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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ワーク保持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B25J15/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020156585
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022050150
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石本剣昇
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-344034(JP,A)
【文献】特開2001-269737(JP,A)
【文献】特開2002-231801(JP,A)
【文献】特開平06-024517(JP,A)
【文献】特表2003-527737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ース板と、板状のワークをその後端側において把持する把持機構と、前記ベース板上に設けられ、前記把持機構を前記ベース板の前後方向に沿って移動する移動機構と、前記ベース板の前端に設けられ、前記把持されたワークをその前端側において吸着するための吸盤を有する少なくとも一の吸着パッドとを有するロボットハンドと、
前記吸盤の内部を加減圧する加減圧部と、
前記吸盤の内部の減圧により前記把持されたワークを前記吸盤に吸着させるために前記加減圧部を制御し、前記吸盤の内部の加圧により前記吸盤から前記ワークに向けてエアを吐出させて前記ワークを浮上させながら前記把持されたワークを前後に移動させるために前記加減圧部と前記移動機構とを制御する制御部とを具備するワーク保持装置。
【請求項2】
前記吸着パッドは、前記吸盤に連通する円筒体を有する、請求項記載のワーク保持装置。
【請求項3】
前記吸着パッドは、前記ベース板を基準としてその高さが前記把持機構の把持中心の高さと同じになるように前記ベース板に立設されたポールに支持される、請求項1又は2記載のワーク保持装置。
【請求項4】
前記吸着パッドは一対であり、前記ベース板の左右方向に離間される、請求項1乃至のいずれか一項記載のワーク保持装置。
【請求項5】
前記吸着パッドは自己潤滑性樹脂製である、請求項1乃至4のいずれか一項記載のワーク保持装置。
【請求項6】
記ロボットハンドを移動する移動装置をさらに備える請求項1記載のワーク保持装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド、ワーク保持装置及び搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインにおいて、ワークを搬送する装置としてロボット装置が広く活用されている。ロボット装置には搬送するワークに応じたハンドが装着されている。例えば、板状のワークを搬送するハンドとしては、板状のワークを2本の指状部に載置するようにして搬送するハンドが知られている(例えば、特許文献1)。しかし、特許文献1に開示されているハンドは、ワークを指状部に載置しているため、ワークの投入口が狭く、指状部が挿入できない場合には、使用することができない。一方、板状のワークの基端部を把持して搬送するハンドを使用した場合には、ワークを片持ちで保持しているために、空気抵抗や自重によりワークの先端が撓んでしまい、狭いワーク投入口への挿入位置が定まらないといった問題が発生する。そのため、空気抵抗や自重によるワークの先端の撓みを抑えるために、ワークの搬送速度や搬送姿勢が限定的にならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-168719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、板状の薄いワークを搬送する際に、搬送姿勢の自由度が高く、搬送速度の低下を抑えられ、狭いワーク投入口にワークを投入することができることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るワーク保持装置は、ベース板と、ワークをその後端側において把持する把持機構と、把持機構をベース板の前後方向に沿って移動する移動機構と、ベース板の前端に設けられ、把持されたワークをその前端側において吸着するための少なくとも一の吸着パッドと、を具備する。
【発明の効果】
【0006】
搬送姿勢の自由度が高く、搬送速度の低下を抑えられ、狭いワーク投入口にワークを投入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係るワーク保持装置を装備したロボット装置を示す側面図である。
図2図2は、図1のロボットハンドの一例を示す斜視図である。
図3図3は、図2のロボットハンドの平面図である。
図4図4は、図2のロボットハンドの側面図である。
図5図5は、基準姿勢時のロボットハンドによるワークの把持動作の手順の一例を示す側面図である。
図6図6は、反転姿勢時のロボットハンドによるワークの把持動作の手順の他の例を示す側面図である。
図7図7は、吸着パッドによるエアの排気動作を示す側面図である。
図8図8は、ワークの収容動作の直前のロボットハンドをラックとともに示す斜視図である。
図9図9は、ワークの収容動作の直前のロボットハンドをラックとともに示す側面図である。
図10図10は、ワークの収容動作中のロボットハンドをラックとともに示す側面図である。
図11図11は、本実施形態の変形例に係るワーク保持装置を装備したロボット装置を示す側面図である。
図12図12は、図11のロボットハンドの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るワーク保持装置を説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係るワーク保持装置6は矩形板状の薄いワークWのピッキング作業に適した装置である。ワーク保持装置6は、ロボットアーム機構7などの移動装置に取り付けられるロボットハンド1と、ロボットハンド1が有する吸着パッドの内部を加減圧するための加減圧装置8と、ロボットハンド1の動作を制御するハンド制御装置と、を有する。本実施形態では、ロボットアーム機構7を制御するロボット制御装置9が、ハンド制御装置の機能を有するものとして説明する。なお、ハンド制御装置は、ロボット制御装置9と別体であってもよい。
【0010】
ロボット制御装置9は、ロボットアーム機構7及びロボットハンド1による一連の動作が記述されたタスクプログラムが記憶されたHDD等の記憶装置、記憶装置に記憶されたプログラムを実行するCPU等の演算処理装置などを備える。演算処理装置によりタスクプログラムが実行されることで、ロボットアーム機構7及びロボットハンド1は、タスクプログラムで規定されたシーケンスに従って動作し、ベルトコンベア100により所定の位置に搬送されたワークWをピックアップし、ベルトコンベア100からラック200まで搬送し、ラック200の所定位置にリリースすることができる。
【0011】
図2に示すように、ロボットハンド1は、ベース2と、ワークWをその後端側において把持する把持機構3と、把持機構3をベース2の前後方向に沿って移動させる移動機構4と、把持機構3により把持されたワークWをその前端側において吸着する吸着部5と、を有する。本実施形態では、ワークWは矩形板であるため、把持機構3はワークWをその後端側の2つの角部にできるだけ近い2箇所においてそれぞれ把持できるように構成され、吸着部5はワークWをその前端側の2つの角部にできるだけ近い2箇所においてそれぞれ吸着できるように構成される。
【0012】
典型的には、ベース2は、ワークWよりも長く、ワークWと同一の幅を有する矩形状のベース板21と、ベース板21の後端に垂直に接続された矩形状の接続板23とを有する。接続板23の外面にはアダプタ25が取り付けられる。ロボットハンド1は、アダプタ25を介して、ロボットアーム機構7のハンド取付部71に装着される。本実施形態の説明で使用される直交3軸は以下のように定義される。すなわち、接続板23の外面に直交する軸をX軸、ベース板21の内面に直交する軸をZ軸、X軸とZ軸とに直交する軸をY軸と定義する。X軸方向はロボットハンド1の前後方向(長さ方向)、Z軸方向はロボットハンド1の上下方向(厚み方向)、Y軸方向はロボットハンド1の左右方向(幅方向)に対応する。また、ベース板21の幅中央を通り、X軸と平行な直線をベース中心線と定義する。
【0013】
移動機構4は、把持機構3をベース板21の前後方向に沿って移動自在に支持する支持機構と、把持機構3の移動を駆動する図示しない駆動部とから構成される。支持機構は、ベース板21上にその前後方向と平行に設置されるレール41と、レール41に移動自在に係合される矩形板状のスライダブロック43とから構成される。駆動部としては、例えば、ボールネジ及びナットからなるボールネジ機構と、ボールネジを回転駆動するためのサーボモータとから構成される。スライダブロック43には把持機構3が設置され、ナットはスライダブロック43に接続されており、ボールネジの回転に従って把持機構3はベース板21の前後方向に沿って移動する。なお、ボールネジ機構は支持機構を兼用するものであってもよい。
【0014】
把持機構3は、一対のチャック機構31,32と、一対のチャック機構31,32の開閉を駆動するチャック駆動機構(図示しない)と、を有する。一対のチャック機構31,32は、ベース中心線を挟んで左右両側の、ベース中心線から等距離の位置にそれぞれ配置されるように、スライダブロック43にそれぞれ固定されている。一方のチャック機構31は接近・離反自在に設けられた一対のフィンガ311,312を有し、フィンガ311,312の開閉方向が上下方向と平行になり、且つフィンガ311,312の先端が前方を向くようにスライダブロック43に取り付けられている。同様に、他方のチャック機構32は接近・離反自在に設けられた一対のフィンガ321、322を有し、一対のフィンガ321,322の開閉方向が上下方向と平行になり、且つフィンガ321,322の先端が前方を向くようにスライダブロック43に取り付けられている。
【0015】
吸着部5は、一対の吸着パッド51,52を有する。一対の吸着パッド51,52は、ベース板21の前端に配置される。吸着パッド51,52各々は、円錐形状の弾性樹脂製の吸盤51a,52aを有する。吸盤51a,52aは円筒体51b,52bにそれぞれ連結され、典型的には一体成形される。吸盤51a,52aの底部には孔が開けられ、吸盤51a,52aの内部は円筒体51b,52bの内部に連通されている。円筒体51b,52bは吸盤51a,52aと同じく弾性樹脂製であり、吸盤51a,52aがワークWを吸着するとき適宜変形して、ワークWに加わる過度な圧力を吸収する。
【0016】
ベース板21の前端の両側にはポール53,54がそれぞれ立設される。ポール53,54の先端には吸着パッド51,52がそれぞれ設置される。ポール53,54の長さは、ベース板21を基準にして吸着パッド51,52の接面の高さがフィンガ311,312(321,322)の開閉中心の高さに一致するように設定されている。それにより、把持機構3によりワークWの後端側が把持され、吸着パッド51,52によりワークWの前端側が吸着されている状態において、ワークWを平らな状態で維持することができ、ワークWが変形する事態、ワークWに折り目が付く事態を回避することができる。なお、一対の吸着パッド51,52の接面に一致するXY平面をロボットハンド1のワーク保持面と定義する。
【0017】
ポール53,54には、上下に貫通する配管が形成されている。ポール53,54の配管の先端は円筒体51b,52bにそれぞれ接続される。ポール53,54の配管はベース板21を通過してそれら後端はベース板21の下面から少し突出しており、ベース板21の配管の後端には加減圧装置8から延びるエアチューブが接続される。加減圧装置8から吸着パッド51,52まで、エアチューブおよびポール53,54の配管によりエア流路が形成される。
【0018】
加減圧装置8は、ポンプ、吸着部5にポンプを接続するエアチューブ、ポンプの吸引口と排気口とをエアチューブに対して切り替える電磁弁からなる。電磁弁の駆動制御により、吸着パッド51,52に対するエアの吸引と給気とが切り替えられる。ポンプの吸引口がエアチューブに接続されるとき、吸着パッド51,52の内部は減圧され、吸着パッド51,52はワークWを吸着する。ポンプの排気口がエアチューブに接続されるとき、吸着パッド51,52の内部は加圧され、吸着パッド51,52はワークWを吸着しない。吸着パッド51,52に給気されるとき、ワークWが少し浮上し、平滑に移動することができる。なお、吸着パッド51,52に給気(給気)されず、吸引(減圧)もされないとき、吸着パッド51,52の内部は大気圧に等価な状態になるが、その状態であっても、ワークWは吸着パッド51,52上を摺動しながら平滑に移動することができるように、吸着パッド51,52は自己潤滑性樹脂で形成されることが好ましい。
【0019】
なお、吸着パッド51,52の内部を加圧状態、減圧状態及び大気圧状態にすることができるのであれば、配管の構成は本実施形態に限定されない。また、本実施形態では、ワーク保持装置6は、単一の加減圧装置8を有する構成としたが、空気を吸引する機能を有する吸引ポンプなどの装置と、空気を排出する機能を有するコンプレッサなどの装置との2つの独立した装置を有する構成としてもよい。
【0020】
本実施形態に係るワーク保持装置6を用いた矩形板状の薄いワークWのピックアップ動作を説明する。最初に、図5を参照して、基準姿勢時におけるロボットハンド1によるワークWのピックアップ動作を説明する。なお、基準姿勢は、レール41の上に把持機構3が載置された姿勢(ベース板21の内面が上向きになる姿勢)をいう。
【0021】
図5(a)に示すように、ロボットハンド1のワーク保持面の高さがベルトコンベア100により所定の位置まで搬送されたワークWの厚み中央の位置の高さに一致するように、ロボットアーム機構7によりロボットハンド1が移動される。ロボットハンド1においては、移動機構4により把持機構3がベース2の後端側の待機位置から前端側の把持位置まで移動される。
【0022】
図5(b)に示すように、ロボットアーム機構7によりロボットハンド1が前方に移動される。それにより、一対のフィンガ311,312(321,322)の間にワークWが挿入される。その後、ロボットハンド1において、一対のフィンガ311,312(321,322)が閉められる。それにより、ワークWが、その後端側において一対のフィンガ311,312(321,322)により把持される。
【0023】
図5(c)に示すように、ワークWをその後端側において把持する把持機構3が移動機構4により、ベース2の前端側の把持位置から後端側の待機位置まで移動される。この間、吸着パッド51,52の内部が加圧状態になるように、加減圧装置8が制御される。それにより、図7に示すように、吸着パッド51,52からワークWに向けてエアが吐出することができ、吸着パッド51,52の先端縁に対してワークWが少し浮上させることができるか、又は吸着パッド51,52の先端縁にワークWが接触してしまう場合であっても、吸着パッド51,52の先端縁とワークWとの間に発生する摩擦力を抑え、自重によりワークWが吸着パッド51,52の先端縁を押圧しながら移動してしまう事態を回避できる。いずれにしても、吸着パッド51,52からワークWに向けてエアを吐出することで、吸着パッド51,52の先端縁がワークWにより擦れて摩耗するのを抑えられるとともに、ワークWに傷がつくのを抑えられる。ワークWを把持した把持機構3が移動機構4により待機位置まで移動された後、吸着パッド51,52の内部が加圧状態から減圧状態にするように、加減圧装置8が制御される。それにより、吸着パッド51,52は、ワークWをその前端側において吸着することができる。
【0024】
図6を参照して、反転姿勢時におけるロボットハンド1によるワークWの把持動作を説明する。なお、反転姿勢は、基準姿勢時のロボットハンド1をX軸周りに180度回転させ、レール41の下に把持機構3が吊り下げられた姿勢(ベース板21の内面が下向きになる姿勢)をいう。
【0025】
図6(a)に示すように、ロボットハンド1のワーク保持面の高さがベルトコンベア100により所定の位置まで搬送されたワークWの厚み中央の位置の高さに一致するように、ロボットアーム機構7によりロボットハンド1が移動される。ロボットハンド1においては、移動機構4により把持機構3がベース2の後端側の待機位置から前端側の把持位置まで移動される。
【0026】
図6(b)に示すように、ロボットアーム機構7によりロボットハンド1が前方に移動される。それにより、一対のフィンガ311,312(321,322)の間にワークWが挿入される。その後、ロボットハンド1において、一対のフィンガ311,312(321,322)が閉められる。それにより、ワークWが、その後端側において一対のフィンガ311,312(321,322)により把持される。
【0027】
図6(c)に示すように、ベルトコンベア上のワークWの位置が変化しないように、ロボットアーム機構7によりロボットハンド1が前方に移動されるのと同時に、移動機構4によりワークWを把持する把持機構3がベース2の前端側の把持位置から後端側の待機位置まで移動される。この間、吸着パッド51,52の内部が加圧状態になるように、加減圧装置8が制御されてもよい。それにより、吸着パッド51,52からワークWに向けてエアを吐出し、ワークWの前端側をベルトコンベア100の載置面に押し付けることができるため、何かしらの理由によりワークWの前端側が動いてしまう事態を回避することができる。また、ワークWの吸着箇所についた粉塵をエアにより飛ばすことができる。これらは、吸着パッド51,52にワークWが接触して吸着パッド51,52が破損するリスクの低減に寄与するとともに、吸着パッド51,52によるワークWの吸着動作の確実性の向上にも寄与する。その後、吸着パッド51,52の内部が減圧状態になるように、加減圧装置8が制御される。それにより、吸着パッド51,52は、ワークWをその前端側において吸着することができる。
【0028】
なお、把持機構3の待機位置は、ワークWを把持した把持機構3が待機位置まで移動されたときに、ワークWの前端が、ベース2の前端よりも前方にわずかに突出するように決められている。それにより、後に説明するワークWのラック200への収容動作において、吸着パッド51,52がワークWを吸着した状態で、ラック200のワーク投入口にベース2の前端から突出したワークWの前端部分を挿し込むことができる。これは、ワークWの収容動作の確実性を向上させることに寄与する。また、把持機構3の把持位置は、把持機構3が把持位置に移動された状態で、一対のフィンガ311,312(321,322)の先端が、ベース2の前端よりも前方に突出するように決められている。それにより、一対のフィンガ311,312(321,322)をワークWに近づけていく動作中に、ベース2がベルトコンベア100などの周囲の装置や部材に衝突するリスクを低減することができる。
【0029】
次に、図8図10を参照して、本実施形態に係るワーク保持装置6によるラック200へのワークWの収容動作を説明する。図8図9に示すように、ロボットアーム機構7によりロボットハンド1が移動され、ロボットハンド1に保持されたワークWの前端部分がワーク投入口に挿し込まれる。その後、吸着パッド51,52の内部が減圧状態から大気圧状態に遷移するように、加減圧装置8が制御される。それにより、ワークWの前端側は自由となる。次に、図10に示すように、移動機構4により把持機構3がベース2の後端側の待機位置から前端位置まで移動される。この間、吸着パッド51,52の内部が大気圧状態から加圧状態に遷移するように、加減圧装置8が制御される。それにより、図7に示すように、吸着パッド51,52からワークWに向けてエアを吐出することができ、吸着パッド51,52の先端縁とワークWとの間に発生する摩擦力を抑え、自重によりワークWが吸着パッド51,52の先端縁に接触しながら移動することによる吸着パッド51,52の先端縁の摩耗を抑制するとともに、吸着パッドの51,52先端縁に接触することによってワークWに傷がついてしまう事態を回避することができる。その後、把持機構3の一対のフィンガ311,312(321,322)が開かれ、ワークWがラック200に収容される。
【0030】
以上説明した本実施形態に係るワーク保持装置6によれば、把持機構3はワークWをその後端側の左右両縁付近の2箇所において把持することができ、吸着パッド51,52はワークWをその前端側の左右両縁付近も2箇所において吸着することができる。その結果、ワーク保持装置6は、矩形板状のワークWの四隅を保持することができる。それにより、自重によりワークWの部分が撓む事態や搬送中の空気抵抗によりワークWが折れ曲がる事態を回避することができ、搬送速度の低下を抑えられる。また、ワーク保持装置6によりワークWがベース2に対して一時的に固定できるため、搬送時、収容時におけるロボットハンド1の姿勢の自由度を高くすることができる。それにより、ベルトコンベア100からのワークWのピックアップ時において、周辺環境に応じて、ロボットハンド1の姿勢を基準姿勢、反転姿勢から選択することができるだけではなく、ワーク投入口の向きが上向きであったり、上向きから少し傾斜していたりなど、ラック200のワーク投入口の向きに柔軟に対応することができる。また、搬送速度の低下を抑えられ、搬送中のロボットハンド1の姿勢が自由であることで、全体のタスク時間を短縮することができる。
【0031】
また、図10に示すように、ワーク保持装置6によるラック200へのワークWの収容動作は、ロボットアーム機構7によりロボットハンド1がワーク投入口の外側に移動された後、ロボットハンド1の移動機構4を前方に移動させるだけでよい。ワーク投入口からラック200の内部にロボットハンド1を進入させる必要がないため、ラック200のワーク投入口がワークWの厚みとほぼ同じ高さしかないような狭い場合であっても、ワーク保持装置6を使用して、ワークWをラック200に収容することができる。
【0032】
本実施形態では、ワークWが矩形状の薄い板としたため、ワークWの四隅を保持できるように一対の吸着パッド51,52と一対のチャック機構31,32を有する構成としたが、ワークWの形状、大きさ、重さなどに応じて、吸着パッドの数、チャック機構の数を任意に変更することができる。また、複数のチャック機構を左右方向だけでなく、前後方向にずらしてスライダブロック43に設けてもよい。また、複数の吸着パッドを左右方向だけでなく、前後方向にずらした位置に設けてもよい。また、一対のチャック機構31,32が単一の移動機構4で移動される構成ではなく、チャック機構それぞれが独立して移動できるように構成してもよい。また、単一のチャック機構に2組の一対のフィンガを開閉自在に設けるように構成してもよい。
【0033】
ワークWを吸着できるのであれば、その吸着構造は本実施形態に限定されない。例えば、ワークWが磁性材料からなるものであれば、磁力によりワークWを吸着することができる電磁石を使うことができる。以下、本実施形態に係るワーク保持装置6における吸着パッド51,52を電磁石55,56に代替えした変形例に係るワーク保持装置60を説明する。図11に示すように、変形例に係るワーク保持装置60は、電磁石駆動部80を有する。電磁石駆動部80は、ロボット制御装置90の制御に従って、電磁石55,56に電流を供給し、電流供給を停止する。
【0034】
図12に示すように、一対の電磁石55,56は、本実施形態における一対の吸着パッド51,52と同じ位置にそれぞれ設けられる。すなわち、ベース板21の前端の両側にはポール57、58がそれぞれ立設される。一対の電磁石55,56は、ポール57、58の先端にそれぞれ設置される。電磁石55,56の先端には、ワークWが電磁石55,56に擦れ傷つくのを抑えるためのパッドが装着されていてもよい。ポール57、58の長さは、ベース板21を基準にして電磁石55,56の接面の高さ又は電磁石55,56の先端に設けられたパッドの接面の高さフィンガ311,312(321、322)の開閉中心の高さに一致するように設定されている。
【0035】
例えば、変形例に係るワーク保持装置60によるワークWのピックアップ動作は、図5(c)を参照して説明することができる。移動機構4によりワークWを把持する把持機構3がベース2の前端側の把持位置から後端側の待機位置まで移動された後、電磁石55,56は、電磁石駆動部80により帯磁される。それにより、電磁石55,56はワークWを引き寄せ、吸着することができる。変形例に係るワーク保持装置60によるワークWの収容動作は、図10を参照して説明することができる。移動機構4により把持機構3がベース2の後端側の待機位置から前端位置まで移動された後、電磁石55,56は、電磁石駆動部80により消磁され、それにより、ワークWがラック200に収容される。
【0036】
このように、吸着部5として電磁石55,56を採用した変形例に係るワーク保持装置60によれば、吸着部5として吸着パッド51,52を採用した本実施形態に係るワーク保持装置6と同様にワークWのピックアップ動作、搬送動作、収容動作を行うことができ、同様の効果を奏することができる。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
1…ロボットハンド、2…ベース、21…ベース板、23…接続板、25…アダプタ、3…把持機構、31,32…チャック機構、311,312,321,322…フィンガ、4…移動機構、41…レール、43…スライダブロック、5…吸着部、51,52…吸着パッド、53,54…ポール。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12