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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20241210BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C45/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020052515
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151719
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩平
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-055196(JP,A)
【文献】特開2018-155919(JP,A)
【文献】特開2016-055642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
B29C 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いた射出成形により形成されるレンズの製造方法であって、
前記レンズの一面側及び前記レンズの外周部から全周に亘って拡径方向に突出されるフランジ部を形成する第1の金型と、前記レンズの他面側を形成する複数の第2の金型とを準備する第1の工程と、
前記第1の金型と、前記複数の第2の金型の中から選択される一の金型とを突き合わせることによって、第1のキャビティ及び第1のゲートを形成する第2の工程と、
前記第1のゲートを介して前記第1のキャビティ内に樹脂を充填することによって、前記レンズの中間体を形成する第3の工程と、
前記中間体が位置する前記第1の金型と、前記複数の第2の金型の中から選択される他の金型とを突き合わせることによって、第2のキャビティ及び前記フランジ部において前記第1のゲートと周方向において連続して隣り合う第2のゲートを形成する第4の工程と、
前記第2のゲートを介して前記第2のキャビティ内に樹脂を充填することによって、前記レンズの中間体又は前記レンズを形成する第5の工程とを含み、
前記第1の工程において、前記第1の金型の前記一の金型との突き合わせ位置に、前記第1のゲートを形成する第1の切欠部と、前記第2のゲートを形成する第2の切欠部とを設け、前記一の金型の前記第1の金型との突き合わせ位置に、前記第2のゲートに対応した流路形成部を設け、
前記第2の工程において、前記第1の金型と前記一の金型との突き合わせ位置にて、前記第2の切欠部が前記流路形成部により閉塞され、前記第1の切欠部により形成された前記第1のゲートが開放された状態とし、
前記第3の工程において、前記中間体の前記フランジ部に対応した外周部に前記フランジ部の一部を厚み方向に切り欠くように、前記流路形成部に対応した前記フランジ部の厚みと同等の流路を形成し、
前記第4の工程において、前記第1の金型と前記他の金型との突き合わせ位置にて、前記第2の切欠部により形成される前記第2のゲートが開放されると共に、前記流路と前記第2のゲートとが連通された状態とし、
前記第5の工程において、前記第2のゲートから前記流路を通して前記第2のキャビティ内に樹脂を充填することを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項2】
前記複数の第2の金型の中から選択される他の金型を順次選択しながら、前記第4の工程と前記第5の工程とを順次繰り返すことによって、前記レンズを形成する際に、
前記第1の工程において、前記第1の金型の前記一の金型との突き合わせ位置に、前記他の金型の数に応じた複数の第2の切欠部を設け、前記一の金型の前記第1の金型との突き合わせ位置に、前記他の金型の数に応じた複数の流路形成部を設け、
前記第2の工程において、前記第1の金型と前記一の金型との突き合わせ位置にて、前記複数の第2の切欠部が前記複数の流路形成部により閉塞された状態とし、
前記第3の工程において、前記中間体の前記フランジ部に対応した外周部に前記フランジ部の一部を厚み方向に切り欠くように、前記複数の流路形成部の各々に対応した前記フランジ部の厚みと同等の複数の流路を形成し、
前記第4の工程において、前記複数の流路の中から選択される1つの流路と前記第2のゲートとを連通した状態とし、
前記第5の工程において、前記第2のゲートから前記選択された流路を通して前記第2のキャビティ内に樹脂を充填することを特徴とする請求項1に記載のレンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、透明樹脂製のレンズは、金型を用いた射出成形により形成される。また、このようなレンズの中でも、厚みが大きいレンズについては、金型を変更しながら射出成形を繰り返すことによって、多層に形成することが行われている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【0003】
下記特許文献1には、容積が相互に異なる複数の金型キャビティのうち最小容積の金型キャビティで成形した第1層としての中間成形品を容積のより大きい金型キャビティへ移送して第2層を積層成形し、以後中間成形品を第N層までの各金型キャビティへ順次移送して積層成形することにより成形される三層以上(N層)の多層成形品であって、多層成形品の鍔部は、その全周に亘り二層に形成され、多層成形品の鍔部を除いた部分である主要部がN層に形成されたレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-107229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1に記載のレンズでは、その全周に亘り二層に形成されるため、その外周部(鍔部)の厚みに対してゲートの厚みを1/2にしなければならず、ゲートが狭くなっている。
【0006】
この場合、狭いゲートを通してキャビティ内に充填される樹脂によって、レンズに残留応力が集中してしまい、レンズの光学性能に悪影響を与えてしまう可能性がある。特に、レンズの厚みが大きくなる場合には、N層の数が増えることによって、ゲートの数が増加することになる。このため、ゲートの数が増加するほど、ゲートの厚みが小さくなってしまい、上述したレンズの光学性能に悪影響を与えてしまう可能性が高くなる。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、ゲートの数に制限されることなく、光学性能に優れたレンズを形成できるレンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 金型を用いた射出成形により形成されるレンズの製造方法であって、
前記レンズの一面側及び前記レンズの外周部から全周に亘って拡径方向に突出されるフランジ部を形成する第1の金型と、前記レンズの他面側を形成する複数の第2の金型とを準備する第1の工程と、
前記第1の金型と、前記複数の第2の金型の中から選択される一の金型とを突き合わせることによって、第1のキャビティ及び第1のゲートを形成する第2の工程と、
前記第1のゲートを介して前記第1のキャビティ内に樹脂を充填することによって、前記レンズの中間体を形成する第3の工程と、
前記中間体が位置する前記第1の金型と、前記複数の第2の金型の中から選択される他の金型とを突き合わせることによって、第2のキャビティ及び前記フランジ部において前記第1のゲートと周方向において連続して隣り合う第2のゲートを形成する第4の工程と、
前記第2のゲートを介して前記第2のキャビティ内に樹脂を充填することによって、前記レンズの中間体又は前記レンズを形成する第5の工程とを含み、
前記第1の工程において、前記第1の金型の前記一の金型との突き合わせ位置に、前記第1のゲートを形成する第1の切欠部と、前記第2のゲートを形成する第2の切欠部とを設け、前記一の金型の前記第1の金型との突き合わせ位置に、前記第2のゲートに対応した流路形成部を設け、
前記第2の工程において、前記第1の金型と前記一の金型との突き合わせ位置にて、前記第2の切欠部が前記流路形成部により閉塞され、前記第1の切欠部により形成された前記第1のゲートが開放された状態とし、
前記第3の工程において、前記中間体の前記フランジ部に対応した外周部に前記フランジ部の一部を厚み方向に切り欠くように、前記流路形成部に対応した前記フランジ部の厚みと同等の流路を形成し、
前記第4の工程において、前記第1の金型と前記他の金型との突き合わせ位置にて、前記第2の切欠部により形成される前記第2のゲートが開放されると共に、前記流路と前記第2のゲートとが連通された状態とし、
前記第5の工程において、前記第2のゲートから前記流路を通して前記第2のキャビティ内に樹脂を充填することを特徴とするレンズの製造方法。
〔2〕 前記複数の第2の金型の中から選択される他の金型を順次選択しながら、前記第4の工程と前記第5の工程とを順次繰り返すことによって、前記レンズを形成する際に、
前記第1の工程において、前記第1の金型の前記一の金型との突き合わせ位置に、前記他の金型の数に応じた複数の第2の切欠部を設け、前記一の金型の前記第1の金型との突き合わせ位置に、前記他の金型の数に応じた複数の流路形成部を設け、
前記第2の工程において、前記第1の金型と前記一の金型との突き合わせ位置にて、前記複数の第2の切欠部が前記複数の流路形成部により閉塞された状態とし、
前記第3の工程において、前記中間体の前記フランジ部に対応した外周部に前記フランジ部の一部を厚み方向に切り欠くように、前記複数の流路形成部の各々に対応した前記フランジ部の厚みと同等の複数の流路を形成し、
前記第4の工程において、前記複数の流路の中から選択される1つの流路と前記第2のゲートとを連通した状態とし、
前記第5の工程において、前記第2のゲートから前記選択された流路を通して前記第2のキャビティ内に樹脂を充填することを特徴とする請求項1に記載のレンズの製造方法
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、ゲートの数に制限されることなく、光学性能に優れたレンズを形成できるレンズの製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係るレンズの製造方法を用いて形成されるレンズの構成を示す断面斜視図である。
図2図1に示すレンズの製造装置の構成を示す断面図である。
図3】第1の金型の構成を示す斜視図である。
図4】1層目の第2の金型の構成を示す斜視図である。
図5】2層目の第2の金型の構成を示す斜視図である。
図6図1に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図7図1に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図8図1に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図9図1に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図10図6に示す工程において、第1の金型と1層目の第2の金型とが突き合わされた状態を示す側面図である。
図11図7に示す工程において形成されるレンズの中間体の構成を示す側面図である。
図12図8に示す工程において、第1の金型と2層目の第2の金型とが突き合わされた状態を示す側面図である。
図13図9に示す工程において形成されるレンズの構成を示し、(A)はその一面側から見た斜視図、(B)はその他面側から見た斜視図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係るレンズの製造方法を用いて形成されるレンズの構成を示し、(A)はその平面図、(B)はその断面図である。
図15図14に示すレンズの製造装置の構成を示す断面図である。
図16】第1の金型の構成を示す斜視図である。
図17】1層目の第2の金型の構成を示す斜視図である。
図18】2層目の第2の金型の構成を示す斜視図である。
図19】3層目の第2の金型の構成を示す斜視図である。
図20図14に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図21図14に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図22図14に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図23図14に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図24図14に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図25図14に示すレンズの製造工程を説明するための断面図である。
図26図21に示す工程において形成されるレンズの中間体の構成を示す平面図である。
図27図23に示す工程において形成されるレンズの中間体の構成を示す平面図である。
図28図25に示す工程において形成されるレンズの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
[第1の実施形態]
(レンズ)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば図1に示すレンズ1Aについて説明する。
なお、図1は、レンズ1Aの構成を示す断面斜視図である。
【0013】
本実施形態のレンズ1Aは、図1に示すように、その一面2aが凸状のレンズ面、その他面2bが凸状のレンズ面により構成された両凸レンズである。また、レンズ1Aは、一面2aが他面2bよりも大きく突出した厚肉形状を有している。また、レンズ1Aの外周部には、全周に亘ってフランジ部2cが拡径方向に突出して設けられている。
【0014】
レンズ1Aは、例えばポリカーボネイトやアクリル等の透明な熱可塑性樹脂からなる。また、レンズ1Aは、その一面2a側を形成する第1の樹脂層3aと、その他面2a側を形成する第2の樹脂層3bとが積層された2層構造を有している。
【0015】
(レンズの製造装置)
次に、図2に示すレンズ1Aの製造装置100Aについて説明する。
なお、図2は、レンズ1Aの製造装置100Aの構成を示す断面図である。
【0016】
本実施形態の製造装置100Aは、図2に示すように、金型を用いた射出成形機であり、可動側取付部101と、固定側取付部102と、第1の射出ユニット103と、第2の射出ユニット104とを概略備えている。
【0017】
可動側取付部101は、固定側取付部102に対する接離方向(本実施形態では前後方向)と、この接離方向と直交する方向(本実施形態では上下方向)とに移動自在に設けられている。
【0018】
可動側取付部101の可動側取付部102と対向する側には、レンズ1Aの一面2a側を形成する第1の金型50が着脱自在に取り付けられている。
【0019】
第1の金型50は、放射状に複数(図2では2つ)並んで設けられると共に、互いの間をランナーRを介して接続している。また、放射状に並ぶ複数の第1の金型50は、可動側取付部101の上下方向に複数(本実施形態では2つ)並んで設けられている。
【0020】
固定側取付部102は、可動側取付部101と対向する側とは反対側に位置する第1の射出ユニット103と第1のスプルーS1を介して接続されている。また、固定側取付部102は、可動側取付部101と対向する側とは反対側に位置する第2の射出ユニット104と第2のスプルーS2を介して接続されている。
【0021】
第1のスプルーS1は、固定側取付部102の中央部に位置して、可動側取付部101と対向する側において放射状に分岐して設けられている。第2のスプルーS2は、第1のスプルーS1を挟んだ上下両側に切替部104aを介して分岐して設けられている。
【0022】
固定側取付部102の可動側取付部101と対向する側には、レンズ1Aの他面2b側を形成する複数(本実施形態では2つ)の第2の金型51,52が着脱自在に取り付けられている。
【0023】
複数の第2の金型51,52は、レンズ1Aの第1の樹脂層3aを形成する1層目の第2の金型51と、レンズ1Aの第2の樹脂層3bを形成する2層目の第2の金型52とから構成されている。
【0024】
1層目の第2の金型51は、第1のスプルーS1の周囲に位置して、放射状に複数(図2では2つ)並んで設けられる。2層目の第2の金型52は、第2のスプルーS2の周囲に位置して、放射状に複数(図2では2つ)並んで設けられる。したがって、1層目の第2の金型51は、固定側取付部102の中央部に設けられている。一方、2層目の第2の金型52は、固定側取付部102の1層目の第2の金型51を挟んだ上下両側に設けられている。
【0025】
第1の射出ユニット103は、レンズ1Aの第1の樹脂層3aとなる溶融した樹脂を第1のスプルーS1を介して供給する。第2の射出ユニット104は、切替部104aにより第2のスプルーS2を切り替えながら、レンズ1Aの第2の樹脂層3bとなる溶融した樹脂を第2のスプルーS2を介して供給する。
【0026】
以上のような構成を有する本実施形態の製造装置100Aでは、第1の金型50と、1層目の第2の金型51とを突き合わせることによって、その間に第1のキャビティC1と、その突き合わせ位置に第1のゲートG1とが形成される。この状態において、第1のスプルーS1と接続された第1のゲートG1から第1のキャビティC1内へと溶融した樹脂を充填することが可能となっている。
【0027】
一方、本実施形態の製造装置100Aでは、第1の金型50と、2層目の第2の金型52とを突き合わせることによって、その間に第2のキャビティC2と、その突き合わせ位置に第2のゲートG2とが形成される。この状態において、第2のスプルーS2とランナーRを介して接続された第2のゲートG2から第2のキャビティC2内へと溶融した樹脂を充填することが可能となっている。
【0028】
(レンズの製造方法)
次に、図2に示す製造装置100Aを用いたレンズ1Aの製造方法について、図3図13を参照しながら説明する。
【0029】
なお、図3は、第1の金型50の構成を示す斜視図である。図4は、1層目の第2の金型51の構成を示す斜視図である。図5は、2層目の第2の金型52の構成を示す斜視図である。図6は、レンズ1Aの製造工程を説明するための断面図である。図7は、レンズ1Aの製造工程を説明するための断面図である。図8は、レンズ1Aの製造工程を説明するための断面図である。図9は、レンズ1Aの製造工程を説明するための断面図である。図10は、図6に示す工程において、第1の金型50と1層目の第2の金型51とが突き合わされた状態を示す側面図である。図11は、図7に示す工程において形成されるレンズ1Aの中間体Mの構成を示す側面図である。図12は、図8に示す工程において、第1の金型と2層目の第2の金型とが突き合わされた状態を示す側面図である。図13は、図9に示す工程において形成されるレンズ1Aの構成を示し、(A)はその一面2a側から見た斜視図、(B)はその他面2b側から見た斜視図である。
【0030】
本実施形態のレンズ1Aを製造する際は、先ず、図3に示すレンズ1Aの一面2a側を形成する第1の金型50と、図4及び図5に示すレンズ1Aの他面2b側を形成する複数の第2の金型51,52とを準備する(以下、この工程を「第1の工程」という。)。
【0031】
このうち、第1の金型50は、図3に示すように、第2の金型51,52と対向する側に、レンズ1Aの一面2a(第1の樹脂層3a)に対応した形状の凹面50aと、レンズ1Aのフランジ部2c(第1の樹脂層3a)に対応した形状の段差面50bとを有している。
【0032】
また、第1の金型50は、第2の金型51,52と対向する側の外周部に、第1のゲートG1を形成する第1の切欠部50cと、第1のゲートG2を形成する第2の切欠部50dとを有している。第1の切欠部50cと第2の切欠部50dとは、第1の金型50の周方向において隣り合うことで、その間が連続して設けられている。
【0033】
一方、1層目の第2の金型51は、図4に示すように、複数の第2の金型51,52の中から選択される一の金型として、第1の金型50と対向する側に、第1の樹脂層3aに対応した形状の凸面51aを有している。
【0034】
また、凸面51aの外周部には、第2のゲートG2に対応した流路形成部53が設けられている。流路形成部53は、第1の金型50と第2の金型51との突き合わせ位置において、第2の切欠部50dを閉塞する突起部により構成されている。また、この突起部の形状は、後述する流路Tに対応した形状を有している。
【0035】
一方、2層目の第2の金型52は、図5に示すように、複数の第2の金型51,52の中から選択される他の金型として、第1の金型50と対向する側に、レンズ1Aの他面2b(第2の樹脂層3b)に対応した形状の凹面52aを有している。
【0036】
次に、図6に示すように、第1の金型50と、1層目の第2の金型51とを突き合わせることによって、第1のキャビティC1及び第1のゲートG1を形成する(以下、この工程を「第2の工程」という。)。
【0037】
このとき、本実施形態の製造装置100Aでは、固定側取付部102に対して可動側取付部101が上方側に位置している。これにより、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型50と、固定側取付部102の中央部に位置する1層目の第2の金型51とが突き合わされた状態となっている。
【0038】
また、本実施形態の製造装置100Aでは、図10に示すように、第1の金型50と、1層目の第2の金型51との突き合わせ位置において、第2の切欠部50dが流路形成部53により閉塞され、第1の切欠部50cにより形成された第1のゲートG1が開放された状態となっている。
【0039】
次に、図7に示すように、第1のゲートG1を介して第1のキャビティG1内に溶融した樹脂Lを充填することによって、第1の樹脂3aからなるレンズ1Aの中間体Mを形成する(以下、この工程を「第3の工程」という。)。
【0040】
レンズ1Aの中間体Mには、図11に示すように、第1のゲート部G1に対応した位置に第1の樹脂層3aからなる第1のゲート痕2dと、流路形成部53に対応した位置に流路Tとが形成されている。流路Tは、フランジ部2cの一部を厚み方向に切り欠くように形成されている。
【0041】
次に、図8に示すように、中間体Mが位置する第1の金型50と、2層目の第2の金型52とを突き合わせることによって、第2のキャビティC2及び第2のゲートG2を形成する(以下、この工程を「第4の工程」という。)。
【0042】
このとき、本実施形態の製造装置100Aでは、固定側取付部102に対して可動側取付部101が下方側に位置している。すなわち、上述した第3の工程の後に、可動側取付部101が下方側に移動することによって、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型50と、固定側取付部102の下方側に位置する2層目の第2の金型52とが突き合わされた状態となっている。
【0043】
また、本実施形態の製造装置100Aでは、図12に示すように、第1の金型50と、2層目の第2の金型51との突き合わせ位置において、第2の切欠部50dにより形成される第2のゲートG2が開放されると共に、この第2のゲートG2と流路Tとが連通した状態となっている。
【0044】
次に、図9に示すように、第2のゲートG2から流路Tを通して第2のキャビティC2内に溶融した樹脂を充填することによって、第2の樹脂層3bを形成する(以下、この工程を「第5の工程」という。)。これにより、第1の樹脂層3aと第2の樹脂層3bとが積層された2層構造のレンズ1Aを成形することができる。
【0045】
成形後のレンズ1Aには、図13に示すように、第1のゲート痕2dと、第2のゲート部G2に対応した位置に第2の樹脂層3bからなる第2のゲート痕2eと、流路Tに対応した位置に第2の樹脂3bからなるフランジ部2cの一部とが形成されている。なお、第1のゲート痕及2d及び第2のゲート痕2eについては、レンズ1Aとして不要な部分であることから、成形後に切断して除去される。
【0046】
ところで、本実施形態の製造装置100Aでは、上述した図8に示すように、固定側取付部102に対して可動側取付部101が下方側に位置するときに、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型50と、固定側取付部102の下方側に位置する2層目の第2の金型52とが突き合わされた状態となっている。同時に、可動側取付部101の上方側に位置する第1の金型50と、固定側取付部102の中央部に位置する1層目の第2の金型51とが突き合わされた状態となっている。
【0047】
したがって、この製造装置100Aでは、図9に示す状態において、上述した可動側取付部101の下方側で行われる第5の工程とは別に、可動側取付部101の上方側で第3の工程を同時に行うことが可能である。
【0048】
その後、本実施形態の製造装置100Aでは、第5の工程において形成されたレンズ1Aを離型した後、可動側取付部101が上方側に移動することによって、上述した図6に示すように、固定側取付部102に対して可動側取付部101が下方側に位置した状態となる。
【0049】
このとき、可動側取付部101の上方側に位置する第1の金型50と、固定側取付部102の上方側に位置する2層目の第2の金型52とが突き合わされた状態となっている。同時に、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型50と、固定側取付部102の中央部に位置する1層目の第2の金型51とが突き合わされた状態となっている。
【0050】
したがって、この製造装置100Aでは、図7に示す状態において、上述した可動側取付部101の上方側で行われる第5の工程とは別に、可動側取付部101の下方側で第3の工程を同時に行うことが可能である。
【0051】
以上のようにして、本実施形態の製造装置100Aでは、可動側取付部101の下方側で第3の工程を行っている間、可動側取付部101の上方側で第5の工程を行うことができる。また、本実施形態の製造装置100Aでは、可動側取付部101の下方側で第5の工程を行っている間、可動側取付部101の上方側で第3の工程を行うことができる。
【0052】
これにより、本実施形態の製造方法では、レンズ1Aを効率良く製造することが可能である。
【0053】
以上のように、本実施形態のレンズ1Aの製造方法では、上述した第2の工程において、第1の金型50と1層目の第1の金型51との突き合わせ位置に、第2のゲートG2に対応した流路形成部53を設け、第3の工程において、中間体Mの外周部(フランジ部2c)に流路形成部53に対応した流路Tを形成している。その後、第4の工程において、流路Tと第2のゲートG2とを連通した状態とし、第5の工程において、第2のゲートG2から流路Tを通して第2のキャビティC2内に樹脂を充填している。
【0054】
これにより、フランジ部2cの厚みと同等の流路Tを形成できるため、この流路Tを通して第2のゲートG2から第2のキャビティC2内に充填される樹脂の流動性を良くすることができ、レンズ1Aへの残留応力が低く抑えられる。
【0055】
したがって、本実施形態の製造方法によれば、ゲートの数に制限されることなく、光学性能に優れたレンズ1Aを形成することが可能である。
【0056】
[第2の実施形態]
(レンズ)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば図14に示すレンズ1Bについて説明する。
【0057】
なお、図14は、レンズ1Bの構成を示す断面図である。また、以下の説明では、上記レンズ1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0058】
本実施形態のレンズ1Bは、図14に示すように、レンズ1Aは、その一面2a側を形成する第1の樹脂層3aと、その他面2a側を形成する第2の樹脂層3bと、第1の樹脂層3aと第2の樹脂層3bとの間を形成する第3の樹脂層3cとが積層された3層構造を有している。それ以外は、上記レンズ1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0059】
(レンズの製造装置)
次に、図15に示すレンズ1Bの製造装置100Bについて説明する。
なお、図15は、レンズ1Bの製造装置100Bの構成を示す断面図である。
【0060】
本実施形態の製造装置100Bは、図15に示すように、上記製造装置100Aの構成に加えて、第3の射出ユニット105を備えている。
【0061】
定側取付部102は、可動側取付部101と対向する側とは反対側に位置する第3の射出ユニット105と第3のスプルーS3を介して接続されている。第3のスプルーS3は、第1のスプルーS1を挟んだ上下両側に切替部105aを介して分岐して設けられている。また、第2のスプルーS2と第3のスプルーS3とは、第1のスプルーS1を挟んだ上下両側で上下方向に並ぶ順序が逆となっている。
【0062】
可動側取付部101の可動側取付部102と対向する側には、レンズ1Bの一面2a側を形成する第1の金型60が着脱自在に取り付けられている。
【0063】
第1の金型60は、放射状に複数(図15では2つ)並んで設けられると共に、互いの間をランナーRを介して接続している。また、放射状に並ぶ複数の第1の金型60は、可動側取付部101の上下方向に複数(本実施形態では3つ)並んで設けられている。
【0064】
固定側取付部102の可動側取付部101と対向する側には、レンズ1Bの他面2b側を形成する複数(本実施形態では3つ)の第2の金型61,62,63が着脱自在に取り付けられている。
【0065】
複数の第2の金型61,62,63は、レンズ1Bの第1の樹脂層3aを形成する1層目の第2の金型61と、レンズ1Bの第3の樹脂層3cを形成する2層目の第2の金型62と、レンズ1Bの第2の樹脂層3bを形成する3層目の第2の金型63とから構成されている。
【0066】
1層目の第2の金型61は、第1のスプルーS1の周囲に位置して、放射状に複数(図15では2つ)並んで設けられる。2層目の第2の金型62は、第2のスプルーS2の周囲に位置して、放射状に複数(図15では2つ)並んで設けられる。3層目の第2の金型63は、第3のスプルーS3の周囲に位置して、放射状に複数(図15では2つ)並んで設けられる。
【0067】
したがって、1層目の第2の金型61は、固定側取付部102の中央部に設けられている。一方、2層目の第2の金型62は、固定側取付部102の1層目の第2の金型61を挟んだ上下両側に設けられている。一方、3層目の第2の金型63は、固定側取付部102の1層目の第2の金型61を挟んだ上下両側に設けられている。また、2層目の第2の金型62と3層目の第2の金型63とは、1層目の第2の金型61を挟んだ上下両側で上下方向に並ぶ順序が逆となっている。
【0068】
第1の射出ユニット103は、レンズ1Aの第1の樹脂層3aとなる溶融した樹脂を第1のスプルーS1を介して供給する。第2の射出ユニット104は、切替部104aにより第2のスプルーS2を切り替えながら、レンズ1Aの第3の樹脂層3cとなる溶融した樹脂を第2のスプルーS2を介して供給する。第3の射出ユニット105は、切替部105aにより第3のスプルーS3を切り替えながら、レンズ1Bの第2の樹脂層3bとなる溶融した樹脂を第3のスプルーS3を介して供給する。
【0069】
以上のような構成を有する本実施形態の製造装置100Bでは、第1の金型60と、1層目の第2の金型61とを突き合わせることによって、その間に第1のキャビティC1と、その突き合わせ位置に第1のゲートG1とが形成される。この状態において、第1のスプルーS1と接続された第1のゲートG1から第1のキャビティC1内へと溶融した樹脂を充填することが可能となっている。
【0070】
一方、本実施形態の製造装置100Bでは、第1の金型60と、2層目の第2の金型62とを突き合わせることによって、その間に第2のキャビティC2Aと、その突き合わせ位置に第2のゲートG2Aとが形成される。この状態において、第2のスプルーS2とランナーRを介して接続された第2のゲートG2Aから第2のキャビティC2A内へと溶融した樹脂を充填することが可能となっている。
【0071】
一方、本実施形態の製造装置100Bでは、第1の金型60と、3層目の第3の金型63とを突き合わせることによって、その間に第2のキャビティC2Bと、その突き合わせ位置に第2のゲートG2Bとが形成される。この状態において、第3のスプルーS3とランナーRを介して接続された第2のゲートG2Bから第2のキャビティC2B内へと溶融した樹脂を充填することが可能となっている。
【0072】
(レンズの製造方法)
次に、図15に示す製造装置100Bを用いたレンズ1Bの製造方法について、図16図28を参照しながら説明する。
なお、図16は、第1の金型60の構成を示す斜視図である。図17は、1層目の第2の金型61の構成を示す斜視図である。図18は、2層目の第2の金型62の構成を示す斜視図である。図19は、3層目の第2の金型63の構成を示す斜視図である。図20は、レンズ1Bの製造工程を説明するための断面図である。図21は、レンズ1Bの製造工程を説明するための断面図である。図22は、レンズ1Bの製造工程を説明するための断面図である。図23は、レンズ1Bの製造工程を説明するための断面図である。図24は、レンズ1Bの製造工程を説明するための断面図である。図25は、レンズ1Bの製造工程を説明するための断面図である。図26は、図21に示す工程において形成されるレンズ1Bの中間体M1の構成を示す側面図である。図27は、図23に示す工程において形成されるレンズ1Bの中間体M2の構成を示す側面図である。図28は、図25に示す工程において形成されるレンズ1Bの構成を示す平面図である。
【0073】
本実施形態のレンズ1Bを製造する際は、先ず、第1の工程として、図16に示すレンズ1Bの一面2a側を形成する第1の金型60と、図17図19に示すレンズ1Bの他面2b側を形成する複数(本実施形態では3つ)の第2の金型61,62,63とを準備する。
【0074】
このうち、第1の金型60は、図16に示すように、第2の金型61,62,63と対向する側に、レンズ1Bの一面2a(第1の樹脂層3a)に対応した形状の凹面60aと、レンズ1Bのフランジ部2c(第1の樹脂層3a)に対応した形状の段差面60bとを有している。
【0075】
また、第1の金型60は、第2の金型61,62,63と対向する側の外周部に、第1のゲートG1を形成する第1の切欠部60cと、第2のゲートG2Aを形成する第2の切欠部60dと、第2のゲートG2Bを形成する第3の切欠部60eとを有している。
【0076】
このうち、第1の切欠部60cと第3の切欠部60eとは、第1の金型60の周方向において隣り合うことで、その間が連続して設けられている。一方、第2の切欠部60dは、第1の切欠部60c及び第3の切欠部60eとは離間した位置に設けられている。
【0077】
一方、1層目の第2の金型61は、図17に示すように、複数の第2の金型61,62,63の中から選択される一の金型として、第1の金型60と対向する側に、第1の樹脂層3aに対応した形状の凸面61aを有している。
【0078】
また、凸面61aの外周部には、第2のゲートG2Aに対応した流路形成部53Aと、第2のゲートG2Bに対応した流路形成部53Bとが設けられている。
【0079】
流路形成部53Aは、第1の金型60と第2の金型61との突き合わせ位置において、第2の切欠部60dを閉塞する突起部により構成されている。また、この突起部の形状は、後述する流路T1に対応した形状を有している。
【0080】
流路形成部53Bは、第1の金型60と第2の金型61との突き合わせ位置において、第3の切欠部60eを閉塞する突起部により構成されている。また、この突起部の形状は、後述する流路T2に対応した形状を有している。
【0081】
一方、2層目の第2の金型62は、図18に示すように、複数の第2の金型61,62,63の中から選択される他の金型として、第1の金型60と対向する側に、第3の樹脂層3cに対応した形状の凸面62aを有している。
【0082】
また、凸面62aの外周部には、第2のゲートG2Bに対応した流路形成部53Cが設けられている。流路形成部53Cは、第1の金型60と第2の金型62との突き合わせ位置において、第3の切欠部60eを閉塞する突起部により構成されている。また、この突起部の形状は、後述する流路T2に対応した形状を有している。
【0083】
一方、3層目の第2の金型63は、図19に示すように、複数の第2の金型61,62,63の中から選択される他の金型として、第1の金型60と対向する側に、レンズ1Bの他面2b(第2の樹脂層3b)に対応した形状の凹面63aを有している。
【0084】
次に、第2の工程として、図20に示すように、第1の金型60と、1層目の第2の金型61とを突き合わせることによって、第1のキャビティC1及び第1のゲートG1を形成する。
【0085】
このとき、本実施形態の製造装置100Bでは、固定側取付部102に対して可動側取付部101が上方側に位置している。これにより、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の中央部に位置する1層目の第2の金型61とが突き合わされた状態となっている。
【0086】
また、本実施形態の製造装置100Aでは、第1の金型60と、1層目の第2の金型61との突き合わせ位置において、第2の切欠部60dが流路形成部53Aにより閉塞され、第3の切欠部60eが流路形成部53Bにより閉塞され、第1の切欠部60cにより形成された第1のゲートG1が開放された状態となっている。
【0087】
次に、第3の工程として、図21に示すように、第1のゲートG1を介して第1のキャビティG1内に溶融した樹脂Lを充填することによって、第1の樹脂3aからなるレンズ1Bの中間体M1を形成する。
【0088】
レンズ1Bの中間体M1には、図26に示すように、第1のゲート部G1に対応した位置に第1の樹脂層3aからなる第1のゲート痕2dと、流路形成部53Aに対応した位置に流路T1と、流路形成部53Bに対応した位置に流路T2とが形成されている。流路T1,T2は、それぞれフランジ部2cの一部を厚み方向に切り欠くように形成されている。
【0089】
次に、1回目の第4の工程として、図22に示すように、中間体M1が位置する第1の金型60と、2層目の第2の金型62とを突き合わせることによって、第2のキャビティC2A及び第2のゲートG2Aを形成する。
【0090】
このとき、本実施形態の製造装置100Bでは、固定側取付部102に対して可動側取付部101が中央部に位置している。すなわち、上述した第3の工程の後に、固定側取付部102に対して可動側取付部101が下方側に移動することによって、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の下方側に位置する2層目の第2の金型62とが突き合わされた状態となっている。
【0091】
また、本実施形態の製造装置100Bでは、第1の金型60と、2層目の第2の金型62との突き合わせ位置において、第3の切欠部60eが流路形成部53Cにより閉塞され、第2の切欠部60dにより形成される第2のゲートG2Aが開放されると共に、この第2のゲートG2Aと流路T1とが連通した状態となっている。
【0092】
次に、1回目の第5の工程として、図23に示すように、第2のゲートG2Aから流路T1を通して第2のキャビティG2A内に溶融した樹脂Lを充填することによって、第1の樹脂3a及び第3の樹脂3cからなるレンズ1Bの中間体M2を形成する。
【0093】
レンズ1Aの中間体M2には、図27に示すように、第1のゲート痕2dと、第2のゲート部G2Aに対応した位置に第3の樹脂層3cからなる第2のゲート痕2eと、流路T1に対応した位置に第2の樹脂層3bからなるフランジ部2cの一部と、流路形成部53Cに対応した位置に流路T2とが形成されている。
【0094】
次に、2回目の第4の工程として、図24に示すように、中間体M2が位置する第1の金型60と、3層目の第2の金型63とを突き合わせることによって、第2のキャビティC2B及び第2のゲートG2Bを形成する。
【0095】
このとき、本実施形態の製造装置100Bでは、固定側取付部102に対して可動側取付部101が下方側に位置している。すなわち、上述した1回目の第5の工程の後に、固定側取付部102に対して可動側取付部101が下方側に移動することによって、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の下方側に位置する3層目の第2の金型63とが突き合わされた状態となっている。
【0096】
また、本実施形態の製造装置100Bでは、第1の金型60と、3層目の第2の金型63との突き合わせ位置において、第3の切欠部60eにより形成される第2のゲートG2Bが開放されると共に、この第2のゲートG2Bと流路T2とが連通した状態となっている。
【0097】
次に、2回目の第5の工程として、図25に示すように、第2のゲートG2Bから流路T2を通して第2のキャビティC2B内に溶融した樹脂を充填することによって、第2の樹脂層3bを形成する。これにより、第1の樹脂層3aと第3の樹脂層3cと第2の樹脂層3bとが積層された3層構造のレンズ1Bを成形することができる。
【0098】
成形後のレンズ1Bは、図28に示すように、第1のゲート痕2d及び第2のゲート痕2eと、第2のゲート部G2Bに対応した位置に第2の樹脂層3bからなる第3のゲート痕2fと、流路T1に対応した位置に第3の樹脂層3cからなるフランジ部2cの一部と、流路T2に対応した位置に第2の樹脂層3bからなるフランジ部2cの一部とが形成されている。なお、第1のゲート痕及2d、第2のゲート痕2e及び第3のゲート痕2fについては、レンズ1Bとして不要な部分であることから、成形後に切断して除去される。
【0099】
ところで、本実施形態の製造装置100Bでは、上述した図22に示すように、固定側取付部102に対して可動側取付部101が中央部に位置するときに、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の下方側に位置する2層目の第2の金型62とが突き合わされた状態となっている。同時に、可動側取付部101の中央部に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の中央部に位置する1層目の第2の金型61とが突き合わされた状態となっている。
【0100】
したがって、この製造装置100Bでは、図23に示す状態において、上述した可動側取付部101の下方側で行われる1回目の第5の工程とは別に、可動側取付部101の中央部で第3の工程を同時に行うことが可能である。
【0101】
その後、本実施形態の製造装置100Bでは、可動側取付部101が下方側に移動することによって、上述した図24に示すように、固定側取付部102に対して可動側取付部101が下方側に位置した状態となる。
【0102】
このとき、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の下方側に位置する3層目の第2の金型63とが突き合わされた状態となっている。同時に、可動側取付部101の中央部に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の下方側に位置する2層目の第2の金型62とが突き合わされた状態となっている。同時に、可動側取付部101の上方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の中央部に位置する1層目の第2の金型61とが突き合わされた状態となっている。
【0103】
したがって、この製造装置100Aでは、図24に示す状態において、上述した可動側取付部101の下方側で行われる2回目の第5の工程とは別に、可動側取付部101の中央部で1回目の第5の工程と、可動側取付部101の上方側で第3の工程とを同時に行うことが可能である。
【0104】
その後、本実施形態の製造装置100Bでは、2回目の第5の工程において形成されたレンズ1Bを離型した後、可動側取付部101が上方側に移動することによって、上述した図20に示すように、固定側取付部102に対して可動側取付部101が上方側に位置した状態となる。
【0105】
このとき、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の中央部に位置する1層目の第2の金型61とが突き合わされた状態となっている。同時に、可動側取付部101の中央部に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の上方側に位置する3層目の第2の金型63とが突き合わされた状態となっている。同時に、可動側取付部101の上方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の上方側に位置する2層目の第2の金型62とが突き合わされた状態となっている。
【0106】
したがって、この製造装置100Aでは、図21に示す状態において、上述した可動側取付部101の下方側で行われる第3の工程とは別に、可動側取付部101の中央部で2回目の第5の工程と、可動側取付部101の上方側で1回目の第5の工程とを同時に行うことが可能である。
【0107】
その後、本実施形態の製造装置100Bでは、2回目の第5の工程において形成されたレンズ1Bを離型した後、可動側取付部101が下方側に移動することによって、上述した図22に示すように、固定側取付部102に対して可動側取付部101が中央部に位置した状態となる。
【0108】
このとき、可動側取付部101の下方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の下方側に位置する2層目の第2の金型62とが突き合わされた状態となっている。同時に、可動側取付部101の中央部に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の中央部に位置する1層目の第2の金型61とが突き合わされた状態となっている。同時に、可動側取付部101の上方側に位置する第1の金型60と、固定側取付部102の上方側に位置する3層目の第2の金型63とが突き合わされた状態となっている。
【0109】
したがって、この製造装置100Bでは、図23に示す状態において、上述した可動側取付部101の下方側で行われる1回目の第5の工程とは別に、可動側取付部101の中央部で第3の工程と、可動側取付部101の上方側で2回目の第5の工程とを同時に行うことが可能である。
【0110】
以上のようにして、本実施形態の製造装置100Bでは、可動側取付部101の下方側で第3の工程を行っている間、可動側取付部101の中央部で2回目の第5の工程を行うと共に、可動側取付部101の上方側で1回目の第5の工程を行うことができる。
【0111】
また、本実施形態の製造装置100Bでは、可動側取付部101の下方側で1回目の第5の工程を行っている間、可動側取付部101の中央部で第3の工程を行うと共に、可動側取付部101の上方側で2回目の第5の工程を行うことができる。
【0112】
また、本実施形態の製造装置100Bでは、可動側取付部101の下方側で2回目の第5の工程を行っている間、可動側取付部101の中央部で1回目の第5の工程を行うと共に、可動側取付部101の上方側で第3の工程を行うことができる。
【0113】
これにより、本実施形態の製造方法では、レンズ1Bを効率良く製造することが可能である。
【0114】
以上のように、本実施形態のレンズ1Bの製造方法では、上述した第2の工程において、第1の金型61と1層目の第2の金型61との突き合わせ位置に、2層目の第2の金型62及び3層目の第2の金型63の数(本実施形態では2つ)に応じた複数の流路形成部53A,53Bを設け、第3の工程において、中間体M1の外周部(フランジ部2c)に複数の流路形成部53A,53Bの各々に対応した複数(本実施形態では2つ)の流路T1,T2を形成している。
【0115】
その後、1回目の第4の工程において、複数の流路T1,T2の中から選択される流路T1と第2のゲートG2Aとを連通した状態とし、1回目の第5の工程において、第2のゲートG2Aから流路T1を通して第2のキャビティC2A内に樹脂を充填している。
【0116】
さらに、2回目の第4の工程において、複数の流路T1,T2の中から選択される流路T2と第2のゲートG2Bとを連通した状態とし、2回目の第5の工程において、第2のゲートG2Bから流路T2を通して第2のキャビティC2B内に樹脂を充填している。
【0117】
これにより、フランジ部2cの厚みと同等の流路T1,T2を形成できるため、この流路T1,T2を通して第2のゲートG2A,G2Bから第2のキャビティC2A,C2B内に充填される樹脂の流動性を良くすることができ、レンズ1Bへの残留応力が低く抑えられる。
【0118】
したがって、本実施形態の製造方法によれば、ゲートの数に制限されることなく、光学性能に優れたレンズ1Bを形成することが可能である。
【0119】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、2層構造のレンズ1Aを形成する場合と、3層構造のレンズ1Bを形成する場合とを例示しているが、レンズを構成する樹脂層の数については特に限定されるものではない。
【0120】
すなわち、本発明を適用したレンズの製造方法では、レンズを構成する樹脂層の数に応じた複数の第2の金型を準備し、これら複数の第2の金型の中から第2の金型を順次選択しながら、第4の工程と第5の工程とを順次繰り返すことによって、多層のレンズを形成することが可能である。
【0121】
また、本発明を適用したレンズの製造方法では、上述したレンズ1A,1Bのように、大きな厚みを有した両凸レンズを形成する場合に好適に用いられるものの、レンズの形状については特に限定されるものではない。
【0122】
また、上記レンズ1A,1Bの製造装置100A,100Bでは、固定側取付部102に対して可動側取付部100を上下方向に移動させる構成となっているが、固定側取付部に対して可動側取付部を軸回りに回転させながら、第1の金型と複数の第2の金型との突き合わせ位置を変更する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0123】
1A,1B…レンズ 2a…一面 2b…他面 2c…フランジ部 2d…第1のゲート痕 2e…第2のゲート痕 2f…第3のゲート痕 3a…第1の樹脂層 3b…第2の樹脂層 3c…第3の樹脂層 50…第1の金型 51…1層目の第2の金型 52…2層目の第2の金型 53,53A,53B,53C…流路形成部 60…第1の金型 61…1層目の第2の金型 62…2層目の第2の金型 63…3層目の第2の金型 100A,100B…製造装置 101…可動側取付部 102…固定側取付部 103…第1の射出ユニット 104…第2の射出ユニット 105…第3の射出ユニット R…ランナー S1…第1のスプルー S2…第2のスプルー S3…第3のスプルー C1…第1のキャビティ C2,C2A,C2B…第2のキャビティ G1…第1のゲート G2,G2A,G2B…第2のゲート T,T1,T2…流路 L…樹脂 M,M1,M2…中間体
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