IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械エンバイロメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-監視装置 図1
  • 特許-監視装置 図2
  • 特許-監視装置 図3
  • 特許-監視装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】監視装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G05B23/02 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019011565
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020119393
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】大山 健
【審判官】本庄 亮太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-29818(JP,A)
【文献】米国特許第6385558(US,B1)
【文献】特開2013-145477(JP,A)
【文献】特開2001-21593(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053774(WO,A1)
【文献】特開2017-91258(JP,A)
【文献】特開2017-45307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設備又は機器が設置された対象空間の監視を行う監視装置であって、
前記対象空間の臭気と熱と音を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果を出力する検出結果出力部と、を備え、
前記対象空間は、水処理プラント内における空間であって、
前記検出部は、臭気に関する情報として、アンモニア又は/及び硫黄系化合物に由来する臭気成分を検出し、
前記検出結果出力部の臭気と熱と音に係る出力結果の組み合わせパターンに応じて、前記対象空間内における異常の有無を予測することを特徴とする、監視装置。
【請求項2】
前記検出部で検出する音は、前記対象空間内に設置された回転機器の回転異常に基づく異音であることを特徴とする、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記検出部において対象空間の臭気と熱と音を検出する検出器は一体であることを特徴とする、請求項1に記載の監視装置。
【請求項4】
前記検出部の検出結果に係る情報を外部端末装置に送信する情報通信手段を備えたことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記検出部の検出結果に係る情報のうち、情報として外部出力する内容を選択する指示入力手段を設け、
前記指示入力手段は外部端末装置によって制御可能であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象空間の監視を行う監視装置に関するものである。更に詳しくは、発電プラントや水処理プラント内において設備及び/又は機器が設置された空間の監視を行う監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントでは、設けられた設備や機器を維持管理するために、プラントの運転において特に重要となる一部の設備や機器に対しては、センサー類の指示値や運転データに係る情報を自動で収集する機能を設け、得られた情報を中央監視室などに集積して解析を行い、必要に応じて作業の指示を出すことが行われている。一方、その他の設備や機器については、作業者により設備や機器を直接確認する巡回点検が行われている。
【0003】
作業者による巡回点検においては、作業者が目視でセンサー類の指示値などの情報を読み取り、手書きで記録することも行われていたが、近年、これらのデータを電子的に管理することも行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、プラントに設けられたセンサー類、バルブ類、機器類を含むフィールド機器に固有の識別情報を保持した識別情報保持体と、フィールド機器の点検の際に作業者が用いる点検用の携帯情報端末とを備えるフィールドデータ収集システムが記載されている。このフィールドデータ収集システムは、作業者による巡回点検時に、携帯情報端末が指示計の指示値の読み取りと記憶を行うため、作業者による指示値の読み間違いや誤入力の問題が解消するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-106389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、プラントは、広い敷地の中に様々な目的の設備や機器が多数設置されている。このため、人口減による人手不足、人的コストの面から、作業者による巡回点検の回数自体を減らし、維持管理に係る情報取得に必要な機能を有する機器(監視装置)を用いた監視を行うことが好ましい。
また、特許文献1のように、機器ごとに識別情報保持体を設け、機器別に指示計の指示値の読み取りを行う場合、多種かつ多数な機器に対してそれぞれ識別情報を付与し、さらに識別情報保持体を設置するという作業が必要であり、その作業に係る費用が高額となる。また、収集される情報量も膨大となるため、収集した情報を蓄積、解析するための費用も掛かるという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、多くの設備や機器から個別に情報を収集することと比較して、大幅にコストを低減させることができる監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、設備又は機器ごとの情報ではなく、対象空間における特定の情報を取得することで、監視に係るコストを大幅に削減し、異常の早期検知が可能となることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の監視装置である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の監視装置は、対象空間の監視を行う監視装置であって、対象空間の臭気と熱と音を検出する検出部を備えることを特徴とする。
【0010】
この監視装置によれば、対象空間に対し、臭気と熱と音という特定のパラメータに係る情報を検出するため、情報取得に必要な機器の設置台数は、設備又は機器ごとに情報を得る場合と比べ、格段に少なくすることができる。また、解析対象となる情報量を少なくすることができるため、解析が容易であり、通常時とは異なる状態にあることを早期に検知することができる。これにより、設備又は機器ごとから個別に情報を得ることと比べて、大幅にコストを削減し、異常の早期検知が可能な監視を行うことができる。
【0011】
また、この監視装置によれば、臭気と熱と音というパラメータに係る情報をそれぞれ単独で検出するのではなく、3つのパラメータに係る情報を同時に検出することで、対象空間の状態に係る複合的な情報を得ることができる。これにより、監視時において、対象空間内で生じている事象についての予測が容易となり、異常検知後に速やかな対応を行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明の監視装置の一実施態様としては、対象空間は、複数の設備及び/又は機器が設置された発電プラント又は水処理プラント内における空間であるという特徴を有する。
この特徴によれば、従来の発電プラントや水処理プラントの監視のように、設備や機器ごとに情報を得ることなく、複数の設備及び/又は機器を有する発電プラントや水処理プラント内の空間における臭気と熱と音に係る情報を検出することによる監視を可能とし、監視に係る大幅なコスト減と異常の早期検知が可能な監視を実施することができる。
【0013】
また、本発明の監視装置の一実施態様としては、検出部の検出結果に係る情報を外部端末装置に送信する情報通信手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、作業員が現場に行く点検回数を増やすことなく、管理者が対象空間の状態に係る情報を容易に取得することが可能となる。
【0014】
また、本発明の監視装置の一実施態様としては、検出部の検出結果に係る情報のうち、情報として外部出力する内容を選択する指示入力手段を設け、指示入力手段は外部端末装置によって制御可能であるという特徴を有する。
この特徴によれば、外部端末装置からの入力を介し、管理者が必要とする情報を効率的に得ることが可能となり、監視の効率化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多くの設備や機器から個別に情報を収集することと比較して、大幅にコストを低減させることができる監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施態様の監視装置の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様の監視装置における検出部の構造を示す概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様の他の監視装置における検出部の構造を示す概略説明図である。
図4】本発明の第2の実施態様の監視装置の構造を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る監視装置の実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する監視装置については、本発明に係る監視装置を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の監視装置は、監視を必要とする対象空間に対して使用されるものである。このような対象空間としては、例えば、プラント、倉庫、商業施設など、広い敷地内を監視する必要があるものが挙げられる。また、対象空間は、屋外、屋内のいずれであってもよく、特に限定されない。また、対象空間は、閉空間、開空間のいずれであってもよく、特に限定されない。
【0019】
本発明の監視装置は、複数の設備及び/又は機器が設置されている空間に対して好適に用いられる。また、本発明の監視装置は、発電プラントや水処理プラントに対して特に好適に用いられる。
発電プラントは、電気エネルギーを得ることのできる設備であればよく、特に限定されない。例えば、火力発電、水力発電、再生可能エネルギーによる発電、バイオマスを用いた発電などが挙げられる。
水処理プラントは、水に対する処理を行う設備であればよく、特に限定されない。例えば、浄水場、下水処理場、排水・廃水を処理する排水・廃水処理施設などが挙げられる。
なお、実施態様に記載する対象空間については、本発明に係る監視装置を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0020】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様における監視装置の構造を示す概略説明図である。
本発明の第1の実施態様の監視装置1aは、図1に示すように、対象空間100に設置され、検出部2を有するものである。なお、図1において、一点鎖線で示された矢印は、制御又は入力可能に接続されていることを示す。
【0021】
本実施態様における対象空間100は、複数の機器101a~101cを備えている。機器101a~101cの種類は特に限定されない。例えば、発電プラントや水処理プラントにおけるポンプ、タービン、撹拌機などの回転機器、ボイラなどの熱処理機器、処理槽、電気設備などが挙げられる。なお、図1において、機器101a~101cは配管により接続されているものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、機器101a~101cは、それぞれが独立した機器であってもよい。
【0022】
監視装置1aは、対象空間100内の情報を得ることで監視を行うものであって、機器101a~101cを個別に監視するものではない。したがって、監視装置1aは、対象空間100全体の情報が得られる箇所に設置するものであればよく、機器101a~101cごとに設ける必要はない。
例えば、対象空間100が屋内などの閉空間である場合、天井部や壁面に監視装置1aを設けるものとすることが挙げられる。このとき、天井部中央に設けることで、対象空間100全体の情報を得るものとしてもよく、空調などによって一定の空気の流れが生じている対象空間100内においては、天井部近傍や壁面近傍における空気の流れを考慮し、空気の循環が生じている箇所に監視装置1aを設置するものとしてもよい。
また、例えば、対象空間100が天井部や壁面を有しない屋外などの開空間である場合や、天井部や壁面に監視装置1aを設置することが困難である閉空間である場合、対象空間100の地面から一定の高さを有する架台を設け、架台の上に監視装置1aを設置することが挙げられる。これにより、対象空間100が開空間、閉空間のいずれであっても、監視装置1aを設置することが可能となる。
なお、対象空間100の広さによっては、監視装置1aを複数台設けることで、対象空間100全体の情報が得られる状態とすることが好ましい。この場合、例えば、同一平面上に複数の監視装置1aを設けるものや、設置する高さが異なる状態で複数の監視装置1aを設けるものとすることが挙げられる。
【0023】
検出部2は、対象空間100の臭気と熱と音を検出するためのものである。検出部2は、筐体20内に、臭気を検出する臭気検出部21、熱を検出する熱検出部22、音を検出する音検出部23を備えている。なお、筐体20は、検出部21~23を一体とし、設置を容易とするとともに、検出部21~23の保護部材を兼ねるものである。したがって、検出部21~23の設置箇所や設置環境に応じて、筐体20を省略するものとしてもよい。
また、検出部2は、臭気検出部21、熱検出部22、音検出部23の検出結果を外部に出力する検出結果出力部24を備えている。
【0024】
臭気検出部21は、対象空間100内の臭気を検出するためのものである。
検出対象となる臭気は、特に限定されないが、対象空間100内で異常時に発生することが想定される臭気を対象とすることが好ましい。例えば、対象空間100が下水処理場などの水処理プラントである場合、被処理水である下水に含まれるアンモニアや硫黄系化合物に由来する臭気成分が挙げられる。また、対象空間100が火力発電やバイオマス発電などの発電プラントである場合、燃料やタービンの潤滑油等に用いられる炭化水素系化合物に由来する臭気成分が挙げられる。
【0025】
臭気検出部21としては、例えば、対象空間100内で発生する臭気として特定の単成分(例えば、アンモニア、メチルメルカプタン等の特定悪臭物質)を測定する臭気測定器や、複合成分(例えば、硫黄系化合物類、炭化水素系化合物類、アルデヒド類、低級脂肪酸類等)を測定する臭気測定器が挙げられる。また、成分を特定せず、広義の臭気を検出するものとして、脂質膜や半導体を利用したにおいセンサーが挙げられる。
【0026】
熱検出部22は、対象空間100内の熱を検出するためのものである。
検出対象となる熱は、特に限定されないが、例えば、対象空間100内の気温(室温)や、局所的に発生する熱を対象とすることが挙げられる。特に、対象空間100が多数の機器を備えるプラント(水処理プラントや発電プラント)である場合、熱源となり得るものが多く存在する。したがって、対象空間100全体の気温や、機器又は配管などの局所的な過熱状態を検出対象とすることが好ましい。
【0027】
熱検出部22としては、例えば、対象空間100全体の気温(室温)変化を測定するものとして、バイメタル式温度計や熱膨張式温度計が挙げられる。また、対象空間100内で局所的に発生する熱を検出するものとして、熱電対や測温抵抗体を用いた温度センサー、赤外線の検知による温度センサー、サーモカメラなどが挙げられる。
【0028】
音検出部23は、対象空間100内の音を検出するためのものである。
検出対象となる音は、特に限定されないが、対象空間100内で異常時に発生することが想定される音を対象とすることが好ましい。なお、検出対象となる音は、人間が聞くことのできる音だけではなく、振動、超音波なども含むものである。例えば、対象空間100がポンプや撹拌機などの回転機器を備える場合、回転異常に基づく異音(超音波を含む)及び異常振動が挙げられる。また、対象空間100が配管を備える場合、液体や気体のリークによる異音(超音波を含む)が挙げられる。その他には、対象空間100内での部品の落下や変形に伴う異音などが挙げられる。
【0029】
音検出部23としては、音質(周波数)、音量など、音に関する情報を検出することができるものであればよく、例えば、マイクロホン、超音波検出器、振動センサーなどが挙げられる。
【0030】
本実施態様における監視装置1aは、臭気検出部21、熱検出部22、音検出部23を備えることにより、臭気、熱、音というパラメータに係る情報をそれぞれ単独で検出するのではなく、3つのパラメータに係る情報を同時に検出し、対象空間100の状態に係る複合的な情報を得ることができる。
例えば、対象空間100内にある機器101a~101cや機器101a~101cを接続している配管等は、それぞれの機能や構造によって、臭気、熱、音のうち、異常時に変化するパラメータ及びパラメータの変化の程度が異なる。したがって、3つのパラメータがそれぞれどのように変化したのかについての情報を得ることによって、対象空間100内で生じている事象についての予測が容易となり、迅速な異常検知を行うことが可能となる。
【0031】
対象空間100内で生じている事象についての予測の一例を説明する。例えば、音の検出結果に変化がある場合、対象空間100内で生じた異常としては、回転機器の回転異常、配管の異常、部品の落下等が推測されるが、音の検出結果のみで判断することは困難である。ここで、音の検出結果に加えて、臭気、熱の検出結果に変化(異常)がない場合には、対象空間100内で部品の落下が起こったものと予測される。一方、音の検出結果に加えて、臭気の検出結果に変化がなく、局所的な熱の検出結果に変化がある場合には、対象空間100内では回転機器において初期の回転異常が起こっているものと予測される。このように、1つのパラメータに係る情報だけではなく、3つのパラメータに係る情報を複合的に判断することで、対象空間100内で生じている事象についての予測が容易となり、迅速な異常検知を行うとともに、異常検知後に速やかな対応を行うことが可能となる。
具体的な例としては、例えば、対象空間100が発電プラントであり、ボイラ、タービンを備える場合、臭気や音の検出結果よりも熱の検出結果に大幅な変化があれば、ボイラの加熱部に係る異常が予測される。また、臭気、熱及び音の検出結果の変化の程度から、ボイラ内の撹拌部の異常であるのか、タービンの回転異常であるのか、あるいは配管の異常であるのか等を区別して予測することができる。また、例えば、対象空間100が水処理プラントであり、下水や排水・廃水の原水貯留槽や輸送配管を備える場合、熱や音の検出結果よりも臭気の検出結果に大幅な変化があれば、原水貯留槽自体あるいは原水貯留槽に近い輸送配管の異常が予測される。また、臭気、熱及び音の検出結果の変化の程度から、他の処理槽あるいは輸送配管についての異常を予測することができる。
【0032】
検出結果出力部24は、臭気検出部21、熱検出部22、音検出部23のそれぞれにおいて得られた検出結果を外部に出力するためのものである。検出結果出力部24は、臭気検出部21、熱検出部22、音検出部23と接続され、それぞれの検出部21~23の検出結果が入力可能となっている。なお、検出結果出力部24と、各検出部21~23の接続手段は特に限定されない。例えば、配線を介して検出結果を直接入力することができるように接続されているものや、データの送受信が可能な通信手段を介して検出結果を入力することができるように接続されているものが挙げられる。また、図1においては、検出結果出力部24は、検出部21~23全体に対して1つの検出結果出力部24を設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、各検出部21~23ごとに検出結果出力部24を設けるものとしてもよい。
【0033】
検出結果出力部24から出力される検出結果は、対象空間100内に異常が発生しているかどうかを判断するために用いられるものである。例えば、検出結果としては、各検出部21~23における検出の有無に係る情報のみであってもよく、各検出部21~23において測定された測定データに係る情報であってもよい。
以下、検出結果として出力する情報に応じた検出結果出力部24の実施態様の例について、図2及び図3を用いて説明する。
【0034】
図2は、検出結果出力部24から出力される検出結果として、各検出部21~23における検出の有無に係る情報を用いる場合の検出結果出力部24の実施態様の一例である。
対象空間100内において、通常時には臭気、局所的な熱、音のいずれも検出されず、熱検出部22として気温(室温)計を用いない場合、各検出部21~23のいずれかにおいて何らかの検出結果が出た時点で、対象空間100内で異常が発生していると判断される。この場合、検出結果出力部24によって、各検出部21~23のいずれかで検出があったことを出力することで、管理者に異常を知らせることが可能となる。
検出結果出力部24からの出力手段としては、例えば、図2に示すように、警告灯や表示ランプの点灯、又は警告音やメッセージの発信を行う警告部25を介して外部に異常を知らせるものや、データの送受信が可能な情報通信手段26を介して外部端末装置3(中央監視室のパーソナルコンピュータや管理者が携帯する端末等)に情報を通達するものが挙げられる。なお、作業員が現場に行く点検回数を減らすという観点からは、情報通信手段26を介して外部端末装置3に情報を通達することが好ましい。
このとき、検出結果出力部24からの出力は、各検出部21~23の検出の有無に係る情報のみでよいため、検出結果の解析を行う必要がなく、迅速な異常検知を可能とする監視を行うことができる。
【0035】
また、各検出部21~23の検出の有無の組み合わせから、対象空間100内で生じている事象(異常状態)の内容が予測可能である場合、予測結果についても管理者に通達されることが好ましい。
例えば、検出結果出力部24からの出力を受信する外部端末装置3において、出力表示をパターン化し、パターンに応じて対象空間100内で生じている事象について予測可能とすることが挙げられる。具体的な例としては、対象空間100に加熱装置を備える場合において、検出結果出力部24からの出力として、臭気及び音に係る検出がなく(×)、熱に係る検出がある(○)という情報を外部端末装置3が受信した際、外部端末装置3上で「×○×」と表示し、これが対象空間100内の加熱装置の異常が予測される旨の情報であることを直接的あるいは間接的に示すことが挙げられる。なお、対象空間100内で生じている事象についての情報を直接的に示す場合は、外部端末装置3上に、出力表示パターンに応じた対象空間100内の事象についての情報を示すものであってもよく、出力表示パターンに応じて対象空間100内の事象についての情報に自動的に変換されるものであってもよい。また、対象空間100内で生じている事象についての情報を間接的に示す場合は、別途一覧表を作成し、この表と出力表示パターンを管理者が照会するものであってもよい。これにより、監視装置1aにおいて検出結果の解析を行うことなく、対象空間100内の異常に係る内容についての予測を管理者に通達することが可能となる。 なお、他の例としては、後述するように、解析部27及び判断部28を介し、各検出部21~23の検出結果と、対象空間100内で生じている事象についての情報とを照会し、検出結果出力部24からの出力として、予測される対象空間100内の事象の内容について併せて出力するものとしてもよい。具体的な例としては、対象空間100に加熱装置を備える場合において、臭気及び音に係る検出がなく、熱に係る検出があるものについて、解析部27内のデータベース27aの情報に基づき、加熱装置の異常が予測される旨の情報を併せて出力することが挙げられる。これにより、対象空間100内で生じている事象について精度の高い予測結果を管理者に通達することが可能となる。
【0036】
図3は、検出結果出力部24から出力される検出結果として、各検出部21~23において測定された測定データに係る情報を用いる場合の検出結果出力部24の実施態様の一例である。
対象空間100内において、通常時においても、臭気、音が発生しており、熱検出部22として気温(室温)計を用いる場合、各検出部21~23において検出結果が出ただけでは、対象空間100内で異常が発生しているかどうかの判断は困難である。この場合、検出結果出力部24において、各検出部21~23において測定された測定データに係る情報を出力し、解析を行う必要がある。
図3に示すように、検出結果出力部24は、解析部27と判断部28を備えるものである。
【0037】
解析部27は、検出結果出力部24からの測定データを基に解析を行うものである。
判断部28は、解析部27の解析結果に基づき、対象空間100内における異常の有無を判断し、判断結果を出力するものである。
解析部27及び判断部28は、例えば、数値、画像データの比較に必要なプログラムをCPU等のプロセッサにより実行する計算装置である。
以下、解析部27及び判断部28で行う解析及び判断の内容について例示する。
【0038】
まず、解析部27における解析の内容としては、例えば、解析部27に、対象空間100内の通常時における臭気、熱、音に係る情報を保管したデータベース27aを備え、検出結果出力部24からの測定データと、データベース27aの情報を比較することが挙げられる。これにより、通常時に臭気、熱、音の発生があるような対象空間100内においても、異常時の発生を精度よく検知することが可能となる。この解析は、例えば、対象空間100が多数の設備及び機器を備えるプラントである場合において、特に好適である。
【0039】
データベース27aで保管する情報は、あらかじめ対象空間100内の通常時における臭気、熱、音に係る情報を測定した実測値であってもよく、管理者が入力した設定値であってもよい。また、データベース27aで保管する情報は、検出結果出力部24から得られる情報に応じたデータ形式で保管することが好ましい。例えば、数値、波形(画像)などのデジタルデータに変換可能な形式が好ましい。
データベース27aで保管する情報としては、臭気、熱、音に係る検出の組み合わせによって予測される対象空間100内で生じている事象についての情報を含むものとしてもよい。これにより、検出結果出力部24から得られる情報と、対象空間100内で生じている事象についての予測に係る情報とを照らし合わせ、対象空間100内の異常の内容に係る判断を行うことができる。
データベース27aは、デジタルデータの保管を行うためのROMや、情報を外部から入力するための入力手段を有することが好ましい。これにより、データベース27a内の情報の保管、更新が容易となり、解析部27における作業性が向上する。
【0040】
また、解析部27における他の解析の内容としては、検出結果出力部24から出力された測定データと、その1つ前に出力された測定データとを比較することが挙げられる。この場合、データベース27aを設ける必要がない。この解析は、例えば、対象空間100の異常時に、臭気、熱、音のいずれかが急激に変動する場合において、特に好適である。
【0041】
そして、解析部27における比較結果に基づき、判断部28において、対象空間100内において異常が発生しているか否かを判断し、判断結果の出力を行う。判断の内容は、例えば、比較結果が許容(誤差)範囲以上に異なる場合や、測定データ同士の差分が所定値を超えた場合において、異常が発生していると判断することが挙げられる。また、判断部28において得られた判断結果について、データベース27a内に保管した対象空間100内で生じている事象についての情報との照会を行い、照会した結果を併せて判断結果として出力するものとしてもよい。
なお、判断結果の出力手段については特に限定されない。例えば、上述した警告部25や情報通信手段26により行うものが挙げられる。
【0042】
図2及び図3を用いて説明したように、検出結果出力部24から出力される検出結果の内容と、解析部27及び判断部28における解析及び判断の内容は、対象空間100に応じたものとすることが好ましい。
なお、検出結果出力部24から出力される検出結果の内容と、解析部27及び判断部28における解析及び判断の内容について、外部から選択及び指示に係る入力を行うことができる指示入力手段29を設け、上述した検出結果の内容に係る情報と解析及び判断の内容に係る情報を管理者の判断によって切り替えて出力するものとしてもよい。指示入力手段29としては、出力する情報の内容を選択可能とするものであればよく、特に限定されない。例えば、図3に示すように、外部端末装置3からの入力に基づく制御が可能であり、出力する情報の内容を選択可能とする情報通信機能を有するものや、出力する情報の内容を選択するための入力手段(ボタン、キーボード、タッチパネル等)を筐体20に直接設けるものとしてもよい。なお、作業者が現場に行く点検回数を減らすという観点から、指示入力手段29は、外部端末装置3からの入力に基づき制御可能なものとすることが好ましい。また、情報通信手段26に、指示入力手段29の機能を兼用させるものとしてもよい。
【0043】
また、各検出部21~23ごとに、検出結果出力部24を設けた場合、それぞれの検出対象に応じて、解析部27及び判断部28を設けずに直接警告部25又は情報通信手段26を介して検出結果を出力するものと、解析部27及び判断部28を設けて解析及び判断した結果を出力するものとを併用するものとしてもよい。
例えば、通常時に音は発生するが、臭気及び局所的な熱が発生しない対象空間100において、臭気検出部21と熱検出部22に設けた検出結果出力部24からは検出の有無に係る情報の出力を行い、音検出部23に設けた検出結果出力部24からは測定データの出力を行い、解析部27及び判断部28を介して判断結果の出力を行うものとすることが挙げられる。これにより、解析が必要な情報と解析が不要な情報を分けて出力することが可能となり、異常の検知に係る精度及び判断結果の出力速度を向上させることが可能となる。なお、複数の検出結果出力部24を設けた場合に、全ての検出結果出力部24に解析部27及び判断部28を備え、上述した指示入力手段29により、解析部27及び判断部28を介した出力を行うか否かについて管理者の判断によって切り替えるものとしてもよい。
【0044】
以上のように、本実施態様における監視装置は、対象空間に対し、臭気と熱と音という特定のパラメータに係る情報を検出するため、情報取得に必要な機器の設置台数は、設備や機器ごとに情報を得る場合と比べ、格段に少なくすることができる。また、解析対象となる情報量を少なくすることができるため、解析が容易であり、通常時とは異なる状態にあることを早期に検知することができる。これにより、設備や機器ごとから個別に情報を得ることと比べて、大幅にコストを削減し、異常の早期検知が可能な監視を行うことが可能となる。
【0045】
また、本実施態様における監視装置は、臭気、熱、音というパラメータに係る情報をそれぞれ単独で検出するのではなく、3つのパラメータに係る情報を同時に検出することで、対象空間の状態に係る複合的な情報を得ることができる。これにより、対象空間内で生じている事象についての予測が容易となり、迅速な異常検知及び対応を行うことが可能となる。
【0046】
〔第2の実施態様〕
図4は、本発明の第2の実施態様における監視装置を示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る監視装置1bは、図4に示すように、第1の実施態様に係る監視装置1aにおいて、臭気検出部21、熱検出部22、音検出部23ごとに筐体20a~20cを設けるものである。なお、第1の実施態様の構造と同じものについては、説明を省略する。
【0047】
本実施態様に係る監視装置1bは、各検出部21~23ごとに独立した筐体20a~20cを設け、対象空間100内に個々に配置するものである。
対象空間100内で、臭気、熱、音を検出する際に、それぞれのパラメータを検出するための最適な設置箇所が常に同一とは限らない。したがって、各検出部21~23ごとに独立した筐体20a~20cとすることで、対象空間100内でそれぞれのパラメータ検出に最適な箇所ごとに各検出部21~23を設置するものである。
筐体20a~20cは、各検出部21~23の設置を容易とするとともに、各検出部21~23の保護部材を兼ねるものである。したがって、各検出部21~23の設置箇所や設置環境に応じて、筐体20a~20cを省略するものとしてもよい。
【0048】
本実施態様の監視装置1bにおいては、上述した第1の実施態様における監視装置1aと同様に、検出結果出力部24に対して、警告部25、情報通信手段26、解析部27及び判断部28を設けるものとしてもよい。なお、検出結果出力部24は、各検出部21~23ごとに設けるものとしてもよく、各検出部21~23の検出結果を1つの検出結果出力部24で取りまとめて外部に出力するものであってもよい。同様に、解析部27及び判断部28についても、各検出部21~23ごとに設けた検出結果出力部24に接続するものであってもよく、1つの検出結果出力部24に接続するものであってもよい。
【0049】
また、本実施態様の監視装置1bにおいては、上述した第1の実施態様における監視装置1aと同様に、検出結果出力部24から出力される検出結果の内容と、解析部27及び判断部28における解析及び判断の内容について、外部から選択及び指示に係る入力を行うことができる指示入力手段29を設け、上述した検出結果の内容に係る情報と解析及び判断の内容に係る情報を管理者の判断によって切り替えて出力するものとしてもよい。
【0050】
各検出部21~23の最適な設置箇所は、特に限定されず、検出対象の種類及び特性や、対象空間100の構造に応じて適宜選択することができる。
例えば、対象空間100の検出対象である臭気がアンモニア等の空気より軽い気体であった場合、臭気検出部21は対象空間100内の上方(天井部等)に設けることが挙げられる。一方、対象空間100の検出対象である臭気が硫化水素、メチルメルカプタン等の空気より重い気体であった場合、臭気検出部21は対象空間100内の下方(地面近傍等)に設けることが挙げられる。
また、熱検出部22は、対象空間100内で、熱源となりやすい機器(図4における機器101a)や配管等が集まっている箇所のように、異常発生時において熱に係る検出が予測される箇所の近傍に設けることが挙げられる。
また、音検出部23は、対象空間100内で、回転機器や屈曲した配管等が集まっている箇所(図4における機器101bと機器101cの接続配管)のように、異常発生時において音に係る検出が予測される箇所の近傍に設けることが挙げられる。
これにより、各検出部21~23が検出対象とするパラメータごとに最適な設置箇所で検出を行うことができ、対象空間100内の異常を検知する精度を向上させることが可能となる。
【0051】
なお、上述した実施態様は監視装置の一例を示すものである。本発明に係る監視装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る監視装置を変形してもよい。
【0052】
例えば、本実施態様の監視装置において、検出部を移動可能な構造体に積載し、対象空間内の任意の位置に移動させるものとしてもよい。
移動可能な構造体は、手動で移動させるものであってもよく、外部からのコントロールによって移動させるものであってもよい。また、あらかじめ設定した移動経路に沿って自動で移動するものとしてもよい。移動経路を設定する場合、移動可能な構造体は常時巡回しながら検出を行うようにしてもよく、所定時間ごとに移動、停止、検出の動作を繰り返すものであってもよい。
また、移動可能な構造体は、対象空間内の天井部、壁面又は地面に設けられたガイドレールに沿って移動するものであってもよく、上下左右方向に飛行移動が可能なものであってもよい。
これにより、対象空間内の情報を幅広い箇所で取得することが可能になるとともに、特に重点的に監視を行う必要が生じた箇所に対しても速やかな対応が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の監視装置は、監視が必要な対象空間に対する監視において好適に利用されるものである。特に、多数の設備及び/又は機器を備えるプラントにおける監視において好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0054】
1a,1b 監視装置、2 検出部、20,20a,20b,20c 筐体、21 臭気検出部、22 熱検出部、23 音検出部、24 検出結果出力部、25 警告部、26 情報通信手段、27 解析部、27a データベース、28 判断部、29 指示入力手段、3 外部端末装置、100 対象空間、101a,101b,101c 機器
図1
図2
図3
図4