(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】接続部品及び接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 13/24 20060101AFI20241210BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20241210BHJP
H01R 13/18 20060101ALN20241210BHJP
H01R 13/187 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
H01R13/24
H01R13/11 B
H01R13/18 B
H01R13/187 B
(21)【出願番号】P 2021033655
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一栄
(72)【発明者】
【氏名】野村 章一
(72)【発明者】
【氏名】久保 考広
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-106819(JP,A)
【文献】特開2020-194704(JP,A)
【文献】特開2020-035642(JP,A)
【文献】特開2017-117623(JP,A)
【文献】特開平05-021106(JP,A)
【文献】特開2018-006246(JP,A)
【文献】特開2018-014168(JP,A)
【文献】特開2020-161374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-13/08
H01R 13/15-13/35
H01R 24/00-24/86
H01C 7/00
H01H 1/06-1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体に設けられ、前記導体と相手側導体とを導通させるための接続部品であって、
導電性を有し、前記導体が挿通されることにより前記導体に装着される環状のバネ導体と、
前記バネ導体を収容する収容空間部を有し、前記導体に装着されて前記バネ導体の一部を除く周囲を覆うハウジングと、
を備え、
環状の前記バネ導体は、線条体を螺旋状に巻回したコイルスプリングが環状に曲げられて前記線条体の両端が接合されたものであり、前記バネ導体の内周部により画成される貫通孔に前記導体が挿通され、
前記ハウジングから露出された前記バネ導体の外周部に前記相手側導体が接離可能とされ、
前記相手側導体によって前記バネ導体が径方向に押圧されて前記ハウジングに覆われた前記バネ導体の外周部が前記収容空間部の内面に押し付けられることにより、前記収容空間部の前記内面が前記バネ導体の径方向への変形を規制する、
接続部品。
【請求項2】
前記収容空間部には、前記ハウジングへの前記導体の組付け方向と交差する方向に前記バネ導体が収容される、
請求項1に記載の接続部品。
【請求項3】
前記導体は、前記ハウジングへ組付けられる先端に、片持ち梁状の一対の係合片を有し、
前記ハウジングは、組付けられる前記導体の前記係合片の間に入り込む先細り形状のクサビ部を有し、
前記係合片には、外周側に凹部が形成され、
前記ハウジングには、前記クサビ部が前記係合片の間に入り込んだ状態で前記凹部に入り込んで前記係合片を係止する係止突起が形成されている、
請求項1または請求項2に記載の接続部品。
【請求項4】
前記バネ導体は、前記ハウジングの前記収容空間部内で回転可能に保持されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の接続部品。
【請求項5】
前記収容空間部の内壁には、前記バネ導体の
前記線条体を係止する係止突条が形成され、
前記係止突条は、前記バネ導体に一方向の回転方向へ向かう回転力が付与された際に、前記バネ導体の前記線条体を前記回転方向へ案内するガイド面を有する、
請求項4に記載の接続部品。
【請求項6】
接続部品を有する第1導体と、前記接続部品を介して前記第1導体に導通される第2導体との接続構造であって、
前記接続部品は、
導電性を有する環状のコイルスプリングからなり、前記第1導体が挿通されることにより前記第1導体に装着されるバネ導体と、
前記バネ導体を収容する収容空間部を有し、前記第1導体に装着されて前記バネ導体の一部を除く周囲を覆うハウジングと、
を備え、
環状の前記バネ導体は、線条体を螺旋状に巻回した前記コイルスプリングが環状に曲げられて前記線条体の両端が接合されたものであり、前記バネ導体の内周部により画成される貫通孔に前記第1導体が挿通され、
前記ハウジングから露出された前記バネ導体の外周部に前記第2導体が接離可能とされ、
前記ハウジングから露出した前記バネ導体に前記第2導体が接触されることにより前記バネ導体を介して前記第1導体と前記第2導体とが導通されるとともに、前記第2導体によって前記バネ導体が径方向に押圧されて前記ハウジングに覆われた
前記バネ導体の外周部が前記収容空間部の内面に押し付けられる、
接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体の接続部品及び接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、機器同士の高電圧の配線を接続する場合、各機器のバスバ等の導体同士をボルト・ナットによって締結しているが、配線の接続及びその解除が可能な構造が要求されている。
導体同士を導通させる技術として、特許文献1には、端部が筒状の第1の導体と円環状のばね接触子が装着された第2の導体とを互いに嵌合させることにより、ばね接触子の弾性反発力を各導体の間に作用させて電気接触を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の接続方式では、機器同士を組付けることにより第1の導体と第2の導体とが嵌合されて互いに導通され、この導通状態から機器同士を離脱させることにより第1の導体から第2の導体が引き抜かれて導通状態が解除される。このように、特許文献1の接続方式では、機器同士を近接及び離間させて導体同士の導通及び導通解除を行わなければならず、導体同士の導通及び導通解除を容易に行うことが困難であった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、容易に導通及び導通解除を行うことができ、しかも、十分な接触圧を確保して高い接続信頼性を得ることが可能な接続部品及び接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る接続部品及び接続構造は、下記(1)~(6)を特徴としている。
(1) 導体に設けられ、前記導体と相手側導体とを導通させるための接続部品であって、
導電性を有し、前記導体が挿通されることにより前記導体に装着される環状のバネ導体と、
前記バネ導体を収容する収容空間部を有し、前記導体に装着されて前記バネ導体の一部を除く周囲を覆うハウジングと、
を備え、
環状の前記バネ導体は、線条体を螺旋状に巻回したコイルスプリングが環状に曲げられて前記線条体の両端が接合されたものであり、前記バネ導体の内周部により画成される貫通孔に前記導体が挿通され、
前記ハウジングから露出された前記バネ導体の外周部に前記相手側導体が接離可能とされ、
前記相手側導体によって前記バネ導体が径方向に押圧されて前記ハウジングに覆われた前記バネ導体の外周部が前記収容空間部の内面に押し付けられることにより、前記収容空間部の前記内面が前記バネ導体の径方向への変形を規制する、
接続部品。
【0007】
上記(1)の構成の接続部品によれば、バネ導体に相手側の導体が接触することにより、バネ導体を介して導体と相手側導体とが導通され、相手側導体がバネ導体から離れることにより、導体と相手側導体との導通が解除される。また、相手側導体がバネ導体に接触してバネ導体が径方向に押圧されると、ハウジングに覆われた外周部がハウジングの収容空間部の内面に押し付けられる。これにより、相手側導体からバネ導体に付与される荷重がバネ導体の押圧箇所以外の部分から逃げるのが抑えられ、バネ導体から相手側導体へ向かう弾性力からなる反力が高められる。
つまり、容易に導通及び導通解除を行うことができ、しかも、十分な接触圧を確保して高い接続信頼性を得ることができる。
【0008】
(2) 前記収容空間部には、前記ハウジングへの前記導体の組付け方向と交差する方向に前記バネ導体が収容される、
上記(1)に記載の接続部品。
【0009】
上記(2)の構成の接続部品によれば、収容空間部に対して、ハウジングへの導体の組付け方向と交差する方向にバネ導体が収容される。したがって、収容空間部にバネ導体を収容した状態で、ハウジングへ導体を組付けると、収容空間部のバネ導体に導体を容易に挿通させ、導体にバネ導体を保持させることができる。
【0010】
(3) 前記導体は、前記ハウジングへ組付けられる先端に、片持ち梁状の一対の係合片を有し、
前記ハウジングは、組付けられる前記導体の前記係合片の間に入り込む先細り形状のクサビ部を有し、
前記係合片には、外周側に凹部が形成され、
前記ハウジングには、前記クサビ部が前記係合片の間に入り込んだ状態で前記凹部に入り込んで前記係合片を係止する係止突起が形成されている、
上記(1)または(2)に記載の接続部品。
【0011】
上記(3)の構成の接続部品によれば、ハウジングへ導体を組付けることにより、片持ち梁状の一対の係合片にクサビ部が入り込んで両持ち梁状に支持され、しかも、この組付け状態で、係合片の凹部に係止突起が入り込んで係合片が係止される。これにより、ハウジングへ導体を容易にかつ強固に組付けることができる。
【0012】
(4) 前記バネ導体は、前記ハウジングの前記収容空間部内で回転可能に保持されている、
上記(1)~(3)のいずれかに記載の接続部品。
【0013】
上記(4)の構成の接続部品によれば、相手側導体がバネ導体に対して接線方向にスライドして接触すると、バネ導体が収容空間部内で回転し、バネ導体の相手側導体との接触箇所が移動する。これにより、バネ導体の周方向の一か所に相手側導体が繰り返し接離することによってバネ導体のメッキ剥がはがれるのを抑え、接続信頼性を高めることができる。
【0014】
(5) 前記収容空間部の内壁には、前記バネ導体の前記線条体を係止する係止突条が形成され、
前記係止突条は、前記バネ導体に一方向の回転方向へ向かう回転力が付与された際に、前記バネ導体の前記線条体を前記回転方向へ案内するガイド面を有する、
上記(4)に記載の接続部品。
【0015】
上記(5)の構成の接続部品によれば、収容空間部にバネ導体を収容させることにより、バネ導体の線条体を係止突条によって係止させて保持させることができる。この状態において、相手側導体がバネ導体に対して接線方向にスライドして接触し、バネ導体に一方向の回転方向へ向かう回転力が付与されると、係止突条のガイド面によってバネ導体の線条体が一方向の回転方向へ案内され、線条体が係止突条を乗り越える。これにより、バネ導体の一方向への回転が許容されて回転される。これにより、相手側導体が接触するバネ導体の位置が順に移動し、バネ導体のメッキ剥がれが抑えられ、接続信頼性が高められる。
【0016】
(6) 接続部品を有する第1導体と、前記接続部品を介して前記第1導体に導通される第2導体との接続構造であって、
前記接続部品は、
導電性を有する環状のコイルスプリングからなり、前記第1導体が挿通されることにより前記第1導体に装着されるバネ導体と、
前記バネ導体を収容する収容空間部を有し、前記第1導体に装着されて前記バネ導体の一部を除く周囲を覆うハウジングと、
を備え、
環状の前記バネ導体は、線条体を螺旋状に巻回した前記コイルスプリングが環状に曲げられて前記線条体の両端が接合されたものであり、前記バネ導体の内周部により画成される貫通孔に前記第1導体が挿通され、
前記ハウジングから露出された前記バネ導体の外周部に前記第2導体が接離可能とされ、
前記ハウジングから露出した前記バネ導体に前記第2導体が接触されることにより前記バネ導体を介して前記第1導体と前記第2導体とが導通されるとともに、前記第2導体によって前記バネ導体が径方向に押圧されて前記ハウジングに覆われた前記バネ導体の外周部が前記収容空間部の内面に押し付けられる、
接続構造。
【0017】
上記(6)の構成の接続構造によれば、バネ導体に第2導体が接触することにより、バネ導体を介して第1導体と第2導体とが導通され、第2導体がバネ導体から離れることにより、第1導体と第2導体との導通が解除される。また、第2導体がバネ導体に接触してバネ導体が径方向に押圧されると、ハウジングに覆われた外周部がハウジングの収容空間部の内面に押し付けられる。これにより、第2導体からバネ導体に付与される荷重がバネ導体の押圧箇所以外の部分から逃げるのが抑えられ、バネ導体から第2導体へ向かう弾性力からなる反力が高められる。
つまり、容易に導通及び導通解除を行うことができ、しかも、十分な接触圧を確保して高い接続信頼性を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、容易に導通及び導通解除を行うことができ、しかも、十分な接触圧を確保して高い接続信頼性を得ることが可能な接続部品及び接続構造を提供できる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る接続構造を示す図であって、
図1(a)は導通状態における斜視図、
図1(b)は非導通状態における斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る接続構造を示す図であって、
図2(a)は導通状態における軸方向に沿う縦断面図、
図2(b)は非導通状態における軸方向に沿う縦断面図である。
【
図3】
図3は、バスバ及び分解した接続部品の斜視図である。
【
図4】
図4は、バスバ及び分解した接続部品の軸方向に沿う縦断面図である。
【
図5】
図5は、軸方向に沿って破断させたハウジングの斜視図である。
【
図7】
図7は、接続部品へのバスバの組付けを説明する図であって、
図7(a)~(c)は、それぞれ軸方向に沿う縦断面図である。
【
図8】
図8は、参考例に係る接続構造の
図2(a)におけるA-A断面相当図である。
【
図9】
図9は、バスバの接続部品へ接続する相手側バスバの他の接続の仕方について説明する図であって、
図9(a)は導通状態における斜視図、
図9(b)は非導通状態における斜視図である。
【
図10】
図10は、バスバの接続部品へ接続する相手側バスバの他の接続の仕方について説明する図であって、
図10(a)は導通状態での
図2(a)におけるA-A断面相当図、
図10(b)は非導通状態での
図2(a)におけるA-A断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る接続構造を示す図であって、
図1(a)は導通状態における斜視図、
図1(b)は非導通状態における斜視図である。
図2は、本実施形態に係る接続構造を示す図であって、
図2(a)は導通状態における軸方向に沿う縦断面図、
図2(b)は非導通状態における軸方向に沿う縦断面図である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る接続構造は、第1導体であるバスバ11と第2導体である相手側バスバ61とを電気的に接続させる接続構造である。バスバ11は、接続部品12を備えており、相手側バスバ61は、接続部品12を介してバスバ11と導通する。
【0024】
バスバ11及び相手側バスバ61は、例えば、銅または銅合金等の導電性金属材料から形成されている。接続部品12は、バスバ11の端部に設けられている。相手側バスバ61は、例えば、基端において水平軸線Xを支点として揺動可能に支持されている。相手側バスバ61は、水平軸線Xを支点として揺動することにより、接続部品12に対して先端が近接及び離間する。そして、相手側バスバ61の先端が接続部品12に近接して接触すると(
図1(a)及び
図2(a)の状態)、バスバ11と相手側バスバ61とが導通状態となり、相手側バスバ61の先端が接続部品12から離間すると(
図1(b)及び
図2(b)の状態)、バスバ11と相手側バスバ61とが非導通状態となる。
【0025】
図3は、バスバ及び分解した接続部品の斜視図である。
図4は、バスバ及び分解した接続部品の軸方向に沿う縦断面図である。
図3及び
図4に示すように、バスバ11は、その先端部に、片持ち梁状の一対の係合片20を有している。これらの係合片20は、その外周が、バスバ11の軸心を中心とした円形状に形成されている。これらの係合片20には、軸方向の中間部に、凹部21が形成されている。凹部21は、係合片20の外周面に形成されており、それぞれの係合片20の凹部21は、互いに反対側に配置されている。
【0026】
接続部品12は、ハウジング30と、バネ導体50とを有している。本実施形態では、接続部品12は、2つのバネ導体50を備えており、これらのバネ導体50がハウジング30に収容される。ハウジング30には、その後方側からバスバ11が挿し込まれて組付けられる。
【0027】
図5は、軸方向に沿って破断させたハウジングの斜視図である。
図6は、
図2(a)におけるA-A断面図である。
【0028】
図5に示すように、このハウジング30は、収容空間部31と、係合穴部32とを有している。ハウジング30は、絶縁性を有する樹脂材料によって一体成形されている。収容空間部31及び係合穴部32は、ハウジング30の後端側から順に設けられている。
【0029】
ハウジング30の後端には、バスバ11が挿し込まれる開口部35が形成されており、この開口部35を通して収容空間部31が外部に連通している。また、ハウジング30の上部には装着口36が形成されており、この装着口36を通して収容空間部31が外部に連通している。この収容空間部31には、装着口36を通して、バスバ11の組付け方向と垂直方向に2つのバネ導体50が装着される。
【0030】
図6に示すように、収容空間部31は、円弧状に凹んだ形状の底部37を有している。また、収容空間部31の両側における内壁には、ハウジング30の軸方向に沿う係止突条38,39が形成されている。係止突条38は、上方側の面が、突出方向へ向かって次第に下方へ傾斜するガイド面38aとされ、係止突条39は、下方側の面が、突出方向へ向かって次第に上方へ傾斜するガイド面39aとされている。
【0031】
図4及び
図5に示すように、係合穴部32は、ハウジング30の軸方向に沿う穴部であり、収容空間部31と連通している。この係合穴部32には、その内面における上下に、内側へ突出する係止突起40が形成されている。これらの係止突起40は、ハウジング30の前方側へ向かって次第に内方へ傾斜するテーパ面40aを有している。また、係合穴部32には、収容空間部31と反対側であるハウジング30の前方側に、クサビ部41を有している。このクサビ部41は、ハウジング30の後方側へ向かって突出しており、突出方向へ向かって次第に窄む先窄み形状となっている。このクサビ部41は、その上下の面が、摺動面41aとされている。これらの摺動面41aは、ハウジング30の前方へ向かって次第に外側へ傾斜している。
【0032】
図3及び
図4に示すように、バネ導体50は、環状に形成されている。このバネ導体50は、バネ鋼等の導電性及び弾性を有する金属材料から形成された線条体51を螺旋状に巻回したコイルスプリングであり、このコイルスプリングが環状に曲げられて線条体51の両端が接合されている。バネ導体50には、例えば、錫メッキやニッケルメッキなどのメッキ処理が施されている。
【0033】
これらのバネ導体50は、互いに重ね合わされた状態で、ハウジング30の収容空間部31へ装着口36から収容される。これにより、バネ導体50は、
図6に示すように、その外周部が収容空間部31の円弧状に凹んだ底部37に沿うように収容空間部31内に収容され、バネ導体50の一部が装着口36からハウジング30の上方側へ突出する。この収容状態において、係止突条38,39がバネ導体50の螺旋状の線条体51を係止する。
【0034】
このように、ハウジング30の収容空間部31にバネ導体50が収容された接続部品12は、バスバ11に装着される。
図7は、接続部品へのバスバの組付けを説明する図であって、
図7(a)~
図7(c)は、それぞれ軸方向に沿う縦断面図である。
【0035】
図7(a)に示すように、バスバ11に接続部品12を装着するには、ハウジング30の後端側の開口部35に、バスバ11の先端に形成された一対の係合片20を挿し込む。
【0036】
図7(b)に示すように、開口部35に挿し込んだ一対の係合片20は、収容空間部31に収容されたバネ導体50を貫通する。これにより、バネ導体50がバスバ11によってハウジング30の収容空間部31内に収容された状態に保持される。また、それぞれの先端部が係合穴部32の係止突起40に形成されたテーパ面40aに当接される。
【0037】
図7(c)に示すように、バスバ11の係合片20をさらに挿し込むと、係合片20の先端部がテーパ面40aに摺接して内側へ押圧される。これにより、係合片20は、係止突起40以外の部分に接触することなく、互いに近接する方向へ押圧されて弾性変形される。
【0038】
そして、係合片20は、それぞれの先端部がクサビ部41の摺動面41aに摺接することにより互いに離間する方向へ押し広げられ、その後、凹部21に係止突起40が入り込み、ハウジング30に係合される。これにより、バスバ11の先端に接続部品12が装着される(
図2(a)及び(b)参照)。
【0039】
このように、バスバ11をハウジング30の開口部35から挿し込む際には、片持ち梁状の一対の係合片20は、係止突起40のテーパ面40a以外の部分と接触しないため、摩擦を抑えて低挿入力で挿し込むことができる。その後、片持ち梁状の一対の係合片20にクサビ部41が入り込んで両持ち梁状に支持され、係合片20の凹部21に係止突起40が入り込んで係合片20が係止されるので、ハウジング30へバスバ11を強固に組付けることができる。そして、このバスバ11に接続部品12が装着された状態で、バスバ11は、その外周面がバネ導体50に接触した状態となる。
【0040】
このように、複数のバネ導体50を収容空間部31に収容させたハウジング30に対して、バスバ11を開口部35から挿し込むことにより、複数のバネ導体50を容易にバスバ11へ組付けることができる。また、バスバ11を接続部品12に組付けた状態において、バネ導体50の外周と収容空間部31の内周との間には、僅かなクリアランスが確保されている。
【0041】
次に、バスバ11の接続部品12に対する相手側バスバ61の接続及び接続の解除について説明する。
【0042】
(接続時)
相手側バスバ61が接続部品12から離間した状態(
図1(b)及び
図2(b)の状態)において、接続部品12に向かって相手側バスバ61を揺動させる。すると、ハウジング30の上部から突出したバネ導体50が相手側バスバ61に押圧されて相手側バスバ61と弾性的に接触する。これにより、バネ導体50を介してバスバ11と相手側バスバ61とが電気的に接続された導通状態となる(
図1(a)及び
図2(a)の状態)。
【0043】
(接続解除時)
相手側バスバ61が接続部品12に接触した状態(
図1(a)及び
図2(a)の状態)において、接続部品12から離間する方向に向かって相手側バスバ61を揺動させる。すると、相手側バスバ61がバネ導体50から離間する。これにより、バネ導体50を介したバスバ11と相手側バスバ61との導通が解除された非導通状態となる(
図1(b)及び
図2(b)の状態)。
【0044】
ここで、参考例に係る接続構造について説明する。
図8は、参考例に係る接続構造の
図2(a)におけるA-A断面相当図である。
【0045】
図8に示すように、参考例に係る接続構造は、ハウジング30を備えず、バスバ11にバネ導体50を保持させている。
【0046】
この参考例では、バネ導体50に対して相手側バスバ61を押圧させて弾性的に接触させた際に、相手側バスバ61からバネ導体50に付与された荷重が押圧箇所以外の部分から周囲(
図8中矢印N方向参照)へ逃げてしまう。このため、バネ導体50から相手側バスバ61へ向かう弾性力からなる反力が不十分となり、バネ導体50と相手側バスバ61との接触圧が不足して接続信頼性が低下するおそれがある。
【0047】
これに対して、本実施形態に係る接続構造によれば、相手側バスバ61がバネ導体50に接触してバネ導体50が径方向に押圧されると、ハウジング30に覆われた外周部がハウジング30の収容空間部31の内面に押し付けられ径方向への変形が規制される。これにより、相手側バスバ61からバネ導体50に付与される荷重がバネ導体50の押圧箇所以外の部分から逃げるのが抑えられ、バネ導体50から相手側バスバ61へ向かう弾性力からなる反力が高められる。
【0048】
このように、本実施形態に係る接続構造によれば、容易に導通及び導通解除を行うことができ、しかも、十分な接触圧を確保して高い接続信頼性を得ることができる。
【0049】
また、収容空間部31に対して、ハウジング30へのバスバ11の組付け方向と交差する方向にバネ導体50が収容される。したがって、収容空間部31にバネ導体50を収容した状態で、ハウジング30へバスバ11を組付けると、収容空間部31のバネ導体50にバスバ11を容易に挿通させ、バスバ11にバネ導体50を保持させることができる。
【0050】
しかも、ハウジング30へバスバ11を組付けることにより、片持ち梁状の一対の係合片20にクサビ部41が入り込んで両持ち梁状に支持され、しかも、この組付け状態で、係合片20の凹部21に係止突起40が入り込んで係合片20が係止される。これにより、ハウジング30へバスバ11を容易にかつ強固に組付けることができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、2つのバネ導体50を備える場合を例示して説明したが、バネ導体50の個数や線条体51の太さは、バスバ11と相手側バスバ61との間に流す電流容量に応じて設定される。
【0052】
次に、バスバ11の接続部品12への相手側バスバ61の他の接続の仕方について説明する。
図9は、バスバの接続部品へ接続する相手側バスバの他の接続の仕方について説明する図であって、
図9(a)は導通状態における斜視図、
図9(b)は非導通状態における斜視図である。
図10は、バスバの接続部品へ接続する相手側バスバの他の接続の仕方について説明する図であって、
図10(a)は導通状態での
図2(a)におけるA-A断面相当図、
図10(b)は非導通状態での
図2(a)におけるA-A断面相当図である。
【0053】
図9及び
図10に示すように、他の接続の仕方では、相手側バスバ61は、基端において鉛直軸線Zを支点として揺動可能に支持されている。相手側バスバ61は、鉛直軸線Zを支点として揺動することにより、先端が接続部品12のバネ導体50の接線方向にスライドして近接及び離間する。
【0054】
そして、相手側バスバ61の先端が接続部品12へ近接する方向へスライドして接触すると(
図9(a)及び
図10(a)の状態)、バスバ11と相手側バスバ61とが導通状態となり、相手側バスバ61の先端が接続部品12から離間する方向へスライドすると(
図9(b)及び
図10(b)の状態)、バスバ11と相手側バスバ61とが非導通状態となる。
【0055】
また、接続部品12から離間した相手側バスバ61が揺動されて先端が接続部品12に向かってスライドして接触すると、バネ導体50には、相手側バスバ61が接触することにより回転力が付与される。
【0056】
ここで、
図6に示すように、バネ導体50は、収容空間部31の両側面に形成された係止突条38,39によって係止されている。しかし、一方の係止突条38は、上方側の面が、突出方向へ向かって次第に下方へ傾斜するガイド面38aとされ、他方の係止突条39は、下方側の面が、突出方向へ向かって次第に上方へ傾斜するガイド面39aとされている。しかも、バスバ11を接続部品12に組付けた状態において、バネ導体50の外周と収容空間部31の内周との間には、僅かなクリアランスが確保される。したがって、バネ導体50は、線条体51がガイド面38a,39aに案内されて係止突条38,39を乗り越える一方向の回転方向R1に対しては回転可能となっている。
【0057】
そして、本例では、相手側バスバ61の先端が接続部品12へ近接する方向にスライドして接触することにより付与される回転力の方向が回転方向R1とされている。したがって、バネ導体50は、相手側バスバ61の接続時に、回転方向R1へ回転する。これに対して、相手側バスバ61の先端が接続部品12から離間する方向にスライドする際には、付与される回転力の方向が回転方向R1と逆方向となる。この場合、バネ導体50は、線条体51が係止突条38,39によって係止されて回転が規制される。
【0058】
つまり、バネ導体50が一方向へ回転可能にハウジング30に収容されている。したがって、接続及び接続解除の際に、バネ導体50が一方の回転方向R1へ回転されることにより、バネ導体50の相手側バスバ61との接触箇所が常に移動することとなる。これにより、バネ導体50の周方向の一か所に相手側バスバ61が接離することによるメッキ剥がれを抑え、接続信頼性を高めることができる。
【0059】
なお、バネ導体50を一方の回転方向R1へ回転可能に保持させる係止突条は、収容空間部31の内壁に少なくとも一つ設ければよい。
【0060】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0061】
例えば、上述した実施形態においては、第1導体及び第2導体がいずれもバスバの場合を例に説明したが、接続部品を組み付けることができる程度の剛性を有する導体であれば、第1導体及び第2導体の少なくとも一方がバスバ以外の導体により構成されていてもよい。
【0062】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る接続部品及び接続構造の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 導体(バスバ11)に設けられ、前記導体(バスバ11)と相手側導体(相手側バスバ61)とを導通させるための接続部品(12)であって、
導電性を有し、前記導体(バスバ11)が挿通されることにより前記導体(バスバ11)に装着される環状のバネ導体(50)と、
前記バネ導体(50)を収容する収容空間部(31)を有し、前記導体(バスバ11)に装着されて前記バネ導体(50)の一部を除く周囲を覆うハウジング(30)と、
を備え、
前記ハウジング(30)から露出された前記バネ導体(50)の外周部に前記相手側導体(相手側バスバ61)が接離可能とされ、
前記収容空間部(31)の内面は、前記相手側導体(相手側バスバ61)によって押圧された前記バネ導体(50)の径方向への変形を規制する、
接続部品(12)。
【0063】
[2] 前記収容空間部(31)には、前記ハウジング(30)への前記導体(バスバ11)の組付け方向と交差する方向に前記バネ導体(50)が収容される、
上記[1]に記載の接続部品(12)。
【0064】
[3] 前記導体(バスバ11)は、前記ハウジング(30)へ組付けられる先端に、片持ち梁状の一対の係合片(20)を有し、
前記ハウジング(30)は、組付けられる前記導体(バスバ11)の前記係合片(20)の間に入り込む先細り形状のクサビ部(41)を有し、
前記係合片(20)には、外周側に凹部(21)が形成され、
前記ハウジング(30)には、前記クサビ部(41)が前記係合片(20)の間に入り込んだ状態で前記凹部(21)に入り込んで前記係合片(20)を係止する係止突起(40)が形成されている、
上記[1]または[2]に記載の接続部品(12)。
【0065】
[4] 前記バネ導体(50)は、前記ハウジング(30)の前記収容空間部(31)内で回転可能に保持されている、
上記[1]~[3]のいずれかに記載の接続部品(12)。
【0066】
[5] 前記収容空間部(31)の内壁には、前記バネ導体(50)の線条体(51)を係止する係止突条(38,39)が形成され、
前記係止突条(38,39)は、前記バネ導体(50)に一方向の回転方向(R1)へ向かう回転力が付与された際に、前記バネ導体(50)の前記線条体(51)を前記回転方向(R1)へ案内するガイド面(38a,39a)を有する、
上記[4]に記載の接続部品(12)。
【0067】
[6] 接続部品(12)を有する第1導体(バスバ11)と、前記接続部品(12)を介して前記第1導体(バスバ11)に導通される第2導体(相手側バスバ61)との接続構造であって、
前記接続部品(12)は、
導電性を有する環状のコイルスプリングからなり、前記第1導体(バスバ11)が挿通されることにより前記第1導体(バスバ11)に装着されるバネ導体(50)と、
前記バネ導体(50)を収容する収容空間部(31)を有し、前記第1導体(バスバ11)に装着されて前記バネ導体(50)の一部を除く周囲を覆うハウジング(30)と、
を備え、
前記ハウジング(30)から露出された前記バネ導体(50)の外周部に前記第2導体(相手側バスバ61)が接離可能とされ、
前記ハウジング(30)から露出した前記バネ導体(50)に前記第2導体(相手側バスバ61)が接触されることにより前記バネ導体(50)を介して前記第1導体(バスバ11)と前記第2導体(相手側バスバ61)とが導通されるとともに、前記第2導体(相手側バスバ61)によって前記バネ導体(50)が径方向に押圧されて前記ハウジング(30)に覆われた外周部が前記収容空間部(31)の内面に押し付けられる、
接続構造。
【符号の説明】
【0068】
11 バスバ(導体、第1導体)
12 接続部品
20 係合片
21 凹部
30 ハウジング
31 収容空間部
38,39 係止突条
38a,39a ガイド面
40 係止突起
41 クサビ部
50 バネ導体
61 相手側バスバ(相手側導体、第2導体)