IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通テン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電源装置および電源制御方法 図1
  • 特許-電源装置および電源制御方法 図2
  • 特許-電源装置および電源制御方法 図3
  • 特許-電源装置および電源制御方法 図4A
  • 特許-電源装置および電源制御方法 図4B
  • 特許-電源装置および電源制御方法 図5
  • 特許-電源装置および電源制御方法 図6
  • 特許-電源装置および電源制御方法 図7
  • 特許-電源装置および電源制御方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】電源装置および電源制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241210BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20241210BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20241210BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241210BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
B60R16/033 B
H02J9/06 110
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020192460
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022081120
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上月 保典
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026215(JP,A)
【文献】特開2009-254110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60R 16/033
H02J 9/06
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バッテリから第1負荷に電力を供給する第1系統と、
第2バッテリから第2負荷に電力を供給する第2系統と、
前記第1系統と前記第2系統とを接続する接続ラインと、
前記接続ラインに設けられ、前記第1系統に失陥が生じていない場合に、前記第1系統と前記第2系統とを接続し、前記第1系統に失陥が生じた場合に、前記第1系統と前記第2系統とを遮断する遮断機構と、
前記第2系統に設けられ、前記第1系統に失陥が生じた場合に、前記第2バッテリから前記第2負荷に電力が供給されるように前記第2バッテリと前記第2負荷とを接続する接続機構と、
前記接続ラインのうち前記遮断機構と前記第2系統との間に設けられ、前記第1バッテリから流れる電流によってエネルギーを蓄積する蓄積部と、
前記第1系統と前記第2系統とが遮断された場合に、前記蓄積部に蓄積されたエネルギーに基づく電力が前記第2負荷に供給されるように設けられる供給部と
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
記供給部は、前記蓄積部と前記遮断機構との間の前記接続ラインに接続される
ことを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記供給部に電流が流れたことを検出する検出部と、
前記検出部によって前記供給部に電流が流れたことが検出された場合に、前記接続機構を作動させて、前記第2バッテリから前記第2系統を介して前記第2負荷に電力を供給させる制御装置と
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記遮断機構によって前記第1系統と前記第2系統とが遮断されてから所定時間後に、前記接続機構を作動させて、前記第2バッテリから前記第2系統を介して前記第2負荷に電力を供給させる制御装置
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記所定時間は、前記蓄積部に蓄積されたエネルギーによって前記第2負荷の動作を継続可能な時間である
ことを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
第1バッテリから第1負荷に電力を供給する第1系統と、第2バッテリから第2負荷に電力を供給する第2系統とを接続する接続ラインに設けられた遮断機構を、前記第1系統に失陥が生じていない場合に、前記第1系統と前記第2系統とを接続する工程と、
前記第1系統に失陥が生じた場合に動作させて前記第1系統と前記第2系統とを遮断する工程と、
前記接続ラインのうち前記遮断機構と前記第2系統との間に設けられ、前記第1バッテリから流れる電流によってエネルギーを蓄積する蓄積部から、前記第1系統に失陥が生じた場合に、前記エネルギーに基づいて電力を前記第2負荷に供給する工程と、
前記蓄積部から前記第2負荷に前記電力が開始された後に、前記第2バッテリから前記第2負荷に電力を供給する工程と
を有することを特徴とする電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置および電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主電池と、副電池とからバックアップ負荷に電力を供給可能な電源装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。従来の電源装置では、主電池側の電力供給系統に失陥が生じた場合には、第1リレーをOFFにして主電池側の電力供給系統を切り離し、第2リレーをONにして副電池側の電力供給系統を介して、副電池からバックアップ負荷に電力を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-61240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電源装置では、第2リレーがOFFの状態で、主電池側の電力供給系統に失陥が生じた場合には、第2リレーがONとなるまでの間、バックアップ負荷に電力が供給されない。すなわち、従来の電源装置では、バックアップ負荷への電力供給がなくなる時間が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、負荷への電力供給がなくなることを抑制する電源装置および電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電源装置は、第1系統と、第2系統と、接続ラインと、遮断機構と、接続機構と、蓄積部と、供給部とを備える。第1系統は、第1バッテリから第1負荷に電力を供給する。第2系統は、第2バッテリから第2負荷に電力を供給する。接続ラインは、第1系統と第2系統とを接続する。遮断機構は、接続ラインに設けられ、第1系統に失陥が生じた場合に、第1系統と第2系統とを遮断する。接続機構は、第2系統に設けられ、第1系統に失陥が生じた場合に、第2バッテリから第2負荷に電力が供給されるように第2バッテリと第2負荷とを接続する。蓄積部は、遮断機構に対して、第1系統とは反対側の経路上に設けられ、第1バッテリから流れる電流によってエネルギーを蓄積する。供給部は、第1系統と第2系統とが遮断された場合に、蓄積部に蓄積されたエネルギーに基づく電力が第2負荷に供給されるように設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、負荷への電力供給がなくなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る電源装置の構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る制御装置のブロック図である。
図3図3は、正常時における電力供給を示す図である。
図4A図4Aは、第1系統に電源失陥が生じた場合の電力供給を示す図(その1)である。
図4B図4Bは、第1系統に電源失陥が生じた場合の電力供給を示す図(その2)である。
図5図5は、実施形態に係る第1系統または第2系統における電源失陥が生じた場合の制御処理を説明するフローチャートである。
図6図6は、変形例に係る電源装置の構成例を示す図である。
図7図7は、変形例に係る電源装置の構成例を示す図である。
図8図8は、変形例に係る電源装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電源制御装置および電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、図1を用いて、実施形態に係る電源装置1の構成例について説明する。図1は、実施形態に係る電源装置の構成例を示す図である。実施形態に係る電源装置1は、車両に搭載される装置であり、実施形態に係る電源制御方法を実行する。車両は、バックアップ電源が必要なシステムを搭載する車両である。以下は、その一例である自動運転システムを備える車両について説明する。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係る電源装置1は、発電装置2と、メインバッテリ3(第1バッテリ)と、バックアップバッテリ4(第2バッテリ)と、第1負荷5と、第2負荷6と、第1系統7と、第2系統8と、接続ライン9と、制御装置10とを備える。なお、図1では、電力が供給されるラインを実線で示し、制御信号が伝達されるラインを破線で示す。第1系統7、第2系統8、および接続ライン9は、第1負荷5、および第2負荷6に電力を供給するための電力供給回路である。
【0012】
発電装置2は、オルタネータや、DCDCコンバータなどを含む。発電装置2は、モータジェネレータを含んでもよい。
【0013】
メインバッテリ3は、発電装置2から電力が供給されて充電される。メインバッテリ3は、第1系統7に電源失陥が生じていない場合に、第1負荷5、および第2負荷6に電力を供給するバッテリである。なお、ここでは、電源失陥は、系統内で地絡が発生することを示す。メインバッテリ3は、例えば、鉛蓄電池である。メインバッテリ3は、鉛蓄電池に限られず、リチウムイオン電池などであってもよい。
【0014】
バックアップバッテリ4は、第1系統7に電源失陥が生じた場合に、第2負荷6に電力を供給するバッテリである。バックアップバッテリ4は、メインバッテリ3から電力が供給されて充電される。バックアップバッテリ4は、例えば、リチウムイオン電池である。なお、バックアップバッテリ4は、リチウムイオン電池に限られず、鉛蓄電池などであってもよい。
【0015】
第1負荷5、および第2負荷6は、自動運転を実行するための負荷である。第1負荷5、および第2負荷6は、自動運転用のセンサや、アクチュエータを含む。第1負荷5、および第2負荷6は、例えば、障害物などを検出するためのミリ波レーダや、障害物などを検出するためのLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)や、障害物などを検出するためのカメラを含む。また、第1負荷5、および第2負荷6は、例えば、制動力を発生させるためのブレーキアクチュエータや、ステアリングを操作するためのステアリングアクチュエータ(例えば、EPS(Electric Power Steering))を含む。
【0016】
第1系統7、および第2系統8に電源失陥が生じていない正常時には、第1負荷5、および第2負荷6を用いて自動運転が実行される。
【0017】
また、第1系統7、または第2系統8のいずれか一方に電源失陥が生じた場合には、第1負荷5、または第2負荷6によって退避走行が実行可能である。退避走行は、自動運転の一部を実行する走行を含む。すなわち、車両は、第1系統7、または第2系統8のいずれか一方に電源失陥が生じた場合、正常時よりも自動運転の機能を制限しつつ、走行可能である。
【0018】
例えば、第1負荷5は、ミリ波レーダや、ブレーキ用アクチュエータや、ステアリングアクチュエータを含む。また、第2負荷6は、LiDARや、カメラや、ブレーキ用アクチュエータや、ステアリングアクチュエータを含む。
【0019】
車両は、第1系統7、または第2系統8のいずれか一方に電源失陥が生じた場合であっても、例えば、第1負荷5に含まれるミリ波レーダや、ブレーキ用アクチュエータや、ステアリングアクチュエータ、または第2負荷6に含まれるLiDARや、カメラや、ブレーキ用アクチュエータや、ステアリングアクチュエータを用いて退避走行を実行可能である。
【0020】
車両は、第1負荷5、および第2負荷6として2つのブレーキアクチュエータを備える。車両は、正常時には、2つのブレーキアクチュエータによって、制動力を発生させる。車両は、第1系統7、または第2系統8のいずれか一方に電源失陥が生じた場合、電源失陥が生じていない系統の1つのブレーキアクチュエータによって、制動力を発生させる。例えば、車両は、1つのブレーキアクチュエータによって、正常時における2つのブレーキアクチュエータによる制動力と同様の制動力を発生させる。なお、車両は、例えば、車速を制限し、1つのブレーキアクチュエータによって、正常時における2つのブレーキアクチュエータによる制動力よりも小さい制動力を発生させてもよい。
【0021】
第1系統7は、メインバッテリ3と第1負荷5とを接続する第1電力供給ラインである。第1系統7は、メインバッテリ3から第1負荷5に電力を供給する。なお、第1系統7には、上記した第1負荷5、および第2負荷6以外の負荷、例えば、オーディオ装置などの退避走行に使用されない負荷が接続される。
【0022】
第2系統8は、バックアップバッテリ4と第2負荷6とを接続する第2電力供給ラインである。第2系統8は、バックアップバッテリ4から第2負荷6に電力を供給する。第1系統7と第2系統8とは、電気的に並列に設けられる。なお、第2系統8は、正常時に、メインバッテリ3から、バックアップバッテリ4、および第2負荷6に電力を供給するラインとすることもできる。
【0023】
なお、詳しい説明は省略するが、第1系統7、および第2系統8には、第1負荷5や、第2負荷6など車両全体を制御するための車両制御装置が接続されている。そのため、第1系統7、または第2系統8のいずれかに電源失陥が発生した場合であっても、車両制御装置には、メインバッテリ3、およびバックアップバッテリ4の一方から電力が供給される。なお、車両制御装置は、制御装置10と統合されて設けられてもよい。
【0024】
第2系統8には、充電機構20と、第1スイッチ21とが設けられる。充電機構20は、接続ライン9と、バックアップバッテリ4との間に設けられる。充電機構20は、バックアップバッテリ4を充電する場合に、バックアップバッテリ4への電流や、電圧を調整する。充電機構20は、例えば、DCDCコンバータを含む。
【0025】
第1スイッチ21は、充電機構20に対して電気的に並列に設けられる。第1スイッチ21は、第1系統7に電源失陥が生じた場合に、第2バッテリから第2負荷6に電力が供給されるように第2バッテリと第2負荷6とを接続する接続機構である。第1スイッチ21は、バックアップバッテリ4が充電される場合には、開放状態、すなわちOFFとなる。そのため、バックアップバッテリ4の充電は、充電機構20を介して実行される。第1スイッチ21は、バックアップバッテリ4から第2負荷6に電力が供給される場合には、接続状態、すなわちONとなる。
【0026】
接続ライン9は、第1系統7と第2系統8とを接続する。接続ライン9には、第2スイッチ30と、第1検出部31と、コイル32とが設けられる。
【0027】
第2スイッチ30は、第1系統7と、第2系統8との電気的な接続状態を切り替える遮断機構である。第2スイッチ30は、第1系統7、および第2系統8に電源失陥が生じていない正常時には、接続状態、すなわちONになる。第2スイッチ30は、第1系統7、または第2系統8に電源失陥が生じた場合には、遮断状態、すなわちOFFになる。第2スイッチ30がOFFになることで、第1系統7と、第2系統8とは、電気的に遮断される。
【0028】
第1検出部31は、第1系統7、または第2系統8における電源失陥を検出するためのセンサである。第1検出部31は、接続ライン9に流れる電流を検出する電流センサである。第1系統7において電源失陥が生じた場合には、接続ライン9に電流が流れなくなり、第1検出部31によって検出される電流値I1が第1所定値P1以下になる。第1所定値P1は、予め設定された値であり、略ゼロである。換言すれば、第1所定値P1は、第1系統7において地絡が発生したことを判定可能な値である。
【0029】
また、第2系統8において電源失陥が生じた場合には、接続ライン9に流れる電流が増大し、第1検出部31によって検出される電流値I1が第2所定値P2以上となる。第2所定値P2は、予め設定された値であり、第1所定値P1よりも大きい。第2所定値P2は、第2負荷6による電力消費による値よりも大きい値であり、第2系統8において電源失陥が生じていると判定可能な値である。換言すれば、第2所定値P2は、第2系統8において地絡による過電流が発生したことを判定可能な値である。
【0030】
なお、図1では、第2スイッチ30と、第1系統7との間に第1検出部31を設けた一例を示すが、これに限られることはなく、第2スイッチ30と、第2系統8との間に第1検出部31が設けられてもよい。
【0031】
コイル32は、接続ライン9において第2スイッチ30に対して、第1系統7とは反対側の経路上に設けられる。具体的には、コイル32は、接続ライン9において第2スイッチ30と、第2系統8との間に設けられる。コイル32は、メインバッテリ3から流れる電流によってエネルギーを蓄積する蓄積部である。コイル32は、メインバッテリ3から第2負荷6、およびバックアップバッテリ4に電力が供給される際に流れる電流に応じたエネルギーW(W=(1/2)LI、L:インダクタンス、I:電流)を蓄積する。
【0032】
コイル32は、第2スイッチ30がOFFになり、第1系統7と第2系統8とが遮断された場合に、蓄積したエネルギーWに基づいた電力を第2負荷6に供給する。コイル32は、第2スイッチ30がOFFにされてから、第1スイッチ21をONにするまでのデッドタイムの間、第2負荷6に電力を供給可能となるように設けられる。コイル32は、数10μsの間、第2負荷6に電力を供給可能となるように設けられる。
【0033】
なお、デッドタイムは、以下の理由によって設けられる。電源装置1では、第1系統7に電源失陥が生じた場合に、第1系統7と第2系統8とが遮断される前に第1スイッチ21がONにされると、バックアップバッテリ4から第1系統7に電流が流れる。この場合、電源装置1では、バックアップバッテリ4から第2負荷6に供給可能な電力が少なくなる。これを防ぐために、電源装置1では、デッドタイムが設けられる。
【0034】
接続ライン9には、ループライン12が接続される。ループライン12は、第2スイッチ30とコイル32との間の接続ライン9に接続される。ループライン12には、ダイオード40と、第2検出部41とが設けられる。
【0035】
ダイオード40は、第2スイッチ30がOFFになった場合、すなわち、第1系統7と第2系統8とが遮断された場合に、コイル32に蓄積されたエネルギーWに基づいた電力が第2負荷6に供給されるように設けられる。ダイオード40のカソードは、接続ライン9に接続される。ダイオード40のアノードは、GNDに接続される。
【0036】
ダイオード40は、第1系統7と第2系統8とが遮断された場合に、コイル32に蓄積されたエネルギーWに基づいた電力を第2負荷6に供給させる供給部である。ダイオード40は、第2スイッチ30がONである場合、または第1スイッチ21がONである場合には、ループライン12に電流が流れることを防止する。
【0037】
第2検出部41は、ループライン12に流れる電流を検出する電流センサである。具体的には、第2検出部41は、ダイオード40に電流が流れたことを検出するセンサである。第2検出部41は、ダイオード40のカソード側に接続される。すなわち、第2検出部41は、ダイオード40と接続ライン9との間に設けられる。なお、第2検出部41は、ダイオード40のアノード側に接続されてもよい。
【0038】
制御装置10は、第1検出部31、および第2検出部41によって検出された電流値I1、I2に基づいて第1スイッチ21、および第2スイッチ30を制御する。
【0039】
次に、制御装置10について、図2を参照し説明する。図2は、実施形態に係る制御装置10のブロック図である。制御装置10は、制御部50と、記憶部51とを備える。記憶部51は、たとえば、RAMやデータフラッシュに対応する。
【0040】
制御部50は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、データフラッシュ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0041】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部50の取得部52、判定部53、および指示部54として機能する。
【0042】
また、制御部50の取得部52、判定部53、および指示部54の少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。また、取得部52、判定部53、および指示部54は、統合されてもよく、複数に分けられてもよい。
【0043】
取得部52は、第1検出部31によって検出された電流値I1に関する信号を取得する。取得部52は、第2検出部41によって検出された電流値I2に関する信号を取得する。
【0044】
判定部53は、第1検出部31によって検出された電流値I1が、第1所定値P1以下であるか否かを判定する。判定部53は、第1検出部31によって検出された電流値I1が第1所定値P1以下である場合には、第1系統7に電源失陥が生じていると判定する。
【0045】
判定部53は、第1検出部31によって検出された電流値I1が第2所定値P2以上である場合には、第2系統8に電源失陥が生じていると判定する。
【0046】
判定部53は、第2検出部41によって検出された電流値I2が第3所定値P3以上であるか否かを判定する。第3所定値P3は、予め設定された値であり、ダイオード40、すなわちループライン12に電流が流れたこと判定可能な値である。第3所定値P3は、コイル32に蓄積されたエネルギーWに基づいた電力が第2負荷6に供給開始されたか否かを判定可能な値である。判定部53は、第2検出部41によって検出された電流値I2が第3所定値P3以上となった場合、コイル32から第2負荷6へ電力供給が開始されたと判定する。
【0047】
指示部54は、判定部53による判定結果に応じて第1スイッチ21、または第2スイッチ30を制御するための指示信号を生成し、第1スイッチ21、または第2スイッチ30に出力する。これにより、第1スイッチ21、または第2スイッチ30が作動し、ON、またはOFFに切り替えられる。
【0048】
なお、第1系統7、および第2系統8による電源失陥が生じていない正常時には、第1スイッチ21はOFFとなっており、第2スイッチ30はONとなっている。
【0049】
指示部54は、第1検出部31によって検出された電流値I1が、第1所定値P1以下である場合、または第2所定値P2以上である場合には、第2スイッチ30をONからOFFにする指示信号を生成し、第2スイッチ30に出力する。これにより、第2スイッチ30がONからOFFに切り替わる。すなわち、第1系統7と第2系統8とが遮断される。
【0050】
指示部54は、第2検出部41によって検出された電流値I2が、第3所定値P3以上になった場合には、第1スイッチ21をOFFからONにする指示信号を生成し、第1スイッチ21に出力する。これにより、第1スイッチ21がOFFからONに切り替わる。
【0051】
次に、実施形態に係る電源装置1における電力供給について説明する。
【0052】
まず、第1系統7、および第2系統8に電源失陥が生じていない正常時の電力供給について図3を参照し説明する。図3は、正常時における電力供給を示す図である。
【0053】
正常時では、第2スイッチ30がONとなっており、第1スイッチ21がOFFとなっている。そのため、メインバッテリ3から第1系統7を介して第1負荷5に電力が供給される。また、メインバッテリ3から第1系統7、接続ライン9、および第2系統8を介して第2負荷6に電力が供給される。さらに、メインバッテリ3から第1系統7、接続ライン9、第2系統8、および充電機構20を介してバックアップバッテリ4に電力が供給される。接続ライン9に設けられたコイル32には、接続ライン9を流れる電流によってエネルギーWが蓄積される。
【0054】
なお、ループライン12にはダイオード40が設けられているため、ループライン12に電流は流れない。
【0055】
第1系統7に電源失陥が生じた場合には、図4Aに示すように、第2スイッチ30がONからOFFに切り替えられる。図4Aは、第1系統7に電源失陥が生じた場合の電力供給を示す図(その1)である。これにより、第1系統7と第2系統8とが遮断される。コイル32には、エネルギーWが蓄積されており、第2スイッチ30がOFFになることによって、ループライン12による電力供給経路が形成される。そのため、コイル32から第2系統8を介して第2負荷6に電力が供給される。
【0056】
コイル32から第2系統8を介して第2負荷6への電力供給が開始されると、第2検出部41によって検出される電流値I2が第3所定値P3以上となる。これにより、図4Bに示すように、第1スイッチ21がOFFからONに切り替えられる。図4Bは、第1系統7に電源失陥が生じた場合の電力供給を示す図(その2)である。第1スイッチ21がONとなることで、バックアップバッテリ4から、第1スイッチ21、および第2系統8を介して第2負荷6に電力が供給される。
【0057】
このように、電源装置1は、第2スイッチ30がOFFになってから第1スイッチ21がONとなるまでのデッドタイムの間、コイル32から第2負荷6に電力を供給する。
【0058】
なお、第2系統8に電源失陥が生じた場合には、第2スイッチ30がONからOFFに切り替えられる。これにより、第1系統7と第2系統8とが遮断され、メインバッテリ3から第1系統7を介して第1負荷5に電力が供給される。
【0059】
次に、実施形態に係る第1系統7または第2系統8における電源失陥が生じた場合の制御処理について図5を参照し説明する。図5は、実施形態に係る第1系統7または第2系統8における電源失陥が生じた場合の制御処理を説明するフローチャートである。
【0060】
制御装置10は、第1検出部31によって検出された電流値I1が第1所定値P1以下であるか否かを判定する(S100)。制御装置10は、電流値I1が第1所定値P1よりも大きい場合には(S100:No)、電流値I1が第2所定値P2以上であるか否かを判定する(S104)。
【0061】
制御装置10は、電流値I1が第2所定値P2よりも小さい場合には(S104:No)、第2系統8が正常であると判定し、今回の処理を終了する。
【0062】
制御装置10は、電流値I1が第2所定値P2以上である場合には(S104:Yes)、第2系統8に電源失陥が生じていると判定し、第2スイッチ30をONからOFFに切り替える(S105)。
【0063】
制御装置10は、電流値I1が第1所定値P1以下である場合には(S100:Yes)、第1系統7に電源失陥が生じたと判定し、第2スイッチ30をONからOFFに切り替える(S101)。
【0064】
制御装置10は、第2検出部41によって検出された電流値I2が第3所定値P3以上になったか否かを判定する(S102)。制御装置10は、電流値I2が第3所定値P3以上となっていない場合には(S102:No)、電流値I2が第3所定値P3以上となるまでステップS102の処理を繰り返す。
【0065】
制御装置10は、電流値I2が第3所定値P3以上になった場合には(S102:Yes)、第2負荷6に電力が供給されたと判定し、第1スイッチ21をOFFからONに切り替える(S103)。
【0066】
次に、実施形態に係る電源装置1の効果について説明する。
【0067】
電源装置1は、第1系統7と、第2系統8と、接続ライン9と、第2スイッチ30と、第1スイッチ21と、コイル32と、ダイオード40とを備える。第1系統7は、メインバッテリ3から第1負荷5に電力を供給する。第2系統8は、バックアップバッテリ4から第2負荷6に電力を供給する。接続ライン9は、第1系統7と第2系統8とを接続する。第2スイッチ30は、接続ライン9に設けられ、第1系統7に失陥が生じた場合に、第1系統7と第2系統8とを遮断する。第1スイッチ21は、第1系統7に失陥が生じた場合に、バックアップバッテリ4から第2負荷6に電力が供給されるようにバックアップバッテリ4と第2負荷6とを接続する。コイル32は、第2スイッチ30に対して、第1系統7とは反対側の経路上に設けられ、メインバッテリ3から流れる電流によってエネルギーWを蓄積する。ダイオード40は、第1系統7と第2系統8とが遮断された場合に、コイル32に蓄積されたエネルギーWに基づく電力が第2負荷6に供給されるように設けられる。
【0068】
これにより、電源装置1は、第2スイッチ30がOFFになり、第1系統7と第2系統8とが遮断された場合に、コイル32に蓄積されたエネルギーWによって第2負荷6に電力を供給することができる。そのため、電源装置1は、第2スイッチ30がOFFになってから、第1スイッチ21がONとなるまでの間に、第2負荷6への電力供給がなくなることを抑制することができる。
【0069】
コイル32は、第2スイッチ30と第2系統8との間に設けられる。ダイオード40は、第2スイッチ30とコイル32との間の接続ライン9に接続される。
【0070】
これにより、電源装置1は、第1系統7と第2系統8とを遮断し、第1スイッチ21をONにして、バックアップバッテリ4から第2負荷6に電力を供給する場合に、簡単な構成で素早く第2負荷6に電力を供給することができる。従って、電源装置1は、第2負荷6への電力供給がなくなることを抑制することができる。
【0071】
電源装置1は、第2検出部41と、制御装置10とを備える。第2検出部41は、ダイオード40に電流が流れたことを検出する。制御装置10は、第2検出部41によってダイオード40に電流が流れたことが検出された場合に、第1スイッチ21を作動させて、バックアップバッテリ4から第2系統8を介して第2負荷6に電力を供給させる。
【0072】
これにより、電源装置1は、第1系統7と第2系統8とを遮断し、コイル32から第2負荷6に確実に電力が供給された後に、第1スイッチ21をONにすることができる。そのため、電源装置1は、デッドタイムを設けつつ、第2負荷6に電力が供給されなくなることを抑制することができる。
【0073】
変形例に係る電源装置1は、図6に示すように、コイル32を第2系統8に設けてもよい。図6は、変形例に係る電源装置1の構成例を示す図である。例えば、コイル32は、接続ライン9と第2系統8との接続箇所と、第2負荷6との間に設けられる。また、変形例に係る電源装置1は、図7に示すように、コイル32を第2系統8に設け、ループライン12を第2系統8に接続してもよい。図7は、変形例に係る電源装置1の構成例を示す図である。
【0074】
なお、上記するコイル32、およびループライン12の配置位置は、一例であり、第1系統7と第2系統8とが遮断された場合に、コイル32に蓄積されたエネルギーWに基づいた電力を第2負荷6に供給可能であればよい。
【0075】
変形例に係る電源装置1は、第2検出部41を設けずに、第1系統7に電源失陥が生じた場合に、第1スイッチ21をOFFからONに切り替えてもよい。具体的には、変形例に係る電源装置1は、第2スイッチ30をONからOFFに切り替えてから所定時間後に、第1スイッチ21をOFFからONに切り替えてもよい。すなわち、変形例に係る電源装置1は、第1系統7と第2系統8とが遮断されてから所定時間後に、第1スイッチ21を作動させて、バックアップバッテリ4から第2負荷6に電力を供給してもよい。
【0076】
所定時間は、予め設定された時間であり、コイル32に蓄積されたエネルギーWによって第2負荷6の動作を継続可能な時間である。また、所定時間は、第2負荷6への電力供給がなくなることを発生させない時間である。
【0077】
これにより、変形例に係る電源装置1は、第2検出部41を設けずに、部品点数を少なくしつつ、上記実施形態と同様に、第2負荷6への電力供給がなくなることを抑制することができる。
【0078】
変形例に係る電源装置1は、充電機構20を設けずに、図8に示すように、第2系統8に第1スイッチ21を設けてもよい。図8は、変形例に係る電源装置1の構成例を示す図である。
【0079】
変形例に係る電源装置1は、バックアップバッテリ4を充電する場合には、第1スイッチ21をONにする。また、変形例に係る電源装置1は、バックアップバッテリ4の充電が完了した場合には、第1スイッチ21をOFFにする。そして、変形例に係る電源装置1は、上記するように第1系統7に電源失陥が発生し、第1系統7と第2系統8とが遮断された場合には、コイル32から第2負荷6に電力が供給された後に、第1スイッチ21をOFFからONに切り替える。
【0080】
これにより、変形例に係る電源装置1は、実施形態に係る電源装置1と同様に、第2負荷6への電力給がなくなることを抑制することができる。
【0081】
なお、変形例に係る電源装置1は、充電機構20の代わりにダイオードを設けてもよい。ダイオードは、メインバッテリ3からバックアップバッテリ4への電流の流れを許容し、バックアップバッテリ4から第2負荷6への電流の流れを禁止する。ダイオードのカソードは、バックアップバッテリ4に接続され、ダイオードのアノードは、第2負荷6側の第2系統8に接続される。
【0082】
実施形態、および変形例に係る電源装置1は、自動運転システムを備える車両を一例として説明したが、これに限られることはない。電源装置1は、電源失陥が生じた場合に、バックアップバッテリから負荷に電力を供給可能な装置に適応可能である。
【0083】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 電源装置
2 発電装置
3 メインバッテリ(第1バッテリ)
4 バックアップバッテリ(第2バッテリ)
5 第1負荷
6 第2負荷
7 第1系統
8 第2系統
9 接続ライン
10 制御装置
12 ループライン
20 充電機構
21 第1スイッチ(接続機構)
30 第2スイッチ(遮断機構)
31 第1検出部
32 コイル(蓄積部)
40 ダイオード(供給部)
41 第2検出部(検出部)
50 制御部
51 記憶部
52 取得部
53 判定部
54 指示部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8