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  • 特許-パルプモールド製容器とその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】パルプモールド製容器とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/22 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
B65D1/22 BRQ
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021021514
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124002
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】599010152
【氏名又は名称】日本包材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090402
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 法明
(72)【発明者】
【氏名】白石 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】村田 陽彦
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-122240(JP,A)
【文献】特開2000-053180(JP,A)
【文献】特表2019-527779(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0236822(US,A1)
【文献】特開昭60-204446(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第3026023(DE,A1)
【文献】特開昭59-076624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を挿入・収納する収納部と該収納部を囲繞する外周部とを備え、該収納部と該外周部はパルプモールドで各々形成されたものからなり、該収納部は、商品を挿入・収納する収納凹部と、該収納凹部の上縁から側方に拡がるフランジ部とを有し、該外周部は、内側に張り出した状態の重なり代を上縁に有し、該フランジ部の周縁の形状・大きさは該外周部の上縁の形状・大きさと略同一であり、該外周部の重なり代には該フランジ部が重なって接着・一体化されており、該外周部の全部又は一部は該収納凹部に近接していることを特徴とするパルプモールド製容器。
【請求項2】
前記外周部と前記収納凹部との間の最も狭い箇所の間隔が該収納凹部の深さの1.5倍より狭いことを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド製容器。
【請求項3】
前記外周部と前記収納凹部との間の最も狭い箇所の間隔が該収納凹部の深さより狭いことを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド製容器。
【請求項4】
前記収納部と前記外周部とは相互に嵌合していることを特徴とする請求項1に記載のパルプモールド製容器。
【請求項5】
前記外周部の底を塞ぐ略板状の底部を有していることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のパルプモールド製容器。
【請求項6】
前記外周部の上部に嵌合する蓋部を有していることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のパルプモールド製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプモールドによって製造されたパルプモールド製容器とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家電製品等はプラスチック製のパッケージに入れて販売されている。このプラスチック製のパッケージは家電製品等を取り出した後、廃棄物となる。廃棄物となったプラスチック製のパッケージは、焼却されるか、プラスチック資源として再利用されているが、投棄され、最終的に海に流れて行くものも多い。
【0003】
海に流れていったプラスチック製のパッケージは、海の中で分解されることなく長期に亘って漂い、海や海岸を汚染させるという問題がある。また、海に流れていったプラスチック製のパッケージは、波の力によって機械的に破壊され、マイクロプラスチックとなって生物の環境を悪化させているという問題もある。
【0004】
そこで、自然界で容易に分解する、環境を悪化させないパッケージの開発が求められ、パルプモールドによって作られた立体的な紙製のパッケージが提案されている。この立体的な紙製のパッケージ(パルプモールド製容器)はプラスチック製のパッケージと置き換わりつつある。ここで、パルプモールドとは、植物性の繊維を水中に分散させてなるパルプスラリーを立体的な網型で漉き、得られた成形物を整形・乾燥させて立体的な紙製のパッケージ(紙製容器)を得る方法をいう。
【0005】
ところで、家電製品等を入れるパッケージで、家電製品等を収納するための凹みの壁とパッケージの壁との間の間隔が狭いと、パルプモールドの時に、凹みの壁とパッケージの壁との間に充分な量のパルプスラリーが入らず、あるいはパルプスラリーの取り合いになり、凹みの壁とパッケージの壁との対向している部位にパルプスラリーが充分に供給されず、これらの部位が不均一に形成されたり、欠損したりするという不都合が生じる。
【0006】
そこで、家電製品等を入れるパッケージをパルプモールドで作る場合は、家電製品等を収納するための凹みの壁とパッケージの壁との間の間隔をかなり空けざるを得なかった。しかし、家電製品等を収納するための凹みの壁とパッケージの壁との間の間隔をかなり空けると、パルプモールド製容器の全体のサイズが従来のプラスチック製容器より大きくなってしまうという問題があった。このため、従来のプラスチック製のパッケージと同程度の大きさの、小型のパルプモールド製容器とその製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-226999号公報
【文献】特開2001-55698号公報
【文献】特開2001-55699号公報
【文献】実用新案登録第3136227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、商品を収納する収納部と、該収納部を囲繞する外周部とを備えたパルプモールド製容器をコンパクトに作ろうとすると、該外周部と該収納部との間の隙間に充分な量のパルプスラリーが入らず、該外周部と該収納部の対向している各部位が薄くなったり、不均一になったり、欠損したりする点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るパルプモールド製容器は、商品を挿入・収納する収納部と該収納部を囲繞する外周部とを備え、該収納部と該外周部はパルプモールドで各々形成されたものからなり、該外周部の全部又は一部は該収納部に近接又は接しているものである。
【0010】
また、本発明に係るパルプモールド製容器の製造方法は、商品を挿入・収納する収納凹部と該収納部を囲繞する外周部とを備え、該外周部の全部又は一部は該収納部に近接又は接しているパルプモールド製容器の製造方法であって、該収納部をパルプモールドで形成する収納部形成工程と、該外周部をパルプモールドで形成する外周部形成工程と、該収納部と該外周部とを組み立ててパルプモールド製容器を得る組立工程とを備えているものである。
【0011】
ここで、該収納部は、商品を挿入・収納する収納凹部と、該収納凹部の上縁から側方に拡がるフランジ部とを有している。該フランジ部の外周縁の形状・大きさと該外周部の上縁の形状・大きさとは略同一になっている。該フランジ部の周縁と該外周部の上縁とは、パルプモールド製容器に組み立てた状態で、重なり合っている。
【0012】
該外周部の全部又は一部は、パルプモールド製容器の状態で、該収納凹部に近接又は接している。ここで、近接とは、対向する該外周部と該収納凹部をパルプモールドできれいに且つ一体的に形成することが困難になる間隔、すなわち該収納凹部の深さの1~1.5倍以下の間隔をいう。なお、この間隔以上の場合でも、本発明のように該外周部と該収納部を分割して製造する場合は排除しない。
【0013】
該外周部と該収納部は嵌合・一体化させてもよいし、接着・一体化させてもよい。該外周部と該収納部は重なり代を各々有していてもよい。該外周部と該収納部を接着・一体化させる場合、重なり代同士を接着させると、該外周部と該収納部の結合が強固になる。該収納部と該外周部はプレス型で抜き加工をしてもよいし、NCで抜き加工をしてもよい。
【0014】
本発明に係るパルプモールド成形体は、該収納部と該外周部以外に、パルプモールド法で形成した底部や蓋部を別途有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、該収納部と該外周部がパルプモールドで各々形成されているので、パルプスラリーを漉く際の、該収納部と該外周部との間におけるパルプスラリーの取り合いのような干渉を考慮して、該収納部と該外周部との間隔を広げるために、該外周部を大きく形成する必要がなく、該外周部をできる限り小さく形成することができ、従って、該外周部を小さく形成してコンパクトなパルプモールド製容器を製造することができるという効果がある。
【0016】
また、本発明は、該収納部と該外周部がパルプモールドで各々形成されているので、パルプスラリーを漉く際の、収納部と外周部の間におけるパルプスラリーの取り合いのような干渉を考慮して、該収納部と該外周部との間隔を広げるために、外周部のテーパーを大きく形成する必要がなく、該外周部のテーパーを小さく形成することができ、従って、該外周部のテーパーを小さく形成して、テーパーの目立たないパルプモールド製容器を製造することができるという効果がある。
【0017】
また、本発明は、該収納部と該外周部がパルプモールドで各々形成されているので、パルプスラリーを漉く際に、該収納部と該外周部の間でパルプスラリーの取り合いのような干渉が生じず、該収納部と該外周部について、対向している部位が欠損したり、不均一に形成されたりすることがなく、従って、欠損の無いきれいなパルプモールド製容器を製造することができるという効果がある。
【0018】
また、本発明は、該フランジ部の周縁の形状・大きさが該外周部の上縁部の形状・大きさと略同一であり、該フランジ部の周縁と該外周部の上縁とがパルプモールド製容器の上縁と重なる位置にあって、該フランジ部の周縁と該外周部の上縁とが目立たないので、一体感のあるパルプモールド製容器を製造することができるという効果がある。
【0019】
また、本発明は、該収納部と該外周部とが相互に嵌合可能になっている場合に、該収納部と該外周部とを嵌合させるという簡単な方法だけで組み立てることができるので、パルプモールド製容器を容易に製造することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明に係るパルプモールド製容器の一実施例の断面図である。
図2図2は本発明に係るパルプモールド製容器の一実施例の分解断面図である。
図3図3は本発明に係るパルプモールド製容器の製造工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、できるだけコンパクトなパルプモールド製容器を製造するという目的を、通常のパルプモールドの製造工程を用いて、パルプモールド製容器を部分的に損なうことなく実現した。
【実施例
【0022】
図1は本発明に係るパルプモールド製容器の一実施例の断面図、図2は本発明に係るパルプモールド製容器の一実施例の分解断面図である。
【0023】
これらの図において、10はパルプモールド製容器であり、パルプモールド製容器10は、家電製品等の商品を収納する収納部12と、収納部12の周囲を囲繞する略筒状の外周部14と、外周部14の底を塞ぐ底部16と、外周部14の上部に嵌合して収納部12を上方から覆う蓋部18とからなる。
【0024】
収納部12は、家電製品等の商品を挿入・収納する1又は2以上の収納凹部20と、収納凹部20の上縁から側方に拡がるフランジ部22とからなる。収納凹部20は家電製品等の商品を挿入・収納するための凹みであり、収納する家電製品等の大きさより少し大きく形成されている。収納凹部20が2以上の場合、2以上の収納凹部20はフランジ部22によって連結されている。
【0025】
フランジ部22の外周縁の形状・大きさは外周部14の上縁の形状・大きさと略同一になっている。フランジ部22の外周縁と外周部14の上縁とは接着剤で接着・一体化しているが、フランジ部22の外周縁と外周部14の上縁とは、単に重なったままの状態にしてもよいし、嵌合・一体化させてもよい。
【0026】
底部16の外周縁の形状・大きさは外周部14の下縁の形状・大きさと略同一になっている。底部16の外周縁と外周部14の下縁とは接着剤で接着・一体化しているが、底部16の外周縁と外周部14の下縁とは単に嵌合させておいてもよい。
【0027】
外周部14の上方の部位には段差部24が下方の部分より少し縮小した状態で全周に亘って形成されている。蓋部18は一方が開口したコップ状の形状をしている。蓋部18の開口している側の縁部は外周部14の上方の部位に段差部24の高さ位置まで嵌合している。蓋部18の外周面と外周部14の外周面(段差部24より下の面)とは段差部24の近傍で面一になっている。
【0028】
外周部14の全部又は一部は収納凹部20と近接又は接触している。外周部14と収納凹部20とが近接又は接触している経度と同一の経度にあるフランジ部22の幅は狭く形成されている。ここで、狭くとは、フランジ部22の幅が収納凹部20の深さの1~1.5倍より短いことをいう。収納部12と外周部14は、パルプモールドで別々に形成されたものを、後で組み立てているので、収納凹部20と外周部14との間隔(裏溝幅)をパルプモールドで形成できない狭い間隔にすることができる。
【0029】
外周部14の上縁には収納部12のフランジ部22と重なる重なり代(図示せず)を、収納凹部20を避けた状態で、内側に張り出した状態で形成させてもよい。外周部14の上縁に重なり代(図示せず)を形成させた場合、収納部12と外周部14とを強固に接着・一体化させることができる。
【0030】
次に、本発明に係るパルプモールド製容器の製造工程について、図3の工程図を参照しながら説明する。なお、下記の浸漬・減圧工程、脱水工程、整形工程、圧縮・乾燥工程、加工工程で使用する型は製造される各パルプモールド成形体(収納部12、外周部14、底部16、蓋部18)の形状に対応した型が使用されている。
【0031】
パルプスラリー調製工程:予め、水に有機質の繊維その他を分散させたパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーをスラリー槽に貯留しておく。
【0032】
浸漬・減圧工程:スラリー槽に漉型を沈め、漉型を減圧する。漉型の型の部分は網で作られており、パルプスラリーは網で作られた型の部分に引き寄せられ、パルプスラリー中の水だけが型を通過して排出され、パルプスラリー中の繊維は型に引っ掛かり、漉型の型の表面には所定厚みの繊維マットが残留・形成される。
【0033】
脱水工程:漉型の型の表面に残留・形成された繊維マットを水切り型に移動させる。水切り型に移動させられた繊維マットは水切り型で圧縮され、脱水される。
【0034】
整形工程:水切り型で脱水された繊維マットを整形型に移動させる。整形型に移動させられた繊維マットは整形型で押圧されて整形され、湿った状態のパルプモールド成形体が形成される。
【0035】
圧縮・乾燥工程:整形型で形成された湿った状態のパルプモールド成形体をホットプレスに移動させる。ホットプレスに移動させられた湿った状態のパルプモールド成形体はホットプレスで圧縮・加熱され、乾燥するとともに、薄くて緻密なパルプモールド成形体になる。
【0036】
加工工程:パルプモールド成形体をプレス型で抜き加工し、又はNCで抜き加工して、パルプモールド成形体の余分な部分を除去して、収納部12、外周部14、底部16、蓋部18を得る。
【0037】
組立工程(1):収納部12のパルプモールド成形体の縁部又は外周部14のパルプモールド成形体の縁部に予め接着剤を塗布する。そして、外周部14を形成するパルプモールド成形体に収納部12を形成するパルプモールド成形体を嵌合させる。外周部14を形成するパルプモールド成形体と収納部12を形成するパルプモールド成形体は接着・一体化する。
【0038】
組立工程(2):外周部14を形成するパルプモールド成形体の下縁又は底部16を形成するパルプモールド成形体の周縁に予め接着剤を塗布する。そして、外周部14を形成するパルプモールド成形体の下縁に底部16を形成するパルプモールド成形体を嵌合させる。外周部14を形成するパルプモールド成形体と底部16を形成するパルプモールド成形体は接着・一体化する。
【0039】
組立工程(3):外周部14を形成するパルプモールド成形体の上部に蓋部18を形成するパルプモールド成形体を嵌合させる。これで、本発明の一例に係るパルプモールド製容器が完成する。
【0040】
なお、上記の各工程において使用されている漉型、水切り型、整形型、ホットプレス、プレス型は、パルプモールドで形成される収納部12、外周部14、底部16、蓋部18に対応した型形状のものを各々用いている。
【符号の説明】
【0041】
10 パルプモールド製容器
12 収納部
14 外周部
16 底部
18 蓋部
20 収納凹部
22 フランジ部
24 段差部
図1
図2
図3