(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241210BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241210BHJP
G02B 17/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
G02B17/00
(21)【出願番号】P 2021059580
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】村上 一臣
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 隆延
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-061723(JP,A)
【文献】特開2020-020858(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171154(WO,A1)
【文献】特開2019-159283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0235238(US,A1)
【文献】特開2017-049371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23
G02B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を含んだ照射光を照射する画像照射部と、前記画像照射部から入射した前記照射光を反射する第1自由曲面ミラーと、前記第1自由曲面ミラーから入射した前記照射光を反射する中間ミラーと、前記中間ミラーから入射した前記照射光を反射して視点に到達させる第2自由曲面ミラーを備え、
前記第1自由曲面ミラーで反射された前記照射光は、前記第2自由曲面ミラーに到達する前の中間結像位置において、少なくとも一つの結像軸方向の成分が結像され、
前記中間ミラーは、前記中間結像位置に配置されて
おり、
前記中間ミラーは、誘電体多層膜で構成されたコールドミラーであり、可視光を反射して赤外光および/または紫外光を透過することを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
画像を含んだ照射光を照射する画像照射部と、前記画像照射部から入射した前記照射光を反射する第1自由曲面ミラーと、前記第1自由曲面ミラーから入射した前記照射光を反射する中間ミラーと、前記中間ミラーから入射した前記照射光を反射して視点に到達させる第2自由曲面ミラーを備え、
前記第1自由曲面ミラーで反射された前記照射光は、前記第2自由曲面ミラーに到達する前の中間結像位置において、少なくとも一つの結像軸方向の成分が結像され、
前記中間ミラーは、前記中間結像位置に配置されて
おり、
前記第2自由曲面ミラーにおける前記照射光の反射方向から、前記第2自由曲面ミラーに入射する外光が、前記第2自由曲面ミラーで反射された後に、前記中間ミラーよりも遠い位置に集光されることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
画像を含んだ照射光を照射する画像照射部と、前記画像照射部から入射した前記照射光を反射する第1自由曲面ミラーと、前記第1自由曲面ミラーから入射した前記照射光を反射する中間ミラーと、前記中間ミラーから入射した前記照射光を反射して視点に到達させる第2自由曲面ミラーを備え、
前記第1自由曲面ミラーで反射された前記照射光は、前記第2自由曲面ミラーに到達する前の中間結像位置において、少なくとも一つの結像軸方向の成分が結像され、
前記中間ミラーは、前記中間結像位置に配置されて
おり、
前記画像照射部から前記第2自由曲面ミラーまでの前記照射光の光路に、前記照射光の偏光方向を透過する偏光フィルタが設けられ、
前記偏光フィルタは、前記中間ミラーと一体に形成されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項
1から3の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記中間ミラーは、前記結像軸方向に対応する長さが、前記画像照射部の有効照射領域における前記結像軸方向に対応する長さよりも小さいことを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項
1から4の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記中間ミラーは、略平坦な反射面を有する平面ミラーであることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項
1から5の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記画像照射部から前記第2自由曲面ミラーまでの前記照射光の基準光線は、同一の進行平面を構成し、
前記結像軸方向は、前記進行平面に含まれることを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に画像照射部からの照射光を複数の自由曲面ミラーで反射して視点に到達させる画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があるため好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、運転者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)のような画像投影装置が提案されている。
【0004】
このような従来技術の画像投影装置では、画像照射部が画像を含んだ照射光を照射し、1枚もしくは複数枚の自由曲面ミラーで照射光を反射させて、空間中に画像が結像するように運転者等の視点位置に到達させる。これにより、運転者等は視点に入射した照射光によって、奥行き方向における結像位置に画像が表示されているように認識することができる。
【0005】
しかし自由曲面ミラーを用いる画像投影装置では、外部から太陽光などが外光として入射してきた場合に、画像照射部の表面上に自由曲面ミラーで外光が集光されて画像照射部の温度が上昇して劣化する可能性があった。そこで、複数の自由曲面ミラーの間で照射光を中間結像させて、中間結像位置の近傍に遮蔽部や赤外光カットフィルターを配置し、外部から画像照射部に到達する外光の影響を低減するものも提案されている。(例えば、特許文献1,2を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/195740号公報
【文献】特開2017-173557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された遮光部を用いる構造では、照射光の光路を確保するための空間から外光が画像照射部まで到達することは避けられず、外光の入射を制限するには限界があった。また、特許文献2に記載された赤外光カットフィルターを用いる構造では、照射光が赤外光カットフィルターを透過する際に収差が生じてしまい、投影される画像の品質が低下するという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、投影される画像の品質を維持しながら、外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、画像を含んだ照射光を照射する画像照射部と、前記画像照射部から入射した前記照射光を反射する第1自由曲面ミラーと、前記第1自由曲面ミラーから入射した前記照射光を反射する中間ミラーと、前記中間ミラーから入射した前記照射光を反射して視点に到達させる第2自由曲面ミラーを備え、前記第1自由曲面ミラーで反射された前記照射光は、前記第2自由曲面ミラーに到達する前の中間結像位置において、少なくとも一つの結像軸方向の成分が結像され、前記中間ミラーは、前記中間結像位置に配置されており、前記中間ミラーは、誘電体多層膜で構成されたコールドミラーであり、可視光を反射して赤外光および/または紫外光を透過することを特徴とする。
また上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、画像を含んだ照射光を照射する画像照射部と、前記画像照射部から入射した前記照射光を反射する第1自由曲面ミラーと、前記第1自由曲面ミラーから入射した前記照射光を反射する中間ミラーと、前記中間ミラーから入射した前記照射光を反射して視点に到達させる第2自由曲面ミラーを備え、前記第1自由曲面ミラーで反射された前記照射光は、前記第2自由曲面ミラーに到達する前の中間結像位置において、少なくとも一つの結像軸方向の成分が結像され、前記中間ミラーは、前記中間結像位置に配置されており、前記第2自由曲面ミラーにおける前記照射光の反射方向から、前記第2自由曲面ミラーに入射する外光が、前記第2自由曲面ミラーで反射された後に、前記中間ミラーよりも遠い位置に集光されることを特徴とする。
また上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、画像を含んだ照射光を照射する画像照射部と、前記画像照射部から入射した前記照射光を反射する第1自由曲面ミラーと、前記第1自由曲面ミラーから入射した前記照射光を反射する中間ミラーと、前記中間ミラーから入射した前記照射光を反射して視点に到達させる第2自由曲面ミラーを備え、前記第1自由曲面ミラーで反射された前記照射光は、前記第2自由曲面ミラーに到達する前の中間結像位置において、少なくとも一つの結像軸方向の成分が結像され、前記中間ミラーは、前記中間結像位置に配置されており、前記画像照射部から前記第2自由曲面ミラーまでの前記照射光の光路に、前記照射光の偏光方向を透過する偏光フィルタが設けられ、前記偏光フィルタは、前記中間ミラーと一体に形成されていることを特徴とする。
【0010】
このような本発明の画像投影装置では、第1自由曲面ミラーの中間結像位置に中間ミラーを配置することで、画像照射部まで到達する外光は、第2自由曲面ミラー、中間ミラーおよび第1自由曲面ミラーで反射された外光だけに制限される。これにより、画像照射部10まで到達する外光を低減し、投影される画像の品質を維持しながら、外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記中間ミラーは、前記結像軸方向に対応する長さが、前記画像照射部の有効照射領域における前記結像軸方向に対応する長さよりも小さい。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記中間ミラーは、略平坦な反射面を有する平面ミラーである。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記画像照射部から前記第2自由曲面ミラーまでの前記照射光の基準光線は、同一の進行平面を構成し、前記結像軸方向は、前記進行平面に含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、投影される画像の品質を維持しながら、外光による画像照射部の温度上昇を効果的に抑制することが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る画像投影装置の構成を示す模式図であり、
図1(a)は模式上面図であり、
図1(b)は模式側面図である。
【
図2】第1実施形態の画像投影装置における光学部材の配置と基準光線について示す模式図である。
【
図3】自由曲面ミラー20における基準光線とローカル座標について示す模式図である。
【
図4】中間ミラー30での光の反射を示す模式図であり、
図4(a)は照射光の経路を示し、
図4(b)は外光の経路を示している。
【
図5】中間ミラー30の形状と照射光および外光の照射範囲を模式的に示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る画像投影装置における中間ミラー30の形状と照射光および外光の照射範囲を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影装置の構成を示す模式図であり、
図1(a)は模式上面図であり、
図1(b)は模式側面図である。
図1に示すように画像投影装置は、画像照射部10と、自由曲面ミラー20,40と、中間ミラー30と、ウィンドシールド50を備えており、視点60位置からウィンドシールド50を介して虚像70を視認させるものである。
【0021】
画像照射部10は、情報処理部(図示省略)から画像情報を含んだ信号が供給されることで画像情報を含んだ照射光を照射する装置である。画像照射部10から照射された照射光は自由曲面ミラー20に入射する。画像照射部10としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED表示装置、レーザ光源を用いたプロジェクター装置等が挙げられる。
【0022】
自由曲面ミラー20は、画像照射部10から照射された照射光が入射し、中間ミラー30方向に反射する凹面鏡であり、本発明における第1自由曲面ミラーに相当している。自由曲面ミラー20の反射面は、後述するように面内におけるx軸成分またはy軸成分の少なくとも一方が中間ミラー30の位置でほぼ中間結像するように設定されている。
【0023】
中間ミラー30は、自由曲面ミラー20で反射された照射光が入射し、自由曲面ミラー40方向に反射する反射鏡である。中間ミラー30は、凹面鏡、凸面鏡、平面鏡の何れでもよいが、凹面鏡や凸面鏡を用いる場合には光学設計と収差補正が複雑になりコストも増加するため、略平坦な反射面を有する平面鏡とすることが好ましい。中間ミラーは、自由曲面ミラー20で反射された照射光を全て反射できる程度の大きさと形状を有している。
【0024】
また、中間ミラー30を誘電体多層膜で構成し、可視光を反射して赤外光および/または紫外光を透過するコールドミラーとすることが好ましい。中間ミラー30をコールドミラーで構成することにより、虚像70を投影するための可視光で構成された照射光を良好に反射して結像することができる。また、コールドミラーの中間ミラーでは、外光に含まれる赤外光および/または紫外光は反射されず透過するため、後述するように赤外光および/または紫外光が自由曲面ミラー20を介して画像照射部10まで到達せず、画像照射部10の温度上昇を抑制することができる。
【0025】
自由曲面ミラー40は、中間ミラー30で反射された照射光が入射し、ウィンドシールド50方向に反射する凹面鏡であり、本発明における第2自由曲面ミラーに相当している。自由曲面ミラー40の反射面は、面内におけるx軸成分とy軸成分において焦点距離が異なっていてもよく、自由曲面ミラー40で反射された後に照射光のx軸成分とy軸成分が同じ位置で結像するように設定されている。
【0026】
ウィンドシールド50は、車両の運転席前方に設けられており、車両の内側面では自由曲面ミラー40から入射した照射光を視点60の方向に対して反射し、車両の外部からの光を視点60の方向に対して透過する透過反射部としての機能を有している。ここでは透過反射部としてウィンドシールド50を用いた例を示したが、ウィンドシールド50とは別に透過反射部としてコンバイナーを用意し、自由曲面ミラー40からの光を視点60方向に反射するとしてもよい。また、車両の前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点60に対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。
【0027】
視点60は、車両の運転者または搭乗者の目(アイボックス)であり、照射光がアイボックスに入射して網膜に光が到達することで、運転者または搭乗者は結像された虚像70を視認する。
【0028】
虚像70は、ウィンドシールド50で反射された照射光が運転者等の視点(アイボックス)60に到達した際に、空間中に結像されたように表示される。虚像70が結像される位置は、画像照射部10から照射された光が、自由曲面ミラー20、中間ミラー30および自由曲面ミラー40で反射された後に視点60方向に進行する際の拡がり角度によって決まる。
図1(a)(b)に示したように、自由曲面ミラー40で反射された照射光は、ウィンドシールド50で反射された後に光束が拡大しながら視点60に到達する。
【0029】
このとき、視点60の運転者または搭乗者は、ウィンドシールド50よりも遠方の結像位置に虚像70が存在するように認識する。ここで、虚像70の結像位置は、主として自由曲面ミラー20、中間ミラー30および自由曲面ミラー40の合成焦点距離に依存する。ウィンドシールド50が平坦面ではなく曲面形状であったとしても、曲率半径が自由曲面ミラー20および自由曲面ミラー40と比較して大きいため、ウィンドシールド50による光学的パワーの影響は無視できる程度である。
【0030】
図2は、本実施形態の画像投影装置における光学部材の配置と基準光線について示す模式図である。
図2に示したように、画像照射部10から照射された照射光は、自由曲面ミラー20、中間ミラー30、自由曲面ミラー40およびウィンドシールド50で反射されて視点60に到達する。このとき、虚像70を視認する方向から視点60に到達する光の軌跡を基準光線とし、
図2中に破線で示している。換言すると、この基準光線は画像照射部10において、光が出射する有効領域の中央から照射された光が視点60まで到達する際の軌跡とほぼ同じと見做せる。実際の照射光は、画像照射部10から所定の面積で照射され、表示面の各位置から光束が拡がる光であり、自由曲面ミラー20および自由曲面ミラー40の反射面による正のパワーで集光される。よって、
図2に示した基準光線は、画像照射部10の全領域での照射光が進行する経路を示しているものではない。また、基準光線に沿った自由曲面ミラー20から中間ミラー30の距離をDとする。
【0031】
図3は、自由曲面ミラー20における基準光線とローカル座標について示す模式図である。
図3に示した破線は、
図2において破線で示した照射光の基準光線である。また、基準光線のうち自由曲面ミラー20に照射光が入射する方向を入射光線とし、反射する方向を反射光線としている。
【0032】
図3に示すように、自由曲面ミラー20における基準光線の反射方向をz軸と定義する。また、自由曲面ミラー20における基準光線の入射方向およびz軸を含む面内において、z軸と垂直な方向をy軸と定義する。また、y軸およびz軸に垂直な方向をx軸と定義する。
【0033】
自由曲面ミラー20は、x軸方向とy軸方向でそれぞれの曲率を有する曲面を構成しており、反射された照射光はx軸成分とy軸成分でそれぞれの焦点距離に集光される。本実施形態では、x軸成分またはy軸成分の少なくとも一方が、自由曲面ミラー20から基準光線に沿って距離Dだけ離れた中間結像位置において中間結像される。ここで、仮に画像照射部10から自由曲面ミラー20に対して平行光が入射した場合に、自由曲面ミラー20による正のパワーを受けた光が焦点を結ぶ位置までの距離を焦点距離f1とすると、x軸成分における焦点距離はfx1であり、y軸成分における焦点距離はfy1である。よって、自由曲面ミラー20から基準光線に沿って距離Dだけ離れた中間結像位置は、自由曲面ミラー20の焦点距離fx1またはfx2と略同程度とされている。
【0034】
ここで、x軸成分またはy軸成分のうち、中間結像位置で結像される成分の軸方向を結像軸方向とする。つまり、照射光のx軸成分が焦点距離fx1の中間結像位置で結像される場合にはx軸方向が結像軸方向であり、y軸成分が焦点距離fy1の中間結像位置で結像される場合にはy軸方向が結像軸方向である。中間結像位置において結像される結像軸方向は、少なくとも一つの結像軸方向であればよいが、x軸方向およびy軸方向の両方が同じ中間結像位置で結像されるとしてもよい。
【0035】
しかし、x軸方向およびy軸方向の両方を中間結像位置で結像させた場合には、x軸成分およびy軸成分の両者で収差が大きくなり、自由曲面ミラー40で収差を補正するための難易度が高くなってしまう。また、x軸成分およびy軸成分の両者を中間結像させるためには、自由曲面ミラー20のx軸方向およびy軸方向での曲率半径を小さくする必要があるため、自由曲面ミラー40と自由曲面ミラー20の距離が長くなり、画像投影装置の小型化が困難になる。
【0036】
それに対して、照射光のx軸成分またはy軸成分のどちらか一方のみを中間結像位置で結像させる構成とすることにより、自由曲面ミラー20の正のパワーで生じる収差についても、x軸成分またはy軸成分のどちらか一方のみが大きくなり、自由曲面ミラー40で収差を補正するための光学的設計が簡便になる。また、自由曲面ミラー20のx軸方向またはy軸方向では曲率半径を大きくすることができるため、自由曲面ミラー20での厚さ方向の変位を小さくして、画像投影装置の小型化を図ることができる。
【0037】
同様に、自由曲面ミラー40も、x軸方向とy軸方向で異なる曲率を有する曲面を有しており、反射された照射光はx軸成分とy軸成分で異なる焦点距離を有している。ここで、自由曲面ミラー40に対して平行光が入射した場合に、自由曲面ミラー40による正のパワーを受けた光が焦点を結ぶ位置までの距離を焦点距離f2とすると、x軸成分における焦点距離はfx2であり、y軸成分における焦点距離はfy2である。
【0038】
上述したように自由曲面ミラー20での焦点距離fx1と焦点距離fy1は、少なくとも一方が自由曲面ミラー20と自由曲面ミラー40の間における中間結像位置に中間結像するように設定されている。自由曲面ミラー40での焦点距離fx2と焦点距離fy2は、自由曲面ミラー40で反射された後の照射光がx軸成分とy軸成分で同じ位置に結像されるように設定されている。これにより、視点60で視認する虚像70は、x軸成分とy軸成分で同じ位置に結像されたものとなり、虚像70を結像位置に存在する画像として適切に認識することができる。また、自由曲面ミラー40の曲面形状を適切に設定することで、自由曲面ミラー20で反射された照射光に生じた収差を補正することもできる。
【0039】
図4は、中間ミラー30での光の反射を示す模式図であり、
図4(a)は照射光の経路を示し、
図4(b)は外光の経路を示している。
図4(a)(b)において、紙面は
図3に示したy軸方向とz軸方向を含んだyz平面であり、紙面に垂直な方向がx軸方向とされている。
図4に示した例では、照射光の基準光線はyz平面内でのみの経路となり、x軸方向での変位は無く、中間結像する照射光の成分はy軸成分とされている。つまり、画像照射部10から自由曲面ミラー40までの照射光の基準光線は、同一の進行平面を構成し、結像軸方向は進行平面に含まれている。これにより、自由曲面ミラー20でのx軸成分の収差を小さくすることができる。また、自由曲面ミラー40からウィンドシールド50までの基準光線もyz平面内でのみの経路であり、yz平面に含まれているy軸成分の変位を考慮するだけでよいため収差補正が容易となる。
【0040】
図4(a)に示すように、画像照射部10から照射された照射光は、自由曲面ミラー20によって反射されて図中に丸印で示した中間結像位置においてy軸成分が結像される。中間ミラー30は中間結像位置に配置されており、照射光を自由曲面ミラー40方向に反射する。このとき、中間結像位置では照射光のy軸成分は集光して結像されているため、中間ミラー30の結像軸方向(y軸方向)に対応する長さを、画像照射部10の有効照射領域における結像軸方向に対応する長さよりも小さくすることができる。
【0041】
また
図4(b)に示すように、画像投影装置の外部から入射した外光は、自由曲面ミラー40によって反射されて中間ミラー30に到達する。ここで中間ミラー30は、自由曲面ミラー40に入射した外光が集光される位置よりも、自由曲面ミラー40に近い位置に配置されている。つまり、自由曲面ミラー40における照射光の反射方向から、自由曲面ミラー40に入射した外光が、自由曲面ミラー40で反射された後に中間ミラー30よりも遠い位置に集光される。中間ミラー30に到達した外光は、中間ミラー30で自由曲面ミラー20方向に反射されて、図中に丸印で示した外光の集光位置に集光された後、自由曲面ミラー20に到達する。自由曲面ミラー20では、画像照射部10方向に外光が反射される。
【0042】
このとき、中間ミラー30が自由曲面ミラー40の集光位置よりも自由曲面ミラー40に近い位置に配置されていることにより、自由曲面ミラー40で中間ミラー30方向に反射された外光は、中間ミラー30よりも広い範囲に照射される。したがって、自由曲面ミラー40で反射された外光のうち、中間ミラー30で自由曲面ミラー20方向に反射される外光の割合は、中間ミラー30の面積が小さいほど低下する。
【0043】
また、中間ミラー30は自由曲面ミラー20での中間結像位置に配置されており、中間ミラー30で反射された外光は中間ミラー30と自由曲面ミラー20の間に集光される。これにより、自由曲面ミラー20で画像照射部10方向に反射された外光は、画像照射部10よりも広い範囲に照射される。したがって、自由曲面ミラー20で反射された外光のうち画像照射部10に入射する外光の割合は低下する。また、画像照射部10に到達する外光の密度も低下するため、画像照射部10の表面に外光が集光されて局所的に温度上昇して表示面が劣化する可能性を低減することができる。
【0044】
図5は、中間ミラー30の形状と照射光および外光の照射範囲を模式的に示す図である。図中における実線で示した領域は、中間ミラー30の反射面を示している。また、図中における黒塗りの領域は、自由曲面ミラー20で反射されて中間ミラー30に到達する照射光が照射される領域を示している。また、図中における破線は、自由曲面ミラー40で反射されて中間ミラー30に到達する外光が照射される領域を示している。また、図中の縦方向はy軸方向を示し、横方向はx軸方向を示している。
【0045】
図5に示したように、中間ミラー30に到達した照射光は、y軸成分が中間結像されているためy軸方向における照射領域が狭くなっている。中間ミラー30は照射光の全域を反射面に含める必要があるが、上述したように中間ミラー30の面積が小さいほど画像照射部10に到達する外光を低減することができる。したがって、中間ミラー30のy軸方向の長さを小さくして、破線で示された外光の照射領域に占める割合を低減することが好ましい。
【0046】
上述したように、本実施形態の画像投影装置では、自由曲面ミラー20の中間結像位置に中間ミラー30を配置することで、画像照射部10まで到達する外光は自由曲面ミラー40、中間ミラー30および自由曲面ミラー20で反射された外光だけに制限される。これにより、画像照射部10まで到達する外光を低減し、投影される画像の品質を維持しながら、外光による画像照射部10の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。また、中間ミラー30は、自由曲面ミラー40における外光の集光位置よりも自由曲面ミラー40に近い位置に配置されているため、自由曲面ミラー40で反射された外光が中間ミラー30で反射される割合を低下させ、自由曲面ミラー20で反射された外光が画像照射部10まで到達する割合を低下させ、全体として画像照射部10まで到達する外光をさらに低減して温度上昇を抑制することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図6を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。本実施形態では、中間ミラー30の形状を最適化して面積を可能な限り小さくして、画像照射部10まで到達する外光を低減する点が第1実施形態と異なっている。
【0048】
図6は、本実施形態に係る画像投影装置における中間ミラー30の形状と照射光および外光の照射範囲を模式的に示す図である。図中における実線で示した領域は、中間ミラー30の反射面を示している。また、図中における黒塗りの領域は、自由曲面ミラー20で反射されて中間ミラー30に到達する照射光が照射される領域を示している。また、図中における破線は、自由曲面ミラー40で反射されて中間ミラー30に到達する外光が照射される領域を示している。また、図中の縦方向はy軸方向を示し、横方向はx軸方向を示している。
【0049】
図6に示したように、中間ミラー30は照射光の照射される領域に沿った外形を有しており、反射面の面積を可能な限り小さくしている。中間ミラー30の反射面において、照射光が照射される領域が占める面積比は80%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましい。
【0050】
本実施形態の画像投影装置では、中間ミラー30の形状を最適化して、中間ミラー30の反射面積を照射光の照射される領域に限定することで、画像照射部10まで到達する外光をさらに低減し温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0051】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。画像照射部10が液晶表示装置や半導体レーザを用いている場合、照射光は所定方向の偏光とされる場合がある。そこで本実施形態では、画像照射部10から自由曲面ミラー40までの照射光の光路中に、画像照射部10からの照射光における偏光と同じ偏光方向のみを透過する偏光フィルタ(図示省略)を設ける。
【0052】
偏光フィルタを光路中に配置し、照射光の偏光方向と偏光フィルタの偏光方向を一致させることで、画像投影装置に到達した外光のうち偏光フィルタの偏光方向とは異なる偏光をカットして、画像照射部10まで到達する外光による温度上昇を抑制することができる。
【0053】
偏光フィルタを設ける位置は限定されず、画像照射部10と自由曲面ミラー20の間、自由曲面ミラー20と中間ミラー30の間、中間ミラー30と自由曲面ミラー40の間のいずれでもよく、画像照射部10からの偏光が維持されている位置が好ましい。また、偏光フィルタを画像照射部10の光出射面、自由曲面ミラー20の反射面、中間ミラー30の反射面、自由曲面ミラー40の反射面に一体に形成するとしてもよい。
【0054】
特に、中間ミラー30の反射面上に偏光フィルタを形成し、照射光の偏光方向と偏光フィルタが透過する偏光方向を一致させて、照射光と異なる偏光方向の光をカットする構成とすることが好ましい。中間ミラー30と偏光フィルタを一体に構成することで、中間ミラー30まで到達した外光のうち偏光フィルタの偏光方向とは異なる偏光をカットして、画像照射部10まで到達する外光による温度上昇を抑制することができる。
【0055】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10…画像照射部
20,40…自由曲面ミラー
30…中間ミラー
50…ウィンドシールド
60…視点
70…虚像