(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】反応装置及び反応方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/28 20230101AFI20241210BHJP
B01J 8/26 20060101ALI20241210BHJP
B01J 8/32 20060101ALI20241210BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
C02F3/28 A
C02F3/28 B
B01J8/26
B01J8/32
C02F1/28 D
(21)【出願番号】P 2021041638
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】長田 啓司
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-104057(JP,A)
【文献】特開2012-239929(JP,A)
【文献】特開2013-208563(JP,A)
【文献】特開2010-042352(JP,A)
【文献】特開2002-224663(JP,A)
【文献】特開2003-286015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28- 3/34
C02F 3/02- 3/10
C02F 3/12
C02F 3/14- 3/16
C02F 7/00
C02F 11/00-11/20
C02F 1/28
B01J 8/00- 8/46
B01D 15/00-15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小流動化速度の異なる2種類以上の粒子が流動化してなる流動層を形成する反応装置において、
流体が第1の流速で通過する第1流速領域と、
流体が第2の流速で通過する第2流速領域と、を備え、
前記第1の流速と前記第2の流速は、異なる流速であり、
前記第1の流速は、第1の粒子及び第2の粒子の最小流動化速度よりも大きく、
前記第2の流速は、第1の粒子の最小流動化速度よりも小さく、第2の粒子の最小流動化速度よりも大きいことを特徴とする、反応装置。
【請求項2】
前記第1の粒子と前記第2の粒子の比重差が、1.2倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記第1の粒子により形成される層の断面積と、前記第2の
粒子により形成される
層の断面積とが異なるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の反応装
置。
【請求項4】
最小流動化速度の異なる2種類以上の粒子が流動化してなる流動層を用いた反応方法において、
前記流動層に対し、
流体が第1の流速で通過する第1流速領域と、
流体が第2の流速で通過する第2流速領域と、を形成し、
前記第1の流速と前記第2の流速は、異なる流速であり、
前記第1の流速は、第1の粒子及び第2の粒子の最小流動化速度よりも大きく、
前記第2の流速は、第1の粒子の最小流動化速度よりも小さく、第2の粒子の最小流動
速度よりも大きいことを特徴とする、反応方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置及び反応方法に関するものである。特に、流動層を形成する反応装置及び反応方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
槽内に充填した粒子を流体(気体又は液体)により流動させて流動層を形成し、流体と粒子の接触による反応を行う反応装置が知られている。流動層を形成する反応装置は、固定層を形成する反応装置と比べ、目詰まりの発生や圧力損失の増加を抑制することが可能であり、化合物の製造、粒子の乾燥処理、流体中の溶存物質の吸着・付着による分離等、幅広い分野で活用されている。
【0003】
特許文献1には、流動層を形成する反応装置として、槽内部の上下方向に仕切壁を設け、流体と粒子の混合効率を高め、かつ、粒子の飛び出しを抑制するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、流動層を形成する反応装置においては、1種類の粒子を用いて流動層を形成することが一般的である。
一方、流体と粒子の接触による反応として、複数の反応工程を経る必要がある反応系の場合、それぞれの反応工程に適した粒子を選択した反応装置を複数設けることとなり、装置全体の規模が大きくなるという問題がある。
【0006】
ここで、反応装置の省スペース化のために、複数の反応工程を一槽式の反応装置で行おうとする場合、特許文献1に記載されたような仕切壁の構造は、粒子全体を一体的に流動化させるものであるが、性質(特に流動性)の異なる複数の粒子に対する一体的な流動化は困難である。このため、反応装置内における均一な流動性を維持することができず、反応工程を適切に進めることができないという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、複数種類の粒子により形成される流動層を利用する反応装置及び反応方法において、均一な流動性を維持させることができる反応装置及び反応方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、最小流動化速度の異なる2種類以上の粒子が流動化してなる流動層を形成する反応装置において、流体が異なる流速で通過する複数の領域を設け、かつそれぞれの領域における流速を粒子の性質に応じた範囲とすることで、一槽内で均一な流動性を維持できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の反応装置及び反応方法である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の反応装置は、最小流動化速度の異なる2種類以上の粒子が流動化してなる流動層を形成する反応装置において、流体が第1の流速で通過する第1流速領域と、流体が第2の流速で通過する第2流速領域と、を備え、第1の流速は、第1の粒子及び第2の粒子の最小流動化速度よりも大きく、第2の流速は、第1の粒子の最小流動化速度よりも小さく、第2の粒子の最小流動化速度よりも大きいという特徴を有する。
本発明の反応装置によれば、2種類以上の粒子が流動化してなる流動層を形成する反応装置において、粒子の性質(最小流動化速度)に応じた流体流速の領域を複数設けることで、反応装置内にそれぞれの粒子ごとの流動層が形成され、反応装置全体として均一な流動性を維持することが可能となる。また、一つの槽内で複数の反応工程を進行させることができるため、反応装置としての省スペース化と処理効率向上が可能となる。
【0010】
また、本発明の反応装置の一実施態様としては、第1の粒子と第2の粒子の比重差が、1.2倍以上であるという特徴を有する。
この特徴によれば、特段の操作を必要とせず、第1の粒子からなる層と、第2の粒子からなる層が形成された積層状態を形成することが可能であり、第1流速領域及び第2流速領域の形成及び維持が容易となる。
【0011】
また、本発明の反応装置の一実施態様としては、第1の粒子は、活性炭であり、第2の粒子は、グラニュールであるという特徴を有する。
この特徴によれば、嫌気処理を行うためのグラニュールと、嫌気処理の阻害物質を除去する吸着剤としての機能及び一部の嫌気性微生物を付着・担持させる担体としての機能に優れた活性炭とを、一つの槽内で組み合わせて用いることができる。この反応装置を用いることで、槽が一つであっても嫌気処理を進行させることができ、嫌気処理に係る設備の省スペース化を可能が可能となる。また、この反応装置を嫌気処理に適用することで、阻害物質による嫌気処理の阻害を軽減し、嫌気処理の効率向上が可能となる。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の反応方法は、最小流動化速度の異なる2種類以上の粒子が流動化してなる流動層を用いた反応方法において、流動層に対し、流体が第1の流速で通過する第1流速領域と、流体が第2の流速で通過する第2流速領域と、を形成し、第1の流速は、第1の粒子及び第2の粒子の最小流動化速度よりも大きく、第2の流速は、第1の粒子の最小流動化速度よりも小さく、第2の粒子の最小流動化速度よりも大きいという特徴を有する。
本発明の反応方法によれば、2種類以上の粒子が流動化してなる流動層を用いた反応において、粒子の性質(最小流動化速度)に応じた流体流速の領域を複数設けることで、それぞれの粒子ごとの流動層が形成され、均一な流動性を維持した状態で反応を進行させることが可能となる。また、一つの槽内で複数の流動層を形成することができ、複数の反応工程を進行させることが可能となる。これにより、反応に係る設備の省スペース化と処理効率向上が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数種類の粒子により形成される流動層を利用する反応装置及び反応方法において、均一な流動性を維持させることができる反応装置及び反応方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施態様に係る反応装置の概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施態様に係る反応装置において用いられる第1の粒子及び第2の粒子の最小流動化速度、並びに、第1の流速及び第2の流速の関係を示す概略図である。
【
図3】本発明の第1の実施態様の反応装置による嫌気処理に係る概略説明図である
【
図4】本発明の第2の実施態様に係る反応装置の概略説明図である。
【
図5】本発明の第3の実施態様に係る反応装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る反応装置及び反応方法の実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載する反応装置については、本発明に係る反応装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。また、本実施態様に記載する反応方法についても、本発明に係る反応装置を用いた反応方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の反応装置及び反応方法は、流体と粒子の接触による反応全般に利用されるものである。本発明の反応装置及び反応方法は、特に、有機物を含む排水の嫌気処理において好適に利用されるものである。
【0017】
本発明における流体は、液体及び気体のいずれかであってもよく、液体及び気体の両方であってもよい。すなわち、本発明の反応装置及び反応方法は、固液二相流、気液二相流、あるいは固気液三相流のうち、いずれを利用するものでもよい。また、本発明における流体は、本発明の反応装置に対し、原料、媒体、あるいは処理対象物を含有する被処理物として導入されるものであってもよい。
例えば、本発明における流体としては、原料として、モノマーの原料となる複数種類のガスの組み合わせ(アセチレンガスと酢酸蒸気の組み合わせ)など、公知の組み合わせからなるものが挙げられる。
また、本発明における流体としては、例えば、媒体として機能するものとして、粒子の混合や乾燥のためのエアーが挙げられる。なお、エアーとしては、常温の空気以外に、乾燥効率を高めるために、燃焼ガスなどの高温ガスを用いることが挙げられる。
さらに、本発明における流体としては、例えば、処理対象物として有機物を含む排水が挙げられる。処理対象である有機物を含む排水とは、食品工場、化学工場、紙パルプ工場等の各種工場から排出される工業排水や下水などの生活排水が挙げられる。なお、有機物を含む排水はこれに限定されるものではないが、嫌気性下で生物処理が可能な有機物を含む排水が、本発明における流体として特に好ましい。このような排水としては、例えば、家畜糞尿、汚泥(余剰汚泥)を含む有機性排水などが挙げられる。
以下、本発明における流体として、主に処理対象物を含有する被処理物(有機物を含む排水)について説明するが、これに限定されるものではない。
【0018】
[第1の実施態様]
図1は、本発明の第1の実施態様の反応装置の概略説明図である。
本実施態様における反応装置1Aは、
図1に示すように、内部に複数の粒子(第1の粒子P1及び第2の粒子P2)が投入され、流体F0を導入することで流動層を形成する反応槽2Aを備えるものである。本実施態様においては、流体F0を液体としたものについて説明を行う。
また、反応槽2Aに対して流体F0を導入するための導入配管であるラインL1と、反応槽2Aから排出される流体F1を系外に排出するための排出配管であるラインL2を有している。なお、
図1の各矢印は流体の流れを示すものであり、特に白抜きの矢印は流体流速(空塔速度)を示している。
【0019】
反応槽2Aは、流体F0と粒子(第1の粒子P1及び第2の粒子P2)の接触による反応を行うための槽である。
図1に示すように、反応槽2Aの下部に設けられたラインL1を介して流体F0が反応槽2に供給される。
また、本実施態様における反応槽2Aは、第1流速領域A1及び第2流速領域A2を形成するために、仕切り板20、21を備えている。なお、第1流速領域A1及び第2流速領域A2、並びに仕切り板20、21については後述する。
【0020】
反応槽2Aには、
図1に示すように、反応槽2Aの底部から見て、第1の粒子P1、第2の粒子P2の順に積層されており、流体F0はラインL1から反応槽2A内に導入された後、第1の粒子P1、第2の粒子P2の順に通過し、流体F1としてラインL2から反応槽2A外に排出される。
このとき、反応槽2Aに流体F0を導入するラインL1は、反応槽2A底部に設けられたディストリビュータ(分散管、分散板等)と接続し、反応槽2A内に流体F0を導入することが好ましい。これにより、反応槽2Aに導入された流体F0に係る流体流速の制御が容易となる。
なお、流体F0が反応槽2A内で安定した上向流を形成するように、ラインL1又はラインL2にポンプを設けるものとしてもよい(不図示)。
【0021】
本実施態様における反応槽2Aは、流体F0及び粒子(第1の粒子P1及び第2の粒子P2)が導入・投入され、槽内に保持できる構造を有するものであればよい。
また、本実施態様における反応槽2Aに対し、反応工程の種類に応じて付帯する各種設備を設けることができる。例えば、反応装置1Aにおける反応として、嫌気処理を行う場合、反応槽2Aに、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、微生物が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい。特に、嫌気処理として酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵を行う場合、反応槽2Aに付帯する設備として、メタンガスの回収、精製及び貯留を行う手段を備えるものとすることが好ましい。また、反応槽2A内の上部に、メタンガス、処理水及び固体(後述する多孔質体Pや嫌気性微生物Mの凝集体等)を分離する分離装置を備えることが好ましい。
【0022】
本実施態様における粒子(第1の粒子P1及び第2の粒子P2)は、反応装置1Aで行う反応工程の種類(反応装置1Aに導入される流体F0の種類)に応じて選択する。
例えば、反応工程が化合物の製造に係るものである場合、原料となる流体F0と接触させる粒子としては、触媒として機能する金属触媒や多孔質体などが挙げられる。
また、反応工程が粒子の乾燥や混合に係るものである場合、媒体となる流体F0と接触させる粒子としては、乾燥対象や混合対象となる各種粒子が挙げられる。
さらに、反応工程が粒子に対する吸着・付着を伴う処理に係るものである場合、処理対象物を含有する被処理物となる流体F0と接触させる粒子としては、吸着材、ろ過材として機能する多孔質体のほか、処理対象物と接触して反応(分解又は合成)する成分を含み、反応媒体として機能する粒子状物質などが挙げられる。
【0023】
本実施態様の反応装置1A内における反応工程としては、積層する粒子ごとに対応する反応工程を設定することが可能である。
例えば、第1の粒子P1と第2の粒子P2として、吸着対象の異なる吸着材を用いることで、反応装置1A内で一つの反応工程(吸着処理)を多段で行うことが可能となる。また、第1の粒子P1と第2の粒子P2として、流体F0との接触による反応が異なるもの(例えば、吸着材と触媒、吸着材と反応媒体としての粒子状物質等)を組み合わせることで、反応装置1A内で異なる反応工程を複数組み合わせることが可能となる。
【0024】
粒子(第1の粒子P1及び第2の粒子P2)の形状としては、特に限定されない。例えば、微粒子として用いるものであってもよく、成形体として用いるものであってもよい。成形体の形状としては、例えば、球状、ペレット状、ハニカム状、小円筒状、チューブ状、立方体状、直方体状等が挙げられる。また、第1の粒子P1と第2の粒子P2の形状は、同じであってもよく、異なるものであってもよい。
【0025】
本実施態様における第1の粒子P1と第2の粒子P2は、固定層から流動層への移行点となる最小流動化速度Umfがそれぞれ異なる値を有するものであればよい。一般に、最小流動化速度Umfは、粒子のサイズや比重(密度)に依存する。したがって、第1の粒子P1と第2の粒子P2は、組成、サイズ及び比重が全く異なるものを選択してもよく、サイズや比重が異なる同組成からなるものを選択してもよい。より具体的には、後述するように、第1の粒子P1としては吸着材としての多孔質体を用い、第2の粒子P2としては流体F0中の処理対象物と反応する反応媒体としての微生物の造粒物を用いた組み合わせのほか、第1の粒子P1及び第2の粒子P2を吸着材としての機能を有する多孔質体(活性炭やゼオライト等)とし、それぞれの多孔質体は、組成以外の性質(粒子サイズや多孔率等)や吸着対象が異なるものを用いた組み合わせとすることなどが挙げられる。これにより、一つの反応槽2A内で、複数あるいは多段の反応工程を進行させることが可能となる。
【0026】
特に、本実施態様における第1の粒子P1と第2の粒子P2は、それぞれの比重が異なるものを用いることが好ましい。このとき、第1の粒子P1と第2の粒子P2の比重差は1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。これにより、第1の粒子P1及び第2の粒子P2の最小流動化速度Umfをそれぞれ異なるものとすることができるとともに、第1の粒子P1と第2の粒子P2を反応槽2に導入することで、特段の操作を必要とせず、反応槽2内において第1の粒子P1の層と第2の粒子P2の層が自然に積層状態を形成する。
なお、本実施態様における反応装置1Aでは、第1の粒子P1の比重に対して、第2の粒子P2の比重のほうが小さいという大小関係に基づき、以下説明を行うものとする。
【0027】
第1の粒子P1と第2の粒子P2の組み合わせを比重に基づき選択する具体的な手段については、特に限定されない。例えば、それぞれの比重を直接測定あるいは算出することが可能な場合においては、得られた比重の値に基づき、第1の粒子P1と第2の粒子P2の組み合わせを選択するものとしてもよい。また、それぞれの比重が直接測定あるいは算出できない場合においては、試験的に第1の粒子P1と第2の粒子P2を混合し、二層に分離する組み合わせを選択し、反応槽2に投入するようにしてもよい。
【0028】
反応槽2に投入した第1の粒子P1と第2の粒子P2に対し、ラインL1を介して流体F0を導入することで、第1の粒子P1と第2の粒子P2を流動化させて反応槽2内に流動層を形成させる。
このとき、反応槽2内における流体流速(空塔速度)が一定であると、比重が軽く、最小流動化速度が第1の粒子P1よりも小さい第2の粒子P2の流動化に合わせた流体流速とした場合では、第1の粒子P1の流動化が生じない。一方、第1の粒子P1の流動化に合わせた流体流速とした場合では、第2の粒子P2が過剰に流動化し、第2の粒子P2が槽外へ流出することが懸念される。
【0029】
本実施態様における反応装置1Aは、反応槽2内に、流体F0が第1の流速v1で通過する第1流速領域A1と、流体F0が第2の流速v2で通過する第2流速領域A2とを形成し、かつ、第1の流速v1及び第2の流速v2の数値範囲を、第1の粒子P1の最小流動化速度Umf1及び第2の粒子P2の最小流動化速度Umf2を基準に設定するものである。
【0030】
本実施態様の反応装置1Aにおいて用いられる、第1の粒子P1の最小流動化速度Umf1及び第2の粒子P2の最小流動化速度Umf2、並びに、第1の流速v1及び第2の流速v2の関係について、
図2に基づき説明する。
【0031】
図2は、本実施態様の反応装置1Aにおいて用いられる第1の粒子P1及び第2の粒子P2の最小流動化速度Umf1、Umf2、並びに、第1の流速v1及び第2の流速v2の関係を示す概略図である。なお、
図2の縦軸は圧力損失を示し、横軸は流体の流速を示すものである。
【0032】
図2は、槽内に投入されたそれぞれの粒子(第1の粒子P1及び第2の粒子P2)が固定層の状態から流動層を形成するまでの流速-圧力損失の関係を示す概略図であり、流速の増加とともに圧力損失が増加し、あるところから圧力損失が一定となることを示すものである。ここで、圧力損失が増加している間は、粒子は十分に流動化しておらず、固定層の状態のままであることを示しているが、圧力損失が一定となったところでは、粒子が十分に流動化し、流動層を形成していることを示している。そして、圧力損失が一定となり始める流速は粒子ごとに異なり、この流速が各粒子における最小流動化速度Umfとなる。
【0033】
本実施態様における反応装置1Aにおいては、
図2に示すように、第1の流速v1が、第1の粒子P1の最小流動化速度Umf1及び第2の粒子P2の最小流動化速度Umf2よりも大きく(v1>Umf1,v1>Umf2)、第2の流速v2が、第1の粒子P1の最小流動化速度Umf1よりも小さく、第2の粒子P2の最小流動化速度Umf2よりも大きい(Umf1>v2>Umf2)ものとする。
これにより、第1の流速v1は、第1の粒子P1と第2の粒子P2を流動化させることのできる流体流速となり、第2の流速v2は、第2の粒子P2のみを流動化させることのできる流体流速となる。したがって、第1の粒子P1、第2の粒子P2の順に流体F0が通過する反応槽2A内においては、流体F0が第1の流速v1で通過する第1流速領域A1には、第1の粒子P1が流動化した流動層が形成され、流体F0が第2の流速v2で通過する第2流速領域A2には、第2の粒子P2が流動化した流動層が形成される。すなわち、一つの槽内で、それぞれの粒子(第1の粒子P1及び第2の粒子P2)ごとに流動層が形成されるため、反応装置1A全体として、均一かつ安定した流動性を維持することが可能となる。
【0034】
なお、第1の粒子P1の最小流動化速度Umf1及び第2の粒子P2の最小流動化速度Umf2については、
図2に示すように、流速-圧力損失の関係に基づく算出を行うこと以外にも、各種実験に基づく公知の実験式や演算式により算出することが可能であり、例えば、Ergun式及びその変形式のほか、Wen-Yu式などを用いることが挙げられる。
【0035】
本実施態様における反応装置1Aとしては、上述した第1流速領域A1及び第2流速領域A2を形成することができるものであればよく、具体的な構造及び手段については特に限定されない。
以下、反応装置1Aにおける第1流速領域A1及び第2流速領域A2の形成に係る一例として、反応槽2内に設ける構造物(仕切り板20、21)について、
図1に基づき説明する。
【0036】
図1に示すように、本実施態様における反応装置1Aには、反応槽2内に仕切り板20、21を設けている。
仕切り板20は、下部が広がった漏斗状構造を有し、反応槽2内において第1の粒子P1により形成される層の高さよりも低くなるように設けられる。これにより、
図1に示すように、反応槽2A内の一部に、断面積の小さい狭小流路20aが形成される。この狭小流路20aを通過する流体流速を第1の流速v1とし、この第1の流速v1で流体F0が通過する領域を第1流速領域A1とする。
ここで、第1の流速v1は、狭小流路20aの断面積及びラインL1から導入される流体F0の流速により決定される。したがって、第1の流速v1の制御については、上述した数値範囲内(v1>Umf1,v1>Umf2)となるように、仕切り板20(狭小流路20a)の設計、あるいはラインL1から導入される流体F0の流速制御を行うことが挙げられる。
そして、第1流速領域A1は、第1の粒子P1の最小流動化速度Umf1及び第2の粒子P2の最小流動化速度Umf2よりも大きい流体流速(第1の流速v1)で流体F0が通過するため、この第1流速領域A1においては、第1の粒子P1が流動化し、流動層を形成する。
なお、この第1流速領域A1の高さが、第1の粒子P1により形成される層の高さと略同じ高さとなるように、仕切り板20の高さ、あるいは反応槽2Aに投入する第1の粒子P1の投入量を設定することが好ましい。
【0037】
一方、仕切り板20のない領域には、第2の粒子P2により形成される層があり、第1の流速v1よりも遅い第2の流速v2で流体F0が通過する。この領域を第2流速領域A2とする。
ここで、第2の流速v2は、反応槽2Aの断面積及びラインL1から導入される流体F0の流速により決定される。したがって、第2の流速v2の制御については、上述した数値範囲内(Umf1>v2>Umf2)となるように、反応槽2Aの断面積(槽径)の設計、あるいはラインL1から導入される流体F0の流速制御を行うことが挙げられる。
そして、第2流速領域A2は、第1の粒子P1の最小流動化速度Umf1より小さく、第2の粒子P2の最小流動化速度Umf2よりも大きい流体流速(第2の流速v2)で流体F0が通過するため、この第2流速領域A2においては、第2の粒子P2が流動化し、流動層を形成する。
【0038】
上述したように、反応槽2A内では、第1の粒子P1と第2の粒子P2が積層状態となっており、流動化した際にもこの積層状態を維持することが好ましい。このため、
図1に示すように、反応槽2A内において、第1流速領域A1と第2流速領域A2の間に、仕切り板21を設けることが挙げられる。
【0039】
仕切り板21としては、
図1に示すように、反応槽2Aの側壁側に取り付けられ、中心部が開口する構造を有するものが挙げられる。これにより、第1流速領域A1において狭小流路20aを介して第1の流速v1で上昇した第1の粒子P1が、狭小流路20aの外側(反応槽2Aの側壁側)に沿って下降する際に、第2の粒子P2を巻き込むことを抑制し、第1の粒子P1により形成される層(第1流速領域A1)と第2の粒子P2により形成される層(第2流速領域A2)とが混ざり合い、積層状態が乱れることを抑制することができる。
なお、第1の粒子P1と第2の粒子P2の比重差やサイズ差が大きい等、第1流速領域A1における上向流及び下降流によって、第1流速領域A1と第2流速領域A2の積層状態の乱れが生じにくい場合、仕切り板21の構造を省略するものとしてもよい。
【0040】
以上のように、本実施態様における反応装置1Aによれば、2種類以上の粒子が流動化してなる流動層を形成する反応装置において、粒子の性質(最小流動化速度)に応じた流体流速の領域を複数設けることで、反応装置1A内にそれぞれの粒子ごとの流動層を形成することができ、反応装置1A全体として均一な流動性を維持することが可能となる。また、一つの槽内で複数の反応工程を進行させることができるため、反応装置1Aとしての省スペース化と処理効率向上が可能となる。
【0041】
以下、本実施態様の反応装置1Aによる反応の一例として、有機物を含む排水に対する嫌気処理について説明する。
図3は、本実施態様の反応装置1Aによる嫌気処理に係る概略説明図である。
図3に示すように、反応槽2Aには、第1の粒子P1としての多孔質体Pと、第2の粒子P2としての嫌気性微生物Mが積層されている。そして、流体F0として、有機物を含む排水W0を反応槽2Aに供給することで、反応槽2A内部に収容する嫌気性微生物Mにより、排水W0中に含まれる成分の分解(嫌気処理)が行われる。嫌気処理後の処理水W1は、反応槽2Aの上部に設けられたラインL2を介して反応槽2Aから排出される。なお、このとき、反応槽2Aを密閉系とし、嫌気的環境を維持することが好ましい。
【0042】
多孔質体Pは、多数の細孔を有する材料であればよく、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカ、珪藻土、カオリンなどの無機吸着剤や、ゲル状吸着剤、PVAなどの有機吸着剤が挙げられる。特に、多孔質体Pとしては、嫌気性微生物Mによる嫌気処理を阻害する阻害物質を吸着する能力に加えて、嫌気性微生物Mを保持する能力が高いものを用いることが好ましい。このような多孔質体Pとしては、活性炭が挙げられる。
【0043】
嫌気性微生物Mは、有機物を嫌気処理することができる微生物であればよく、微生物の具体的な種類については特に限定されない。例えば、嫌気処理としてメタン発酵処理を行う場合、嫌気性微生物Mとしては酸生成菌及びメタン生成菌を用いるものとする。その他の嫌気性微生物Mとしては、硝酸・亜硝酸の還元を行う脱窒処理に用いられる脱窒菌や、硫酸の還元を行う硫酸還元処理に用いられる硫酸還元菌等が挙げられる。
【0044】
本実施態様の嫌気性微生物Mとしては、単離された微生物を用いるものであってもよく、他の反応設備等からの種汚泥を用いるものであってもよい。また、排水W0中に含まれる嫌気性微生物Mを活用するものであってもよい。
【0045】
また、嫌気性微生物Mの形態としては、特に限定されないが、例えばグラニュールと呼ばれる直径0.3~3mm程度の微生物の造粒物を用いるものとすることが挙げられる。グラニュールは、自己固定化作用(Self-immobilization)を利用した微生物塊であり、高い菌体濃度を維持することが可能である。したがって、嫌気性微生物Mとしてグラニュールを用いることで、嫌気性微生物Mを高濃度に維持した層が反応槽2A内に形成される。
【0046】
本実施態様における多孔質体Pと嫌気性微生物Mは、上述したように、それぞれの比重差が1.2倍以上となるものを用いることが好ましい。これにより、多孔質体Pと嫌気性微生物Mを反応槽2Aに導入することで、特段の操作を必要とせず、反応槽2A内において多孔質体Pの層と嫌気性微生物Mの層が自然に積層状態を形成する。
図3に示すように、反応槽2Aにおいて排水W0が上向流で通過する場合、多孔質体Pの比重に対して、嫌気性微生物Mの比重が小さくなるような組み合わせのものを用いる。これにより、反応槽2A内で、多孔質体Pの層の上に嫌気性微生物Mの層が形成された積層状態とすることが可能となる。
【0047】
また、本実施態様における反応装置1Aを用いた嫌気処理として、メタン発酵処理を行う場合について具体的に説明する。
反応槽2Aでメタン発酵処理を行う場合、反応槽2A内部に収容する酸生成菌により、排水W0中の糖、蛋白質及び油分などの固体や高分子有機物を分解して、単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸を生成する酸生成工程と、反応槽2A内部に収容するメタン生成菌により、排水W0中の単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸等の炭素源からメタンを生成するメタン生成工程により、メタン発酵が進行する。
【0048】
反応槽2A内に供給された排水W0は、まず多孔質体Pと接触することで、排水W0中に含まれる嫌気性微生物Mの働きを阻害する阻害物質が除去される。なお、除去対象となる阻害物質は特に限定されないが、具体的な例としては、硫黄、アンモニア、油脂(脂肪酸)などが挙げられる。また、排水W0中の成分によっては、高濃度の有機酸が存在(あるいは発生)することで、嫌気性微生物Mの働きを阻害することも考えられる。このような場合においても、多孔質体Pによって有機酸を吸着し、排水W0中の有機酸濃度を低減させることで、嫌気性微生物Mの働きを阻害する阻害物質を除去することが可能となる。
【0049】
また、多孔質体Pに対して嫌気性微生物M(特に酸生成菌)が付着し、保持されることで、多孔質体Pは嫌気性微生物Mの担体としても機能する。これにより、多孔質体P周辺において排水W0中の有機物の分解が起こり、酸生成工程が進行する。つまり、多孔質体Pにより形成された領域は、酸生成領域となり、従来のメタン発酵処理における酸生成槽と同様の機能を有するものになる。
【0050】
多孔質体Pと接触した排水W0は、その後、嫌気性微生物Mと接触する。ここで、嫌気性微生物Mとして、酸生成菌及びメタン生成菌が含まれる。したがって、排水W0中の有機物に対して、酸生成工程及びメタン生成工程が進行し、メタン発酵処理が行われる。つまり、嫌気性微生物Mにより形成された領域は、嫌気処理領域として機能する。
【0051】
このように、一つの反応槽2A内に多孔質体Pと嫌気性微生物Mの積層状態を形成し、排水W0をまず多孔質体Pに接触させることで、嫌気性微生物Mの働きを阻害する阻害物質を除去することが可能となる。また、多孔質体Pが嫌気性微生物Mを保持する担体としても機能することで、多孔質体Pにより形成された領域は酸生成菌を高濃度に保持した酸生成領域となり、排水W0中の有機物の分解及び酸生成が行われる。その後、酸生成処理された排水W0は、嫌気性微生物Mにより形成された領域からなる嫌気処理領域に導入され、酸生成処理により生成した生成物等を炭素源として、メタン発酵処理が進行する。
【0052】
以上のように、有機物を含む排水のメタン発酵処理において本実施態様の反応装置1A及び反応方法を用いることで、複数の粒子を投入した一槽式の反応槽内で、それぞれの粒子ごとに流動層を形成し、均一な流動性を維持するとともに、メタン発酵処理における阻害物質を除去し、かつ酸生成工程を介してメタン生成工程に供給される炭素源を増やすことができる。これにより、嫌気処理を行う反応装置及び反応方法において、省スペース化を可能とするとともに、嫌気処理全体の効率を向上させることが可能となる。
なお、本実施態様において、嫌気処理として酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵について例示したが、これに限定されるものではなく、他の微生物による嫌気処理を行うものとしてもよい。
【0053】
上述したように、第1の実施態様における反応装置1Aにおいては、第1流速領域A1と第2流速領域A2の形成手段として、反応槽内に構造物(仕切り板20、21)を設けるものを示したが、これに限定されるものではない。
以下、本発明の反応装置に係る他の実施態様として、第1流速領域A1と第2流速領域A2の形成手段に係る別態様について例示する。
【0054】
[第2の実施態様]
図4は、本発明の第2の実施態様の反応装置1Bの概略説明図である。
本実施態様に係る反応装置1Bは、
図4に示すように、第1の実施態様における反応槽2Aに代えて、反応槽2Bとして、2つの槽径を有し、断面積の異なる領域を形成する槽を設けるものである。
なお、本実施態様における反応装置1Bの構成のうち、第1の実施態様の反応装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0055】
本実施態様における反応槽2Bは、反応槽2A内に設けられた仕切り板20による狭小流路20aによって、第1流速領域A1と第2流速領域A2を形成するものではなく、反応槽2Bそのものの構造により、第1流速領域A1と第2流速領域A2とを形成するものである。
【0056】
本実施態様における反応槽2Bは、第1の粒子P1により形成される層の断面積S1と、第2の粒子P2により形成される層の断面積S2が異なる構造を有するものである。また、第1の粒子P1により形成される層に対する流体流速(第1の流速v1)、及び、第2の粒子P2により形成される層に対する流体流速(第2の流速v2)が、上述した数値範囲内(v1>Umf1,v1>Umf2、及び、Umf1>v2>Umf2)となるように、それぞれの断面積S1、S2(又は槽径R1、R2)の設計、あるいはラインL1から導入される流体F0の流速制御を行うものとする。
【0057】
反応槽2Bとしては、
図4に示すように、断面積S2(又は槽径R2)が断面積S1(又は槽径R1)よりも大きくなるよう、反応槽2Bの一部が上方向に広がった漏斗状構造とすることが挙げられる。
これにより、第1の実施態様において反応槽2A内に設けた仕切り板20(狭小流路20a)と同様、反応槽2B下部における第1流速領域A1を通過する第1の流速v1は、反応槽2B上部における第2流速領域A2を通過する第2の流速v2よりも大きくなるとともに、各最小流動化速度(Umf1、Umf2)との関係を満たすことが可能となる。
【0058】
[第3の実施態様]
図5は、本発明の第3の実施態様の反応装置1Cの概略説明図である。
本実施態様に係る反応装置1Cは、
図5に示すように、第1の実施態様における反応槽2Aに代えて、反応槽2Cとして、第1の粒子P1により形成される層と第2の粒子P2により形成される層の境界部から流体F0を引き抜くラインL3を備えた槽を設けるものである。また、反応装置1Cは、ラインL3とラインL1を接続して、引き抜かれた流体F2を、ラインL1を介して反応槽2C底部へと返送するものである。
なお、本実施態様における反応装置1Cの構成のうち、第1の実施態様の反応装置1Aの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0059】
本実施態様における反応槽2Cは、反応槽の構造や反応槽に設けられた構造物によって、第1流速領域A1と第2流速領域A2を形成するものではなく、反応槽2C内における流体の流入量を変化させることで、反応槽2C内に第1の流速v1と第2の流速v2を生じさせ、第1流速領域A1と第2流速領域A2とを形成するものである。
【0060】
本実施態様における反応槽2Cは、第1の粒子P1により形成される層と、第2の粒子P2により形成される層の境界に、取水機能を有するラインL3を設けるものである。また、ラインL3とラインL1は接続されており、ラインL3により取水された流体F2は、ラインL1を介して流体F0と共に再度反応槽2C底部に導入される。
また、本実施態様における反応槽2Cは、装置設計や流速制御等の容易性を鑑み、反応槽2C全体にわたって断面積が同一となる構造を有することが好ましいが、反応槽2Bのように、異なる断面積を有するものとしてもよい。
【0061】
本実施態様における反応槽2Cにおいては、第1の粒子P1により形成される層には、ラインL1を介して導入される流体F0の流入量Q1に加え、ラインL3を介して取水された流体F2の流入量Q2分が追加されたものが通過することになる。一方、第2の粒子P2により形成される層には、元々の流体F0の流入量Q1分が通過することになる。したがって、反応槽2C内の断面積が一様に同一であれば、第1の粒子P1により形成される層への流体の流入量が増加した分、第1の粒子P1により形成される層に対する流体流速(第1の流速v1)は、第2の粒子P2により形成される層に対する流体流速(第2の流速v2)よりも大きくなる。
【0062】
また、第1の粒子P1により形成される層に対する流体流速(第1の流速v1)、及び、第2の粒子P2により形成される層に対する流体流速(第2の流速v2)が、上述した数値範囲内(v1>Umf1,v1>Umf2、及び、Umf1>v2>Umf2)となるように、流入量Q1及び流入量Q2の制御を行うものとする。
【0063】
これにより、反応槽2C下部における第1の粒子P1により形成される層(第1流速領域A1に相当)を通過する第1の流速v1は、反応槽2C上部における第2の粒子P2により形成される層(第2流速領域A2に相当)を通過する第2の流速v2よりも大きくなるとともに、各最小流動化速度(Umf1、Umf2)との関係を満たすことが可能となる。
【0064】
なお、上述した実施態様は反応装置及び反応方法の一例を示すものである。本発明に係る反応装置及び反応方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る反応装置及び反応方法を変形してもよい。
【0065】
例えば、本実施態様の反応装置及び反応方法においては、反応槽の構造あるいは反応槽内に設けられる構造物の設計や、ラインL1を介して導入する流体F0の流速制御により、第1の流速v1及び第2の流速v2を制御することについて示したが、これに限定されるものではない。
例えば、第1の粒子P1及び第2の粒子P2のサイズや比重等を制御することにより、各最小流動化速度(Umf1及びUmf2)の値を制御することで、第1の流速v1及び第2の流速v2の制御を間接的に行うものとすることが挙げられる。これにより、反応装置自体を大幅に更新することなく、本発明の反応装置及び反応方法に係る効果を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の反応装置及び反応方法は、複数の粒子を流動化してなる流動層を利用した各種反応に対し、広域に活用することができる。特に、本発明の反応装置及び反応方法は、有機物を含む排水の嫌気処理(特にメタン発酵処理)に対して好適に活用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1A,1B,1C 反応装置、2A,2B,2C 反応槽、20 仕切り板,20a 狭小流路、21 仕切り板、A1 第1流速領域、A2 第2流速領域、F0,F1,F2 流体、L1~L3 ライン、M 嫌気性微生物(グラニュール)、P 多孔質体(活性炭)、P1 第1の粒子,P2 第2の粒子、Q1,Q2 流入量、R1,R2 槽径、S1,S2 断面積、Umf1,Umf2 最小流動化速度、v1 第1の流速、v2 第2の流速、W0 排水、W1 処理水