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特許7601593ポリウレタンフォーム形成用組成物、ポリウレタンフォーム及び断熱材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム形成用組成物、ポリウレタンフォーム及び断熱材
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20241210BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20241210BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20241210BHJP
   C08J 9/14 20060101ALI20241210BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/00 H
C08G18/00 L
C08G18/00 M
C08G18/48
C08J9/14
C08G101:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020172550
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022064050
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】柏本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】干場 次郎
(72)【発明者】
【氏名】芦原 雅行
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-255235(JP,A)
【文献】国際公開第2008/041348(WO,A1)
【文献】特開平5-247164(JP,A)
【文献】特開2005-105272(JP,A)
【文献】特開2008-81702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/08
C08G 18/00
C08G 18/48
C08J 9/14
C08G 101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォーム形成用組成物であって、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含有し、下記式1で表される少なくとも1種の化合物を該組成物100質量部に対して0.2~6質量部含む、組成物。
RO(CHCHO)R (式1)
[式中、Rは、C1~C3の線状または分岐状アルキルであり、nは1以上の整数である。]
【請求項2】
ポリエーテルポリオールを前記組成物100質量部に対して25質量部以上含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
イソシアネートインデックスが150以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物に含まれるポリオールの粘度が500mPas(25℃)以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物を発泡させてなるポリウレタンフォーム。
【請求項6】
面材付きポリウレタンフォームである、請求項5に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のポリウレタンフォームからなる断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォーム形成用組成物、該組成物から形成されるポリウレタンフォーム、及び該フォームからなる断熱材に関し、より具体的には、成形品の表面品質、特には平滑性に優れるポリウレタンフォームを形成するための組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂系フォームの中でも、ポリウレタンフォーム、特に硬質ポリウレタンフォームは、優れた断熱性能を有していることから発泡系断熱材として広く使用されている。ポリウレタンフォームは、通常、ポリオールと、ポリイソシアネートとを、必要に応じて適宜配合される触媒、発泡剤、整泡剤などと一緒に混合して、発泡させることにより製造されている。
【0003】
従来、硬質ポリウレタンフォーム用発泡剤として、HFC-134a、HFC-245fa、HFC-365mfc等のハイドロフルオロカーボン(HFC)系発泡剤が用いられている。しかしながら、このハイドロフルオロカーボン系発泡剤は、オゾン層破壊の少ない又は生じない代替フロンとして認識されているものの、化学的に安定なために地球温暖化係数が高く、HFC系発泡剤の使用が地球温暖化に繋がると懸念されており、モントリオール議定書(キガリ改正)による段階的な削減が進められている。
【0004】
そこで、近年ではこれらHFC系発泡剤に替わって、化学的に不安定であるために地球温暖化係数が低くなるハイドロフルオロオレフィン(HFO)と呼ばれるハロゲン化ハイドロオレフィン系発泡剤が、使用され始めている。
【0005】
特開2016-74886号公報(特許文献1)には、発泡剤成分として、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1233zd)を必須成分として含有する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物に関する発明が記載されている。特許文献1に記載の発明は、発泡剤成分としてHFO-1233zdを用いた場合でも原液保存安定性が良く、さらに硬質ポリウレタンフォームの物性の低下を抑制できる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物を提供することを目的とし、HFO-1233zdの相溶化剤としてエチルジグリコールアセテートを含有することを特徴としている。
【0006】
また、発泡剤としてHFOの使用を特徴とするものではないが、特表2019-533754号公報(特許文献2)では、ポリウレタンフォームの原料として使用されるポリオール組成物について経時的に相分離する傾向にあった課題を解決するため、あらゆる状態で安定なポリオール組成物、具体的には少なくとも24時間、場合により6ヶ月を超えて安定であるポリオール組成物を提供することを目的としている。そして、特許文献2に記載のポリオール組成物は、2種以上のポリオールと共に、式:RO(CHCHO)H[式中、Rは、C1~C31線状または分岐状アルキルであり、nは、1以上の整数である]で表され、約3.7以上の親水性-親油性バランス(HLB)値を有するエトキシル化アルコールを含むことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-74886号公報
【文献】特表2019-533754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、ポリウレタンフォームの発泡剤としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を用いることについて検討したところ、ポリウレタンフォームを面材と一体成形した場合に、得られる成形品の面材の平滑性が他の発泡剤の場合と比較して劣っており、表面品質を低下させるという問題があることが分かった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、成形品の表面品質、特には平滑性に優れるポリウレタンフォームを形成するための組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、該組成物から形成されるポリウレタンフォーム及び該フォームからなる断熱材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィン(HFO)を用いると、ポリウレタンフォームに収縮が生じることを確認しており、この収縮によって面材の平滑性が低下する傾向にあると考えている。
【0011】
ポリウレタンフォームの形成過程は、一般に、(1)ポリイソシアネートと水の反応による発泡と、(2)ポリイソシアネートとポリオールの反応によるウレタン結合の形成からなり、この順に反応が開始するものであるが、発泡剤としてHFOを用いる場合、上記(1)の発泡を経て気泡が生成する前にHFOが揮発してしまい、ポリウレタンフォームに収縮が生じてしまうものと考えられる。
【0012】
そこで、本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討したところ、発泡剤としてHFOを含むポリウレタンフォーム形成用組成物において、式1:RO(CHCHO)R[式中、Rは、C1~C3の線状または分岐状アルキルであり、nは1以上の整数である。]で表される化合物を用いることで、面材の平滑性に優れるポリウレタンフォームを形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明の組成物は、ポリウレタンフォーム形成用組成物であって、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含有し、下記式1で表される少なくとも1種の化合物を該組成物100質量部に対して0.2~6質量部含む、組成物である。
RO(CHCHO)R (式1)
[式中、Rは、C1~C3の線状または分岐状アルキルであり、nは1以上の整数である。]
【0014】
本発明の組成物の好適例においては、ポリエーテルポリオールを前記組成物100質量部に対して25質量部以上含む。
【0015】
本発明の組成物の他の好適例においては、イソシアネートインデックスが150以下である。
【0016】
本発明の組成物の他の好適例においては、前記組成物に含まれるポリオールの粘度が500mPas(25℃)以上である。
【0017】
また、本発明のポリウレタンフォームは、上記の組成物を発泡させてなるポリウレタンフォームである。
【0018】
本発明のポリウレタンフォームの好適例においては、面材付きポリウレタンフォームである。
【0019】
また、本発明の断熱材は、上記のポリウレタンフォームからなる断熱材である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の組成物によれば、成形品の表面品質、特には平滑性に優れるポリウレタンフォームを形成するための組成物を提供することができる。また、本発明のポリウレタンフォームによれば、かかる組成物から形成されるポリウレタンフォームを提供することができ、本発明の断熱材によれば、かかるポリウレタンフォームからなる断熱材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明の1つの態様は、ポリウレタンフォーム形成用組成物である。かかる組成物は、ポリオール、ポリイソシアネート及び発泡剤を含み、これらを混合することで、ポリオールとポリイソシアネートの反応が進行し、ポリウレタンフォームを形成することが可能である。本明細書においては、本発明のポリウレタンフォーム形成用組成物を本発明の組成物とも称する。
【0023】
ポリオールは、複数の水酸基を有する化合物であり、好ましくは重合体のポリオールである。ポリオールの具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリマーポリオール、マンニッヒポリオール等が挙げられる。
【0024】
本発明の組成物において、ポリオールの量は、ポリイソシアネートの量に応じて適宜調整されるが、例えば、該組成物100質量部に対して、25~40質量部である。なお、ポリオールは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオールが代表例として挙げられ、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、その他の活性水素含有基を2個以上有する化合物等を出発原料に、アルキレンオキサイドを開環付加反応させて製造することができる。
【0026】
ポリオキシアルキレン系ポリオールの出発原料には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、マンノース、ショ糖、フルクトース、デキストロース、ソルビトール等の多価アルコール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、エチレンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタアミン等の多価アミン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、ハイドロキノン等の多価フェノール、それらの変性物等が挙げられ、これら出発原料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ポリオキシアルキレン系ポリオールを製造する際に、開環付加反応せしめるアルキレンオキサイドには、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられ、これらアルキレンオキサイドは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ポリマーポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオール中にポリアクリロニトリル微粒子やポリスチレン微粒子等のポリマー微粒子が分散したもの等が挙げられる。ポリマーポリオールは、ポリオキシアルキレン系ポリオールを含むものであることから、ポリエーテルポリオールの一種である。
【0029】
マンニッヒポリオールは、フェノール類、アルデヒド類、アルカノールアミン等を縮合反応させ、さらに必要に応じてエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドの開環付加反応を行うことにより、製造することができる。マンニッヒポリオールは、分子中に複数のエーテル結合を有することから、ポリエーテルポリオールの一種である。
【0030】
好適なポリエーテルポリオールの例としては、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを付加反応させて得られる(ジ)エチレングリコール系ポリエーテルポリオール、(ジ)プロピレングリコール系ポリエーテルポリオール、(ジ)グリセリン系ポリエーテルポリオール、トリメチロールプロパン系ポリエーテルポリオール、ペンタエリスリトール系ポリエーテルポリオール、ショ糖系ポリエーテルポリオール、デキストロース系ポリエーテルポリオール、ソルビトール系ポリエーテルポリオール、モノ(ジ、トリ)エタノールアミン系ポリエーテルポリオール、エチレンジアミン系ポリエーテルポリオール、トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール、ビスフェノールA系ポリエーテルポリオール等のポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール中にポリマー微粒子が分散したポリマーポリオール、マンニッヒポリオール等が挙げられる。
【0031】
ポリエステルポリオールは、ポリエステルの製造条件を調整して製造することができ、例えば、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリエステルポリオールが挙げられ、より具体的には、直鎖状のポリエステルポリオールや僅かに分岐したポリエステルポリオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールは、脂肪族、脂環式または芳香族のジカルボン酸類と、ジオールと、任意に多価カルボン酸類および/または三官能性以上のポリオールとを使用して、既知の方法で調製することができる。
【0032】
ポリラクトンポリオールは、ラクトンのホモポリマー又はコポリマーであって、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリラクトン等が挙げられる。具体的には、上記ポリオキシアルキレン系ポリオールにおいて説明したような活性水素含有基を2個以上有する化合物等を出発原料として、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトンを開環付加反応させて製造することができる。なお、ポリラクトンポリオールは、分子中に複数のエステル結合を有することから、ポリエステルポリオールの一種である。
【0033】
ポリカーボネートポリオールは、ポリカーボネートの製造条件を調整して製造することができ、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリブタジエンポリオールは、少なくとも主鎖の両末端に水酸基を有するポリブタジエン等が挙げられる。
【0034】
本発明の組成物は、ポリオールとしてポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。ポリエーテルポリオールの量は、本発明の組成物100質量部に対して、好ましくは25質量部以上であり、より好ましくは25~40質量部であり、更に好ましくは30~35質量部である。ポリエーテルポリオール、特には比較的親水性の性質を示す水酸基価が高いポリエーテルポリオールを上記特定した量で用いる場合、後述の式1で表される化合物の効果が発揮されやすい。
【0035】
本発明の組成物において、ポリオールの水酸基価は、好ましくは200~500mgKOH/gであり、更に好ましくは300~400mgKOH/gである。
【0036】
本明細書において、水酸基価とは、試料1g中の遊離水酸基をカルボン酸無水物(例えば、無水フタル酸又は無水酢酸)で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化ナトリウムのmg数である(JIS K 1557 2007参照)。
【0037】
本発明の組成物において、ポリオールの分子量は、好ましくは400~800g/モルであり、更に好ましくは500~600g/モルである。
【0038】
本明細書において、ポリオールの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算した数平均分子量である。
【0039】
本発明の組成物において、ポリオールの官能基数(fn)は、好ましくは2.5~4.5であり、更に好ましくは3.0~4.0である。
【0040】
本明細書において、ポリオール1分子あたりの官能基数(fn)は、ポリオールの持つ水酸基価(OHV)と数平均分子量(Mn)から次の計算式により求められる。
fn=Mn(g/mol)×OHV(mgKOH/g)/56100
【0041】
本発明の組成物に含まれるポリオールの粘度は、好ましくは500mPas(25℃)以上であり、より好ましくは600~3000mPas(25℃)であり、更に好ましくは700~2000mPas(25℃)である。本発明の組成物中に含まれるポリオールの粘度が500mPas(25℃)未満であると、施工時に組成物が飛び散るなどして、フォームの不具合の原因となる場合がある。ポリオールの粘度は、例えば、芳香族アミン系ポリエーテルポリオールを用いることで容易に増加させることができる。
【0042】
本明細書において、粘度の測定は、JIS K 7117-1:1999に準拠して測定され、ブルックフィールド回転粘度計B型を使用する。
【0043】
本発明の組成物が複数のポリオールを含む場合、ポリオールの粘度は、ポリオール全体の粘度であり、例えば、各ポリオールの粘度と質量分率から以下のように求めることができる。
[ポリオールの粘度]
本発明の組成物に含まれるポリオールがn種類からなる場合、各ポリオールの粘度をそれぞれV、V、・・・、Vとし、ポリオール全体における各ポリオールの質量分率をW、W、・・・、Wとして、以下の式より求められる。
ポリオールの粘度=exp(W×ln(V)+W×ln(V)+・・・+W×ln(V))
【0044】
ポリイソシアネートは、複数のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族のポリイソシアネートが挙げられ、また、これらポリイソシアネートの変性物も含まれる。ポリイソシアネートの変性物としては、例えば、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、ウレア、アロファネート、ビウレット、カルボジイミド、イミノオキサジアジンジオン、オキサジアジントリオン、オキサゾリドン等の構造を有するポリイソシアネートが挙げられる。また、ポリイソシアネートとして、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーを使用してもよい。なお、ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
ポリイソシアネートのうち、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
ポリイソシアネートは、イソシアネート基含有率が20~40質量%であることが好ましく、25~35質量%であることが更に好ましい。本明細書において、イソシアネート基含有率は、JIS K 1603-1:2007に従い求められる。
【0047】
本発明の組成物において、ポリイソシアネートの量は、例えば、イソシアネートインデックスにより示すことができる。本発明の組成物においては、ポリウレタンフォームの断熱性の観点から、イソシアネートインデックスが低く設定されることが好ましく、具体的に、イソシアネートインデックスは、好ましくは150以下であり、より好ましくは90~150であり、更に好ましくは90~130であり、特に好ましくは100~125である。
【0048】
本明細書において、イソシアネートインデックスとは、ポリオールの他、発泡剤等のイソシアネート基と反応する活性水素の合計に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の比に100を乗じた値である。
【0049】
発泡剤は、一般に、物理的発泡剤と化学的発泡剤に分類される。発泡剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、物理的発泡剤と化学的発泡剤を併用してもよい。発泡剤の量は、本発明の組成物100質量部に対して、好ましくは0.5~15質量部、更に好ましくは3~12質量部である。
【0050】
物理的発泡剤の具体例としては、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)等のフロン類、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素、二酸化炭素等が挙げられる。一方、化学的発泡剤としては、水や、ギ酸、酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0051】
本発明の組成物は、発泡剤としてハイドロフルオロオレフィンを含む。ハイドロフルオロオレフィン(HFO)は、フロン類に該当しない物理的発泡剤として好適に使用される発泡剤である。HFOとは、フッ素原子を含有するオレフィン化合物であり、フッ素以外のハロゲン原子(例えば塩素原子)を更に含有するものも含まれる。HFOのうち塩素原子を更に含有するものは、ハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)とも称される。本発明の組成物は、ハイドロクロロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。なお、HFOとHCFOは区別される場合もあるが、本明細書においては、上述のとおり、HFOにはHCFOが含まれる。
【0052】
ハイドロフルオロオレフィンは、炭素原子の数が2~5個であることが好ましく、また、フッ素原子の数が3~7個であることが好ましい。HFOの分子量は、100~200g/モルであることが好ましい。HFOの具体例としては、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、3,3-ジクロロ-3-フルオロプロペン、2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブテン、2-クロロ-1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロブテン等が挙げられる。なお、HFOは、シス体とトランス体のいずれの異性体であってもよい。これらHFOは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
ハイドロフルオロオレフィンの量は、本発明の組成物100質量部に対して、例えば0.5~15質量部であり、好ましくは3~12質量部である。
【0054】
本発明の組成物は、フォームの外観や強度を改良する観点から、発泡剤として水を含むことが好ましい。水の量は、本発明の組成物100質量部に対して、例えば0.2~10質量部であり、好ましくは0.5~3質量部である。
【0055】
本発明の組成物は、下記式1で表される少なくとも1種の化合物を含む。
RO(CHCHO)R (式1)
[式中、Rは、C1~C3の線状または分岐状アルキルであり、nは1以上の整数である。]
【0056】
本発明の組成物は、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。ポリエーテルポリオールは、その構造から水に溶けやすい親水性の性質を持つ。このため、ポリオールとポリイソシアネートとの反応が進むにつれて疎水性の構造を形成するが、ある程度親水性が維持される。
【0057】
一方、発泡剤としてのハイドロフルオロオレフィン(HFO)は、疎水性のため、ポリオールとポリイソシアネートの反応過程で疎水性側に移動する。反応熱が徐々にあがっていくことでHFOも揮発していくが、ポリエーテルポリオールのような親水性の構造が多いとHFOは溶け込みにくいため、反応初期の段階でHFOが一気に揮発することになる。HFOが一気に揮発すると、HFOの持つ樹脂への溶解性の高さのため、特定の箇所で樹脂が柔らかくなり、その柔らかさがフォームの収縮を招き、面材表面の平滑性を失わせると考えられる。
【0058】
上記式1で表される化合物は、比較的疎水性であることから、例えば、親水性であるポリエーテルポリオールを含む原料から得られる樹脂へのHFOの溶解を制御することができ、特定の箇所で樹脂が柔らかくなるという課題を解決することができる。
【0059】
上記式1において、Rは、C1~C3の線状または分岐状アルキルであり、その具体例としては、メチル、エチル、プロピル(ノルマルプロピル、イソプロピル)が挙げられる。式1中の2つのRは、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
上記式1において、nは、1以上の整数であり、好ましくは1以上12以下の整数であり、更に好ましくは5以上10以下の整数である。
【0061】
上記式1で表される化合物は、本発明の組成物100質量部に対して、好ましくは0.2~6質量部であり、好ましくは0.5~3質量部である。上記式1で表される化合物の量が多すぎると、該化合物が表面に出てくる傾向があり、また、燃焼性が低下し、燃えやすくなる。
【0062】
本発明の組成物は、触媒を含むことが好ましい。触媒としては、水とポリイソシアネートとの反応を促進する触媒(泡化触媒)、ポリオールとポリイソシアネートとの反応を促進する触媒(樹脂化触媒)、ポリイソシアネートの三量化反応(即ち、イソシアヌレート環の形成)を促進する触媒(三量化触媒)等が挙げられる。
【0063】
泡化触媒としては、例えば、ジモルホリン-2,2-ジエチルエーテル、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル等が挙げられる。
【0064】
樹脂化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン等のアミン触媒、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-メチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、5-ジメチルアミノ-3-メチル-1-ペンタノール等のアルカノールアミン触媒、オクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛、カルボン酸ビスマス、ジルコニウム錯体などの金属触媒等が挙げられる。これらのアミン触媒およびアルカノールアミン触媒としては、炭酸を付加させて合成したアミン炭酸塩やギ酸、酢酸等のカルボン酸を付加させて合成したアミンカルボン酸塩を使用してもよい。
【0065】
三量化触媒としては、例えば、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸の4級アンモニウム塩、又はその他オニウム塩等が挙げられる。
【0066】
触媒の量は、本発明の組成物100質量部に対して、例えば0.1~5質量部であり、好ましくは0.3~1.5質量部である。なお、触媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
本発明の組成物は、整泡剤を含んでもよい。整泡剤は、好ましくは界面活性剤である。界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、両性といったイオン性の界面活性剤や非イオン性界面活性剤があるが、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。また、具体例としては、シリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤が好適に挙げられる。整泡剤の量は、本発明の組成物100質量部に対して、好ましくは1~5質量部である。整泡剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明の組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は、好ましくはリン系難燃剤である。具体例としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリス(β-クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)等が好適に挙げられる。また、ポリリン酸アンモニウムや赤燐などの固体(粉体)難燃剤なども、必要に応じて使用される。難燃剤の量は、本発明の組成物100質量部に対して、好ましくは3~15質量部である。難燃剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明の組成物には、その他の成分として、着色剤、充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、可塑剤、防かび剤、抗菌剤、架橋剤、溶媒、減粘剤、減圧剤、分離防止剤等の添加剤を必要に応じて適宜配合してもよい。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。
【0070】
本発明の組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製することができる。例えば、ポリオールを含むポリオール成分と、ポリイソシアネートからなるポリイソシアネート成分とを混合することで、本発明の組成物が調製できる。
【0071】
本発明の組成物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との一対からなる原液から構成されることが多い。ポリオール成分は、ポリオールを含み、通常、発泡剤、整泡剤、触媒を含み、難燃剤または更なる添加剤を含んでもよい。また、ポリイソシアネート成分は、ポリイソシアネートからなるが、発泡剤や難燃剤などの添加剤などを含んでもよい。なお、発泡剤は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合する際に配合される場合もある。
【0072】
本発明の別の態様は、ポリウレタンフォームである。本発明のポリウレタンフォームは、上述した本発明のポリウレタンフォーム形成用組成物を発泡させてなる。本発明の組成物は、ポリオール及びポリイソシアネートを含むことから、両者を混合することで、反応が進行し、ポリウレタンフォームを形成することが可能である。なお、ポリウレタンフォーム形成時の温度は20~80℃であることが好ましい。
【0073】
ポリウレタンフォームの発泡方法は、特に限定されず、既知の発泡手段、例えば、ハンドミキシング発泡、簡易発泡、注入法、フロス注入法、スプレー法等が利用できる。また、ポリウレタンフォームの成形方法も、特に限定されず、既知の成形手段、例えば、モールド成形、スラブ成形、ラミネート成形、現場発泡成形等が利用できる。
【0074】
本発明のポリウレタンフォームは、船舶、車両、プラント類、断熱機器、建築、土木、家具、インテリア等の各種用途に使用できるが、断熱材、具体的には断熱機器、例えば冷蔵倉庫や冷凍倉庫の断熱部材として好適に使用できる。
【0075】
本発明のポリウレタンフォームは、面材付きポリウレタンフォームであることが好ましく、金属面材付きポリウレタンフォームであることが更に好ましい。本明細書において、面材付きポリウレタンフォームとは、ポリウレタンフォームの片面又は両面に箔や板等の面材を付した板状の複合材料であり、各種用途の断熱材として使用できる。
【0076】
面材等の被接着体の好適な例としては、金属やその他の無機材料が挙げられ、特に、アルミニウムおよびその合金、ステンレスおよびその合金、鉄およびその合金、銅およびその合金等が挙げられる。また、被接着体の表面には、本発明の組成物が付着する面に所望によりコーティングが施されていてもよい。コーティングとしては、ポリエステル樹脂等の有機高分子コーティング剤等が挙げられる。被接着体の厚みは、0.2~0.6mmであることが好ましい。
【0077】
本発明のポリウレタンフォームは、密度が、例えば5~80kg/mであり、25~70kg/mであることが好ましく、40~65kg/mであることが更に好ましい。本明細書において、ポリウレタンフォームの密度は、JIS K 7222:2005に準拠して測定される。
【0078】
本発明のポリウレタンフォームは、測定の中心温度が23℃の場合、熱伝導率が0.0185~0.0280W/m・Kであることが好ましく、0.0190~0.0260W/m・Kであることが更に好ましい。本明細書において、熱伝導率は、JIS A 1412-2:1999に準拠して測定される。
【0079】
本発明のポリウレタンフォームは、断熱性が必要とされる種々の用途に好適に適用できる。特に、本発明のポリウレタンフォームは、マンション等の集合住宅、戸建住宅、学校や商業ビル等の各種施設や、冷凍倉庫、浴槽、工場の配管、自動車および鉄道車両に用いられる建築材や断熱材として有利に利用することができる。
【0080】
また、本発明のポリウレタンフォームは、スプレー方式による現場施工タイプの断熱材および結露防止材、工場ラインでパネルやボード等の建材等を製造する際にも使用することができる。したがって、本発明の一実施態様によれば、ポリウレタンフォームは、JIS A 9526:2017に規定される建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームである。
【0081】
本発明の別の態様は、断熱材である。本発明の断熱材は、上述した本発明のポリウレタンフォームからなる断熱材である。断熱材は、例えば、断熱機器、例えば冷蔵倉庫や冷凍倉庫の断熱部材が挙げられる。また、本発明の断熱材は、マンション等の集合住宅、戸建住宅、学校や商業ビル等の各種施設や、冷凍倉庫、浴槽、工場の配管、自動車および鉄道車両に使用できる。
【実施例
【0082】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0083】
1.概略
高圧発泡機を使用し、ポリオールと発泡剤などを混合した混合液(ポリオール成分)とポリイソシアネートを所定の配合比にて混合し、一定の温度・圧力で混合液を金属面材を上下に配した型に吐出し、ポリウレタンフォームを得て、一定時間後下面の注入部付近の深さを測定する。
【0084】
2.装置及び機器
高圧発泡機(HK-650P、Hennecke社製)
割り箸
ストップウオッチ(ラップ機能のあるもの)
型(アルミニウム製、内寸:長さ2000mm、幅900mm、厚み100mm)
【0085】
3.材料
1)ポリオール
ポリオールA:ポリエーテルポリオール[SBU ポリオール 0517:住化コベストロウレタン(株)製]、官能基数:4.1、水酸基値480mgKOH/g、粘度3400mPa・s(25℃)
ポリオールB:ポリエーテルポリオール[SBU ポリオール 0487:住化コベストロウレタン(株)製]、官能基数:4、水酸基価410mgKOH/g、粘度1500mPa・s(25℃)
ポリオールC:芳香族アミン系ポリエーテルポリオール[SBU ポリオール Z450:住化コベストロウレタン(株)製]、官能基数:4、水酸基価340mgKOH/g、粘度12000mPa・s(25℃)
ポリオールD:ポリエーテルポリオール[SBU ポリオール S429:住化コベストロウレタン(株)製]、官能基数:3、水酸基価250mgKOH/g、粘度230mPa・s(25℃)
2)ポリイソシアネート
ポリイソシアネート:ポリメリックMDI[スミジュール 44V20 L:住化コベストロウレタン(株)製]、イソシアネート基含有率:31.5質量%
3)発泡剤
発泡剤A:水
発泡剤B:HCFO-1233zd(分子量130)
発泡剤C:HFO-1224yd(分子量148.5)
発泡剤D:HFO-1336mzz(Z)(分子量164)
4)相溶化剤
相溶化剤A:ジエチレングリコールジメチルエーテル、分子量134、粘度1mPa・s(25℃)
相溶化剤B:テトラエチレングリコールジメチルエーテル、分子量222、粘度4mPa・s(25℃)
相溶化剤C:ポリオキシエチレン-ジメチルエーテル[ユニオックス MM-400:日油株式会社製]、平均分子量400、粘度100mPa・s(25℃)
相溶化剤D:ジエチレングリコールモノブチルエーテル、分子量162、水酸基価346、粘度6mPa・s(25℃)
相溶化剤E:エチルジグリコールアセテート、分子量176、粘度2.5mPa・s(25℃)
4)その他添加剤
触媒A:ジモルホリン-2,2-ジエチルエーテル
触媒B:1,2-ジメチルイミダゾール70質量%+ジエチレングリコール30質量%
整泡剤:シリコーン系非イオン性界面活性剤[TEGOSTAB B8460:エボニック ジャパン(株)製]
難燃剤:トリス(2-クロロイソプロピル)ホスフェート
5)面材
アルミニウム面材
【0086】
3.方法
<ポリオール成分の調製>
1) 窒素置換した混合釜に所定量の各種ポリオール及び触媒等を投入して混合する。
2) 30分以上撹拌し、十分撹拌されたことを目視で確認する。
3) 2)で確認した混合液に発泡剤を所定量になるように添加し、充分に混合する。混合後、秤量し減量した発泡剤を追加し、再度混合する。
なお、ポリオール成分の配合処方(質量部)は、表1~2に示される。
<ポリウレタンフォームの製造>
4) Hennecke社製の高圧発泡機であるHK-650Pを使用し、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分を19~23℃に調整し、吐出圧12MPaでウレタン注入成形を行った。ポリオール成分とポリイソシアネート成分の混合質量比は、表1~2に示される。
5) あらかじめ40℃に加温し、アルミニウム面材を上下に配置した型(内寸長さ2000mm、幅900mm、厚み100mm)の中央部1点にフォーム形成用組成物を注入する。
6) 型の長さ方向にポリウレタンフォームが詰まりきらない量を注入し、半円状の両端をカットして直方体をサンプリングした後、重さと体積を測定し、ジャスト密度(kg/m)を算出する。型に充填されたサンプルの密度をジャスト密度という。
7) ジャスト密度から型(内寸長さ2000mm、幅900mm、厚み100mm)のジャスト重量を算出し、それに対し1.25倍の量を注入し、ポリウレタンフォーム成形物を作製する。
8) フォーム形成用組成物を注入してから20分後、型から面材付きのポリウレタンフォーム成形物を取り出す。
9) ポリウレタンフォームを取り出した後、30分以内に0℃の条件下に置き、その後約24時間経過させる。
10) ウレタン注入した下面側の面材の上に直角になるように直尺を置き、直尺と面材の隙間の最大値をシクネスゲージ(新潟精機株式会社 100ML)もしくはテーパーゲージ(新潟精機株式会社 270A)を用いて測定する。得られた結果を「注入下面の最大凹み」として表1~2に示す。
11) また、下面側の面材について、蛍光灯(直管型)の下で該蛍光灯が面材に映り込む像を目視で確認し、下記の基準で平滑性を評価した。評価結果を表1~2に示す。
(評価基準)
◎ :表面が平滑であり、蛍光灯の像が直線で見えた。
○ :表面が平滑であり、蛍光灯の像が直線で見えたが、わずかに微細な凹凸があるように見えた。
× :表面が平滑ではなく、蛍光灯の像の波打ちが見えた。
【0087】
<ゲルタイムの測定方法>
フォーム形成用組成物の反応性を確認するため、所定の温度圧力で、溢れない程度の量を2Lデスカップに注入し、注入下混合液を割り箸で触った際に、混合液が糸を引き始めるまでの時間をゲルタイム(秒)として測定した。測定結果を表1~2に示す。
【0088】
<燃焼性評価>
JIS A 9511:2017に準じて、厚さ10mm×長さ200mm×幅25mmの試験片を用い、以下の基準で評価した。測定は、製造されたポリウレタンフォームから前記寸法の試験片に切削し、JIS K 7100:1999に規定された標準温度状態3級(23℃±5℃)、及び標準湿度状態3級(50+20、-10%R.H.)の条件下に静置し、製造から1週間後に行った。評価結果を表1~2に示す。
(評価基準)
○(合格):3秒以内に炎が消えて、残じんがなく、燃焼限界指示線を超えて燃焼しないとの基準を満たす。
×(不合格):上記合格の基準を満たさない。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表1~2から、実施例のポリウレタンフォームは、比較例1及び5~8と比較して、成形品の表面品質に優れていることが分かる。また、比較例2~4のポリウレタンフォームは、式1で表される化合物の使用量が多すぎたため、燃焼性が悪いことが分かる。