(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20241210BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H02P29/00
F04D29/58 P
(21)【出願番号】P 2021010425
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 大和
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106301096(CN,A)
【文献】特開2007-218216(JP,A)
【文献】特開2009-216366(JP,A)
【文献】特開2017-225292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
F04D 29/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンユニットを有するモータを駆動するモータ駆動装置であって、
前記モータを駆動するためのサーボアンプに電源が投入されたことを検知したことに応じて、前記電源が投入されたことを示す信号を出力する起動確認部と、
前記電源が投入されたことを示す信号を前記起動確認部から受信したことに応じて、前記サーボアンプに
対して、前記モータの回転子を所定時間継続して正転方向と逆転方向にそれぞれ90度未満の所定の角度だけ交互に回転させることで、前記回転子を前記所定の角度で前記所定時間、揺動させる指令を送出する振動指令部と、
を備えるモータ駆動装置。
【請求項2】
前記モータは、誘導モータ又は同期モータである、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記指令は
、前記回転子が前記所定時間継続して前記正転方向と前記逆転方向にそれぞれ前記所定の角度だけ交互に回転するように、前記モータの固定子により、
前記正転方向及び
前記逆転方向に交互に回転する回転磁界を生じさせる指令である、請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記指令は、前記回転子を前記所定の角度で前記所定時間、所定の周波数で揺動させる指令である、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送風機や冷却ファン付きの電動機等の機器において、塵埃や液体のミスト等が機器内に付着することによる動作不具合の発生を防ぐ構成を備えた機器が知られている。これに関し、特許文献1は、ファンの正回転終了後に自動的に逆回転運転を行う送風機制御装置を記載する(要約書)。また、特許文献2は、ファンの固有振動数にて共振するように駆動モータの回転数を制御することにより、ファンに付着した塵埃を除去する換気装置を記載する(要約書)。また、特許文献3は、冷却ファン付きの電動機において、ファンモータの停止時にロータと冷却ファンのインペラとを連結し、ファンモータの始動後にロータとインペラとの連結を切断する連結部を備えるようにした電動機を記載する(要約書)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-218216号公報
【文献】特開2009-216366号公報
【文献】特開2017-225292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却ファン付きの電動機においてファンに付着したスラッジが固着し、ファンモータの回転動作に不具合が生じたり、ファンモータが回らなくなる事象が生じ得る。特許文献1-2のように塵埃等の除去のためにファンの運転を必要とする構成は消費電力の増加を招くと共に、ファンモータの正転・逆転の制御、回転数の制御等を行うための回路も必要となる。特許文献3の電動機は、ロータとファンを繋げる機構を必要としそのためのスペースの確保が必要となり、またコストの増加を招く。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、ファンユニットを有するモータを駆動するモータ駆動装置であって、前記モータを駆動するためのサーボアンプに電源が投入されたことを検知したことに応じて、前記電源が投入されたことを示す信号を出力する起動確認部と、前記電源が投入されたことを示す信号を前記起動確認部から受信したことに応じて、前記サーボアンプに対して、前記モータの回転子を所定時間継続して正転方向と逆転方向にそれぞれ90度未満の所定の角度だけ交互に回転させることで、前記回転子を前記所定の角度で前記所定時間、揺動させる指令を送出する振動指令部と、を備えるモータ駆動装置である。
【発明の効果】
【0006】
上記構成によれば、ファンモータの運転に伴い消費電力が増加するような事態を招来することなく、また、回転子とファンとを繋げるための機構の追加も要することなく、モータに付着或いは固着した塵埃、スラッジ等をモータの起動時に的確に除去することが可能である。
【0007】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るモータ駆動装置の全体構成を表す図である。
【
図4】モータを正転・逆転させる指令によりモータが動作している状態を説明するための図である。
【
図5A】
図5Bと共に起動確認部及び振動指令部による電源投入の確認からモータを振動させる動作に至る一連の処理を表すフローチャートである。
【
図5B】
図5Aと共に起動確認部及び振動指令部による電源投入の確認からモータを振動させる動作に至る一連の処理を表すフローチャートである。
【
図6A】回転磁界により回転子に正転方向への電磁力が発生している状態を表す図である。
【
図6B】回転子が正転方向へ指定の角度回転した状態を表す図である。
【
図6C】回転磁界により回転子に逆転方向への電磁力が発生している状態を表す図である。
【
図6D】回転子が逆転方向へ指定の角度回転した状態を表す図である。
【
図7A】正転方向の回転磁界を発生させた状態を表す図である。
【
図7B】正転方向への回転磁界により回転子に渦電流が発生した状態を表す図である。
【
図7C】回転子に正転方向の電磁力が発生した状態を表す図である。
【
図8A】逆転方向の回転磁界を発生させた状態を表す図である。
【
図8B】逆転方向への回転磁界により回転子に渦電流が発生した状態を表す図である。
【
図8C】回転子に逆転方向の電磁力が発生した状態を表す図である。
【
図9】回転子を振動させることによりスラッジが除去される状態を表すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面において、同様の構成部分または機能部分には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は一実施形態に係るモータ駆動装置100の全体構成を表す図である。
図1に示されるように、モータ駆動装置100は、モータ30と、モータ30を制御する電動機制御部70とを備える。モータ駆動装置100は、例えば、工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、各種電化製品、電車、自動車等の各種の機械に用いられ得る。
【0011】
モータ30は、モータ本体10と、モータ本体10の後部に装着されたファンユニット20とを有する。モータ本体10は、主要な構成要素として、回転子11と、固定子12と、駆動軸14と、本体カバー13とを有する。ファンユニット20は、ファンモータ22と、ファンの羽23と、ファンカバー21とを有する。モータ30は、本実施形態では誘導モータであるものとするが、同期モータ等の他のタイプのモータが用いられても良い。
【0012】
電動機制御部70は、サーボアンプ40と、起動確認部50と、振動指令部60とを有する。サーボアンプ40は、交流電源90から供給される交流電源を内部で利用可能な直流電圧に変換すると共に、外部から入力される指令に応じてモータ30を駆動する駆動信号を生成する。起動確認部50は、サーボアンプ40に電源が投入されたことを検知し、電源の投入が検知されたことに応じてサーボアンプ40に電源が投入されたことを示す信号を振動指令部60に対して送信する。振動指令部60は、起動確認部50から電源投入が確認されたことを示す信号を受信したことに応じて、モータ30の回転子11を振動させるための指令(電圧・電流指令)をサーボアンプ40に送信する。このような構成により、電動機制御部70は、サーボアンプ40に電源が投入されたことに応じてモータ30の回転子11を振動させ、ファンの羽23等に付着或いは固着した塵埃やスラッジ等を除去することができる。
【0013】
図2は、サーボアンプ40の機能ブロック図である。サーボアンプ40は、電源部41と駆動用インバータ42とを備える。交流電源90は、例えば三相交流400V電源、三相交流200V電源、単相交流100V電源等である。なお、サーボアンプ40に投入される電源はこれらに限るものではない。電源部41は、交流電力を直流電力に変換し駆動用インバータ42へ供給する。電源部41は、交流電力を直流電力に変換する三相ブリッジ回路等から構成することができる。
【0014】
駆動用インバータ42は、モータ30を駆動するために直流電力を交流電力に変換し、モータ30へ駆動電力として供給する。このため、駆動用インバータ42は例えば逆変換器を有する。駆動用インバータ42内の逆変換器は、外部(振動指令部60等)から受信した駆動指令(電流・電圧指令)に基づき各スイッチング素子がオンオフ制御されることにより直流電力とモータ30の駆動電力である交流電力との間で電力変換を行う。なお、駆動用インバータ42は、外部(振動指令部60等)から受信した指令(電流・電圧指令等)に応じて逆変換器に対する駆動指令信号を生成する制御部(不図示)を有していても良い。駆動用インバータ42内の逆変換器は、駆動指令信号に基づき内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、電源部41から供給される直流電力を、モータ30を駆動するための所望の電圧、電流、周波数等を有する交流電力に変換する(逆変換動作)。これにより、モータ30は、例えば電圧可変及び周波数可変の交流電力に基づいて動作する。
【0015】
図3は、起動確認部50の機能ブロック図である。
図3に示すように、起動確認部50は、電圧測定部51と、A/D変換器52と、マイコン53とを有する。電圧測定部51には、サーボアンプ40の電源部41により生成された直流電圧が供給される。電圧測定部51は、電源部41により生成された直流電圧を測定する。電圧測定部51は、測定した電圧を示すアナログ信号をA/D変換器52に供給する。A/D変換器52は、入力されるアナログの電圧値をデジタル値に変換しマイコン(マイクロコントローラ)53に供給する。マイコン53は、A/D変換器52から供給される電圧値を監視し、電圧値が所定の値或いは所定の電圧範囲になると、電源投入(起動)を確認したことを示す信号を振動指令部60に対して送信する。
【0016】
一例として、モータ30が200V駆動用のモータである場合、マイコン53は、入力電圧値が200Vから240Vの範囲内に入ったことを確認できると、起動を確認したことを示す信号を振動指令部60に対して送信しても良い。別の例として、モータ30が400V駆動用のモータである場合、マイコン53は、入力電圧値が400Vから480Vの範囲内に入ったことを確認できると、起動を確認したことを示す信号を振動指令部60に対して送信しても良い。
【0017】
振動指令部60は、起動を確認したことを示す信号を受信することに応じて、モータ30の回転子11を振動させるための指令(電圧・電流指令)をサーボアンプ40の駆動用インバータ42に送信する。例示として、この場合、振動指令部60は、回転子11を揺動(例えば微小な角度だけ高速で正転・逆転)させる。
図4は、振動指令部60によるこのような指令を受けてモータ30が動作している状態を説明するための図である。なお、
図4は、モータ本体10の駆動軸14に垂直な面による断面図であって後方側(出力軸と反対側)から見た場合の状態を表している(
図6A-
図6D、
図7A-
図7C、
図8A-
図8Cについても同様)。
図4の図示において、時計回り方向を正転方向とし、反時計回りを逆転方向とする(
図6A-
図6D、
図7A-
図7C、
図8A-
図8Cについても同様)。
【0018】
例示としてモータ本体10には6つの巻線111から116が配置されているものとする。例示として、このような巻線(3つのコイル)に対して120°ずつ位相の異なる駆動電流を流すことで回転磁界を生じさせ、回転子11を回転させる電磁力を生じさせることができる。振動指令部60は、回転子11に対して正転方向の電磁力F1が作用するように各巻線111から116に電流を流す第1の状態ST1と、回転子11に対して逆転方向の電磁力F2が作用するように各巻線111から116に電流を流す第2の状態ST2とが交互に発生するような指令(電圧・電流指令)を駆動用インバータ42に送信する。振動指令部60は、例えばマイコン(マイクロコントローラ)61により構成される。
【0019】
図5A-
図5Bは、起動確認部50及び振動指令部60による電源投入の確認からモータ30を振動させる動作に至る一連の処理(以下、モータ起動確認及び振動処理と記載する)を表すフローチャートである。はじめに、サーボアンプ40に対する電源オンスイッチの操作等によりサーボアンプ40に交流電源90の電源投入がなされると(ステップS1)、起動確認部50の電圧測定部51は投入された電源の電圧を測定する(ステップS2)。
【0020】
マイコン53はA/D変換器52から出力される電圧値を監視し、電圧値が所定の範囲内に入ったか否かを判定する(ステップS3)。電圧値が未だ所定の範囲に入っていない場合、マイコン53による電圧の監視が継続される(S3:NO)。電圧値が所定の範囲に入ると(S3:YES)、マイコン53は、起動を確認したことを示す信号を振動指令部60に送信する(ステップS4)。
【0021】
起動を確認したことを示す信号を受信すると、振動指令部60は、回転子11を正転させる指令(電流・電圧指令)をサーボアンプ40(駆動用インバータ42)に送信する(ステップS5)。
図6Aは、回転子11を正転させる指令によりモータ30が駆動され始めた状態を表している。
図6Aに示されるように固定子12の巻線111-116(3つのコイル)に対して図示の様に電流が流され、固定子12により図の上方向きで且つ正転方向(図中時計回り)C1に回転する回転磁界M1が生じる。回転磁界M1の正転方向C1への回転は、回転子11に渦電流を生じさせ、それにより回転子11に正転方向(図中時計回り)の電磁力F1を生じさせる。よって、回転子11は回転磁界M1と同じ方向に連れ回る。
【0022】
モータ30は、位置センサ(不図示)を有しており、位置センサの検出信号はサーボアンプ40にフィードバックされる。位置センサは、例えば、光学式のエンコーダである。ステップS6では、例えば、振動指令部60が位置センサの出力をサーボアンプ40を介して取得し、回転子11の回転角度を求める。
図6Bに示すように、回転子11が初期位置P0から位置P1に回転し、回転子11の正転方向への回転角度が指定の角度φに達していると(S7:YES)、振動指令部60は、回転子11を正転方向へ回転させる指令の送出を停止する(ステップS8)。これにより
図6Bに示すように、巻線111-116へ流す電流は停止され、電磁力F1も消える。なお、回転子11の回転角度が指定の角度φに到達するまでは回転角度の測定が継続される(S7:NO)。例示として、角度φは90°未満とする。
【0023】
次に、ステップS9(
図5B)では、振動指令部60は、回転子11を逆転させる指令(電流・電圧指令)をサーボアンプ40に送信する。
図6Cは、回転子11を逆転させる指令によりモータ30が駆動され始めた状態を表している。
図6Cに示されるように、固定子12の巻線111-116(3つのコイル)に対して、正転時(
図6A)と逆向きの電流が流され、図中下方向きで且つ逆転方向(図中反時計回り)C2に回転する回転磁界M2が生じる。回転磁界M2の逆転方向C2への回転は、回転子11に渦電流を生じさせ、それにより回転子11に逆転方向の電磁力F2を生じさせる。よって、回転子11は回転磁界M2と同じ方向に連れ回る。
【0024】
ステップS10では、例えば、振動指令部60が位置センサの出力を取得し、回転子11の回転角度を求める。
図6Dに示すように、回転子11が位置P1から初期位置P0に戻り、回転子11の逆転方向への回転角度が指定の角度φに達していると(S11:YES)、振動指令部60は、回転子11を逆転方向へ回転させる指令の送出を停止する(ステップS12)。これにより
図6Dに示すように、巻線111-116へ流す電流は停止され、電磁力F2も消える。なお、回転子11の回転角度が指定の角度φに到達するまでは回転角度の測定が継続される(S11:NO)。
【0025】
次に、振動指令部60は、予め決められた時間、回転子11の正転・逆転動作を行ったか否かを判定する(ステップS13)。回転子11を正転・逆転させる動作が予め決められた時間に達していない場合には、ステップS5からの処理を継続する(S13:NO)。回転子11を正転・逆転させる動作が予め決められた時間に達した場合(S13:YES)、本処理を終了する。以上の処理により、回転子11の正転・逆転を予め決められた時間繰り返す動作を行わせることができる。このように回転子11を揺動させることで(言い換えると、回転子11を振動させることで)、モータ30全体を振動させ、ファンユニット20内のファンの羽23等に付着或いは固着した塵埃やスラッジ等を除去することができる。回転子11を揺動させる周波数、角度、時間は、適宜決定することができる。例えば、回転子11の揺動を微小な角度で高速で実行するようにしても良い。
【0026】
ここで、
図7A-
図7Cを参照し、正転方向C1に回転する回転磁界M1により生じる渦電流により、回転子11に正転方向の電磁力F1が生じることを説明する。
【0027】
図7Aに示すように正転方向C1に回転する回転磁界M1が発生すると、回転子11の表面付近における回転磁界M1の進行方向に対応する箇所には磁界の増加を妨げる向き(回転磁界M1と反対向き)の磁界を生じさせるような渦電流が発生する(
図7B)。符号212、213はこのような渦電流における回転磁界M1に近い側(渦電流が重なり合う箇所)の電流(誘導電流)の向きを示す。他方、回転子11の表面付近における回転磁界M1の進行方向の反対側には磁界の減少を補う向き(回転磁界M1と同じ向き)の磁界を生じさせるような渦電流が発生する(
図7B)。符号211、214はこのような渦電流における回転磁界M1に近い側(渦電流が重なり合う箇所)の電流(誘導電流)の向きを示す。回転磁界M1と誘導電流211、212、213、214により回転子11には電磁力F1が作用する(
図7C)。
【0028】
次に、
図8A-
図8Cを参照し、逆転方向C2に回転する回転磁界M2により生じる渦電流により、回転子11に逆転方向の電磁力F2が生じることを説明する。
【0029】
図8Aに示すように逆転方向C2に回転する回転磁界M2が発生すると、回転子11の表面付近における回転磁界M2の進行方向に対応する箇所には磁界の増加を妨げる向き(回転磁界M2と反対向き)の磁界を生じさせるような渦電流が発生する(
図8B)。符号224、221はこのような渦電流における回転磁界M2に近い側(渦電流が重なり合う箇所)の電流(誘導電流)の向きを示す。他方、回転子11の表面付近における回転磁界M2の進行方向の反対側には磁界の減少を補う向き(回転磁界M2と同じ向き)の磁界を生じさせるような渦電流が発生する(
図8B)。符号223、222はこのような渦電流における回転磁界M2に近い側(渦電流が重なり合う箇所)の電流(誘導電流)の向きを示す。回転磁界M2と誘導電流221、222、223、224により回転子11には電磁力F2が作用する(
図8C)。
【0030】
以上述べたように本実施形態によれば、ファンモータの運転に伴い消費電力が増加するような事態を招来することなく、また、回転子とファンとを繋げるための機構の追加も要することなく、モータに付着或いは固着した塵埃、スラッジ等をモータの起動時に的確に除去することが可能である。
【0031】
図9には、電源投入時に回転子11を振動させることで、ファンの羽23とファンカバー21の内面との間に固着したスラッジ301が除去される状況を表すイメージを図示した。なお、
図9は、ファンユニット20の内部を後方から見た図である。本実施形態によれば、モータ30の起動時に回転子11を振動させるように固定子12からの磁束が制御される。そして、回転子11の振動がファンカバー21、ファンの羽23へと伝わり、ファンの羽23とファンカバー21の間のスラッジを剥離させ固着から解放させることができる。
【0032】
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の各実施形態に変更及び種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【0033】
上述の実施形態で説明した構成は、指令により回転子に揺動運動を行わせることのできる各種のモータに適用することができる。
【0034】
図2、
図3に示した機能ブロック図における各機能ブロックの配置は一例であり、図示以外の機能配分も有り得る。例えば、サーボアンプ40に配置している電源部41の機能を起動確認部50に配置するような構成例も有り得る。
【0035】
上述の実施形態で用いられるマイコン(マイクロコントローラ)は、CPUコア、メモリ(ROM、RAM、不揮発性メモリ等)、タイマー、入出力インタフェース等を内蔵する集積回路である。
【0036】
上述した実施形態における、モータ起動確認及び振動処理の全体又はその一部を実行するプログラムは、コンピュータに読み取り可能な各種記録媒体(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気記録媒体、CD-ROM、DVD-ROM等の光ディスク)に記録することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 モータ本体
11 回転子
12 固定子
13 本体カバー
14 駆動軸
20 ファンユニット
21 ファンカバー
22 ファンモータ
23 ファンの羽
30 モータ
40 サーボアンプ
41 電源部
42 駆動用インバータ
50 起動確認部
51 電圧測定部
52 A/D変換器
53 マイコン
60 振動指令部
61 マイコン
90 交流電源
100 モータ駆動装置
F1、F2 電磁力
M1、M2 回転磁界
111、112、113、114、115、116 巻線