IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

特許7601676機能性薬剤およびこれを用いたコンクリートの表面処理方法
<>
  • 特許-機能性薬剤およびこれを用いたコンクリートの表面処理方法 図1
  • 特許-機能性薬剤およびこれを用いたコンクリートの表面処理方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】機能性薬剤およびこれを用いたコンクリートの表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/65 20060101AFI20241210BHJP
   C04B 41/63 20060101ALI20241210BHJP
   C04B 41/71 20060101ALI20241210BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20241210BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241210BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241210BHJP
   C04B 41/70 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C04B41/65
C04B41/63
C04B41/71
E04G21/02 103A
B05D7/24 303A
B05D7/00 D
C04B41/70
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021052617
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150147
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
(72)【発明者】
【氏名】井手 一雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直希
(72)【発明者】
【氏名】新井 智之
(72)【発明者】
【氏名】石田 卓也
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特許第6954570(JP,B1)
【文献】特開2013-256432(JP,A)
【文献】特開2014-085195(JP,A)
【文献】特開2000-027114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/00-41/72
E01C 1/00-17/00
E04G 21/00-21/10
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート用表面処理剤に蛍光材料を配合してなる機能性薬剤をコンクリート表面上に塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程後、形成された塗膜上にさらに前記機能性薬剤を塗布する第2塗布工程とを有するコンクリートの表面処理方法であって、前記第1塗布工程と前記第2塗布工程とは、機能性薬剤に含まれる蛍光材料の蛍光発光の波長がそれぞれ異なり、
前記コンクリート用表面処理剤が、打継ぎ面処理剤または凝結遅延剤である
ことを特徴とするコンクリートの表面処理方法。
【請求項2】
前記蛍光材料がUVAにより蛍光を発することを特徴とする請求項に記載のコンクリートの表面処理方法。
【請求項3】
前記第1塗布工程および/または第2塗布工程後、前記コンクリート表面上に生じるUVAによる蛍光発光を調べ、前記コンクリート表面上への前記機能性薬剤の塗布状態を確認する工程をさらに有する請求項に記載のコンクリートの表面処理方法。
【請求項4】
第1の蛍光発光の波長を有する第1の蛍光材料と、打継ぎ面処理剤又は凝結遅延剤とを含む第1の塗膜と、
前記第1の蛍光発光の波長とは異なる、第2の蛍光発光の波長を有する第2の蛍光材料と、打継ぎ面処理剤又は凝結遅延剤とを含む第2の塗膜とを表面に備えたコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性薬剤およびこれを用いたコンクリートの表面処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の工事では様々な機能性薬剤が塗布される。このような機能性薬剤としては、例えば、施工時におけるコンクリートの打継ぎ面の接着性能を向上させる打継ぎ面処理剤や、打継ぎ面のせん断強度確保を目的として表面の硬化を遅延させる凝結遅延剤等が挙げられる(例えば特許文献1参照)。さらにコンクリート構造物が完成した際には、耐久性向上のために珪酸カルシウムを主成分とする表面改質剤が塗布される。
【0003】
しかし、いずれの機能性薬剤も塗布乾燥後には無色となり、塗布範囲や塗布量を把握管理することが難しかった。施工現場では一般的に、メーカーで指定した単位面積あたりの量を全量使い切ることで、機能性薬剤の塗布量を管理しているが、構造物の所定箇所に均一に塗布されているか否かは塗布後に確定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-92261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、コンクリート構造物に対して機能性薬剤を塗布した後でも、機能性薬剤が目的とする範囲にかつ均一に塗布されているか否かを簡単に判別することのできる、機能性薬剤およびこれを用いたコンクリートの表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンクリート用表面処理剤に、蛍光材料を配合してなることを特徴とする機能性薬剤を提供するものである。
また本発明は、前記機能性薬剤を、コンクリート表面上に塗布する塗布工程を有するコンクリートの表面処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の機能性薬剤は、コンクリート用表面処理剤に、蛍光材料を配合してなることを特徴とし、また本発明のコンクリートの表面処理方法は、前記機能性薬剤を、コンクリート表面上に塗布する塗布工程を有しているので、コンクリート構造物に対して機能性薬剤を塗布した後でも、機能性薬剤が目的とする範囲にかつ均一に塗布されているか否かを簡単に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のコンクリートの表面処理方法の一実施形態を説明するためのフロー図である。
図2図2は、本発明のコンクリートの表面処理方法の別の実施形態を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
本発明の機能性薬剤は、コンクリート用表面処理剤に、蛍光材料を配合してなることを特徴としている。
【0011】
コンクリート用表面処理剤としてはとくに制限されないが、例えば公知の打継ぎ面処理剤、凝結遅延剤、表面改質剤等が挙げられ、中でも塗布乾燥後に無色ないし透明となるものが本発明の効果を奏しやすく、好適である。
【0012】
蛍光材料としてはとくに制限されないが、例えばブラックライト等のUVA(波長315~400nmの長波長の紫外線)の照射により可視波長域の蛍光発光を生じる蛍光材料が好ましい。このような蛍光材料は公知であり、例えばクマリン系、スチルベン系、ローダミン系等の有機化合物;アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、マンガン、ケイ素、ゲルマニウム、カドミウム、ストロンチウム、イットリウム等の金属酸化物や硫化物等に重金属やユーロピウム等の希土類酸化物等を活性化剤として加えた無機化合物の微粉体、有機系の蛍光顔料などが挙げられる。
【0013】
コンクリート用表面処理剤に対する蛍光材料の添加量は、例えば0.3~1.5質量%であり、複数回の塗布では、薄い方が適し、一回の塗布の場合、濃い方が適している。
【0014】
次に本発明のコンクリートの表面処理方法について説明する。
本発明のコンクリートの表面処理方法は、前記本発明の機能性薬剤を、コンクリート表面上に塗布する塗布工程を有することを特徴とする。
【0015】
前記塗布工程後、例えばコンクリート表面上にブラックライトにより生じるUVAを照射し、目視により蛍光発光を調べ、コンクリート表面上への前記機能性薬剤の塗布状態を確認することが可能となる。
【0016】
図1は、本発明のコンクリートの表面処理方法の一実施形態を説明するためのフロー図である。
図1において、まず、本発明の機能性薬剤を調製し(S100)、コンクリート表面上に機能性薬剤を塗布する塗布工程を行う(S101)。塗布工程に用いる手段は、コンクリート用表面処理剤の種類により適宜選択すればよいが、例えば噴霧器、ハケ、ローラー等が挙げられる。また塗布量についても、当業者であれば目的に応じて種々変更が可能である。続いて、ブラックライト等からUVAをコンクリート表面上に照射し、蛍光発光を目視により確認する(S102)。なお、ブラックライト等の機器を用いる替わりに、太陽光下で目視により確認してもよい。この場合、蛍光材料による蛍光発光(可視光)以外の波長の可視光をカットできるフィルター等を利用して蛍光発光の確認が可能である。また該確認は、蛍光発光を写真撮影することや、撮影した写真をコンピュータにより画像処理することでも可能である。次に、蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされているか否かを発光の強度で確認し(S103)、蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされている場合(Y)、工程を終了する。一方、蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされていない場合(N)、機能性薬剤をコンクリート表面上に再塗布し(S104)、必要に応じてさらに上記のように蛍光発光を確認し、工程を終了する。
【0017】
一方、本発明のコンクリートの表面処理方法の別の形態としては、前記本発明の機能性薬剤をコンクリート表面上に塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程後、形成された塗膜上にさらに前記本発明の機能性薬剤を塗布する第2塗布工程とを有し、前記第1塗布工程と前記第2塗布工程とは、機能性薬剤に含まれる蛍光材料の蛍光発光の波長がそれぞれ異なることを特徴とする。
【0018】
図2は、本発明のコンクリートの表面処理方法の別の実施形態を説明するためのフロー図である。
図2において、まず、本発明の機能性薬剤を調製し(S200)、コンクリート表面上に機能性薬剤を塗布する第1塗布工程を行う(S201)。第1塗布工程に用いる手段は、コンクリート用表面処理剤の種類により適宜選択すればよいが、例えば噴霧器、ハケ、ローラー等が挙げられる。また塗布量についても、当業者であれば目的に応じて種々変更が可能である。続いて、ブラックライト等からUVAをコンクリート表面上に照射し、蛍光発光を目視により確認する(S202)。なお、ブラックライト等の機器を用いる替わりに、図1の形態で説明したように、太陽光下で目視により確認してもよい。また該確認は、蛍光発光を写真撮影することや、撮影した写真をコンピュータにより画像処理することでも可能である。マルチスペクトルカメラの様な、特定周波数の光だけを選択的に撮影できる機器でもよい。次に、第1塗布工程後の蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされているか否かを発光の強度で確認し(S203)、蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされている場合(Y)、第2塗布工程に移行する(S205)。一方、第1塗布工程後の蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされていない場合(N)、機能性薬剤をコンクリート表面上に再塗布し(S204)、必要に応じてさらに上記のように蛍光発光を確認し、第2塗布工程に移行する(S205)。第2塗布工程は、前記第1塗布工程後に形成された塗膜上にさらに本発明の機能性薬剤を塗布する工程であり、ただし、前記第1塗布工程と前記第2塗布工程とは、機能性薬剤に含まれる蛍光材料の蛍光発光の波長がそれぞれ異なる。一例としては、第1塗布工程で用いた機能性薬剤における蛍光材料が青色の蛍光発光を発する場合、第2塗布工程で用いた機能性薬剤における蛍光材料が赤色の蛍光発光を発するように設定する。このようにすれば、第1塗布工程および第2塗布工程で同じ蛍光材料を用いた場合に比べ、第2塗布工程が手順通りに行われたか否かが確認可能となる。すなわち、第2塗布工程後の蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされている場合、コンクリート表面は赤色に蛍光発光しているはずである。なお、蛍光材料の添加量を調整し、第1塗布工程および第2塗布工程が予定通りに行われた場合、最終塗布面が青色と赤色の混色である紫色に蛍光発光するようにしておいてもよい。このようにして、第2塗布工程後の蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされているか否かを蛍光発光の強度で確認し(S207)、蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされている場合(Y)、第2塗布工程を終了する。一方、第2塗布工程後の蛍光発光が均一かつ所定範囲でなされていない場合(N)、機能性薬剤をコンクリート表面上に再塗布し(S208)、必要に応じてさらに上記のように蛍光発光を確認し、第2塗布工程を終了する(S205)。
【0019】
なお、上記では塗布工程として第1塗布工程および第2塗布工程の2つ工程を例に取り説明したが、本発明はこれに制限されず、蛍光発光の波長が異なる蛍光材料をn個用意して、n回の塗布工程を行ってもよい。
【実施例
【0020】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0021】
実施例1
サンプルとして、ブロック形状のコンクリート成形物を用意した。
一方、凝結遅延剤18リットルに対し、蛍光材料として蛍光粉末顔料(無機蛍光体(ZnS、Cu)が主成分)を200g添加して本発明の機能性薬剤1を調製した。
上記コンクリート成形物の表面に調製した機能性薬剤1をハケ塗りした。
次に、コンクリート成形物の表面に対し、ブラックライトを用いてUVAを照射した。
その結果、ハケ塗りした部分には青色の蛍光発光を目視で確認することができた。一方、機能性薬剤1を塗布したかった部分には、蛍光発光が観察されなかった。また、ハケ塗りによる機能性薬剤1の塗布量のムラが、蛍光発光の強度の強弱によって確認することができた。
【0022】
実施例2
実施例1において、UVA照射時のみ青色に発光する蛍光材料を混和した機能性薬剤1を塗布し、蛍光発光を確認した後に、その塗布面にUVA照射時のみ赤色に発光する蛍光材料(無機蛍光体(ZnS、Cu)ないしは、有機蛍光体(メラミンホルムアルデヒド樹脂)が主成分)を混和した機能性薬剤2をハケ塗りした。
次に、機能性薬剤1および機能性薬剤2を2回塗布した塗布面に、ブラックライトを用いてUVAを照射した。その結果、2回目の機能性薬剤2をハケ塗りした部分には青色と赤色の混色である紫色の蛍光発光を目視で確認することができた。一方、機能性薬剤1を1回だけ塗布した部分には、青い蛍光発光が観察されたのみであった。また、ハケ塗りによる機能性薬剤2の塗布量のムラが、蛍光発光の強度の強弱によって確認することができた。
【0023】
コンクリート表面処理剤として凝結遅延剤を用いた場合、この薬剤は工事が進むとウォータージェット等により除去されるものであるが、本発明の機能性薬剤を使用することにより、当該除去作業の目安ともなり、本発明の別の効果を奏することができる。
【0024】
一方、コンクリート表面処理剤として表面改質剤を用いた場合、経時で機能性薬剤の蛍光発光を確認することにより、経年劣化の度合いを蛍光発光の強度によって確認することができ、本発明の別の効果を奏することができる。
図1
図2