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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/04 20060101AFI20241210BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20241210BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241210BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20241210BHJP
   H05K 7/20 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
B60W50/04
B60W50/14
B60R16/02 650P
G06F1/20 E
G06F1/20 D
H05K7/20 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021011236
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114802
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基心
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英之
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-168107(JP,A)
【文献】特開2019-054176(JP,A)
【文献】特開2020-078747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/04
B60W 50/14
G08G 1/00-99/00
B60R 16/02
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリと、CPUと、該CPUに内蔵された温度センサと、該CPUを冷却する冷却機構と、を備えた車両制御装置であって、
前記メモリは、
前記CPUの負荷状態の時間的な変化である標準パターンと、
前記標準パターンの開始から前記温度センサで評価温度を取得するまでの待機時間と、
正常な前記CPUの負荷状態を前記標準パターンで変化させて前記待機時間が経過した時点の前記CPUの標準温度と、
前記CPUと前記冷却機構の少なくとも一方が正常である場合の前記標準温度に対する正常温度差と、
が記憶され、
前記CPUは、
前記CPUの負荷状態を前記メモリに記憶させて監視し、
前記CPUの負荷状態が前記標準パターンで変化した場合に、前記標準パターンの開始から前記待機時間が経過した時点の前記評価温度と前記標準温度との温度差を算出し、
前記温度差が前記正常温度差よりも大きい場合に、異常を判定し、
前記標準パターンは、第1負荷状態からより高い第2負荷状態へ変化して前記第1負荷状態に戻る第1パターンと、前記第2負荷状態から前記第1負荷状態へ変化して前記第2負荷状態に戻る第2パターンと、を含み、
前記第1パターンにおける前記待機時間は、前記冷却機構がない状態で正常な前記CPUの負荷状態を前記第1パターンで変化させた後に前記CPUの温度が低下して安定するまでの時間に設定され、
前記第2パターンにおける前記待機時間は、前記冷却機構がない状態で正常な前記CPUの負荷状態を前記第2パターンで変化させた後に前記CPUの温度が上昇して安定するまでの時間に設定され、
前記CPUは、前記温度差が前記正常温度差よりも大きい場合に、前記CPUの異常発熱を判定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
メモリと、CPUと、該CPUに内蔵された温度センサと、該CPUを冷却する冷却機構と、を備えた車両制御装置であって、
前記メモリは、
前記CPUの負荷状態の時間的な変化である標準パターンと、
前記標準パターンの開始から前記温度センサで評価温度を取得するまでの待機時間と、
正常な前記CPUの負荷状態を前記標準パターンで変化させて前記待機時間が経過した時点の前記CPUの標準温度と、
前記CPUと前記冷却機構の少なくとも一方が正常である場合の前記標準温度に対する正常温度差と、
が記憶され、
前記CPUは、
前記CPUの負荷状態を前記メモリに記憶させて監視し、
前記CPUの負荷状態が前記標準パターンで変化した場合に、前記標準パターンの開始から前記待機時間が経過した時点の前記評価温度と前記標準温度との温度差を算出し、
前記温度差が前記正常温度差よりも大きい場合に、異常を判定し、
前記標準パターンは、第1負荷状態からより高い第2負荷状態へ変化して前記第1負荷状態に戻る第1パターンと、前記第2負荷状態から前記第1負荷状態へ変化して前記第2負荷状態に戻る第2パターンと、を含み、
前記第1パターンにおける前記待機時間は、正常な前記CPUが前記冷却機構を介して正常に放熱可能な状態で、前記CPUの負荷状態を前記第1パターンで変化させたときに、前記CPUの温度が上昇して最高温度に達するまでの時間に設定され、
前記第2パターンにおける前記待機時間は、正常な前記CPUが前記冷却機構を介して正常に放熱可能な状態で、前記CPUの負荷状態を前記第2パターンで変化させたときに、前記CPUの温度が低下して最低温度に達するまでの時間に設定されていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
メモリと、CPUと、該CPUに内蔵された温度センサと、該CPUを冷却する冷却機構と、を備えた車両制御装置であって、
前記メモリは、
前記CPUの負荷状態の時間的な変化である標準パターンと、
前記標準パターンの開始から前記温度センサで評価温度を取得するまでの待機時間と、
正常な前記CPUの負荷状態を前記標準パターンで変化させて前記待機時間が経過した時点の前記CPUの標準温度と、
前記CPUと前記冷却機構の少なくとも一方が正常である場合の前記標準温度に対する正常温度差と、
が記憶され、
前記CPUは、
前記CPUの負荷状態を前記メモリに記憶させて監視し、
前記CPUの負荷状態が前記標準パターンで変化した場合に、前記標準パターンの開始から前記待機時間が経過した時点の前記評価温度と前記標準温度との温度差を算出し、
前記温度差が前記正常温度差よりも大きい場合に、異常を判定し、
前記標準パターンは、第1負荷状態からより高い第2負荷状態へ変化する第1パターンと、前記第2負荷状態から前記第1負荷状態へ変化する第2パターンと、を含み、
前記第1パターンにおける前記待機時間は、正常な前記CPUが前記冷却機構を介して正常に放熱可能な状態で、前記CPUの負荷状態を前記第1パターンで変化させたときに、前記CPUの温度が上昇して安定するまでの時間に設定され、
前記第2パターンにおける前記待機時間は、正常な前記CPUが前記冷却機構を介して正常に放熱可能な状態で、前記CPUの負荷状態を前記第2パターンで変化させたときに、前記CPUの温度が低下して安定するまでの時間に設定されていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
メモリと、CPUと、該CPUに内蔵された温度センサと、該CPUを冷却する冷却機構と、を備えた車両制御装置であって、
前記メモリは、
前記CPUの負荷状態の時間的な変化である標準パターンと、
前記標準パターンの開始から前記温度センサで評価温度を取得するまでの待機時間と、
正常な前記CPUの負荷状態を前記標準パターンで変化させて前記待機時間が経過した時点の前記CPUの標準温度と、
前記CPUと前記冷却機構の少なくとも一方が正常である場合の前記標準温度に対する正常温度差と、
が記憶され、
前記CPUは、
前記CPUの負荷状態を前記メモリに記憶させて監視し、
前記CPUの負荷状態が前記標準パターンで変化した場合に、前記標準パターンの開始から前記待機時間が経過した時点の前記評価温度と前記標準温度との温度差を算出し、
前記温度差が前記正常温度差よりも大きい場合に、異常を判定し、
前記標準パターンは、第1負荷状態からより高い第2負荷状態へ変化して前記第1負荷状態に戻る第1パターンと、前記第2負荷状態から前記第1負荷状態へ変化して前記第2負荷状態に戻る第2パターンと、を含み、
前記第1パターンにおける前記待機時間は、正常な前記CPUが前記冷却機構を介して正常に放熱可能な状態で、前記CPUの負荷状態を前記第1パターンで変化させたときに、前記CPUの温度が上昇して最高温度に達するまでの第1待機時間と、前記CPUの温度が低下して安定するまでの第2待機時間と、を含み、
前記第2パターンにおける前記待機時間は、正常な前記CPUが前記冷却機構を介して正常に放熱可能な状態で、前記CPUの負荷状態を前記第2パターンで変化させたときに、前記CPUの温度が低下して最低温度に達するまでの第3待機時間と、前記CPUの温度が上昇して安定するまでの第4待機時間と、を含み、
前記CPUは、
前記第1待機時間における前記温度差が前記正常温度差よりも大きく、かつ、前記第2待機時間における前記温度差が前記正常温度差と等しいか前記正常温度差よりも小さい場合に、前記CPUの異常発熱を判定し、
前記第1待機時間における前記温度差が前記正常温度差と等しいか前記正常温度差よりも小さく、かつ、前記第2待機時間における前記温度差が前記正常温度差よりも大きい場合に、前記冷却機構の放熱異常を判定し
前記第3待機時間における前記温度差が前記正常温度差よりも大きく、かつ、前記第4待機時間における前記温度差が前記正常温度差と等しいか前記正常温度差よりも小さい場合に、前記CPUの異常発熱を判定し、
前記第3待機時間における前記温度差が前記正常温度差と等しいか前記正常温度差よりも小さく、かつ、前記第4待機時間における前記温度差が前記正常温度差よりも大きい場合に、前記冷却機構の放熱異常を判定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
前記第2負荷状態は、前記CPUがRAMチェックまたは画像演算処理を実行している状態であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記第1負荷状態は、前記CPUが走行制御処理、RAMチェック、および画像演算処理を実行していない状態であることを特徴とする請求項から請求項のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記第1パターンにおける前記第2負荷状態は、前記CPUが全領域RAMチェックまたは定速自動走行制御を実行している状態であることを特徴とする請求項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記第2パターンにおける前記第2負荷状態は、前記CPUが車両制御を実行している状態であることを特徴とする請求項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からCPU冷却機構に関する発明が知られている(下記特許文献1)。特許文献1に記載されたCPU冷却機構は、温度センサICをヒートシンクのフィンの近くに配置し、温度差特性を統計的に算出したデータを元に、実動作時の温度との比較により、冷却機構の異常を検出する。これにより、冷却機構において、冷却部材の物理的接触不良など、接触面を直に見ることができないために通常では発見できない不具合を検出できる(特許文献1、要約等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-355421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された冷却機構は、実動作時のCPU温度と温度センサIC温度との差をしきい値と比較することにより、CPUの冷却が正常に行われているかを検出することができる(第0013段落等)。しかしながら、この従来の冷却機構を車両制御装置に適用する場合には、CPUとは別に温度センサICが必要になるため、車両制御装置の大型化、部品点数の増加、コスト増加などが課題になる。
【0005】
本開示は、大型化、部品点数増加、およびコスト増加を抑制しつつ、CPUの異常発熱または冷却機構の放熱異常を検出することが可能な車両制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、メモリと、CPUと、該CPUに内蔵された温度センサと、該CPUを冷却する冷却機構と、を備えた車両制御装置であって、前記メモリは、前記CPUの負荷状態の時間的な変化である標準パターンと、前記標準パターンの開始から前記温度センサで評価温度を取得するまでの待機時間と、正常な前記CPUの負荷状態を前記標準パターンで変化させて前記待機時間が経過した時点の前記CPUの標準温度と、前記CPUと前記冷却機構の少なくとも一方が正常である場合の前記標準温度に対する正常温度差と、が記憶され、前記CPUは、前記CPUの負荷状態を前記メモリに記憶させて監視し、前記CPUの負荷状態が前記標準パターンで変化した場合に、前記標準パターンの開始から前記待機時間が経過した時点の前記評価温度と、前記標準温度との温度差を算出し、前記温度差が前記正常温度差よりも大きい場合に、異常を判定することを特徴とする車両制御装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の上記一態様によれば、大型化、部品点数増加、コスト増加を抑制しつつ、CPUの異常発熱または冷却機構の放熱異常を検出することが可能な車両制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係る車両制御装置の一実施形態を示すブロック図。
図2図1の車両制御装置が実行する処理の一例を示すフロー図。
図3図1のCPUの温度変化の一例を示すグラフ。
図4図1のCPUの温度変化の一例を示すグラフ。
図5図1のCPUの温度変化の一例を示すグラフ。
図6図1のCPUの温度変化の一例を示すグラフ。
図7図1のCPUの温度変化の一例を示すグラフ。
図8図1のCPUの温度変化の一例を示すグラフ。
図9図1のCPUの温度変化の一例を示すグラフ。
図10図1のCPUの温度変化の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示に係る車両制御装置の実施形態を説明する。図1は、本開示に係る車両制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態の車両制御装置10は、たとえば、車両1に搭載され、車両1の各部を制御する。車両1は、たとえば、ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車、ハイブリッド車、電気自動車、および水素自動車などを含む。車両1は、たとえば、センサ2、アクチュエータ3、入力装置4、および報知装置5を備えている。車両1の他の一般的な構成については、図示および説明を省略する。
【0011】
センサ2は、たとえば、外界センサと車両センサとを含む。外界センサは、たとえば、単眼カメラ、ステレオカメラ、レーザレーダ、ミリ波レーダ、赤外線センサ、超音波センサなどを含み、車両1の周囲の物体を検出する。車両センサは、たとえば、車輪速センサ、加速度センサ、角速度センサ、全球衛星測位システム(GNSS)の受信機、アクセルセンサ、ブレーキセンサ、操舵角センサなどを含み、車両1の速度、加速度、角速度、位置、アクセル操作量、ブレーキ操作量、操舵角などを検出する。
【0012】
アクチュエータ3は、たとえば、車両制御装置10から入力される制御信号に基づいて、車両1のパワートレイン、ブレーキ装置、および操舵装置などを駆動させ、車両1の前進、後進、加速、減速、停止、および操舵を行う。
【0013】
入力装置4は、たとえば、タッチパネル、操作ボタン、視線検出装置、音声認識装置、操作レバーなどを含む。入力装置4は、たとえば、車両1の運転者による操作および入力を受け付けて、運転者の操作および入力に応じた信号を車両制御装置10へ出力する。
【0014】
報知装置5は、たとえば、表示装置、表示ランプ、スピーカ、ブザーなどを含む。報知装置5は、たとえば、車両制御装置10から入力される信号に基づいて、表示装置または表示ランプによる各種の表示や、スピーカまたはブザーから発する音声によって、運転者に対して、車両制御装置10の異常を含む各種の情報を報知する。
【0015】
車両制御装置10は、たとえば、センサ2によって検出された各種の情報に基づいて、アクチュエータ3を制御することで、車両1の先進運転支援や自動運転を行う。車両制御装置10は、たとえば、中央処理装置(CPU)11,12と、メモリ13と、冷却機構14とを備えている。また、車両制御装置10は、たとえば、図示を省略する入出力部とタイマーと、各種のプログラムを備えている。
【0016】
車両制御装置10は、たとえば、一つ以上のマイクロコンピュータまたはファームウェアによって構成することができる。また、図1に示す例において、車両制御装置10は、二つのCPU11,12を備えているが、少なくとも一つのCPU11を備えていればよい。また、CPU11がメモリを内蔵している場合には、車両制御装置10は、CPU11の外部のメモリ13を有しなくてもよい。
【0017】
CPU11は、たとえば、温度センサ111と、異常検知部112と、車両制御部113とを備えている。温度センサ111は、たとえば、CPU11に内蔵された半導体温度センサである。温度センサ111は、たとえば、サーマルダイオードによって構成され、CPU11の温度を検出する。異常検知部112および車両制御部113は、たとえば、CPU11によってメモリ13に記憶されたプログラムを実行することによって実現されるCPU11の機能を表している。
【0018】
異常検知部112は、たとえば、温度センサ111によって検出されたCPU11の温度に基づいて、異常を判定する。また、異常検知部112は、たとえば、異常を判定した場合に、報知装置5へ制御信号を出力して車両1の運転者に対して判定した異常を報知する。異常検知部112が判定する異常は、たとえば、CPU11の異常発熱と、冷却機構14の放熱異常とを含む。CPU11の異常発熱とは、たとえば、CPU11に何らかの異常が発生することで、正常なCPU11と比較して、CPU11の温度がより高温になった状態である。冷却機構14の放熱異常については後述する。
【0019】
車両制御部113は、たとえば、センサ2によって検出された各種の情報に基づいて、アクチュエータ3を制御することで、車両1の先進運転支援や自動運転を行う。より具体的には、車両制御部113は、たとえば、アクチュエータ3を制御することで、定速自動走行、先行車追従、ブレーキ制御、またはレーンキープなどの制御を実行する。また、車両制御部113は、たとえば、異常検知部112によって異常が検知された場合に、実行する制御を制限する。
【0020】
CPU12は、たとえば、CPU11と同様の構成を備えている。また、CPU12は、たとえば、CPU11の異常検知部112と車両制御部113を備えていてもよい。この場合、CPU11は、異常検知部112および車両制御部113を有しなくてもよい。また、前述のように、CPU11が図1のすべての構成を備える場合には、CPU12を省略することも可能である。
【0021】
メモリ13は、たとえば、RAMによって構成されている。また、メモリ13は、RAMおよびROMを含んでもよい。メモリ13は、たとえば、異常検知部112および車両制御部113の機能を実現するための各種のプログラムが記憶されている。また、メモリ13は、たとえば、CPU11の負荷状態の時間的な変化である標準パターンSP1,SP2と、その標準パターンSP1,SP2の開始から温度センサ111によって評価温度Teを取得するまでの待機時間tw(図3図4等)が記憶されている。
【0022】
また、メモリ13は、たとえば、正常なCPU11の負荷状態を標準パターンSP1,SP2で変化させて待機時間twが経過した時点S2のCPU11の標準温度Tsと、CPU11および冷却機構14が正常である場合の標準温度Tsに対する正常温度差ΔTn(図3図4等)が記憶されている。また、メモリ13は、たとえば、後述する表1に示すような温度差ΔTseと正常温度差ΔTnとの差の範囲に応じたCPU11の処理の制限が記憶されている。また、メモリ13は、たとえば、CPU11およびCPU12から入力された情報を記憶する。なお、CPU11がメモリを内蔵する場合には、メモリ13に記憶させる情報を、CPU11に内蔵されたメモリに記憶させてもよい。
【0023】
冷却機構14は、たとえば、図示を省略する放熱シートと、ヒートシンクとを備えている。放熱シートは、たとえば、CPU11に接してCPU11の熱をヒートシンクへ伝達する。ヒートシンクは、たとえば、受熱板を介して放熱シートに接し、放熱シートから伝達されたCPU11の熱を、複数のフィンによって放熱する。冷却機構14は、フィンを空冷する冷却ファンや、受熱板の熱をフィンへ伝達するヒートパイプを備えてもよい。
【0024】
冷却機構14は、CPU11に対して正常に設置されていれば、CPU11を効率よく冷却することが可能である。しかし、冷却機構14は、たとえば、不適切な設置によって熱の伝達経路に何らかの障害が発生したり、冷却ファンが故障したりすると、CPU11の放熱が阻害され、冷却機構14が正常である場合と比較してCPU11の温度が上昇しやすくなる。このような状態が、冷却機構14の放熱異常である。
【0025】
以下、図2から図10を参照して、本実施形態の車両制御装置10の処理について、詳細に説明する。図2は、図1の車両制御装置10が実行する処理の一例を示すフロー図である。図3および図4は、図1のCPU11の温度変化の一例を示すグラフである。
【0026】
車両制御装置10は、図2に示す処理を開始すると、たとえば、CPU11の負荷状態を監視する処理P1を実行する。CPU11は、たとえば、異常検知部112により、CPU11の電流値を検出し、その電流値の時系列データを、CPU11の負荷状態の時間変化としてメモリ13に記憶させて監視する。なお、CPU11は、たとえば、温度センサ111によって検出した温度など、電流値以外の物理量をCPU11の負荷状態としてメモリ13に記憶させてもよい。次に、CPU11は、たとえば、異常検知部112により、標準パターンの判定処理P2を実行する。
【0027】
車両1の運転者は、たとえば、高度運転支援または自動運転の要求を、スイッチ操作、音声、または視線などにより、入力装置4を介して車両制御装置10の車両制御部113へ入力する。すると、CPU11は、たとえば、車両制御部113により、高度運転支援または自動運転に係る車両制御処理を実行する。この車両制御処理は、たとえば、定速自動走行、先行車追従、ブレーキ制御、またはレーンキープの少なくとも一つを含む。CPU11が車両制御処理を開始すると、CPU11の処理負荷が増大して、CPU11の負荷状態が変化する。
【0028】
前述の車両制御処理は、たとえば、センサ2に含まれる単眼カメラやステレオカメラの画像処理演算を含む。また、車両制御装置10は、たとえば、車両1の起動時や作動停止時などに、CPU11によってRAMチェックを実行する。RAMチェックは、たとえば、全領域RAMチェックを含む。RAMチェックは、たとえば、メモリ13の故障を検知する処理である。CPU11が画像処理演算やRAMチェックを実行すると、CPU11の処理負荷が増大して、CPU11の負荷状態が変化する。
【0029】
図2に示す標準パターンの判定処理P2において、CPU11は、たとえば、異常検知部112により、メモリ13に記憶させた実際のCPU11の負荷状態の時間的な変化と、図3および図4に示すように、メモリ13にあらかじめ記憶された標準パターンSP1,SP2とを比較する。この処理P2において、異常検知部112が、たとえば、実際のCPU11の負荷状態の時間的な変化と、標準パターンSP1,SP2とが異なる(NO)と判定すると、CPU11は、たとえば、車両制御部113による車両制御処理P3を実行する。
【0030】
この処理P3において、車両制御装置10は、たとえば、CPU11の車両制御部113により、前述の高度運転支援または自動運転に係る車両制御処理を実行する。なお、この処理P3において、車両制御装置10は、たとえば、CPU11の異常検知部112により、RAMチェックを実行してもよい。その後、車両制御装置10は、図2に示す処理フローを終了する。また、車両制御装置10は、図2に示す処理フローを、所定の周期で繰り返し実行する。
【0031】
一方、前述の標準パターンの判定処理P2において、異常検知部112が、CPU11の負荷状態の時間的な変化と、標準パターンSP1,SP2とが同等である(YES)と判定すると、CPU11は、たとえば、標準温度Tsを取得する処理P4を実行する。なお、図3図4に示す標準パターンSP1,SP2は、CPU11の負荷状態の時間的な変化として、CPU11の電流値の時間的な変化を示している。
【0032】
図3図4に示す例において、CPU11の異常検知部112は、たとえば、メモリ13に記憶されたCPU11の標準温度Tsおよび待機時間twを取得する。この標準温度Tsは、正常なCPU11の負荷状態を標準パターンSP1,SP2で変化させ、標準パターンSP1,SP2が開始された時点S1から待機時間twが経過した時点S2の正常なCPU11の温度である。なお、図3図4では、正常なCPU11の温度変化を、それぞれ破線で示し、実際のCPU11の温度変化を実線で示している。
【0033】
より具体的には、CPU11の負荷状態の標準パターンSP1,SP2は、たとえば、図3に示すように、第1負荷状態LC1からより高い第2負荷状態LC2へ変化して第1負荷状態LC1に戻る、ステップ状の第1パターンSP1を含む。また、CPU11の負荷状態の標準パターンSP1,SP2は、たとえば、図4に示すように、第2負荷状態LC2から第1負荷状態LC1へ変化して第2負荷状態LC2に戻る、ステップ状の第2パターンSP2を含む。
【0034】
ここで、CPU11の第1負荷状態LC1は、たとえば、CPU11が走行制御処理、RAMチェック、および画像演算処理を実行していない状態である。また、CPU11の第2負荷状態LC2は、たとえば、CPU11が走行制御処理、RAMチェック、または画像演算処理の少なくとも一つを実行している状態である。
【0035】
第1パターンSP1における待機時間twは、たとえば、冷却機構14がない状態で、図3に示すように、正常なCPU11の負荷状態を第1パターンSP1で変化させた後に、破線で示す正常なCPU11の温度が低下して安定するまでの時間に設定されている。また、第2パターンSP2における待機時間twは、たとえば、冷却機構14がない状態で、図4に示すように、正常なCPUの負荷状態を第2パターンSP2で変化させた後に、破線で示す正常なCPU11の温度が上昇して安定するまでの時間に設定されている。
【0036】
次に、車両制御装置10は、たとえば、CPU11の異常検知部112によって、評価温度Teを取得する処理P5を実行する。この処理P5において、異常検知部112は、たとえば、標準パターンSP1,SP2が開始された時点S1から待機時間twが経過した時点S2において、温度センサ111によって検出された温度を取得して、評価温度Teとしてメモリ13に記憶させる。
【0037】
次に、車両制御装置10は、たとえば、CPU11の異常検知部112によって、図3図4に示すように、CPU11の標準温度Tsと評価温度Teとの温度差ΔTseを算出する処理P6を実行する。この処理P6において、異常検知部112は、たとえば、算出した温度差ΔTseをメモリ13に記憶させる。
【0038】
次に、車両制御装置10は、たとえば、CPU11の異常検知部112によって、図2に示す異常判定処理P7を実行する。この処理P7において、異常検知部112は、たとえば、メモリ13から温度差ΔTseと正常温度差ΔTnを取得して、温度差ΔTseが正常温度差ΔTn以下であるか否かを判定する。この処理P7において、異常検知部112が、温度差ΔTseは正常温度差ΔTn以下である(YES)と判定すると、CPU11は、CPU11が正常であると判断し、前述の車両制御処理P3を実行する。
【0039】
一方、異常判定処理P7において、異常検知部112が、温度差ΔTseは正常温度差ΔTn以下ではない(NO)、すなわち、温度差ΔTseは正常温度差ΔTnよりも大きい、と判定すると、異常検知部112は、CPU11の異常を判定する。次に、異常検知部112は、たとえば、異常を判別する処理P8を実行する。
【0040】
この処理P8において、CPU11の異常検知部112は、異常の原因がCPU11の異常発熱であるか、または、冷却機構14の放熱異常であるかを判別する。この処理P8において、CPU11の負荷状態の時間変化が、図3に示す第1パターンSP1または図4に示す第2パターンSP2と同等である場合、異常検知部112は、前述の異常判定処理P7で判定した異常が、CPU11の異常発熱であることを判別する。
【0041】
次に、車両制御装置10は、たとえば、CPU11の異常検知部112により、温度差ΔTseと正常温度差ΔTnとの差を算出する処理P9を実行する。次に、車両制御装置10は、たとえば、CPU11の異常検知部112により、CPU11による処理の制限を決定する処理P10を実行する。この処理P10において、異常検知部112は、たとえば、以下の表1に示すような判定基準に基づいて、CPU11による制御の制限を決定する。
【0042】
【表1】
【0043】
この処理P10において異常検知部112が使用する表1に示すような判定基準は、たとえば、メモリ13にあらかじめ記憶されている。具体的には、表1に示す例において、異常検知部112は、たとえば、温度差ΔTseと正常温度差ΔTnとの差が10[℃]以上かつ20[℃]未満の場合、車両制御処理を制限せず、車両1の運転者に対し、報知装置5を介してCPU11の異常発熱を含む異常を報知する。
【0044】
また、異常検知部112は、たとえば、温度差ΔTseと正常温度差ΔTnとの差の増加に応じて、処理負荷の低いものから高いものへ、順次、処理を制限していく。具体的には、異常検知部112は、たとえば、温度差ΔTseと正常温度差ΔTnとの差の増加に応じて、定速自動走行、先行車追従、ブレーキ制御、レーンキープの順に、車両制御処理を制限していく。
【0045】
また、異常検知部112は、たとえば、温度差ΔTseと正常温度差ΔTnとの差が40[℃]以上になると、すべての車両制御処理を停止する。また、異常検知部112は、たとえば、車両制御処理を制限またはすべて停止する場合、車両1の運転者に対し、逐次、報知装置5を介して制限または停止される車両制御処理を報知する。その後、車両制御装置10は、車両制御処理P3において、異常検知部112によって制限されていない車両制御処理を実行し、図2に示す処理フローを終了する。
【0046】
以下、本実施形態の車両制御装置10の作用を説明する。
【0047】
本実施形態の車両制御装置10は、前述のように、メモリ13と、CPU11と、そのCPU11に内蔵された温度センサ111と、CPU11を冷却する冷却機構14と、を備えている。メモリ13は、たとえば図3および図4に示すような標準パターンSP1,SP2、待機時間tw、および標準温度Tsと、図2に示すような正常温度差ΔTnとが記憶されている。標準パターンSP1,SP2は、CPU11の負荷状態の時間的な変化である。待機時間twは、標準パターンSP1,SP2の開始から異常検知部112で評価温度Teを取得するまで時間である。標準温度Tsは、正常なCPU11の負荷状態を標準パターンSP1,SP2で変化させて待機時間twが経過した時点のCPU11の温度である。正常温度差ΔTnは、CPU11と冷却機構14の少なくとも一方が正常である場合の標準温度Tsに対する温度差である。そして、CPU11は、CPU11の負荷状態をメモリ13に記憶させて監視する。さらに、CPU11は、CPU11の負荷状態が標準パターンSP1,SP2で変化した場合に、標準パターンSP1,SP2の開始から待機時間twが経過した時点S2の評価温度Teと標準温度Tsとの温度差ΔTseを算出する。そして、CPU11は、温度差ΔTseが正常温度差ΔTnよりも大きい場合に、異常を判定する。
【0048】
このような構成により、本実施形態の車両制御装置10は、CPU11に内蔵されている温度センサ111の他に温度センサを用いることなく、前述のように、たとえばCPU11の異常発熱などの異常を判定することが可能になる。したがって、本実施形態の車両制御装置10によれば、大型化、部品点数増加、およびコスト増加を抑制しつつ、CPU11の異常発熱を検出することが可能になる。
【0049】
また、本実施形態の車両制御装置10において、標準パターンSP1,SP2は、図3に示すような第1パターンSP1と、図4に示すような第2パターンSP2とを含む。第1パターンSP1は、第1負荷状態LC1からより高い第2負荷状態LC2へ変化して第1負荷状態LC1に戻るパターンである。第2パターンSP2は、第2負荷状態LC2から第1負荷状態LC1へ変化して第2負荷状態LC2に戻るパターンである。また、第1パターンSP1における待機時間twは、冷却機構14がない状態で正常なCPU11の負荷状態を第1パターンSP1で変化させた後にCPU11の温度が低下して安定するまでの時間に設定されている。また、第2パターンSP2における待機時間twは、冷却機構14がない状態で正常なCPU11の負荷状態を第2パターンSP2で変化させた後にCPU11の温度が上昇して安定するまでの時間に設定されている。そして、CPU11は、温度差ΔTseが正常温度差ΔTnよりも大きい場合に、CPU11の異常発熱を判定する。
【0050】
このような構成により、本実施形態の車両制御装置10は、温度差ΔTseが正常温度差ΔTnよりも大きいことに基づいて判定した異常が、CPU11の異常発熱と冷却機構14の放熱異常の少なくとも一方を含む場合に、CPU11の異常発熱を判別することができる。
【0051】
また、本実施形態の車両制御装置10において、CPU11は、処理負荷の異なる複数の処理を実行し、温度差ΔTseと正常温度差ΔTnとの差に応じて処理を制限する。このような構成により、本実施形態の車両制御装置10は、たとえば、定速自動走行、先行車追従、ブレーキ制御、レーンキープなどを、順次、制限することで、制限する処理を最小限にしつつ、CPU11の温度上昇を抑制して、CPU11の誤作動を防止することができる。
【0052】
また、本実施形態の車両制御装置10において、メモリ13は、前述の表1に示すような温度差ΔTseと正常温度差ΔTnとの差に応じたCPU11の処理の制限が記憶されている。また、CPU11は、温度差ΔTseと正常温度差ΔTnとの差に応じてCPU11の処理を制限する。このような構成により、本実施形態の車両制御装置10は、CPU11の温度上昇をより効果的に抑制して、CPU11の誤作動をより確実に防止して、車両1の安全性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の車両制御装置10において、CPU11は、CPU11の処理を制限する場合に、報知装置5を介してCPU11の処理の制限を報知する。このような構成により、本実施形態の車両制御装置10は、CPU11による車両制御処理の制限や停止を、車両1の運転者に知らせることができ、車両1の安全性をより向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態の車両制御装置10において、第2負荷状態LC2は、CPU11がRAMチェックまたは画像演算処理を実行している状態である。このような構成により、本実施形態の車両制御装置10は、第2負荷状態LC2は、CPU11がRAMチェックまたは画像演算処理を実行する際に、CPU11の異常発熱または冷却機構14の放熱異常を含む異常を検知することができる。
【0055】
また、本実施形態の車両制御装置10において、第1負荷状態LC1は、CPU11が走行制御処理、RAMチェック、および画像演算処理を実行していない状態である。このような構成により、本実施形態の車両制御装置10は、CPU11が走行制御処理、RAMチェック、または画像演算処理の少なくとも一つを実行する際に、CPU11の異常発熱または冷却機構14の放熱異常を含む異常を検知することができる。
【0056】
なお、本実施形態の車両制御装置10は、前述の構成に限定されない。たとえば、CPU12が異常検知部112を備える場合、CPU12によってCPU11の異常発熱または冷却機構14の放熱異常を含む異常を検知することができる。以下、前述の実施形態に係る車両制御装置10のいくつかの変形例を説明する。
【0057】
図5および図6は、車両制御装置10の変形例1に係るCPU11の温度変化を示すグラフである。図5および図6に示す例において、標準パターンSP1,SP2は、図3および図4に示す例と同様に、第1パターンSP1と第2パターンSP2とを含む。より具体的には、第1パターンSP1は、第1負荷状態LC1からより高い第2負荷状態LC2へ変化して第1負荷状態LC1に戻る。また、第2パターンSP2は、第2負荷状態LC2から第1負荷状態LC1へ変化して第2負荷状態LC2に戻る。一方、図5に示す例において、第1パターンSP1における待機時間twは、正常なCPU11が冷却機構14を介して正常に放熱可能な状態で、CPU11の負荷状態を第1パターンSP1で変化させたときに、CPU11の温度が上昇して最高温度Tmaxに達するまでの時間に設定されている。また、第2パターンSP2における待機時間twは、正常なCPU11が冷却機構14を介して正常に放熱可能な状態で、CPU11の負荷状態を第2パターンSP2で変化させたときに、CPU11の温度が低下して最低温度Tminに達するまでの時間に設定されている。
【0058】
この変形例1において、メモリ13は、CPU11の負荷状態の時間変化が図5に示す第1パターンSP1と同等である場合の標準温度Tsとして、前述の最高温度Tmaxが記憶されている。そして、CPU11は、評価温度Teとして、第1パターンSP1が第2負荷状態LC2から第1負荷状態LC1へ変化した時点S2のCPU11の温度を取得する。そして、CPU11は、評価温度Teと標準温度Tsとの温度差ΔTseが、正常温度差ΔTnよりも大きい場合に、CPU11の異常発熱または冷却機構14の放熱異常を含む異常を判定することができる。
【0059】
また、この変形例1において、メモリ13は、CPU11の負荷状態の時間変化が図6に示す第2パターンSP2と同等である場合の標準温度Tsとして、前述の最低温度Tminが記憶されている。そして、CPU11は、評価温度Teとして、第2パターンSP2が第1負荷状態LC1から第2負荷状態LC2へ変化した時点S2のCPU11の温度を取得する。そして、CPU11は、評価温度Teと標準温度Tsとの温度差ΔTseが、正常温度差ΔTnよりも大きい場合に、CPU11の異常発熱または冷却機構14の放熱異常を含む異常を判定することができる。
【0060】
したがって、図5および図6に示す変形例1の車両制御装置10によれば、前述の実施形態に係る車両制御装置10と同様に異常を判定することができるだけでなく、より短時間に異常を判定することが可能になる。なお、正常なCPU11が冷却機構14を介して正常に放熱可能な状態とは、冷却機構14が正常なCPU11に対して正常に配置され、設計された通りに放熱可能な状態を意味する。換言すると、冷却機構14が正常に放熱可能でない状態は、たとえば、冷却機構14の不適切な設置によって熱の伝達経路に何らかの障害が発生したり、冷却ファンが故障したりするなど、CPU11の放熱が阻害されている状態である。
【0061】
図7および図8は、車両制御装置10の変形例2に係るCPU11の温度変化を示すグラフである。図7および図8に示す例において、標準パターンSP1,SP2は、図3および図4に示す例と同様に、第1パターンSP1と第2パターンSP2とを含む。より具体的には、第1パターンSP1は、第1負荷状態LC1からより高い第2負荷状態LC2へ変化して、その状態を維持する。また、第2パターンSP2は、第2負荷状態LC2から第1負荷状態LC1へ変化して、その状態を維持する。第1パターンSP1における待機時間twは、正常なCPU11が冷却機構14を介して正常に放熱可能な状態で、CPU11の負荷状態を第1パターンSP1で変化させたときに、CPU11の温度が上昇して安定するまでの時間に設定されている。第2パターンSP2における待機時間twは、正常なCPU11が冷却機構14を介して正常に放熱可能な状態で、CPU11の負荷状態を第2パターンSP2で変化させたときに、CPU11の温度が低下して安定するまでの時間に設定されている。
【0062】
この変形例2において、CPU11は、評価温度Teとして、CPU11の負荷状態が標準パターンSP1,SP2で変化して、CPU11の温度が安定する時点S2のCPU11の温度を取得する。また、メモリ13には、正常なCPU11の負荷状態を標準パターンSP1,SP2で変化させて待機時間twが経過した時点のCPU11の標準温度Tsがあらかじめ記憶されている。CPU11は、評価温度Teと標準温度Tsとの温度差ΔTseが、正常温度差ΔTnよりも大きい場合に、CPU11の異常発熱または冷却機構14の放熱異常を含む異常を判定することができる。この変形例2の車両制御装置10によれば、前述の実施形態の車両制御装置10と同様の効果を奏することができるだけでなく、より単純な標準パターンSP1,SP2を使用してCPU11の異常発熱や冷却機構14の放熱異常を含む異常を判定することができる。
【0063】
この変形例2において、第1パターンSP1における第2負荷状態LC2は、たとえば、CPU11が全領域RAMチェックまたは定速自動走行制御を実行している状態である。これにより、車両制御装置10は、CPU11による全領域RAMチェックまたは定速自動走行制御の実行時にCPU11の異常発熱または冷却機構14の放熱異常を検知することができる。また、第2パターンSP2における第2負荷状態LC2は、たとえば、CPU11が車両制御を実行している状態である。これにより、車両制御装置10は、CPU11による車両制御の実行時にCPU11の異常発熱または冷却機構14の放熱異常を検知することができる。
【0064】
図9および図10は、車両制御装置10の変形例3に係るCPU11の温度変化を示すグラフである。図9および図10に示す例において、標準パターンSP1,SP2は、図3および図4に示す例と同様に、第1パターンSP1と第2パターンSP2とを含む。より具体的には、第1パターンSP1は、第1負荷状態LC1からより高い第2負荷状態LC2へ変化して第1負荷状態LC1に戻る。また、第2パターンSP2は、第2負荷状態LC2から第1負荷状態LC1へ変化して第2負荷状態LC2に戻る。
【0065】
この変形例3では、第1パターンSP1における待機時間twは、第1待機時間tw1と第2待機時間tw2とを含む。第1待機時間tw1は、正常なCPU11が冷却機構14を介して正常に放熱可能な状態で、CPU11の負荷状態を第1パターンSP1で変化させたときに、CPU11の温度が上昇して最高温度に達するまでの時間である。第2待機時間tw2は、CPU11の負荷状態を第1パターンSP1で変化させたときに、CPU11の温度が上昇して最高温度に達し、さらにCPU11の温度が低下して安定するまでの時間である。
【0066】
また、この変形例3では、第2パターンSP2における待機時間twは、第3待機時間tw3と第4待機時間tw4とを含む。第3待機時間tw3は、正常なCPU11が冷却機構14を介して正常に放熱可能な状態で、CPU11の負荷状態を第2パターンSP2で変化させたときに、CPU11の温度が低下して最低温度に達するまでの時間である。第4待機時間tw4は、正常なCPU11が冷却機構14を介して正常に放熱可能な状態で、CPU11の負荷状態を第2パターンSP2で変化させたときに、CPU11の温度が低下して最低温度に達し、さらにCPU11の温度が上昇して安定するまでの時間である。
【0067】
この変形例3では、CPU11は、第1待機時間tw1における標準温度Ts1と評価温度Te1の温度差ΔTse1が正常温度差ΔTn1よりも大きく、かつ、第2待機時間tw2における温度差ΔTse2が正常温度差ΔTn2と等しいか正常温度差ΔTn2よりも小さい場合に、CPU11の異常発熱を判定する。さらに、CPU11は、第1待機時間tw1における温度差ΔTse1が正常温度差ΔTn1と等しいか正常温度差ΔTn1よりも小さく、かつ、第2待機時間tw2における温度差ΔTse2が正常温度差ΔTn2よりも大きい場合に、冷却機構14の放熱異常を判定する。
【0068】
また、この変形例3では、CPU11は、第3待機時間tw3における温度差ΔTse3が正常温度差ΔTn3よりも大きく、かつ、第4待機時間tw4における温度差ΔTse4が正常温度差ΔTn4と等しいか正常温度差ΔTn4よりも小さい場合に、CPU11の異常発熱を判定する。さらに、CPU11は、第3待機時間tw3における温度差ΔTse3が正常温度差ΔTn3と等しいか温度差ΔTse3よりも小さく、かつ、第4待機時間tw4における温度差ΔTse4が正常温度差ΔTn4よりも大きい場合に、冷却機構14の放熱異常を判定する。
【0069】
この変形例3の車両制御装置10によれば、前述の実施形態に係る車両制御装置10と同様に、CPU11の異常発熱と冷却機構14の放熱異常を判別することができる。以上説明したように、本実施形態およびその変形例によれば、大型化、部品点数増加、コスト増加を抑制しつつ、CPU11の異常発熱または冷却機構14の放熱異常を検出することが可能な車両制御装置10を提供することができる。
【0070】
以上、図面を用いて本開示に係る車両制御装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
5 報知装置
10 車両制御装置
11 CPU
111 温度センサ
13 メモリ
14 冷却機構
LC1 第1負荷状態
LC2 第2負荷状態
SP1 第1パターン(標準パターン)
SP2 第2パターン(標準パターン)
Te 評価温度
Ts 標準温度
tw 待機時間
tw1 第1待機時間
tw2 第2待機時間
tw3 第3待機時間
tw4 第4待機時間
ΔTn 正常温度差
ΔTn1 正常温度差
ΔTn2 正常温度差
ΔTn3 正常温度差
ΔTn4 正常温度差
ΔTse 温度差
ΔTse1 温度差
ΔTse2 温度差
ΔTse3 温度差
ΔTse4 温度差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10