(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】排気システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20241210BHJP
F01N 3/00 20060101ALI20241210BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20241210BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F01N3/08 A
F01N3/08 C
F01N3/00 F
B01D53/92 280
B01J20/18 B
B01D53/92 300
(21)【出願番号】P 2021060728
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】島村 遼一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一哉
(72)【発明者】
【氏名】間所 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松田 千尋
(72)【発明者】
【氏名】松山 翔
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】玉木 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】大野原 佑
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】成田 慶一
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-132483(JP,A)
【文献】特開2002-295247(JP,A)
【文献】特表2003-531721(JP,A)
【文献】特開2020-84940(JP,A)
【文献】特開2005-90400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
B01D 53/92
B01J 20/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される排ガスを排気するための排気管と、
前記排気管の途中に介在され、前記排ガスに含まれる炭化水素(HC)を吸着し、分解させるプラズマリアクターと、
前記排気管の前記プラズマリアクターの上流側に介在され、炭化水素(HC)を吸着および放出するHC貯留装置と
、
前記排ガスの流量を調節するバルブと
を備え、
前記排気管は、
前記エンジンから排出される排ガスを排気するメイン管と、
前記エンジンと前記プラズマリアクターとの間において、前記メイン管から分岐し、メイン管をバイパスするバイパス管と
を備え、
前記プラズマリアクターは、炭化水素(HC)を吸着する第1ゼオライトを備え、
前記HC貯留装置は、
前記バイパス管に介在され、炭化水素(HC)を吸着する第2ゼオライトを備え、
前記バルブは、前記排気管において、前記バイパス管を流れる排ガスの流量を調節可能に配置され、
前記第1ゼオライトまたは前記第2ゼオライトのいずれか一方が、金属を含有する、排気システム。
【請求項2】
エンジンから排出される排ガスを排気するための排気管と、
前記排気管の途中に介在され、前記排ガスに含まれる炭化水素(HC)を吸着し、分解させるプラズマリアクターと、
前記排気管の前記プラズマリアクターの上流側に介在され、炭化水素(HC)を吸着および放出するHC貯留装置と
、
前記排ガスの流量を調節するバルブと
を備え、
前記排気管は、
前記エンジンから排出される排ガスを排気するメイン管と、
前記エンジンと前記プラズマリアクターとの間において、前記メイン管から分岐し、メイン管をバイパスするバイパス管と
を備え、
前記プラズマリアクターは、炭化水素(HC)を吸着する第1ゼオライトを備え、
前記HC貯留装置は、
前記バイパス管に介在され、炭化水素(HC)を吸着する第2ゼオライトを備え、
前記バルブは、前記排気管において、前記バイパス管を流れる排ガスの流量を調節可能に配置され、
前記第1ゼオライトまたは前記第2ゼオライトのいずれか一方が、第1金属を含有し、
前記第1ゼオライトまたは前記第2ゼオライトの前記一方に対する他方が、前記第1金属とは組成の異なる第2金属を含有する、排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガスに含まれる炭化水素(HC)を分解する装置として、プラズマリアクターが知られている。プラズマリアクターでは、複数の電極パネルに電圧を印加することにより、電極パネル間にプラズマを生じさせ、炭化水素(HC)をプラズマ分解できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、プラズマリアクターの分解性能には限界がある。そのため、分解性能の限界を超える量の炭化水素(HC)がプラズマリアクターに供給されると、炭化水素(HC)の一部が分解されずに大気に放出される場合がある。そのため、プラズマリアクターには、排ガス浄化性能の向上が要求されている。
【0005】
本発明は、優れた排ガス浄化性能を有する排気システムである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、エンジンから排出される排ガスを排気するための排気管と、前記排気管の途中に介在され、前記排ガスに含まれる炭化水素(HC)を吸着し、分解させるプラズマリアクターと、前記排気管の前記プラズマリアクターの上流側に介在され、炭化水素(HC)を吸着および放出するHC貯留装置とを備え、前記プラズマリアクターは、炭化水素(HC)を吸着する第1ゼオライトを備え、前記HC貯留装置は、炭化水素(HC)を吸着する第2ゼオライトを備え、前記第1ゼオライトまたは前記第2ゼオライトのいずれか一方が、金属を含有する、排気システムを、含んでいる。
【0007】
本発明[2]は、エンジンから排出される排ガスを排気するための排気管と、前記排気管の途中に介在され、前記排ガスに含まれる炭化水素(HC)を吸着し、分解させるプラズマリアクターと、前記排気管の前記プラズマリアクターの上流側に介在され、炭化水素(HC)を吸着および放出するHC貯留装置とを備え、前記プラズマリアクターは、炭化水素(HC)を吸着する第1ゼオライトを備え、前記HC貯留装置は、炭化水素(HC)を吸着する第2ゼオライトを備え、前記第1ゼオライトまたは前記第2ゼオライトのいずれか一方が、第1金属を含有し、前記第1ゼオライトまたは前記第2ゼオライトの前記一方に対する他方が、前記第1金属とは組成の異なる第2金属を含有する、排気システムを、含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明[1]の排気システムでは、プラズマリアクターおよびHC貯留装置のいずれか一方のみが、金属を含有するゼオライトを備え、他方は、金属を含有しないゼオライトを備える。そのため、排気管を通過する炭化水素(HC)のうち、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)および比較的炭素数の多い炭化水素(HC)のいずれか一方が、より上流側に配置されるHC貯留装置の第2ゼオライトに吸着される。また、他方が、より下流側に配置されるプラズマリアクターの第1ゼオライトに吸着される。つまり、エンジン始動時には、排気管を通過する炭化水素(HC)の一部はHC貯留装置で吸着され、残部のみがプラズマリアクターで分解される。また、エンジンの継続的な駆動により排ガス温度が上昇すると、HC貯留装置で吸着された炭化水素(HC)が放出され、プラズマリアクターで分解される。つまり、プラズマリアクターには、炭化水素(HC)が分割して供給される。そのため、上記の構成によれば、プラズマリアクターの分解性能の限界を超える量の炭化水素(HC)が、プラズマリアクターに供給されることを抑制でき、効率よく炭化水素(HC)をプラズマリアクターで分解できる。そのため、上記の排気システムは、排ガス浄化性能に優れる。
【0009】
また、本発明[2]の排気システムでは、プラズマリアクターおよびHC貯留装置のいずれか一方が、第1金属を含有するゼオライトを備え、他方は、第1金属とは組成の異なる第2金属を含有するゼオライトを備える。そのため、排気管を通過する炭化水素(HC)のうち、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)および比較的炭素数の多い炭化水素(HC)のいずれか一方が、より上流側に配置されるHC貯留装置の第2ゼオライトに吸着される。また、他方が、より下流側に配置されるプラズマリアクターの第1ゼオライトに吸着される。つまり、エンジン始動時には、排気管を通過する炭化水素(HC)の一部はHC貯留装置で吸着され、残部のみがプラズマリアクターで分解される。また、エンジンの継続的な駆動により排ガス温度が上昇すると、HC貯留装置で吸着された炭化水素(HC)が放出され、プラズマリアクターで分解される。つまり、プラズマリアクターには、炭化水素(HC)が分割して供給される。そのため、上記の構成によれば、プラズマリアクターの分解性能の限界を超える量の炭化水素(HC)が、プラズマリアクターに供給されることを抑制でき、効率よく炭化水素(HC)をプラズマリアクターで分解できる。そのため、上記の排気システムは、排ガス浄化性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の排気システムの一実施形態の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の排気システムの他の実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.排気システムの構成
図1に示すように、排気システム1は、例えば、車両100に搭載される。
【0012】
車両100は、エンジン101と、バッテリー102を含む電気システムと、エンジン101に吸気するための図示しない吸気システムと、エンジン101に燃料を供給するための図示しない燃料噴射システムと、エンジン101から排気するための排気システム1とを備える。
【0013】
排気システム1は、排気管2と、プラズマリアクター3と、HC貯留装置4と、バルブ5と、制御部6とを備える。
【0014】
(1)排気管
排気管2は、メイン管21と、メイン管21をバイパスするバイパス管22とを備えている。
【0015】
メイン管21は、エンジン101から排出される排ガスを排気するための配管である。メイン管21は、エンジン101に接続される。メイン管21を通過した排ガスは、車外に排出される。メイン管21には、後述するプラズマリアクター3が介在される。
【0016】
バイパス管22は、プラズマリアクター3(後述)の上流側において、メイン管21をバイパスする配管である。バイパス管22は、エンジン101とプラズマリアクター3との間においてメイン管21から分岐し、さらに、エンジン101とプラズマリアクター3との間においてメイン管21に合流する。
【0017】
詳しくは、バイパス管22は、排ガスが通過する方向において、上流端2Aと、下流端2Bとを有する。上流端2Aおよび下流端2Bは、いずれも、プラズマリアクター3(後述)の上流側において、メイン管21に接続されている。これにより、バイパス管22は、プラズマリアクター3(後述)の上流側において、排ガスをメイン管21から分岐して通過させ、メイン管21に合流させる。バイパス管22には、後述するHC貯留装置4が介在される。
【0018】
(2)プラズマリアクター
プラズマリアクター3は、排ガスに含まれる炭化水素(HC)を分解する装置である。また、プラズマリアクター3は、排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を分解することもできる。プラズマリアクター3は、排気管2の途中に介在される。より具体的には、プラズマリアクター3は、バイパス管22の下流側において、メイン管21に介在される。
【0019】
プラズマリアクター3は、入口3Aと、出口3Bとを有する。エンジン101から排出された排ガスは、排気管2を通って、入口3Aから、プラズマリアクター3の内部に導入される。プラズマリアクター3の内部を通過した排ガスは、出口3Bから排出され、車外に排出される。
【0020】
プラズマリアクター3は、複数の電極7を有する。複数の電極7は、プラズマリアクター3の内部に設けられる。各電極7は、入口3Aから出口3Bに向かって延びる。各電極7は、導体(例えば、タングステンなどの金属)と、導体を覆う誘電体(例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックス)とから構成される。各電極7は、平板形状を有する。複数の電極7は、入口3Aから出口3Bに向かう方向と直交する方向において、互いに間隔を隔てて並ぶ。プラズマリアクター3は、電源配線8を介して、バッテリー102に電気的に接続される。
【0021】
バッテリー102から電源配線8を介してプラズマリアクター3に電力が供給されると、各電極7の間で放電が生じる。これにより、各電極7の間の気体が、プラズマ状態となる。すなわち、プラズマリアクター3内にプラズマが発生する。
【0022】
その結果、プラズマリアクター3に導入された排ガスに含まれる炭化水素(HC)は、プラズマリアクター3内のプラズマにより、分解される。プラズマリアクター3を通過した排ガスは、排気管2を介して車外に排出される。
【0023】
また、プラズマリアクター3は、第1ゼオライトを備えており、排ガスに含まれる炭化水素(HC)を、吸着可能としている。
【0024】
第1ゼオライトは、炭化水素(HC)を吸着する吸着材である。第1ゼオライトは、公知のゼオライトを含む。ゼオライトとしては、例えば、天然ゼオライトおよび合成ゼオライトが挙げられる。天然ゼオライトとしては、例えば、方沸石、リョウ沸石、毛沸石、ソーダ沸石、モルデン沸石、輝沸石、束沸石および濁沸石が挙げられる。合成ゼオライトとしては、例えば、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、X型ゼオライト、L型ゼオライト、エリオナイト、モルデナイト、βゼオライトおよびZSM-5型ゼオライトが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用できる。また、ゼオライトは、詳しくは後述するが、金属を含有できる。金属としては、例えば、遷移金属(貴金属を除く。)が挙げられる。金属として、より具体的には、例えば、銀、鉄、マンガンおよび銅が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。金属として、好ましくは、銀が挙げられる。金属は、例えば、公知の方法でゼオライトに担持または組成として含有される。
【0025】
第1ゼオライトは、例えば、各電極7の表面をコーティングし、ゼオライト層を形成する。これにより、プラズマリアクター3に導入された排ガスに含まれる炭化水素(HC)は、電極7の表面において、第1ゼオライトに吸着され、プラズマにより分解される。
【0026】
また、プラズマリアクター3において、電源配線8の途中には、例えば、図示しないスイッチが介在される。スイッチは、図示しない信号配線を介して、制御部6に電気的に接続される。制御部6は、バッテリー102からプラズマリアクター3への電力供給を、制御する。詳しくは、制御部6は、スイッチをオンすることにより、バッテリー102からプラズマリアクター3に電力を供給する。また、制御部6は、スイッチをオフすることにより、バッテリー102からプラズマリアクター3への電力供給を停止する。
【0027】
(3)HC貯留装置
HC貯留装置4は、排ガスに含まれる炭化水素(HC)を、一時的に貯留するための装置である。HC貯留装置4は、炭化水素(HC)を吸着する第2ゼオライトを備えている。より具体的には、HC貯留装置4は、例えば、第2ゼオライトと、第2ゼオライトがコートされた担体を備えている。
【0028】
第2ゼオライトは、炭化水素(HC)を吸着する吸着材である。第2ゼオライトは、公知のゼオライトを含む。ゼオライトとしては、例えば、上記した天然ゼオライトおよび上記した合成ゼオライトが挙げられる。また、ゼオライトは、上記の金属を含有できる。金属は、例えば、公知の方法でゼオライトに担持または組成として含有される。
【0029】
担体としては、特に制限されないが、例えば、コージェライトからなるモノリス担体が挙げられる。モノリス担体は、例えば、ハニカム形状を有する。そして、第2ゼオライトは、例えば、スラリーとして調製され、担体に塗布および乾燥される。これにより、第2ゼオライトおよび担体を備えるHC貯留装置4が得られる。
【0030】
HC貯留装置4は、バイパス管22に介在される。HC貯留装置4は、入口4Aと、出口4Bとを有する。エンジン101から排出された排ガスは、バイパス管22を通って、入口4Aから、HC貯留装置4の内部に導入される。また、HC貯留装置4の内部を通過した排ガスは、出口4Bから排出され、メイン管21に合流する。このとき、排ガスに含まれる炭化水素(HC)の一部が、HC貯留装置4内において、第2ゼオライトに吸着される。
【0031】
(4)バルブ
バルブ5は、排気管2において、メイン管21を流れる排ガスの流量と、バイパス管22を流れる排ガスの流量とを調節する部材である。より具体的には、バルブ5は、メイン管21と、バイパス管22の下流端2Bとの接続部分に介在される。バルブ5としては、例えば、三方弁が挙げられる。
【0032】
バルブ5は、バイパス管22の開度を0%とし、メイン管の開度を100%とするメイン位置(以下、A位置)と、バイパス管22の開度を100%とし、メイン管の開度を0%とするバイパス位置(以下、B位置)との間を移動可能であり、上記開度を任意の値に調整可能である。すなわち、バルブ5は、好ましくは、A位置とB位置との間で開度を調節できる流量調整弁である。なお、バルブ5は、開度を調節できない開閉弁であってもよい。
【0033】
バルブ5をA位置からB位置へ向かって移動させると、バイパス管22およびHC貯留装置4へ流れる排ガスの流量が増加する。また、バルブ5をB位置からA位置へ向かって移動させると、バイパス管22およびHC貯留装置4へ流れる排ガスの流量が減少する。
【0034】
なお、バルブ5の配置は、上記に制限されず、メイン管21からバイパス管22へ分岐する排ガスの流量を調節できればよい。例えば、バルブ5は、バイパス管22において、HC貯留装置4の上流側に介在されていてもよい。また、バルブ5は、メイン管21とバイパス管22との接続部分ではなく、メイン管21に介在されていてもよく、また、バイパス管22に介在されていてもよい。
【0035】
(5)制御部
制御部6は、車両100における電気的な制御を実行するECU(Electronic Control Unit)であり、CPU、ROMおよびRAMなどを備える。制御部6は、電源配線10を介して、バッテリー102に接続される。制御部6は、車両100のイグニションスイッチがオンされたときに、バッテリー102から電源配線10を介して電力が供給されることにより、起動する。
【0036】
制御部6は、信号配線9を介して、バルブ5に電気的に接続される。制御部6は、信号配線9を介してバルブ5に電気信号を送ることにより、バルブ5の開度を制御する。
【0037】
また、制御部6は、図示しないアクセルペダルと電気的に接続され、エンジン101の始動および停止に応じた電気信号を受信可能である。
【0038】
(6)触媒ユニット
排気システム1は、さらに、触媒ユニット12を備えている。触媒ユニット12は、排気管2において、バイパス管22の上流端2Aよりも上流側に、介在されている。すなわち、エンジン101から排出された排ガスは、まず、触媒ユニット12を通過し、次いで、メイン管21またはバイパス管22を通過して、プラズマリアクター3に導入され、その後、車外に排出される。
【0039】
触媒ユニット12は、公知の排ガス浄化触媒を備えている。より具体的には、触媒ユニット12は、例えば、排ガス浄化触媒と、排ガス浄化触媒を担持する触媒担体とを備えている。
【0040】
排ガス浄化触媒としては、公知の三元触媒が挙げられる。三元触媒は、例えば、貴金属を含む酸化物である。貴金属としては、例えば、白金、パラジウムおよびロジウムが挙げられる。排ガス浄化触媒は、通常、加熱されることによって、排ガスに含まれる炭化水素(HC)を酸化させ、無害化することができる。
【0041】
触媒担体としては、特に制限されないが、例えば、コージェライトからなるモノリス担体が挙げられる。モノリス担体は、例えば、ハニカム形状を有する。そして、排ガス浄化触媒は、例えば、スラリーとして調製され、触媒担体に塗布および乾燥される。これにより、排ガス浄化触媒を担持する触媒担体が得られる。
【0042】
2.ゼオライト
上記の通り、プラズマリアクター3およびHC貯留装置4は、ゼオライトを備えている。ゼオライトは、炭化水素(HC)を吸着および放出可能とする化合物である。より具体的には、ゼオライトは、比較的低温時(例えば、300℃未満)では、炭化水素(HC)を吸着する。また、ゼオライトは、比較的高温時(例えば、300℃以上)では、炭化水素(HC)を放出する。
【0043】
また、ゼオライトが吸収および放出可能な炭化水素(HC)の炭素数は、ゼオライトの種類に応じて異なる。
【0044】
より具体的には、金属を含有するゼオライトは、金属の影響により炭化水素(HC)を化学吸着する。そのため、金属を含有するゼオライトは、比較的炭素数の少ない(例えば、炭素数5未満)の炭化水素(HC)を吸着および放出し易く、比較的炭素数の多い(例えば、炭素数5以上)の炭化水素(HC)を吸着および放出し難い性質を有する。
【0045】
また、金属を含有しないゼオライトは、ゼオライトが有する細孔に炭化水素(HC)を物理吸着する。そのため、金属を含有しないゼオライトは、比較的炭素数の多い(例えば、炭素数5以上)の炭化水素(HC)を吸着および放出し易く、比較的炭素数の少ない(例えば、炭素数5未満)の炭化水素(HC)を吸着および放出し難い性質を有する。
【0046】
そして、上記の排気システムでは、プラズマリアクター3の第1ゼオライト、および、HC貯留装置4の第2ゼオライトのうち、いずれか一方のみが金属を含有しており、他方は、金属を含有していない。つまり、第1ゼオライトおよび第2ゼオライトのいずれか一方が、金属を含有するゼオライトであり、他方が、金属を含有しないゼオライトである。
【0047】
例えば、プラズマリアクター3における第1ゼオライトが、金属を含有する場合、HC貯留装置4における第2ゼオライトは、金属を含有しない。また、プラズマリアクター3における第1ゼオライトが、金属を含有しない場合、HC貯留装置4における第2ゼオライトは、金属を含有する。
【0048】
好ましくは、プラズマリアクター3における第1ゼオライトが、金属を含有し、HC貯留装置4における第2ゼオライトは、金属を含有しない。より好ましくは、プラズマリアクター3における第1ゼオライトが、銀(Ag)を含有し、HC貯留装置4における第2ゼオライトは、金属を含有しない。
【0049】
上記のように、第1ゼオライトまたは第2ゼオライトのいずれか一方のみが、金属を含有していれば、金属を含有するゼオライトが、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)を優先的に吸着および放出できる。また、金属を含有しないゼオライトが、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)を優先的に吸着および放出できる。
【0050】
そのため、第1ゼオライトまたは第2ゼオライトのいずれか一方のみが金属を含有し、他方が金属を含有していなければ、プラズマリアクター3の第1ゼオライトに、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)または比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)のいずれか一方を、選択的に吸着および放出させることができる。また、HC貯留装置4の第2ゼオライトに、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)または比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)の他方を、選択的に吸着および放出させることができる。
【0051】
なお、第1ゼオライトまたは第2ゼオライトにおける金属の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、例えば、金属およびゼオライトの総量に対して、金属が、例えば、1質量%以上、10質量%以下である。
【0052】
3.排ガスの浄化
車両100の運転中において、エンジン101において生じた排ガスは、まず、触媒ユニット12に供給される。そして、車両100が継続的に運転されている場合、触媒ユニット12では、比較的高温の排ガスにより、排ガス浄化触媒が加熱および活性化される。そのため、排ガスに含まれる炭化水素(HC)は、排ガス浄化触媒により浄化および無害化される。その後、無害化された排ガスは、プラズマリアクター3を通過して、車外に排出される。
【0053】
一方、エンジン101の始動直後などには、触媒ユニット12に供給される排ガスが比較的低温(例えば、300℃未満)である。そのため、排ガス浄化触媒が十分に加熱および活性化されない場合がある。この場合、排ガスに含まれる炭化水素(HC)が、排ガス浄化触媒により浄化されない場合がある。
【0054】
このような場合、炭化水素(HC)を含む排ガスは、触媒ユニット12を通過し、プラズマリアクター3に導入される。そして、制御部6が、プラズマリアクター3の電極7に電圧を印加し、プラズマリアクター3内にプラズマを発生させる。その結果、プラズマにより炭化水素(HC)が酸化および無害化される。その後、排ガスは、プラズマリアクター3から排出され、大気に放出される。
【0055】
しかし、排気システム1では、プラズマリアクター3の分解性能には限界がある。そのため、分解性能の限界を超える量の炭化水素(HC)がプラズマリアクター3に供給されると、炭化水素(HC)の一部は分解されずに、大気に放出されるという不具合がある。そこで、上記の排気システム1は、以下の方法で、排気システム1を制御する。
【0056】
4.排気システムの制御
以下において、排気システム1の制御について説明する。また、以下では、プラズマリアクター3の第1ゼオライトが金属を含有し、HC貯留装置4の第2ゼオライトが金属を含有しない形態について、説明する。
【0057】
制御部6は、エンジン101が始動されると、まず、バルブ5をB位置に固定する。すなわち、バイパス管22の開度が100%とされ、メイン管21の開度が0%とされる。
【0058】
これにより、エンジン101において生じた排ガスが、触媒ユニット12、HC貯留装置4およびプラズマリアクター3を、順次通過する。このとき、エンジン101が始動直後である場合、触媒ユニット12に供給される排ガスが比較的低温(例えば、300℃未満)である。そのため、触媒ユニット12では、排ガス浄化触媒が十分に加熱されず、排ガスに含まれる炭化水素(HC)は、十分に分解されない。その結果、炭化水素(HC)を含んだ排ガスが、HC貯留装置4に導入される。
【0059】
HC貯留装置4には、第2ゼオライトが備えられている。第2ゼオライトは、金属を含有しておらず、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)を優先的に吸着する性質を有している。そのため、排ガスがHC貯留装置4に供給されると、排ガスに含まれる炭化水素(HC)のうち、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)が、第2ゼオライトに吸着される。一方、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)は、第2ゼオライトに吸着され難いため、HC貯留装置4から排出され、プラズマリアクター3に導入される。
【0060】
プラズマリアクター3には、第1ゼオライトが備えられている。第1ゼオライトは、金属を含有しており、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)を優先的に吸着する性質を有している。そのため、排ガスがプラズマリアクター3に供給されると、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)が、第1ゼオライトに吸着され、プラズマリアクター3内に滞留する。
【0061】
また、制御部6は、電極7に電圧を印加し、プラズマリアクター3内にプラズマを発生させる。その結果、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)が、プラズマによって分解される。
【0062】
そして、この排気システム1では、制御部6が、バルブ5を上記の状態(B位置)で所定時間保持する。保持時間は、例えば、10秒~50秒、好ましくは、20~40秒である。
【0063】
上記の保持時間が経過すると、触媒ユニット12に供給される排ガスの温度が比較的高温(例えば、300℃以上)になる。そのため、触媒ユニット12中の三元触媒が加熱および活性化され、排ガスに含まれる炭化水素(HC)は、触媒ユニット12において分解される。
【0064】
そこで、制御部6は、上記の保持時間の経過後、バルブ5をA位置に変更する。すなわち、バイパス管22の開度が0%とされ、メイン管21の開度が100%とされる。これにより、触媒ユニット12を通過した排ガスは、メイン管21およびプラズマリアクター3を通過し、車外に排出される。
【0065】
また、このとき、制御部6は、プラズマリアクター3の電極7に電圧を印加し、プラズマリアクター3内にプラズマを発生させる。これにより、プラズマリアクター3内に滞留された比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)が、引き続き分解される。
【0066】
そして、この排気システム1では、制御部6が、バルブ5を上記の状態(A位置)で所定時間保持する。保持時間は、例えば、10秒~120秒、好ましくは、30~60秒である。
【0067】
上記の保持時間が経過すると、プラズマリアクター3において、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)の分解が進行し、プラズマリアクター3の分解能力に余裕が生じる。
【0068】
そこで、制御部6は、上記の保持時間の経過後、バルブ5をB位置に変更する。すなわち、バイパス管22の開度が100%とされ、メイン管21の開度が0%とされる。これにより、触媒ユニット12を通過した排ガスは、バイパス管22およびHC貯留装置4を介して、プラズマリアクター3に導入される。
【0069】
このとき、HC貯留装置4において、排ガスにより第2ゼオライトが加熱され、第2ゼオライトに吸着されていた比較的炭素数の多い炭化水素(HC)が、第2ゼオライトから脱離される。その結果、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)が、プラズマリアクター3に導入され、プラズマにより分解される。
【0070】
このような制御により、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)および比較的炭素数の多い炭化水素(HC)のいずれか一方を、HC貯留装置4において一時的に貯留し、他方を、プラズマリアクター3においてプラズマ分解できる。
【0071】
また、上記の制御によれば、炭化水素(HC)の分解が進行し、プラズマリアクター3の分解能力に余裕が生じた後に、HC貯留装置4で一時的に貯留した炭化水素(HC)を、プラズマリアクター3においてプラズマ分解できる。
【0072】
なお、上記した説明では、プラズマリアクター3の第1ゼオライトが金属を含有し、HC貯留装置4の第2ゼオライトが金属を含有しない形態について説明したが、例えば、プラズマリアクター3の第1ゼオライトが金属を含有せず、HC貯留装置4の第2ゼオライトが金属を含有していてもよい。このような場合には、エンジン101の始動直後には、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)がHC貯留装置4の第2ゼオライトに吸着され、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)がプラズマリアクター3の第1ゼオライトに吸着される。そして、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)がプラズマリアクター3で分解された後、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)が第2ゼオライトから脱離し、プラズマリアクター3に導入され、プラズマにより分解される。
【0073】
5.作用効果
上記の排気システム1では、プラズマリアクター3およびHC貯留装置4のいずれか一方のみが、金属を含有するゼオライトを備え、他方は、金属を含有しないゼオライトを備える。そのため、排気管を通過する炭化水素(HC)のうち、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)および比較的炭素数の多い炭化水素(HC)のいずれか一方が、より上流側に配置されるHC貯留装置4の第2ゼオライトに吸着される。また、他方が、より下流側に配置されるプラズマリアクター3の第1ゼオライトに吸着される。つまり、エンジン始動時には、排気管2を通過する炭化水素(HC)の一部はHC貯留装置4で吸着され、残部のみがプラズマリアクター3で分解される。また、エンジンの継続的な駆動により排ガス温度が上昇すると、HC貯留装置4で吸着された炭化水素(HC)が放出され、プラズマリアクター3で分解される。つまり、プラズマリアクター3には、炭化水素(HC)が分割して供給される。そのため、上記の構成によれば、プラズマリアクター3の分解性能の限界を超える量の炭化水素(HC)が、プラズマリアクター3に供給されることを抑制でき、効率よく炭化水素(HC)をプラズマリアクター3で分解できる。そのため、上記の排気システム1は、排ガス浄化性能に優れる。
【0074】
6.変形例
上記した説明では、排気管2は、メイン管21およびバイパス管22を備えているが、
図2に示されるように、排気管2は、バイパス管22を備えていなくともよい。この場合、プラズマリアクター3がメイン管21に介在され、また、HC貯留装置4は、メイン管21において、プラズマリアクター3の上流側に介在される。
【0075】
このような実施形態でも、エンジン101の始動直後には、排ガスに含まれる炭化水素(HC)のうち、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)および比較的炭素数の多い炭化水素(HC)のいずれか一方が、HC貯留装置4の第2ゼオライトに吸着されることにより一時的に貯留され、他方が、プラズマリアクター3においてプラズマ分解される。
【0076】
そして、排ガスの温度が比較的高温(例えば、300℃以上)になると、HC貯留装置4の第2ゼオライトに吸着された炭化水素(HC)が、放出され、プラズマリアクター3に導入され、プラズマ分解される。
【0077】
すなわち、上記の排気システム1によれば、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)と、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)とを、逐次的にプラズマリアクター3に導入し、プラズマにより分解できる。そのため、上記の排気システム1は、排ガス浄化性能に優れる。
【0078】
好ましくは、排気管2は、メイン管21およびバイパス管22を備え、HC貯留装置4は、バイパス管22に介在されている。このような構成によれば、バルブ5の開閉を制御することにより、プラズマリアクター3に導入する炭化水素(HC)の量を任意に調整できるため、排ガス浄化効率の向上を図ることができる。
【0079】
また、第1ゼオライトおよび/または第2ゼオライトは、上記の金属(遷移金属)の他、貴金属を含有できる。貴金属としては、例えば、白金、パラジウムおよびロジウムが挙げられる。第1ゼオライトおよび/または第2ゼオライトが貴金属を含有していれば、プラズマリアクター3および/またはHC貯留装置4において、排ガス浄化性能を向上できる。
【0080】
なお、上記の排気システム1では、第1ゼオライト(プラズマリアクター3)および第2ゼオライト(HC貯留装置4)のいずれか一方のみが金属を含有し、他方は、第1金属を含有していない。しかし、例えば、第1ゼオライト(プラズマリアクター3)および第2ゼオライト(HC貯留装置4)のいずれか一方が、第1金属を含有し、第1ゼオライトまたは第2ゼオライトの一方に対する他方が、第1金属とは組成の異なる第2金属を含有することができる。
【0081】
第1金属および第2金属は、互いに組成の異なる金属であれば、特に制限されない。金属としては、例えば、上記遷移金属および上記貴金属が挙げられる。また、第1金属および第2金属は、金属単体であってもよく、金属組成物であってもよい。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0082】
例えば、第1ゼオライト(プラズマリアクター3)が第1金属として、上記遷移金属のみを含有する場合において、第2ゼオライト(HC貯留装置4)は、第2金属として、上記遷移金属および上記貴金属を含む金属組成物を含有できる。
【0083】
また、第1ゼオライト(プラズマリアクター3)が第1金属として上記遷移金属のみを含有する場合において、第2ゼオライト(HC貯留装置4)は、第2金属として、上記遷移金属を含有せず上記貴金属を含有できる。
【0084】
上記のような場合には、第1ゼオライトおよび第2ゼオライトは、いずれも金属の影響によって炭化水素(HC)を化学吸着する。そして、化学吸着される炭化水素(HC)の炭素数が、ゼオライトに含まれる金属の種類に応じて異なる。つまり、第1金属を含むゼオライトに吸着され易い炭化水素の炭素数と、第2金属を含むゼオライトに吸着され易い炭化水素の炭素数とが、互いに異なる。
【0085】
そのため、上記の排気システム1では、第1ゼオライトおよび第2ゼオライトのいずれか一方が、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)を吸着および放出し易く、他方が、比較的炭素数の多い炭化水素(HC)を吸着および放出し易い。
【0086】
つまり、上記の排気システム1では、プラズマリアクター3(第1ゼオライト)およびHC貯留装置4(第2ゼオライト)のいずれか一方が、第1金属を含有するゼオライトを備え、他方は、第1金属とは組成の異なる第2金属を含有するゼオライトを備える。そのため、排気管を通過する炭化水素(HC)のうち、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)のいずれか一方が、より上流側に配置されるHC貯留装置4の第2ゼオライトに吸着される。また、他方が、より下流側に配置されるプラズマリアクター3の第1ゼオライトに吸着される。つまり、エンジン始動時には、排気管2を通過する炭化水素(HC)の一部はHC貯留装置4で吸着され、残部のみがプラズマリアクター3で分解される。また、エンジンの継続的な駆動により排ガス温度が上昇すると、HC貯留装置4で吸着された炭化水素(HC)が放出され、プラズマリアクター3で分解される。つまり、プラズマリアクター3には、炭化水素(HC)が分割して供給される。そのため、上記の構成によれば、プラズマリアクター3の分解性能の限界を超える量の炭化水素(HC)が、プラズマリアクター3に供給されることを抑制でき、効率よく炭化水素(HC)をプラズマリアクター3で分解できる。そのため、上記の排気システム1は、排ガス浄化性能に優れる。
【0087】
さらに、第1金属および第2金属の組み合わせは、上記に限定されない。例えば、第2ゼオライト(HC貯留装置4)が第1金属として、上記遷移金属のみを含有する場合において、第1ゼオライト(プラズマリアクター3)は、第2金属として、上記遷移金属および上記貴金属を含む金属組成物を含有できる。
【0088】
また、第2ゼオライト(HC貯留装置4)が第1金属として上記遷移金属のみを含有する場合において、第1ゼオライト(プラズマリアクター3)は、第2金属として、上記遷移金属を含有せず上記貴金属を含有できる。
【0089】
さらに、例えば、第1ゼオライト(プラズマリアクター3)が第1金属として遷移金属および貴金属を含む金属組成物を含有する場合、第2ゼオライト(HC貯留装置4)は、第2金属として、遷移金属を含有せず貴金属のみを含有できる。
【0090】
加えて、第2ゼオライト(HC貯留装置4)が第1金属として遷移金属および貴金属を含む金属組成物を含有する場合、第1ゼオライト(プラズマリアクター3)は、第2金属として、遷移金属を含有せず貴金属のみを含有できる。
【0091】
これらの実施形態においても、プラズマリアクター3およびHC貯留装置4のいずれか一方が、第1金属を含有するゼオライトを備え、他方は、第1金属とは組成の異なる第2金属を含有するゼオライトを備える。そのため、排気管を通過する炭化水素(HC)のうち、比較的炭素数の少ない炭化水素(HC)のいずれか一方が、より上流側に配置されるHC貯留装置4の第2ゼオライトに吸着される。また、他方が、より下流側に配置されるプラズマリアクター3の第1ゼオライトに吸着される。つまり、エンジン始動時には、排気管2を通過する炭化水素(HC)の一部はHC貯留装置4で吸着され、残部のみがプラズマリアクター3で分解される。また、エンジンの継続的な駆動により排ガス温度が上昇すると、HC貯留装置4で吸着された炭化水素(HC)が放出され、プラズマリアクター3で分解される。つまり、プラズマリアクター3には、炭化水素(HC)が分割して供給される。そのため、上記の構成によれば、プラズマリアクター3の分解性能の限界を超える量の炭化水素(HC)が、プラズマリアクター3に供給されることを抑制でき、効率よく炭化水素(HC)をプラズマリアクター3で分解できる。そのため、上記の排気システム1は、排ガス浄化性能に優れる。
【符号の説明】
【0092】
1 排気システム
2 排気管
3 プラズマリアクター
4 バイパス管
5 バルブ
6 制御部