(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20241210BHJP
【FI】
C02F3/12 B
C02F3/12 A
C02F3/12 H
(21)【出願番号】P 2019162862
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 吉昭
(72)【発明者】
【氏名】三宅 將貴
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】深草 祐一
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-112195(JP,A)
【文献】特開昭60-14993(JP,A)
【文献】特開昭53-42073(JP,A)
【文献】特開2009-22865(JP,A)
【文献】特開昭59-183898(JP,A)
【文献】特開昭59-183897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
B01D 21/00,21/02-21/34
G01F 23/00,23/14-23/2965,23/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内に被処理水を流入する流入工程と、前記反応槽内の被処理水を生物汚泥により生物処理する生物処理工程と、前記反応槽内の前記生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記反応槽内の生物処理水を排出する排出工程とを行う水処理方法であって、
前記沈降工程では、生物汚泥
の濃度を検出する検出手段を用いて
、前記反応槽内の所定の高さにおける前記生物汚泥の濃度を検出し、
検出した濃度から求められる汚泥濃度変化速度に基づいて、前記沈降工程の終了時期を決定することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
前記流入工程を行いながら、前記排出工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記検出手段は、前記生物汚泥の濃度を検出する汚泥濃度計であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理方法。
【請求項4】
被処理水を流入する流入工程と、前記被処理水を生物汚泥により生物処理する生物処理工程と、前記生物汚泥を沈降させる沈降工程と
、生物処理水を排出する排出工程とを行う反応槽と、
生物汚泥
の濃度を検出する検出手段により検出した、前記沈降工程
での前記反応槽内の所定の高さにおける前記生物汚泥の濃度の検出値
から求められる汚泥濃度変化速度に基づいて、前記沈降工程の終了時期を決定する制御部と、を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
前記反応槽では、前記流入工程を行いながら、前記排出工程を行うことを特徴とする請求項
4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記生物汚泥の濃度を検出する汚泥濃度計であることを特徴とする請求項
4又は
5に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法及び水処理装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生物学的排水処理には、フロックと呼ばれる微生物の集合体(好気性生物汚泥)を活用した活性汚泥法が用いられている。しかし、活性汚泥法では、沈殿池でフロック(好気性生物汚泥)と処理水とを分離する際、フロックの沈降速度が遅いために沈殿池の表面積を非常に大きくしなければならない場合がある。また、活性汚泥法の処理速度は、生物処理槽内の汚泥濃度に依存しており、汚泥濃度を高めることで処理速度を増加させることができるが、沈殿池でのバルキング等により固液分離障害が発生するなどにより、処理を維持することができなくなる場合がある。
【0003】
一方、嫌気性生物処理では、グラニュールと呼ばれる微生物が緻密に集合し粒状となった集合体を活用することが一般的である。グラニュールは非常に沈降速度が速く、微生物が緻密に集合しているため、生物処理槽内の汚泥濃度を高くすることができ、排水の高速処理を実現することが可能である。しかし、嫌気性生物処理は、好気性処理(活性汚泥法)に比べて処理対象の排水種が限られていることや、処理水温を30~35℃程度に維持する必要がある等の問題点を有する場合がある。また、嫌気性生物処理単独では、処理水の水質が悪く、河川等へ放流する場合には、別途、活性汚泥法等の好気性処理を実施することが必要となる場合もある。
【0004】
近年、排水を間欠的に反応槽に流入させる半回分式処理装置を用いて特殊な条件で処理することで、嫌気性生物汚泥に限られず、好気性生物汚泥でも沈降性の良いグラニュール化した生物汚泥を形成できることが明らかとなってきた(例えば、特許文献1~4参照)。グラニュール化さした生物汚泥は、例えば、平均粒径が0.1mm以上となり、沈降速度が3m/h以上となる。なお、半回分式の生物処理では、1つの反応槽で(1)排水の流入、(2)生物汚泥による排水の生物処理、(3)生物汚泥の沈降、(4)処理水の排出といった工程を繰り返し行うものが一般的である。
【0005】
また、特許文献5には、(1)排水の流入及び処理水の排出、(2)生物汚泥による排水の生物処理、(3)生物汚泥の沈降といった工程を繰り返し行う生物処理方法が開示されている。これにより、グラニュール化した生物汚泥のように沈降性の高い生物汚泥を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2004/024638号
【文献】特開2008-212878号公報
【文献】特許第4975541号公報
【文献】特許第4804888号公報
【文献】特開2016-77931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、グラニュール汚泥を利用した半回分式の生物処理において、種汚泥としては、通常のフロック状の汚泥を利用することが多い。したがって、生物処理の立ち上げ時からグラニュール汚泥が形成されるまでの間は、反応槽内の生物汚泥の沈降速度は、例えば、0.3m/h程度から5m/h程度又はそれ以上までダイナミックに変化する。この間、生物汚泥の沈降工程の時間を一定にすると、沈降速度が遅い時には沈降工程の時間が短すぎる状態になり、沈降速度が速い時には沈降工程の時間が長過ぎる状態になる。沈降工程の時間が短すぎる状態では、反応槽からの生物汚泥の流出リスクが高まる。また、沈降工程の時間が長すぎる状態では、生物汚泥が反応槽内に固着して、生物処理工程時に流動し難くなったり、沈降した状態で長い時間経過することで生物汚泥が嫌気化し、活性が低下したり、生物汚泥の嫌気化に伴うガス発生により、生物汚泥が浮上したりするリスクがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、沈降工程を生物汚泥の沈降性に合わせた適切な時間で実施できる水処理方法及び水処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態は、反応槽内に被処理水を流入する流入工程と、前記反応槽内の被処理水を生物汚泥により生物処理する生物処理工程と、前記反応槽内の前記生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記反応槽内の生物処理水を排出する排出工程とを行う水処理方法であって、前記沈降工程では、生物汚泥の濃度を検出する検出手段を用いて、前記反応槽内の所定の高さにおける前記生物汚泥の濃度を検出し、検出した濃度から求められる汚泥濃度変化速度に基づいて、前記沈降工程の終了時期を決定する水処理方法である。
【0010】
前記水処理方法において、前記流入工程を行いながら、前記排出工程を行うことが好ましい。
【0012】
前記水処理方法において、前記検出手段は、前記生物汚泥の濃度を検出する汚泥濃度計であることが好ましい。
【0014】
また、本実施形態は、被処理水を流入する流入工程と、前記被処理水を生物汚泥により生物処理する生物処理工程と、前記生物汚泥を沈降させる沈降工程と、生物処理水を排出する排出工程とを行う反応槽と、生物汚泥の濃度を検出する検出手段により検出した、前記沈降工程での前記反応槽内の所定の高さにおける前記生物汚泥の濃度の検出値から求められる汚泥濃度変化速度に基づいて、前記沈降工程の終了時期を決定する制御部と、を備えることを特徴とする水処理装置である。
【0015】
前記水処理装置において、前記反応槽は、前記流入工程を行いながら、前記排出工程を行うことが好ましい。
【0017】
前記水処理装置において、前記検出手段は、前記生物汚泥の濃度を検出する汚泥濃度計であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、沈降工程を生物汚泥の沈降性に合わせた適切な時間で実施できる水処理方法及び水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0022】
<水処理方法及び水処理装置>
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。水処理装置1は、反応槽10及び制御装置12を備える。反応槽10内には、被処理水配管14が配置され、被処理水配管14の吐出口16が、反応槽10の底部側に位置している。被処理水配管14には電磁バルブ18aが設けられている。反応槽10の処理水排出口20に処理水配管22が接続されている。処理水配管22には電磁バルブ18bが設けられている。反応槽10内の下部には、曝気用ブロア24に接続された曝気装置26が設置されている。
【0023】
反応槽10には、槽内の所定の高さに汚泥濃度計28が設置されている。汚泥濃度計28の設置位置は、例えば、水面下0.5m~3mの範囲である。汚泥濃度計28は、制御装置12と電気的に接続されている。
【0024】
また、電磁バルブ18a、電磁バルブ18b、曝気用ブロア24は、それぞれ制御装置12と電気的に接続されている。
【0025】
制御装置12は、例えば、プログラムを演算するCPU、プログラムや演算結果等を記憶するROM及びRAMから構成されるマイクロコンピュータと電子回路等で構成され、曝気用ブロア24の作動・停止、バルブの開閉等を制御する。また、後述するように、制御装置12は、汚泥濃度計28により検出された反応槽10内の汚泥濃度の検出値に基づいて、沈降工程の終了時期を決定する。
【0026】
以下に、水処理装置1の動作例を説明する。
【0027】
<(1)流入工程>
電磁バルブ18aを開放して、被処理水を被処理水配管14の吐出口16から反応槽10に所定量流入させる。被処理水は、例えば、有機物及び窒素化合物のうちの少なくともいずれか一方を含む排水等が挙げられ、具体的には、食品加工工場排水、化学工場排水、半導体工場排水、機械工場排水、下水、し尿等の生物分解性有機物を含有する有機性排水等が挙げられる。
【0028】
<(2)生物処理工程>
電磁バルブ18aを閉じて、曝気用ブロア24を稼働させ、曝気用ブロア24から供給される空気等の酸素含有気体を、曝気装置26を通じて反応槽10に供給する。これにより、反応槽10内では、被処理水が生物汚泥により生物処理される。生物反応は好気反応には限らず、空気等の供給は行わず、撹拌を行うことで無酸素反応を行うことも可能であるし、好気反応及び無酸素反応を組み合わせてもよい。無酸素状態とは、溶存酸素は存在しないが、亜硝酸や硝酸由来の酸素等は存在している状態をいう。例えば、
図2に示すように、モータ30、撹拌翼32、モータ30と撹拌翼32を接続するシャフト等により構成される撹拌装置を反応槽10に設置して、曝気用ブロア24を停止して撹拌装置により撹拌を行えばよい。なお、撹拌装置は上記構成に制限されるものではない。
【0029】
また、生物処理工程では、汚泥濃度計28により反応槽10内の生物汚泥濃度を検出することが望ましい。制御装置12は、汚泥濃度計28により検出された生物汚泥濃度(検出値)を読み取り、記憶する。
【0030】
<(3)沈降工程>
曝気用ブロア24の作動を停止して、所定の時間、静置状態にして、反応槽10内の生物汚泥を沈降させる。
【0031】
沈降工程では、汚泥濃度計28により反応槽10内の生物汚泥濃度を検出する。また、制御装置12は、汚泥濃度計28により検出された生物汚泥濃度(検出値)を読み取り、当該検出値に基づいて、沈降工程の終了時期を決定する。
【0032】
<(4)排出工程>
制御装置12により決定された沈降工程の終了時期に応じて、電磁バルブ18bを開放し、沈降工程で得られた上澄み水を処理水として処理水排出口20から処理水配管22を通して排出する。
【0033】
(1)流入工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程、(4)排出工程の順で行う処理を1サイクルとして、これを繰り返し行い、被処理水の処理を行う。
【0034】
本実施形態では、流入工程と排出工程を別々に行う形態に限定されず、流入工程を行いながら、排出工程を行う形態でもよい。すなわち、(1)流入工程/排出工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程の順で行う処理を1サイクルとして、これを繰り返し行い、被処理水の処理を行ってもよい。
【0035】
図1の水処理装置1を例にすると、電磁バルブ18aを開放して、被処理水を被処理水配管14の吐出口16から反応槽10内に流入させながら、電磁バルブ18bを開放し、反応槽10内の処理水を処理水排出口20から処理水配管22を通して排出する((1)流入工程/排出工程)。所定時間経過後、電磁バルブ18a及び電磁バルブ18bを閉じて、曝気用ブロア24を稼働させ、曝気用ブロア24から供給される空気等の酸素含有気体を、曝気装置26を通じて反応槽10に供給し、被処理水を生物汚泥により生物処理する((2)生物処理工程)。次に、曝気用ブロア24の作動を停止して、所定の時間、静置状態にして、反応槽10内の生物汚泥を沈降させる((3)沈降工程)。沈降工程では、汚泥濃度計28により反応槽10内の生物汚泥濃度を検出する。また、制御装置12は、汚泥濃度計28により検出された生物汚泥濃度(検出値)を読み取り、当該検出値に基づいて、沈降工程の終了時期を決定する。制御装置12により決定された沈降工程の終了時期に応じて、(1)流入工程/排出工程に戻る。
【0036】
(1)流入工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程、(4)排出工程の順で行う処理、或いは(1)流入工程/排出工程、(2)生物処理工程、(3)沈降工程の順で行う処理を繰り返し行うことにより、反応槽10内では、グラニュール汚泥が徐々に形成される。したがって、装置の立ち上げから時間経過に伴って、生物汚泥の沈降速度が変化する。特に、装置の立ち上げからグラニュール汚泥が形成されるまでの間は、生物汚泥の沈降速度がダイナミックに変化する。そのため、沈降工程の時間を一定にする従来技術では、沈降速度が遅い時には沈降工程の時間が短すぎる状態になり、沈降速度が速い時には沈降工程の時間が長過ぎる状態になるため、前述したリスクが生じる場合がある。そこで、本実施形態では、沈降工程を生物汚泥の沈降性に合わせた適切な時間で実施するために、汚泥濃度計28により検出された生物汚泥濃度(検出値)に基づいて、沈降工程の終了時期を決定している。以下に、沈降工程の終了時期の決定方法の具体例を挙げる。
【0037】
<沈降工程の終了時期の決定について>
例えば、制御装置12は、沈降工程において汚泥濃度計28により検出される生物汚泥濃度(検出値)を所定時間毎に読み取り、読み取った検出値が、予め設定した閾値以下となった際に、沈降工程を終了する。
【0038】
沈降工程では、時間経過により、反応槽10内の生物汚泥が沈降して、汚泥界面位置が下がるため、反応槽10内の所定の高さに設置した汚泥濃度計28により検出される生物汚泥濃度の検出値も、時間経過により下がる。したがって、所定の高さに設置した汚泥濃度計28により検出される生物汚泥濃度の検出値が、予め設定した閾値以下となった際に、沈降工程を終了することで、装置の立ち上げからグラニュール汚泥が形成されるまでの間に生物汚泥の沈降速度が変化しても、沈降工程を適切な時間で実施できる。これにより、沈降工程の時間が短すぎる状態が回避されるため、例えば、反応槽10からの生物汚泥の流出リスクが抑えられる。また、沈降工程の時間が長すぎる状態が回避されるため、例えば、生物汚泥が反応槽10内に固着すること、生物汚泥の嫌気化、生物汚泥の嫌気化に伴うガス発生による生物汚泥の浮上が抑制される。さらに、適切な時間で沈降工程を実施することで、グラニュール形成期間の短縮やグラニュール形成の促進も図られると考えられる。
【0039】
閾値としては、0~1000mg/Lの範囲で設定されることが望ましく、250mg/L以下で設定することがより望ましい。閾値を1000mg/L超とすると、生物汚泥の沈降性に関わらず、沈降工程の時間が短くなり過ぎることが懸念される。
【0040】
汚泥濃度計28の設置位置は、例えば、反応槽10内の水面下0.5m~3mの間に設置されることが好ましい。但し、流入工程を行いながら、排出工程を行う形態の場合には、生物汚泥をあまり沈降させ過ぎずに沈降工程を終了した方が、沈降性の高い生物汚泥を効率的に形成できるため、汚泥濃度計28の設置位置は、反応槽10内の水面下0.5m~2.5mの間に設置されることがより好ましい。また、流入工程と排出工程を別々に行う形態の場合には、清澄な処理水を所定量確保できる観点から、1.0m~3.0mの間に設置されることがより好ましい。
【0041】
以下に、沈降工程の終了時期の決定の他の例について説明するが、他の例においても、上記の例と同様の効果を奏する。また、以下の例においても、上記の汚泥濃度の設置位置が適用される。
【0042】
他の例としては、例えば、制御装置12は、沈降工程において汚泥濃度計28により検出される生物汚泥濃度(検出値)を所定時間毎に読み取り、読み取った検出値が、生物処理工程において汚泥濃度計28により検出された生物汚泥濃度の検出値に対して所定の割合以下となった際に、沈降工程を終了する。
【0043】
また、例えば、制御装置12は、沈降工程開始から所定時間までにおいて汚泥濃度計28により検出される生物汚泥濃度(検出値)を所定時間毎に読み取り、読み取った検出値から、汚泥濃度変化速度(mg/L/分)を算出する。制御装置12は、種々の汚泥濃度変化速度に対応する沈降工程時間を規定したマップやテーブル等の参照情報を参照し、算出した汚泥濃度変化速度から沈降工程時間を決定する。制御装置12は、沈降工程の時間が、決定した沈降工程時間に達したら、沈降工程を終了する。
【0044】
汚泥濃度計28としては、透過光式、散乱光式、マイクロ波式、超音波式等、従来公知の方式が挙げられる。また、場合によっては、粘度計、濁度計等の汚泥濃度と相関関係にある計器を用いてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、生物汚泥の濃度を検出する検出器に変えて、反応槽10内の生物汚泥の界面位置を検出する汚泥界面計を用いてもよい。汚泥界面計としては、超音波式、濁度検知式、透過光式等、従来公知の方式が挙げられる。汚泥界面計を用いる場合には、制御装置12は、汚泥界面計により検出された反応槽10内の生物汚泥の界面位置(検出値)に基づいて、沈降工程の終了時期を決定する。以下に具体例を説明する。
【0046】
例えば、制御装置12は、沈降工程において汚泥界面計により検出される反応槽10内の生物汚泥の界面位置(検出値)を所定時間毎に読み取り、読み取った検出値が、予め設定した閾値以下となった際に、沈降工程を終了する。
【0047】
閾値としては、反応槽水深の10~70%の範囲で設定されることが望ましい。閾値を反応槽水深の70%超とすると、生物汚泥の沈降性に関わらず、沈降工程の時間が長くなり過ぎることが懸念され、閾値を反応槽水深の10%未満とすると、生物汚泥の沈降性に関わらず、沈降工程の時間が短くなり過ぎることが懸念される。
【0048】
また、例えば、制御装置12は、沈降工程開始から所定時間経過後において汚泥界面計により検出される反応槽10内の生物汚泥の界面位置(検出値)を読み取り、読み取った検出値から、汚泥沈降速度(m/h)を算出する。制御装置12は、種々の汚泥沈降速度に対応する沈降工程時間を規定したマップやテーブル等の参照情報を参照し、算出した汚泥沈降速度から沈降工程時間を決定する。制御装置12は、沈降工程の時間が、決定した沈降時間に達したら、沈降工程を終了する。
【0049】
以下、本実施形態におけるその他の条件について説明する、
【0050】
水処理装置1の運転を継続することにより、反応槽10では、自己造粒が進んだ生物汚泥(所謂グラニュール)を形成することができ、例えば汚泥の平均粒径が0.1mm以上、もしくは沈降性指標であるSVI5が80mL/g以下のグラニュールを形成することができる。
【0051】
水処理装置1によれば、反応槽10内の生物汚泥のうち、平均粒径が0.1mm以上の生物汚泥(グラニュール)を30%以上にすることができる。
【0052】
反応槽10の容積負荷は、0.15kgBOD/m3/日~1.00kgBOD/m3/日の範囲であることが好ましく、0.30kgBOD/m3/日~0.60kgBOD/m3/日の範囲がより好ましい。反応槽10の容積負荷を上記範囲とすることにより、より良好なグラニュールを形成することが可能となる。
【0053】
反応槽10の汚泥負荷は、0.05kgBOD/kgMLSS/日~0.30kgBOD/kgMLSS/日の範囲であることが好ましく、0.10kgBOD/kgMLSS/日~0.20kgBOD/kgMLSS/日の範囲がより好ましい。反応槽10の汚泥負荷を上記範囲とすることにより、より良好なグラニュールを形成することが可能となる。
【0054】
反応槽10内の溶存酸素(DO)は、好気条件では、0.5mg/L以上、特に1mg/L以上とすることが好ましい。
【0055】
生物汚泥のグラニュール化を促進させる点で、反応槽10内の被処理水又は反応槽10に導入される前の被処理水に、Fe2+、Fe3+、Ca2+、Mg2+等を含む、水酸化物が形成されるようなイオンを添加してもよい。上記イオンの添加により、グラニュールの核形成を促進させることが可能となる。
【0056】
本実施形態の処理対象である被処理水中に生物難分解性の有機物が多く含有されている場合には、反応槽10に供給される前の被処理水に、オゾン処理やフェントン処理等の物理化学的処理を施してもよい。これにより、生物分解された易い有機物に変換されるため、被処理水の処理効率が向上する場合がある。また、本実施形態の処理対象である被処理水中に油脂分が多く含有されている場合には、油脂分が、生物汚泥(グラニュールを含む)に付着して悪影響を及ぼす場合があるため、反応槽10へ供給される前に、予め浮上分離、凝集加圧浮上、吸着等の既存の手法を施してもよい。これにより、被処理水中の油脂分濃度を低減することができる(例えば150mg/L以下)。
【符号の説明】
【0057】
1 水処理装置、10 反応槽、12 制御装置、14 被処理水配管、16 吐出口、18a,18b 電磁バルブ、20 処理水排出口、22 処理水配管、24 曝気用ブロア、26 曝気装置、28 汚泥濃度計、30 モータ、32 撹拌翼。