第1の角度θ1が大きくなると、見る人によって知覚される第1の奥行きd1は減少し;一方で、第1の角度θ1が小さくなると、見る人によって知覚される第1の奥行きd1は増加する。第1の仮想双眼ピクセル72の第1の奥行きd1は、以下の式
【0050】
【数1】
によって近似計算することができる。
【0051】
図9~12を参照すると、上記の画像フレームを形成する方法を適用しながら、第1の画像フレームF1内のピクセル及び対応する第2の画像フレームF2内のピクセルは、見る人の眼に投影される第1の眼の光信号と第2の眼の光信号との間の第1の角度に関連する第1の奥行きにおいて、仮想双眼ピクセルを形成する。複数の光信号を受信すると、見る人は、コンバイナからの向き直された第2の眼の光信号の延長による境界のある領域Aにおける物体に対する第1の画像フレームF1内の複数の右ピクセルを知覚する。領域Aは、第2の眼50に対する視野(FOV)と呼ばれる。同様に、第2の画像フレームF2内の複数の第1の眼の光信号は、第1のコンバイナ20によって向き直され、左の瞳孔62の中心を通過し、さらに、最終的には左の網膜64によって受けられる。向き直された第1の眼の光信号を受信すると、見る人は、向き直された第1の眼の光信号の延長による境界のある領域Bにおける物体に対する複数の左ピクセルを知覚する。領域Bは、第1の眼50に対する視野(FOV)と呼ばれる。領域Aと領域Bとが重なる領域Cに、第1の画像フレームF1からの複数の右のピクセルと第2の画像フレームF2からの左のピクセルの両方が表示されている場合、1つの右のピクセルを表示する少なくとも1つの第2の眼の光信号と、対応する1つの左のピクセルを表示する第1の眼の光信号とを融合させて、領域Cにおいて特定の奥行きを有して仮想双眼ピクセルを表示する。奥行きは、向き直された第2の眼の光信号と向き直された第1の眼の光信号の角度に関連している。そのような角度は収束角とも呼ばれる。
【0052】
図9~12をさらに参照すると、上記のように、複数の第2の眼の光信号は、第2の光プロジェクト3によって生成され、第2のコンバイナ40によって向き直され、次に、右の網膜上に直接スキャンされて、右の網膜上に右の網膜画像が形成される。同様に、複数の第1の眼の光信号は、第1の光プロジェクト1によって生成され、第1のコンバイナ20によって向き直され、次に、左の網膜上にスキャンされて、左の網膜上に左の網膜画像が形成される。一実施形態において、右の網膜画像は、6×6アレイにおける第1の画像フレームF1からの36の右のピクセルを有し、左の網膜画像も、6×6アレイにおける第2の画像フレームF2からの36の左のピクセルを有する(図11)。別の実施形態では、右の網膜画像は、1280×720アレイにおける第1の画像フレームF1からの921,600の右のピクセルを有し、左の網膜画像も、1280×720アレイにおける第2の画像フレームF2からの921,600の左のピクセルを有する。この物体表示システムは、複数の第2の眼の光信号と、対応する複数の第1の眼の光信号とを生成するように構成されており、それぞれ、右の網膜上に右の網膜画像と左の網膜上に左の網膜画像とを形成する。その結果、見る人は、画像融合のため領域Cにおいて特定の奥行きを有する仮想双眼物体を知覚する。第2の光プロジェクト10からの第1の第2の眼の光信号16は、第2のコンバイナ40によって受信及び反射される。第1の向き直された第2の眼の光信号16′は、右の瞳孔52を通って、見る人の右の網膜に到達して、右のピクセルR34を表示する。第1の光プロジェクト1からの対応する第1の眼の光信号36は、第1のコンバイナ20によって受信及び反射される。第1の向き直された光信号36′は、左の瞳孔62を通って、見る人の左の網膜に到達して、左の網膜のピクセルL33を表示する。画像融合の結果として、見る人は、複数の奥行きを有する仮想双眼物体を知覚し、その奥行きは、同じ物体に対する複数の向き直された第2の眼の光信号と、対応する複数の向き直された第1の眼の光信号の角度によって決定される。向き直された第2の眼の光信号と対応する第1の眼の光信号との角度は、右のピクセル及び左のピクセルの相対的な水平距離によって決定される。言い換えると、見る人によって知覚される仮想双眼ピクセルの奥行きが大きいほど、そのような仮想双眼ピクセルを形成する右のピクセルと左のピクセルとの間のX軸における相対的な水平距離は小さくなる。例えば、第2の仮想双眼ピクセル74は、第1の仮想双眼ピクセル72よりも大きな奥行きを有する(すなわち、見る人から遠く離れる)ように見る人によって認識される。従って、網膜画像上では、第2の右のピクセルと第2の左のピクセルとの水平距離は、第1の右のピクセルと第1の左のピクセルとの水平距離よりも小さくなる。
【0053】
上記の実施形態の異形において、本発明によるヘッドウェアラブルディスプレイシステムは、見る人の両眼を覆う単一のコンバイナを有してもよい。コンバイナの曲率は、複数の第1の眼の光信号及び第2の眼の光信号を受信し且つ収束させ、それぞれ見る人の第1の眼50及び見る人の第2の眼60に導くように設計されている。複数の第2の眼の光信号の各々は、第1のコンバイナ20から見る人の第2の眼60まで移動するときに分散角を有している。
【0054】
上述の方法では、AR環境において、複数の第1の眼の光信号及び第2の眼の光信号から成る、対象物体の一部(例えば、対象物体内の物体等)の仮想画像を、複数の奥行きを有してレンダリングすることができるため、見る人は、その仮想画像を最もリアルに(奥行き知覚及び3D効果を有して)見ることができる。さらに、周囲の一部の異なる点の複数の奥行きに基づき、補足として周囲の一部の実像に仮想画像を重ねることができるため、見る人は、より高いVAで周囲の一部を見ることができる。この実施形態では、対象物体検出モジュール300のユニットによってキャプチャされたビデオ情報を、見る人によって見られる画像に重ね合わせることができる(参照によりその全体を本明細書において援用する米国特許仮出願第63/074444において言及されている通りである)。別の実施形態では、本発明はVRシステムとして実装され、見る人の視覚は、VRシステムによって与えられるビデオ情報に完全に依存し得る。
【0055】
上記の実施形態では、アイトラッキング装置302が、見る人の第1の眼50及び見る人の第2の眼の固定位置をそれぞれ決定することができる。アイトラッキング装置302は、見る人の両瞳孔の位置を少なくとも追跡するように構成される。加えて、アイトラッキング装置は、限定されることなく、見る人の各眼の眼の動き、瞳孔のサイズ、凝視角(視野角)、及び輻輳角を含む、見る人の眼に関するより多くの情報を提供するように構成されてもよい。そのような眼の情報を使用して、仮想物体に対する光信号を投影する方向及び位置だけでなく、見る人の固定位置及び固定深度も決定することができる。アイトラッキング装置は、第1の眼50を追跡する第1のカメラと、第2の眼60を追跡する第2のカメラとを含んでもよい。従来のアイトラッキングカメラに加えて、第1のカメラ及び第2のカメラは、超小型微小電気機械システム(MEMS)の技術によって構築することができる。第1のカメラ及び第2のカメラは、赤外エミッタ及びセンサを使用して、様々な眼の情報を検出及び取得することができる。アイトラッキング装置302は、加速度計、ジャイロスコープ、及び場合によっては磁力計の組み合わせを使用して、体の特定力、角速度、及び場合によっては体の向きを測定及び報告する電子デバイスである一体化された慣性計測ユニット(IMU)をさらに含んでもよい。以下は、通常のヒトの視覚よりも高い(例えば、VA1.0よりも高い)視覚能力を得るために、見る人の第1の眼及び第2の眼の両方に発光体、コリメータ、光方向変更器、及びコンバイナが提供される本発明の例証的な実施について記載する。アイトラッキング装置302は、見る人の固定位置を決定して、見る人が見ている対象物体の一部を決定する。対象物体検出モジュール300は、対象物体の複数の画像ピクセルをキャプチャする。複数の画像ピクセルは、対象物体の一部又は対象物体全体に関連し得る。対象物体の各部分は、見る人に対して可変の位置及び奥行きを有してもよいため、対象物体検出モジュール300は、見る人が固定されている対象物体の少なくとも一部の距離又は対応する奥行きを決定する。上記のように、異なる奥行きを有する対象物体の異なる部分の仮想画像をレンダリングするためには、複数の光信号の各々の分散角と、物体の画像をレンダリングする任意の2つの隣接する光信号の中心間の空間的分離とを、奥行きの変化に従って修正する必要がある。さらに、本明細書において言及される対象物体は、見る人の周囲環境又は周囲環境内の個々の物体を指し得る。対象物体又は対象物体の一部が、見る人のFOV全体のうち比較的大きな部分を占める場合、対象物体の仮想画像は、複数のFOVに分割され得る。対象物体の固定位置に応じて、対象物体の第1の部分を有する第1の視野における1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数(1度あたりの第1の眼の光信号の数でもある)は、対象物体の第2の部分を有する第2の視野における1度あたりの複数の第1の眼の光信号の数を超えることがあり;一方、対象物体の第1の部分を有する第3の視野における1度あたりの複数の第2の眼の光信号の数(1度あたりの第2の眼の光信号の数でもある)は、対象物体の第2の部分を有する第4の視野における1度あたりの複数の第2の眼の光信号の数を超えることがある。第1の眼の第1の視野は、第2の眼の第3の視野に対応し、いずれも対象物体の第1の部分をレンダリングする。第1の眼の第2の視野は、第2の眼の第4の視野に対応し、いずれも対象物体の第2の部分をレンダリングする。この実施形態では、複数の第1の眼の光信号及び第2の眼の光信号のスポットサイズ及び空間的分離は、見る人の位置固定に従って動的に修正される。
【0056】
上述の複数の光信号の各々の分散角と、対象物体の画像をレンダリングする任意の2つの隣接する光信号の中心間の空間的分離とは、上述の方法に従って;すなわち、発光体の投影持続時間、コンバイナとコリメータとの距離、発光体の投影周波数、及び光方向変更器のスイング周波数を修正することによって、修正することができる。実際には、異なる3次元位置(奥行きを含む)を有する異なる物体又は対象物体の異なる部分を見るための固定位置を、見る人の両眼で常に変化させることができる。又は、場合によっては、見る人の両眼が、動く物体に固定されてもよく、従って、見る人は、固定位置を常に変化させる必要がある。従って、発光体の投影持続時間、コンバイナとコリメータとの距離、発光体の投影周波数、及び光方向変更器のスイング周波数は、固定位置に従って動的に修正される必要があり得る(それによって、物体の奥行きは、見る人によって固定されている)。
【0057】
図13~14を参照すると、さらに、本実施形態の他の異形では、複数の光信号の光路の所定の断面の領域を変えるために、上述の発光体とコリメータとの間に光学アセンブリを配置することができる。具体的には、レンズを有する光学アセンブリが、第1の発光体10から第1のコンバイナ20への複数の第1の眼の光信号1000の光路を変えて、複数の第1の眼の光信号の各々の投影面積又は断面サイズ(すなわちスポットサイズ)を変化させるために実装されてもよい。例えば、図13を参照すると、光学アセンブリは、レンズ_1とレンズ_2とを含む。レンズ_1及びレンズ_2は、凸レンズである。発光体は、元々は、レンズ_1の焦点距離に置かれる。レンズ_1が、レンズ_1´と示されている新しい位置まで動かされると、発光体とレンズ_1との距離は長くなり;その結果、LBSからの光発散角の量が増加する。それによって、複数の第1の眼の光信号1000の各々の投影面積又は断面サイズも大きくなり、これは、光信号のスポットサイズを大きくさせる。別の実施形態では、図14を参照すると、光学アセンブリは、レンズ_1、レンズ_2、及びLBSを含む。レンズ_1及びレンズ_2は、凸レンズである。発光体は、レンズ_1の焦点距離に置かれるため、発光体によって発せられた光信号は、レンズ_1を通過した後に実質的に平行な光信号になる。このモードでは、レンズ_2の焦点距離を選択してFOVを減らすことができる。一例として、レンズ_2の焦点距離を、50mmから100mmまで変化させる(及び、瞳孔をレンズ_2から100mm離して、レンズ_2の焦点に置く)と、FOVを半分まで減らすことができる。本発明がヘッドウェアラブルデバイス又はAR/VRメガネの形で実現される場合、コンバイナとしてレンズ_2を実装することができる。しかし、他の実施形態では、レンズ_2を他の光学素子として実装することもできる。
【0058】
一部の実施形態では、FOVをさらに改善するために、図13及び図14において示されている方法を、互いに排除することなく同時に実施することができる。本発明がヘッドウェアラブルデバイス又はAR/VRメガネの形で実現される場合、コンバイナとしてレンズ_2を実装することができる。しかし、他の実施形態では、レンズ_2を他の光学素子として実装することもできる。
【0059】
本発明は、角膜及び網膜の障害(例えば、加齢黄斑変性等)を有する見る人を支援することができる。眼の状態が正常な人々にとって、光を受けるのに最良の領域は黄斑部分であり;しかし、黄斑変性又は他の眼疾患を有する人々の中には、眼の他の領域が、光を感知して画像ピクセルを受け取るために好ましいことがある。従って、本発明を使用して、網膜のうち健康な領域に光信号を投影し、見る人が見るための周囲の画像を生成することができる。本発明を実施する前に、角膜形状解析及び網膜周囲を使用して、見る人の眼に光信号が投影されるために最良の光路及び位置を見つけることができる。一方で、最も欠損の少ない角膜の領域に入って、最も欠損の少ない網膜の部分に光を投影するための最良の入射角を特定する必要がある。この機能を達成するために、コンバイナは楕円形の凹面を有するように、及び/又はカスタマイズされた反射角を有するように設計することができる。
【0060】
本発明では、コンバイナ210、410は、発光体10、30によって生成された複数の光信号を受信し、向け直し、且つ収束させる。一実施形態では、コンバイナ210、410は複数の光信号を反射するため、向き直された光信号は、コンバイナ210、410のうち、入射光信号と同じ側にある。別の実施形態では、コンバイナ210、410は、複数の光信号を屈折させるため、向き直された光信号は、コンバイナ210、410のうち、入射光信号とは異なる側にある。コンバイナ210、410が屈折器としても機能する場合、コンバイナの反射率は、光信号発生器の出力に部分的に依存して、20%~80%等、大きく変わり得る。当業者は、発光体10、30及びコンバイナ210,410の特性に基づき適切な反射率を決定する方法を知っている。さらに、一実施形態では、コンバイナ210、410は、入射光信号の反対側からの周囲(環境)光に対して光学的に透明である。透明度は、用途に応じて大きく変わり得る。AR/MRの用途では、透明度は、一実施形態では約75%等、50%を超えていることが望ましい。光信号を向き直すことに加えて、コンバイナ210、410は、瞳孔を通過して見る人の両眼の網膜に到達することができるように、コンバイナ画像を形成する複数の光信号を収束させることができる。コンバイナ210、410は、レンズのようなガラス又はプラスチック材料で作製され、部分的に透明及び部分的に反射性にさせる金属等の特定の材料で被覆されてもよい。見る人の眼に光信号を向けるために、従来技術の導波管の代わりに反射コンバイナを使用する1つの利点は、多重影、色変位等の望ましくない回折効果の問題を排除することである。コンバイナ210、410は、ホログラフィックコンバイナであってもよいが、回折効果が多重影及びRGB変位を引き起こす恐れがあるため好ましくない。一部の実施形態において、ホログラフィックコンバイナの使用を避けたい場合がある。環境光の干渉を避けるために、本発明はシャッターを利用して、見る人の眼に環境光が入るのを実質的に減らすことができる。一実施形態では、シャッターは、環境光を遮断するための機械的ユニットであってもよい。別の実施形態では、第1のコンバイナ及び第2のコンバイナ210、410の透明度を低下させることによってシャッターを作動させることができる。
【0061】
一部の実施形態において、本発明は、視力矯正又は視力訓練のためのヘッドウェアラブル装置として実装することができる。本発明は、限定されることなく、近視、遠視、斜視、弱視、及び輻輳障害等の眼障害を矯正又は改善するために使用することができる。上述の疾患の矯正又は改善の原理は、より視覚的な刺激で見る人の眼を標的とすることである。言い換えると、適切な刺激を眼に与えることで、眼の視力及び筋肉の動きの改善を促すことができる。図15を参照すると、一例として、本発明は、近視又は遠視を有する人々の視覚を矯正するために使用することができる。この実施形態では、AR/VRシステムを有するヘッドウェアラブル装置は、対象物体検出モジュール300を介して、見る人によって見られることになる対象物体又は周囲環境のリアルタイム画像ピクセルをキャプチャし、奥行き知覚を有するピクセル化された画像を、見る人に投影することができる。ピクセル化された画像のシステムは、上述の方法によって、所望の位置に焦点を合わせることができる。例えば、画像の焦点を正確に網膜に合わせるために、毛様体筋を刺激して眼のレンズを調整するように、近視を有する人々に対しては網膜のすぐ前で、又は遠視を有する人々に対しては網膜のすぐ後ろで、ピクセル化された画像の焦点を正しく合わせることができる。この方法を使用することによって、眼の筋肉を鍛えることができる。
【0062】
本発明は、対象物体又はその周囲環境のリアルタイム画像ピクセルをキャプチャし、AR/VRシステムの見る人に対して、画質を高めた3次元デジタル画像を再現することができる。本発明の見る人は、通常の視力よりも良好な(例えば、20/20視力又はVA1.0よりも高い)視力を達成するために、画質を調整することができる。さらに、本発明は、視覚障害を有する人々を助けることができる、又は、近視若しくは遠視を有する人々のために視力矯正を行う従来の処方眼鏡に代わることができる。本発明は、医療従事者、軍人、精密加工産業部門、航空宇宙パイロット、法執行人、救急及び救助人、及びアスリート等によって使用されてもよい。
【0063】
例示目的で、本発明の特定の実施形態が詳細に記載されてきたけれども、本開示の真意及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び強化を行うことができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15