(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】外科用ハンドピース、および外科用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20241210BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B17/94
(21)【出願番号】P 2021019916
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000150327
【氏名又は名称】株式会社ナカニシ
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】手塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】海老沼 孝育
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500690(JP,A)
【文献】特開昭61-020562(JP,A)
【文献】特表2010-528775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/16
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の外側パイプと、
前記外側パイプの内部に収納され、前記外側パイプから突出する先端に切除対象を切削可能な切削部を有する外科用バーと、
前記外側パイプと前記外科用バーとの間に設けられ、前記外科用バーを前記外側パイプに対して回転可能に支持する転がり軸受と、
前記外側パイプと前記外科用バーとの間で、水密を維持可能な径方向隙間を設けた状態で、前記外側パイプと前記外科用バーの間に設けられた環状の防水部材と、
を備え
、
前記径方向隙間は、
(1)前記防水部材と前記外科用バーとの間、
(2)前記防水部材と前記外側パイプとの間のうち、
前記(1)のみに、又は前記(1)、(2)の両方に設けられている、
外科用ハンドピース。
【請求項2】
請求項1に記載の外科用ハンドピースであって、
前記防水部材は、前記外側パイプと前記外科用バーとの間で、前記転がり軸受の軸方向への移動が規制されている、外科用ハンドピース。
【請求項3】
請求項2に記載の外科用ハンドピースであって、
前記防水部材が、前記外側パイプにおける前記外科用バーの前記切削部が突出する側の先端部で、前記軸方向に互いに離隔して配置された一対の転がり軸受同士の間に設けられた、外科用ハンドピース。
【請求項4】
請求項3に記載の外科用ハンドピースであって、
少なくとも前記一対の転がり軸受と前記防水部材とを同軸に収納する筒状カバーを更に備え、
前記筒状カバーと、前記一対の転がり軸受と、前記防水部材とは、前記筒状カバーの内周部に互いに同軸で一体に支持されたモジュールを構成し、
前記モジュールが前記外側パイプの前記先端部に装着されている、外科用ハンドピース。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の外科用ハンドピースであって、
前記外科用バーと前記防水部材の間の径方向隙間が、前記防水部材と前記外側パイプの間の径方向隙間より大きい、外科用ハンドピース。
【請求項6】
中空状の外側パイプと、
前記外側パイプの内側に設けられた転がり軸受と、
前記外側パイプの内側に設けられた環状の防水部材と、
を備える内視鏡下手術用の外科用アタッチメントであって、
外科用バーが前記外側パイプの内部に収納された状態において、前記転がり軸受
は、前記外科用バーを前記外側パイプに対して回転可能に支持するとともに、前記防水部材
は、前記外側パイプと前記外科用バーとの間で、水密を維持可能な径方向隙間を設けた状態で、前記外側パイプと前記外科用バーの間に設けられ
、
前記径方向隙間は、
(1)前記防水部材と前記外科用バーとの間、
(2)前記防水部材と前記外側パイプとの間のうち、
前記(1)のみに、又は前記(1)、(2)の両方に設けられている、
内視鏡下手術用の外科用アタッチメント。
【請求項7】
請求項6に記載の内視鏡下手術用の外科用アタッチメントであって、
前記防水部材は、前記転がり軸受の軸方向への移動が規制されている、内視鏡下手術用の外科用アタッチメント。
【請求項8】
請求項7に記載の内視鏡下手術用の外科用アタッチメントであって、
前記防水部材が、前記外側パイプの先端部で、前記軸方向に互いに離隔して配置された一対の転がり軸受同士の間に設けられた、内視鏡下手術用の外科用アタッチメント。
【請求項9】
請求項8に記載の内視鏡下手術用の外科用アタッチメントであって、
少なくとも前記一対の転がり軸受と前記防水部材とを同軸に収納する筒状カバーを更に備え、
前記筒状カバーと、前記一対の転がり軸受と、前記防水部材とは、前記筒状カバーの内周部に互いに同軸で一体に支持されたモジュールを構成し、
前記モジュールが前記外側パイプの前記先端部に装着されている、内視鏡下手術用の外科用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術に用いられる外科用ハンドピース、およびその外科用ハンドピースを構成する外科用アタッチメントに関し、例えば、内視鏡を利用した手術(内視鏡下手術)に用いられる外科用ハンドピースと、その際に用いられる内視鏡下手術用の外科用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術を行う際に使用される動力式の外科用ハンドピース(外科用切除器具)に関する技術が知られている。外科用ハンドピースは、外科用バーと呼ばれる切削工具をモータ駆動により回転させて患者の患部を外科的に切除するための手持ち器具である。典型的な外科用ハンドピースは、ハンドピース本体に外科用アタッチメントと呼ばれる付属パーツが装着された状態で使用される。
外科用ハンドピースを用いた外科手術が行われる際、外科医は、その外科用ハンドピースの把持部を手で持って使用する。また、外科手術を行う際には、その手術で実施する処置に応じた外科用アタッチメントが選択され、使用される外科用ハンドピースに装着される。
通常、外科用アタッチメントには、外科用バーのシャフト(バーシャフト)を覆うようなスリーブ(バースリーブ)が備えられている。バースリーブは回転する外科用バーの支持と、回転中のシャフトへの接触の禁止とを実現している。
【0003】
また、操作者(外科医)の手元から離れた外科手術箇所までアクセスできる外科用ハンドピースや外科用アタッチメントに関する技術が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
特許文献1~3には、所定の長さ以上の細長い外科用バーを用いる外科用ハンドピースに関する技術が開示されている。特許文献1には、外科用バーがバースリーブに対して回転したとき、外科用バーとバースリーブとの間に滑り軸受が確立される外科用ハンドピースのアタッチメントが開示されている。特許文献2には、外科切除システムと共に使用する保護装置に関する技術が開示されている。特許文献3には、回転する外科用バーによる外科的切除法を実行しているとき、軸受スリーブがジャーナル軸受(滑り軸受)としてその外科用バーを支持する外科用ハンドピースのアタッチメントが開示されている。
これらの外科用ハンドピースが使用される外科手術においては、操作者(外科医)は、外科手術箇所から離れた位置でその外科用ハンドピースの本体を保持する。
【0004】
操作者(外科医)が、外科手術箇所から離れた位置で手術器具の保持や操作を行う手術の一例として、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術のような手術(内視鏡下手術)が知られている。内視鏡下手術では、患者の体表に開口部(ポート)を設け、手術用手持ち器具や内視鏡等を患者の体内に挿入し、体内を内視鏡によって観察しながら手術が行われる。そのような外科手術においては、開口部を通して、手術部位へのアクセスすることが要求される。したがって、そのような内視鏡下手術では、末端部が手術部位に到達できるように細長い器具が用いられる。
【0005】
また、内視鏡下手術において、体組織の外科的な切削や切除が必要な場合、所定の内径の管を備える内視鏡を開口部から挿入し、その内視鏡の管の内部を生理食塩水で潅流しながら、その管に細長いドリルなどを挿入して組織の切削や切除が行われる。つまり、外科用ハンドピースを用いて内視鏡下手術を行う場合、内視鏡の管の内部に挿入可能なほど細く長いバースリーブを備える外科用アタッチメントが選択される。
近年では、低侵襲で患者への負担が少ない外科手術が求められている。患者への負担の手術を実現するためには、手術時間の短縮が必要である。手術時間の短縮を実現するため、外科用ハンドピースに対して、高回転化による切削能力の向上が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4538010号公報
【文献】特許第5635660号公報
【文献】特許第5714640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、内視鏡下手術の際に選択されるような、細くて長いバースリーブを備える外科用アタッチメントと外科用バーとの組み合わせにおいては、その外科用バーを高速かつ安定的に回転させることが非常に困難であった。
【0008】
内視鏡下手術において、高速かつ安定的に外科用バーを回転させるため、外科用アタッチメントに挿入される外科用バーの支持構造の更なる工夫が求められている。また、内視鏡下手術においては、バースリーブを挿入する内視鏡の管の内部を、生理食塩水で潅流しながら手術が行われる。仮に、手術時に外科用アタッチメントの周りに存在していた水がバースリーブの内部に入り込んでしまった場合、外科用アタッチメントやハンドピース本体の不良、故障等をもたらすおそれがある。例えば、手術後に外科用ハンドピースを上に向けることにより、先端側に付着していた水が内部に流れ込み、モータ等の駆動部にまで達するおそれがある。このような事態を防止することが望まれる。
【0009】
本発明は、高速かつ安定した外科用バーの回転と、器具内部の防水性とが得られる外科用ハンドピース、およびその外科用ハンドピースを構成する外科用アタッチメントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の外科用ハンドピースは、
中空状の外側パイプと、
前記外側パイプの内部に収納され、前記外側パイプから突出する先端に切除対象を切削可能な切削部を有する外科用バーと、
前記外側パイプと前記外科用バーとの間に設けられ、前記外科用バーを前記外側パイプに対して回転可能に支持する転がり軸受と、
前記外側パイプと前記外科用バーとの間で、水密を維持可能な径方向隙間を設けた状態で、前記外側パイプと前記外科用バーの間に設けられた環状の防水部材と、
を備える。
【0011】
本発明の内視鏡下手術用の外科用アタッチメントは、
中空状の外側パイプと、
前記外側パイプの内側に設けられた転がり軸受と、
前記外側パイプの内側に設けられた環状の防水部材と、
を備える内視鏡下手術用の外科用アタッチメントであって、
外科用バーが前記外側パイプの内部に収納された状態において、前記転がり軸受が、前記外科用バーを前記外側パイプに対して回転可能に支持するとともに、前記防水部材が、前記外側パイプと前記外科用バーとの間で、水密を維持可能な径方向隙間を設けた状態で、前記外側パイプと前記外科用バーの間に設けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安定した外科用バーの回転と、器具内部の防水性とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る外科用ハンドピースの一部の側面視断面図である。
【
図3】
図3は、モジュールの分解図であり、(A)は側面視分解図、(B)は分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る外科用アタッチメントの組み立て工程の第1工程図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る外科用アタッチメントの組み立て工程の第2工程図である。
【
図6】
図6は、外科用ハンドピースに外科用バーを装着した状態を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る外科用ハンドピースの一部の側面視断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る外科用ハンドピースの一部の側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した外科用ハンドピースの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る外科用ハンドピース1の一部の側面視断面図である。
図2は、
図1におけるA領域の拡大図である。
【0015】
本実施形態の外科用ハンドピース1は、ハンドピール本体と外科用アタッチメントとを備えている。
図1には、その外科用アタッチメントの一部の断面が例示されている。
図1を参照すると、外科用アタッチメントは、外側パイプ10と、転がり軸受21と、ブッシュ(防水部材)24と、を備えている。外科用ハンドピース1は長尺状の医療用器具である。外科用ハンドピース1には、使い捨て部材である外科用バー11が装着される。外科手術が行われる際は、モータの様な駆動源(図示されず)により外科用バー11が高速で回転駆動する。外科用バー11自体が回転することで、その先端を構成する切削部14が、切除対象である外科手術箇所を切除する。
【0016】
内視鏡下手術で使用される内視鏡は、患者の体表の開口部(ポート)を通して、手術部位へのアクセスできる長さを有している。したがって、内視鏡下手術のために選択される外科用バーと外科用アタッチメントも、同等の長さを有している。そのような外科用アタッチメントを備えることで、外科用ハンドピース1が所定の長さを有するように構成され、操作者は、自身の手元から離れた外科手術箇所までアクセスし、骨又はその他の硬い組織を切除、除去できる。
【0017】
外側パイプ10は、軸方向(長手方向)に延びた中空状の長尺部材であって、その内部には長尺状の空間が形成されている。外科用バー11は、外側パイプ10の内部空間に収納され、外側パイプ10から突出する先端に切除対象を切削可能な切削部14を有している。
【0018】
本実施形態では、外科用バー11は、上述した先端の切削部14と、シャンク部12とから構成される。シャンク部12の先端に切削部14を、ネジ止め、溶接等の手法により接合しているが特にその接合方法は限定されず、切削部14とシャンク部12を最初から一体成型してもよい。切削部14は骨又はその他の硬い組織を切除、除去する切削部材であり、金属等の硬質材料によって構成され得るが、特にその材料は限定されない。また、切削部14は各種の刃、溝等を有したドリルとして作用するが、その形態は特に限定されず、例えば切除対象の特性(外科手術箇所の種類)によって適切なものが選択される。シャンク部12は、例えば金属製の細い棒により形成されているが、長尺状の部材であればその材料、構造は特に限定されず、ワイヤの様な部材によっても構成可能である。
【0019】
図2は、本実施形態の外科用アタッチメントの構成を例示する断面図である。
図2に示されるように、その外科用アタッチメントは、転がり軸受21を備えている。転がり軸受21は、外科用バー11を外側パイプ10に対して回転可能に支持する部材である。転がり軸受21は、転動体22を有している。本実施形態の構成によれば、転がり軸受21の内輪が外科用バー11のシャンク部12の表面に接し、外輪が外側パイプ10の内面に接し、転動体22が内輪と外輪の間で転がり、外科用バー11が外側パイプ10の内側において高速(例えば約80,000rpm)で回転することが可能である。
【0020】
従来の器具では、外科用バー11が滑り軸受によって支持されているが、外科用ハンドピースの高回転化の要求に対し、滑り軸受では焼き付き等の懸念が存在する。滑り軸受による支持は、水密の確保が容易である反面、高速かつ安定的な回転を維持することが困難であった。このような従来の器具に比べて、本実施形態の外科用ハンドピース1は転動体を有する転がり軸受21を用いており、外科用バー11の高速かつ安定的な回転を可能としている。
【0021】
さらに、
図2を参照すると、本実施形態の外科用アタッチメントには、防水部材としての環状のブッシュ24が設けられている。ブッシュ24は、外側パイプ10に対し、水密を維持可能な程度に微小の径方向隙間を設けた状態で外側パイプ10に備えられている。また、ブッシュ24は、外科用バー11が外科用アタッチメントのバースリーブに挿入されているとき、その外科用バー11に対し、水密を維持可能な程度に微小の径方向隙間を設けた非接触状態を維持する。ブッシュ24は樹脂材料等により構成されている筒状の部材であるが、その材料は特に限定はされない。更にブッシュ24は、所定の部材、本実施形態においては転がり軸受21によって、転がり軸受21の軸方向(外側パイプ10及び外科用バー11の軸方向でもある)への移動が規制されるように支持され、所定の位置に安定的に固定されている。上記した隙間については後に詳述する。
【0022】
本実施形態において、ブッシュ24は、外側パイプ10の先端部に配置されている。ここでは、外側パイプ10における外科用バー11の切削部14が突出する側を先端部とする。ブッシュ24は、外側パイプ10及び外科用バー11の軸方向に並べられた一対の(二つの)転がり軸受21(21a、21b)の間に挟まれた状態で設けられている。ブッシュ24は、外側パイプ10及び外科用バー11に対しては、外科用バー11が回転運動していない状態であっても水密を維持可能な程度に微小の径方向隙間を設けた状態で配置されている。更に本実施形態のブッシュ24は、転がり軸受21の軸方向における両側の転がり軸受21(21a、21b)に直接接した状態で挟まれており、軸方向への移動が規制され、所定の位置に安定的に固定される。
【0023】
換言すると、本実施形態の外科用アタッチメントは、先端側に二つの転がり軸受を備えている。その二つの転がり軸受の前方を前方軸受21aとし、後方を後方軸受21bとする。ブッシュ24はその前方軸受21aと後方軸受21bとの間に挟まれた状態で支持されている。
【0024】
前方軸受21aの内輪は外科用バー11のシャンク部12を支持し、同様に後方軸受21bの内輪も外科用バー11のシャンク部12を支持している。二つの転がり軸受21は、外科用バー11の振れ回りを抑制する。そのため、外科用バー11を回転させたとき、シャンク部12がブッシュ24の内側に触れることがなく、常に非接触の状態を維持できる。
【0025】
また、一対の転がり軸受21(21a、21b)とブッシュ24は、構造組み立て体として予め一体化されてモジュール化した部材に組み込まれている。
図3はこのモジュール26の分解図であり、(A)は側面視分解図、(B)分解斜視図である。モジュール26は、筒状カバー28と、一対の転がり軸受21(21a、21b)と、ブッシュ24と、スペーサ31とを備えている。筒状カバー28は、外側パイプ10と同様に中空の筒状部材であり、組立時には、筒状カバー28の内部空間に、転がり軸受21a、ブッシュ24、転がり軸受21b、スペーサ31の順番で各部材を挿入することにより、モジュール26が完成する。
【0026】
モジュール26は、
図4、
図5に示す外科用ハンドピース1の組立製造の前に予め一体化されて組付けられる。完成後のモジュール26においては、筒状カバー28と、一対の転がり軸受21(21a、21b)と、ブッシュ24と、スペーサ31とは、筒状カバー28の内周部に互いに同軸で一体に支持されることになる。一対の転がり軸受21(21a、21b)と、ブッシュ24と、スペーサ31とは、いずれも環状の部材であるため、径方向中心には、外科用バー11のシャンク部12が通過可能な空間が形成される。
【0027】
モジュール26が外側パイプ10の先端部に取り付けられると、外側パイプ10の一部である外側パイプ10の先端部を構成することになる。長尺状の部材において、一対の転がり軸受21(21a、21b)の間にブッシュ24を配置する作業は容易ではないが、予めモジュール26において、一対の転がり軸受21(21a、21b)とブッシュ24を並べて配置することにより、ブッシュ24の配置作業が容易となる。
【0028】
図4、
図5は、外科用アタッチメントの組み立て工程の第1工程、第2工程をそれぞれ示している。
図4に示す第1工程では、予め組み立てたモジュール26を外側パイプ10の先端部に対向して配置する。外側パイプ10の先端部と逆側の基端部41は、外科用バー11を回転させるモータ等に接続される。
【0029】
図5に示す第2工程では、モジュール26を外側パイプ10の先端部に取り付ける。モジュール26は、外側パイプ10の先端部に取り付けられると、外側パイプ10の一部(先端部)を構成することになる。モジュール26の筒状カバー28の外形は外側パイプ10の外形と同一であり、外側パイプ10はモジュール26を含めた状態で滑らかな外面を持つ長尺状のパイプとなる。
【0030】
また、モジュール26の取り付け前には、予め外側パイプ10の内部空間に、先端側から駆動部40の間に、スペーサ32、コイルばね16、スペーサ33、スペーサ34、転がり軸受21c、スペーサ35、転がり軸受21d、スペーサ36、転がり軸受21e、スペーサ37、転がり軸受21f、スペーサ38、の順序で各部材が並べられている。モジュール26を外側パイプ10の先端部に取り付ける際、モジュール26の後端に配置されたスペーサ31が、弾性部材であるコイルばね16の弾性作用によって先端側に突出したスペーサ32を押し、コイルばね16を圧縮しつつ、残りのスペーサ33、スペーサ34、転がり軸受21c、スペーサ35、転がり軸受21d、スペーサ36、転がり軸受21e、スペーサ37、転がり軸受21f、スペーサ38を駆動部40の側に押す。この押圧作用に対抗して駆動部40がこれらの部材を受け止めるため、各部材は所定の位置に安定的に固定される。
【0031】
また、
図4、
図5は、外科用バー11が収納される前の内視鏡下手術用の外科用アタッチメント5の状態を示している。内視鏡下手術用の外科用アタッチメント5は、外側パイプ10と、外側パイプ10の内側に設けられた転がり軸受21と、外側パイプ10の内側に設けられた環状のブッシュ24と、を備える。外科用バー11が外側パイプ10の内部に収納された状態において、転がり軸受21が、外科用バー11を外側パイプ10に対して回転可能に支持するとともに、ブッシュ24が、外側パイプ10と外科用バー11との間で、水密を維持可能な径方向隙間を設けた状態で、外側パイプ10と外科用バー11との間に設けられる。よって、内視鏡下手術用の外科用アタッチメント5への外科用バー11の収納時において、安定した外科用バー11の回転と、器具内部の防水性に優れた外科用ハンドピース1を提供できる。
【0032】
換言すると、転がり軸受21の前方軸受21aの内輪が外科用バー11のシャンク部12を支持し、同様に後方軸受21bの内輪が外科用バー11のシャンク部12を支持しているため、二つの転がり軸受21の作用により、外科用バー11の振れ回りが抑制される。この状態で外科用バー11を回転させたとき、シャンク部12がブッシュ24の内側に触れることがなく、水密を確保しつつも常に非接触の状態を維持したまま外科用バーを回転させることができる。また、回転を停止させたときにも、水密を確保し続けることができる。
【0033】
図6は、外科用手術器具に外科用バーを装着した状態を示す図である。
図6は、本願発明の理解を容易にするために、ハンドピース本体を省略している。
図6に示されているように、先端に切削部14を備える外科用バー11を、外側パイプ10(内視鏡下手術用の外科用アタッチメント5)の先端側から外側パイプ10の内部空間に挿入し、外科用バー11の後端を基端部41の後段のチャック(図示されず)に保持させることにより、手術が可能な状態になる。
【0034】
また、
図6に示されているように、本実施形態の外科用アタッチメントには、前述した
図2における前方軸受21aと後方軸受21b以外にも複数のボールベアリングが配置されている。この複数のボールベアリングのうち、前方軸受21aと後方軸受21bとを選択的に耐食性の高いベアリングにすることで、外科用アタッチメントの耐久性をさらに向上させることができる。
【0035】
図7は、
図2におけるB領域の拡大図であり、ブッシュ24及び転がり軸受21の拡大図である。ブッシュ24は軸方向における両側の転がり軸受21(21a、21b)に挟まれており、転がり軸受21(21a、21b)の作用によって軸方向への移動が規制され、所定の位置に安定的に固定される。一方、軸方向と直交する径方向においては、ブッシュ24と外科用バー11の間には径方向隙間G1が設けられるとともに、ブッシュ24と筒状カバー28(外側パイプ10の先端部)の間には径方向隙間G2が設けられている。この径方向隙間は微小な隙間であり、たとえ先端から生理食塩水の様な水が浸入しても更に駆動部40の側に浸入することを防止できるため、金属部品の腐食等の不具合、故障等を抑制できる。
【0036】
たとえば操作者が、外科用ハンドピース1の先端が外科用バー11の回転停止中に上向きになるように外科用ハンドピース1を持ち上げた場合、先端から水がモジュール26の内部に容易に進入することが予想される。しかし、ブッシュ24が更なる水の進入を食い止めるため、水による外科用ハンドピース1の不具合、故障等を抑制できる。特に本実施形態では、ブッシュ24が外側パイプ10の先端部に設けられているため、水の進入を早い段階で食い止めることができる。
【0037】
また、径方向隙間G1の存在により、ブッシュ24が外科用バー11に直接接していないため、回転する外科用バー11とブッシュ24の間で焼き付きが発生することも防止できる。外科用バー11とブッシュ24の間の径方向隙間G1は、ブッシュ24と筒状カバー28(外側パイプ10の先端の一部)の間の径方向隙間G2より大きくなっており(G1>G2)、高速回転する外科用バー11とブッシュ24の接触を効果的に抑制している。尚、径方向隙間G1はブッシュ24と外科用バー11の接触防止のため必須であるが、径方向隙間G2は組立製造における便宜上設けられる隙間であり、径方向隙間G2は必須ではない(G2=0でもよい)。
【0038】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る外科用ハンドピース1の一部の側面視断面図である。本実施形態においては、ブッシュ24がモジュール26の内部ではなく、外側パイプ10の内部に配置されたスペーサ34と転がり軸受21cとの間に挟まれた状態で設けられている。この構成においても、ブッシュ24を所定の位置に安定的に固定できる。また、この構成においても、
図7の様に径方向隙間G1、G2が設けられる。
【0039】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る外科用ハンドピース1の一部の側面視断面図である。本実施形態においては、第1実施形態からブッシュ24の形状が変更されている。第1実施形態ではブッシュ24が転がり軸受21a、転がり軸受21bの双方に等しい面積で接触しているが、本実施形態では、ブッシュ24は転がり軸受21bよりも転がり軸受21aに対して大きな面積で接触している。
【0040】
本発明の外科用切除器具によれば、転がり軸受によって高速かつ安定的な外科用バー11の回転を維持しつつ、防水部材によって防水性を向上させることができる。
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0042】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 中空状の外側パイプと、
前記外側パイプの内部に収納され、前記外側パイプから突出する先端に切除対象を切削可能な切削部を有する外科用バーと、
前記外側パイプと前記外科用バーとの間に設けられ、前記外科用バーを前記外側パイプに対して回転可能に支持する転がり軸受と、
前記外側パイプと前記外科用バーとの間で、水密を維持可能な径方向隙間を設けた状態で、前記外側パイプと前記外科用バーの間に設けられた環状の防水部材と、
を備える外科用ハンドピース。
これにより、安定した長尺部材の回転と、器具内部の防水性とを得ることができる。
【0043】
(2) (1)に記載の外科用ハンドピースであって、
前記防水部材は、前記外側パイプと前記外科用バーとの間で、前記転がり軸受の軸方向への移動が規制されている、外科用ハンドピース。
これにより、防水部材を所定の位置に安定的に固定できる。
【0044】
(3) (2)に記載の外科用ハンドピースであって、
前記防水部材が、前記外側パイプにおける前記外科用バーの前記切削部が突出する側の先端部で、前記軸方向に互いに離隔して配置された一対の転がり軸受同士の間に設けられた、外科用ハンドピース。
これにより、防水部材を所定の位置に安定的に固定するとともに、水の進入を早い段階で食い止めることができる。
【0045】
(4) (3)に記載の外科用ハンドピースであって、
少なくとも前記一対の転がり軸受と前記防水部材とを同軸に収納する筒状カバーを更に備え、
前記筒状カバーと、前記一対の転がり軸受と、前記防水部材とは、前記筒状カバーの内周部に互いに同軸で一体に支持されたモジュールを構成し、
前記モジュールが前記外側パイプの前記先端部に装着されている、外科用ハンドピース。
これにより、防水部材の配置作業が容易となるとともに、モジュールの交換、メンテナンス等を容易に行うことができる。
【0046】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の外科用ハンドピースであって、
前記外科用バーと前記防水部材の間の径方向隙間が、前記防水部材と前記外側パイプの間の径方向隙間より大きい、外科用ハンドピース。
これにより、高速回転する外科用バーと防水部材の接触を効果的に抑制できる。
【0047】
(6) 中空状の外側パイプと、
前記外側パイプの内側に設けられた転がり軸受と、
前記外側パイプの内側に設けられた環状の防水部材と、
を備える内視鏡下手術用の外科用アタッチメントであって、
外科用バーが前記外側パイプの内部に収納された状態において、前記転がり軸受が、前記外科用バーを前記外側パイプに対して回転可能に支持するとともに、前記防水部材が、前記外側パイプと前記外科用バーとの間で、水密を維持可能な径方向隙間を設けた状態で、前記外側パイプと前記外科用バーの間に設けられる、
内視鏡下手術用の外科用アタッチメント。
これにより、外科用バーの収納時において、安定した外科用バーの回転と、器具内部の防水性に優れた内視鏡下手術用の外科用アタッチメントを提供できる。
【0048】
(7) (6)に記載の内視鏡下手術用の外科用アタッチメントであって、
前記防水部材は、前記転がり軸受の軸方向への移動が規制されている、内視鏡下手術用の外科用アタッチメント。
これにより、防水部材を所定の位置に安定的に固定できる。
【0049】
(8) (7)に記載の内視鏡下手術用の外科用アタッチメントであって、
前記防水部材が、前記外側パイプの先端部で、前記軸方向に互いに離隔して配置された一対の転がり軸受同士の間に設けられた、内視鏡下手術用の外科用アタッチメント。
これにより、防水部材を所定の位置に安定的に固定するとともに、水の進入を早い段階で食い止めることができる。
【0050】
(9) (8)に記載の内視鏡下手術用の外科用アタッチメントであって、
少なくとも前記一対の転がり軸受と前記防水部材とを同軸に収納する筒状カバーを更に備え、
前記筒状カバーと、前記一対の転がり軸受と、前記防水部材とは、前記筒状カバーの内周部に互いに同軸で一体に支持されたモジュールを構成し、
前記モジュールが前記外側パイプの前記先端部に装着されている、内視鏡下手術用の外科用アタッチメント。
これにより、防水部材の配置作業が容易となるとともに、モジュールの交換、メンテナンス等を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 外科用ハンドピース
5 内視鏡下手術用の外科用アタッチメント
10 外側パイプ
11 外科用バー
12 シャンク部
14 切削部
16 コイルばね
21、21a、21b、21c、21d、21e、21f 転がり軸受
22 転動体
24 ブッシュ(防水部材)
26 モジュール
28 筒状カバー
31、32、33、34、35、36、37 スペーサ
G1 径方向隙間
G2 径方向隙間