(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】移動体システム
(51)【国際特許分類】
G09F 21/04 20060101AFI20241210BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G09F21/04 C
B60R11/02 C
(21)【出願番号】P 2020208947
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 睦
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 知明
(72)【発明者】
【氏名】則武 雅人
(72)【発明者】
【氏名】西川 信広
(72)【発明者】
【氏名】来間 政人
(72)【発明者】
【氏名】西川 徳行
(72)【発明者】
【氏名】富田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大策
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-127651(JP,A)
【文献】特開2015-085836(JP,A)
【文献】特開2020-142610(JP,A)
【文献】特開2019-117215(JP,A)
【文献】特開2020-095127(JP,A)
【文献】特開2020-086141(JP,A)
【文献】特開2020-086139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 21/04
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリア内において、利用者を輸送する移動体と、
前記移動体を、外部から見たときに存在しないように見せる迷彩装置と、
を備え、前記迷彩装置は、
前記移動体の複数の外表面それぞれに設けられた複数の表示部と、
前記移動体の周辺環境を撮影して、環境画像を取得するカメラと、
前記環境画像に基づいて、前記移動体を前記周辺環境に馴染ませる画像を生成し、前記表示部に表示させる迷彩コントローラと、
を備え、
前記馴染ませる画像は、前記周辺環境の色彩分布に類似した色彩分布を持つ複数の色のパターン画像である迷彩画像であり、
前記迷彩コントローラは、前記環境画像に基づいて、前記移動体の周囲の風景に含まれる色彩の分布を解析し、得られた色彩分布に馴染みやすい迷彩柄の画像を前記馴染ませる画像として生成
し、
前記移動体システムは、さらに、歩行者と当該移動体との距離が規定の安全距離未満となった場合に、前記歩行者に接近を警告する警告装置を備え、
前記警告装置は、警告として、風、および、臭いの少なくとも一つを出力する警告出力器を有する、
ことを特徴とする移動体システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の移動体システムであって、
前記移動体は、予め規定されるとともに歩行者の立ち入りが禁止された走行ルートに沿って走行し、
前記警告出力器は、前記走行ルートに沿って前記移動体の外部に設置されている、
ことを特徴とする移動体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、所定のエリア内において、利用者を輸送する移動体を備えた移動体システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
非日常的な世界観を持つ所定のエリア、例えば、遊園地やテーマパーク等のパークは、広大な敷地を有していることが多い。この広大な敷地内におけるパークの来園者の移動をサポートするために、パーク内において、来園者を輸送する移動体、例えば車両等を用いることが従来から提案されている。かかる移動体を用いることで、パーク内における来園者の移動の負担を軽減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした移動体は、無機的であることが多い。かかる移動体が、パーク内の歩行者の視界に入ることで、パークの世界観を損なう場合がある。そこで、移動体に対して、パークの世界観にあったデコレーションを施すことも提案されている。しかし、パークの景色は、場所や季節、時間、天候によって変化する。そのため、場所や季節、時間、天候によっては、デコレーションされた移動体が、周辺の景色に馴染まず、パークの世界観をかえって損なう場合があった。
【0005】
なお、特許文献1には、外装面の大部分に、映像を表示する表示部を設けた自動車が開示されている。しかし、特許文献1の表示部は、広告画像等を表示することを目的としており、移動体を目立たなくすることは想定されていない。
【0006】
そこで、本明細書では、所定のエリアの世界観を損なわないように、移動体を、所定のエリア内において周辺の景色に馴染ませる移動体システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する移動体システムは、所定のエリア内において、利用者を輸送する移動体と、前記移動体を、外部から見たときに存在しないように見せる迷彩装置と、を備え、前記迷彩装置は、前記移動体の複数の外表面それぞれに設けられた複数の表示部と、前記移動体の周辺環境を撮影して、環境画像を取得するカメラと、前記環境画像に基づいて、前記移動体を前記周辺環境に馴染ませる画像を生成し、前記表示部に表示させる迷彩コントローラと、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
環境画像に基づいて生成された画像を表示部に表示することで、場所や季節、時間、天候が変化したとしても移動体を周辺環境に馴染ませることができる。そして、これにより、所定のエリアの世界観が維持される。
【0009】
この場合、前記馴染ませる画像は、前記移動体を挟んで各表示部の反対側の風景の画像である透過画像、すなわち、移動体を透過した画像であってもよい。
【0010】
透過画像を表示部に表示することで、歩行者に移動体が存在しないかのように思わせることができ、所定のエリアの世界観をより確実に維持できる。
【0011】
また、前記馴染ませる画像は、前記周辺環境の色彩分布に類似した色彩分布を持つ複数の色のパターン画像である迷彩画像であってもよい。
【0012】
かかる構成とすることで、利用者が表示部を斜め方向からみたとしても当該表示部と周辺環境との境界が分かりづらくなり、移動体が目立ちにくくなる。その結果、所定のエリアの世界観をより確実に維持できる。
【0013】
また、前記移動体は、予め規定されるとともに歩行者の立ち入りが禁止された走行ルートに沿って走行してもよい。
【0014】
かかる構成とすることで、歩行者と移動体とを一定以上離間させることができるため、周辺環境に馴染ませる画像が多少不正確でも、歩行者が違和感を感じにくくなる。
【0015】
また、前記移動体システムは、さらに、前記歩行者と当該移動体との距離が規定の安全距離未満となった場合に、前記歩行者に接近を警告する警告装置を備え、前記警告装置は、警告として、音、風、光、臭いの少なくとも一つを出力する警告出力器を有してもよい。
【0016】
かかる構成とすることで、移動体の存在感を抑えつつ、移動体と歩行者との接触を防止できる。
【0017】
また、前記移動体は、予め規定された走行ルートに沿って移動し、前記警告出力器は、前記走行ルートに沿って前記移動体の外部に設置されてもよい。
【0018】
移動体が走行ルートに沿って移動するため、警告出力器を移動体の外部に設置しても歩行者に対して適切に警告を出力できる。また、移動体そのものに設置するのではなく、移動体の外部に設置するのであれば、スペース上の制限が少なくなるため、大型の警告出力器も設置できる。
【0019】
また、前記移動体は、歩行者との間に規定の安全距離以上の距離を保つように、前記歩行者を避けて移動してもよい。
【0020】
かかる構成とすることで、移動体の存在感を抑えつつ、移動体と歩行者との接触を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本明細書で開示する移動体システムによれば、所定のエリアの世界観を損なわないように、移動体を、所定のエリア内において周辺の景色に馴染ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】移動体システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】迷彩処理の一例を説明するイメージ図である。
【
図4】迷彩処理の他の例を説明するイメージ図である。
【
図5】警告装置の動作の様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して移動体システム10の構成について説明する。
図1は、移動体システム10の構成を示すブロック図である。また、
図2は、移動体12の走行ルート104を説明する図である。移動体システム10は、所定のエリアであるパーク(例えば遊園地やテーマパーク等)において、当該パークの来園者を輸送する一方で、移動体12を外部から見たときに当該移動体12が存在しないように見せるシステムである。なお、以下の説明では、移動体12に搭乗している来園者を「利用者」、移動体12に搭乗していない来園者を「歩行者」と呼び、区別する。
【0024】
かかる移動体システム10は、
図1に示すように、移動体12と、迷彩装置14と、警告装置16と、を有している。移動体12は、利用者100を乗せて移動することで、利用者100を輸送する。かかる移動体12の種類は、特に、限定されず、移動体12は、例えば、エンジンやモータの動力源で走行する自動車や、レールに沿って移動するモノレール、ケーブルに連結されたケーブルカー、水路を進行する船舶等でもよい。いずれの場合でも、移動体12は、当該移動体12に搭乗した利用者100の全周囲を覆う外表面を有している。
【0025】
本例において、移動体12は、歩行者102と分離された走行ルート104に沿って移動する。すなわち、
図2に示すように、パーク内には、歩行者102が歩行するための歩行者ルート106とは別に、移動体12が走行するための走行ルート104が設けられている。この走行ルート104の途中には、複数の乗降場108が設けられており、利用者100は、この乗降場108において、移動体12に乗車または移動体12から降車する。また、歩行者102は、原則として、この走行ルート104への立ち入りが禁じられている。したがって、基本的に、移動体12の外部にいる歩行者102は、移動体12から一定以上離れた位置から移動体12を見ることになる。
【0026】
迷彩装置14は、移動体12を、外部から見たときに存在しないように見せる装置である。かかる迷彩装置14は、表示部20と、カメラ22と、迷彩コントローラ24と、を有している。表示部20は、移動体12の複数の外表面それぞれに設けられている。複数の表示部20は、移動体12の外表面の大部分をカバーする面積を有する。この表示部20は、映像を表示できるのであれば、その構成は、特に限定されない。したがって、表示部20は、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ、映像を投影面に投影するプロジェクタ等で構成されてもよい。
【0027】
カメラ22は、移動体12に設けられ、移動体12の周辺環境を撮影する。このカメラ22で撮影された周辺環境の画像を、以下では、「環境画像」と呼ぶ。環境画像は、移動体12の全周囲に関して取得される。したがって、カメラ22は、移動体12の全周囲を撮像でき得る個数が設けられる。
【0028】
迷彩コントローラ24は、プロセッサ24aとメモリ24bとを有したコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ24aとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、以下に述べるプロセッサ24aの動作は、1つのプロセッサによって成されるのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成されるものであってもよい。同様に、メモリ24bも、物理的に一つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、メモリ24bは、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。
【0029】
こうした迷彩コントローラ24は、表示部20およびカメラ22の駆動を制御する。具体的には、迷彩コントローラ24は、カメラ22に対して環境画像の撮像を指示するとともに、得られた環境画像に基づいて、移動体12を周辺環境に馴染ませるための迷彩画像または透過画像を生成する。そして、迷彩コントローラ24は、生成された迷彩画像または透過画像を表示部20に表示させる。こうした迷彩画像および透過画像の生成・表示については、後に詳述する。
【0030】
なお、迷彩コントローラ24は、移動体12に搭載されてもよいし、移動体12とは、物理的に離れた位置に設置されてもよい。後者の場合、迷彩コントローラ24は、移動体12に設けられたカメラ22および表示部20と、無線通信を介して通信する。
【0031】
警告装置16は、歩行者102が、移動体12に接近した場合に、これを警告するための装置である。かかる警告装置16は、環境センサ30と、警告出力器32と、警告コントローラ34と、を有している。環境センサ30は、歩行者102の移動体12への接近を検出するためのセンサである。かかる環境センサ30は、例えば、Lidar、ミリ波レーダ、ソナー、磁気センサ、カメラ、および、これらの組み合わせでもよい。また、環境センサ30は、移動体12に搭載されていてもよいし、移動体12の外部に設けられてもよい。警告コントローラ34は、この環境センサ30での検知結果に基づいて、移動体12に接近する歩行者102の有無を判断する。
【0032】
警告出力器32は、歩行者102に対して接近を警告するために、音、風、光、臭いの少なくとも一つを出力する。かかる警告出力器32は、移動体12に設けられてもよいし、移動体12の外部に設けられてもよい。
【0033】
警告コントローラ34は、環境センサ30による検知結果に基づいて、警告出力器32の駆動を制御する。具体的には、警告コントローラ34は、環境センサにより、歩行者102と移動体12との距離が予め規定された安全距離未満になったことが検知されれば、警告出力器32を駆動して、歩行者102に対して警告を出力する。なお、こうした警告コントローラ34も、迷彩コントローラ24と同様に、プロセッサ34aとメモリ34bとを有するコンピュータである。警告コントローラ34は、移動体12に搭載されてもよいし、移動体12と物理的に離れた位置に設置されてもよい。また警告コントローラ34は、上述した環境センサ30および警告出力器32と一体化されてもよいし、物理的に離れて設置されてもよい。後者の場合、警告コントローラ34は、環境センサ30および警告出力器32と、無線通信を介して通信する。
【0034】
次に、迷彩装置14による移動体12の迷彩処理について
図3、
図4を参照して説明する。
図3は、迷彩処理の一例を説明するイメージ図であり、
図4は、迷彩処理の他の例を説明するイメージ図である。
【0035】
パークの多くは、非日常的な空間を形成し、来園者に、非日常的感覚を与えることで、来園者の満足感を惹起し、パークに対する魅力を高めている。そのため、パークの魅力を維持するためには、パークが提供する非日常的感覚を維持することが重要となる。一方で、パークは、広大な敷地を有することが多く、来園者の移動の負担が大きい。そこで、従来から、利用者のパーク内での移動をサポートするために、移動体12で利用者を輸送することが提案されている。しかし、こうした移動体12は、無機的であり、パークの世界観に馴染まない場合が多かった。こうした移動体12が、来園者の視界に入ることで、来園者の非日常的感覚が損なわれ、パークの魅力の低下を招くおそれがあった。
【0036】
本例の迷彩装置14は、パークの世界観を損なわないように、移動体12に対して、当該移動体12が外部から見たときに存在しないように見せる迷彩処理を施す。具体的には、迷彩装置14は、
図3に示すように、カメラ22で、移動体12の周辺環境を撮影し、環境画像38を取得する。得られた環境画像38は、迷彩コントローラ24に送信される。
【0037】
迷彩コントローラ24は、環境画像38に基づいて透過画像40を生成し、複数の表示部20にそれぞれに表示させる。ここで、透過画像40は、移動体12が存在しない場合に見える風景の画像であり、移動体12を挟んで各表示部20の反対側の風景の画像である。
【0038】
したがって、移動体12の右側面に設けられた表示部20にとっては移動体12の左方向の風景画像が、透過画像40となる。同様に、移動体12の左側面に設けられた表示部20とっては移動体12の右方向の風景画像が、移動体12の前面に設けられた表示部20にとっては移動体12の後方の風景画像が、移動体12の後面に設けられた表示部20にとっては移動体12の前方の風景画像が、それぞれ、透過画像40となる。
【0039】
迷彩コントローラ24は、移動体12を挟んで、各表示部20の反対側を撮像した環境画像38に対して、合成処理や拡縮処理、歪み処理等、様々な画像処理を施して、透過画像40を生成する。こうした画像処理の内容は、各表示部20表面の形状や、表示部20と環境画像38を撮影したカメラ22との相対位置関係等に基づいて、決定される。そして、生成された透過画像40を、表示部20に表示する。なお、当然ながら、こうした環境画像38は、動画として取得され、透過画像40は、動画として生成・表示される。
【0040】
このように、各表示部20に、移動体12を挟んで当該表示部20の反対側の風景の画像を表示させることで、移動体12の外部にいる歩行者102(すなわち観察者)から見た際、移動体12が存在せず、移動体12の向こう側の風景が見えるような錯覚を与えることができる。そして、これにより、移動体12がパークの世界観を損なうことを効果的に防止できる。
【0041】
ただし、上述の構成は、表示部20を正面から見た際には有効ではあるが、表示部20を斜め方向からみた場合には、透過画像40が、平面的に見えてしまい、移動体12の周辺の風景と馴染みにくくなる。そこで、別の形態として、
図4に示すように、透過画像40に替えて、迷彩画像42を生成し表示するようにしてもよい。迷彩画像42は、その周囲の風景に含まれる色彩分布と類似した色彩分布となるように、複数の色でパターンを描いた画像である。迷彩コントローラ24は、環境画像38に基づいて、移動体12の周囲の風景に含まれる色彩の分布を解析し、得られた色彩分布に馴染みやすい迷彩柄の画像、すなわち、迷彩画像42を生成する。そして、迷彩コントローラ24は、生成された迷彩画像42を表示部20に表示させる。
【0042】
ここで、迷彩柄は、その間近から観察した場合には、迷彩柄が施された物体と周辺環境との境界が明確に把握できる一方で、ある程度遠方からみた場合、その見る方向に関わらず、周辺環境に馴染みやすい。本例では、上述した通り、移動体12の走行ルート104への歩行者102の立ち入りが禁止されており、移動体12と歩行者102との距離が一定以上に保たれている。そのため、表示部20に迷彩画像42を表示することで、歩行者102が移動体12を見た際に、当該移動体12と周囲環境との境界が分かりにくくなり、移動体12が存在しないかのように思わせることができる。また、本例では、こうした迷彩画像42を、カメラ22で撮像した環境画像38に基づいて生成しているため、移動体12の位置や季節、時刻、天候が変化したとしても、常に周囲になじみやすい迷彩画像42が得られる。そして、結果として、移動体12が、パークの世界観を損なうことがなく、パークの魅力を高く維持できる。
【0043】
ところで、移動体12を存在しないかのように見せた場合、パークの世界観が保たれる一方で、歩行者102が、移動体12の存在に気づかず、誤って移動体12に近接するおそれがある。こうした問題を避けるために、走行ルート104への歩行者102の立ち入りを禁止しているが、歩行者102が誤って走行ルート104に立ち入る場合もある。本例の移動体システム10には、かかる場合に、歩行者102に警告を出力するための警告装置16が設けられている。この警告装置16について、
図5を参照して説明する。
図5は、警告装置16の動作の様子を示すイメージ図である。
【0044】
上述した通り、警告装置16は、歩行者102の移動体12への接近を検知する環境センサ30を有しており、検知の結果、歩行者102と移動体12との距離が規定の安全距離未満になった場合には、警告出力器32から警告が出力される。
【0045】
ここで、警告出力器32から出力される警告の形態は、歩行者102の注意を喚起できるのであれば、特に限定されない。したがって、警告出力器32は、光で注意を喚起するライト50でもよいし、音声で注意を喚起するスピーカ52でもよい。また、警告出力器32は、接近してくる歩行者102に対して、風を噴射するエアノズル54でもよいし、特定の臭気を噴射する臭気噴射器56でもよい。また、こうした警告出力器32は、移動体12に搭載されてもよいし、移動体12の外部に設けられてもよい。特に、本例では、移動体12は予め規定された走行ルート104に沿ってのみ走行するため、警告の出力が必要となる箇所をおおよそ特定できる。そのため、移動体12の外部かつ警告の出力が必要となる箇所、例えば、走行ルート104の近傍に位置する路面110や構造物112に警告出力器32を設置しておいてもよい。移動体12の外部であれば、大型の警告出力器32であっても容易に設置できる。そして、上述したように、移動体12に接近した歩行者に対して警告を出力することで、移動体12に対して迷彩処理を施したとしても、移動体12と歩行者102との接触を効果的に防止できる。
【0046】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、移動体12の複数の外表面それぞれに設けられた複数の表示部20に、環境画像38に基づいて生成された、移動体12を周辺環境に馴染ませる画像を表示させるのであれば、その他の構成は、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、移動体システム10は、移動体12および迷彩装置14に加えて、警告装置16を有しているが、警告装置16はなくてもよい。この場合、移動体12は、歩行者102との間に規定の安全距離以上の距離を保つように、自動的に歩行者102を避けて移動するようにしてもよい。また、上述の説明では、移動体12は、予め規定された走行ルート104に沿ってのみ移動している。しかし、移動体12は、その走行ルート104を自由に選択できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 移動体システム、12 移動体、14 迷彩装置、16 警告装置、20 表示部、22 カメラ、24 迷彩コントローラ、30 環境センサ、32 警告出力器、34 警告コントローラ、38 環境画像、40 透過画像、42 迷彩画像、50 ライト、52 スピーカ、54 エアノズル、56 臭気噴射器、100 利用者、102 歩行者、104 走行ルート、106 歩行者ルート、108 乗降場、110 路面、112 構造物。