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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021020969
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123577
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和広
(72)【発明者】
【氏名】芝沼 浩幸
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-015071(JP,A)
【文献】特開2004-150815(JP,A)
【文献】特開2002-330962(JP,A)
【文献】特開平03-083111(JP,A)
【文献】特開2001-025260(JP,A)
【文献】特開平11-290321(JP,A)
【文献】特開平07-336198(JP,A)
【文献】特開平01-145044(JP,A)
【文献】米国特許第04821706(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
G01N29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印可された電圧の大きさに応じた超音波を送信する超音波プローブと、
2つの巻線及び前記2つの巻線の間に設けられたセンタータップを有する一次コイル並びに1つの巻線を有する2次コイルを有し、前記一次コイルに印可された電圧を変圧し、変圧された電圧を前記超音波プローブに印可する変圧器と、
前記一次コイルの前記2つの巻線のうちいずれか1つの巻線に第1の大きさの第1の電圧を印可する第1の電源と、
前記一次コイルの前記2つの巻線のうちいずれか1つの巻線に前記第1の大きさよりも小さい第2の大きさの第2の電圧を印可する第2の電源と、
前記センタータップに接続され、前記一次コイルの前記2つの巻線のうちいずれか1つの巻線に印加される電圧の電圧状態を、前記第1の電圧が印可される第1の電圧状態、前記第2の電圧が印加される第2の電圧状態、及び、前記第1の電圧及び前記第2の電圧が印加されない第3の電圧状態のいずれかの電圧状態に切り替える切替部と、
前記2つの巻線のうちの一の巻線の前記センタータップが接続されている側とは反対側に接続され、記一の巻線とグランドとの間の第1の接続状態を導通状態又は非導通状態のいずれかの状態に設定する第1の設定部と、
前記2つの巻線のうちの他の巻線の前記センタータップが接続されている側とは反対側に接続され、記他の巻線と前記グランドとの間の第2の接続状態を導通状態又は非導通状態のいずれかの状態に設定する第2の設定部と、
前記電圧状態を前記第1の電圧状態から前記第2の電圧状態に切り替える場合に、前記電圧状態を前記第1の電圧状態から前記第3の電圧状態に切り替えるように前記切替部を制御し、前記電圧状態が前記第3の電圧状態であるときに前記第1の接続状態及び前記第2の接続状態を同時に導通状態に設定するように前記第1の設定部及び前記第2の設定部を制御した後に、前記電圧状態を前記第3の電圧状態から前記第2の電圧状態に切り替えるように前記切替部を制御する制御部と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記変圧器から前記第1の電源に向かう方向へ電流が流れることを抑制する第1の抑制部と、
前記変圧器から前記第2の電源に向かう方向へ電流が流れることを抑制する第2の抑制部と、
を備える、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電圧状態を前記第1の電圧状態から前記第2の電圧状態に切り替える場合に、前記電圧状態が前記第3の電圧状態であるときに前記第1の接続状態及び前記第2の接続状態を一定の時間幅の間、導通状態に設定するように前記第1の設定部及び前記第2の設定部を制御する、
請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の接続状態及び前記第2の接続状態を、前記2つの巻線の時定数に応じた前記一定の時間幅の間、導通状態に設定するように前記第1の設定部及び前記第2の設定部を制御する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、第1の画像データが生成される場合に前記電圧状態を前記第1の電圧状態に切り替えるように前記切替部を制御するとともに、第2の画像データが生成される場合に前記電圧状態を前記第2の電圧状態に切り替えるように前記切替部を制御する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の画像データとしてBモード画像データが生成される場合に前記電圧状態を前記第1の電圧状態に切り替えるように前記切替部を制御するとともに、前記第2の画像データとしてカラー画像データが生成される場合に前記電圧状態を前記第2の電圧状態に切り替えるように前記切替部を制御する、
請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記第1の設定部は、前記一の巻線と前記グランドとの間に設けられ、
前記第2の設定部は、前記他の巻線と前記グランドとの間に設けられる、
請求項1~6のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置では、送信回路が電圧を超音波プローブに印可することにより、超音波プローブに超音波を発生させる。例えば、送信回路は、超音波プローブに駆動信号を送信することにより電圧を超音波プローブに印可する。
【0003】
また、送信回路は、電源により供給された電圧を変圧するトランス(変圧器)を備える。送信回路は、トランスにより変圧された電圧を超音波プローブに印可する。送信回路が備えるトランスには、様々な種類がある。例えば、トランスが備える一次コイル(一次巻線又は単に一次側とも称される)の巻線数と、二次コイル(二次巻線又は単に二次側とも称される)の巻線数とは、様々な種類がある。巻線数が多いとトランス自体の規模(サイズ)が大きくなる傾向がある。一次コイルの巻線数と二次コイルの巻線数との比が1:1である場合、トランス周辺のスイッチング回路が多数設けられることで、所望の性能が得られる。かかる場合、トランス自体の規模が比較的小さくなるが、トランス周辺のスイッチング回路の規模が比較的大きくなる。このため、送信回路全体の規模は、比較的大きくなってしまう。
【0004】
そこで、トランスが、一次コイルとして2つの巻線及び2つの巻線の間に設けられたセンタータップを備え、二次コイルとして1つの巻線を備えることが考えられる。この場合、トランス周辺のスイッチング回路の規模が比較的小さくなるので、送信回路全体の規模が比較的小さくなる。
【0005】
しかしながら、このようなトランスでは、電源切り替え時に電荷が残留してしまう場合がある。例えば、超音波診断装置の超音波送信モードには様々な種類があり、超音波送信モード毎に、超音波送信モードに対応する電源が用いられる。すなわち、超音波診断装置は、使用される電源を切り替えることで、送信される超音波の種類を切り替える。そして、超音波診断装置は、送信される超音波の種類を切り替えることで、様々な種類の画像データを生成することができる。
【0006】
例えば、超音波診断装置が、反射波の強度を輝度で表したBモード画像データに基づくBモード画像に、血流情報を示すカラー画像データに基づくカラー画像を重畳してディスプレイに表示させる場合について説明する。この場合、超音波診断装置がBモード画像データ及びカラー画像データを生成する際に、送信回路は、印可する電圧の大きさが異なる2つの電源を交互に切り替えて、超音波プローブに大きさが異なる2つの電圧を交互に印可する。超音波診断装置は、Bモード画像データを生成する際には、比較的高い電圧を超音波プローブに印可することにより、Bモード画像データの元となる反射波データを収集する。また、超音波診断装置は、カラー画像データを生成する際には、比較的低い電圧を超音波プローブに印可することにより、カラー画像データの元となる反射波データを収集する。
【0007】
ここで、超音波診断装置は、カラー画像データを生成する際に、複数の反射波データの相関をとるために、超音波を複数回送信する。そのため、カラー画像データを生成する際に送信される複数の超音波に対応する複数の電圧の波形(駆動信号の波形)であって、超音波プローブに印可される複数の電圧の波形は、同一であることが好ましい。ここで、超音波診断装置は、Bモード画像データを生成するための超音波送信モードから、カラー画像データを生成するための超音波送信モードに切り替える場合、比較的高い電圧の電源から比較的低い電圧の電源に切り替える。この場合、比較的高い電圧の電源から比較的低い電圧の電源に切り替えられた際に、トランスに電荷が残留してしまうことがある。このため、カラー画像データを生成する際に超音波プローブに印可される電圧の複数の周期分の波形のうち、例えば、1番目の周期の波形にスパイクノイズが発生することがある。このようなスパイクノイズは、カラー画像データに画像ノイズが発生する原因となる。
【0008】
上記の問題点は、Bモード画像データを生成するモードから、カラー画像データを生成するモードに切り替える場合にのみ生じるものではなく、例えば、比較的高い電圧の電源から比較的低い電圧の電源に切り替えられた場合にも、同様の問題点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-104629号公報
【文献】特開2006-26150号公報
【文献】国際公開第2011/058956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、送信回路の規模の増大を抑制しつつ、スパイクノイズの発生を抑制することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブと、変圧器と、第1の電源と、第2の電源と、切替部と、第1の設定部と、第2の設定部と、制御部とを備える。超音波プローブは、印可された電圧の大きさに応じた超音波を送信する。変圧器は、2つの巻線及び前記2つの巻線の間に設けられたセンタータップを有する一次コイル並びに1つの巻線を有する2次コイルを有し、前記一次コイルに印可された電圧を変圧し、変圧された電圧を前記超音波プローブに印可する。第1の電源は、前記一次コイルに第1の大きさの第1の電圧を印可する。第2の電源は、前記一次コイルに前記第1の大きさよりも小さい第2の大きさの第2の電圧を印可する。切替部は、前記一次コイルに印可される電圧を前記第1の電圧及び前記第2の電圧のいずれか一方に切り替える。第1の設定部は、前記2つの巻線のうちの一の巻線とグランドとの間の第1の接続状態を導通状態又は非導通状態のいずれかの状態に設定する。第2の設定部は、前記2つの巻線のうちの他の巻線と前記グランドとの間の第2の接続状態を導通状態又は非導通状態のいずれかの状態に設定する。制御部は、前記切替部により前記一次コイルに印可される電圧が前記第1の電圧から前記第2の電圧に切り替えられる場合に、前記第1の接続状態及び前記第2の接続状態を同時に導通状態に設定するように前記第1の設定部及び前記第2の設定部を制御した後に、前記一次コイルに印可される電圧が前記第1の電圧から前記第2の電圧に切り替えられるように前記切替部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係る送信回路の送信パルサの構成の一例を示す図である。
図3図3は、超音波診断装置が、Bモード超音波送信モードとカラー超音波送信モードとを交互に切り替える場合に実行する処理の一例を説明するための図である。
図4図4は、超音波診断装置が、Bモード超音波送信モードとカラー超音波送信モードとを交互に切り替える場合に実行する処理の一例を説明するための図である。
図5図5は、実施形態に係る超音波診断装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る超音波診断装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図7図7は、実施形態に係る超音波診断装置の制御回路が実行する処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る超音波診断装置を説明する。
【0014】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103とを有する。
【0015】
超音波プローブ101は、例えば、複数の圧電振動子(圧電素子)を有する。これら複数の圧電振動子は、装置本体100が有する送受信回路110の送信回路111から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。具体的には、複数の圧電振動子は、送信回路111により電圧(送信駆動電圧)が印可されることにより送信駆動電圧に応じた波形の超音波を発生する。駆動信号が示す送信駆動電圧の波形が、複数の圧電振動子に印可される電圧の波形である。すなわち、超音波プローブ101は、印可された送信駆動電圧の大きさの応じた超音波を送信する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信し、反射波を電気信号である反射波信号(受信信号)に変換し、反射波信号を装置本体100に出力する。また、超音波プローブ101は、例えば、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。
【0016】
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波として超音波プローブ101が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。そして、超音波プローブ101は、反射波信号を後述する送受信回路110の受信回路112に出力する。
【0017】
超音波プローブ101は、装置本体100と着脱可能に設けられる。被検体P内の2次元領域の走査(2次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、複数の圧電振動子が一列で配置された1Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100に接続する。1Dアレイプローブの種類としては、リニア型超音波プローブ、コンベックス型超音波プローブ、セクタ型超音波プローブ等が挙げられる。また、被検体P内の3次元領域の走査(3次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100と接続する。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の圧電振動子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。
【0018】
入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等の入力手段により実現される。入力装置102は、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を装置本体100に転送する。
【0019】
ディスプレイ103は、例えば、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データに基づく超音波画像等を表示したりする。ディスプレイ103は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等によって実現される。
【0020】
装置本体100は、超音波プローブ101から送信された反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する。なお、超音波画像データは、画像データの一例である。装置本体100は、超音波プローブ101から送信された被検体Pの2次元領域に対応する反射波信号に基づいて2次元の超音波画像データを生成可能である。また、装置本体100は、超音波プローブ101から送信された被検体Pの3次元領域に対応する反射波信号に基づいて3次元の超音波画像データを生成可能である。図1に示すように、装置本体100は、送受信回路110と、バッファメモリ120と、信号処理回路130と、画像生成回路140と、画像メモリ150と、記憶回路160と、制御回路170とを有する。
【0021】
送受信回路110は、制御回路170による制御を受けて、超音波プローブ101から超音波を送信させるとともに、超音波プローブ101に超音波の反射波を受信させる。すなわち、送受信回路110は、超音波プローブ101を介して走査を実行する。なお、走査は、スキャン、超音波スキャン又は超音波走査とも称される。送受信回路110は、送受信部の一例である。送受信回路110は、送信回路111と受信回路112とを有する。
【0022】
送信回路111は、制御回路170による制御を受けて、超音波プローブ101から超音波を送信させる。送信回路111は、制御回路111aと、レートパルサ発生回路と、送信遅延回路と、送信パルサとを有する。制御回路111aがレートパルサ発生回路、送信遅延回路及び送信パルサを制御することで、送信回路111が超音波プローブ101に駆動信号を供給する。送信回路111は、被検体P内の2次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から2次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。また、送信回路111は、被検体P内の3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。
【0023】
制御回路111aは、制御回路170による制御を受けて、送信回路111全体を制御する。例えば、制御回路111aは、レートパルサ発生回路、送信遅延回路及び送信パルサを制御する。制御回路111aは、プロセッサにより実現される。制御回路111aは、制御部の一例である。
【0024】
レートパルサ発生回路は、制御回路111aによる制御を受けて、所定のレート周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波(送信ビーム)を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。レートパルスが送信遅延回路を経由することで、異なる送信遅延時間を有した状態で送信パルサに電圧が印加される。例えば、送信遅延回路は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、レートパルサ発生回路により発生される各レートパルスに対して与える。送信パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を供給する。すなわち、送信パルサは、かかるレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号が示す波形の電圧(送信駆動電圧)を印可する。なお、送信遅延回路は、各レートパルスに与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの超音波の送信方向を任意に調整する。
【0025】
駆動パルスは、送信パルサからケーブルを介して超音波プローブ101内の圧電振動子まで伝達した後に、圧電振動子において電気信号から機械的振動に変換される。すなわち、圧電振動子に電圧が印可されることによって、圧電振動子は機械的に振動する。この機械的振動によって発生した超音波は、生体内部に送信される。ここで、圧電振動子ごとに異なる送信遅延時間を持った超音波は、集束されて、所定方向に伝搬していく。
【0026】
なお、送信回路111は、制御回路170による制御を受けて、所定の走査シーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有する。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間に送信駆動電圧の値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0027】
超音波プローブ101により送信された超音波の反射波は、超音波プローブ101内部の圧電振動子まで到達した後、圧電振動子において、機械的振動から電気的信号(反射波信号)に変換され、受信回路112に入力される。受信回路112は、プリアンプと、A/D(Analog to Digital)変換器と、直交検波回路等を有し、超音波プローブ101から送信された反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データ(受信データ)を生成する。そして、受信回路112は、生成した反射波データをバッファメモリ120に格納する。
【0028】
プリアンプは、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン調整(ゲイン補正)を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換することでゲイン補正された反射波信号をデジタル信号に変換する。直交検波回路は、デジタル信号に変換された反射波信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(IQ信号)を反射波データとしてバッファメモリ120に格納する。
【0029】
受信回路112は、超音波プローブ101から送信された2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、受信回路112は、超音波プローブ101から送信された3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0030】
バッファメモリ120は、送受信回路110により生成された反射波データを一時的に記憶するメモリである。例えば、バッファメモリ120は、所定数のフレーム分の反射波データを記憶することが可能なように構成されている。そして、バッファメモリ120は、所定数のフレーム分の反射波データを記憶している状態で、新たに1フレーム分の反射波データが受信回路112により生成された場合、受信回路112による制御を受けて、生成された時間が最も古い1フレーム分の反射波データを破棄し、新たに生成された1フレーム分の反射波データを記憶する。例えば、バッファメモリ120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子によって実現される。
【0031】
信号処理回路130は、バッファメモリ120から反射波データを読み出し、読み出された反射波データに対して各種の信号処理を施し、各種の信号処理が施された反射波データをBモードデータ又はドプラデータとして画像生成回路140に出力する。信号処理回路130は、例えば、プロセッサにより実現される。信号処理回路130は、信号処理部の一例である。
【0032】
例えば、信号処理回路130は、バッファメモリ120に、新たに1フレーム分の反射波データが格納される度に、新たにバッファメモリ120に格納された1フレーム分の反射波データを読み出す。そして、信号処理回路130は、1フレーム分の反射波データが読み出される度に、読み出された1フレーム分の反射波データに対して各種の信号処理を施すことにより、新たに1フレーム分のBモードデータ又はドプラデータを生成する。そして、信号処理回路130は、1フレーム分のBモードデータ又はドプラデータを生成する度に、新たに生成された1フレーム分のBモードデータ又はドプラデータを画像生成回路140に出力する。以下、信号処理回路130実行する各種の信号処理の一例を説明する。
【0033】
例えば、信号処理回路130は、バッファメモリ120から読み出した反射波データに対して、直交検波し、対数増幅及び包絡線検波処理等を施して、サンプル点ごとの信号強度(振幅強度)が輝度の明るさで表現されるBモードデータを生成する。例えば、信号処理回路130は、生成したBモードデータを画像生成回路140に出力する。
【0034】
また、信号処理回路130は、高調波成分を映像化するハーモニックイメージングを行うための信号処理を実行する。ハーモニックイメージングとしては、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)や組織ハーモニックイメージング(THI:Tissue Harmonic Imaging)が挙げられる。また、コントラストハーモニックイメージングや組織ハーモニックイメージングでは、スキャン方式として、以下の方式が知られている。例えば、かかるスキャン方式として、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)、パルスサブトラクション法(Pulse Subtraction法)又はパルスインバージョン法(Pulse Inversion法)と呼ばれる位相変調(PM:Phase Modulation)、及び、AMとPMとを組み合わせることで、AMの効果及びPMの効果の双方が得られるAMPM等が知られている。
【0035】
また、信号処理回路130は、バッファメモリ120から読み出した反射波データを周波数解析することで、ドプラ効果に基づく移動体(血流や組織、造影剤エコー成分等)の運動情報を反射波データから抽出し、抽出した運動情報を示すドプラデータを生成する。例えば、信号処理回路130は、移動体の運動情報として、平均速度、平均分散値及び平均パワー値等を多点に渡り抽出し、抽出した移動体の運動情報を示すドプラデータを生成する。信号処理回路130は、生成したドプラデータを画像生成回路140に出力する。
【0036】
上記の信号処理回路130の機能を用いて、実施形態に係る超音波診断装置1は、カラーフローマッピング(CFM:Color Flow Mapping)法とも呼ばれるカラードプラ法を実行可能である。カラーフローマッピング法では、超音波の送受信が複数の走査線上で複数回行なわれる。そして、カラーフローマッピング法では、同一位置のデータ列に対してMTI(Moving Target Indicator)フィルタを掛けることで、同一位置のデータ列から、静止している組織、或いは、動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)を抑制して、血流に由来する信号(血流信号)を抽出する。そして、カラーフローマッピング法では、この血流信号から血流の速度、血流の分散、血流のパワー等の血流情報を推定する。信号処理回路130は、カラーフローマッピング法により推定された血流情報を示すカラー画像データを画像生成回路140に出力する。なお、カラー画像データは、ドプラデータの一例である。
【0037】
信号処理回路130は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方の反射波データを処理可能である。
【0038】
画像生成回路140は、信号処理回路130から出力されたBモードデータ又はドプラデータから超音波画像データを生成する。画像生成回路140は、プロセッサにより実現される。
【0039】
例えば、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路140は、信号処理回路130が生成した2次元のドプラデータから運動情報又は血流情報が映像化された2次元ドプラ画像データを生成する。なお、運動情報が映像化された2次元ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
【0040】
ここで、画像生成回路140は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(走査コンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。例えば、画像生成回路140は、信号処理回路130から出力されたデータに対して、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路140は、走査コンバート以外に種々の画像処理として、例えば、走査コンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成回路140は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0041】
更に、画像生成回路140は、信号処理回路130により生成された3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路140は、信号処理回路130により生成された3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、画像生成回路140は、「3次元のBモード画像データ及び3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。そして、画像生成回路140は、ボリュームデータをディスプレイ103にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対して様々なレンダリング処理を行なう。
【0042】
画像生成回路140が行なうレンダリング処理としては、例えば、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を用いてボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、画像生成回路140が行なうレンダリング処理としては、例えば、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。画像生成回路140は、画像生成部の一例である。
【0043】
Bモードデータ及びドプラデータは、走査コンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路140が生成するデータは、走査コンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0044】
画像メモリ150は、画像生成回路140により生成された各種の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ150は、信号処理回路130により生成されたデータも記憶する。画像メモリ150が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路140を経由して表示用の超音波画像データとなる。例えば、画像メモリ150は、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
【0045】
記憶回路160は、走査(超音波の送受信)、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路160は、必要に応じて、画像メモリ150が記憶するデータの保管等にも使用される。例えば、記憶回路160は、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
【0046】
制御回路170は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、制御回路170は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路160から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、信号処理回路130及び画像生成回路140の処理を制御する。また、制御回路170は、画像メモリ150に記憶された表示用の超音波画像データに基づく超音波画像を表示するようにディスプレイ103を制御する。例えば、制御回路170は、Bモード画像データに基づくBモード画像又はカラー画像データに基づくカラー画像を表示するようにディスプレイ103を制御する。また、制御回路170は、Bモード画像にカラー画像を重畳させて表示するようにディスプレイ103を制御する。制御回路170は、表示制御部又は制御部の一例である。制御回路170は、例えば、プロセッサにより実現される。超音波画像は、画像の一例である。
【0047】
また、制御回路170は、送受信回路110を介して超音波プローブ101を制御することで、超音波走査の制御を行なう。
【0048】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、若しくは、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路160に保存されたプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することで機能を実現する。なお、記憶回路160にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の回路(例えば、信号処理回路130、画像生成回路140及び制御回路170)を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。すなわち、信号処理回路130、画像生成回路140及び制御回路170は、プロセッサにより実現される1つの処理回路に統合されてもよい。
【0049】
以上、実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。次に、送信回路111の送信パルサの構成の一例について説明する。図2は、実施形態に係る送信回路111の送信パルサの構成の一例を示す図である。
【0050】
図2に示すように、送信回路111の送信パルサは、2つの電源11,12、2つのスイッチ13,14、2つのダイオード15,16、トランス(変圧器)17、2つのスイッチ18,19を備える。なお、2つの電源11,12は、送信回路111の外部に設けられてもよい。この場合、装置本体100が、送信回路111の外部に設けられた2つの電源11,12を備えてもよい。
【0051】
電源11は、電圧V1をトランス17の一次コイルに印可するための電源である。ここで電圧V1の大きさは「V1」である。電源11は、第1の電源の一例である。電圧V1は、第1の電圧の一例である。また、電圧V1の大きさ「V1」は、第1の大きさの一例である。電源11のマイナス側は、グランドに接地されている。電源11のプラス側は、スイッチ13を介してダイオード15のアノードに接続されている。
【0052】
電源12は、電圧V1よりも低い電圧V2をトランス17の一次コイルに印可するための電源である。ここで電圧V2の大きさは「V2」である。すなわち、電圧V2の大きさ「V2」は、電圧V1の大きさ「V1」よりも小さい。電源12は、第2の電源の一例である。電圧V2は、第2の電圧の一例である。また、電圧V2の大きさ「V2」は、第2の大きさの一例である。電源12のマイナス側は、グランドに接地されている。電源12のプラス側は、スイッチ14を介してダイオード16のアノードに接続されている。
【0053】
スイッチ13は、電源11とダイオード15との間に設けられる。スイッチ13は、制御回路111aによる制御を受けて、電源11とダイオード15との間の接続状態を導通状態又は非導通状態のいずれかの状態に設定する。
【0054】
例えば、スイッチ13が、制御回路111aによる制御を受けてオン(ON)された場合について説明する。この場合、電源11とダイオード15との間の接続状態が導通状態となり、電源11によりトランス17の一次コイルに電圧V1が印可される。
【0055】
また、例えば、スイッチ13が、制御回路111aによる制御を受けてオフ(OFF)された場合について説明する。この場合、電源11とダイオード15との間の接続状態が非導通状態となり、電源11によりトランス17の一次コイルに電圧V1が印可されなくなる。
【0056】
スイッチ14は、電源12とダイオード16との間に設けられる。スイッチ14は、制御回路111aによる制御を受けて、電源12とダイオード16との間の接続状態を導通状態又は非導通状態のいずれかの状態に設定する。
【0057】
例えば、スイッチ14が、制御回路111aによる制御を受けてオンされた場合について説明する。この場合、電源12とダイオード16との間の接続状態が導通状態となり、電源12によりトランス17の一次コイルに電圧V2が印可される。
【0058】
また、例えば、スイッチ14が、制御回路111aによる制御を受けてオフされた場合について説明する。この場合、電源12とダイオード16との間の接続状態が非導通状態となり、電源12によりトランス17の一次コイルに電圧V2が印可されなくなる。
【0059】
このように、スイッチ13,14は、一次コイルに印可される電圧を電圧V1又は電圧V2のいずれか一方に切り替える。スイッチ13,14は、切替部の一例である。なお、送信回路111の送信パルサは、2つのスイッチ13,14に代えて、1つのスイッチを備えてもよい。そして、この1つのスイッチが、一次コイルに印可される電圧を電圧V1又は電圧V2のいずれか一方に切り替えてもよい。かかる1つのスイッチは、切替部の一例である。
【0060】
ダイオード15は、電源11のプラス側に電流が流入することを防止するための逆流防止ダイオードである。すなわち、ダイオード15は、トランス17から電源11に向かう方向へ電流が流れることを抑制する。ダイオード15のカソードは、トランス17の一次コイルのセンタータップ17cに接続されている。ダイオード15は、第1の抑制部の一例である。
【0061】
ダイオード16は、電源12のプラス側に電流が流入することを防止するための逆流防止ダイオードである。すなわち、ダイオード16は、トランス17から電源12に向かう方向へ電流が流れることを抑制する。ダイオード16のカソードは、トランス17の一次コイルのセンタータップ17cに接続されている。ダイオード16は、第2の抑制部の一例である。
【0062】
トランス17は、一次コイル及び二次コイルを備える。トランス17は、一次コイルに印可された電圧を変圧し、変圧された電圧を送信駆動電圧として超音波プローブ101に印可する。
【0063】
トランス17の一次コイルは、2つの巻線17a,17b及びセンタータップ17cを備える。センタータップ17cは、2つの巻線17a,17bの間に設けられている。トランス17の二次コイルは1つの巻線17dを備える。以下、巻線17aの巻線数を「N17a」とし、巻線17bの巻線数を「N17b」とし、巻線17dの巻線数を「N17d」とする。ここで、例えば、巻線数「N17a」と巻線数「N17b」とが同一であってもよい。また、巻線数「N17d」は、巻線数「N17a」よりも多くてもよい。また、巻線数「N17d」は、巻線数「N17b」よりも多くてもよい。
【0064】
巻線17aの一端は、スイッチ18を介してグランドに接地されている。巻線17aの他端は、センタータップ17cに接続されている。巻線17bの一端は、センタータップ17cに接続されている。巻線17bの他端は、スイッチ19を介してグランドに接地されている。
【0065】
巻線17dの一端は、グランドに接地されている。巻線17dの他端は超音波プローブ101に接続されている。このため、トランス17により変圧された電圧が超音波プローブ101に印可される。
【0066】
2つのスイッチ18,19は、一次コイルに流れる電流の方向(一次コイルにおいて電流が流れる方向)を切り替えるためのスイッチである。
【0067】
スイッチ18は、巻線17aのセンタータップ17cが接続されている側とは反対側に接続されるとともに、巻線17aとグランドとの間に設けられる。スイッチ18は、制御回路111aによる制御を受けて、巻線17aとグランドとの間の接続状態を導通状態又は非導通状態のいずれかの状態に設定する。例えば、スイッチ18が制御回路111aによる制御を受けてオンされた場合、巻線17aとグランドとの間の接続状態が導通状態となる。また、スイッチ18が制御回路111aによる制御を受けてオフされた場合、巻線17aとグランドとの間の接続状態が非導通状態となる。スイッチ18は、第1の設定部の一例である。また、巻線17aとグランドとの間の接続状態は、第1の接続状態の一例である。また、巻線17aは、一次コイルの2つの巻線17a,17bのうちの一の巻線の一例である。
【0068】
スイッチ19は、巻線17bのセンタータップ17cが接続されている側とは反対側に接続されるとともに、巻線17bとグランドとの間に設けられる。スイッチ19は、制御回路111aによる制御を受けて、巻線17bとグランドとの間の接続状態を導通状態又は非導通状態のいずれかの状態に設定する。例えば、スイッチ19が制御回路111aによる制御を受けてオンされた場合、巻線17bとグランドとの間の接続状態が導通状態となる。また、スイッチ19が制御回路111aによる制御を受けてオフされた場合、巻線17bとグランドとの間の接続状態が非導通状態となる。スイッチ19は、第2の設定部の一例である。また、巻線17bとグランドとの間の接続状態は、第2の接続状態の一例である。また、巻線17bは、一次コイルの2つの巻線17a,17bのうちの他の巻線の一例である。
【0069】
例えば、スイッチ18がオンされ、スイッチ19がオフされている場合、超音波プローブ101には正の電圧が印可される。また、スイッチ18がオフされ、スイッチ19がオンされている場合、超音波プローブ101には負の電圧が印可される。
【0070】
このように、本実施形態では、トランス17の一次コイルは、2つの巻線17a,17b、及び、2つの巻線17a,17bの間に設けられたセンタータップ17cを備える。また、トランス17の二次コイルは、1つの巻線17dを備える。この場合、トランス17周辺のスイッチング回路の規模が比較的小さくなるので、送信回路111全体の規模が比較的小さくなる。したがって、本実施形態によれば、送信回路111の規模の増大を抑制することができる。
【0071】
次に、4つのスイッチ13,14,18,19のそれぞれが、オン又はオフのいずれかの状態になる場合の送信回路111の動作の一例について説明する。
【0072】
まず、スイッチ13がオンされ、スイッチ14がオフされ、スイッチ18がオンされ、スイッチ19がオフされている場合について説明する。この場合、電源11により一次コイルに電圧V1が印可される。そして、電源11からスイッチ18に接続されたグランドに向かう方向に電流が流れる。すなわち、巻線17aに電流が流れる。そして、トランス17は、電圧V1を、大きさがVOUT1((「N17d」/「N17a」)×V1)である正の電圧VOUT1に変圧する。そして、トランス17は、正の電圧VOUT1を超音波プローブ101に印可する。
【0073】
次に、スイッチ13がオンされ、スイッチ14がオフされ、スイッチ18がオフされ、スイッチ19がオンされている場合について説明する。この場合、電源11により一次コイルに電圧V1が印可される。そして、電源11からスイッチ19に接続されたグランドに向かう方向に電流が流れる。すなわち、巻線17bに電流が流れる。そして、トランス17は、電圧V1を、大きさが「-VOUT1」(-(「N17d」/「N17b」)×V1)である負の電圧「-VOUT1」に変圧する。そして、トランス17は、負の電圧「-VOUT1」を超音波プローブ101に印可する。
【0074】
本実施形態では、超音波診断装置1にBモード画像データを生成するための超音波送信モードが設定されている場合、超音波診断装置1がBモード画像データを生成する。そして、超音波診断装置1がBモード画像データを生成する場合、制御回路111aは、正の電圧VOUT1及び負の電圧「-VOUT1」が交互に超音波プローブ101に印可されるように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。すなわち、制御回路111aは、Bモード画像データが生成される場合に一次コイルに印可される電圧を電圧V1に切り替えるように2つのスイッチ13,14を制御する。Bモード画像データは、第1の画像データの一例である。以下の説明では、Bモード画像データを生成するための超音波送信モードを「Bモード超音波送信モード」と称する場合がある。
【0075】
次に、スイッチ13がオフされ、スイッチ14がオンされ、スイッチ18がオンされ、スイッチ19がオフされている場合について説明する。この場合、電源12により一次コイルに電圧V2が印可される。そして、電源12からスイッチ18に接続されたグランドに向かう方向に電流が流れる。すなわち、巻線17aに電流が流れる。そして、トランス17は、電圧V2を、大きさがVOUT2((「N17d」/「N17a」)×V2)である正の電圧VOUT2に変圧する。そして、トランス17は、正の電圧VOUT2を超音波プローブ101に印可する。
【0076】
次に、スイッチ13がオフされ、スイッチ14がオンされ、スイッチ18がオフされ、スイッチ19がオンされた場合について説明する。この場合、電源12により一次コイルに電圧V2が印可される。そして、電源12からスイッチ19に接続されたグランドに向かう方向に電流が流れる。すなわち、巻線17bに電流が流れる。そして、トランス17は、電圧V2を、大きさが「-VOUT2」(-(「N17d」/「N17b」)×V2)である負の電圧「-VOUT2」に変圧する。そして、トランス17は、負の電圧「-VOUT2」を超音波プローブ101に印可する。
【0077】
本実施形態では、超音波診断装置1にカラー画像データを生成するための超音波送信モードが設定されている場合、超音波診断装置1がカラー画像データを生成する。そして、超音波診断装置1がカラー画像データを生成する場合、制御回路111aは、正の電圧VOUT2及び負の電圧「-VOUT2」が交互に超音波プローブ101に印可されるように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。ここで、超音波診断装置1がカラー画像データを生成する場合、制御回路111aは、正の電圧VOUT2及び負の電圧「-VOUT2」の組合せが複数回超音波プローブ101に印可されるように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。このように、制御回路111aは、カラー画像データが生成される場合に一次コイルに印可される電圧を電圧V2に切り替えるように2つのスイッチ13,14を制御する。カラー画像データは、第2の画像データの一例である。以下の説明では、カラー画像データを生成するための超音波送信モードを「カラー超音波送信モード」と称する場合がある。
【0078】
ここで、超音波診断装置1が、Bモード画像データ及びカラー画像データを生成し、Bモード画像データに基づくBモード画像にカラー画像データに基づくカラー画像を重畳してディスプレイ103に表示させる場合について説明する。この場合、超音波診断装置1は、Bモード超音波送信モードと、カラー超音波送信モードとを交互に切り替えることを繰り返し行う。これにより、超音波診断装置1は、Bモード画像データとカラー画像データとを交互に繰り返し生成する。
【0079】
図3及び図4は、超音波診断装置1が、Bモード超音波送信モードとカラー超音波送信モードとを交互に切り替える場合に実行する処理の一例を説明するための図である。
【0080】
図4には、送信回路111が超音波プローブ101に印可する送信駆動電圧の大きさの時系列変化が示されている。図4において、横軸が時間(Time)を示し、縦軸が送信駆動電圧(Voltage)の大きさを示す。なお、ここでいう時間は、例えば、時刻である。図4において、時間t1から時間t3までの間、Bモード超音波送信モードが設定されている。そして、時間t11から時間t16までの間、カラー超音波送信モードが設定されている。
【0081】
具体的には、まず、制御回路111aは、時間t1から時間t2までの間、トランス17が正の電圧VOUT1を超音波プローブ101に印可するように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。
【0082】
そして、制御回路111aは、時間t2から時間t3までの間、トランス17が負の電圧「-VOUT1」を超音波プローブ101に印可するように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。
【0083】
そして、制御回路111aは、時間t11から時間t12までの間、トランス17が正の電圧VOUT2を超音波プローブ101に印可するように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。
【0084】
そして、制御回路111aは、時間t12から時間t13までの間、トランス17が負の電圧「-VOUT2」を超音波プローブ101に印可するように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。
【0085】
そして、制御回路111aは、時間t13から時間t14までの間、送信駆動電圧が超音波プローブ101に印可されないように、4つのスイッチ13,14,18,19をオフさせる。
【0086】
そして、制御回路111aは、時間t14から時間t15までの間、トランス17が正の電圧VOUT2を超音波プローブ101に印可するように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。
【0087】
そして、制御回路111aは、時間t15から時間t16までの間、トランス17が負の電圧「-VOUT2」を超音波プローブ101に印可するように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。
【0088】
ここで、仮に、図4に示すように、制御回路111aが、時間t3から時間t11までの間、送信駆動電圧が超音波プローブ101に印可されないように、4つのスイッチ13,14,18,19の接続状態を制御する場合について説明する。例えば、制御回路111aは、時間t3から時間t11までの間、送信駆動電圧が超音波プローブ101に印可されないように、スイッチ13,18,19をオフさせ続ける。また、制御回路111aは、時間t3から時間(t11-Δt)までの間、スイッチ14をオフさせ続けるが、時間(t11-Δt)にスイッチ14をオンさせて、時間(t11-Δt)から時間t13までの間、スイッチ14をオンさせ続ける。ここで、時間(t11-Δt)は、時間t11よりも微小時間だけ前の時間を指す。
【0089】
この場合、図3における2つの矢印が示すように、制御回路111aは、時間(t11-Δt)において、スイッチ13をオフにさせたままスイッチ14をオンさせた後に、時間t11において、スイッチ19をオフにさせたままスイッチ18をオンにさせる。しかしながら、時間t11において、トランス17の一次コイルには、電荷が残留している。このように、一次コイルに電荷が残留してしまう理由としては、スイッチ14に逆流防止のためのダイオード16が接続されていることや、スイッチ14をオンさせた際に一次コイルがグランドに接続されていないことが理由として挙げられる。この場合、時間t11において電源11から電源12に切り替えられた場合であっても、トランス17の一次コイルに印可される電圧の大きさは、図3に示すように「V2」ではなく「V2」よりも大きい「V1´」となる。このように電荷が残留している場合には、図4に示すように、カラー画像データを生成する際に超音波プローブ101に印可される送信駆動電圧の複数の周期分の波形(図4の例では2周期分の波形)のうち、1番目の周期の波形にスパイクノイズ31が発生することがある。このようなスパイクノイズ31は、カラー画像データに画像ノイズが発生する原因となる。
【0090】
そこで、本実施形態では、超音波診断装置1は、トランス17の一次コイルに残留している電荷を取り除くことが可能なように、以下に説明する処理を実行する。
【0091】
図5及び図6は、実施形態に係る超音波診断装置1が実行する処理の一例を説明するための図である。制御回路111aは、図6に示す時間t1から時間t3までの間及び時間(t11-Δt)からt16までの間、図4に示す時間t1から時間t3までの間及び時間(t11-Δt)からt16までの間に実行する処理と同様の処理を行う。
【0092】
ここで、図6に示すように、制御回路111aは、時間t3から時間t4までの間、送信駆動電圧が超音波プローブ101に印可されないように、4つのスイッチ13,14,18,19をオフさせる。ここで、時間t4は、時間t3から時間t11までの範囲内の1つの時間である。
【0093】
そして、図5及び図6に示すように、制御回路111aは、時間t4において、スイッチ13,14をオフさせたまま、スイッチ18及びスイッチ19を同時にオンさせる。そして、制御回路111aは、時間t4から所定の時間までの一定の時間幅の間、スイッチ13,14をオフさせ続けるとともに、スイッチ18及びスイッチ19をオンさせ続ける。これにより、図5の2つの矢印が示すように、巻線17aにおいてセンタータップ17cからスイッチ18に接続されたグランドに向かう方向に電流が流れるとともに、巻線17bにおいてセンタータップ17cからスイッチ19に接続されたグランドに向かう方向に電流が流れる。ここで、巻線17aに流れる電流の大きさ及び巻線17bに流れる電流の大きさは、同一であるが、巻線17aに流れる電流の方向及び巻線17bに流れる電流の方向は、互いに逆方向である。このため、トランス17内部で発生する磁束は互いに打ち消されて、二次コイルに電圧が発生することなく、一次コイルに残留する電荷が取り除かれる。なお、上述した一定の時間幅は、例えば、トランス17の一次コイル(2つの巻線17a,17b)の時定数で定められることができ、十分に電荷を取り除くことが可能な時間幅が設定される。すなわち、上述した一定の時間幅は、2つの巻線17a,17bに応じた時間幅である。
【0094】
そして、制御回路111aは、時間t4から所定の時間までの一定の時間幅の間、スイッチ13,14をオフさせ続けるとともに、スイッチ18及びスイッチ19をオンさせ続けた後、上述した所定の時間から時間t11までの間、スイッチ13,18,19をオフさせ続けるとともに、上述した所定の時間から時間(t11-Δt)までの間、スイッチ14をオフさせ続ける。
【0095】
このように、制御回路111aは、スイッチ13,14により一次コイルに印可される電圧が電圧V1から電圧V2に切り替えられる場合に、巻線17aとグランドとの間の接続状態及び巻線17bとグランドとの間の接続状態を、同時に、一定の時間幅の間、導通状態に設定するようにスイッチ18及びスイッチ19を制御する。その後、制御回路111aは、一次コイルに印可される電圧が電圧V1から電圧V2に切り替えられるようにスイッチ13,14を制御する。
【0096】
本実施形態によれば、一次コイルに残留する電荷が取り除かれるので、図6の符号32が指す円の内部が示すように、スパイクノイズの発生を抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、カラー画像データに画像ノイズが発生することを抑制することができる。
【0097】
図7は、実施形態に係る超音波診断装置1の制御回路111aが実行する処理の一例の流れを示すフローチャートである。なお、図7に示す処理は、超音波診断装置1がBモード画像データ及びカラー画像データを生成し、Bモード画像にカラー画像を重畳してディスプレイ103に表示させる場合に実行される。例えば、制御回路111aは、入力装置102を介してユーザからBモード画像にカラー画像を重畳してディスプレイ103に表示させる指示が装置本体100に入力された場合に、図7に示す処理の実行を開始する。
【0098】
(ステップS101)
図7に示すように、ステップS101において、制御回路111aは、電源を切り替える特定の送信を選択する。以下、ステップS101における具体的な処理について説明する。例えば、制御回路111aは、現在のタイミングが、Bモード画像データを生成するタイミングであるのか、又は、カラー画像データを生成するタイミングであるのかを判定する。現在のタイミングがBモード画像データを生成するタイミングである場合、制御回路111aは、Bモード超音波送信モードを選択し、選択されたBモード超音波送信モードを設定する。一方、現在のタイミングがカラー画像データを生成するタイミングである場合、制御回路111aは、カラー超音波送信モードを選択し、選択されたカラー超音波送信モードを設定する。
【0099】
(ステップS102)
次に、ステップS102では、制御回路111aは、高い電源レベルから低い電源レベルへ切り替えるか否かを判定する。以下、ステップS102における具体的な処理について説明する。具体的には、制御回路111aは、今回のステップS101(直近のステップS101)で設定された超音波送信モードにおいて切り替えられる電源によって一次コイルに印可される電圧の大きさが、前回のステップS101で設定された超音波送信モードにおいて切り替えられた電源によって一次コイルに印可される電圧の大きさよりも小さいか否かを判定する。
【0100】
例えば、今回のステップS101でカラー超音波送信モードが設定され、前回のステップS101でBモード超音波送信モードが設定された場合、カラー超音波送信モードにおいて一次コイルに印可される電圧V2の大きさは、Bモード超音波送信モードにおいて一次コイルに印可される電圧V1の大きさよりも小さい。このため、この場合、ステップS102において、制御回路111aは、今回のステップS101で設定されたカラー超音波送信モードにおいて一次コイルに印可される電圧V2の大きさが、前回のステップS101で設定されたBモード超音波送信モードにおいて一次コイルに印可される電圧V1の大きさよりも小さいと判定する。
【0101】
また、例えば、今回のステップS101でBモード超音波送信モードが設定され、前回のステップS101でカラー超音波送信モードが設定された場合、ステップS102において、制御回路111aは、今回のステップS101で設定されたBモード超音波送信モードにおいて一次コイルに印可される電圧V1の大きさが、前回のステップS101で設定されたカラー超音波送信モードにおいて一次コイルに印可される電圧V2の大きさよりも大きいと判定する。
【0102】
今回のステップS101で設定された超音波送信モードにおいて切り替えられる電源によって一次コイルに印可される電圧の大きさが、前回のステップS101で設定された超音波送信モードにおいて切り替えられた電源によって一次コイルに印可される電圧の大きさよりも小さい場合(ステップS102:Yes)、制御回路111aは、ステップS103へ進む。
【0103】
一方、今回のステップS101で設定された超音波送信モードにおいて切り替えられる電源によって一次コイルに印可される電圧の大きさが、前回のステップS101で設定された超音波送信モードにおいて切り替えられた電源によって一次コイルに印可される電圧の大きさよりも大きい場合(ステップS102:No)、制御回路111aは、ステップS104へ進む。
【0104】
ここで、制御回路111aが実行するステップS102における処理が、図7に示す処理が開始されてから1回目のステップS102における処理である場合には、制御回路111aは、ステップS102において上述した判定処理を行わずに、ステップS104へ進む。
【0105】
(ステップS103)
ステップS103において、制御回路111aは、4つのスイッチ13,14,18,19全てを一旦オフにした後、一定の時間幅の間、スイッチ13,14をオフにさせ続けるとともに、スイッチ18及びスイッチ19を同時にオンにさせ続ける。その後、制御回路111aは、4つのスイッチ13,14,18,19全てを再びオフにする。
【0106】
例えば、先の図6に示すように、ステップS103において、制御回路111aは、時間t3から時間t4までの間、4つのスイッチ13,14,18,19全てを一旦オフにする。そして、制御回路111aは、時間t4から所定の時間までの一定の時間幅の間、スイッチ13,14をオフにさせ続けるとともに、スイッチ18及びスイッチ19を同時にオンにさせ続ける。そして、制御回路111aは、上述した所定の時間から時間t11までの間、スイッチ13,18,19を再びオフにするとともに、上述した所定の時間から時間(t11-Δt)までの間、スイッチ14をオフにさせ続ける。
【0107】
(ステップS104)
そして、ステップS104において、制御回路111aは、電源を切り替える。以下、ステップS104における具体的な処理について説明する。例えば、直近のステップS101においてBモード超音波送信モードが設定された場合、制御回路111aは、スイッチ13をオンさせる。一方、直近のステップS101においてカラー超音波送信モードが設定された場合、制御回路111aは、スイッチ14をオンさせる。
【0108】
(ステップS105)
そして、ステップS105において、制御回路111aは、送信回路111が超音波送信モードに応じた駆動信号を超音波プローブ101に送信するように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。以下、ステップS105における具体的な処理について説明する。
【0109】
例えば、直近のステップS101においてBモード超音波送信モードが設定された場合、制御回路111aは、正の電圧VOUT1及び負の電圧「-VOUT1」が交互に超音波プローブ101に印可されるように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。
【0110】
一方、直近のステップS101においてカラー超音波送信モードが設定された場合、制御回路111aは、正の電圧VOUT2及び負の電圧「-VOUT2」が交互に超音波プローブ101に印可されるように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。そして、制御回路111aは、正の電圧VOUT2及び負の電圧「-VOUT2」の組合せが複数回超音波プローブ101に印可されるように、4つのスイッチ13,14,18,19を制御する。
【0111】
(ステップS106)
次に、ステップS106において、制御回路111aは、現在のタイミングが、スキャンを終了するタイミングであるか否かを判定する。例えば、入力装置102を介してユーザからスキャンを終了させる指示が装置本体100に入力された場合に、制御回路111aは、現在のタイミングがスキャンを終了するタイミングであると判定する。一方、かかる指示が装置本体100に入力されていない場合には、制御回路111aは、現在のタイミングがスキャンを終了するタイミングではないと判定する。
【0112】
現在のタイミングがスキャンを終了するタイミングではない場合(ステップS106:No)、制御回路111aは、ステップS101に戻り、ステップS101以降の処理を再び実行する。一方、現在のタイミングがスキャンを終了するタイミングである場合(ステップS106:Yes)、制御回路111aは、図7に示す処理を終了する。
【0113】
以上、実施形態に係る超音波診断装置1について説明した。本実施形態によれば、上述したように、スパイクノイズの発生を抑制することができる。また、本実施形態によれば、上述したように、送信回路111の規模の増大を抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、送信回路111の規模の増大を抑制しつつ、スパイクノイズの発生を抑制することができる。
【0114】
なお、上述した実施形態では、超音波送信モードが、Bモード超音波送信モードからカラー超音波送信モードに切り替わる場合に、ステップS103において、制御回路111aが、一定の時間幅の間、スイッチ13,14を同時にオフにさせ続ける例について説明した。しかしながら、上述した実施形態で説明した場合以外にも、一次コイルに印可される電圧が低くなるように一次コイルに印可される電圧が切り替わる場合には、同様に、制御回路111aは、一定の時間幅の間、スイッチ13,14を同時にオフにさせ続けてもよい。この場合、一次コイルに印可される電圧が低くなるように一次コイルに印可される電圧が切り替わった後に超音波プローブ101に送信される駆動信号は、複数周期分の信号ではなく、1周期分の信号であってもよい。
【0115】
また、制御回路170が、制御回路111aが実行する処理の一部又は全部を実行してもよい。
【0116】
なお、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることによって提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各処理機能を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0117】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、送信回路111の規模の増大を抑制しつつ、スパイクノイズの発生を抑制することができる。
【0118】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0119】
1 超音波診断装置
11,12 電源
13,14,18,19 スイッチ
15,16 ダイオード
17 トランス
17a,17b,17d 巻線
17c センタータップ
101 超音波プローブ
110 送受信回路
111 送信回路
111a 制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7