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特許7601621軸部材仮組システム、及び軸部材仮組方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】軸部材仮組システム、及び軸部材仮組方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/13 20200101AFI20241210BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20241210BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20241210BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
G06F30/13
E04B1/26 A ESW
G06F30/12
G06Q10/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020201702
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089362
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 一男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 紀子
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 奈弓
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-319941(JP,A)
【文献】特開2013-149119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0334794(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0095744(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第108052715(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105279293(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/398
E04B 1/26
G06Q 10/20
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存木造建造物を解体して得られる軸部材の3次元モデルである軸部材モデルを用い、CADを利用して仮組みを行うシステムであって、
オペレータ操作により、前記軸部材モデルを軸方向に2分する中心面を設定する中心面設定手段と、
垂直又は略垂直交差する2つの前記中心面によって前記軸部材モデルの中心線を設定する中心線設定手段と、
CAD上で一体となって移動するように、前記軸部材モデルと前記中心面と前記中心線がグループ化された軸部材グループを生成する軸部材グループ生成手段と、を備え、
前記中心面は透過表示され、
前記軸部材モデルと前記中心面と前記中心線は、それぞれ別レイヤに配置され、
オペレータ操作により、2以上の前記軸部材グループに係る前記中心線及び/又は前記中心面を表示して接続し、接続した後に前記軸部材モデルを表示することで接続状況を目視確認することができる、
ことを特徴とする軸部材仮組システム。
【請求項2】
前記中心面設定手段は、前記軸部材モデルの軸方向及び外周方向に突出するように前記中心面を設定し、
前記中心線設定手段は、前記軸部材モデルの軸方向に中心面外縁を越えて突出するように前記中心線を設定する、
ことを特徴とする請求項1記載の軸部材仮組システム。
【請求項3】
オペレータ操作により、前記軸部材モデルのテクスチャの表示色を変更する表示色変更手段を、さらに備え、
接合される2以上の前記軸部材モデルを異なる表示色で、かつ3次元断面で表示することによって、接合箇所における干渉状況を目視確認することができる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の軸部材仮組システム。
【請求項4】
オペレータ操作により、2以上の同種の前記軸部材モデルが配置される平面を基準面として設定する基準面設定手段と、
オペレータが指定した2以上の前記軸部材モデルを、前記基準面上に配置する軸部材モデル配置手段と、をさらに備え、
前記基準面上に配置された前記軸部材モデルは、オペレータ操作により該基準面上で移動する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の軸部材仮組システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の軸部材仮組システムを用いて、前記軸部材モデルの仮組みを行う方法であって、
解体された各軸部材を計測することで、前記軸部材モデルを取得する軸部材モデル取得工程と、
前記中心面設定手段を用いて、前記中心面を設定することによって前記軸部材グループを生成する軸部材グループ生成工程と、
CAD上で複数の前記軸部材モデルを接続しながら、該軸部材モデルの仮組モデルを形成する仮組モデル形成工程と、を備え、
前記仮組モデル形成工程では、2以上の前記軸部材グループに係る前記中心線及び/又は前記中心面を表示して接続し、接続した後に前記軸部材モデルを表示することで接続状況を目視確認する、
ことを特徴とする軸部材仮組方法。
【請求項6】
既存設計図書に基づいて作成される設計モデルと、前記仮組モデル形成工程で形成された前記仮組モデルと、を照らし合わせるモデル照合工程と、をさらに備え、
前記モデル照合工程で、前記仮組モデルと前記設計モデルに差異が生じたときは、前記軸部材モデルの位置を変更して他の前記軸部材モデルと接続する、
ことを特徴とする請求項5記載の軸部材仮組方法。
【請求項7】
解体前の既存木造建造物を計測することによって、軸部材の骨組状態を3次元モデル化した骨組モデルを取得する骨組モデル取得工程と、
前記仮組モデル形成工程で形成された前記仮組モデルと、前記骨組モデル取得工程で取得された前記骨組モデルと、を照らし合わせるモデル照合工程と、をさらに備え、
前記モデル照合工程で、前記仮組モデルと前記骨組モデルに差異が生じたときは、前記軸部材モデルの位置を変更して他の前記軸部材モデルと接続する、
ことを特徴とする請求項5記載の軸部材仮組方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、木造の文化財建造物や木造の歴史的建造物(以下、これらを総称して「文化財等木造建造物」という。)の復原に関するものであり、より具体的には、軸部材の3次元モデルを利用してCAD上で仮想の仮組みを行うシステムと、これを用いて仮組を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国では古くから木造建造物が利用されており、そのため数多くの文化財等木造建造物が現在まで残されている。一方、温暖で多湿な気象状況であるため木材は傷みやすく、また地震や台風など厳しい自然災害も頻繁に起こることから、木造建造物にとっては厳しい環境といえる。特に、文化財等木造建造物は長期にわたって存続していることから、屋根や軒周り、縁廻り、床下などの劣化が多く見られ、このような状況を放置すると建物全体が破損するおそれもある。したがって、文化財等木造建造物を維持し、後世に継承することを目的として、定期的に修理や復原が行われている。
【0003】
文化財等木造建造物の復原は、通常の木造建築物の修復等を行うケースとは異なり、既存の資料等を十分に調査したうえで実施する必要があり、また解体した木材を再利用するとともに建築技法を再現し、全体意匠を極力変更しないなど様々な制約がある。例えば、文化財等木造建造物を構成する柱や梁、桁、棟木、垂木、母屋、小屋束といった軸部材は原則としてそのまま活用し、ほぞ継ぎや相欠き継ぎといった接合技法もそのまま利用したうえで復原していく。
【0004】
ところが、文化財等木造建造物は経年による不陸や傾きが生じていることが多く、この場合、軸部材にもねじれやゆがみ、腐朽といった現象が生じている。また、解体によって拘束から解放され、あるいは荷重が取り除かれることによって、保管期間中に軸部材の変形が進むことも珍しくない。このように不具合が生じた軸部材は、問題がある部分を繕い、あるいは変形を修正したうえで利用される。
【0005】
通常、現地で本格的な「建方」を行う前に、現地とは異なる場所で「仮組み」が行われる。この仮組みは、文字どおり軸部材を仮に(試行的に)組み立てる作業であり、組み立てる中で軸部材の不具合を検出して修繕等を行うとともに、軸部材の配置(位置や姿勢など)を確認していくいわば試行錯誤の作業である。そして仮組みを行うなかでは、既存軸部材の切削の是非や転用の可否といった判断が強いられることもある。しかしながら、仮組みを行いながらこのような判断を行う場合、必ずしも適切な選択がなされるとは限らず、例えば、本来削る必要がない既存軸部材を削ってしまったり、あるいは転用可能な既存軸部材の活用を断念したり、といった不本意なケースも生じることがある。
【0006】
そこで特許文献1では、上記した仮組みによる弊害を回避すべく仮組みを省略することとし、つまり既存の建物を解体することなく伝統的木造軸組を補強する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-301516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解体して復原する必要がない程度の損傷であれば特許文献1に開示された技術を用いて文化財等木造建造物を補強することもできるが、そうでない場合はやはり仮組みが避けられない。そこで本願発明の発明者らは、CAD(Computer Aided Design)を利用することでいわば仮想的に仮組みを行う手法を創案した。あらかじめコンピュータ上で軸部材を組み立てることによって、事前に軸部材の不具合や配置を確認することができるため、既存軸部材の切削の是非や転用の可否といった検討も事前に行うことができ、貴重な既存軸部材をできるだけ残して有効活用できる方法を検証することができる。すなわち、実際の仮組みで不具合が発生しないようにあらかじめ不具合が生じやすい(干渉が起きそうな)部分を想定することができ、無限にある軸部材配置の組み合わせ(互位置や角度など)のうち最も望ましい組み合わせを事前に机上で検討することができるわけである。これにより、干渉する部分を削って設計通りに組み合わせた場合と削らずに離した場合の比較検討なども可能となる。
【0009】
また、土台の腐朽などが原因で建物寸法の推定が難しいときは古写真や創建時期の技法、流行意匠などを参考にすることもあるが、従来の仮組みでは多くのケースを試みることができないのに対して、CADを利用した仮想的な仮組みであれば種々のケースを試みることも可能である。同様に、文化財等木造建造物の経歴上どの時点で復原の仕様や形状を設定するかによって軸部材の配置や範囲が変わることもあるが、CADを利用した仮想的な仮組みであれば所望の時点を設定しながら様々なケースを試みることも難しくない。
【0010】
しかしながら本願発明の発明者らが検討を進める中で、CADを利用した仮想的な仮組み手法にもいくつかの問題があることも分かった。例えば、軸部材を単に3次元化したモデルでは、CAD上でモデルを指定する(ドラッグする)操作が著しく困難であり、位置合わせの基準となるポイントも定めにくく、また経年変化によるねじれやひずみが生じた軸部材の微調整の基準も判断し難い。さらに、軸部材の3次元化モデルは表面のみによって構成されるいわば中空の形状であるため、継手や仕口が噛み合ってないにもかかわらず組み立てられるなど、物理的な干渉チェックができないといった問題が確認された。
【0011】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、貴重な既存軸部材を有効活用することができるよう、軸部材を組み立てるための諸情報を事前に把握することができる軸部材仮組システムと軸部材仮組方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
CADを利用して軸部材の3次元モデル(以下、「軸部材モデル」という。)の仮組みを行うこととし、しかも軸部材モデルには中心面や中心線を設定する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0013】
本願発明の軸部材仮組システムは、CADを利用して軸部材モデルの仮組みを行うシステムであって、中心面設定手段と中心線設定手段、軸部材グループ生成手段を備えたものである。このうち中心面設定手段は、オペレータ操作によって軸部材モデルに中心面(軸部材モデルを軸方向に2分する面)を設定する手段であり、中心線設定手段は、略垂直(垂直を含む)交差する2つの中心面によって軸部材モデルの中心線を設定する手段である。また軸部材グループ生成手段は、CAD上で一体となって移動するように軸部材モデルと中心面、中心線がグループ化された軸部材グループを生成する手段である。なお、中心面は透過表示され、軸部材モデルと中心面と中心線はそれぞれ別レイヤに配置される。そして、オペレータ操作により2以上の軸部材グループに係る中心線や中心面を表示して接続したうえで、軸部材モデルを表示することによって接続状況を目視確認することができる。
【0014】
本願発明の軸部材仮組システムは、軸部材モデルの軸方向と外周方向に突出するように中心面を設定するとともに、軸部材モデルの軸方向に中心面外縁を越えて突出するように中心線を設定するものとすることもできる。
【0015】
本願発明の軸部材仮組システムは、オペレータ操作によって軸部材モデルのテクスチャの表示色を変更する表示色変更手段を、さらに備えたものとすることもできる。この場合、接合される2以上の軸部材モデルを異なる表示色で、かつ3次元(3D)断面で表示することによって、接合箇所における干渉状況を目視確認することができる。
【0016】
本願発明の軸部材仮組システムは、基準面設定手段と軸部材モデル配置手段をさらに備えたものとすることもできる。このうち基準面設定手段は、オペレータ操作によって2以上の同種の軸部材モデルが配置される平面を基準面として設定する手段であり、部材モデル配置手段は オペレータが指定した2以上の軸部材モデルを基準面上に配置する手段である。なお、基準面上に配置された軸部材モデルは、オペレータ操作によって基準面上で移動する。
【0017】
本願発明の軸部材仮組方法は、本願発明の軸部材仮組システムを用いて軸部材モデルの仮組みを行う方法であって、軸部材モデル取得工程と軸部材グループ生成工程、仮組モデル形成工程を備えた方法である。このうち軸部材モデル取得工程では、解体された各軸部材を計測(スキャニング)することによって軸部材モデルを取得する。また軸部材グループ生成工程では、中心面設定手段を用いて中心面を設定し軸部材グループを生成し、仮組モデル形成工程では、CAD上で複数の軸部材モデルを接続しながら軸部材モデルの仮組モデルを形成する。なお軸部材モデル接続工程では、2以上の軸部材グループに係る中心線や中心面を表示して接続したうえで、軸部材モデルを表示することによって接続状況を目視確認することができる。
【0018】
本願発明の軸部材仮組方法は、モデル照合工程をさらに備えた方法とすることもできる。このモデル照合工程では、既存設計図書に基づいて作成される「設計モデル」と、軸部材モデル形成工程で形成された「仮組モデル」とを照らし合わせる。この場合、モデル照合工程では、仮組モデルと設計モデルに差異が生じたとき、軸部材モデルの位置を変更して他の軸部材モデルと接続する。
【0019】
本願発明の軸部材仮組方法は、骨組モデル取得工程とモデル照合工程をさらに備えた方法とすることもできる。このうち骨組モデル取得工程では、解体前の既存木造建造物を計測することによって、軸部材の骨組状態を3次元モデル化した「骨組モデル」を取得する。またモデル照合工程では、軸部材モデル形成工程で形成された「仮組モデル」と、骨組モデル取得工程で取得された骨組モデルとを照らし合わせる。この場合、モデル照合工程では、仮組モデルと骨組モデルに差異が生じたとき、軸部材モデルの位置を変更して他の軸部材モデルと接続する。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の軸部材仮組システム、及び軸部材仮組方法には、次のような効果がある。
(1)実際の仮組みで不具合が発生しないようにあらかじめ不具合が生じやすい(干渉が起きそうな)部分を想定することができる。
(2)無限にある軸部材配置の組み合わせ(互位置や角度など)のうち最も望ましい組み合わせを事前に机上で検討することができる。
(3)干渉する部分を削って設計通りに組み合わせた場合と削らずに離した場合の比較検討なども可能となる。
(4)上記の結果、貴重な既存軸部材をできるだけ残して有効活用することができる。
(5)当該建造物の経歴上、複数の時点で復原し比較することができる。
(6)軸部材モデルに中心面や中心線などが設定されていることから、CAD上でのハンドリングが容易である。
(7)接合される軸部材モデルを3次元(3D)断面で、しかも異なる表示色で表示することによって、外からは見えない接合箇所における干渉状況を容易に目視確認することができる。
(8)例えば、同一勾配となる垂木が配置される平面を設定することで、母屋との取り合い部など矛盾なく軸部材を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願発明の軸部材仮組システムの主な構成を示すブロック図。
図2】軸部材仮組システムの主な処理の流れを示すフロー図。
図3】(a)は表示手段上に表示された軸部材モデルと中心面、中心線をキャプチャした画像図、(b)は軸部材と中心面、中心線を模式的に示すモデル図。
図4】(a)は柱状の軸部材モデルの軸方向と外周方向に突出する中心面を模式的に示す側面図、(b)は柱状の軸部材モデルの軸方向と外周方向に突出する中心面を模式的に示す正面図。
図5】(a)は凸部が設けられた軸部材(男木)モデルと凹部が設けられた軸部材(女木)モデルが接続される前の状態の日本の伝統的な継手である「腰掛鎌継ぎ」を模式的に示す斜視図、(b)は凸部が設けられた軸部材モデルと凹部が設けられた軸部材モデルが接続された状態の「腰掛鎌継ぎ」を模式的に示す斜視図。
図6】(a)は母屋(垂木を受ける部材)と垂木の配置関係を模式的に示す斜視図、(b)は垂木の勾配に合わせた基準面を模式的に示す斜視図、(c)は垂木の勾配に合わせた基準面と母屋の配置関係を模式的に示す斜視図。
図7】表示手段に重複表示された仮組モデルと設計モデルを模式的に示すモデル図。
図8】本願発明の軸部材仮組方法の主な工程を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明の軸部材仮組システム、及び軸部材仮組方法の実施の例を図に基づいて説明する。なお、本願発明の軸部材仮組システム、及び軸部材仮組方法は、文化財等木造建造物に対して特に好適に実施できるが、これに限らずあらゆる既存木造建造物に対して実施することができる。また本願発明は、軸部材を仮想的に組み立てることを特徴のひとつとしているが、「和小屋」、「洋小屋」など従来知られている様々な組み立て形態の「小屋組」に適用することができる。
【0023】
1.全体概要
既述したとおり従来の仮組みは、既存木造建造物を解体して得られる柱や梁、桁、棟木、垂木、母屋、小屋束といった「軸部材」を、必要に応じて修繕等を施したうえで実際に組み立てを試行する作業である。本願発明は、解体された軸部材を計測(スキャニング)して得られる3次元モデル(以下、「軸部材モデル」という。)を利用し、CAD上で(つまり、コンピュータ上で)いわば仮想的に仮組みするものである。なお便宜上ここでは、実際に軸部材を組み立てる「仮組み」と区別するため、CAD上で軸部材モデルを組み立てることを「仮想仮組み」ということとする。
【0024】
個々の軸部材モデルを取得するためには、市販のスキャナ(例えば、Artec社製のEVA-M 3D Scannerなど)を用いることができる。このスキャナの計測では、少なくとも軸部材の外形を表す色要素付き点群(3次元座標群)を取得することができる。また、別の光学センサ(デジタルカメラなど)を用いて、画像(テクスチャ)を取得してもよい。
【0025】
軸部材モデルは、解体した後の軸部材をスキャニングするが、完全に解体される前の軸部材のみの状態(いわゆる、スケルトン状態)もスキャニングしておくとよい。またその際、水平墨と垂直墨を打ち、各々の軸部材には番付札を付しておくとよい。これにより、水平墨や垂直墨、番付札といった情報も含んだ軸部材モデルを取得することができる。さらに、既存の古文書や設計図など(以下、「既存設計図書」という。)に基づく3次元モデルも作成しておくとよい。なお便宜上ここでは、CAD上で軸部材モデルを仮組み(つまり仮想仮組み)して得られるモデルのことを「仮組モデル」、スケルトン状態をスキャニングした結果得られるモデルのことを「骨組モデル」、既存設計図書に基づいて作成されるモデルのことを「設計モデル」ということとする。
【0026】
2.軸部材仮組システム
本願発明の軸部材仮組システムについて詳しく説明する。なお、本願発明の軸部材仮組方法は、本願発明の軸部材仮組システムを用いて仮想仮組みを行う方法である。したがって、まずは本願発明の軸部材仮組システムについて説明し、その後に本願発明の軸部材仮組方法について説明することとする。
【0027】
図1は、本願発明の軸部材仮組システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明の軸部材仮組システム100は、中心面設定手段101と中心線設定手段102、軸部材グループ生成手段103を含んで構成され、さらに基準面設定手段104や軸部材モデル配置手段105、仮組モデル形成手段106、モデル照合手段107、表示色変更手段108、設計モデル形成手段109、骨組モデル形成手段110、表示手段111、軸部材モデル記憶手段112、軸部材グループ記憶手段113、仮組モデル記憶手段114、設計モデル記憶手段115、骨組データ記憶手段116、骨組モデル記憶手段117を含んで構成することもできる。
【0028】
軸部材仮組システム100を構成する主な要素のうち中心面設定手段101と中心線設定手段102、軸部材グループ生成手段103、基準面設定手段104、軸部材モデル配置手段105、仮組モデル形成手段106、モデル照合手段107、表示色変更手段108、設計モデル形成手段109、骨組モデル形成手段110は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置とCADを利用することもできる。具体的には、CADプログラムが中心面設定手段101~骨組モデル形成手段110による各処理を、コンピュータ装置に実行させるわけである。コンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、マウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを具備するもので、パーソナルコンピュータ(PC)やサーバー、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成することができる。ディスプレイを具備したコンピュータ装置を利用する場合は、そのディスプレイを表示手段111として利用するとよい。
【0029】
また、軸部材モデル記憶手段112や軸部材グループ記憶手段113、仮組モデル記憶手段114、設計モデル記憶手段115、骨組データ記憶手段116、骨組モデル記憶手段117は、汎用的コンピュータの記憶装置を利用することもできるし、データベースサーバーに構築することもできる。データベースサーバーに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由(つまり無線通信)で保存するクラウドサーバーとすることもできる。
【0030】
次に、図2を参照しながら本願発明の軸部材仮組システム100を使用したときの主な処理の流れについて説明する。図2は、軸部材仮組システム100の主な処理の流れを示すフロー図であり、中央の列に実施する処理を示し、左列にはその処理に必要な入力情報を、右列にはその処理から生まれる出力情報を示している。
【0031】
図2に示すようにまずは、既存設計図書に基づいて設計モデルを作成する。そして、解体前のスケルトン状態をスキャニングするとともに、解体後の個々の軸部材をスキャニングする。このとき、既述したとおり水平墨と垂直墨を打ち、さらに各々の軸部材には番付札を付したうえで、スケルトン状態をスキャニングするとよい。
【0032】
解体後の個々の軸部材をスキャニングすると、そのスキャニングした結果(以下、「軸部材データ」という。)に基づいて軸部材モデルを生成する(図2のStep101)。具体的には、軸部材データに基づいて、軸部材の表面を表すサーフェイスモデル(例えば、TIN:Triangulated Irregular Networkなど)を生成するとともに、このサーフェイスモデルに画像(テクスチャ)を貼り付ける。なお、この軸部材モデルは、CAD上でテクスチャの表示/非表示(ON/OFF)が可能となるようなデータ構造にするとよい。ここで生成された軸部材モデルは、軸部材モデル記憶手段112(図1)に記憶される。
【0033】
軸部材モデルが生成されると、軸部材モデル記憶手段112(図1)から軸部材モデルを読み出して軸部材の外周面を設定する(図2のStep102)。具体的には、オペレータがCAD操作を行うことによって、軸部材モデルのそれぞれの表面を外周面として設定する。例えば、柱状の軸部材であれば6面の外周面を設定するわけである。また軸部材モデルが生成されると、軸部材モデルの中心面も設定する(図2のStep103)。具体的には、オペレータがCADに組み込まれた中心面設定手段101(図1)を利用して、軸部材モデルを軸方向に2分する面を中心面として設定する。
【0034】
図3は、柱状の軸部材モデルELに対して設定された中心面SCを模式的に示す図であり、(a)は表示手段111(例えば、液晶ディスプレイ)上の表示をキャプチャした画像図、(b)はそのモデル図である。この図に示すように、ひとつの軸部材モデルELに対して2面の中心面SCが設定され、しかもこれら中心面SCは略垂直(垂直を含む)に交差するように設定される。
【0035】
図4は、柱状の軸部材モデルELの軸方向と外周方向に突出する中心面SCを模式的に示す図であり、(a)はその側面図、(b)はその正面図である。なお図4(b)の中央には「ほぞ」を示している。この図に示すように、それぞれの中心面SCは軸部材モデルELの軸方向と外周方向に突出する形状であり、オペレータがCAD操作を行うことによって軸部材モデルのうち中心面SCの設定位置を指定するとともに、所定の寸法(長さ)だけ軸方向と外周方向に突出するよう中心面SCを設定していく。軸部材モデルELを組み立てていくと軸部材モデルELどうしが複雑に絡み合い、例えば配置の微調整を行うべく目的の軸部材モデルELを指定(ドラッグ)しようとしてもその操作が難しいことがある。中心面SCが軸部材モデルELの軸方向と外周方向に突出していると軸部材モデルELに代えて中心面SCを容易にドラッグすることができ、さらに後述するように中心面SCと軸部材モデルELがCAD上で一体となって移動する構成とすれば、中心面SCをドラッグ移動することによって目的の軸部材モデルELも移動することができるわけである。ただし、中心面SCによって軸部材モデルELが隠されないよう、中心面SCは表示手段111(例えば液晶ディスプレイ)上ではガラス状のような透過表示とされる。
【0036】
略垂直に交差する2面の中心面SCが設定されると、オペレータがCADに組み込まれた中心線設定手段102(図1)を利用して軸部材モデルELに対して中心線SLを設定する(図2のStep104)。この中心線SLは、図3図4に示すように2面の中心面SCが交差する線分を延長したものであり、軸部材モデルELの軸方向に突出するようにしかも中心面SCの外縁を越えるように設定される。そして2面の中心面SCと中心線SLが設定されると、軸部材グループ生成手段103(図1)が軸部材モデルELと中心面SC、中心線SLがグループ化された「軸部材グループGR」を生成する(図2のStep105)。この軸部材グループGRを構成する軸部材モデルELと中心面SC、中心線SLは、CAD上で一体となって移動し、すなわちオペレータが中心面SCをドラッグ移動すると軸部材モデルELと中心線SLも同様に移動するわけである。ここで生成された軸部材グループGRは、軸部材グループ記憶手段113(図1)に記憶される。
【0037】
解体したすべての軸部材について軸部材グループGRが生成されると、軸部材に付された水平墨や垂直墨、番付札、あるいは骨組モデル(スケルトン状態のスキャニング結果)や設計図などを参考にしながら軸部材グループGRを配置、接続し、すなわち仮想仮組みを行うことで仮組モデルを完成させていく(図2のStep107)。具体的には、オペレータがCADに組み込まれた仮組モデル形成手段106(図1)を利用して、軸部材グループGRを配置、接続していく。このとき、図5に示すように接続すべき一方の軸部材モデルEL1(男木)に凸部が形成され、他方の軸部材モデルEL2(女木)に凹部が形成されているときは、凸部と凹部が嵌合するように軸部材モデルEL1と軸部材モデルEL2を接続する。
【0038】
オペレータ操作により、2以上の軸部材グループGRを接続するにあたっては、中心線SL(あるいは中心面SCと中心線SL)のみを表示した状態で接続していくとよい。目視しながら軸部材モデルELどうしを接続する場合、どこを基準に接続してよいか判然としないが、中心線SLどうしであれば接続する基準が明確になって操作しやすい。そして、中心線SLどうしを接続した状態で軸部材モデルELを表示すれば、軸部材モデルELどうしの接続状態(例えば図5に示す凸部と凹部が嵌合状態)を確認することができ、適宜微調整を行うこともできるわけである。そのため、軸部材モデルELと中心面SC、中心線SLは、それぞれCAD上で別レイヤに配置しておくとよい。なお、軸部材グループGRを配置、接続する際は、軸部材モデルEL表面にテクスチャとして画像を表示した状態としてもよいし、テクスチャを非表示としてもよい。また軸部材モデルEL表面には、単一色をテクスチャとして付すこともできるし、あらかじめ用意した模様(木材模様など)をテクスチャとして付すこともできる。
【0039】
母屋上に配置される垂木や大引き上に配置される根太など、軸部材によっては同一平面状に複数配置されるものもある。このようなケースでは、複数の軸部材が配置される平面(以下、「基準面PL」という。)をあらかじめ設定しておくとよい(図2のStep106)。具体的には、オペレータがCADに組み込まれた基準面設定手段104(図1)を利用して、基準面PLを設定する。なお基準面PLは、目的に応じて任意の位置で複数設定することができる。
【0040】
図6は、複数の垂木が配置される基準面PLを説明する図であり、(a)は母屋と垂木の配置関係を模式的に示す斜視図、(b)は垂木が配置される基準面PLを模式的に示す斜視図、(c)は垂木の基準面PLと母屋の配置関係を模式的に示す斜視図である。なお、便宜上図6では「小屋組」のうち「腰折れ小屋組」の例を示しているが、既述したとおり「和小屋」、「洋小屋」といった他の組み立て形態でも同様に実施することができる。この図に示すように基準面PLは、複数の同種の軸部材モデルEL(この場合、垂木)が配置されるべき平面に設定される。さらに、オペレータが基準面PL上に配置されるべき軸部材モデルEL(この場合、垂木)を指定すると、その軸部材モデルELは基準面PL上のみを限定的に移動できる仕様にすることもできる。この場合、オペレータがCADに組み込まれた軸部材モデル配置手段105(図1)を利用して、指定した軸部材モデルELを基準面PL上に配置していく。
【0041】
図6の場合、複数の垂木を基準面PL上に配置したとしても、母屋の向き(姿勢)によってはいくつかの垂木と母屋が干渉することもある。この場合オペレータは、母屋材のねじれや傾き、倒れ、さらには母屋材の継手部分での接続角度を疑い、母屋の軸部材グループGRの中心面SCや中心線SLをドラッグしながら母屋の軸部材モデルELを軸周りに回転させたり、水平方向や垂直方向の傾きを調整したりすることになる。
【0042】
既述したとおり、図5に示すように接続すべき一方の軸部材モデルEL1(男木)に凸部が形成され、他方の軸部材モデルEL2(女木)に凹部が形成されているときは、凸部と凹部が嵌合するように軸部材モデルEL1と軸部材モデルEL2を接続する。このときオペレータは、凸部が凹部に干渉していないか確認しながら接続することとなる(図2のStep108)。実材では、嵌める途中で引っかかりがあれば無理に叩き入れるか、その都度削って調整するため、もし当初のままで接合すれば、各部の隙間の程度を正確に把握することはできない。また、接合後の内部の隙間も窺い知ることもできない。しかしながら、仮想モデルにおいては、CADが備える3D断面機能(3次元で断面を表示する機能)を用いることにより、結合後の軸部材の外からは見えない継手内部の干渉や離れを数値で確認することができ、干渉や必要以上の隙間の存在があれば、結合前に必要最小限を削ったり、埋木等の手段を施したりすることについて検討することができる。
【0043】
図5に示すように、継手や仕口部分の干渉や離れの数値を確認しやすくするため、接続される2つの軸部材モデルEL(図5の場合、軸部材モデルEL1と軸部材モデルEL2)をそれぞれ異なる単一色のテクスチャで表示するとよい。具体的には、オペレータがCADに組み込まれた表示色変更手段108(図1)を利用して2つの軸部材モデルELを指定することで、それぞれあらかじめ設定された表示色(ただし異なる色)のテクスチャが表示される。そして、接合される軸部材モデルを3次元断面で、しかも異なる表示色で表示することによって、継手や仕口など外からは見えない接合箇所における干渉状況を容易に目視確認することができるわけである。
【0044】
それぞれ軸部材グループGRを配置、接続し、すなわち仮想仮組みを行うことによって仮組モデルを完成させると、この仮組モデルは仮組モデル記憶手段114(図1)に記憶される。ここで、設計モデルを作成している場合は、図7に示すように仮組モデルMTと設計モデルMSを照らし合わせるとよい(図2のStep109)。設計モデルMSと相違する仮組モデルMTの軸部材モデルEL(軸部材グループGR)を検出し、設計モデルMSとできる限り一致するように軸部材モデルELの配置を微調整する。設計モデルMSと仮組モデルMTを重複表示して比較することによって、各軸部材の相対的な位置関係を確認することができ、また軸組全体の最適寸法(最終的な建物の桁行や高さなど)など設計の適否を検証することができる。さらに部材の損傷と補修、転用の方針を検討することもできる。なお設計モデルMSは、オペレータがCADに組み込まれた設計モデル形成手段109(図1)を操作することによって作成され、ここで作成された設計モデルMSは設計モデル記憶手段115(図1)に記憶される。
【0045】
同様に、解体前のスケルトン状態をスキャニングしている場合は、仮組モデルMTと骨組モデルを照らし合わせるとよい(図2のStep109)。骨組モデルと仮組モデルMTを重複表示して比較することによって、解体後の軸部材の拘束開放による変形を検証することができる。また、実際の復原にあたっては、解体と設計のプロセスが様々であるため、3つのモデル(仮組モデルと設計モデル、骨組モデル)の全てが揃うとは限らないが、設計モデルMSと仮組モデルMTがあれば補完が可能である。なお骨組モデルを形成するにあたっては、解体前のスケルトン状態をスキャニングした結果(以下、「骨組データ」という。)を骨組データ記憶手段116から読み出し、オペレータがCADに組み込まれた骨組モデル形成手段110(図1)を操作することによって作成される。そして、ここで作成された骨組モデルは骨組モデル記憶手段117(図1)に記憶される。
【0046】
3.軸部材仮組方法
続いて本願発明の軸部材仮組方法について図8を参照しながら説明する。なお、本願発明の軸部材仮組方法は、ここまで説明した軸部材仮組システム100を用いて仮想仮組みを行う方法であり、したがって軸部材仮組システム100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の軸部材仮組方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.軸部材仮組システム」で説明したものと同様である。
【0047】
図8は、本願発明の軸部材仮組方法の主な工程を示すフロー図である。この図に示すように、まずは完全に解体される前のスケルトン状態としたうえで、必要な水平墨と垂直墨を打つ(図8のStep201)。さらにスケルトン状態でスキャニングを行って骨組データを取得し(図8のStep202)、骨組モデル形成手段110(図1)を利用してこの骨組データから骨組モデルを形成する(図8のStep203)。
【0048】
スケルトン状態でスキャニングを行うと、このスケルトン状態を解体して個々の軸部材を得る(図8のStep204)。そしてこれらの軸部材を個別にスキャニングすることによって軸部材データを取得し(図8のStep205)、この軸部材データに基づいて軸部材モデルを生成する(図8のStep206)。軸部材モデルを生成すると、オペレータが中心面設定手段101(図1)を利用して中心面を設定し、中心線設定手段102(図1)が中心線SLを設定するとともに、軸部材グループ生成手段103(図1)が軸部材グループGRを生成する(図8のStep207)。
【0049】
解体したすべての軸部材について軸部材グループGRが生成されると、軸部材に付された水平墨や垂直墨、番付札、あるいは骨組モデルや設計図などを参考にしながら軸部材グループGRを配置、接続し、すなわち仮想仮組みを行っていく(図8のStep208)。このとき、オペレータが基準面設定手段104(図1)や軸部材モデル配置手段105(図1)を利用して、基準面PLを設定するとともに、指定した軸部材モデルELを基準面PL上に配置していくこともできる。また、オペレータが表示色変更手段108(図1)を利用して、接続される2つの軸部材モデルELをそれぞれ異なる単一色のテクスチャで表示し、凸部と凹部などの接合箇所における干渉状況を目視確認することもできる(図8のStep209)。
【0050】
一通りそれぞれ軸部材グループGRを配置、接続することによって仮組モデルMTを暫定的に完成させると、仮組モデルMTと設計モデルMS、仮組モデルMTと骨組モデルを照らし合わせる(図8のStep210)。そして、設計モデルMSや骨組モデルと相違する仮組モデルMTの軸部材モデルEL(軸部材グループGR)を検出し、設計モデルMSや骨組モデルとできる限り一致するように軸部材モデルELの配置を微調整する。これにより、部材の損傷と補修、転用の方針を検討することができる。ここまで説明した一連の工程を行うことによって仮組モデルMTを完成させ(図8のStep211)、この仮組モデルMTを仮組モデル記憶手段114(図1)に記憶させる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願発明の軸部材仮組システム、及び軸部材仮組方法は、木造の文化財建造物や木造の歴史的建造物に利用することができる。本願発明によれば、文化財等を適切な状態で維持しつつ後世に継承できることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0052】
100 本願発明の軸部材仮組システム
101 (軸部材仮組システムの)中心面設定手段
102 (軸部材仮組システムの)中心線設定手段
103 (軸部材仮組システムの)軸部材グループ生成手段
104 (軸部材仮組システムの)基準面設定手段
105 (軸部材仮組システムの)軸部材モデル配置手段
106 (軸部材仮組システムの)仮組モデル形成手段
107 (軸部材仮組システムの)モデル照合手段
108 (軸部材仮組システムの)表示色変更手段
109 (軸部材仮組システムの)設計モデル形成手段
110 (軸部材仮組システムの)骨組モデル形成手段
111 (軸部材仮組システムの)表示手段
112 (軸部材仮組システムの)軸部材モデル記憶手段
113 (軸部材仮組システムの)軸部材グループ記憶手段
114 (軸部材仮組システムの)仮組モデル記憶手段
115 (軸部材仮組システムの)設計モデル記憶手段
116 (軸部材仮組システムの)骨組データ記憶手段
117 (軸部材仮組システムの)骨組モデル記憶手段
EL 軸部材モデル
GR 軸部材グループ
MS 設計モデル
MT 仮組モデル
PL 基準面
SC 中心面
SL 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8