IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-チップ抵抗器 図1
  • 特許-チップ抵抗器 図2
  • 特許-チップ抵抗器 図3
  • 特許-チップ抵抗器 図4
  • 特許-チップ抵抗器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/142 20060101AFI20241210BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01C1/142
H01C7/00 110
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021027335
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128881
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 圭太
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/189217(WO,A1)
【文献】特開2003-282305(JP,A)
【文献】特開2009-043883(JP,A)
【文献】特開2016-092127(JP,A)
【文献】特開2020-170843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/142
H01C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面両端部に設けられた一対の表電極と、前記絶縁基板の裏面両端部に設けられた一対の裏電極と、一対の前記表電極に両端部を重ねるように設けられた抵抗体と、前記表電極と前記抵抗体の接続部分を含めて該抵抗体の全体を覆うように設けられたガラス材料からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に積層された樹脂材料からなる第2絶縁層と、前記表電極上に積層され、該表電極よりも耐硫化性の高い材料からなる一対の補助電極層と、少なくとも前記絶縁基板の両端面に延在して前記補助電極層と前記裏電極を導通する一対の端面電極と、前記補助電極層と前記端面電極および前記裏電極を覆う外部メッキ層と、を備え、
前記第1絶縁層は、前記第2絶縁層に覆われずに前記表電極の上面の一部に重なる突出部を有しており、
前記補助電極層が、少なくとも前記表電極と前記突出部を覆うように形成されていると共に、前記補助電極層の表面における最大高さ位置が前記第2絶縁層の表面における最大高さ位置以上に設定されている、
ことを特徴とするチップ抵抗器。
【請求項2】
前記補助電極層は、導電性粒子を含有する樹脂材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項3】
前記導電性粒子は、金属粒子とカーボン粒子のいずれか一方または両方である、ことを特徴とする請求項2に記載のチップ抵抗器。
【請求項4】
前記補助電極層の表面に粗面化処理が施されている、ことを特徴とする請求項2または3に記載のチップ抵抗器。
【請求項5】
前記第2絶縁層は、両端部が前記表電極に重ならない位置に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器
【請求項6】
前記補助電極層は上部補助電極層と下部補助電極層からなり、前記上部補助電極層は前記下部補助電極層よりも電気伝導率の高い導電材料からなる、ことを特徴とする請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項7】
前記下部補助電極層がカーボン粒子を含有するカーボン系樹脂材料からなると共に、前記上部補助電極層が金属粒子を含有する金属系樹脂材料からなる、ことを特徴とする請求項6に記載のチップ抵抗器。
【請求項8】
前記下部補助電極層の上面が前記第2絶縁層の上面よりも低い位置に設定されている、ことを特徴とする請求項6または7に記載のチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面実装タイプのチップ抵抗器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、絶縁基板の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の表電極と、絶縁基板の裏面に所定間隔を存して対向配置された一対の裏電極と、表電極と裏電極を導通する一対の端面電極と、これら各電極を覆う一対の外部メッキ層と、対をなす表電極どうしを橋絡する抵抗体と、抵抗体を覆う絶縁性の保護膜等によって主に構成されている。
【0003】
この種のチップ抵抗器において、通常、表電極には比抵抗の低いAg(銀)系の金属材料が用いられており、この表電極を覆うように外部メッキ層が形成された構成となっているが、外部メッキ層と保護膜の境界部分となる隙間から腐食性の強い硫化ガス等が侵入し易いため、表電極と保護膜の境界位置における表電極部分が硫化ガス等によって腐食されて抵抗値変化や断線等の不具合を招来する虞がある。
【0004】
従来、特許文献1に開示されるように、表電極と保護膜の双方に接続する保護電極を形成し、端面電極を保護膜に接触しないように表電極と保護電極上に形成すると共に、外部メッキ層を保護電極と端面電極の境界位置を超えて保護膜の端部まで覆うように形成することにより、耐硫化性の向上を図るようにしたチップ抵抗器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/123419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたチップ抵抗器では、外部メッキ層が導電性の保護電極上に形成されるため、絶縁性の保護膜よりも密着性が高くなり、しかも、外部メッキ層と保護電極によって二重の遮蔽構造となっているため、表電極への硫化ガスの侵入を抑制することができる。
【0007】
しかし、保護電極が保護層の端部の斜面に沿って形成され、この保護電極を覆うように外部メッキ層が形成されているため、ヒートサイクル等に起因して発生する熱応力によって外部メッキ層と保護電極の密着力が低下すると、保護層と保護電極の境界部分に隙間ができてしまい、当該部分から硫化ガス等が入り込んでしまうことになる。
【0008】
また、一般的に端面電極は生産性の高いスパッタ工法を用いて形成されるが、かかるスパッタ時にスパッタ粒子が保護電極を超えて保護層の上面まで到達した場合には、その部位まで外部メッキ層が析出してしまうことになる。その際、外部メッキ層は絶縁性の保護層との密着性が低いため、外部メッキ層の内側に保護電極が形成されていても、外部メッキ層の先端部を起点に発生した応力によって、保護電極上の外部メッキ層が保護層から剥離し易くなってしまう。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐食性に優れたチップ抵抗器を提供することにある。
.
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のチップ抵抗器は、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の表面両端部に設けられた一対の表電極と、前記絶縁基板の裏面両端部に設けられた一対の裏電極と、一対の前記表電極に両端部を重ねるように設けられた抵抗体と、前記表電極と前記抵抗体の接続部分を含めて該抵抗体の全体を覆うように設けられたガラス材料からなる第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に積層された樹脂材料からなる第2絶縁層と、前記表電極上に積層され、該表電極よりも耐硫化性の高い材料からなる一対の補助電極層と、少なくとも前記絶縁基板の両端面に延在して前記補助電極層と前記裏電極を導通する一対の端面電極と、前記補助電極層と前記端面電極および前記裏電極を覆う外部メッキ層と、を備え、前記第1絶縁層は、前記第2絶縁層に覆われずに前記表電極の上面の一部に重なる突出部を有しており、前記補助電極層が、少なくとも前記表電極と前記突出部を覆うように形成されていると共に、前記補助電極層の表面における最大高さ位置が前記第2絶縁層の表面における最大高さ位置以上に設定されている、ことを特徴としている。
【0011】
このように構成されたチップ抵抗器では、表電極の上面から第2絶縁層の上面に至る段差が、表電極の上面から第1絶縁層の突出部の上面に至る段差と、第1絶縁層の突出部の上面から第2絶縁層の上面に至る段差とに分けられ、それぞれの段差の高さが小さくなるため、これら段差を含む部分に補助電極層を安定した形状に形成することができる。また、補助電極の表面における最大高さ位置を第2絶縁層の表面における最大位置以上とすることにより、第2絶縁層に重なる補助電極層の端部で形状が安定するため、補助電極層の端部への応力集中が軽減され、補助電極層と第2絶縁層間の剥離や、外部メッキ層と補助電極層間の剥離を防止することができる。
【0012】
また、このチップ抵抗器は、第1絶縁層が第2絶縁層に覆われずに表電極の上面に重なる突出部を有しており、第2絶縁層が表電極に直接接していない構造となっているため、硫化ガスが補助電極層と第2絶縁層の界面から侵入した場合でも、硫化ガスは表電極に到達する前にガラス材料からなる第1絶縁層の突出部で受け止められ、表電極が硫化ガスによって腐食しまうことを防止できる。なお、硫化ガスは、高湿度雰囲気下において樹脂材料からなる第2絶縁層の内部に入り込み易くなるが、その場合でも、第2絶縁層の内部を通過した硫化ガスは、表電極に到達する前にガラス材料からなる第1絶縁層で受け止められるため、表電極が硫化ガスによって腐食しまうことを防止できる。
【0013】
上記の構成において、補助電極層は表電極よりも耐硫化性の高い材料で形成されていれば良いが、特に、補助電極層は導電性粒子を含有する樹脂材料からなることが好ましい。ここで、樹脂材料に含有される導電性粒子としては、銀(Ag)やニッケル(Ni)等の金属粒子またはカーボン粒子が好ましく、これら金属粒子とカーボン粒子のいずれか一方を単独で用いても良く、金属粒子とカーボン粒子の両方を混合して用いても良い。
【0014】
この場合において、補助電極層の表面に粗面化処理が施されていると、補助電極層に対する外部メッキ層の密着強度を高めることができる。特に、補助電極層が金属粒子を含有しないカーボン系樹脂からなる場合、第1絶縁層と第2絶縁層に対する補助電極層の密着性を高めることができると共に、粗面化処理によって補助電極層に対する外部メッキ層の密着性を高めることができる。
【0015】
また、上記の構成において、第2絶縁層の両端部が表電極と第1絶縁層の両方に重なるように形成されていても良いが、第2絶縁層の両端部が表電極に重ならない位置に形成されていると、硫化ガスが樹脂材料からなる第2絶縁層の内部に入り込んだとしても、硫化ガスが表電極に到達するまでの移動経路が長くなるため、表電極の腐食をより確実に防止することができ、しかも、第1絶縁層と第2絶縁層間の段差が小さくなるため、補助電極層を形成する際の印刷性を高めることができる。
【0016】
また、上記の構成において、補助電極層は単層構造であっても良いが、補助電極層を上部補助電極層と下部補助電極層からなる2層構造とし、上部補助電極層を下部補助電極層よりも電気伝導率の高い導電材料で形成すると、表電極と第1絶縁層の突出部に対する下部補助電極層の密着強度を高めた上で、上部補助電極層に対する外部メッキ層の密着強度を高めることができる。その際、下部補助電極層がカーボン粒子を含有するカーボン系樹脂材料からなると共に、上部補助電極層が金属粒子を含有する金属系樹脂材料からなることが好ましい。
【0017】
この場合において、下部補助電極層の上面が第2絶縁層の上面よりも低い位置に設定されていると、下部補助電極層から第2絶縁層の上面にかけて形成される上部補助電極層の端部形状が安定するため、第2絶縁層と補助電極層間や補助電極層と外部メッキ層間において、端部への応力集中が軽減されて各層間での剥離を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外部メッキ層の剥がれを防止して耐食性に優れたチップ抵抗器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
図2】該チップ抵抗器の製造工程を示す平面図である。
図3】該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、図1は第1の実施形態に係るチップ抵抗器の断面図、図2は該チップ抵抗器の製造工程を示す平面図、図3は該チップ抵抗器の製造工程を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1は、直方体形状の絶縁基板2と、絶縁基板2の上面における長手方向の両端部に設けられた一対の表電極3と、絶縁基板2の下面における長手方向の両端部に設けられた一対の裏電極4と、一対の表電極3に両端部を重ねるように設けられた長方形状の抵抗体5と、表電極3と抵抗体5の接続部分を含めて抵抗体5の全体を覆う第1絶縁層6と、第1絶縁層6上に積層された第2絶縁層7と、表電極3上に積層された一対の補助電極層8と、絶縁基板2の両端面に延在して対応する補助電極層8と裏電極4間を導通する一対の端面電極9と、補助電極層8と端面電極9および裏電極4を覆うように設けられた一対の外部メッキ層10と、により主として構成されている。
【0022】
絶縁基板2はセラミックス等からなり、この絶縁基板2は、後述するシート状の大判基板を縦横に延びる一次分割溝と二次分割溝に沿って分割することにより多数個取りされたものである。
【0023】
表電極3は、Pd(パラジウム)を含有するAg(銀)系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。
【0024】
裏電極4は、銀(Ag)やニッケル(Ni)等の金属粒子またはカーボン粒子を充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化(焼付け)させたものである。
【0025】
抵抗体5は、酸化ルテニウム等の抵抗ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものであり、この抵抗体5の長手方向の両端部は表電極3に重なっている。図示省略されているが、抵抗体5には抵抗値を調整するためのトリミング溝が形成されている。
【0026】
第1絶縁層6は、ガラスペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成させたものである。第1絶縁層6はトリミング溝を形成する前に抵抗体5を覆うように形成されており、第1絶縁層6における抵抗体5から露出する両端部は突出部6aとなっている。突出部6aは、表電極3における絶縁基板2の端面から離れた内方部分の上面に平坦状に重なっている。
【0027】
第2絶縁層7は、エポキシ樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。第2絶縁層7は、トリミング溝を形成した後の第1絶縁層6の突出部6aを除いた部分を覆うように形成されている。
【0028】
補助電極層8は、表電極3よりも耐硫化性の高い材料、具体的には、銀(Ag)やニッケル(Ni)またはカーボン等の導電性粒子を充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。補助電極層8は、表電極3と第1絶縁層6の突出部6aを覆って、第2絶縁層7の上面の途中に至る範囲に形成されており、補助電極層8の表面における最大高さ位置は第2絶縁層7の表面における最大高さ位置以上となっている。
【0029】
端面電極9は、ニッケル(Ni)/クロム(Cr)等をスバッタリングすることによって形成されたものであり、この端面電極9によって絶縁基板2の端面を介して上下に離間する補助電極層8と裏電極4とが導通されている。なお、補助電極層8の第2絶縁層7寄りの上面は端面電極9に覆われておらず、裏電極4の絶縁基板2の端面から離れた内側部分も端面電極9に覆われていない。
【0030】
外部メッキ層10は、バリヤー層11と外部接続層12の2層構造からなり、そのうちバリヤー層11は電解めっきによって形成されたNiメッキ層であり、外部接続層12は電解めっきによって形成されたSnメッキ層である。この外部メッキ層10は、端面電極9の表面全体と該端面電極9から露出する補助電極層8を覆うと共に、端面電極9から露出する裏電極4を覆っている。
【0031】
次に、上記の如く構成されたチップ抵抗器1の製造方法について、図2図3を参照しながら説明する。
【0032】
まず、格子状に延びる一次分割溝と二次分割溝が形成された大判基板2Aを準備する。これら一次分割溝と二次分割溝によって大判基板2Aの表裏両面は多数のチップ形成領域に区画され、これらチップ形成領域がそれぞれ1個分の絶縁基板2となる。図2図3には1つのチップ形成領域が代表的に示されているが、実際には、このようなチップ形成領域が格子状に多数配列されている。
【0033】
そして、図2(a)と図3(a)に示すように、大判基板2Aの表面にAg-Pdペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の表電極3を形成する。
【0034】
次に、図2(b)と図3(b)に示すように、大判基板2Aの表面に酸化ルテニウム等を含有した抵抗ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、両端部を表電極3に重ね合わせた長方形状の抵抗体5を形成する。
【0035】
次に、図2(c)と図3(c)に示すように、抵抗体5を覆う領域にガラスペーストをスクリーン印刷してこれを乾燥・焼成することにより、表電極3との接続端部を含めて抵抗体5の全体を被覆する第1絶縁層6を形成する。そして、この第1絶縁層6の上からレーザー光を照射することにより、抵抗体5に不図示のトリミング溝を形成して抵抗値を調整する。
【0036】
次に、図2(d)と図3(d)に示すように、第1絶縁層6の上からエポキシ樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化(焼付け)することにより、第1絶縁層6を覆う第2絶縁層7を形成する。その際、第1絶縁層6の両端部に形成された突出部6aは、第2絶縁層7から露出して表電極3の上面に平坦状に重なっている。また、これと同時あるいは前後して、大判基板2Aの裏面にカーボン系の導電フィラーを充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、各チップ形成領域の長手方向両端部に所定間隔を存して対向する一対の裏電極4を形成する。
【0037】
次に、図2(e)と図3(e)に示すように、カーボン系の導電フィラーを充填した樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、表電極3と第1絶縁層6の突出部6aを覆う一対の補助電極層8を形成し、その後、補助電極層8の表面を有機溶剤やブラスト等を用いて粗面化処理する。これら補助電極層8は、第2絶縁層7の両端部を越えて上面の途中に至る範囲に形成されるため、補助電極層8の表面における最大高さ位置は第2絶縁層7の表面における最大高さ位置以上となっている。
【0038】
これまでの工程は大判基板2Aに対する一括処理であるが、次なる工程では、大判基板2Aを一次分割溝に沿って短冊状に一次分割することにより、チップ形成領域の長手方向を幅寸法とする短冊状基板2Bを得る。
【0039】
次に、この短冊状基板2Bの分割面に向けてNi/Crをスパッタリングすることにより、図2(f)と図3(f)に示すように、補助電極層8と裏電極4を導通する一対の端面電極9を形成する。その際、端面電極9は補助電極層8と裏電極4の外側端寄りの表面を覆うように断面コ字状に形成されるが、補助電極層8の第2絶縁層7寄りの上面は端面電極9に覆われず、裏電極4の内側端寄りの表面も端面電極9に覆われない。
【0040】
次に、短冊状基板2Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板2Cに2次分割した後、これらチップ状基板2Cに対して電解Niめっきを施すことにより、図2(g)と図3(g)に示すように、端面電極9を被覆するバリヤー層11を形成する。
【0041】
しかる後、チップ状基板2Cに対して電解Snめっきを施すことにより、図2(h)と図3(h)に示すように、バリヤー層11を被覆する外部接続層12を形成する。これにより、Niメッキ層とSnメッキ層の2層構造からなる外部メッキ層10が形成され、図1に示すチップ抵抗器1が完成する。
【0042】
以上説明したように、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1では、表電極3の上面から第2絶縁層7の上面に至る段差が、表電極3の上面から第1絶縁層6の突出部6aの上面に至る段差(つまり突出部6aの厚み)と、第1絶縁層6の突出部6aの上面から第2絶縁層7の上面に至る段差(つまり第2絶縁層7の厚み)とに分けられ、それぞれの段差の高さが小さくなるため、これら段差を含む部分に補助電極層8を安定した形状に形成することができる。また、補助電極8の表面における最大高さ位置を第2絶縁層7の表面における最大位置以上とすることで補助電極層8の印刷成形性が良好となり、第2絶縁層7に重なる補助電極層8の端部で形状が安定するため、補助電極層8の端部への応力集中が軽減され、補助電極層8と第2絶縁層7間の剥離や、外部メッキ層10と補助電極層8間の剥離を防止することができる。
【0043】
また、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1は、第1絶縁層6が第2絶縁層7に覆われずに表電極3の上面に重なる突出部6aを有しており、第2絶縁層7が表電極3に直接接していない構造になっているため、硫化ガスが補助電極層8と第2絶縁層7の界面から侵入した場合でも、硫化ガスは表電極3に到達する前にガラス材料からなる第1絶縁層6の突出部6aで受け止められ、表電極3が硫化ガスによって腐食しまうことを防止できる。なお、硫化ガスは、高湿度雰囲気下において樹脂材料からなる第2絶縁層7の内部に入り込み易くなるが、その場合でも、第2絶縁層7の内部を通過した硫化ガスは、表電極3に到達する前にガラス材料からなる第1絶縁層6で受け止められるため、表電極3が硫化ガスによって腐食しまうことを防止できる。
【0044】
また、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1は、補助電極層8が金属粒子を含有しないカーボン系樹脂材料で形成されていると共に、バリヤー層11で覆われる補助電極層8の表面に粗面化処理が施されているため、表電極3と第1絶縁層6の突出部6aに対する補助電極層8の密着性を高めた上で、補助電極層8に対するバリヤー層11(外部メッキ層10)の密着性を高めることができる。なお、補助電極層8は、表電極3よりも耐硫化性の高い材料で形成されていれば、銀(Ag)やニッケル(Ni)等の金属粒子を単独で含有する樹脂や、金属粒子とカーボン粒子の両方を含有する樹脂のように、カーボン粒子を単独で含有する樹脂以外の材料で形成しても良い。
【0045】
さらに、第1の実施形態に係るチップ抵抗器1では、裏電極4が耐硫化性の高い材料(例えばカーボン粒子を充填した樹脂材料)で形成されているため、裏電極4の硫化も防止して耐硫化性に優れたチップ抵抗器1となっている。
【0046】
図4は第2の実施形態に係るチップ抵抗器20の断面図であり、図1に対応する部分には同一符号を付してある。
【0047】
図4に示すように、第2の実施形態に係るチップ抵抗器20は、第2絶縁層7の両端部が表電極3に重ならない位置に形成されており、それ以外の構成は第1の実施形態に係るチップ抵抗器1と基本的に同じである。
【0048】
このように構成された第2の実施形態に係るチップ抵抗器20では、第2絶縁層7の両端部が表電極3に重ならない位置に形成されているため、硫化ガスが樹脂材料からなる第2絶縁層7の内部に入り込んだとしても、硫化ガスが表電極3に到達するまでの移動経路が長くなり、表電極3の腐食をより確実に防止することができる。しかも、第1絶縁層6の突出部6aの上面から第2絶縁層7の上面に至る段差が、第1絶縁層6における抵抗体5の両端部に重なる部分(図中の符号6bを付した部分)によって階段状となるため、第1絶縁層6と第2絶縁層7間の段差が小さくなり、補助電極層8を形成する際の印刷性を高めることができる。
【0049】
図5は第3の実施形態に係るチップ抵抗器30の断面図であり、図1に対応する部分には同一符号を付してある。
【0050】
図5に示すように、第3の実施形態に係るチップ抵抗器30は、補助電極層8が下部補助電極層31と上部補助電極層32の2層構造になっており、それ以外の構成は第1の実施形態に係るチップ抵抗器1と基本的に同じである。
【0051】
ここで、下部補助電極層31の上面は第2絶縁層7の上面よりも低い位置に設定されており、上部補助電極層32は下部補助電極層31よりも電気伝導率の高い導電材料で形成されている。具体的には、下部補助電極層31はカーボン粒子を含有するカーボン系樹脂材料で形成され、上部補助電極層32はAgやNi等の金属粒子を含有する金属系樹脂材料で形成されている。
【0052】
このように構成された第3の実施形態に係るチップ抵抗器30では、補助電極層8が下部補助電極層31と上部補助電極層32の2層構造になっていると共に、上部補助電極層32が下部補助電極層31よりも電気伝導率の高い導電材料からなるため、表電極3と第1絶縁層6の突出部6aに対する下部補助電極層31の密着強度を高めた上で、上部補助電極層32に対するバリヤー層11(外部メッキ層10)の密着強度を高めることができる。
【0053】
また、第3の実施形態に係るチップ抵抗器30は、2層構造の補助電極層8のうち、下部補助電極層31の上面が第2絶縁層7の上面よりも低い位置に設定されているため、下部補助電極層31から第2絶縁層7の上面にかけて形成される上部補助電極層32の端部形状が安定する。その結果、第2絶縁層7と補助電極層8間や補助電極層8と外部メッキ層10間において、端部への応力集中が軽減されて各層間での剥離を防止することができる。
【符号の説明】
【0054】
1,20,30 チップ抵抗器
2 絶縁基板
2A 大判基板
2B 短冊状基板
2C チップ状基板
3 表電極
4 裏電極
5 抵抗体
6 第1絶縁層
6a 突出部
7 第2絶縁層
8 補助電極層
9 端面電極
10 外部メッキ層
11 バリヤー層
12 外部接続層
31 下部補助電極層
32 上部補助電極層
図1
図2
図3
図4
図5