(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】鋳造金型用のガス吸引装置
(51)【国際特許分類】
B22D 18/04 20060101AFI20241210BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B22D18/04 R
B22C9/06 P
(21)【出願番号】P 2021055007
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】結城 研二
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-057968(JP,A)
【文献】特開2007-069218(JP,A)
【文献】特開2020-049492(JP,A)
【文献】実開平04-054555(JP,U)
【文献】特開2020-055033(JP,A)
【文献】特開2004-330287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 18/04
B22C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造金型のキャビティ部に接続され、前記キャビティ部内のガスを吸引するためのガス吸引部と、
前記キャビティ部と前記ガス吸引部との間に設けられ、前記キャビティ部からの
前記ガス中に含まれる異物を捕捉するフィルタと、
前記キャビティ部と前記フィルタとの間に設けられ、前記ガス中に含まれる異物を
前記ガスから遠心分離する遠心分離部と、
前記遠心分離部と前記フィルタとの間に設けられ、前記遠心分離部
から水平方向に出射された前記ガスの方向を
前記水平方向と直交する
上方へ変換して、前記フィルタに導く方向変換部と、
前記方向変換部を挟んで、前記遠心分離部に対して前記水平方向に設けられ、前記遠心分離部から前記水平方向に向かう異物を収容する異物収容部と、
を備える、鋳造金型用のガス吸引装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の鋳造金型用のガス吸引装置であって、
前記
上方と逆方向の
下方に流れるエアを前記フィルタに供給して、前記フィルタに捕捉された異物を前記フィルタから離脱させて前記
下方へ落下させるエア供給部と、
前記方向変換部を挟んで、前記フィルタに対して前記
下方に設けられ、前記方向変換部から前記
下方に
落下する異物を捕捉する異物捕捉部と、
を備える、鋳造金型用のガス吸引装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の鋳造金型用のガス吸引装置であって、
前記異物収容部は、開口が設けられた筒状容器と、前記開口を封止するキャップ部材と、を有し、
前記キャップ部材は、前記筒状容器に対して着脱可能である、鋳造金型用のガス吸引装置。
【請求項4】
請求項
2に記載の鋳造金型用のガス吸引装置であって、
前記異物捕捉部は、開口が設けられた筒状容器と、前記開口を封止するキャップ部材と、を有し、
前記キャップ部材は、前記筒状容器に対して着脱可能である、鋳造金型用のガス吸引装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の鋳造金型用のガス吸引装置であって、
前記遠心分離部は、前記ガスをらせん状に回転させて通過させるらせん流路を有する、鋳造金型用のガス吸引装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の鋳造金型用のガス吸引装置であって、
前記遠心分離部は、筒体と、前記筒体内に収容されて、前記筒体との間に前記らせん流路を形成するらせん部材と、前記筒体の端部を着脱可能に封止する封止部材と、を有する、鋳造金型用のガス吸引装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の鋳造金型用のガス吸引装置であって、
前記遠心分離部は、前記鋳造金型の外面に配置されている、鋳造金型用のガス吸引装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の鋳造金型用のガス吸引装置であって、
前記遠心分離部は、
前記鋳造金型の母材に比べて高熱伝導の材料から形成されている、鋳造金型用のガス吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造金型のキャビティ部内からガスを吸引する鋳造金型用のガス吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造金型のキャビティ内のガスを吸引した後に、キャビティ内に溶湯を注入して鋳造を行う減圧鋳造システムが知られている。減圧鋳造システムでは、キャビティ内のガスが溶湯に混入することで生じるガス欠陥(例えば、巣)の発生を低減できる。さらに、キャビティ内の異物(例えば、離形剤や溶湯紛)を吸引して、除去することにより、溶湯内への異物の混入に起因する鋳造品の欠陥の発生を低減できる。特許文献1では、キャビティ内から吸引したガス中の異物をフィルタで捕捉する構成が開示されている。
【0003】
ここで、吸引したガスの温度が比較的高い場合、ガスはミスト状の異物を含むことがある。ミスト状の異物は、フィルタの目詰まりの原因となる。この対策として、フィルタまでのガスの経路を長くして、ミスト状の異物を冷却し、固化することが考えられる。しかし、ガスの経路を長くすると、経路に異物が付着、堆積し易くなり、経路のクリーニングおよび部品の交換の頻度を高くすることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、異物を捕集するフィルタの目詰まりを抑制することができる鋳造金型用のガス吸引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る鋳造金型用のガス吸引装置は、鋳造金型のキャビティ部に接続され、前記キャビティ部内のガスを吸引するためのガス吸引部と、前記キャビティ部と前記ガス吸引部との間に設けられ、前記キャビティ部からのガス中に含まれる異物を捕捉するフィルタと、前記キャビティ部と前記フィルタとの間に設けられ、前記ガス中に含まれる異物をガスから遠心分離する遠心分離部と、前記遠心分離部と前記フィルタとの間に設けられ、前記遠心分離部を通過した前記ガスの方向を第1の方向から前記第1の方向と異なる第2の方向へと変換して、前記フィルタに導く方向変換部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異物を捕集するフィルタの目詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る鋳造金型用のガス吸引装置を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る鋳造金型用のガス吸引装置を説明する。
【0010】
図1に示す鋳造装置10は、鋳造金型12とガス吸引装置13とを備える。鋳造金型12は、
図1の紙面の表裏方向に互いに対向して配置される固定金型12aと可動金型12bとから構成される。可動金型12bは、固定金型12aに対して、当接および離間可能に水平方向に移動する。固定金型12aと可動金型12bの互いに対向する合わせ面には、キャビティ部14を構成する凹部14a、14bがそれぞれ形成される。固定金型12aに可動金型12bを当接させることで、鋳造金型12は、閉じられ、その内部にキャビティ部14が形成される。
【0011】
鋳造金型12には溶湯供給部16が接続されている。溶湯供給部16は、固定金型12a側に設けられ、キャビティ部14内に溶湯を供給する。鋳造金型12(ここでは、固定金型12a)には、キャビティ部14の下流にオーバーフロー部18が形成される。ここでは、一例として、2つのオーバーフロー部18が示される。キャビティ部14に供給された溶湯は、オーバーフロー部18に達して、キャビティ部14およびオーバーフロー部18の内部で固化する。固化した溶湯は、鋳造品として、鋳造金型12から取り出される。
【0012】
本実施形態に係る鋳造金型12は、2つの遮断弁20、および2つのガス吸引路22を有する。遮断弁20は、オーバーフロー部18とガス吸引路22の間に設けられ、ガス吸引路22を遮断し、オーバーフロー部18からガス吸引路22への溶湯の侵入を防止する。なお、遮断弁20、およびガス吸引路22の個数は、2つには限定されず、1つ、または3つ以上でもよい。
【0013】
ガス吸引装置13は、遠心分離部24と、方向変換部26と、フィルタ28と、バルブ30と、ガス吸引部34と、エア供給部36とを備える。遠心分離部24は、鋳造金型12に設けられた2つのガス吸引路22に接続される。従って、2つのガス吸引路22は、遠心分離部24、方向変換部26、フィルタ28、およびバルブ30を介して、ガス吸引部34に接続される。ガス吸引部34は、バルブ30、フィルタ28、方向変換部26、遠心分離部24、ガス吸引路22、およびオーバーフロー部18を介して、キャビティ部14内のガス(異物を含む)を吸引する。ガス吸引部34は、タンク34aおよびポンプ34bを有し、ポンプ34bによって減圧されたタンク34aによって、キャビティ部14内のガスを吸引する。キャビティ部14への溶湯の供給の前に、キャビティ部14内のガスを吸引しておくことで、溶湯へのガスまたは異物(例えば、溶湯紛)の混入に起因する鋳造品の欠陥(例えば、巣)の発生を低減することができる。
【0014】
フィルタ28は、キャビティ部14とガス吸引部34との間、より詳細には、方向変換部26とバルブ30の間に設けられ、キャビティ部14からのガス中に含まれる異物を捕捉する。
【0015】
ここで、吸引されたガスが比較的高温の場合、ガスはミスト状の異物を含む可能性がある。ミスト状の異物の一例として、固形潤滑剤を挙げることができる。固形潤滑剤は、溶湯供給部16の動作の円滑化のための潤滑剤であり、室温では固体で、加熱されることで、液体さらには気体へと変化する。固形潤滑剤は、溶湯供給部16の動作時に、固体状態で溶湯供給部16内に導入され、溶湯によって加熱、気化されてキャビティ部14に流入する。キャビティ部14内のガスが十分冷却されずにフィルタ28に達すると、ガス中の固形潤滑剤の一部は固化しきらず、少なくとも一部が液状であるミスト状の異物となる。このようなミスト状の異物は、フィルタ28上で固化、固着して、フィルタ28を目詰まりさせ原因となる。
【0016】
本実施形態では、ミスト状の異物をフィルタ28に到達させないために、フィルタ28の上流に遠心分離部24および方向変換部26を設けている。ここで、キャビティ部14からフィルタ28に至るガスの経路を長くすることで、フィルタ28に到達するまでに、ガスを十分冷やすことも考えられる。しかし、ガスの経路を長くすると、経路に異物が付着、堆積し易くなり、経路のクリーニングおよび部品の交換の頻度を高くすることが必要となる。このため、本実施形態では、遠心分離部24および方向変換部26を用いることで、基本的に、ガスの経路を長くする必要性を低減した上で、フィルタ28へのミスト状の異物の到達を抑制している。
【0017】
バルブ30には、ガス吸引部34と共に、エア供給部36が接続される。エア供給部36は、バルブ30、フィルタ28、方向変換部26、遠心分離部24、ガス吸引路22、およびオーバーフロー部18を介して、開かれた状態の鋳造金型12内にエアを流すことで(エアブロー)、フィルタ28、ガス吸引路22等をクリーニングする。バルブ30は、フィルタ28、方向変換部26に対するガス吸引部34およびエア供給部36の接続を切り替える。
【0018】
遠心分離部24は、キャビティ部14とフィルタ28との間、より詳細には、ガス吸引路22と方向変換部26との間に設けられる。遠心分離部24は、キャビティ部14から吸引したガス中に含まれる異物をガスから遠心分離し、第1の方向d1(ここでは、水平方向)にガスを出射する。遠心分離部24は、筒体42、らせん部材44、および封止部材46を有する。筒体42は、筒形状を有し、その内部に形成された円筒孔にらせん部材44を収容する。筒体42は、鋳造金型12(特に可動金型12b)の上面12cに固定されている。らせん部材44は、軸部44aと、軸部44aの外周面から径方向外方に突出してらせん状に延在するフィン部44bとを有する。らせん部材44は、筒体42内に収容されて、筒体42との間にらせん流路45を形成する。
【0019】
らせん流路45は、筒体42に設けられた2つの連通孔42hを介して2つのガス吸引路22に連通している。2つの連通孔42hは、筒体42の下部に、筒体42の軸方向(長手方向)に間隔を置いて設けられている。従って、一方の連通孔42hは遠心分離部24における相対的に上流側に設けられ、他方の連通孔42hは遠心分離部24における相対的に下流側に設けられている。
【0020】
らせん流路45はガスをらせん状に回転させて通過させる。すなわち、ガスは、らせん流路45を流れる際に、フィン部44bのらせん形状に沿って軸部44aの周りを旋回しながら方向変換部26側へと移動する。この旋回に伴う遠心力によってガス中の異物が遠心分離される。
【0021】
ここで、遠心分離の詳細を説明する。キャビティ部14内で気体状態の異物(例えば、固形潤滑剤)は、気体状態で遠心分離部24に流入し、筒体42の内面に沿ってガスが回転することで、冷却されて、液体または固体の粒子(異物)となる。このような液体または固体の異物は、ガスから遠心分離される。このとき、必ずしも異物が完全な固体となるまで冷却する必要はなく、液体と固体の双方を含む程度まで冷却すればよい。遠心分離された異物の一部は遠心分離部24内(筒体42内およびらせん部材44上)に捕捉され、残りはガスと共に遠心分離部24から第1の方向d1に出射される。なお、後述のように、方向変換部26によって、ガスの方向は、第2の方向d2へと変換されるが、異物の多くは、その比重差により、第1の方向d1にそのまま進む。
【0022】
封止部材46は、筒体42の端部を封止するものであり、筒体42の当該端部に着脱可能である。これにより、筒体42から封止部材46およびらせん部材44を取り外すことで、筒体42内の異物を除去し、遠心分離部24内をクリーニングすることが容易となる。ここで、らせん部材44を封止部材46に固定しておくことが好ましい。封止部材46と共に、らせん部材44を取り外すことが可能となる。
【0023】
遠心分離部24は、鋳造金型12の外面(ここでは、上面12c)に配置され、例えば、鋳造金型12の母材(例えば、鉄)に比べて高熱伝導の材料(一例として、アルミまたは銅)から形成することができる。鋳造金型12を用いて、遠心分離部24中のガスを効率的に冷却することができ、ガスを冷却させるクーラを設ける必要性が低減する。なお、鋳造金型12および遠心分離部24の双方を同一の母材(例えば、鉄)から形成してもよい。
【0024】
方向変換部26は、遠心分離部24とフィルタ28との間に設けられ、遠心分離部24を通過したガスの方向を第1の方向d1(ここでは、水平方向)から第1の方向d1と異なる第2の方向d2(例えば、第1の方向d1と直交する方向、または上方、ここでは、鉛直方向、特に、鉛直上方)へと変換して、フィルタ28に導く。
【0025】
ここでは、方向変換部26は、第1の方向d1を軸線とする配管48と第2の方向d2を軸線とする配管50を交差して接続することで形成されている。これに替えて、第1の方向d1から第2の方向d2に屈曲する屈曲配管を用いて方向変換部26を構成してもよい。この場合、ガスの流れる方向はより滑らかに変更され、ガスの流れに乱れが生じ難くなる。この結果、ガスの流れの乱れが、異物の第1の方向d1への動きの妨げとなることが防止される。
【0026】
異物収容部52は、方向変換部26を挟んで、遠心分離部24に対して第1の方向d1に設けられている。本実施形態では、遠心分離部24と方向変換部26と異物収容部52とは、水平方向に一直線上に配置されている。異物収容部52は、遠心分離部24から第1の方向d1に向かう異物を収容する。これにより、遠心分離部24で遠心分離されて第1の方向d1に向かう異物を異物収容部52で収容することができる。すなわち、ガス中の液体または固体の(例えば、液体と固体を含む)異物は、ガスに比べて重いため方向変換部26中のガスの流れに沿って方向を変更され難く、第1の方向d1にそのまま進み、異物収容部52に収容される傾向にある。液状の異物は、異物収容部52に収容されて、さらに冷却され、固化する。このように、遠心分離部24において、捕捉されなかった異物、特に、ミスト状の異物は、異物収容部52で収容されて、フィルタ28に到達し難くなり、フィルタ28の目詰まりが抑制される。
【0027】
異物収容部52は、開口52a1が設けられた筒状容器52aと開口52a1を封止するキャップ部材52bを備える。キャップ部材52bは、筒状容器52aに対して着脱可能である。これにより、筒状容器52aからキャップ部材52bを外すことによって、異物収容部52に蓄積された異物を取り出すことができる。
【0028】
異物捕捉部54は、方向変換部26を挟んで、フィルタ28に対して第3の方向d3(例えば、下方、ここでは、鉛直下方)に設けられている。本実施形態では、フィルタ28と方向変換部26と異物捕捉部54とは、鉛直方向に一直線上に配置されている。異物捕捉部54は、方向変換部26から第3の方向d3に向かう異物を捕捉する。ここで捕捉される異物は、例えば、エア供給部36によるエアブローによってフィルタ28から離脱した異物である。すなわち、エア供給部36は、第2の方向d2と逆方向の第3の方向d3に流れるエアをフィルタ28に供給する。この結果、フィルタ28に捕捉された異物はフィルタ28から離脱され、方向変換部26へと向かい、異物捕捉部54によって捕捉される。すなわち、エア供給部36からのエアによって、フィルタ28に捕捉された異物を離脱させて、異物捕捉部54に捕捉させること、すなわち、フィルタ28のクリーニングが可能となる。また、第3の方向d3を下方とすることで、フィルタ28から落下した異物を異物捕捉部54によって捕捉することができる。
【0029】
異物捕捉部54は、開口54a1が設けられた筒状容器54aと、開口54a1を封止するキャップ部材54bを備える。キャップ部材54bは、筒状容器54aに対して着脱可能である。これにより、筒状容器54aからキャップ部材54bを外すことによって、異物捕捉部54に蓄積された異物を取り出すことができる。
【0030】
〔実施形態から得られる発明〕
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0031】
[1]鋳造金型(12)用のガス吸引装置(13)は、鋳造金型のキャビティ部(14)に接続され、前記キャビティ部内のガスを吸引するためのガス吸引部(34)と、前記キャビティ部と前記ガス吸引部との間に設けられ、前記キャビティ部からのガス中に含まれる異物を捕捉するフィルタ(28)と、前記キャビティ部と前記フィルタとの間に設けられ、前記ガス中に含まれる異物をガスから遠心分離する遠心分離部(24)と、前記遠心分離部と前記フィルタとの間に設けられ、前記遠心分離部を通過した前記ガスの方向を第1の方向(d1)から前記第1の方向と異なる第2の方向(d2)へと変換して、前記フィルタに導く方向変換部(26)と、を備える。これにより、異物を遠心分離したガスの方向を第1の方向から第2の方向に変換してからフィルタに導くことで、遠心分離部で捕捉されなかった異物、例えば、ミスト状の異物が第1の方向に進み、フィルタに到達し難くなり、フィルタの目詰まりが抑制される。
【0032】
[2]鋳造金型用のガス吸引装置は、前記方向変換部を挟んで、前記遠心分離部に対して前記第1の方向に設けられ、前記遠心分離部から前記第1の方向に向かう異物を収容する異物収容部(52)、を備える。これにより、遠心分離部で遠心分離されて第1の方向に向かう異物を異物収容部で収容することができる。
【0033】
[3]鋳造金型用のガス吸引装置は、前記第2の方向と逆方向の第3の方向(d3)に流れるエアを前記フィルタに供給して、前記フィルタに捕捉された異物を前記フィルタから離脱させて前記方向変換部へと向かわせるエア供給部(36)と、前記方向変換部を挟んで、前記フィルタに対して前記第3の方向に設けられ、前記方向変換部から前記第3の方向に向かう異物を捕捉する異物捕捉部(54)と、を備える。これにより、エア供給部からのエアによって、フィルタに捕捉された異物を離脱させて、異物捕捉部に捕捉させること、すなわち、フィルタのクリーニングが可能となる。
【0034】
[4]前記第1の方向は水平方向であり、前記第2の方向は前記第1の方向と直交する方向である。これにより、ガスの方向を水平方向からこれに直交する方向に変換することで、ガス中の異物が水平方向に流れ易くなり、異物、特に、ミスト状の異物は、フィルタに到達し難くなり、フィルタの目詰まりが抑制される。
【0035】
[5]前記遠心分離部は、水平方向にガスを出射し、前記方向変換部は、前記遠心分離部から前記水平方向に出射されたガスの方向を上方に変換して、前記フィルタに導き、前記ガス吸引装置は、前記方向変換部を挟んで、前記遠心分離部に対して前記水平方向に設けられ、前記遠心分離部から前記水平方向に向かう異物を収容する異物収容部と、前記方向変換部を挟んで、前記フィルタに対して下方に設けられ、前記フィルタから前記下方に落下する異物を収容する異物捕捉部と、前記下方に向かうエアを前記フィルタに供給して、前記フィルタに捕捉された異物を前記下方に落下させて、前記異物捕捉部に導く、エア供給部と、を備える。これにより、遠心分離部から出射されたガスの方向を水平方向から上方に変換して、フィルタに導くことで、異物、特に、ミスト状の異物は異物収容部に収容され、フィルタに到達し難くなり、フィルタの目詰まりが抑制される。また、エア供給部から下方に向かうエアを供給することで、フィルタに捕捉された異物を落下させ、異物捕捉部に捕捉させることで、フィルタをクリーニングすることができる。
【0036】
[6]前記異物収容部は、開口(52a1)が設けられた筒状容器(52a)と、前記開口を封止するキャップ部材(52b)と、を有し、前記キャップ部材は、前記筒状容器に対して着脱可能である。これにより、筒状容器からキャップ部材を外すことによって、異物収容部に蓄積された異物を取り出すことができる。
【0037】
[7]前記異物捕捉部は、開口(54a1)が設けられた筒状容器(54a)と、前記開口を封止するキャップ部材(54b)と、を有し、前記キャップ部材は、前記筒状容器に対して着脱可能である。これにより、筒状容器からキャップ部材を外すことによって、異物捕捉部に蓄積された異物を取り出すことができる。
【0038】
[8]前記遠心分離部は、前記ガスをらせん状に回転させて通過させるらせん流路(45)を有する。これにより、ガスをらせん状に回転させて、ガス中の異物を遠心分離することができる。
【0039】
[9]前記遠心分離部は、筒体(42)と、前記筒体内に収容されて、前記筒体との間に前記らせん流路を形成するらせん部材(44)と、前記筒体の端部を着脱可能に封止する封止部材(46)と、を有する。これにより、らせん部材によって、ガスをらせん状に回転させることができ、且つ、封止部材を取り外すことで、筒体内の異物を除去し、遠心分離部をクリーニングすることが容易となる。
【0040】
[10]前記遠心分離部は、前記鋳造金型の外面(上面12c)に配置されている。鋳造金型の外面を用いて、ガス、ひいては、ガス中の気体状態の異物を冷却して、液体または固体の粒子とすることで、遠心分離を容易化することができる。
【0041】
[11]前記遠心分離部は、鋳造金型の母材に比べて高熱伝導の材料から形成されている。鋳造金型の外面を用いてガスをより強力に冷却することができる。
【符号の説明】
【0042】
10…鋳造装置 12…鋳造金型
13…ガス吸引装置 14…キャビティ部
16…溶湯供給部 18…オーバーフロー部
22…ガス吸引路 24…遠心分離部
26…方向変換部 28…フィルタ
34…ガス吸引部 36…エア供給部
42…筒体 44…らせん部材
45…らせん流路 46…封止部材
52…異物収容部 54…異物捕捉部
52a、54a…筒状容器 52a1、54a1…開口
52b、54b…キャップ部材