(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】射出成形装置および射出成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/62 20060101AFI20241210BHJP
B29C 45/18 20060101ALI20241210BHJP
B29C 45/63 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B29C45/62
B29C45/18
B29C45/63
(21)【出願番号】P 2020016856
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-08-16
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 英貴
(72)【発明者】
【氏名】安江 昭
(72)【発明者】
【氏名】梅田 光秀
(72)【発明者】
【氏名】國弘 大介
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】橿本 英吾
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭46-1042(JP,A)
【文献】特開平9-85781(JP,A)
【文献】特開昭62-204918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B29C45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記スクリュの回転、前進および後退を制御する駆動部と、を有し、
前記シリンダは、上流に位置し樹脂材料が供給される第1孔と、前記第1孔より下流に位置する分割シリンダ部を有し、
前記分割シリンダ部は、前記樹脂材料に添加される添加物の供給口である第2孔を有し、前記分割シリンダ部は、異なる位置または異なる大きさの孔が設けられた複数の分割シリンダ部から選択
可能である、射出成形装置。
【請求項2】
シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記スクリュの回転、前進および後退を制御する駆動部と、を有し、
前記シリンダは、上流に位置し樹脂材料が供給される第1孔と、前記第1孔より下流に位置する分割シリンダ部を有し、
前記分割シリンダ部は、第2孔を有し、前記第1孔に対し、第1角度の位置または第2角度の位置に調整可能に前記シリンダに組み込まれる、射出成形装置。
【請求項3】
シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記スクリュの回転、前進および後退を制御する駆動部と、を有し、
前記シリンダは、上流に位置し樹脂材料が供給される第1孔と、前記第1孔より下流に位置する分割シリンダ部を有し、
前記分割シリンダ部は、第2孔と、前記第2孔の一部を覆う蓋部とを有する
ことで蓋部に覆われない孔の大きさおよび/または位置を調整可能である、射出成形装置。
【請求項4】
(a)シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュとを有する射出成形装置と、前記射出成形装置の先端に接続された型と、を準備する工程、
(b)前記シリンダの上流に設けられた第1孔から、樹脂材料を前記シリンダ内に供給して溶融させ溶融樹脂を形成する工程、
(c)前記シリンダの前記第1孔より下流に設けられた第2孔から、添加物を供給し、前記溶融樹脂と前記添加物との混練を行うことにより前記添加物含有の溶融樹脂を形成する工程、
(d)前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退するように、前記スクリュを後退させることにより、前記スクリュの先端部において前記添加物含有の溶融樹脂を計量する工程、
(e)前記スクリュを前進させることにより、前記添加物含有の溶融樹脂を前記型に注入する工程、を有し、
前記(a)工程の前記シリンダは、前記第2孔を含む分割シリンダ部を有し、
前記(a)工程は、異なる位置または異なる大きさの孔が設けられた複数の分割シリンダ部から前記第2孔を含む分割シリンダ部を選択する工程を含む、射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置および射出成形方法に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フィラー(炭素繊維など)を用いた樹脂複合材料が注目を集めている。特に、フィラーを含有させた樹脂を用いて成形体を製造することにより、成形体の機械的強度の向上を図ることが検討されている。
【0003】
このような複合材料を用いた成形体は、樹脂とフィラーとを射出成形装置を用いて混練した後、型に注入することにより得ることができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、カーボン繊維樹脂ペレットとガラス繊維樹脂ペレットとを含む成形材料を用いた射出成形技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、射出成形装置や押出機を用いたフィラー含有樹脂についての研究開発に従事しており、フィラーの添加による樹脂の補強効果の向上について鋭意検討している。
【0007】
このようなフィラー含有樹脂よりなる成形体は、射出成形装置を用いて形成することができる。射出成形装置は、シリンダと、シリンダ内に回転自在に配備されたスクリュとを有する。例えば、ホッパからシリンダ内に供給された樹脂ペレットが、シリンダ内で溶融しスクリュによって前方に送られた後、フィラーが添加され、溶融樹脂とフィラーとが混練され、所定量だけ射出成形装置から金型に注入されることで、所望の形状の成形体を形成することができる。
【0008】
ここで、成形体の機械的強度の向上を図るためには、樹脂中にフィラーが均一に分散している必要性があるものの、樹脂ペレットを溶融した後、フィラーを添加する場合には、シリンダの途中でフィラーを添加することとなる。また、射出成形装置は、一体として成形された長い筒状のシリンダを用いることが多く、設計の際に設けられたフィラー添加用の供給口の位置や大きさを容易に変更することはできない。
【0009】
例えば、混練時間を長くするため、フィラーの添加位置をシリンダのより上流に配置したい場合があり、このような要求に容易に対応できる射出成形装置の開発が望まれる。
【0010】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される射出成形装置は、シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュと、前記スクリュの回転、前進および後退を制御する駆動部と、を有し、前記シリンダは、上流に位置し樹脂材料が供給される第1孔と、前記第1孔より下流に位置する分割シリンダ部を有し、前記分割シリンダ部は第2孔を有し、前記分割シリンダ部は、異なる位置または異なる大きさの孔が設けられた複数の分割シリンダ部から選択されたものである。
【0012】
本願において開示される射出成形方法は、(a)シリンダと、前記シリンダ内に配備されたスクリュとを有する射出成形装置と、前記射出成形装置の先端に接続された型と、を準備する工程、(b)前記シリンダの上流に設けられた第1孔から、樹脂材料を前記シリンダ内に供給して溶融させ溶融樹脂を形成する工程、(c)前記シリンダの前記第1孔より下流に設けられた第2孔から、添加物を供給し、前記溶融樹脂と前記添加物との混練を行うことにより前記添加物含有の溶融樹脂を形成する工程、(d)前記スクリュの先端が第1位置から第2位置までの第1ストロークだけ後退するように、前記スクリュを後退させることにより、前記スクリュの先端部において前記添加物含有の溶融樹脂を計量する工程、(e)前記スクリュを前進させることにより、前記添加物含有の溶融樹脂を前記型に注入する工程、を有し、前記(a)工程の前記シリンダは、前記第2孔を含む分割シリンダ部を有し、前記(a)工程は、異なる位置または異なる大きさの孔が設けられた複数の分割シリンダ部から前記第2孔を含む分割シリンダ部を選択する工程を含む。
【発明の効果】
【0013】
本願において開示される射出成形装置によれば、特性の良好な樹脂成形体を製造することができる。
【0014】
本願において開示される射出成形方法によれば、特性の良好な樹脂成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1のフィラー含有樹脂成形体の製造装置(製造システム)の構成を示す図である。
【
図2】射出成形装置および射出成形工程を示す図である。
【
図6】実施の形態2の応用例1の分割シリンダ部の接続構成を示す断面図である。
【
図7】実施の形態2の応用例2の分割シリンダ部の供給口の位置を示す断面図である。
【
図8】実施の形態2の応用例3の分割シリンダ部の供給口の近傍を示す斜視図である。
【
図9】実施の形態2の応用例4の分割シリンダ部の供給口の近傍を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態を実施例や図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態のフィラー含有樹脂成形体の製造装置(製造システム)の構成を示す図である。この装置は、射出成形装置1と、プレス機5とを有する。ここでは、フィラーを含有しない樹脂ペレット(樹脂材料)と、フィラーとを直接混合し、成形体(成型体)を形成する工程を例に説明する。なお、原料として、ペレットではなく、粉状の樹脂を用いてもよい。
【0018】
射出成形装置1は、供給される原料である樹脂ペレットRPを溶融した後、フィラーFを添加し、混合・混練し、フィラー含有の溶融樹脂(MRF)を形成する。射出成形装置1は、図示しない温調手段によって温度制御されるシリンダ11と、シリンダ11の内部に配置された単軸のスクリュSと、スクリュSに接続されたスクリュの駆動部17を有している。シリンダ11の先端(下流端)には吐出ノズル19が設けられている。
【0019】
シリンダ11は、シリンダ11の上流側に配設された樹脂ペレットRPの供給口13hと、フィラーFの供給口15hとを有している。供給口13hは、樹脂ペレットRP用のホッパ(供給装置、投入装置)13と接続され、供給口15hは、フィラーF用の供給装置15と接続されている。シリンダ11は、例えば、X方向(軸方向)に延在する部材であり、内部にスクリュSが配置される円柱状の空間を有する。ここでは、シリンダ11を円筒状のものとして説明するが、内部にスクリュSが配置される空間を有せば外形は矩形でもよい。
【0020】
ここで、シリンダ11の供給口15h近傍は、置換可能な分割シリンダ部(中間シリンダ部、分割ブロック部)11Bとなっている。即ち、シリンダ11は、前段部(11A)と、分割シリンダ部11Bと、後段部(11C)とからなる。そして、分割シリンダ部11Bとしては、4種類のものが準備されている。具体的には、(1)第1の孔径r1の供給口15hが分割シリンダ部の中央部(X方向の長さの中心を含む部分)に設けられた分割シリンダ部(
図1(A))、(2)第2の孔径r2の供給口15hが分割シリンダ部の中央部(X方向の長さの中心を含む部分)に設けられた分割シリンダ部(
図1(B)、r2<r1)、(3)第2の孔径r2の供給口15hが分割シリンダ部の上流部(X方向の長さの中心から上流端部までの間の部分)に設けられた分割シリンダ部(
図1(C))、(4)第2の孔径r2の供給口15hが分割シリンダ部の下流部(X方向の長さの中心から下流端部までの間の部分)に設けられた分割シリンダ部(
図1(D))が準備されている。そして、ここでは、(1)第1の孔径r1の供給口15hが分割シリンダ部の中央部(X方向の長さの中心を含む部分)に設けられた分割シリンダ部(
図1(A))が選択され、シリンダ11に組み込まれている。
【0021】
例えば、(1)の分割シリンダ部11Bは、(3)の分割シリンダ部11Bより供給口15hの径が大きく、また、より上流に供給口15hが配置されているため、フィラーF(例えば、炭素繊維)の供給量を確保でき、また、フィラーFが溶融樹脂中に供給された後に接するスクリュSの長さを確保することができる。よって、溶融樹脂とフィラーFとの混練性を高めることができる。
【0022】
このように、分割シリンダを複数準備しておくことで、フィラーの供給口の大きさや位置の設定の自由度が高まり、樹脂材料、フィラー材料、これらの組み合わせに応じた、適切なフィラーの供給口を選択することができる。
【0023】
前述したとおり、射出成形装置のシリンダは、一体として成形されることが多く、設計の際に設けられた供給口を容易に変更することはできないが、本実施の形態によれば、容易にフィラーの供給口を変更することができる。これにより、例えば、フィラーの分散性が良好となるなど、特性の良好な樹脂成形体を製造することができる。
【0024】
なお、分割シリンダ部に設けられる供給口の孔径と位置の組み合わせは多種多様であり、上記のものに限定されるものではない。
【0025】
また、分割シリンダ部は、シリンダの中間部、即ち、前段部(11A)と後段部(11C)との間に設けられ、前段部(11A)と分割シリンダ部(11B)と後段部(11C)とはそれぞれ異なる長さであり、分割シリンダ部(11B)は前段部(11A)より短く(X方向の長さが小さく)、かつ、後段部(11C)より短い。なお、吐出ノズル19との接続部に分割シリンダを設ける場合があるが、この場合、当該部分を除いた部分を上記前段部(11A)と見なすことができる。また、スクリュSの外径(最大外径)をDとした場合、前段部(11A)は、例えば、8D~18Dであり、分割シリンダ部は、例えば、3D~8Dであり、後段部(11C)は、例えば、10D~20Dである。
【0026】
プレス機5は、例えば、第1型SLと第2型SRとを有し、これらの間の隙間に、フィラー含有の溶融樹脂MRFが注入(射出、吐出)され、型に対応した形状で固化することで、成形体が形成される。
【0027】
図2は、射出成形装置および射出成形工程を示す図であり、
図2に示すように、シリンダ11の内部には、スクリュSが、駆動部17により回転可能(回転自在)かつ前進・後退可能に挿入され内蔵されている。
【0028】
スクリュSの形状に制限はないが、
図2においては、主として、らせん状の突起(ネジ山)が設けられたフルフライト型のスクリュによりスクリュSが構成されている。そして、スクリュSは、複数のスクリュ部(スクリュピース)を有する。具体的には、溝の深さ(突起の高さ)が異なる複数のスクリュ部を有している。例えば、上流側(ホッパ13側)のスクリュS1は、スクリュ部S1aと、スクリュ部S1aより溝が浅いスクリュ部S1bとを有している。また、下流側(吐出ノズル19側)のスクリュS2は、スクリュ部S2aと、スクリュ部S2aより溝が浅いスクリュ部S2bとを有している。上流側のスクリュS1は、供給口13hから供給口15hまでに配置され、下流側のスクリュS2は、供給口15hから上流側に配置されている。このようなスクリュ構成は、2ステージ型と呼ばれることがある。なお、ここでは、スクリュSの先端部に、先端に向かって尖った形状の部分(ピース)が配置されている。
【0029】
樹脂ペレットRPの供給部(13h)に対応するスクリュ部S1aにおいては、容積を確保するため溝の深いスクリュ部を用いることが好ましく、また、溶融した樹脂が通過するスクリュ部S1bにおいては、樹脂の混練性を高め、また、供給口15hからの溶融樹脂の流出(ベントアップ)を防止するため、溝の浅いスクリュ部を用いることが好ましい。
【0030】
また、フィラーFの供給部(15h)に対応するスクリュ部S2aにおいては、溝を深くし、飢餓状態とすることが好ましく、また、溶融樹脂とフィラーFとの混練物が通過するスクリュ部S2bにおいては、樹脂の混練性を高めるため、溝の浅いスクリュ部を用いることが好ましい。
【0031】
なお、
図2においては、フルフライト型のスクリュ(スクリュ部)を用いたが、他の形状のスクリュ(スクリュ部)を用いてもよい。例えば、スクリュ部S2bにおいて、混練性を高めるため、ダルメージ型、マドック型、ピン型、スタティックミキサ―型のスクリュなどを用いてもよい。
【0032】
上記のとおり、スクリュSは、複数のスクリュ部(スクリュピース)よりなる。このため、スクリュ部S1a、S1bの長さの比やスクリュ部S2a、S2bの長さの比を変更した場合にも、フィラーの供給口が最適な位置となるように調整する必要がでてくる。このような場合にも、前述したように、分割シリンダ部11Bを複数準備しておくことで、フィラーの供給口を容易に調整することができる。
【0033】
図3は、スクリュの駆動部の構成を示す図である。
図3に示すように、スクリュSには、スクリュSを前進または後退させるライン駆動機構17Lと、スクリュSを回転させる回転駆動機構17Rとが接続されている。そして、ライン駆動機構17Lと回転駆動機構17Rとは、スクリュの制御部17Cにより制御される。また、ライン駆動機構17LとスクリュSとの間のロードセル17Sは、スクリュSが軸方向に受ける荷重(背圧)を検知するセンサである。例えば、ロードセル17Sからの信号に基づき、スクリュSの前進、後退などを制御することができる。
【0034】
例えば、
図1に示すように、ホッパ13から供給口13hを介して供給された樹脂ペレットRPは、シリンダ11内において、溶融し、スクリュSにより掻き混ぜられながら下流に移送される。そして、フィラーFの供給口15hから、溶融樹脂中にフィラーFが供給され、溶融樹脂とフィラーFとの混練物が、シリンダ11の先端部に移送され、貯留される。このように、シリンダ11の先端部に貯留される溶融樹脂とフィラーFとの混練物が多くなると、スクリュSに押し戻される力(後退する力)が働く。この力は、“背圧”と呼ばれ、前述したロードセルの出力(信号)と対応している。
【0035】
このような背圧の上昇により混練物の貯留量を知ることができ、例えば、所定の背圧になった後に、スクリュSを1回の吐出量(1S)に対応する距離(第1ストローク)だけ後退させる(計量工程)。即ち、ライン駆動機構(17L)によりスクリュSを後退させ、シリンダ11の先端部に所定量の混練物を貯留(計量)した後、スクリュSを前進させることで、吐出ノズル(19)から型(プレス機5)へ所定量の混練物を吐出することができる(
図1参照)。なお、混練性を高めるため混練時間を長くするとシリンダ11の先端部の貯留量が大きくなり背圧が大きくなりすぎるため、所定の背圧(所定のロードセルの出力)となるまでの間に混練性を高めておく必要がある。そのため、本実施の形態のようなフィラーの供給口の位置調整は大変有用である。
【0036】
なお、
図2に示す射出成形装置においては、供給口15hをフィラーFの供給口として説明したが、供給口15hの用途に制限はなく、例えば、
図4に示すように、樹脂に注入するガス(例えば、窒素(N
2))の供給口であってもよい。即ち、供給口15hには、ガス(例えば、窒素(N
2))供給装置が接続されている。また、
図5に示すように、供給口(15h)の位置に、溶融樹脂中のガスなどを放出するベント孔15vが設けられていてもよい。例えば、供給口15hには、脱気装置(減圧装置)が接続されている。
図4および
図5は、他の射出成形工程(処理工程)を示す図である。上記のような窒素注入処理や脱気処理により、例えば、樹脂材料の酸化を防止することができる。これらの処理においても、例えば、各処理の効果を均質化するため混練性を高める必要がある。
【0037】
このように、シリンダ11の途中に設けられる孔としては、添加物(ガスを含む)の供給口やベント孔として用いることができる。このような孔が設けられる場合には、分割シリンダ部(中間シリンダ)11Bに孔を設けることで、第1ステージと第2ステージとの間における処理に対応して、低コストで孔(供給口やベント孔)を最適配置することができる。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、上記実施の形態の各種応用例について説明する。
【0039】
(応用例1)
図6は、本応用例の分割シリンダ部の接続構成を示す断面図である。シリンダの前段部(11A)と分割シリンダ部11Bとは、例えば、ナットとボルトにより接続される。例えば、
図6(A)に示すように、シリンダの前段部(11A)の鍔部に設けられた穴と、分割シリンダ部11Bの一端の鍔部に設けられた穴とを位置合わせし、ボルトを通し、ナットで固定する。また、同様に、シリンダの後段部(11C)の鍔部に設けられた穴と、分割シリンダ部11Bの他端の鍔部に設けられた穴とを位置合わせし、ボルトを通し、ナットで固定する。
【0040】
また、
図6(B)に示すように、シリンダの前段部(11A)と分割シリンダ部11Bとの接続部に入れ子のインロー構造部を設けてもよい。具体的には、シリンダの前段部(11A)の端部に凸部を設け、分割シリンダ部11B側に凸に合う凹部を設ける。また、
図6(C)に示すように、上記凸部と上記凹部の側面はテーパーとなってそれぞれ接触していてもよい。
【0041】
このようなインロー構造部を設けることにより、シリンダの前段部(11A)と分割シリンダ部11Bの接続歪みを低減することができる。特に、射出成形機においては、正確な計量が要求されるため、シリンダの前段部(11A)と分割シリンダ部11Bの中心軸の合った正確な接続が要求される。例えば、スクリュSとシリンダ11との隙間は、例えば1mm~0.1mm程度であり、僅かな接続歪みにより、計量誤差が生じ得る。このため、上記インロー構造部を採用することにより、接続歪みを低減でき、正確な計量、射出を行うことができる。
【0042】
また、上記インロー構造部においては、前段部(11A)または後段部(11C)の凸部の上面と、分割シリンダ部11Bの凹部の底面とが少なくとも接触していればよく、これらの接触面がシール面となる。このように、インロー構造を採用することにより、シール面の接触面積を小さくし、面圧を高めて樹脂の漏れを防ぐことができる。
【0043】
(応用例2)
図7は、本応用例の分割シリンダ部の供給口の位置を示す断面図である。供給口15hの位置としては、例えば、前述したように、分割シリンダ部11Bの真上に配置してもよく(
図7(A))、また、
図7(B)に示すように、分割シリンダ部11Bの真上から角度θの位置に配置してもよい。
【0044】
例えば、樹脂ペレットRPが供給される供給口13hが真上(Z方向)に配置されている場合において、分割シリンダ部11Bに設けられた供給口15hも真上(Z方向)に配置してもよく、また、分割シリンダ部11Bに設けられた供給口15hを真上(Z方向)から角度θ(例えば、45°)だけズラした位置に配置してもよい。別の言い方をすれば、分割シリンダ部11Bは、供給口13hに対し、供給口15hを角度0°の位置または角度θ(例えば、45°)の位置に調整可能にシリンダに組み込むことができる。
【0045】
(応用例3)
図8は、本応用例の分割シリンダ部の供給口の近傍を示す斜視図である。本応用例においては、分割シリンダ部に複数の供給口(15h)を設け、その一部をプレート(蓋部)で覆う。例えば、
図8(A)に示すように、分割シリンダ部に6つの供給口15ha~15hfを設け、必要な位置、必要な数の供給口(例えば、15hb、15he)を選択し、残りの供給口(例えば、15ha、15hc、15hd、15hf)を金属板(プレート)11Pで塞いでもよい(
図8(B))。金属板(プレート)11Pは、例えば、分割シリンダ部11Bの側面にネジ止めすることにより固定することができる。
【0046】
(応用例4)
図9は、本応用例の分割シリンダ部の供給口の近傍を示す斜視図である。本応用例においては、横長の供給口15hLを設け、その一部をプレート(蓋部)で覆う。横長の供給口15hLは、X方向の長さがY方向の長さよりも大きい孔である。
【0047】
例えば、
図9(A)に示す横長の供給口15hLを、上流側に穴11Phが設けられた金属板(プレート)11Pで覆う(
図9(B))。また、
図9(A)に示す横長の供給口15hLを、分割シリンダ部11Bの中央部に穴11Phが設けられた金属板(プレート)11Pで覆う(
図9(C))。また、
図9(A)に示す横長の供給口15hLを、分割シリンダ部11Bの下流側に穴11Phが設けられた金属板(プレート)11Pで覆う(
図9(D))。
【0048】
また、
図9(A)に示す横長の供給口15hLを、分割シリンダ部11Bの下流側に径の小さい穴11Phが設けられた金属板(プレート)11Pで覆う(
図9(E))。
【0049】
また、
図9(A)に示す横長の供給口15hLを、分割シリンダ部11Bの下流側に径の小さい穴11Phが設けられ、かつ、分割シリンダ部11Bの上流側に径の大きい穴11Phが設けられた金属板(プレート)11Pで覆う(
図9(F))。
【0050】
このように、本応用例においては、金属板(プレート)11Pに設ける穴の大きさや位置を変えることで、供給口の大きさや位置を容易に調整することができる。
【0051】
なお、上記においては、供給口を例に説明したが、ベント孔においても金属板(プレート)11Pに設ける穴の大きさや位置を変えることで、その大きさや位置を容易に調整することができる。
【0052】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態および実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態または実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 射出成形装置
5 プレス機
11 シリンダ
11A 前段部
11B 分割シリンダ部
11C 後段部
11P 金属板(プレート)
11Ph 穴
13 ホッパ
13h 供給口
15 供給装置
15h 供給口
15ha~15hf 供給口
15hL 横長の供給口
15v ベント孔
17 駆動部
17C スクリュの制御部
17L ライン駆動機構
17R 回転駆動機構
17S ロードセル
19 吐出ノズル
F フィラー
MRF フィラー含有の溶融樹脂
RP 樹脂ペレット
S スクリュ
S1 スクリュ
S1a スクリュ部
S1b スクリュ部
S2 スクリュ
S2a スクリュ部
S2b スクリュ部
SB 下型
SU 上型