(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
B65H 7/06 20060101AFI20241210BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20241210BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20241210BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20241210BHJP
B41J 29/42 20060101ALI20241210BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241210BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B65H7/06
G03G15/00 480
B41J29/38 302
B41J29/38 203
B41J29/00 Z
B41J29/42 F
G03G21/00 370
H04N1/00 C
H04N1/00 350
(21)【出願番号】P 2020201086
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直岐
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140867(JP,A)
【文献】特開2018-062087(JP,A)
【文献】特開2011-056918(JP,A)
【文献】特開2011-152983(JP,A)
【文献】特開2017-205929(JP,A)
【文献】特開2015-104863(JP,A)
【文献】特開2002-302300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/06
G03G 15/00
B41J 29/38
B41J 29/00
B41J 29/42
G03G 21/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙を収容する給紙トレイと、
印刷の実行を許可するユーザーを認証するユーザー認証部と、
前記給紙トレイへの印刷用紙のセットを検出する用紙セット検出部と、
前記給紙トレイに印刷用紙がセットされる際に認証されているユーザーを、その給紙トレイの補充ユーザーとして記憶する記憶デバイスと、
前記給紙トレイから前記印刷用紙の給紙を行う給紙機構と、
前記給紙における給紙ジャムの発生を検出する給紙ジャム検出部と、
前記ユーザーの認証、前記印刷用紙のセット検出、前記補充ユーザーの記憶、前記給紙ジャムの検出を含む印刷を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、給紙ジャムが発生した場合に前記補充ユーザーによる印刷用紙のセットが不適切であったためか否かを判断し、不適切であったと判断した場合はその後前記補充ユーザーが
給紙トレイに印刷用紙を補充した際に、または前記補充ユーザーがログアウトし改めて認証された際にセットした状態の確認を求める画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記印刷用紙のセット後に発生した給紙ジャムの頻度がそのセットの前に発生した給紙ジャムの頻度に対して所定の条件を超えて高い場合に、前記印刷用紙のセットが不適切であったと判断する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、電源オフ状態または前記ユーザー認証が行われていない状態で前記給紙トレイに印刷用紙がセットされた場合、その給紙トレイの補充ユーザーが未知であると前記記憶デバイスに記憶し、未知の補充ユーザーによって印刷用紙がセットされた場合はその後最初に認証されたユーザーに対してセットされた用紙の状態を確認するように求める請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記用紙セット検出部は、前記給紙トレイにセットされた印刷用紙の有無を検出する回路である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記給紙トレイが引出し式または脱着式のリフトアップトレイであり、前記用紙セット検出部は前記給紙トレイの出し入れまたは脱着を検出してトレイのリフトアップを行う回路を含み、
前記制御部は、前記給紙トレイが出し入れまたは脱着された際のリフトアップを制御すると共にリフトアップ位置に基づいて前記印刷用紙の堆積量を検出し、出し入れまたは脱着の前後の堆積量の変化に基づいて新たな印刷用紙がセットされたと判断する請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置の制御部が、
印刷の実行を許可するユーザーを認証するステップと、
用紙セット検出部を用いて給紙トレイへの印刷用紙のセットを検出するステップと、
前記給紙トレイに印刷用紙がセットされる際に認証されているユーザーをその給紙トレイの補充ユーザーとして記憶デバイスに記憶するステップと、
給紙機構を用いて前記給紙トレイから前記印刷用紙の給紙を行うステップと、
給紙ジャム検出部を用いて前記給紙における給紙ジャムの発生を検出するステップと、
給紙された印刷用紙への印刷を制御するステップと、
給紙ジャムが発生した場合に前記補充ユーザーによる印刷用紙のセットが不適切であったためか否かを判断し、不適切であったと判断した場合はその後前記補充ユーザーが
給紙トレイに印刷用紙を補充した際に、または前記補充ユーザーがログアウトし改めて認証された際にセットした状態の確認を求めるステップとを備える画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、給紙ジャムが不適切な印刷用紙のセットによるものと推測される場合に、印刷用紙のセット状態の確認を求める画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷用紙をセットする1以上の給紙トレイを有する画像形成装置は、給紙を開始してから所定時間内に印刷用紙が搬送路に設けられた用紙通過センサーに到達できない場合、給紙ジャム(給紙部での用紙詰まり)と判断する。そして、印刷用紙の搬送を停止し、搬送できなかった印刷用紙を搬送経路から除去するようにメッセージ表示等の手段を用いてユーザーを促す。
【0003】
給紙ジャムは、例えばシワが入っていたり分厚すぎたりする不適切な印刷用紙がセットされている場合に発生することがある。しかし、たとえ適切な印刷用紙であっても、給紙トレイに印刷用紙がセットされる状態が不適切であれば給紙ジャムが発生し得る。例えば、印刷用紙を位置決めする用紙ガイドがきつく締められ過ぎると、用紙ガイドに印刷用紙が挟まれてスムーズな給紙が妨げられる。逆に、用紙ガイドが緩すぎると、印刷用紙が所定位置にセットされないために斜め送りやシワが発生して給紙ジャムに至る場合がある。
【0004】
印刷用紙に起因するジャムに関し、以下の技術が知られている。
用紙収納部から前記画像形成部に向けて用紙が適切に搬送されない無給紙ジャムが発生すると、給紙カセットの抜き差し後の1枚目であるか、あるいは、給紙カセット内の用紙が長時間使用されなかったか等を判断する。そして、ジャムの原因に応じたメッセージを表示する。例えば、カセットの抜き差し後の1枚目でありかつ長時間使用されなかったものではない場合、用紙のセットが不適切であると判断する。そして、「カセットの用紙をセットし直してください」と表示する(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、用紙に起因する用紙詰まりの解消方法のガイダンス表示に関して、以下の技術が知られている。
初めて起きたジャムである場合には、復旧作業(ジャム紙除去)を行ってもらい、ジョブを再開させるようにする。一方、同一箇所で連続的にジャムが発生した場合には、例えば「定着装置に、用紙先端が巻き込まれていますか?」の問い合わせ表示を行う。問い合わせ表示に対し、NOが入力されれば、用紙側に原因があるものとして「複写に使用する用紙を裏返して使用して下さい」といったガイダンスを表示するものである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-152983号公報
【文献】特開2012-203412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ジャム発生時に画像形成装置を使用しているユーザーが給紙トレイに印刷用紙をセットしたとは限らない。別のユーザーが不適切な状態で印刷用紙をセットしていた場合、セットが不適切でジャムが発生したことが印刷用紙をセットしたユーザーに伝わらず、そのユーザーに対する注意喚起ができない。
【0008】
即ち、給紙トレイに不適切な状態で印刷用紙をセットしたユーザーと、セット後にその給紙トレイを使用して給紙ジャムが発生した際のユーザーが異なる場合に、印刷用紙をセットしたユーザーに給紙ジャムが発生したことを知らせて注意喚起することができない。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、給紙トレイへの印刷用紙のセットが不適切な状態であったためにジャムが発生したと判断される場合にセットを行ったユーザーに注意を喚起できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、印刷用紙を収容する給紙トレイと、印刷の実行を許可するユーザーを認証するユーザー認証部と、前記給紙トレイへの印刷用紙のセットを検出する用紙セット検出部と、前記給紙トレイに印刷用紙がセットされる際に認証されているユーザーを、その給紙トレイの補充ユーザーとして記憶する記憶デバイスと、前記給紙トレイから前記印刷用紙の給紙を行う給紙機構と、前記給紙における給紙ジャムの発生を検出する給紙ジャム検出部と、前記ユーザーの認証、前記印刷用紙のセット検出、前記補充ユーザーの記憶、前記給紙ジャムの検出を含む印刷を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、給紙ジャムが発生した場合に前記補充ユーザーによる印刷用紙のセットが不適切であったためか否かを判断し、不適切であったと判断した場合はその後前記補充ユーザーが使用する際にセットした状態の確認を求める画像形成装置を提供する。
【0010】
また、異なる観点からこの発明は、画像形成装置の制御部が、印刷の実行を許可するユーザーを認証するステップと、用紙セット検出部を用いて給紙トレイへの印刷用紙のセットを検出するステップと、前記給紙トレイに印刷用紙がセットされる際に認証されているユーザーをその給紙トレイの補充ユーザーとして記憶デバイスに記憶するステップと、給紙機構を用いて前記給紙トレイから前記印刷用紙の給紙を行うステップと、給紙ジャム検出部を用いて前記給紙における給紙ジャムの発生を検出するステップと、給紙された印刷用紙への印刷を制御するステップと、給紙ジャムが発生した場合に前記補充ユーザーによる印刷用紙のセットが不適切であったためか否かを判断し、不適切であったと判断した場合はその後前記補充ユーザーが使用する際にセットした状態の確認を求めるステップとを備える画像形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
この発明による画像形成装置は、給紙トレイに印刷用紙がセットされる際に認証されているユーザーを、その給紙トレイの補充ユーザーとして記憶する記憶デバイスを備え、制御部は、給紙ジャムが発生した場合に前記補充ユーザーによる印刷用紙のセットが不適切であったためか否かを判断し、不適切であったと判断した場合はその後前記補充ユーザーが使用する際にセットした状態の確認を求めるので、給紙トレイへの印刷用紙のセットが不適切な状態であったために給紙ジャムが発生したと判断される場合に、給紙ジャム発生時に印刷を行っている認証ユーザーでなく印刷用紙のセットを行ったユーザーに注意を喚起できる。引いては、不適切な状態で印刷用紙がセットされたことによる給紙ジャムの発生を抑制できる。
この発明による画像形成方法も同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の画像形成装置の一実施形態である複合機の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す複合機の本体部分の機構的構成を示す断面図である。
【
図3】
図1および
図2に示す複合機100の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】この実施形態において制御部が実行する、給紙ジャムに係るユーザーへの注意喚起に係る処理を示す第1のフローチャートである。
【
図5】この実施形態において制御部が実行する、給紙ジャムに係るユーザーへの注意喚起に係る処理を示す第2のフローチャートである。
【
図6】この実施形態において制御部が実行する、給紙ジャムに係るユーザーへの注意喚起に係る処理を示す第3のフローチャートである。
【
図7】
図4~
図6に示す処理において制御部110が使用するデータの例を示す説明図である。
【
図8】この実施形態において、制御部が注意ユーザーに向けて表示させる用紙セット状態確認メッセージの一例を示す説明図である。
【
図9】この実施形態において、制御部がコピー操作画面に表示させる用紙セット状態確認メッセージの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
【0014】
≪画像形成装置の構成例≫
図1は、この発明による画像形成装置の一実施形態である複合機の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す複合機100の本体部分の機構的構成を示す断面図である。
図3は、
図1および
図2に示す複合機100の電気的な構成を示すブロック図である。
図1および
図3に示すように、複合機100は、操作ユニット105、原稿を読み取る画像読取デバイス111、画像形成を行う画像形成デバイス115、ドロア型給紙トレイ18および手差し給紙トレイ19を有している。さらに、複合機100は、原稿を読取り部に搬送する原稿搬送ユニット103および排出トレイ39a、39bを備える。
【0015】
この実施形態において、ドロア型給紙トレイ18は引出し式の構造を有し、引出し部を引き出した状態で印刷用紙がトレイにセットされる。用紙サイズに応じた所定の位置に1以上の印刷用紙がセットされた状態で引出し部が挿入されると、後述する制御部110はセットされた印刷用紙の上端をピックアップローラ33が配置された所定の給紙可能位置までリフトアップさせる。即ち、ドロア型給紙トレイ18は、リフトアップトレイである。ドロア型給紙トレイ18が引き出される際、印刷用紙は給紙可能位置からリフトダウン位置に降下する、
一方、手差し給紙トレイ19は、リフトアップ機構を有しておらず、それに代えて昇降式のピックアップローラ(
図1、2に不図示)を有している。用紙サイズに応じた所定の位置に1以上の印刷用紙が置かれると手差し給紙トレイ19に置かれた印刷用紙が給紙可能な状態になる。給紙の際はピックアップローラが降下して最も上に置かれている印刷用紙をシート搬送経路R1へ導く。
【0016】
この実施形態において、4つのドロア型給紙トレイ18(上段から順に給紙トレイ1~4)は、いずれもセットされた印刷用紙のサイズを検出する用紙サイズセンサー18aおよび印刷用紙の有無を検出する用紙切れセンサー18bを有する。さらに、引出し部が挿入された状態か否かを検出する挿抜センサー18cおよび挿入された状態で印刷用紙のリフトアップ量に基づいてセットされている印刷用紙の堆積量を検出する用紙レベルセンサー18dを備える。
また、手差し給紙トレイ19は、セットされた印刷用紙のサイズを検出する用紙サイズセンサー19aおよび印刷用紙の有無を検出する用紙切れセンサー19bを有する。
【0017】
図3に示すように、それぞれのドロア型給紙トレイ18の用紙切れセンサー18b、挿抜センサー18cおよび用紙レベルセンサー18dは、用紙セット検出回路41に属する。また、手差し給紙トレイ19の用紙切れセンサー19bは、用紙セット検出回路41に属する。
また、それぞれのドロア型給紙トレイ18および手差し給紙トレイ19の付近のシート搬送経路R1に用紙通過センサー45が配置されており、給紙された印刷用紙の通過を検出する。それらの用紙通過センサー45は、給紙ジャム検出回路43に属する。
【0018】
ここで、
図2に示す複合機100の内部的な構成を簡単に説明しておく。
複合機100においては、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像を印刷シートに印刷する。あるいは、単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像を印刷シートに印刷する。このため、現像ユニット12、感光体ドラム13、ドラムクリーニング装置14、および帯電器15等は、それぞれ4個ずつ設けられる。各色に応じた4種類のトナー像を形成するために、それぞれがブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローに対応付けられて、4つの画像ステーションPk、Pc、Pm、Pyが構成されている。
【0019】
各画像ステーションPk、Pc、Pm、Pyのいずれにおいても、次のようにしてトナー像が形成される。ドラムクリーニング装置14が、感光体ドラム13表面の残留トナーを除去および回収する。その後、帯電器15が感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させる。そして、光走査ユニット11が均一に帯電した表面を走査露光して表面に静電潜像を形成する。その後、現像ユニット12が静電潜像を現像する。これにより、各感光体ドラム13表面に各色のトナー像が形成される。現像ユニット12にはトナーとキャリアからなる現像剤が入っている。
中間転写ベルト21は矢印方向Cに周回移動する。ベルトクリーニングユニット22は周回移動する中間転写ベルト21の残留トナーを除去および回収する。各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が中間転写ベルト21に順次転写して重ね合わせられて、中間転写ベルト21上にカラーのトナー像が形成される。
【0020】
給紙トレイの一種であるドロア型給紙トレイ18は、シートを収納し、2次転写ユニット23へ給紙する。
図2に示すように4種類のシートをそれぞれ収納する。
また、給紙トレイの一種である手差し給紙トレイ19は所定位置に置かれたシートを2次転写ユニット23へ給紙する。この実施形態における手差し給紙トレイ19は、サイズ検出機構と、前記所定位置におけるシートの有無を検出するシートセンサーを備える。
【0021】
印刷シートは、ピックアップローラ33により4つあるドロア型給紙トレイ18の何れか一つから引出されて、シート搬送経路R1を介して2次転写ユニット23へ給紙される。あるいは、手差し給紙トレイ19から図示しないピックアップローラによって給紙され、シート搬送経路R1を介して2次転写ユニット23へ給紙される。それぞれのピックアップローラの下流側のシート搬送経路R1には、用紙通過センサー45(
図3参照)が配置されている。シート搬送経路R1には、印刷シートを一旦停止させて印刷シートの先端を揃えるレジストローラ34が配置されている。また印刷シートの搬送を促す搬送ローラ35等が配置されている。レジストローラ34は、印刷シートを一旦停止させた後、中間転写ベルト21と2次転写ローラ23aに挟まれたニップ域へトナー像の転写タイミングに合わせて印刷シートを搬送する。
【0022】
印刷シートがニップ域を通過するとき、中間転写ベルト21の表面に形成されたカラーのトナー像が印刷シートに転写される。印刷シートは、ニップ域を通過した後、定着ユニット17の加熱ローラ24と加圧ローラ25との間に挟まれて加熱および加圧される。この加熱および加圧により、カラーのトナー像が印刷シート上に定着される。
定着ユニット17を通過した印刷シートは、排出トレイ39aまたは39bへ排出される。印刷シートの排出先は、後述する制御部110によって制御され、図示しない切替え機構によって排出トレイ39aおよび39bの何れかへ印刷シートが導かれるように搬送経路が切替えられる。
【0023】
また、
図3に示すように、複合機100は画像処理回路120を備える。
画像処理回路120は、制御部110、通信回路124およびビデオコントローラ125を備える。また、
図3に図示しない画像処理用の回路を有していてもよい。例えば、画像読取デバイス111が読み取った原稿の画像を処理するための回路である。
制御部110は、プロセッサであるCPU121、RAM122および不揮発性メモリ123を含む。不揮発性メモリ123は、フラッシュメモリーやHDDで構成され、CPU121が実行する制御プログラムを予め格納する。また、それぞれのドロア型給紙トレイ18および手差し給紙トレイ19について、補充ユーザーをはじめとした給紙トレイの属性データを格納する。RAM122は、CPUの処理に用いるデータや画像形成に係る画像等のデータを記憶する。CPU121は、不揮発性メモリ123に格納された制御プログラムを実行し、
図2に示す複合機100の各部の動作およびデータの処理を制御する。
【0024】
また、制御部110は、ユーザー認証を行うユーザー認証部131を含む。ユーザー認証には種々の態様があるが、例えば、非接触カードやICタグ等を用いた認証、指紋や顔認識等の生体認証を行う場合は、ユーザー認証に用いるハードウェア資源はユーザー認証部131に属する。異なる態様として、例えば、ユーザーIDおよびパスワードを用いる場合は、必要なハードウェア資源を操作ユニット105や不揮発性メモリ123等で賄うことができるのでユーザー認証部131は機能的な構成要素になる。
【0025】
操作ユニット105は、ハードウェア資源として操作キーやタッチパネルなどの入力手段と表示手段としての液晶ディスプレイを含む。操作キーおよびタッチパネルはユーザーの操作を受付ける。制御部110は、それらが受付けたユーザーの操作を認識し、液晶ディスプレイに、複合機100の状態や設定に係る操作画面を表示させる。
通信回路124は、複合機100をLAN(Local Area Network)等のネットワークに接続し、ホストコンピュータ200等の外部機器と通信可能にするためのインターフェイス回路である。
ビデオコントローラ125は、印刷すべき画像に係る走査信号を生成し光走査ユニット11へ送る。走査信号は、光走査ユニットによる走査露光を制御して印刷すべき画像に対応した静電潜像を感光体ドラム13の表面に形成する。
【0026】
≪給紙ジャムに係るユーザーへの注意喚起処理≫
続いて、この実施形態において制御部110が実行する給紙ジャムに係るユーザーへの注意喚起の処理について述べる。
図4~
図6は、この実施形態において制御部110が実行する処理のうち、給紙ジャムに係るユーザーへの注意喚起を行う処理を示すフローチャートである。また、
図7は、
図4~
図6に示す処理において制御部110が使用するデータの例を示す説明図である。なお、
図4~
図6のフローチャートは、この実施形態の基本的態様に加えて、好ましい態様の構成を含んでいる。また、
図7に示すデータは、すべて不揮発性メモリ123に格納されてもよいが、現在の状態を示す属性データの一部がRAM122に格納されてもよい。例えば、用紙サイズ、用紙切れ有無、ログインユーザー等の項目は、電源がオンの状態であれば用紙サイズセンサー、等によって現在の状態が検出されるので、不揮発性メモリ123でなくRAM122に格納してもよい。
複合機100の電源がオンされると、制御部110は、初期化処理の後に起動するタスクの一つとして
図4~
図6に示す処理を開始する。
図4~
図6に示すタスクは、他のタスクと並行してマルチタスク処理される。また、制御部110は、4つあるドロア型給紙トレイ18のそれぞれに対応して
図4~
図6に示す処理を実行する。さらに、手差し給紙トレイ19についても同様の処理を実行する。
【0027】
図4に示すように、制御部110は電源オン後に給紙トレイがリフトダウン状態になっているか否かを判断する(ステップS11)。リフトダウン状態になっている場合は(ステップS11のYes)、電源オフの間に対象の給紙トレイが引き出されたことを示している。従って、対象の給紙トレイに新たな印刷用紙が補充されてセットされた可能性があると判断する。
制御部110は、まずリフトダウン状態のトレイを給紙可能位置までリフトアップさせる(ステップS13)。そして、
図7に示す対象の給紙トレイの属性データの1項目であって、印刷用紙をセットしたユーザーを記憶する補充ユーザーの項目に「未知」を設定する。即ち、未知のユーザーによって印刷用紙がセットされたものと見做す。
【0028】
さらに、補充ユーザーの属性を表すサブ項目であって、注意喚起を行うべきユーザーか否かを表すユーザーレベルの項目に「通常ユーザー」を設定する。通常ユーザーは、注意喚起が不要なユーザーを表す。それに対して、注意喚起を行うべきユーザーに対する設定は「注意ユーザー」である。補充ユーザーが「未知」、即ち不特定の場合、特定できない補充ユーザーに対して注意喚起を行うことは趣旨から外れるので、補充ユーザーの項目に「未知」を設定する場合は併せてユーザーレベルの項目に「通常ユーザー」を設定する。
さらに、制御部110は、対象の給紙トレイの属性データの他の項目である用紙セット確認状態の項目に、未確認状態を示す「未」を設定する。用紙セット確認状態は、未知のユーザーにより印刷用紙が補充された場合に、その後に印刷を行う認証ユーザーが対象の給紙トレイにセットされた印刷用紙の状態を確認したか否かを表す。未確認状態の場合は「未」を、確認済みの場合は「済」を設定する(ステップS15)。
【0029】
ステップS11~S15に示す電源オン後の一連の処理の後、制御部110は、常時監視のループ処理に入る。常時監視のループ処理は、
図4に示すステップS17の判定のNo,
図5に示すステップS31の判定のNo,
図6に示すステップS51の判定のNoおよびステップS71の判定のNoを経て
図4に示すステップS17の判定へ戻るループである。
また、前述のステップS11で、対象の給紙トレイがリフトダウン状態でない場合、即ち、給紙可能位置にある場合(ステップS11のNo)、制御部110は処理をステップS17へ進め、常時監視のループ処理に入る。その場合、対象の給紙トレイの属性データは電源がオフされる前の状態を維持する。
【0030】
制御部110は、常時監視のループ処理におけるステップS17へ処理を進める。以下、常時監視のループ処理において制御部110が監視する幾つかの事象と、それらの事象が発生した場合の処理について説明する。
まず、給紙ジャムが発生した場合の処理について述べる。ステップS17の判定に示す事象である。
制御部110は、ステップS17の処理において対象の給紙トレイからの給紙を行う際に給紙ジャムが発生したか否かを監視する。
【0031】
給紙ジャムが発生した場合(ステップS17のYes)、給紙ジャム発生カウンタを1つカウントアップする(ステップS21)。そして、制御部110は、給紙ジャム発生カウンタの値が予め定められた閾値を超えたか否かを判断する(ステップS23)。
給紙ジャム発生カウンタの値が予め定められた閾値を超えない場合、制御部110は、処理を常時監視のループへ戻す。
給紙ジャム発生カウンタは、対象の給紙トレイからの給紙ジャムをカウントするカウンタである。制御部110は、対象の給紙トレイに印刷用紙がセットされたと判断した場合に給紙ジャム発生カウンタをリセットし、対象の給紙トレイからの給紙を行う際に給紙ジャムが発生したら給紙ジャム発生カウンタをカウントアップする。ステップS21の処理は、そのカウントアップの処理に該当する。
【0032】
ステップS23の判定に係る閾値は、予め定められた固定の値であってもよいが、印刷用紙がセットされる前の状況を反映して適応的に決定される値であってもよい。適応的に決定される値の一例は、印刷用紙が直近にセットされる前の給紙ジャムの頻度に基づいて決定される値である。閾値として適応的に決定される値を用いれば、直近の印刷用紙のセット以降、給紙ジャムの頻度(発生割合)がセット以前に比べて所定の割合を超えて大きくなったことを検出できる。
【0033】
ステップS23の判定で、給紙ジャム発生カウンタの値が閾値を超えたと判断した場合、制御部110は対象の給紙トレイの属性データの1項目であるユーザーレベルに「注意ユーザー」を設定する(ステップS25)。その後、給紙トレイに印刷用紙が補充された際のログインユーザーが「注意ユーザー」として登録された補充ユーザーと一致する場合に、そのログインユーザーに対して注意喚起を行うようにするためである。
【0034】
ここで、
図7に示すように、制御部110は、各給紙トレイの現在の状態を示す属性データとして補充ユーザーを記憶するだけでなく、過去に各給紙トレイに印刷用紙をセットした補充ユーザーの履歴を不揮発性メモリ123に記憶する。補充ユーザーの履歴は、給紙トレイ毎に個別のものであってもよいが、少なくとも同じタイプの給紙トレイに共通のものとすることが好ましく、すべての給紙トレイに共通のデータとしてもよい。
【0035】
補充ユーザーの履歴についてもう少し述べておく。制御部110は、対象の給紙トレイに印刷用紙が新たにセットされると、現在の状態を示す属性データの1項目である補充ユーザーに。その時点で認証されているユーザー(ログインユーザー)を設定する。ログインユーザーが、複合機100を現在使用しているからである。その前に制御部110は、対象の給紙トレイにそれまで登録されていた補充ユーザーを、補充ユーザーの履歴へ移動させ、移動の月日時分、即ち、給紙トレイに印刷用紙が新たにセットされた時点を示すセット月日時分の情報と共に格納する。なお、補充ユーザーのサブ項目であるユーザーレベルも補充ユーザーと共に移動させる。移動させる補充ユーザーが既に補充ユーザーの履歴に格納されている場合は、既に格納されている履歴を削除して履歴の重複登録を避けるようにする。
【0036】
一方、制御部110は、複合機100を使用するための新たなユーザー認証を受付け、新たなユーザーを認証すると、制御部110は、対象の給紙トレイの属性データの1項目であるログインユーザーに、認証されたユーザーのIDを設定する。そのうえで、認証されたユーザー(ログインユーザー)が補充ユーザーの履歴に格納されているか否かを調べる。ログインユーザーが補充ユーザーの履歴に格納されている場合、その補充ユーザーのユーザーレベルをログインユーザーのユーザーレベルにコピーする。補充ユーザーの履歴にログインユーザーが格納されていない場合は、ログインユーザーのユーザーレベルを「通常ユーザー」に設定する。
また、制御部110は、補充ユーザーの履歴に格納された各補充ユーザーのセット月日時分を参照して、予め定められた期間を超える古い履歴を削除するようにしてもよい。あるいは、履歴に格納された補充ユーザーが所定の容量を超えた場合に、古い履歴から削除するようにしてもよい。
【0037】
フローチャートの説明に戻る。
前述した
図4のステップS25で、制御部110は、さらに、対象の給紙トレイの用紙セット確認状態の項目に「未」を設定する。そして、処理を常時監視のループへ戻す。
続いて、常時監視のループ処理において対象の給紙トレイが抜き差しを検出した場合の処理について述べる。なお、この実施形態において、ドロア型給紙トレイ18の用紙サイズセンサー18a、用紙切れセンサー18bおよび用紙レベルセンサー18dは、引き出された状態で制御部110から切り離されて検出不能になり、対象の給紙トレイが挿入されると制御部110と接続されて検出可能になるものとする。ただし、発明はこの態様に限られない。
【0038】
図5に示すステップS31の判定で、制御部110は、対象の給紙トレイが対象の給紙トレイが抜き差しされたか否かを判定する。対象の給紙トレイが引き出されたと判断した場合(ステップS31のYes)、制御部110は、まず給紙トレイを給紙可能位置までリフトアップさせる(ステップS33)。リフトアップが終了したら、対象の給紙トレイのリフトアップ量に基づいて現在の印刷用紙の堆積量(対象の給紙トレイに収容されている印刷用紙の凡その量)を求める。求められた印刷用紙の現在の堆積量と挿抜前の堆積量とを比較することによって、対象の給紙トレイが引き出されている間に新たな印刷用紙がセットされたか否かを判断する(ステップS35)。なお、挿抜前の印刷用紙の堆積量(用紙レベル)および用紙切れ有無は、
図7に示すように不揮発性メモリ123に格納されるデータの項目である。
制御部110は、対象の給紙トレイが引き出される際に、対象の給紙トレイの現在の状態を示す属性データから用紙レベルおよび用紙切れ有無をコピーして、挿抜直前の状態を保持しておくようにする。挿抜の前後の用紙レベルおよび用紙切れ有無の少なくとも何れかの変化に基づいて、制御部110は、対象の給紙トレイに印刷用紙がセットされたか否かを判断できる。
【0039】
印刷用紙がセットされなかったと判断した場合(ステップS35のNo)、制御部110は、処理を定常監視ループへ戻す。
印刷用紙が補充されたと判断した場合(ステップS35のYes)、制御部110は、対象の給紙トレイに係るジャム発生カウンタをリセットし、用紙セット確認状態を「未」に設定する(ステップS37)。印刷用紙が補充されたからである。
【0040】
続いて制御部110は、対象の給紙トレイの現在の状態を示す属性データの1項目である補充ユーザーが現在のログインユーザーと異なるユーザーか否かを判定する(ステップS39)。異なるユーザーの場合(ステップS39のYes)、制御部110は、まず補充ユーザーを補充ユーザーの履歴へコピーする。その際、セット月日時分の情報と共に格納する。なお、補充ユーザーのサブ項目であるユーザーレベルも補充ユーザーと共に移動させる(ステップS41)。移動させる補充ユーザーが既に補充ユーザーの履歴に格納されている場合は、既に格納されている履歴を削除して重複登録を避けるようにする。そのうえで制御部110は、対象の給紙トレイの補充ユーザーの項目に、現在認証されているユーザー、即ちログインユーザーをコピーする。また、ログインユーザーのサブ項目であるユーザーレベルも補充ユーザーのユーザーレベルにコピーする(ステップS42)。
補充ユーザーがログインユーザーと同じ場合は(ステップS39のNo)、コピーをする必要がないので、ステップS41、S42の処理をスキップする。
【0041】
そして、制御部110は、対象の給紙トレイの補充ユーザーのユーザーレベルの項目を参照して、「注意ユーザー」であるか否かを判定する(ステップS43)。
ユーザーレベルが「注意ユーザー」でない場合(ステップS43のNo)、制御部110は、処理を常時監視のループへ戻す。
一方、ユーザーレベルが「注意ユーザー」である場合(ステップS43のYes)、制御部110は、注意ユーザーに対して給紙トレイの用紙セットの状態の確認を求めるメッセージを操作ユニット105に表示させる(ステップS45)。
【0042】
図8は、この実施形態において、制御部110が操作ユニット105のコピー操作画面47に表示させる用紙セット状態確認メッセージ49の一例を示す説明図である。
図8に示す用紙セット状態確認メッセージ49は、注意ユーザー向けのメッセージである。用紙セット状態確認メッセージ49が表示された場合、ユーザーはメッセージと共に表示される「OK」キーを操作して用紙セット状態確認メッセージ49を消さなければ、コピーをスタートさせることができない。
【0043】
制御部110は、用紙セット状態確認メッセージ49と共に表示させた「OK」が操作されたと判断したら(ステップS47のYes)、用紙セット状態確認メッセージ49を消去する(ステップS48)。併せて、対象の給紙トレイの属性データの1項目であるユーザーレベルを「注意ユーザー」から「通常ユーザー」に変更する(ステップS49)。そして、処理を常時監視のループに戻す。
【0044】
続いて、常時監視のループ処理において、ユーザー認証が行われて未ログイン状態からユーザーが認証された場合の処理について述べる。
制御部110は、常時監視のループ処理において新たなユーザーが認証されたか否かを監視する(
図6に示すステップS51の判定)。ユーザーが認証された場合(ステップS51のYes)、対象の給紙トレイの属性データの1項目である補充ユーザーが「未知」であるか否かを監視する(ステップS53)。補充ユーザーが「未知」の場合(ステップS53)、さらに、対象の給紙トレイの属性データの1項目である用紙セット確認状態が「未」であるか否かを調べる(ステップS55)。
【0045】
ステップS51、S53またはS55の判定の何れかがNoの場合、制御部110は処理を常時監視のループへ戻す。
ステップS51、S53およびS55の判定が何れもYesの場合、制御部110は、現在のログインユーザーに給紙トレイの用紙セット状態の確認を求めるメッセージを操作ユニット105に表示させる(ステップS57)。
【0046】
図9は、この実施形態において、制御部110が操作ユニット105のコピー操作画面47に表示させる用紙セット状態確認メッセージ49の一例を示す説明図である。
図9に示す用紙セット状態確認メッセージ51は、未知のユーザーが印刷用紙をセットした後にログインしたユーザーに、印刷用紙がセットされた状態の確認を求めるメッセージである。制御部110は、表示されたメッセージに従って、ユーザーが対象の給紙トレイを引き出されると(ステップS59のYes)、用紙セット状態確認メッセージ51を消去する(ステップS61)。さらに、制御部110は、対象の給紙トレイの属性データの1項目である用紙セット確認状態を、「済」に設定する(ステップS63)。そして、処理を常時監視のループに戻す。
【0047】
続いて、常時監視のループ処理において、認証されていたユーザーがログアウトした場合の処理について述べる。
制御部110は、常時監視のループ処理においてログインユーザーがログアウトしたか否かを監視する(ステップS71の判定)。ユーザーが認証された場合(ステップS71のYes)、対象の給紙トレイの属性データの1項目であるログインユーザーとして「未知」をセットし、ログインユーザーのユーザーレベルとして「通常ユーザー」をセットする(ステップS73)。そして、処理を常時監視のループに戻す。
以上が、この実施形態において制御部110が実行する給紙ジャムに係るユーザーへの注意喚起の処理である。
【0048】
≪給紙ジャムに係るユーザーへの注意喚起機能≫
続いて、
図4~
図6に示す処理によって実現されるユーザーへの注意喚起の機能に焦点を当てて述べる。
基本的な機能と
図4~
図6に示す処理との関係は以下の通りである。
例えば、ユーザーAが複合機100のログインユーザーとなって印刷を実行している際に、給紙トレイ1が用紙切れになり、ユーザーAが給紙トレイ1を抜き差しして新たな印刷用紙を給紙トレイ1にセットしたとする。
【0049】
常時監視のループ処理で、給紙トレイ1が抜き差しされたことを認識すると、制御部110は、
図5に示すステップS31の判定でYesへ処理を進める。給紙トレイが差し込まれるとリフトアップさせ(ステップS33)、リフトアップ量に基づいて(あるいは、用紙切れの有無によってでもよい)、印刷用紙が補充されたと判定する(ステップS35のYes)。そして、給紙ジャム発生カウンタをリセットし、用紙セット確認状態を「未」に設定する(ステップS37)。ログインユーザーであるユーザーAが給紙トレイ1についてそれまで設定されている補充ユーザーと異なる場合(ステップS39のYes)、制御部110は、その時点で設定されている補充ユーザーをそのユーザーレベルと共に履歴にコピーする(ステップS41)。そして、給紙トレイ1の補充ユーザーにユーザーAを設定する(ステップS42)。この時点で、補充ユーザーAは、履歴に格納されていないものとする。従って、制御部110は、ユーザーレベルとして「通常ユーザー」を設定する。
【0050】
続くステップS41の判定はNoへ進み、常時監視のループ処理へ戻る。
このとき、ユーザーAによる印刷用紙のセットの状態が不適切であったとする。しかし、印刷用紙のセットはユーザーAの印刷ジョブの終了間際に行われ、ユーザーAの印刷ジョブが終了するまでの間に給紙ジャムは発生しなかったものとする。その後、別のユーザーBがログインすると、常時監視のループ処理中のステップS51の判定で、制御部110はYesへ処理を進める。しかし、未知のユーザーではないのでステップS53の判定で処理をNoへ進める。続いて制御部110は、ログインユーザーのBがトレイ1の補充ユーザーまたは補充ユーザーの履歴に格納されているかを確認する(ステップS65)。ユーザーBが履歴に格納されていれば(ステップS65のYes)、そのユーザーレベルをログインユーザーのユーザーレベルにコピーする(ステップS67)。履歴に格納されていなければ(ステップS65のNo)、ログインユーザーのユーザーレベルを「通常ユーザー」に設定する(ステップS69)。そして、常時監視のループへ戻る。
【0051】
ユーザーBが給紙トレイ1の印刷用紙を用いる印刷ジョブを実行していると、給紙ジャムが発生したとする。
給紙ジャムが発生すると、常時監視のループ処理中のステップS17の判定で制御部110はYesへ処理を進める。制御部110は、給紙ジャム発生カウンタを1カウントアップし(ステップS21)、給紙ジャム発生カウンタの値が閾値を超えたか判定する(ステップS23)。例えば、閾値が2に設定されているものとする。制御部110は、2回の給紙ジャムまでは給紙ジャム発生カウンタをカウントアップすると常時監視のループへ処理を戻す(ステップS23のNo)。3回目の給紙ジャムが発生すると(ステップS23のYes)、制御部110は給紙トレイ1の補充ユーザーであるユーザーAのユーザーレベルを、それまでの「通常ユーザー」から「注意ユーザー」に変更し(ステップS25)、処理を常時監視のループへ戻す。
【0052】
留意すべきは、給紙ジャムが発生した時点で複合機100をしているログインユーザーがユーザーBであっても、制御部110は給紙ジャムが発生した際の補充ユーザーであるユーザーAのユーザーレベルを「注意ユーザー」に変更する。制御部110は、その時点で直ちに注意ユーザーに向けてのメッセージを表示させることはせず、処理を常時監視のループへ戻す。
なお、給紙ジャムの発生カウンタが閾値に達するまでに複数のユーザーがログインした場合でも、給紙トレイ1の補充ユーザーはユーザーAが維持されているので、やはりユーザーAのユーザーレベルが「注意ユーザー」に変更される。
【0053】
補充ユーザーAが別のログインユーザーに置換されるのは、別のユーザー(例えばユーザーB)がログインし、その間に給紙トレイ1に印刷用紙が新たにセットされた場合である(
図5のステップS39)。それ以降に給紙ジャムが発生しても、あるいは発生しなくなっても、それはユーザーAによる印刷用紙のセットに関連がなく、ユーザーBのセットに関連するものとして扱う。なお、ユーザーBが印刷用紙をセットした時点で、制御部110は、それまでの補充ユーザーであったユーザーAを、補充ユーザーの履歴にユーザーレベルと共に格納しておく。
【0054】
その後、ユーザーAが新たにログインすると、常時監視のループ処理中のステップS53の判定で、制御部110は処理をYesへ進める。ユーザーAが給紙トレイ1の補充ユーザーであるから続くステップS53の判定で処理をNoへ進め、ステップS65の判定では、ユーザーAが給紙トレイ1の補充ユーザーに格納されているので処理をYesへ進める。そして、制御部110は、補充ユーザーであるユーザーAのユーザーレベル「注意ユーザー」をログインユーザーのユーザーレベルにコピーする。
【0055】
ユーザーAがログイン中に給紙トレイ1に印刷用紙を補充すると、常時監視のループ処理中のステップS31の判定で、制御部110は処理をYesへ進める。ステップS35の判定では処理をYesへ進め、ステップS39の判定ではユーザーAがログインユーザーであり補充ユーザーでもあるから処理をNoへ進める。
そして、ステップS43の判定では、補充ユーザーのユーザーAが「注意ユーザー」であるから処理をYesへ進め、注意ユーザー向けのメッセージ(
図8参照)を操作ユニット105に表示させる。
このように、制御部110は、給紙トレイ1に印刷用紙を補充したユーザーを補充ユーザーとして保持し、給紙ジャムが所定の基準を越えた場合、その補充ユーザーが次に給紙トレイに印刷用紙を補充した際に注意喚起のメッセージを表示させる。これが、基本的な機能である。
【0056】
続いて、この実施形態の好ましい態様に係る機能について述べる。
好ましい機能の1つは、給紙トレイに印刷用紙を補充したユーザーがログインユーザーとして特定できない場合に、その後にログインユーザーに給紙トレイの印刷用紙のセット状態の確認を求めるものである。
例えば、電源がオフの間に給紙トレイ1の印刷用紙がセットされた場合である。その場合、制御部110は、電源オン後のステップS11の判定で、給紙トレイ1がリフトダウン状態にあることを認識して、処理をYesへ進める。そして、給紙トレイ1の補充ユーザーとして「未知」を設定する。同時に、ユーザーレベルとして「通常ユーザー」を、用紙セット確認状態として「未」を設定する。そして、処理を常時監視のループ処理へ戻す。
【0057】
その後、新たなユーザー(例えば、ユーザーC)がログインすると、常時監視のループ処理のステップS51の判定で、制御部110は処理をYesへ進める。続くステップS53の判定では、給紙トレイ1の補充ユーザーが「未知」であるから、処理をYesへ進める。また、ステップS55の判定では、用紙セット確認状態が「未」であるから、処理をYesへ進め、給紙トレイの用紙セット状態の確認を求めるメッセージを操作ユニット105に表示させる(
図9参照)。
【0058】
そして、給紙トレイ1が抜き差しされたら(ステップS59)、メッセージを消去し(ステップS61)、給紙トレイ1の用紙セット確認状態を「済」に設定する(ステップS63)。そして、常時監視のループに処理を戻す。
なお、その後、ユーザーCがログアウトして、別のユーザー(例えば、ユーザーD)がログインしたとする。その場合、ステップS55の判定において、用紙セット確認状態が「済」に設定されているので、制御部110は、ユーザーDのログインに際して給紙トレイの用紙セット状態の確認を求めるメッセージを表示させることはしない。
【0059】
また、ユーザーがログアウトしている間に給紙トレイ1に印刷用紙がセットされることもあり得る。
ユーザーがログアウトすると、常時監視のループ処理のステップS71の判定で、制御部110は処理をYesへ進め、ログインユーザーを「未知」に設定する(ステップS73)。そして、常時監視のループに処理を戻す。
【0060】
その状態で、例えば、給紙トレイ1に印刷用紙がセットされると、常時監視のループ処理中のステップS31の判定で、制御部110は処理をYesへ進める。ステップS35の判定では処理をYesへ進め、用紙セット確認状態を「未」に設定する(ステップS37)。ステップS39の判定ではログインユーザーが「未知」であるところ、設定されている補充ユーザーが「未知」でなければ(ステップS39のYes)、履歴にコピーしたうえで(ステップS41)、補充ユーザーを「未知」に設定する(ステップS42)。ステップS43の判定では、「未知」に対してユーザーレベルは「通常ユーザー」が設定され、未知のユーザーに印刷が許可されない、即ち、給紙ジャムが発生しないので、常に「通常ユーザー」であり、処理はNoに進んで常時監視のループに戻る。
【0061】
その後、新たなユーザーがログインすると、常時監視のループ処理のステップS51の判定で、制御部110は処理をYesへ進める。続くステップS53の判定では、給紙トレイ1の補充ユーザーが「未知」であるから、処理をYesへ進める。また、ステップS55の判定では、用紙セット確認状態が「未」であるから、処理をYesへ進め、給紙トレイの用紙セット状態の確認を求めるメッセージを操作ユニット105に表示させる(
図9参照)。
これが、この実施形態の好ましい態様に係る機能である。
【0062】
以上に述べたように、
(i)この発明による画像形成装置は、印刷用紙を収容する給紙トレイと、印刷の実行を許可するユーザーを認証するユーザー認証部と、前記給紙トレイへの印刷用紙のセットを検出する用紙セット検出部と、前記給紙トレイに印刷用紙がセットされる際に認証されているユーザーを、その給紙トレイの補充ユーザーとして記憶する記憶デバイスと、前記給紙トレイから前記印刷用紙の給紙を行う給紙機構と、前記給紙における給紙ジャムの発生を検出する給紙ジャム検出部と、前記ユーザーの認証、前記印刷用紙のセット検出、前記補充ユーザーの記憶、前記給紙ジャムの検出を含む印刷を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、給紙ジャムが発生した場合に前記補充ユーザーによる印刷用紙のセットが不適切であったためか否かを判断し、不適切であったと判断した場合はその後前記補充ユーザーが使用する際にセットした状態の確認を求めることを特徴とする。(実施の形態1)
【0063】
この発明において、給紙トレイは、印刷用紙を所定の位置に収容して印刷の際に給送するものである。その具体的な態様は、例えば、引出し式のリフトアップトレイ、カセット式のトレイ、あるいは手差しトレイが挙げられる。前述の実施形態における引出し式のリフトアップトレイは、この発明の給紙トレイに相当するものとして実施形態での説明を行っている。実施形態に示す複合機のように画像形成装置が複数の給紙トレイを備えていてもよく、その場合に記憶デバイスはそれぞれの給紙トレイについて補充ユーザーを記憶し、制御部は各給紙トレイについて給紙ジャムを検出してセットが不適切であったか否かを判断する。
【0064】
また、上述のように画像形成装置はユーザー認証部を備えており、認証されたユーザーのみが印刷を実行できるものとする。ユーザー認証の具体的な態様は、例えば、ユーザーIDおよびパスワードを用いるものであってもよいが、それに限るものでなく、非接触カードやICタグ等を用いた認証、指紋や顔認識等の生体認証、その他公知の手法を用いたものであればよい。
さらにまた、用紙セット検出部は、給紙トレイに新たな印刷用紙がセットされたことを検出するものである。その具体的な態様は、例えば、給紙トレイに印刷用紙がない用紙切れ状態から印刷用紙がある状態に変化した場合である。ただし、用紙切れ状態でなくとも、新たな印刷用紙が補充されたこと検出した場合も制御部は印刷用紙がセットされたと判断する。
上述の実施形態における用紙セット検出回路は、この発明の用紙セット検出部に相当する。また、上述の実施形態における給紙ジャム検出回路は、この発明の給紙ジャム検出部に相当する。
【0065】
前記記憶デバイスは、不揮発性メモリであって、画像形成装置の電源がオフされても給紙トレイの補充ユーザーを保持する。その具体的な態様は、例えば、フラッシュメモリーやHDD(ハードディスクドライブ)等が挙げられるが、これに限るものでない。記憶デバイスは、給紙トレイに新たな印刷用紙がセットされた場合、そのセットの際に認証されているユーザーを補充ユーザーとして記憶する。既に補充ユーザーが記憶されている場合は補充ユーザーを更新する。
また、給紙ジャムは、給紙された印刷用紙が所定時間内に給紙トレイ付近のシート搬送経路に設けられた用紙通過センサーに到達できなかったり、その用紙通過センサーによる印刷用紙の検出が所定期間を越えて続いたりしたと制御部が判断することにより発生する。
【0066】
さらにまた、制御部は、補充ユーザーによる印刷用紙のセットが不適切であったために給紙ジャムが発生したと判断した場合はその後前記補充ユーザーが使用する際にセットした状態の確認を求める。ここで、その後前記補充ユーザーが使用する際とは、例えば、その補充ユーザーの印刷が終了して一旦ログアウトした後、改めてユーザー認証された場合であってもよい。ただし、それに限らず、例えば、改めてユーザー認証されたユーザーが補充ユーザーとして記憶されている給紙トレイに新たな印刷用紙をセットした場合であってもよく、あるいは他の給紙トレイに新たな印刷用紙をセットした場合であってもよい。前述の実施形態においては、改めてユーザー認証されたユーザーが補充ユーザーとして記憶されている給紙トレイに新たな印刷用紙をセットした場合を例に挙げている。
【0067】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記制御部は、前記印刷用紙のセット後に発生した給紙ジャムの頻度がそのセットの前に発生した給紙ジャムの頻度に対して所定の条件を超えて高い場合に、前記印刷用紙のセットが不適切であったと判断してもよい。(実施の形態2)
このようにすれば、印刷用紙のセット後に発生する給紙ジャムの頻度がセットの前に比べて高くなった場合に前記印刷用紙のセットが不適切であったと判断できる。
【0068】
(iii)前記制御部は、電源オフ状態または前記ユーザー認証が行われていない状態で前記給紙トレイに印刷用紙がセットされた場合、その給紙トレイの補充ユーザーが未知であると前記記憶デバイスに記憶し、未知の補充ユーザーによって印刷用紙がセットされた場合はその後最初に認証されたユーザーに対してセットされた用紙の状態を確認するように求めてもよい。(実施の形態3)
このようにすれば、ユーザー認証が行われていない状態で印刷用紙がセットされた際についても、その後に認証されたユーザーに用紙の状態を確認させることで、不適切な状態で印刷用紙がセットされたことによる給紙ジャムの発生を抑制できる。
【0069】
(iv)前記用紙セット検出部は、前記給紙トレイにセットされた印刷用紙の有無を検出する回路であってもよい。
このようにすれば、給紙トレイに印刷用紙がない状態から印刷用紙がある状態になったことを検出することによって給紙トレイへの印刷用紙のセットを検出できる。(実施の形態4)
【0070】
(v)前記給紙トレイが引出し式または脱着式のリフトアップトレイであり、前記用紙セット検出部は前記給紙トレイの出し入れまたは脱着を検出してトレイのリフトアップを行う回路を含み、前記制御部は、前記給紙トレイが出し入れまたは脱着された際のリフトアップを制御すると共にリフトアップ位置に基づいて前記印刷用紙の堆積量を検出し、出し入れまたは脱着の前後の堆積量の変化に基づいて新たな印刷用紙がセットされたと判断してもよい。(実施の形態5)
このようにすれば、給紙トレイの印刷用紙がなくなる前に新たな印刷用紙が補充された場合にも、出し入れまたは脱着の前後の堆積量の変化に基づいて前記給紙トレイへの印刷用紙のセットを検出できる。
【0071】
(vi)この発明の一態様は、画像形成装置の制御部が、印刷の実行を許可するユーザーを認証するステップと、用紙セット検出部を用いて給紙トレイへの印刷用紙のセットを検出するステップと、前記給紙トレイに印刷用紙がセットされる際に認証されているユーザーをその給紙トレイの補充ユーザーとして記憶デバイスに記憶するステップと、給紙機構を用いて前記給紙トレイから前記印刷用紙の給紙を行うステップと、給紙ジャム検出部を用いて前記給紙における給紙ジャムの発生を検出するステップと、給紙された印刷用紙への印刷を制御するステップと、給紙ジャムが発生した場合に前記補充ユーザーによる印刷用紙のセットが不適切であったためか否かを判断し、不適切であったと判断した場合はその後前記補充ユーザーが使用する際にセットした状態の確認を求めるステップとを備える画像形成方法を含む。
【0072】
この発明の態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0073】
11:光走査ユニット、 12:現像ユニット、 13:感光体ドラム、 14:ドラムクリーニング装置、 15:帯電器、 17:定着ユニット、 18:ドロア型給紙トレイ、 18a,19a:用紙サイズセンサー、 18b,19b:用紙切れセンサー、 18c:挿抜センサー、 18d:用紙レベルセンサー、 19:手差し給紙トレイ、 21:中間転写ベルト、 22:ベルトクリーニングユニット、 23:2次転写ユニット、 23a:2次転写ローラ、 24:加熱ローラ、 25:加圧ローラ、 34:レジストローラ、 33:ピックアップローラ、 35:搬送ローラ、 39a,39b:排出トレイ、 41:用紙セット検出回路、 43:給紙ジャム検出回路、 45:用紙通過センサー、 47:コピー操作画面、 49,51:用紙セット状態確認メッセージ
100:複合機、 103:原稿搬送ユニット、 105:操作ユニット、 110:制御部、 111:画像読取デバイス、 115:画像形成デバイス、 120:画像処理回路、 121:CPU、 122:RAM、 123:不揮発性メモリ、 124:通信回路、 125:ビデオコントローラ、 131:ユーザー認証部、 200:ホストコンピュータ
Pk,Pc,Pm,Py:画像ステーション、 R1:シート搬送経路