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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20241210BHJP
   B60K 35/231 20240101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/231
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021048104
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147024
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】滝井 直樹
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-199090(JP,A)
【文献】特開2009-156438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0142192(US,A1)
【文献】実開昭53-138075(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0333600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23
F16D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する画像表示部と、表示された画像の画像光を車両のウインドシールドに投射する反射鏡を備え、当該ウインドシールドで反射された光により画像の虚像を視認できるようにした表示装置であって、前記反射鏡をその回転軸を支点にして傾動させるための傾動部を備えており、この傾動部は、前記回転軸に連結され、傾動されたときに前記反射鏡を一体的に傾動させる傾動部材を備え、前記回転軸は周方向の一部に径方向と交差する方向の弾接面が形成され、かつ前記傾動部材に設けられた連結穴に内挿されて当該傾動部材に連結される連結軸部を有し、前記傾動部材には前記弾接面に弾接されて前記連結軸部を連結穴の内面に対して径方向に付勢する弾性部材が保持されており、前記弾性部材は、前記傾動部材に設けられた保持穴に嵌合保持される嵌合部と、前記連結軸部の弾接面に弾接されて当該連結軸部を径方向に付勢する弾接部が一体に形成されたプレートスプリングである表示装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記連結軸部が前記連結穴に内挿されている状態時に前記傾動部材に対して着脱が可能である請求項に記載の表示装置。
【請求項3】
前記回転軸の連結軸部は円周一部に前記弾接面が形成された円柱状である請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記回転軸の連結軸部はスプライン構造であり、当該スプラインを構成する複数の凸部で挟まれる円周一部に前記弾接面が形成されている請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記傾動部材は、一端部において前記反射鏡の回転軸に連結され、他端部においてアクチュエータに係合された傾動アームとして構成され、当該他端部は前記アクチュエータにより前記反射鏡の回転軸の軸回り方向に傾動される請求項1ないし4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記反射鏡は凹面鏡であり、前記ウインドシールドに対してその反射面の角度が変化されるように傾動される請求項1ないしのいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
自動車のヘッドアップディスプレイとして構成され、前記ウインドシールドは当該自動車のフロントガラスである請求項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に配設される表示装置に関し、特にヘッドアップディスプレイに適用して好適な表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の表示装置として、自動車の乗員に対して所要の画像を表示するヘッドアップディスプレイ(Head up Display:以下、HUD装置と称する)が提案されている。このHUD装置として、例えば、特許文献1には、液晶(LCD)等の画像表示素子に表示された画像を光学系により自動車のウインドシールド(例えば、フロントガラス)に投影し、このウインドシールドで反射された画像光により形成される虚像(以下、表示画像とも称する)を乗員が視認するように構成されている。
【0003】
このようなHUD装置は、通常では画像を投影する光学系の一部に凹面鏡を備えており、眼の高さ位置が相違する乗員に対しても好適な表示画像を視認させるために、凹面鏡で反射した画像光がウインドシールドに投射される位置を調整する装置が設けられる。例えば、凹面鏡に設けられた回転軸に傾動アームを連結し、この傾動アームをアクチュエータにより傾動させることにより凹面鏡の反射面の角度を調整し、画像光の反射方向を調整する。
【0004】
このHUD装置では、回転軸と傾動アームとの連結部に寸法差や組付誤差が生じると、傾動アームの傾動角度と凹面鏡との間にがたつきが生じ、凹面鏡の角度位置を高い精度で調整することができなくなることがある。また、自動車の走行に伴って発生する振動により凹面鏡の角度が変化され、視認する画像の画像位置が変動して表示品質が低下することもある。
【0005】
回転軸の連結部におけるがたつきを防止する技術としては、特許文献2,3の技術がある。特許文献2,3はいずれもスプライン構造をした回転軸と、この回転軸が嵌入される軸穴との間に弾性部材を弾挿した構造であり、この弾性部材での弾性力によって回転軸を軸穴の一方の内面に押圧してがたつきを防止する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-173589公報
【文献】特開平8-49726号公報
【文献】実開昭60-185725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
HUD装置では、自動車に装備するためのスペースを可及的に小さくするために、光学系を小型に構成することが要求される。例えば、凹面鏡の回転軸を短くし、回転軸が連結されるアームの板厚を極力小さくすることが考えられる。しかし、このようにすると、連結部を構成する回転軸と軸穴の軸方向の寸法が極めて短いものとなり、特許文献2,3のように回転軸と軸穴の隙間に弾性部材を内挿して回転軸と軸穴のがたつきを防止することは難しくなる。すなわち、回転軸と軸穴の軸方向の寸法が短くなると、特許文献2のような線状のバネを内挿してもバネ長が短くなるため十分な弾性力を確保することは難しい。また、特許文献3のようなコイルバネを回転軸と軸穴の隙間に内挿することも難しく、内挿してもその状態を安定にかつ継続的に保持させることは難しい。
【0008】
さらに、特許文献2,3の技術は、弾性部材を回転軸と軸穴の隙間に内挿する技術であるので、弾性部材の劣化状態を監視する作業、あるいは損傷されたときの交換作業が極めて煩雑なものとなる。特に、前記したように回転軸と軸穴の軸方向の寸法を可及的に小さくした調整機構では、特許文2,3の技術をそのまま適用することは難しく、HUD装置の小型を実現することは困難である。
【0009】
本発明の目的は、凹面鏡等の反射鏡と、傾動アーム等の傾動部材との連結部におけるがたつきを防止して表示位置を高い精度で調整することが可能な表示装置を提供する。また、本発明の目的は、小型なHUD装置等の表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、画像を表示する画像表示部と、表示された画像の画像光を車両のウインドシールドに投射する反射鏡を備え、当該ウインドシールドで反射された光により画像の虚像を視認できるようにした表示装置であって、反射鏡をその回転軸を支点にして傾動させるための傾動部を備えており、この傾動部は、回転軸に連結され、傾動されたときに反射鏡を一体的に傾動させる傾動部材を備える。回転軸は周方向の一部に径方向と交差する方向の弾接面が形成され、かつ傾動部材に設けられた連結穴に内挿されて当該傾動部材に連結される連結軸部を有する。また、傾動部材には弾接面に弾接されて連結軸部を連結穴の内面に対して径方向に付勢する弾性部材が保持される。
【0011】
本発明における弾性部材は、傾動部材に設けられた保持穴に嵌合保持される嵌合部と、連結軸部の弾接面に弾接されて当該連結軸部を径方向に付勢する弾接部が一体に形成された構成とされる。そして、弾性部材は、連結軸部が連結穴に内挿されている状態時に傾動部材に対して着脱が可能に構成される。
【0012】
本発明の好ましい形態においては、反射鏡は凹面鏡であり、ウインドシールドに対してその反射面の角度が変化されるように傾動される。例えば、自動車のヘッドアップディスプレイとして構成され、ウインドシールドは当該自動車のフロントガラスである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弾接面を有する連結軸部は、傾動部材に設けられた連結穴に内挿され、弾接面に弾接された弾性部材により連結穴の内面に対して径方向に付勢されるので、反射鏡と傾動部材とのがたつきが防止できる。また、弾性部材は、嵌合部において傾動部材に保持され、弾接部において連結軸部の弾接面に弾接される構成とすることにより、連結軸部の長さを短くして表示装置を小型に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用したHUD装置の概念構成図。
図2】実施形態1のHUD装置の概略の斜視図。
図3】実施形態1の凹面鏡と傾動アームの連結部の斜視図。
図4】実施形態1の凹面鏡と傾動アームの連結部の部分分解斜視図。
図5】(a)実施形態1の傾動アームの連結部の側面図、(b)そのb1-b1線断面図。
図6】実施形態2のHUD装置の概略の斜視図。
図7】実施形態2の凹面鏡とセクターギアアームの連結部の斜視図。
図8】実施形態2の凹面鏡とセクターギアアームの連結部の部分分解斜視図。
図9】(a)実施形態2の傾動アームの連結部の側面図、(b)そのb2-b2線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は自動車に適用したHUD装置の概念構成図であり、自動車の左側方から見た構成である。自動車のダッシュボードDB内にHUD装置1が配設されており、当該HUD装置1から出射した画像光Lを、当該ダッシュボードの上面開口Hoを通して自動車のフロントガラス(ウインドシールドと称する)WSに投射させる。投射された画像光LはウインドシールドWSで反射されて自動車の運転者等の乗員Mに向けられる。この画像光Lが乗員Mの眼に入ることにより、当該乗員MはウインドシールドWSを透して自動車の前方位置に画像光による虚像Iを視認することができ、当該画像の表示が行われる。
【0016】
(実施形態1)
図2は、実施形態1のHUD装置1の概略の斜視図である。HUD装置1は装置固定部としてのフレーム10に組み立てられており、画像表示部2と、この画像表示部2に表示された画像を図1に示したウインドシールドWSに投射する光学系3を備えている。画像表示部2は所望の画像を表示してその画像光を出射する構成であり、例えば液晶表示装置で構成される。
【0017】
光学系3は2つの反射鏡を備えており、画像表示部2で表示された画像の画像光を反射する凸面鏡4と、この凸面鏡4で反射された光を更に反射して図1に示したウインドシールドWSに投射する凹面鏡5を備えている。凸面鏡4は凹面鏡5での収差を改善し、かつ凹面鏡5の焦点距離を実質的に延長させるために設けられているが、この凸面鏡4は必ずしも必要とされるものではない。
【0018】
前記凹面鏡5は所要の焦点距離となる曲率の球面または自由曲面で構成されている。そして、画像表示部2において表示された画像が凹面鏡5の焦点距離内に位置するようにHUD装置1が構成される。また、凹面鏡5で反射された光が図1に示したようにウインドシールドWSで反射されて乗員Mの眼に入るように構成されることで、乗員MはウインドシールドWSの前方位置に虚像Iを視認することができる。
【0019】
前記HUD装置1には凹面鏡5を傾動するための傾動部6が設けられている。この傾動部6によって図1の破線で示すように、凹面鏡5の角度を調整することにより、凹面鏡5で反射される光の方向が変化され、ウインドシールドWSに投射される光の位置と方向が変化される。これにより、鎖線で示すように乗員Mの眼に入る光の方向も変化され、視認する虚像Iの位置や方向が変化される。
【0020】
前記傾動部6は、凹面鏡5に一端部が連結された傾動アーム7と、この傾動アーム7の他端部を一端部に対して傾動させるアクチュエータ8を備えている。この傾動アーム7は本発明における傾動部材を構成しており、ここでは細長い板状に形成され、その一端部において凹面鏡5に一体的に連結され、他端部はアクチュエータ8に係合されている。
【0021】
前記凹面鏡5は左右の側縁からそれぞれ外側に一対の回転軸51,52が突出されている。これら一対の回転軸51,52はHUD装置1に設けられたフレーム10に軸転可能に軸支されており、凹面鏡5はこの回転軸51,52を支点にしてフレーム10に対して鉛直方向に所要角度で回動、すなわち傾動することが可能とされている。また、前記凹面鏡5は、前記一対の回転軸51,52のうち、一方の回転軸51において前記傾動アーム7に連結されている。
【0022】
図3は前記凹面鏡5と傾動アーム7の結合部の斜視図であり、図4はその部分分解斜視図である。凹面鏡5の一対の回転軸51,52がフレーム10に軸支される箇所は、滑り軸受や玉軸受で構成されてもよいが、ここでは構造を簡略にするためにフレーム10に開口された軸受穴11に回転軸51,52を内挿した滑り軸受として構成されている。
【0023】
凹面鏡5に連結されている回転軸51は、フレーム10に軸支された位置から突出された部位が傾動アーム7との連結軸部53として構成されている。この連結軸部53は軸方向から見た形状が非円形に形成されている。ここでは、円柱状をした回転軸51の周方向の一部を削除して径方向と交差する方向の平坦面54を有する半円形に形成されている。この平坦面54は本発明における弾接面として構成されるので、以降は弾接面54と称する。
【0024】
一方、前記傾動アーム7の一端部には、連結軸部53の半円形に対応した半円形の連結穴71が板厚方向に開口されている。そして、この連結穴71に連結軸部53が挿入されることにより、連結穴71と連結軸部53が嵌合され、傾動アーム7は凹面鏡5に対してその傾動方向に一体化される。ここで、連結軸部53の長さ寸法と、傾動アーム7の厚み寸法はほぼ同じであるが、これらの寸法をなるべく短くすることにより、傾動部6の寸法、特に凹面鏡5の幅方向(回転軸51,52の軸方向)の寸法を短縮してHUD装置1の小型化が図られる。
【0025】
さらに、傾動アーム7の一端部には、前記連結穴71に隣接する位置に厚み方向に矩形のスプリング保持穴72が開口されており、ここに本発明の弾性部材として構成されたプレートスプリング9が嵌合支持されている。このプレートスプリング9は、弾性を有する金属板等の板ばね材、例えばSUS板が板厚み方向に屈曲加工された構成であり、ほぼU字型に屈曲された嵌合部91と、半円弧状をした弾接部92を有している。
【0026】
図5(a)はこの連結部の側面図、図5(b)はそのb1-b1線断面図である。プレートスプリング9の嵌合部91をスプリング保持穴72に厚入状態に嵌入させることにより、プレートスプリング9は嵌合部91での弾性復帰力によって傾動アーム7に支持される。また、弾接部92は自身の弾性力によって前記連結軸部53の弾接面54に対して径方向に弾接される。プレートスプリング9が弾接面54に弾接されることにより、連結軸部53は連結穴71の内部において径方向に付勢される。そして、連結軸部53の円周面は連結穴71の内周面に当接されるため、回転軸51と傾動アーム7、換言すれば凹面鏡5と傾動アーム7は両者の傾動方向に一体化される。
【0027】
前記アクチュエータ8は、図2に示したように、前記フレーム10に支持されており、その内部構造の図示は省略するが、ここではパルスモータの回転により減速して軸転されるリングナットと、このリングナットに螺合されたスクリューロッド81を備えている。スクリューロッド81の先端は傾動アーム7の他端部に対して自由移動が可能な状態で係合されている。例えば、玉継手70を介して係合されている。アクチュエータ8は、パルスモータの往復回転によりリングナットが回転されると、これに螺合されているスクリューロッド81はロッド軸方向に往復移動され、このスクリューロッド81に係合されている傾動アーム7の他端部は一端部を支点にして鉛直方向に移動される。
【0028】
以上説明した傾動部6を備えたHUD装置1では、図1を参照して説明したように、画像表示部2において表示された画像の画像光は光学系3の凸面鏡4と凹面鏡5において順次反射され、自動車のウインドシールドWSに投射される。投射された画像光LはウインドシールドWSで反射されて自動車の乗員Mに向けられ、乗員MはウインドシールドWSを透して自動車の前方位置に画像(虚像)Iを視認する。
【0029】
このとき、HUD装置1では、傾動部6のアクチュエータ8を制御することにより、スクリューロッド81の軸方向位置が変化制御され、これに係合されている傾動アーム7の他端部が一端部を支点にして鉛直方向に移動され、傾動アーム7の傾動角度が調整される。この傾動アーム7の傾動により、連結されている凹面鏡5も一体的に傾動され、その角度が調整される。このように凹面鏡5の角度を調整することにより、図1に示したウインドシールドWSに投射される画像光の位置や方向が変化され、視線位置が相違する乗員Mに対してそれぞれ好適に画像(虚像I)を視認することができるように調整が行なわれる。
【0030】
この角度調整に際し、連結されている連結軸部53と連結穴71との間に寸法誤差や組付誤差等による隙間が生じていても、連結軸部53はプレートスプリング9により弾接面54が径方向に付勢されており、その周面が連結穴71の周面に対して押圧されているので、連結軸部53と連結穴71との間にがたつきが生じることが防止される。したがって、傾動アーム7の傾動動作はそのまま連結軸部53、すなわち回転軸51に伝えられて凹面鏡が傾動され、凹面鏡5を高い精度で角度調整することが可能になり、乗員の眼の高さの違いに関わらず好適な表示が可能になる。
【0031】
この状態で自動車の走行に伴って生じる振動がHUD装置1に伝えられると、この震動により凹面鏡5が角度変動されるおそれが生じる。しかし、凹面鏡5は連結軸部53が連結穴71の内部においてプレートスプリング9により傾動アーム7に連結され、傾動アーム7はアクチュエータ8により傾動が拘束されているので、凹面鏡5の角度変動銅は防止され、自動車の走行時における表示画像の変動が防止される。
【0032】
このように、プレートスプリング9は連結部において連結軸部53に設けられている弾接面54を径方向に付勢して連結軸部53と連結穴71の密接性を保ち、両者間のがたつきを防止する。また、プレートスプリング9は、傾動アーム7の板厚や連結軸部53の軸方向の長さ寸法に関係なく任意の寸法に形成することができる。したがって、特許文献2,3の技術のように、スプリング材を軸と軸穴との間に挿入する技術に比較して、スプリング材の寸法や形状に制約を受けることはなく、がたつきを防止するのに十分な弾性力を確保することができる。
【0033】
また、プレートスプリング9は露呈された状態にあるので、連結軸部53を連結穴71に内挿した状態時でもプレートスプリング9の着脱が可能であり、しかも、プレートスプリング9の組付作業は容易である。したがって、プレートスプリング9の状態を監視する作業、あるいは損傷されたときの交換作業は容易である。
【0034】
さらに、プレートスプリング9は、その嵌合部91が傾動アーム7に設けたスプリング保持穴72に嵌合された状態で保持されるので、その嵌合部91の設計の自由度は高く、保持力が高く安定した保持が可能なプレートスプリング9が得られる。また、弾接部92についても嵌合部91の形状や寸法に影響を受けることなく設計ができるので、連結軸部53の平坦面54に対する付勢力を任意に設定できる。
【0035】
なお、傾動アーム7と凹面鏡5との間のがたつきを防止するために、傾動アーム7を凹面鏡5と一体成形することが考えられるが、その場合には凹面鏡5と傾動アーム7の素材は一体成形が可能な素材、例えば樹脂に限定されることになり、機械的な強度や径年劣化等による耐久性の問題が生じるために実現は難しい。また、傾動アーム7と凹面鏡5をネジ等の固定手段で一体的に連結することも考えられるが、この実施形態のように連結軸部と連結穴を嵌合してプレートスプリングを装着するだけで組み立てが完了できる構成に比較すると組立作業が面倒なものになる。
【0036】
(実施形態2)
図6は実施形態2のHUD装置1Aの傾動部6Aの斜視図である。実施形態1と等価な部分には同一符号を付してある。実施形態1と同様に、凹面鏡5は左右の側縁からそれぞれ一対の回転軸51,52が突出されており、これらの回転軸51,52においてフレーム10に軸支され、凹面鏡5は鉛直方向に傾動可能とされている。一方、この実施形態2の傾動部6Aは、凹面鏡5には本発明にかかる傾動部材としてのセクターギアアーム7Aが連結されており、アクチュエータ8Aによりこのセクターギアアーム7Aを傾動して凹面鏡5の角度調整を行なう構成とされている。このセクターギアアーム7Aは、一端部において凹面鏡5に連結され、他端部にセクターギア(扇型歯車)75が一体に形成されている。
【0037】
前記アクチュエータ8Aは減速機構を備えたパルスモータで構成されており、その回転軸に設けられた小ギア82がセクターギアアーム7Aのセクターギア75に噛合されている。パルスモータ8Aが駆動されて小ギア82が回転されると、歯合されているセクターギア75が小角度で回転され、セクターギアアーム7Aが傾動される。
【0038】
図7は凹面鏡5とセクターギアーム7Aの連結部の斜視図であり、図8はその部分分解斜視図である。凹面鏡5の左右の側縁からそれぞれ突出された一対の回転軸51,52のうち、一方の回動軸51に連結軸部55が構成されており、この連結軸部55においてセクターギアアーム7Aが連結されている。
【0039】
実施形態2では、この連結軸部55とセクターギアアーム7Aはスプライン構造により連結されている。すなわち、連結軸部55は、軸方向から見て円周方向に配置された5つの凸部56を有する花弁形状をしたスプライン構造とされており、その上で、所定の2つの凸部56の周方向の間隔の寸法が他の間隔よりも相対的に大きくされるとともに、この間隔に平坦面からなる弾接面57が形成されている。
【0040】
一方、セクターギアアーム7Aの一端部には、前記連結軸部55が挿入される連結穴73が開口されている。この連結穴73は前記連結軸部55の断面形状に対応して5つの凹部74を有するスプライン構造に形成されている。そして、この連結穴73に連結軸部55が挿入されることにより、連結穴73と連結軸部55がスプライン構造により嵌合され、セクターギアアーム7Aは凹面鏡5に対してその傾動方向に一体化される。
【0041】
また、セクターギアアーム7Aには、実施形態1と同様に連結穴73に隣接する位置に厚み方向に矩形のスプリング保持穴72が開口されており、ここにプレートスプリング9が嵌合支持されている。このプレートスプリング9は実施形態1と同様に、板ばね材が板厚み方向に屈曲加工されて、ほぼU字型に屈曲された嵌合部91と、舌片状をした弾接部92を有している。なお、ここでは弾接部92は前記弾接面57の寸法に合せて嵌合部91よりも幅寸法が小さくされている。
【0042】
図9(a)は連結部の側面図、図9(b)はそのb2-b2線断面図である。プレートスプリング9の嵌合部91をスプリング保持穴72に厚入して嵌合させることによりプレートスプリング9は自身の弾性力によってセクターギアアーム7Aに保持される。また、このプレートスプリング9の弾接部92は連結軸部55の弾接面57に弾接され、連結軸部55は連結穴73の内部において径方向に付勢されるので、連結軸部55は弾接面57と反対側の花弁部が連結穴73の内周面に当接される。したがって、連結軸部55と連結穴73との間に寸法差が生じていても、連結軸部55が連結穴73の内部において相対移動されるがたつきが抑制ないし防止され、凹面鏡5とセクターギアアーム7Aが傾動方向に一体化される。
【0043】
実施形態2では、凹面鏡5の角度の調整に際しては、図6に示した傾動部6Aのアクチュエータ8Aを駆動制御することにより、小ギア82が回転され、これに歯合されているセクターギア75が所要角度回転される。これにより、セクターギアアーム7Aが傾動され、一端部において連結されている凹面鏡5が傾動され、その角度が調整される。
【0044】
この角度調整において、連結軸部55は連結穴73の内部においてプレートスプリング9により径方向に付勢されるので、連結軸部55は弾接面57と反対側の部位が連結穴73の内面に当接される。したがって、連結軸部55と連結穴73との間に寸法差が生じていても、連結軸部55と連結穴73のがたつきが抑制ないし防止され、凹面鏡5とセクターギアアーム7Aとのがたつきが防止される。
【0045】
これにより、セクターギアアーム7Aの傾動動作はそのまま凹面鏡5の回転軸に伝えられて凹面鏡5が傾動されるので、高い精度での凹面鏡5の角度調整が可能になり、画像を視認する乗員の眼の高さの違いに関わらず好適な表示が可能になる。また、自動車の走行に伴って生じる振動が凹面鏡5に伝えられても、凹面鏡5が傾動されることはなく、自動車の走行時における表示画像の変動が防止される。
【0046】
この実施形態2において、セクターギアアーム7Aの板厚を小さくして連結軸部55の軸方向の寸法を小さくしても、プレートスプリング9は任意の寸法に形成することができるので、がたつきを防止するのに十分な弾性力を確保することができる。また、実施形態1と同様に連結軸部55を連結穴73に内挿した状態でもプレートスプリング9の着脱が可能であり、しかもプレートスプリング9は露呈されているので、プレートスプリング9の組付作業は容易であり、監視作業や交換作業が容易になることも同じである。プレートスプリング9の嵌合部の設計の自由度が高くなり、保持力が高く安定したプレートスプリング9の保持が可能になること、及び弾接部92の設計の自由度も高くなり、連結軸部55の弾接面57に対する弾接力を任意に設定できることも同じである。
【0047】
さらに、実施形態2では、弾接面57はスプライン構造を構成する凸部56の間に形成されているので、連結軸部55が連結穴73に内挿されたときには、弾接面57はセクターギアアーム7Aの連結穴73の内部に位置される。したがって、プレートスプリング9の弾接部92は連結穴73の内部、すなわちセクターギアアーム7Aの板厚内において弾接面57に弾接されることになる。これにより、連結軸部55の軸方向の寸法をさらに小さくし、同時にプレートスプリング9の突出寸法も小さくすることがしでき、HUD装置1のさらなる小型化に有利になる。
【0048】
その一方で、実施形態2の連結軸部55と連結穴73はスプライン構造であるので、両者のがたつきは実施形態1よりも高くなる。すなわち、実施形態1は、連結軸部53と連結穴71との間に径方向の寸法差が生じていると、この寸法差はそのまま、がたつき寸法となる。実施形態2はスプライン構造であり、連結軸部55の外周面と連結穴73の内周面はそれぞれ複数の凸部56と凹部74により周方向に分割されるため、がたつき寸法も分割されて低減される。
【0049】
本発明において、実施形態1の連結軸部53と連結穴71の構成を、実施形態2と同様な構成、すなわち、プレススプリング9の弾接部92を連結穴71の内部において弾接面に弾接させるように構成してもよい。これにより、連結軸部53の軸方向の寸法を低減することができる。
【0050】
実施形態1,2では、凹面鏡5の両側の一対の回転軸51,52をそれぞれ軸受で軸支した例を説明したが、片方の回転軸で軸支するだけでも安定した軸支が可能であれば、一方の回転軸(例えば、回転軸52)においてのみ凹面鏡5を軸支し、他方の回転軸(例えば、回転軸51)は軸支することなくその一部に、傾動アームやセクターギアアームを連結する連結軸部を形成する構成としてもよい。
【0051】
本発明の傾動部材は、実施形態に記載した傾動アームやセクターギアアームに限られるものではなく、例えばアクチュエータによって回転するギア(回転歯車)として構成されてもよい。また、本発明におけるアクチュエータは、傾動部材を傾動させる機能を有していれば、電磁アクチュエータ等の他の構成のアクチュエータであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,1A HUD装置
2 画像表示部
3 光学系
4 凸面鏡
5 凹面鏡(反射鏡)
6 傾動部
7 傾動アーム(傾動部材)
7A セクターギアアーム(傾動部材)
8,8A アクチュエータ
9 プレートスプリング(弾性部材)
51,52 回転軸
53,55 連結軸部
54,57 弾接面
91 勘合部
92 弾接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9