(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両用サイドドア
(51)【国際特許分類】
B60J 5/06 20060101AFI20241210BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B60J5/06 A
B60J5/00 P
(21)【出願番号】P 2020171902
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】保井 猛
(72)【発明者】
【氏名】染谷 紀樹
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-018648(JP,A)
【文献】特開平06-144008(JP,A)
【文献】特開2016-107667(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111845293(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102005013201(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0125003(US,A1)
【文献】特開2008-062795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/06
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面に形成されたドア開口を開閉する車両用サイドドアであって、
開口部を有するインナーパネルと、
前記開口部を塞ぐように前記インナーパネルの車室内側に取り付けられ、前記サイドドアの機能部品を備えた
樹脂製のモジュールプレートと、
前記インナーパネルの車室内側を覆うように前記インナーパネルと前記モジュールプレートとに着脱可能に取り付けられたドアトリムと、
前記開口部に隣接する位置で前記インナーパネルの車室外側に固定されたリンフォースと、を有し、
前記リンフォースは、前記開口部から車室内側に露出する露出領域を有し、
前記モジュールプレートは、前記リンフォースの前記露出領域に固定されている
とともに、前記リンフォースへの固定箇所に隣接する位置に、前記ドアトリムが取り付けられる取付部を有する、車両用サイドドア。
【請求項2】
前記モジュールプレートは、前記リンフォースの前記露出領域に隣接する位置に、前
記取付部を有する、請求項1に記載の車両用サイドドア。
【請求項3】
前記モジュールプレートは、インサイドハンドルを支持するブラケットと共に前記リンフォースの前記露出領域に固定されている、請求項1または2に記載の車両用サイドドア。
【請求項4】
前記サイドドアは、車両前後方向にスライドして前記ドア開口を開閉するスライドドアである、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用サイドドア。
【請求項5】
前記リンフォースは、前記開口部の車両前方側で前記インナーパネルに固定され、前記露出領域は、前記リンフォースの車両後方側の端部である、請求項4に記載の車両用サイドドア。
【請求項6】
前記リンフォースは、前記車体からの前記サイドドアの脱落を規制するために前記車体に設けられたストライカーに係合可能なクレビスを補強するクレビスリンフォースである、請求項5に記載の車両用サイドドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用サイドドアとして、アウターパネルとインナーパネルとを有するドア本体に、ウィンドレギュレータなどの各種機能部品をモジュール化したモジュールプレートが組み込まれたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。モジュールプレートは、インナーパネルに形成された開口部を塞ぐようにインナーパネルの車室内側に取り付けられ、さらにその内側には、内装材としてのドアトリムが着脱可能に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-247063号公報
【文献】特開2004-142681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドアトリムは、自動車ディーラーなどにおいて車両の修理時に取り外しが必要になることがあるため、取り外し時に作用する荷重を考慮すると、剛性の高いインナーパネルに取り付けられていることが好ましい。しかしながら、例えば車両前方側の領域など、モジュールプレートを取り付けるための開口部が形成されている領域では、インナーパネルにドアトリムを取り付けるための座面を確保できず、必然的にモジュールプレートにドアトリムを取り付ける必要がある。その場合、樹脂製のモジュールプレートは、それ自体の機械的強度が十分でないため、ドアトリムの取り外し時に作用する荷重によって変形するおそれがあり、それにより、モジュールプレートとインナーパネルとの間のシール材が破損し、雨水や洗車時の水が車内に浸入するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、モジュールプレートの機械的強度を補完することで、ドアトリムの取り外し時にモジュールプレートの変形を抑制する車両用サイドドアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の車両用サイドドアは、車体の側面に形成されたドア開口を開閉する車両用サイドドアであって、開口部を有するインナーパネルと、開口部を塞ぐようにインナーパネルの車室内側に取り付けられ、サイドドアの機能部品を備えたモジュールプレートと、インナーパネルの車室内側を覆うようにインナーパネルとモジュールプレートとに着脱可能に取り付けられたドアトリムと、開口部に隣接する位置でインナーパネルの車室外側に固定されたリンフォースと、を有し、リンフォースは、開口部から車室内側に露出する露出領域を有し、モジュールプレートは、リンフォースの露出領域に固定されているとともに、リンフォースへの固定箇所に隣接する位置に、ドアトリムが取り付けられる取付部を有している。
【発明の効果】
【0007】
以上、本発明によれば、モジュールプレートの機械的強度を補完することで、ドアトリムの取り外し時にモジュールプレートの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用サイドドアを車室内側から見た側面図である。
【
図2】本実施形態の車両用サイドドアを構成するインナーパネルを車室内側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本明細書では、本発明の車両用サイドドアとして、車体の側面に形成されたドア開口を車両前後方向にスライドして開閉するスライドドアを例に挙げて説明するが、本発明の車両用サイドドアはこれに限定されず、ヒンジを中心に回動してドア開口を開閉するヒンジドアであってもよい。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用サイドドアを車室内側から見た側面図である。
図2は、本実施形態の車両用サイドドアを構成するインナーパネルを車室内側から見た側面図である。
図3は、
図1のA-A線に沿った断面図である。なお、
図1では、図を見やすくするために、車両用サイドドアを構成するドアトリムの図示を省略している。
【0011】
本実施形態の車両用サイドドア(以下、単に「サイドドア」ともいう)1は、自動車の右後方のサイドドアであり、車両前後方向にスライドしてドア開口を開閉するスライド式のサイドドアである。サイドドア1は、ドア本体2と、ドア本体2の車室内側に設けられた内装材である樹脂製のドアトリム3とを有している。
【0012】
ドア本体2は、アウターパネル21と、アウターパネル21の車室内側に接合されたインナーパネル22とを有している。アウターパネル21は、金属製であってもよいが、樹脂製であることが好ましく、特にポリプロピレンコンパウンド製であることが好ましい。インナーパネル22は、金属製であってもよいが、樹脂製であることが好ましく、特に好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂をガラス繊維または炭素繊維に含浸させたシートであるシートモールディングコンパウンド(SMC)製、あるいは、ガラス繊維または炭素繊維とポリプロピレン樹脂との複合材製である。ドア本体2の上部には、概ね矩形状のウィンド開口部23が形成され、インナーパネル22のウィンド開口部23の下側には、サービスホール(開口部)24が形成されている。
【0013】
ドア本体2の車両前方側の端部には、事故などによって外部から衝撃を受けたときに車体に設けられたストライカーに係合して車体からのサイドドア1の脱落を抑制するクレビス(図示せず)が設けられている。このクレビスを補強するために、インナーパネル22の車室外側には、金属製のクレビスリンフォース4が固定されている。クレビスリンフォース4は、サービスホール24の車両前方側に配置され、車両後方側の端部4aがサービスホール24から車室内側に露出するように形成されている。
【0014】
アウターパネル21とインナーパネル22との間には、ウィンド開口部23を開閉するウィンドパネル(図示せず)が設けられており、サイドドア1には、このウィンドパネルを昇降させるウィンドレギュレータなどの各種機能部品が組み込まれている。すなわち、サイドドア1は、そのような各種機能部品をモジュール化したモジュールプレート5を有している。モジュールプレート5は、ボルトやナットなどの締結部材11によって、サービルホール24を塞ぐようにインナーパネル22の車室内側に取り付けられている。モジュールプレート5のさらに車室内側には、同じく締結部材11によって、インサイドハンドル(図示せず)を支持するブラケット6が取り付けられている。また、インナーパネル22とモジュールプレート5との間には、ウィンドパネルを通じてドア本体2の内部に浸入した雨水や洗車時の水が車内に漏れることを抑制するために、接着剤または発泡体からなるシール材12が設けられている。
【0015】
ドアトリム3は、樹脂製のクリップ13によって、インナーパネル22の車室内側を覆うようにドア本体2に着脱可能に取り付けられている。インナーパネル22には、クリップ13が挿入される複数の取付孔14が形成されているが、その車両前方側の領域には、サービスホール24が形成されているため、ドアトリム3を取り付けるための座面を確保することができず、取付孔14を形成することができない。そのため、インナーパネル22の車両前方側の領域では、モジュールプレート5に取付孔14が形成されている。したがって、ドアトリム3は、インナーパネル22だけでなくモジュールプレート5にも取り付けられている。
【0016】
しかしながら、樹脂製のモジュールプレート5は、それ自体の機械的強度が十分でないため、ドアトリム3の取り外し時に作用する荷重によって変形するおそれがある。それにより、インナーパネル22とモジュールプレート5との間に設けられたシール材12が破損し、破損した箇所から雨水や洗車時の水が車内に漏れるおそれがある。
【0017】
そこで、本実施形態では、上述したように、クレビスリンフォース4の車両後方側の端部4aがサービスホール24から車室内側に露出しており、その露出領域4aにモジュールプレート5がブラケット6と共に固定されている。加えて、モジュールプレート5のうち、このクレビスリンフォース4の露出領域4aに隣接する位置に、ドアトリム3が取り付けられる取付孔(取付部)14が設けられている。これにより、自動車ディーラーなどにおいてドアトリム3を取り外す際にモジュールプレート5に荷重が作用しても、モジュールプレート5の機械的強度を補完することができ、モジュールプレート5の変形を抑制することができる。その結果、シール材12の破損を抑制し、雨水や洗車時の水が車内に浸入する可能性を低くすることができる。
【0018】
なお、上述した実施形態では、インナーパネル22の車両前方側に配置されたクレビスリンフォース4にモジュールプレート5が固定されているが、モジュールプレート5の機械的強度を補完するためにモジュールプレート5が固定されるリンフォースは、クレビスリンフォース4に限定されるものではない。すなわち、インナーパネル22の車両前方側の領域以外の他の領域においてドアトリム3を取り付けるための座面を確保できない場合には、その領域に隣接して別のリンフォースが設けられていれば、そのリンフォースの端部をサービスホール24から露出させ、そこにモジュールプレート5を固定させてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 車両用サイドドア
2 ドア本体
21 アウターパネル
22 インナーパネル
23 ウィンド開口部
24 サービスホール(開口部)
3 ドアトリム
4 クレビスリンフォース
4a 車両後方側の端部(露出領域)
5 モジュールプレート
6 ブラケット
11 締結部材
12 シール材
13 クリップ
14 取付孔