(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】気象情報収集システム
(51)【国際特許分類】
G01W 1/02 20060101AFI20241210BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01W1/02 A
G08C15/00 E
(21)【出願番号】P 2019045340
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2022-01-27
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107467
【氏名又は名称】員見 正文
(72)【発明者】
【氏名】蔵尾 暢美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和憲
【合議体】
【審判長】南 宏輔
【審判官】瓦井 秀憲
【審判官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203995(JP,A)
【文献】特開2006-215983(JP,A)
【文献】特開2003-57362(JP,A)
【文献】特開2017-51933(JP,A)
【文献】特開2019-9698(JP,A)
【文献】特開2016-76813(JP,A)
【文献】特開2012-189539(JP,A)
【文献】特開2019-12355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00- 1/18
G08C 15/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルが設置されていない家屋を含む一般家屋(1)の屋根上に設置して外気温、湿度、風速および雨量を示す気象情報を観測するための気象情報観測装置(10)と、
前記気象情報を収集するための気象情報収集システムサーバー(20)とを具備し、
前記気象情報観測装置が、前記一般家屋に取り付けられたコンセント(4)に
直接に接続され、該コンセント
から直接供給される商用電源によって作動され、
前記気象情報観測装置が、前記一般家屋に設置されたHEMS(2)に接続され、前記気象情報を該HEMSに送信し、
前記気象情報観測装置から前記HEMSに送信された前記気象情報が、該HEMSおよび前記一般家屋に設置されたスマートメーター(3)を介したネットワークによって前記気象情報収集システムサーバーへ伝送される、
ことを特徴とする、気象情報収集システム。
【請求項2】
前記気象情報観測装置が、
前記外気温および前記湿度を測定するための温湿度計(11)と、
前記風速を測定するための風速計(12)と、
前記雨量を測定するための雨量計(13)と、
前記温湿度計、前記風速計および前記雨量計から入力される測定値に基づいて気象情報を生成するための気象情報生成部(14)と、
前記気象情報生成部によって生成された前記気象情報を前記HEMSに送信するための気象情報送信部(15)と、
を備えることを特徴とする、請求項1記載の気象情報収集システム。
【請求項3】
前記気象情報収集システムサーバーが、前記伝送されてくる気象情報に基づいて収集気象情報(WI)を生成し、該生成した収集気象情報を収集気象情報記憶部(21)に記憶することを特徴とする、請求項2記載の気象情報収集システム。
【請求項4】
前記収集気象情報が、前記スマートメーターの識別番号である計器ID、前記気象情報観測装置の位置情報、前記気象情報の測定日時、温度、湿度、風速および雨量を示すものであることを特徴とする、請求項3記載の気象情報収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より多くの観測地点での気象情報を収集するのに好適な気象情報収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
公的機関が公表する気象情報は観測地点の数に限りがあり、より多くの場所での詳細な気象情報(実測値)を収集することができない。
【0003】
この解決手法として、下記の特許文献1には、温度および気圧を検出するセンサーを有する子機を数百m以下の間隔で設置して、前回の測定データと今回の測定データとの差が所定の閾値を超えると子機が警告表示部に警告表示を行うとともに、子機から受け取って記憶手段に格納した測定データの最大値と最小値との差が所定の閾値を超えると親機が子機へ警告表示を行う指示を送出して子機に警告表示が行われるようにした気象情報警告システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された気象情報警告システムには、以下に示すような課題がある。
(1)子機を道路や道路以外の地面の任意の場所(公園や避難所、広場、田んぼの中や畦、住宅の庭、河川敷内等)に設置する場合には、商用電源を利用できないため、電源装置を大容量キャパシタまたは2次電池と充電用の太陽光パネルとから構成するとともに、閉域通信網通信I/Fを無線LAN等のワイヤレスの閉域通信網用のインタフェースとする必要がある。
(2)気象情報伝送装置の動作電源としてバッテリーを使用すると、定期的なバッテリーの取替えが必要となるため、継続的に維持することが困難となる。
(3)子機を設置するための専用設置スペースを公共地(道路、公園および避難所等)に準備する必要がある。
(4)子機を道路や道路以外の地面の任意の場所に設置する場合には、車両等の他物接触による故障のリスクが高い。
【0006】
本発明の目的は、観測地点を細かく設定できるとともに安定的な電源を確保できる気象情報収集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の気象情報収集システムは、太陽光パネルが設置されていない家屋を含む一般家屋(1)の屋根上に設置して外気温、湿度、風速および雨量を示す気象情報を観測するための気象情報観測装置(10)と、前記気象情報を収集するための気象情報収集システムサーバー(20)とを具備し、前記気象情報観測装置が、前記一般家屋に取り付けられたコンセント(4)に直接に接続され、該コンセントから直接供給される商用電源によって作動され、前記気象情報観測装置が、前記一般家屋に設置されたHEMS(2)に接続され、前記気象情報を該HEMSに送信し、前記気象情報観測装置から前記HEMSに送信された前記気象情報が、該HEMSおよび前記一般家屋に設置されたスマートメーター(3)を介したネットワークによって前記気象情報収集システムサーバーへ伝送されることを特徴とする。
ここで、前記気象情報観測装置が、前記外気温および前記湿度を測定するための温湿度計(11)と、前記風速を測定するための風速計(12)と、前記雨量を測定するための雨量計(13)と、前記温湿度計、前記風速計および前記雨量計から入力される測定値に基づいて気象情報を生成するための気象情報生成部(14)と、前記気象情報生成部によって生成された前記気象情報を前記HEMSに送信するための気象情報送信部(15)とを備えてもよい。
前記気象情報収集システムサーバーが、前記伝送されてくる気象情報に基づいて収集気象情報(WI)を生成し、生成した該収集気象情報を収集気象情報記憶部(21)に記憶してもよい。
前記収集気象情報が、前記スマートメーターの識別番号である計器ID、前記気象情報観測装置の位置情報、前記気象情報の測定日時、温度、湿度、風速および雨量を示すものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の気象情報収集システムは、以下に示す効果を奏する。
(1)気象情報観測装置を一般家屋の屋根上に設置することにより、専用設置スペースを公共地に準備しなくても観測地点を細かく設定することができる。
(2)気象情報観測装置で観測した気象情報をHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)およびスマートメーターを介したネットワークによって気象情報収集システムサーバーへ伝送することにより、気象情報伝送装置の動作電源として商用電源を利用できるため、安定的に電源を確保することができるとともに、維持管理容易性および情報伝送信頼性の向上を図ることができる。
(3)より多くの詳細な気象情報を収集できるため、災害時等の復旧計画や巡視計画に活用することにより安全な計画を策定することができるとともに、集中豪雨等の特定の地域の気象情報をリアルタイムに収集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例による気象情報収集システムについて説明するための図であり、(a)は気象情報観測装置10について説明するための図であり、(b)は気象情報収集システムサーバー20について説明するための図である。
【
図2】
図1(a)に示した気象情報観測装置10の構成について説明するための図である。
【
図3】
図1(b)に示した気象情報収集システムサーバー20によって生成される収集気象情報WIの一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記の目的を、一般家屋の屋根上に設置した気象情報観測装置によって観測した気象情報をHEMSおよびスマートメーターを介したネットワークによって気象情報収集システムサーバーへ伝送して収集することにより実現した。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の気象情報収集システムの実施例について図面を参照して説明する。
本発明の気象情報収集システムは、以下に示す特徴を有する。
(1)観測地点を細かく設定するために、気象情報観測装置を一般家屋(集合住宅を含む。)の屋根上に設置する。
(2)気象情報伝送装置の動作電源として商用電源を利用するために、気象情報観測装置で観測した気象情報をHEMSおよびスマートメーターを介したネットワークによって気象情報収集システムサーバーへ伝送する。
【0012】
そのため、本発明の一実施例による気象情報収集システムは、
図1(a),(b)に示すように、一般家屋1の屋根上に設置されたかつ気象情報をリアルタイムで観測するための気象情報観測装置10と、電力会社の計算センターに設置された気象情報収集システムサーバー20および収集気象情報記憶部21とを具備する。
【0013】
一般家屋1には、気象情報観測装置10と接続されたHEMS2と、HEMS2に接続されたスマートメーター3とが設置されている。
スマートメーター3は、低密度地域では計算センターと直接通信する通信機能を備え、高密度地域や一部の集合住宅では集約装置(複数のスマートメーター3からの情報を集約して1つのグループとして計算センターへ伝送する装置。不図示)や中継装置(スマートメーター3と集約装置との間またはスマートメーター3間で互いの電波が届かない場合に情報の伝送を中継する装置。不図示)との通信機能を備える。
計算センターには、気象情報収集システムサーバー20のほかに、スマートメーター3および集約装置の通信制御を行うHES(ヘッド・エンド・システム)31と、スマートメーター3の30分値データの保管やスマートメーター3への遠隔負荷開閉の指示等を行う運用管理システム32と、運用管理システム32に接続された既存システム33とが設置されている。
これにより、気象情報観測装置10でリアルタイムで観測した気象情報をHEMS2およびスマートメーター3を介したネットワークによって気象情報収集システムサーバー20へ伝送することができる。
【0014】
気象情報観測装置10は、一般家屋1に取り付けられたコンセント4を介して供給される商用電源によって作動し、
図2に示すように、温湿度計11と、風速計12と、雨量計13(たとえば、パルス発信器内蔵の転倒ます型雨量計)と、温湿度計11、風速計12および雨量計13から入力される測定値に基づいて気象情報(温度(外気温)、湿度、風速および雨量)を生成するための気象情報生成部14と、気象情報生成部14によって生成された気象情報をHEMS2に送信するための気象情報送信部15とを備える。
【0015】
気象情報送信部15からHEMS2に送信された気象情報は、HEMS2およびスマートメーター3を介したネットワークによって計算センターへ伝送され、HES31を介して気象情報収集システムサーバー20へ伝送される。
【0016】
気象情報収集システムサーバー20は、伝送されてくる気象情報に基づいて収集気象情報WIを生成し、生成した収集気象情報WIを収集気象情報記憶部21に記憶する。
【0017】
収集気象情報WIは、各スマートメーター3の識別番号である計器IDと、各気象情報観測装置10の位置情報(電柱番号(スマートメーター3が引込線5を介して接続されている電柱の番号)やスマートメーター3の設置場所の住所等)、気象情報の測定日時、温度、湿度、風速および雨量を示すものである。
たとえば、
図3に一例を示す収集気象情報WIは、電柱番号=○○支線011H14の電柱に引込線5を介して接続された計器ID=M111221123のスマートメーター3が取り付けられた一般家屋1の屋根上に設置された気象情報観測装置10によって2018年11月29日の10時に温度=12℃、湿度=50%、風速=7m/sおよび雨量=50mm/hが測定されたことを示す。
【0018】
これにより、電力会社では、集中豪雨等の特定の地域の気象情報をリアルタイムに収集して収集気象情報記憶部21に記憶することができる。
また、電力会社の担当者は、設備被害や配電線事故が生じた場合に、配電自動化システム等からの設備被害情報や配電線事故情報を参照するとともに、端末装置40から気象情報収集システムサーバー20にアクセスして計器IDおよび位置情報に基づいて該当地域のリアルタイムの収集気象情報WIを収集気象情報記憶部21から取得することにより、より多くの詳細な気象情報を参照して復旧計画や巡視計画を策定することに活用できる。
【0019】
以上説明したように、本発明の気象情報収集システムでは、電力会社側のメリットとして、以下に示す点がある。
(1)復旧計画や巡視計画の策定に必要となる多くの詳細な気象情報を収集することができる。
(2)従来では気象情報は外部から取得して一定期間毎に更新したり現地社員から取得したりしているが、その必要がなくなるとともに、リアルタイムの気象情報を収集できるためより精度の高い復旧計画や巡視計画の策定が可能となる。
【0020】
また、設置者(お客さま)側のメリットとして、以下に示す点がある。
(1)任意の観測地点で、収集気象情報WIが示す温度等の測定値がある一定の量(たとえば、雨量が50mm/h、平均風速が10m/s)を越えた場合等に、気象情報収集システムのネットワークを介して設置者宅で警報を鳴らすことにより、設置者は、自治体からの避難情報等の発令がなくとも、警戒すべき気象状況が発生しているという事実や発生場所等の情報をスピーディーに把握できるとともに、自宅周辺での集中豪雨等の情報もタイムリーに把握できる。
(2)温湿度計11を設置した場合には、自宅で観測された温度情報および湿度情報をメール等で知らせることにより、設置者は実際の外気温や湿度を把握して熱中症予防等に活用することができる。また、環境省から提供されている暑さ指数(WBGT)と比較して警報やメール等で知らせることにより、設置者は熱中症予防等に活用できる。
(3)風速計12を設置した場合には、自宅を中心に任意の半径内の風速情報を警報やメール等で知らせることにより、設置者は屋外設置物が風で吹き飛ばされることを防止できる。
(4)雨量計13を設置した場合には、自宅を中心に任意の半径内の降雨情報を警報やメール等で知らせることにより、設置者は屋外に干した洗濯物等が雨で濡れることを防止できる。
(5)間接的メリットとして、収集した気象情報をより精度の高い復旧計画等に活かして早期送電や安定供給に繋げることにより、停電時間を短くしたり不便な時間を短くしたりできる。
これにより、気象情報観測装置10を自宅の屋根上に設置することについて設置者の協力を容易に得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 一般家屋
2 HEMS
3 スマートメーター
4 コンセント
5 引込線
10 気象情報観測装置
11 温湿度計
12 風速計
13 雨量計
14 気象情報生成部
15 気象情報送信部
20 気象情報収集システムサーバー
21 収集気象情報記憶部
31 HES
32 運用管理システム
33 既存システム
40 端末装置
WI 収集気象情報