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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A41D13/002 105
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021015497
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118779
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 憲
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3226128(JP,U)
【文献】特開2020-70502(JP,A)
【文献】特開2020-125574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/002-13/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表地を有する衣服であって、
前記表地に設けられ、前記表地の外側に吸気口を配置し、前記表地の内側に排気口を配置するように送風装置が着脱可能な取付部と、
前記表地に設けられ、前記表地の外側と前記表地の内側とを接続する第1開口部と、
前記表地に取り付けられた案内部であって、前記衣服の着用者の顔に向けて空気を排出する第2開口部を有し、前記表地の内側から前記第1開口部を通って排出される空気を前記第2開口部に向けて案内する、案内部と、を備え、
前記第2開口部は、前記着用者の胸部よりも上であって前記着用者の首よりも下に位置するように、前記表地に配置されている、衣服。
【請求項2】
少なくとも表地を有する衣服であって、
前記表地に設けられ、前記表地の外側に吸気口を配置し、前記表地の内側に排気口を配置するように送風装置が着脱可能な取付部と、
前記表地に設けられ、前記表地の外側と前記表地の内側とを接続する第1開口部と、
前記表地に取り付けられた案内部であって、前記衣服の着用者の顔に向けて空気を排出する第2開口部を有し、前記表地の内側から前記第1開口部を通って排出される空気を前記第2開口部に向けて案内する、案内部と、を備え、
前記第1開口部は、前記表地の前身頃に配置されている、衣服。
【請求項3】
少なくとも表地を有する衣服であって、
前記表地に設けられ、前記表地の外側に吸気口を配置し、前記表地の内側に排気口を配置するように送風装置が着脱可能な取付部と、
前記表地に設けられ、前記表地の外側と前記表地の内側とを接続する第1開口部と、
前記表地に取り付けられた案内部であって、前記衣服の着用者の顔に向けて空気を排出する第2開口部を有し、前記表地の内側から前記第1開口部を通って排出される空気を前記第2開口部に向けて案内する、案内部と、を備え、
前記案内部は、前記表地の外表面に生地を袋状に取付けることで形成されており、ポケットとして機能する、衣服。
【請求項4】
請求項2に記載の衣服であって、
前記第2開口部は、前記前身頃に配置され、かつ、前記第1開口部よりも前記着用者の顔に近い位置に配置されている、衣服。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の衣服であって、
前記第2開口部は、前記表地の前中心に向けて下方に傾斜するように前記表地に配置されている、衣服。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の衣服であって、
前記案内部は、前記第2開口部の大きさを調整可能な調整部を備える、衣服。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の衣服であって、
前記案内部は、前記第2開口部の形状を保持するための形状保持部を備える、衣服。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の衣服であって、更に、
前記第2開口部の少なくとも一部を開閉可能な開閉部を備える、衣服。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の衣服であって、
前記表地の内側に取り付けられた裏地を更に備え、
前記取付部は、前記表地の外側に前記送風装置の前記吸気口を配置し、前記表地と前記裏地との間に前記排気口を配置するように、前記送風装置が着脱可能である、衣服。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の衣服であって、
前記第1開口部は、空気の流通が可能なメッシュ生地で覆われている、衣服。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の衣服であって、
前記第2開口部は、前記衣服の着用者の顔を向いた開口である、衣服。
【請求項12】
少なくとも表地を有する衣服であって、
前記表地に設けられ、前記表地の外側に吸気口を配置し、前記表地の内側に排気口を配置するように送風装置が着脱可能な取付部と、
前記表地に設けられ、前記表地の外側と前記表地の内側とを接続する第1開口部と、
前記表地に取り付けられた案内部であって、前記衣服の着用者の顔に向けて空気を排出する第2開口部を有し、前記表地の内側から前記第1開口部を通って排出される空気を前記第2開口部に向けて案内する、案内部と、を備え、
前記表地の内側に取り付けられた裏地を更に有し、
前記取付部は、前記表地の外側に前記送風装置の前記吸気口を配置し、前記表地と前記裏地との間に前記排気口を配置するように、前記送風装置が着脱可能であり、
前記案内部は、前記表地の外表面に生地を袋状に取り付けることで形成され、ポケットとして機能するものであり、更に、
前記第1開口部が底部付近に位置するように前記表地に縫い付けられ、上端が前記第2開口部を規定する、ポケット本体と、
前記第2開口部付近の前記ポケット本体と前記表地とを留め付け可能に構成され、前記第2開口部の少なくとも一部を開閉するための開閉部と、
前記ポケット本体のうち前記第2開口部の縁に設けられ、前記第2開口部の形状を保持するための形状保持部と、
前記ポケット本体の一部を折り込むことで形成され、前記第2開口部の大きさを調整可能に構成されたマチ部と、を備える、衣服。
【請求項13】
少なくとも表地を有する衣服であって、
前記表地に設けられ、前記表地の外側に吸気口を配置し、前記表地の内側に排気口を配置するように送風装置が着脱可能な取付部と、
前記表地に設けられ、前記表地の外側と前記表地の内側とを接続する第1開口部と、
前記表地に取り付けられた案内部であって、前記衣服の着用者の頭部に向けて空気を排出する第2開口部を有し、前記表地の内側から前記第1開口部を通って排出される空気を前記第2開口部に向けて案内する、案内部と、を備え、
前記第1開口部は、前記表地の前身頃に配置されている、衣服。
【請求項14】
少なくとも表地を有する衣服であって、
前記表地に設けられ、前記表地の外側に吸気口を配置し、前記表地の内側に排気口を配置するように送風装置が着脱可能な取付部と、
前記表地に設けられ、前記表地の外側と前記表地の内側とを接続する第1開口部と、
前記表地に取り付けられた案内部であって、前記衣服の着用者の頭部に向けて空気を排出する第2開口部を有し、前記表地の内側から前記第1開口部を通って排出される空気を前記第2開口部に向けて案内する、案内部と、を備え、
前記案内部は、前記表地の外表面に生地を袋状に取付けることで形成されており、ポケットとして機能する、衣服。
【請求項15】
少なくとも表地を有する衣服であって、
前記表地に設けられ、前記表地の外側に吸気口を配置し、前記表地の内側に排気口を配置するように送風装置が着脱可能な取付部と、
前記表地に設けられ、前記表地の外側と前記表地の内側とを接続する第1開口部と、
前記表地に取り付けられた案内部であって、前記衣服の着用者の頭部に向けて空気を排出する第2開口部を有し、前記表地の内側から前記第1開口部を通って排出される空気を前記第2開口部に向けて案内する、案内部と、を備え、
前記表地の内側に取り付けられた裏地を更に有し、
前記取付部は、前記表地の外側に前記送風装置の前記吸気口を配置し、前記表地と前記裏地との間に前記排気口を配置するように、前記送風装置が着脱可能であり、
前記案内部は、前記表地の外表面に生地を袋状に取り付けることで形成され、ポケットとして機能するものであり、更に、
前記第1開口部が底部付近に位置するように前記表地に縫い付けられ、上端が前記第2開口部を規定する、ポケット本体と、
前記第2開口部付近の前記ポケット本体と前記表地とを留め付け可能に構成され、前記第2開口部の少なくとも一部を開閉するための開閉部と、
前記ポケット本体のうち前記第2開口部の縁に設けられ、前記第2開口部の形状を保持するための形状保持部と、
前記ポケット本体の一部を折り込むことで形成され、前記第2開口部の大きさを調整可能に構成されたマチ部と、を備える、衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風装置を着脱可能な衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
送風装置が着脱可能な衣服が知られている。このような衣服では、送風装置によって衣服内に空気が送出されることで、衣服の着用者の身体を冷却することができる。特許文献1には、送風装置が着脱可能な衣服として、服地部に設けられた切込み部の開口の度合いを調節可能な衣服が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-132040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の衣服では、切込み部の開口の度合いを調節することで身体の各部位に流れる空気の量を調節し、着用者にとって効果的な冷却を図っている。しかし、送風装置が着脱可能な衣服において、着用者がより冷感を得ることが可能な技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の第一の形態によれば、少なくとも表地を有する衣服が提供される。この衣服は、取付部と、第1開口部と、第2開口部を有する案内部と、を備える。前記第2開口部は、着用者の顔に向けて空気を排出するように設けられている。前記取付部は、送風装置が着脱可能に構成されている。前記送風装置は、前記表地の外側に吸気口を配置し、前記表地の内側に排気口を配置するように前記取付部に着脱され得る。前記第1開口部は、前記表地に配置されている。前記第1開口部は、前記表地の外側と前記表地の内側とを接続するように設けられている。前記案内部は、前記表地に取り付けられている。前記案内部は、前記第1開口部を通って排出される空気を前記第2開口部に向けて案内するように構成されている。
この形態の衣服によれば、送風装置によって表地の内側に送出された空気は、第1開口部を通り、着用者の顔に向けて空気を排出するように設けられた第2開口部から排出される。そのため、空気を着用者の顔へ向けて送出することができるので、着用者の冷感を増加させることができる。
(2)上記形態において、前記第2開口部は、前記着用者の胸部よりも上であって前記着用者の首よりも下に位置するように、前記表地に配置されていてもよい。
この形態によれば、第2開口部が着用者の胸部よりも下や着用者の首よりも上に位置する構成と比較して、第2開口部から排出される空気は、着用者の顔により届きやすい。そのため、着用者の冷感をより増加させることができる。
(3)上記形態において、前記第1開口部は、前記表地の前身頃に配置されていてもよい。
この形態によれば、第2開口部は着用者の顔に向けて空気を排出するように設けられており、第1開口部は前身頃に配置されているので、第1開口部が後身頃に配置されている構成と比較して、案内部の形状を簡易にすることができる。
(4)上記形態において、前記第2開口部は、前記前身頃に配置されていてもよい。また、前記第2開口部は、前記第1開口部よりも前記着用者の顔に近い位置に配置されていてもよい。
この形態によれば、第2開口部が第1開口部よりも着用者の顔に遠い位置に配置されている構成と比較して、案内部の形状を簡易にすることができる。
(5)上記形態において、前記第2開口部は、前記表地の前中心に向けて下方に傾斜するように前記表地に配置されていてもよい。
この形態によれば、第2開口部から着用者の顔の中心付近に向けて、空気を排出することができる。そのため、第2開口部が表地の前中心に向けて下方に傾斜していない構成と比較して、空気を着用者の顔に集中して送出することができる。したがって、着用者の冷感をよりいっそう増加させることができる。
(6)上記形態において、前記案内部は、前記第2開口部の大きさを調整可能に構成された調整部を備えていてもよい。
この形態によれば、着用者は、調整部を用いて第2開口部の大きさを所望の大きさに調整することができる。そのため、例えば、着用者の顔に送出される空気の強さや量を、所望の強さや量に調整することができる。
(7)上記形態において、前記案内部は、前記第2開口部の形状を保持するように構成された、形状保持部を備えていてもよい。
この形態によれば、形状保持部によって第2開口部の形状を保持することができるので、第2開口部から排出される空気の強さ、量、方向等の少なくとも1つが変化することを抑制することができる。
(8)上記形態において、前記衣服は、更に、前記第2開口部の少なくとも一部を開閉可能に構成された開閉部を備えていてもよい。
この形態によれば、着用者は、開閉部によって第2開口部の少なくとも一部を閉じたり開いたりすることができる。そのため、例えば、開閉部により第2開口部の少なくとも一部を閉じることで顔に送出される空気を減じたり、第2開口部を開くことで、顔に空気を充分に送出させたりすることができる。
(9)上記形態において、前記衣服は、更に、前記表地の内側に取り付けられた裏地を備えていてもよい。前記取付部は、前記表地の外側に前記送風装置の前記吸気口を配置し、前記表地と前記裏地との間に前記排気口を配置するように、前記送風装置が着脱可能に構成されていてもよい。
この形態によれば、空気は、吸気口から表地の裏表面と裏地との間に送出されるので、表地と裏地との間で流動する空気によって、裏地によって吸収された汗を効率的に蒸発させ、冷感を高めることができる。
(10)上記形態において、前記第1開口部は、空気の流通が可能なメッシュ生地で覆われていてもよい。
この形態によれば、第1開口部は空気の流通が可能なメッシュ生地で覆われているので、第1開口部から表地の内側へ物品が落下することを抑制することができる。
(11)上記形態において、前記案内部は、前記表地の外表面に生地を袋状に取付けることで形成されており、ポケットとして機能するように構成されていてもよい。
この形態によれば、案内部に、顔に向けて空気を送出して着用者の冷感を高めるための機能と、ポケットとしての機能とを発揮させることができる。また、ポケットと、案内部とを別々に設ける構成と比較して、衣服の意匠性を向上させることができる。
(12)上記形態において、前記第2開口部は、前記衣服の着用者の顔を向いた開口であってもよい。
この形態によれば、空気を着用者の顔へ向けて送出することができるので、着用者の冷感を増加させることができる。
(13)上記形態において、前記衣服は、前記表地の内側に取り付けられた裏地を更に備えていてもよい。前記取付部は、前記表地の外側に前記送風装置の前記吸気口を配置し、前記表地と前記裏地との間に前記排気口を配置するように、前記送風装置が着脱可能に構成されていてもよい。前記案内部は、前記表地の外表面に生地を袋状に取り付けることで形成され、ポケットとして機能するものであってもよい。前記ポケットは、更に、ポケット本体と、開閉部と、形状保持部と、マチ部と、を備えていてもよい。前記ポケット本体は、前記第1開口部が底部付近に位置するように前記表地に縫い付けられ、上端が前記第2開口部を規定するように構成されていてもよい。前記開閉部は、前記第2開口部付近の前記ポケット本体と前記表地とを留め付け可能に構成され、前記第2開口部の少なくとも一部を開閉可能に構成されていてもよい。前記形状保持部は、前記ポケット本体のうち前記第2開口部の縁に設けられ、前記第2開口部の形状を保持するように構成されていてもよい。前記マチ部は、前記ポケット本体の一部を折り込むことで形成され、前記第2開口部の大きさを調整可能に構成されていてもよい。
この形態の衣服によれば、送風装置によって表地の内側に送出された空気は、第1開口部から排出された後、第2開口部から着用者の顔へ向けて排出される。そのため、着用者の冷感を増加させることができる。
(14)本開示の第二の形態によれば、少なくとも表地を有する衣服が提供される。この衣服は、取付部と、第1開口部と、第2開口部を有する案内部と、を備える。前記第2開口部は、着用者の頭部に向けて空気を排出するように設けられている。前記取付部は、送風装置が着脱可能に構成されている。前記送風装置は、前記表地の外側に吸気口を配置し、前記表地の内側に排気口を配置するように前記取付部に着脱され得る。前記第1開口部は、前記表地に配置されている。前記第1開口部は、前記表地の外側と前記表地の内側とを接続するように設けられている。前記案内部は、前記表地に取り付けられている。前記案内部は、前記第1開口部を通って排出される空気を前記第2開口部に向けて案内するように構成されている。
この形態の衣服によれば、送風装置によって表地の内側に送出された空気は、第1開口部を通って第2開口部から排出される。そのため、空気を着用者の頭部へ向けて送出することができるので、着用者の冷感を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ファンユニットが取り付けられた第1実施形態の衣服を、後側(背面側)からみたときの説明図である。
図2】前を開いた状態の上着を前側(裏地側)からみた説明図である。
図3】ファンユニットが取り付けられ、使用者によって着用された状態の上着を、前側(前面側)からみたときの説明図である。
図4】上着に取り付けられたファンユニットの断面を示す説明図である。
図5】第2実施形態の衣服を前側(前面側)からみたときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
<上着の概略構成>
図1図4を参照して、第1実施形態に係る衣服である上着1について説明する。上着1は、通気衣服、空調衣服、冷却衣服などとも呼ばれる衣服の一例であり、ファンユニット8を着脱可能に構成されている。なお、以下の説明では、便宜上、使用者によって着用されたときの方向を基準として、上着1の方向を規定する。つまり、使用者の頭側が上側、足側が下側、右手側が右側、左手側が左側、身体の前面側が前側、背面側が後側である。
【0009】
上着1は、表地2と裏地3とを備える。表地2と裏地3とは、上着1の服地を構成する。ファンユニット8は、吸気口860及び排気口880が表地2の外側(つまり、空気に曝される側)と、表地2の内側(裏地3側、つまり着用者の身体側)とに、それぞれ配置された状態で、表地2に取り付けられる。使用者が上着1を着用した状態でファンユニット8による送風が行われると、吸気口860から吸い込まれた空気は、排気口880を介して表地2と裏地3との間に送出され、表地2と裏地3の間に形成された内部空間10(図4参照)内を流動する。これにより裏地3が膨らみ、使用者の身体(肌着を着用した状態を含む)に接触して、汗を吸収する。そして、内部空間10を流動する空気がこの汗を蒸発させることで熱を奪い、着用者に冷感を与える。また、空気は、裏地3を通して内部空間10から流出し、身体全体の放熱を促進することによっても着用者に冷感を与える。
【0010】
<上着の詳細構成>
図1から図3に示すように、上着1は、前開きの長袖の上衣として構成されている。表地2は、着用者の身体の背面部を覆う後身頃21と、前面部を覆う前身頃23と、腕を覆う袖25とを備える。図3に示すように、表地2の前身頃23には、第1開口部41と、第1開口部41を内部に配置したポケット40とが設けられている。第1開口部41及びポケット40については、詳細を後述する。
【0011】
図1に示すように、後身頃21は、2つのファンユニット8を着脱可能に構成されている。本実施形態では、後身頃21は、下部の2箇所に、ファンユニット8が取り付けられる取付け開口211を有する。なお、取付け開口211は、ファンユニット8のハウジング84の筒状部85(図4参照)の径と概ね同径に形成されている。以下、取付け開口211の周縁部を、ファン取付部212ともいう。本実施形態において、ファン取付部212は、ファンユニット8を安定して取り付け可能とするために、補強材によって補強されている。
【0012】
図2及び図3に示すように、上着1の前中心には、スライドファスナ231が位置している。前身頃23は、左身頃と右身頃とが一対のスライドファスナ231によって接続(開閉)可能とされている。また、図2に示すように、表地2の裾は、引き紐29を通した状態で、筒状に縫い止められている。着用者は、適宜、引き紐29を引っ張ってストッパで留めることで、裾の絞り具合を調節することができる。また、袖25の袖口は一部がゴムで伸縮自在とされており、更に、面ファスナ付きのストラップ251で、袖口の絞り具合が調整可能とされている。
【0013】
図2に示すように、裏地3は、表地2の後身頃21と前身頃23全体とを覆うように、縁部30の全体が表地2に縫い付けられている。袖25には裏地3は取り付けられていない。
【0014】
裏地3のうち、後身頃21を覆う部分の下端部には、縁部30に沿って、直線状に切り込まれた開口301が形成されている。開口301は、スライドファスナ302により開閉可能とされている。ファンユニット8をファン取付部212に着脱する場合には、スライドファスナ302が開けられ、開口301を介して着脱作業が行われる。一方、上着1を着用してファンユニット8による送風が行われる場合には、スライドファスナ302は閉じられた状態とされる。これにより、腰の周囲で内部空間10から空気が漏れ出ることが防止される。
【0015】
裏地3のうち、右前身頃を覆う部分には、スナップボタンによって留め付け可能なフラップを有するポケット304が設けられている。ポケット304には、バッテリホルダ96が収容可能である。更に、裏地3のうち、2つのファン取付部212に対向する部分の下側には、夫々、ファンユニット8と、バッテリホルダ96とを接続するためのケーブル91を挿通可能な開口306が設けられている。なお、開口306の周囲には、ケーブル91が挿通されている場合にはその外周部を覆うとともに、ケーブル91が挿通されていない場合に開口306を実質的に塞ぐべく、筒状のカバーが設けられている。詳細な図示は省略するが、ポケット304に収容されるバッテリホルダ96は、充電式のバッテリを内蔵するとともに、ファンユニット8のモータ82の駆動を制御するコントローラと、ファンユニット8の駆動開始及び停止の指示、風量(モータ82の回転数)の設定等を入力するための操作ボタンを備えている。
【0016】
本実施形態において、表地2には、内部空間10から外部へと空気が流出するのを抑制するために、通気度の低い生地が採用されている。一方、裏地3には、表地2よりも通気度が高い生地が採用されている。本実施形態では、裏地3は、通気度が互いに異なる複数の領域を有する。具体的には、裏地3は、主領域31と、排気領域32とを有する。主領域31の通気度は、表地2の通気度よりは高いものの、比較的低く設定されている。主領域31の通気度は、内部空間10に送出された空気の圧力をある程度高く維持でき、且つ、内部空間10の空気が裏地3を通過して緩やかに着用者の身体側へ流出することが可能な程度に設定されている。排気領域32の通気度は、主領域31の通気度よりも高く設定されている。排気領域32の通気度は、内部空間10の空気が着用者の身体側へ積極的に流出することが可能な程度に設定されている。本実施形態では、排気領域32には、主領域31よりも大幅に通気度の高いメッシュ生地が採用されている。
【0017】
主領域31は、裏地3の面積の大部分を占めており、ファンユニット8による送風に伴って膨らみ、着用者の身体に接触可能な領域を含む。排気領域32は、着用者が特に冷感を得やすく、熱がこもった身体の冷却効果が高いとされる部位(皮膚のすぐ下に太い血管が通っている部位)に対応して選択的に設けられている。本実施形態では、排気領域32は、着用時に、着用者の首筋、両脇の下、両腕の付け根の背中側の部分、及び胸部(特に、鳩尾およびその上部)に夫々対向する領域に設けられている。なお、排気領域32は、縁部30に隣接して設けられている。
【0018】
<ファンユニットの構成>
図4に示すように、ファンユニット8は、本体部81と、本体部81とは別体として形成され、本体部81に着脱可能なリング部材89とを備えている。
【0019】
本体部81は、主に、モータ82と、ファン83と、モータ82及びファン83を収容するハウジング84とを備える。モータ82及びファン83は、ハウジング84内に同軸状に配置されている。本実施形態では、モータ82として、ブラシを有する直流モータが採用されている。ファン83は、複数の羽根831を備えた軸流ファンとして構成されている。ファン83は、モータ82の駆動に伴って、回転軸A1周りにモータシャフトと一体的に回転される。
【0020】
ハウジング84は、リング部材89が取り付けられる筒状部85と、吸気口860を有する吸気部86と、吸気部86の周囲に設けられたフランジ部87と、排気口880を有する排気部88とを含む。筒状部85は円筒状に形成された部分であって、モータ82及びファン83と同軸状に配置されている。詳細な図示は省略するが、筒状部85の外周面には、リング部材89の内周面に形成された雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部が形成されている。吸気部86は、筒状部85の2つの開口端のうちファン83の吸気側の端を覆うように配置されている。吸気口860は、吸気部86を回転軸A1方向に貫通している。フランジ部87は、吸気部86の外周から径方向外側に突出するように設けられている。排気部88は、全体としては円形ドーム状に形成され、筒状部85の2つの開口端のうちファン83の排気側の端を覆うように配置されている。排気口880は、排気部88を回転軸A1方向及び回転軸A1に交差する方向に貫通している。
【0021】
リング部材89は、主に、筒状部891と、フランジ部893とを備える。筒状部891は、本体部81の筒状部85の外周に着脱可能に構成された短尺状の円筒体として形成されている。詳細な図示は省略するが、本実施形態では、筒状部891の内周面には、雌ネジ部が形成されている。筒状部85の外周面に形成された雄ネジ部に対してこの雌ネジ部が螺合されることで、リング部材89が本体部81に対して同軸状に取付けられる。フランジ部893は、筒状部85の軸方向における一端部から径方向外側に突出するように設けられている。フランジ部893の外径は、本体部81のフランジ部87の外径と概ね同一に設定されている。
【0022】
以上のように構成されたファンユニット8は、本体部81の吸気部86及び排気部88が、表地2の外側及び裏地3側に夫々配置された状態で、ファン取付部212に取り付けられる。具体的には、使用者はまず、リング部材89が取り外された状態の本体部81の一部を、上着1の取付け開口211に挿入する。より詳細には、本体部81のフランジ部87をファン取付部212の外側に配置し、筒状部85と排気部88を、取付け開口211から上着1の内側へ挿入する。これにより、フランジ部87の前側にファン取付部212(表地2)が配置された状態となる。更に、使用者は、裏地3のスライドファスナ302(図2参照)を開け、開口301を通してリング部材89を本体部81に取り付ける。具体的には、外側のフランジ部87と内側のフランジ部893によってファン取付部212(表地2)が挟持される位置まで、リング部材89(筒状部891)を本体部81(筒状部85)に螺合させる。このようにしてファンユニット8が取付けられると、排気口880は、裏地3に対向するように、表地2と裏地3の間(内部空間10)に配置される。
【0023】
その後、図2に示すように、開口301を通してケーブル91のコネクタがファンユニット8に接続される。また、ファンユニット8は、ケーブル91を介して、バッテリホルダ96に電気的に接続される。
【0024】
以下、上着1とファンユニット8による送風との関係について説明する。本実施形態では、上述のように、ファンユニット8の吸気口860は表地2の外側に配置され、排気口880は表地2と裏地3との間に配置される。モータ82が駆動され、ファン83が回転されると、吸引された空気は、吸気口860を通ってハウジング84内へ流入する。流入した空気は、排気口880を通って前方及び回転軸A1に交差する方向に流出する。つまり、表地2と裏地3の間の内部空間10に空気が送出される。こうすることで、内部空間10の圧力を大気圧よりも上昇させて裏地3を表地2から離れる方向に膨らませ(つまり、表地2と裏地3との間の距離を増大させ)、裏地3の少なくとも一部を着用者の身体に接触させて汗を吸収させ、内部空間10で流動する空気によって、この汗を蒸発させることができる。
【0025】
また、裏地3は、主領域31よりも通気度の高い排気領域32を有する。特に、本実施形態では、排気領域32の通気度は主領域31よりも大幅に高いため、内部空間10の空気は、排気領域32から優先的に流出する。そのため、排気領域32から流出した空気が、夫々、首筋、両脇の下、及び胸部(鳩尾およびその上部)に直接当たることで、着用者に冷感を与えるとともに、熱がこもった身体を効果的に冷却することができる。更に、主領域31は、ある程度の空気の通過を許容する生地で構成されているため、裏地3のうち、着用者の身体に密着していない領域を通過する空気によって身体の放熱を促進することによっても、着用者に冷感を与えることができる。
【0026】
本実施形態の上着1は、更に、以下で説明する第1開口部41とポケット40とを備えることにより、ファンユニット8により送風された空気を、着用者の顔に向けて送出することができる。
【0027】
<第1開口部及びポケットの構成>
以下、図2及び図3を参照して、第1開口部41及びポケット40について説明する。第1開口部41は、表地2に設けられた開口である。第1開口部41は、表地2の外側の外部空間と、表地2の内側の内部空間10とを接続している。そのため、ファンユニット8により表地2と裏地3との間の内部空間10に送出された空気は、内部空間10で流動するとともに、第1開口部41から表地2の外部へと送出される。
【0028】
本実施形態では、第1開口部41は、前身頃23における左身頃と右身頃とにそれぞれ設けられている。また、第1開口部41は、着用者の胸部付近に位置している。更に、第1開口部41は、メッシュ生地49で覆われている。本実施形態では、メッシュ生地49として、排気領域32と同じ生地が採用されている。
【0029】
ポケット40は、前身頃23における左身頃と右身頃とにそれぞれ設けられている。ポケット40は、第1開口部41から送出される空気を、着用者の顔に向けて送出するように構成されている。ポケット40は、空気を着用者の顔に向けて案内する案内部として機能する。本実施形態では、ポケット40は、図3に示すように、主に、マチ部44を備えるポケット本体43と、第2開口部42とを備える。ポケット40は、更に、スナップボタン45と、形状保持部46とを備える。
【0030】
ポケット本体43は、表地2の外表面に袋状に縫い付けられた生地である。図4に示すように、ポケット本体43の内側には、第1開口部41が位置している。ポケット本体43は、第1開口部41を覆うように、表地2に縫い付けられている。本実施形態では、ポケット本体43は、第1開口部41がポケット40(ポケット本体43)の底部付近に位置するように、表地2に縫い付けられている。また、本実施形態では、ポケット本体43には、表地2と同じ生地(つまり、通気度が比較的低い生地)が採用されている。
【0031】
第2開口部42は、ポケット本体43の上端と表地2の外表面とによって規定され、ポケット40の開口として機能する部位である。第2開口部42は、着用者の顔へ向けて空気を排出するように設けられている。第2開口部42は、着用者の顔を向いて開口している。つまり、ポケット40は、着用者の顔側に開口している。また、第2開口部42は、第1開口部41よりも上側に位置している。本実施形態では、第2開口部42は、上着1の着用者の胸部より上であって首よりも下に位置している。更に、第2開口部42は、前中心に向かって下方に傾斜している。
【0032】
マチ部44は、ポケット本体43の左端部と右端部に折り込みを設けることで形成された部位である。そのため、本実施形態のポケット40は、一対のマチ部44を備えている。着用者は、マチ部44を用いて、第2開口部42の大きさを調整することができる。例えば、着用者は、ポケット本体43を表地2から離れる方向に引っ張ることでマチ部44を伸ばして第2開口部42を大きくしたり、マチ部44を表地2に近づけることで第2開口部42を小さくしたりすることができる。マチ部44は、第2開口部42の大きさを調整する調整部として機能する。
【0033】
スナップボタン45は、第2開口部42付近のポケット本体43と表地2とに配置されている。本実施形態では、スナップボタン45は、相互に結合することで第2開口部42の開口の中心付近を閉じるように、ポケット本体43と表地2とに配置されている。スナップボタン45は、ポケット40の第2開口部42の一部を開閉するための開閉部として機能する。
【0034】
形状保持部46は、ポケット本体43のうち第2開口部42の縁に沿って設けられ、第2開口部42の形状を保持するように構成された部材である。形状保持部46は、例えば、合成樹脂や金属などの材料で形成することができる。形状保持部46は、ポケット本体43の縁を補強するための布製の芯材であってもよい。
【0035】
以下、第1開口部41及びポケット40と、ファンユニット8による送風との関係について説明する。上述したように、モータ82が駆動され、ファン83が回転されると、吸引された空気は、表地2と裏地3の間の内部空間10に送出される。内部空間10内の空気は、表地2に設けられ、表地2の外側の外部空間と表地2の内側の内部空間10とを接続する第1開口部41から排出される。排出された空気は、ポケット本体43と表地2との間に形成される空間(ポケット本体43と表地2とによって囲まれた空間)を案内されて、着用者の顔を向いた第2開口部42から排出される。その結果、ファンユニット8によって送出された空気は、内部空間10を通り、第2開口部42から着用者の顔へ向けて送出される。
【0036】
<第1実施形態の効果>
以上で説明した第1実施形態の上着1によれば、以下の効果を奏する。
【0037】
(E1-1)上着1は、表地2の外側の外部空間と表地2の内側の内部空間10とを接続するように設けられた第1開口部41と、着用者の顔へ空気を排出するように設けられた第2開口部42を有するポケット40とを備える。ポケット40は、第1開口部41から排出された内部空間10の空気を、第2開口部42に向けて案内するように構成されている。そのため、ファンユニット8によって内部空間10に送出された空気を第1開口部41から送出し、ポケット40によって着用者の顔に向けて送出することができる。したがって、着用者は、排気領域32及び主領域31から流出する空気、並びに内部空間10を流動する空気によって冷感を得ることができるとともに、顔に直接的に吹き付けられる空気によっても冷感を得ることができる。その結果、着用者の冷感を増加させることができる。
【0038】
(E1-2)上着1では、表地2の外表面に取り付けられたポケット40が、内部空間10の空気を着用者の顔に向けて案内する案内部として機能する。そのため、表地2の内側に、当該案内部が取り付けられる構成と比較して、上着1の着用感を向上させることができる。また、案内部が着用者の作業の妨げになることを、抑制することができる。
【0039】
(E1-3)第2開口部42は、上着1の着用者の胸部よりも上であって着用者の首よりも下に位置している。そのため、第2開口部42が、着用者の胸部よりも下や着用者の首よりも上に位置する構成と比較して、第2開口部42から排出される空気は、着用者の顔により届きやすい。したがって、着用者の冷感をより増加させることができる。
【0040】
(E1-4)第2開口部42は着用者の顔に向けて空気を排出するように設けられており、第1開口部41は表地2の前身頃23に配置されているので、第1開口部41が後身頃に配置されている構成と比較して、ポケット40の形状を簡易にすることができる
【0041】
(E1-5)第1開口部41及び第2開口部42は表地2の前身頃23に配置されており、第1開口部41は第2開口部42よりも下に配置されている。そのため、第2開口部42が第1開口部41よりも下に配置されている構成と比較して、ポケット40の形状を簡易にすることができる。
【0042】
(E1-6)第2開口部42は、上着1の前中心に向けて下方に傾斜するように表地2に配置されているので、第2開口部42から着用者の顔の中心付近に向けて、空気を排出することができる。そのため、第2開口部42が上着1の前中心に向けて下方に傾斜していない構成と比較して、空気を着用者の顔に集中して送出することができる。したがって、着用者の冷感をよりいっそう増加させることができる。
【0043】
(E1-7)ポケット40は、第2開口部42の大きさを調整可能なマチ部44を備えるので、着用者は、マチ部44によって第2開口部42の大きさを所望の大きさに調整することができる。そのため、例えば、着用者の顔に送出される空気の強さや量を、所望の強さや量に調整することができる。
【0044】
(E1-8)ポケット40は、ポケット本体43のうち第2開口部42の縁に設けられ、第2開口部42の形状を保持するように構成された形状保持部46を備える。そのため、第2開口部42の形状を安定させることができるので、第2開口部42から排出される空気の強さ、量、方向等が変化することを抑制することができる。
【0045】
(E1-9)ポケット40は、第2開口部42の一部を開閉可能なスナップボタン45を備える。そのため、着用者は、スナップボタン45によって第2開口部42の一部を閉じたり開いたりすることができる。したがって、例えば、スナップボタン45を結合させて第2開口部42の一部を閉じることで、顔に送出される空気を減少させたり、スナップボタン45を外して第2開口部42を開くことで、顔に空気を充分に送出したりすることができる。
【0046】
(E1-10)上着1は、表地2と裏地3とを備えており、ファン取付部212は、表地2の外側にファンユニット8の吸気口860を配置し、表地2と裏地3との間の内部空間10に排気口880を配置するように、ファンユニット8が着脱可能に構成されている。また、第1開口部41は、表地2に設けられている。そのため、ファンユニット8から送出される空気は、吸気口860から表地2の裏表面と裏地3との間に送出される。したがって、表地2と裏地3との間で流動する空気によって、裏地3によって吸収された汗を効率的に蒸発させ、冷感を高めることができる。
【0047】
(E1-11)第1開口部41は空気の流通が可能なメッシュ生地49で覆われているので、第2開口部42からポケット40内に物品を入れる場合には、当該物品が第1開口部41から内部空間10へ落下することを抑制することができる。
【0048】
(E1-12)上着1では、ポケット40に、物品を入れるための機能と、第1開口部41から排出される空気を第2開口部42へ向けて案内させる機能とを発揮させることができる。そのため、顔に向けて空気を排出するための案内部を、ポケットと分けて設ける場合と比較して、上着1の意匠性を向上させることができる。
【0049】
<第2実施形態>
図5を参照して、第2実施形態に係る衣服について説明する。第2実施形態の衣服は、袖を有していない、いわゆるベスト1aとして構成されている。ベスト1aは、両腕の付け根の背中側の部分に対応した排気領域32が設けられていない点において、第1実施形態の上着1と異なる。
【0050】
ベスト1aにおける第1開口部41a及びポケット40aについて説明する。第1開口部41aは、第1実施形態の第1開口部41と同様に、前身頃23における右身頃と左身頃とに配置されている。なお、本実施形態の第1開口部41aは、メッシュ生地49で覆われていない。
【0051】
ポケット40aは、第2開口部42を開閉可能に設けられたフラップ45aを備える。フラップ45aの生地は、表地2と同じ生地が採用されている。フラップ45aは、ポケット本体43の中に入れて使用することができる。フラップ45aは、ポケット本体43の中に入れられることで(つまり、閉じられることで)第2開口部42のほぼ全域を覆うことが可能な大きさに形成されている。フラップ45aは、ポケット40aの第2開口部42を開閉するための開閉部として機能する。なお、フラップ45aと表地2とには、相互に結合することで、フラップ45aが開いた状態で表地2に留め付けることが可能なスナップボタンが設けられていてもよい。第2実施形態におけるベスト1aのその他の構成は、第1実施形態の上着1と同様であるため説明を省略する。
【0052】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態のベスト1aによれば、ポケット40aは、閉じられた場合に第2開口部42のほぼ全域を覆うように形成されたフラップ45aを備えるので、着用者は、フラップ45aを閉じることで顔に送出される空気を減少させることができる。また、着用者は、フラップ45aを開けることで、顔に空気を充分に送出することができる。
【0053】
また、第2実施形態の衣服(ベスト1a)は、上記のフラップ45aを備える点と、第1開口部41aがメッシュ生地49で覆われていない点とを除いて、第1実施形態と同様の構成を備える。そのため、第1実施形態の効果(E1-1)~(E1-8)、(E1-10)、(E-12)と同様の効果を奏する。
【0054】
<対応関係>
上記実施形態の各構成要素と本開示の技術の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本開示の技術の各構成要素を限定するものではない。
上着1、ベスト1aは、「衣服」の一例である。
ファンユニット8は、「送風装置」の一例である。
表地2は、「表地」の一例であり、裏地3は、「裏地」の一例である。
ファン取付部212は、「取付部」の一例である。
第1開口部41、41aは、「第1開口部」の一例である。
第2開口部42は、「第2開口部」の一例である。
ポケット40、40a、ポケット本体43は、「案内部」の一例である。また、ポケット40、40a、ポケット本体43は、「ポケット」の一例でもある。
前身頃23は、「前身頃」の一例である。
マチ部44は、「調整部」、「マチ部」の一例である。
スナップボタン45、フラップ45aは、「開閉部」の一例である。
形状保持部46は、「形状保持部」の一例である。
メッシュ生地49は、「メッシュ生地」の一例である。
【0055】
<他の実施形態>
第1開口部41、41a及び第2開口部42の数は、1であってもよいし、3以上であってもよい。
【0056】
第1開口部41、41aは、衣服を構成する表地に設けられ、該表地2の外側と表地2の内側とを接続していれば、前身頃23以外の他の箇所に配置されていてもよい。例えば、第1開口部41、41aは、後身頃21に配置されていてもよい。
【0057】
第2開口部42は、着用者の顔に向けて開口していれば、前身頃23以外の他の箇所に配置されていてもよい。例えば、第2開口部42は、袖25や、襟に配置されていてもよい。また、第2開口部42が前身頃23に配置される場合には、その位置は、着用者の胸部よりも下であってもよい。
【0058】
第1開口部41、41aは、上着1、ベスト1aの裾に近い位置に配置され、第2開口部42は、着用者の胸よりも上であって首よりも下に配置されていてもよい。
【0059】
第2開口部42は、着用者の顔に限らず、着用者の後頭部や耳付近に向けて空気を排出するように設けられていてもよい。つまり、第2開口部42は、頭部に向けて空気を排出するように設けられていてもよい。例えば、第2開口部42は、表地2の後身頃21に設けられて着用者の後頭部に向けて空気を排出するように構成されていてもよいし、袖25に設けられて着用者の耳付近に向けて空気を排出するように構成されていてもよい。
【0060】
第1開口部41、41aから排出される空気を着用者の顔に向けて案内する案内部として、ポケット40、40a以外の構成が採用されてもよい。例えば、表地2の外表面に、第1開口部41、41aと接続されたダクト(ホース)を設け、ダクトの開口(つまり、第2開口部)が着用者の顔を向くようにダクトを表地2の外表面に固定し、当該ダクトにより、第1開口部41、41aから排出される空気を着用者の顔に向けて案内するようにしてもよい。このように、案内部の構成や、表地2への取付方法は、第1開口部41、41aから第2開口部42へ実質的に空気を導くことが可能な範囲において、変更可能である。また、案内部の通気度は、第1開口部41、41aから第2開口部42へ実質的に空気を導くことが可能な程度であればよい。案内部の通気度は、例えば、表地2と同程度であってもよいし、表地2よりも高くてもよい。なお、案内部の通気度は、第1開口部41、41aから第2開口部42へ空気を導く間に、外部へ空気が漏れることが抑制可能な通気度であることが好ましい。
【0061】
上記形態において、ポケット40、40aは、それぞれ、第2開口部42の少なくとも一部を覆うスナップボタン45やフラップ45aを備えていなくともよい。つまり、第2開口部42は常時開かれていてもよい。
【0062】
ポケット40、40aは、スナップボタン45、フラップ45aに代えて、第2開口部42を開閉するためのスライドファスナ又は面ファスナを備えていてもよい。
【0063】
上記形態において、[0]裏地3は、より低い通気度を有する主領域31と、より高い通気度を有する排気領域32とを有していた。これに対し、裏地3の通気度は、部位によらず均一であってもよい。例えば、裏地3は、主領域31のみで形成されていてもよいし、排気領域32のみで形成されていてもよい。また、裏地3が排気領域32を有する場合には、表地2の通気度と裏地3の通気度との関係は、上記形態の例に限られない。更に、排気領域32は、メッシュ生地で形成されるのではなく、単なる開口であってもよい。このような開口は、例えば、裏地3に形成された貫通孔であってもよいし、表地2と裏地3の接合部の切れ目であってもよい。排気領域32は、例えば、スライドファスナで開閉可能に構成されていてもよい。排気領域32は、上記実施形態に例示されたのとは異なる位置に配置されていてもよい。
【0064】
衣服は、表地2と裏地3との二層構造でなくともよい。つまり、衣服は、表地2のみの一層構造であってもよい。この場合には、ファンユニット8は、表地2の内側(使用者の側)へ向けて空気を送出するように、衣服(表地2)に着脱可能であってもよい。つまり、ファンユニット8は、表地2の内表面と着用者の身体(肌着を着用した状態を含む)との間に向けて空気を送出してもよい。
【0065】
ポケット40、40aは、形状保持部46を備えていなくともよい。あるいは、形状保持部46に代えて、表地2の外表面とポケット本体43との間に介在する少なくとも1つのスペーサが、表地2の外表面及びポケット本体43の一方に取り付けられていてもよい。
【0066】
衣服におけるファン取付部212の位置や数(つまり、取付け可能なファンユニット8の数)は、1であってもよいし、3以上であってもよい。
【0067】
ファンユニット8を着脱可能な衣服は、上着1のような長袖の上衣や、ベスト1aのような袖なしの上衣である必要はなく、例えば、半袖の上衣、ズボンのような下衣、あるいは、上衣と下衣が一体にされたつなぎ服(オーバーオール、カバーオール、ジャンプスーツとも呼ばれる)であってもよい。
【0068】
ファンユニット8の電源として、バッテリホルダ96に内蔵された充電式のバッテリに限らず、各種の電動工具(スクリュードライバ、ハンマドリル等)に装着されて、電動工具の電源としても使用可能な周知のバッテリパックが適用されてもよい。この場合には、上着1、ベスト1aのポケット304に、バッテリホルダ96に代えて、ファンユニット8の電源としての充電式のバッテリパックを装着可能、かつ、電気的に接続可能なバッテリホルダを収容してもよい。
【0069】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1...上着
1a...ベスト
2...表地
3...裏地
8...ファンユニット
10...内部空間
21...後身頃
23...前身頃
25...袖
29...引き紐
30...縁部
31...主領域
32...排気領域
40...ポケット
40a...ポケット
41...第1開口部
41a...第1開口部
42...第2開口部
43...ポケット本体
44...マチ部
45...スナップボタン
45a...フラップ
46...形状保持部
49...メッシュ生地
81...本体部
82...モータ
83...ファン
84...ハウジング
85...筒状部
86...吸気部
87...フランジ部
88...排気部
89...リング部材
91...ケーブル
96...バッテリホルダ
211...取付け開口
212...ファン取付部
231...スライドファスナ
251...ストラップ
301...開口
302...スライドファスナ
304...ポケット
306...開口
831...羽根
860...吸気口
880...排気口
891...筒状部
893...フランジ部
A1...回転軸
図1
図2
図3
図4
図5