(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】エアフィルタの取付構造、および空気清浄機
(51)【国際特許分類】
B01D 46/00 20220101AFI20241210BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20241210BHJP
【FI】
B01D46/00 C
F24F8/80 210
(21)【出願番号】P 2021061938
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】西沢 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】栗原 駿一
(72)【発明者】
【氏名】林 嗣郎
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105576(JP,A)
【文献】実開昭49-050204(JP,U)
【文献】実開昭50-078536(JP,U)
【文献】実開平07-017318(JP,U)
【文献】特開平09-126210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/90
F24F 8/00-8/99
F16B 2/00-2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠に取り囲まれた濾材を備えるエアフィルタをケーシングに取り付けるための取付構造であって、
前記濾材を気体が通過する気流方向のうちの第1の側に前記エアフィルタを移動させて収容するよう構成された前記ケーシングの収容部に収容された前記エアフィルタの前記外枠を前記気流方向の第1の側に押し付けるボルトと、
前記収容部に収容された前記エアフィルタに対し、前記第1の側と反対側の前記気流方向の第2の側に配置される第1の係止部材であって、前記ボルトがねじ込まれるボルト受け部と、前記ボルト受け部から、前記外枠と対向するように前記外枠を取り囲む前記収容部の壁部の側に延びて、前記気流方向の第1の側にさらに延び、先端部を備える係止部と、を有する第1の係止部材と、
前記第1の係止部材が配置される前記外枠の周上の位置と対向する前記壁部の位置に設けられた第2の係止部材であって、前記係止部に挿通されるよう前記係止部を受け入れる開口部と、前記開口部の前記気流方向の第1の側において、前記開口部に挿通された前記係止部の前記先端部を支持する支持部と、を有する第2の係止部材と、を備え、
前記開口部は、前記開口部に挿通された前記係止部が前記開口部から前記気流方向の第2の側に抜けるのを規制しつつ、前記ボルトが前記ボルト受け部にねじ込まれて前記外枠を前記気流方向に押し付けることにより前記エアフィルタを前記ボルト受け部から前記気流方向の第1の側に離間させるよう開口して
おり、
前記係止部は、前記ボルト受け部から前記壁部の側に延びる第1の部分と、前記第1の部分の前記壁部の側の端部から屈曲して前記気流方向の第1の側に延びる第2の部分と、を有し、
前記開口の前記気流方向の長さは、前記第2の部分の前記気流方向の長さより短い、ことを特徴とするエアフィルタの取付構造。
【請求項2】
前記係止部は、前記ボルト受け部から前記壁部の側に延びる第1の部分と、前記第1の部分の前記壁部の側の端部から屈曲して前記気流方向の第1の側に延びる第2の部分と、を有し、
前記開口部と前記壁部との間隔は、前記第1の部分の延在方向に沿った前記第2の部分の長さの3倍以下である、請求項1
に記載のエアフィルタの取付構造。
【請求項3】
前記第2の係止部材は、前記支持部のさらに前記気流方向の第1の側に、前記先端部の前記気流方向の第1の側への移動を阻止するように前記壁部との間隔が狭くなった当接部をさらに備える、請求項1
または2に記載のエアフィルタの取付構造。
【請求項4】
前記当接部は、前記第2の係止部材と前記壁部との間隔が前記気流方向の第1の側に向かうにつれ狭くなるよう前記気流方向に対し傾斜して延びる、請求項
3に記載のエアフィルタの取付構造。
【請求項5】
前記外枠が周状に延びる方向と平行な方向の前記開口の長さは、前記開口部に挿通された前記係止部の部分の当該方向の長さより長く、かつ、当該長さの110%以下の長さである、請求項1に記載のエアフィルタの取付構造。
【請求項6】
外枠に囲まれた濾材を備えるエアフィルタと、
前記濾材を気体が通過する気流方向に前記エアフィルタを移動させて収容するよう構成された収容部を有するケーシングと、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の取付構造と、を備えることを特徴とする空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタをケーシングに取り付けるための取付構造および空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気清浄機の内部には、空気を清浄化するためのエアフィルタが配置されている。エアフィルタは、空気中の塵埃等の微粒子を捕集する濾材と、濾材を取り囲む外枠とを備える。空気清浄機は、外部の空気を取り込み、濾材を通過させ、清浄化した空気を外部に排出する。そのため、取り込まれた空気が確実に濾材を通過するよう、エアフィルタは、空気清浄機内の空気の流路上の所定位置に気密に配置されることが好ましい。
【0003】
従来、エアフィルタを収容するケーシングに、エアフィルタを取り付けるための取付構造が知られている(特許文献1,2)。特許文献1の取付構造では、ケーシング内に収容されたエアフィルタの外枠と向き合うケーシングの側壁部と、エアフィルタの外枠との間のスペースに配置された固定金具及びボルト受け部にボルトをねじ込むことで取り付けを行う。特許文献2の取付構造では、複数のエアフィルタを、気流方向と直交する平面に沿って格子状に並べて収容可能となるよう横板及び縦板で仕切られてなる複数の空間の隣り合うスペースに、押さえ板及びボルト受け部を配置し、ボルトをねじ込んで取付を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-95811号公報
【文献】特開2010-149092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気清浄機の配置スペースを小さくするため、空気清浄機はコンパクトなものが望まれる一方で、空気清浄機の処理風量は大きいことが望まれる。しかし、処理風量を大きくするために、一般には、濾過面積の大きい濾材を備える大きなエアフィルタが用いられるので、空気清浄機のコンパクト化と処理風量の向上とは、相反する要求となっている。特許文献1,2に記載の取付構造では、エアフィルタの外枠の周りにボルト及び金具を配置し、工具あるいは手でボルトを締め付ける作業スペースが必要なため、寸法の大きなエアフィルタを用いてコンパクトな空気清浄機を設計することには限界がある。
【0006】
そこで、本発明は、ケーシング内に収容されたエアフィルタの外枠の周りのスペースを小さくすることができるエアフィルタの取付構造、および空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、エアフィルタの取付構造である。当該取付構造は、
外枠に取り囲まれた濾材を備えるエアフィルタをケーシングに取り付けるための取付構造であって、
前記濾材を気体が通過する気流方向のうちの第1の側に前記エアフィルタを移動させて収容するよう構成された前記ケーシングの収容部に収容された前記エアフィルタの前記外枠を前記気流方向の第1の側に押し付けるボルトと、
前記収容部に収容された前記エアフィルタに対し、前記第1の側と反対側の前記気流方向の第2の側に配置される第1の係止部材であって、前記ボルトがねじ込まれるボルト受け部と、前記ボルト受け部から、前記外枠と対向するように前記外枠を取り囲む前記収容部の壁部の側に延びて、前記気流方向の第1の側にさらに延び、先端部を備える係止部と、を有する第1の係止部材と、
前記第1の係止部材が配置される前記外枠の周上の位置と対向する前記壁部の位置に設けられた第2の係止部材であって、前記係止部に挿通されるよう前記係止部を受け入れる開口部と、前記開口部の前記気流方向の第1の側において、前記開口部に挿通された前記係止部の前記先端部を支持する支持部と、を有する第2の係止部材と、を備え、
前記開口部は、前記開口部に挿通された前記係止部が前記開口部から前記気流方向の第2の側に抜けるのを規制しつつ、前記ボルトが前記ボルト受け部にねじ込まれて前記外枠を前記気流方向に押し付けることにより前記エアフィルタを前記ボルト受け部から前記気流方向の第1の側に離間させるよう開口している、ことを特徴とする。
【0008】
前記係止部は、前記ボルト受け部から前記壁部の側に延びる第1の部分と、前記第1の部分の前記壁部の側の端部から屈曲して前記気流方向の第1の側に延びる第2の部分と、を有し、
前記開口の前記気流方向の長さは、前記第2の部分の前記気流方向の長さより短い、ことが好ましい。
【0009】
前記係止部は、前記ボルト受け部から前記壁部の側に延びる第1の部分と、前記第1の部分の前記壁部の側の端部から屈曲して前記気流方向の第1の側に延びる第2の部分と、を有し、
前記開口部と前記壁部との間隔は、前記第1の部分の延在方向に沿った前記第2の部分の長さの3倍以下である、ことが好ましい。
【0010】
前記第2の係止部材は、前記支持部のさらに前記気流方向の第1の側に、前記先端部の前記気流方向の第1の側への移動を阻止するように前記壁部との間隔が狭くなった当接部をさらに備える、ことが好ましい。
【0011】
前記当接部は、前記第2の係止部材と前記壁部との間隔が前記気流方向の第1の側に向かうにつれ狭くなるよう前記気流方向に対し傾斜して延びる、ことが好ましい。
【0012】
前記外枠が周状に延びる方向と平行な方向の前記開口の長さは、前記開口部に挿通された前記係止部の部分の当該方向の長さより長く、かつ、当該長さの110%以下の長さである、ことが好ましい。
【0013】
本発明の別の一態様は、空気清浄機である。当該空気清浄機は、
外枠に囲まれた濾材を備えるエアフィルタと、
前記濾材を気体が通過する気流方向に前記エアフィルタを移動させて収容するよう構成された収容部を有するケーシングと、
前記取付構造と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記態様によれば、ケーシング内に収容されたエアフィルタの外枠の周りのスペースを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】空気清浄機の一部を取り外してエアフィルタの取付構造を示す内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態のエアフィルタの取付構造及び空気清浄機について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の空気清浄機1の一例を示す正面図である。
図2は、空気清浄機1の背面側上部カバー(不図示)を取り外してエアフィルタ2の取付構造10を示す内部構成図である。
【0018】
空気清浄機1は、エアフィルタ2と、ケーシング3と、取付構造10と、を備えている。
図2において、エアフィルタ2の図示は省略されている。
【0019】
(エアフィルタ)
エアフィルタ2は、外枠2b(
図4~
図6参照)と、外枠2bに取り囲まれた濾材2a(
図4及び
図5参照)と、を備える。
【0020】
外枠2bは、エアフィルタ2の濾材2aを空気が通過する気流方向(以下、単に気流方向ともいう)Xに見て、矩形状の外形を有しており、濾材2aを周状に取り囲む。外枠2bは、四辺のそれぞれと対応する位置に配置されるよう複数の板材を組み合わせて作製される。板材の材質は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金、ステンレス、あるいはセラミックである。
【0021】
濾材2aは、気体中の塵埃等の微粒子を捕集する部材である。濾材2aは、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、あるいはこれらの混合繊維からなる繊維体であり、例えば、不織布、ペーパ、綿、あるいはマットの形態を有している。濾材2aの具体例として、ガラス繊維を構成繊維とする、ガラス不織布、ガラス濾紙、グラスウール等が挙げられる。濾材2aには、さらに、繊維同士を接着するバインダが含まれていてもよい。濾材2aは、濾過面積を確保するため、プリーツ加工され、山折りと谷折りが交互に繰り返されたジグザグ形状を有していることが好ましい。これにより、処理風量が増し、濾材2aを高寿命にすることができる。
【0022】
エアフィルタ2は、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタの性能を有している。HEPAフィルタは、定格風量で粒径0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集効率を有し、かつ初期の圧力損失が245Pa以下であるフィルタである。
【0023】
(ケーシング)
図1及び
図2に示す例の空気清浄機1において、ケーシング3には、正面側の部分の上部に形成された排気口2c、及び、背面側の部分の下部に形成された吸気口2d、が設けられている。ケーシング3の正面側には、ケーシング3の内側から排気口2cを塞ぐようにパンチングメタル6が設けられている。ケーシング3の背面側には、ケーシング3の外側から吸気口2dを覆うようにプレフィルタ8が設けられている。
【0024】
ケーシング3に、背面側上部カバー(不図示)が取り付けられると、吸気口2dから取り込まれた空気を排気口2cに向けて流すための流路が、空気清浄機1内に形成される。ケーシング3は、流路の途中の部分を構成する収容部4を有している。
図2に示す収容部4は、排気口2cに対し気流方向Xの上流側(第2の側)に隣接する位置に形成されている。収容部4は、エアフィルタ2を収容する部分である。収容部4は、気流方向Xにエアフィルタ2を移動させて収容させることができるよう構成されている。具体的に、収容部4は、収容部4に収容されたエアフィルタ2の外枠2bの端面と対向するように外枠2bを周状に取り囲む矩形状の壁部4aを有している。
【0025】
排気口2cを囲むケーシング3の縁部の気流方向Xの上流側には、ガスケット(不図示)が配置されていることが好ましい。ガスケットは、エアフィルタ2がケーシング3に取り付けられた取付状態(以降、単に取付状態ともいう)において、エアフィルタ2と縁部との間に挟まれることで、排気口2cから排出される空気が確実にエアフィルタ2を通過するようになる。
【0026】
(取付構造)
図3は、取付構造10を示す分解斜視図である。
図4~
図6は、取付状態にある取付構造を示す図である。
取付構造10は、収容部4に収容されたエアフィルタ2を、ケーシング3に気密に取り付けるための構造である。空気清浄機1には、
図2に示すように、収容部4の壁部4aに沿って計6カ所に取付構造10が配置される。以降の説明では、これら6つの取付構造10のうち
図2の破線の円で囲んだ取付構造10を例に説明するが、取付構造10は、配置位置や、後述する第1の係止部材と第2の係止部材の向き合う方向を除いて、互いに同様に構成される。
図4~
図6には、
図2の破線の円で囲んだ取付構造10が示される。
【0027】
取付構造10は、ボルト13と、第1の係止部材11と、第2の係止部材12と、を備えている。
【0028】
ボルト13は、ケーシング3の収容部4に収容されたエアフィルタ2の外枠2bを気流方向Xに押し付ける部材である。ボルト13は、気流方向Xと平行な方向に延びるよう配置される。ボルト13には、例えば、ねじの呼び(JIS B1180:2014)がM8あるいはM10のものが用いられる。
【0029】
第1の係止部材11は、収容部4に収容されたエアフィルタ2に対し気流方向Xの上流側に配置される。第1の係止部材11は、ボルト受け部11aと、係止部11bと、を有している。
【0030】
ボルト受け部11aは、ボルト13がねじ込まれるネジ穴が形成された部分である。
【0031】
係止部11bは、ボルト受け部11aから収容部4の壁部4aの側(
図3においてY方向の右下側)に延びて、気流方向Xの下流側(第1の側)にさらに延び、先端部11eを備える。係止部11bは、第1の部分11cと、第2の部分11dと、を有している。第1の部分11cは、ボルト受け部11aから壁部4aの側に延びる部分(
図3においてY方向の右下側)である。第2の部分11dは、第1の部分11cの壁部4aの側の端部から、第1の部分11cに対し屈曲するように気流方向Xの下流側に延びる部分である。
【0032】
このような第1の係止部材11は、
図3に示す例において、Z方向と直交する断面においてL字形状を有している。
【0033】
第2の係止部材12は、第1の係止部材11が配置される外枠2bの周上の位置と対向する壁部4aの位置に設けられた部材である。第2の係止部材12は、開口部と、支持部12bと、取付基部12dと、を有している。
【0034】
開口部は、係止部11bに挿通されるよう係止部11bを受け入れる開口12aが形成された部分である。このため、開口12aのZ方向の長さW12aは、第1の係止部材11の係止部11bのZ方向の長さW11cより長くなっている。
【0035】
支持部12bは、開口部の気流方向Xの下流側において、開口部に挿通された係止部11bの先端部11eを支持する部分である。取付状態において、先端部11eは、例えば、
図4に示すように、支持部12bにY方向の左側から支持される。
【0036】
取付基部12dは、第2の係止部材12を壁部4aに取り付けるために、壁部4aに固定される部分である。取付基部12dは、具体的に、壁部4aの内周側を向く壁面に対し、溶接あるいはネジなどで留めることにより固定される。
【0037】
エアフィルタ2の外枠2bと、収容部4の壁部4aとの間のスペースを小さくする観点から、第1の係止部材11及び第2の係止部材12は、
図3に示すように、一定の厚みを有する板状の部材に曲げ加工等を施して得られたものであることが好ましい。
【0038】
開口部は、開口部に挿通された係止部11bが開口部から気流方向Xの上流側に抜けるのを規制しつつ、ボルト13がボルト受け部11aにねじ込まれて外枠2bを気流方向Xに押し付けることによりエアフィルタ2をボルト受け部11aから気流方向Xの下流側に離間させるよう開口している。具体的に、開口部は、係止部11bの抜けを規制するために、気流方向Xの上流側において、
図3に示すように、開口12aは閉じている。一方、取付作業の際に、係止部11bが気流方向Xに移動可能なように、開口12aの気流方向Xの長さL12aは、係止部11bの第1の部分11cの気流方向Xの長さ(厚さ)よりも大きくなっている。
【0039】
このような取付構造10を用いて、エアフィルタ2の取り付けを行う場合、まず、
図2に示すように、空気清浄機1から背面側上部カバー(不図示)を取り外した状態で、エアフィルタ2を気流方向Xの下流側に移動させて収容部4内に収容させる。次いで、第1の係止部材11の係止部11bを、先端部11eから、第2の係止部材12の開口12aを挿通させ、係止部11bの第2の部分11dの延在方向が、第2の係止部材12の開口部及び支持部12bと平行になるように、第1の係止部材11を配置する。この状態で、ボルト13を、ボルト受け部11aのネジ穴にねじ込む(締め付ける)と、係止部11bの第1の部分11cが、例えば開口12a内を、気流方向Xの下流側から上流側に移動し、第1の部分11cはエアフィルタ2の外枠2bから離間する。続けて、ボルト13を締め付けると、第1の部分11cは、開口12aを画する上流側の縁に当接し、第1の係止部材11は、上流側への移動が規制されつつ、エアフィルタ2を下流側に押し付けるように力を作用させる。この状態で、ボルト13をさらに締め付けることで、エアフィルタ2は強く排気口2cの側に押し付けられ、ケーシング3に取り付けられた状態(以降、取付状態ともいう)となる。これにより、ケーシング3内に取り込まれて排気口2cから排出される空気が確実にエアフィルタ2を通過するよう、エアフィルタ2は、空気清浄機1内の空気の流路上の所定位置に気密に配置される。
【0040】
一方、取付状態のエアフィルタ2をケーシング3から取り外す場合、ボルト13を緩めることで、第1の係止部材11がエアフィルタ2に作用させる上記力を弱め、さらに、開口12a内に位置する第1の部分11cが気流方向Xに自由に動ける状態にすることにより、係止部11bを開口12aから引き抜いて、第1の係止部材11を第2の係止部材12から取り外すことができる。このように第1の係止部材11を取り外すことで、エアフィルタ2を収容部4から、気流方向Xの上流側に引き出すように移動させて取り出すことができ、エアフィルタ2を交換することができる。
【0041】
本実施形態の取付構造10によれば、ボルト13を用いてエアフィルタ2の取り付けを行うので、
図2に示すように背面側上部カバー(不図示)取り外した状態で、エアフィルタ2が強く締め付けられた外観を呈することができる。一方で、ボルト13は、エアフィルタ2の外枠2bを押し付けるよう配置され、外枠2bと壁部4aとの間のスペースにボルトは配置されない。したがって、外枠2bと壁部4aとの間に、ボルトを配置するスペースや、ボルトを締め付ける作業を行うためのスペースを必要とせず、ケーシング3内に収容されたエアフィルタ2の外枠2bの周りのスペースを小さくすることができる。これにより、ケーシング3内のエアフィルタ2の配置スペースを小さくでき、空気清浄機1のコンパクト化を図ることができる。また、上述したように、エアフィルタ2の外枠2bの周りのスペースを小さくすることができるので、濾過面積の大きい大きなエアフィルタ2を配置させることができる。すなわち、空気清浄機1のコンパクト化と処理風量の向上とを両立できる。
【0042】
一実施形態によれば、開口12aの気流方向Xの長さL12a(
図3参照)は、第2の部分11dの気流方向Xの長さL11d(
図3参照)より短いことが好ましい。これにより、第1の係止部材11の先端部11eは、
図4に示すように、第2の係止部材12の支持部12bに確実に支持される。また、開口12aの長さL12aが短いと、第1の係止部材11の第2の部分11dの先端部11eと、第2の係止部材12とが接し、第1の係止部材11を固定しやすくなるため、エアフィルタ2の取付の作業効率がよくなる。このような点から、長さL12aは、長さL11dの60~90%の長さであることが好ましい。
【0043】
また、一実施形態によれば、開口部と壁部4aとの間隔G(
図3参照)は、第1の部分11cの延在方向Yに沿った第2の部分11dの長さ(厚さ)T11d(
図3参照)の3倍以下であることが好ましい。このような形態は、エアフィルタ2の外枠2bと収容部4の壁部4aとの間のスペースを小さくすることに寄与する。また、間隔Gが狭いことで、第1の係止部材11の先端部11eが、第2の係止部材12の支持部12bから支持されるだけでなく、ケーシング3の壁部3aからも支持されやすくなり、第1の係止部材11の姿勢が安定しやすくなる。このような点から、間隔Gは、長さ(厚さ)T11dの1.8~2.2倍の長さであることが好ましい。
【0044】
一実施形態によれば、第2の係止部材12は、支持部12bのさらに気流方向Xの下流側に、先端部11eの気流方向Xの下流側への移動を阻止するように壁部4aとの間隔が狭くなった当接部12cをさらに備えることが好ましい。この形態によれば、取付作業を行うときに、第1の係止部材11の先端部11eが当接部12cに当接させて、係止部11bの第1の部分11cがエアフィルタ2の外枠2bからある程度、離間して配置させることができる。そのため、ボルト13を予めねじ込んでおいた第1の係止部材11を用いて、締め付けを行うことができ、ボルト13のねじ込み量が少なくて済む。
【0045】
この形態において、さらに、当接部12cは、第2の係止部材12と壁部4aとの間隔が気流方向Xの下流側に向かうにつれ狭くなるよう気流方向Xに対し傾斜して延びることが好ましい。これにより、先端部11eが、第2の係止部材12と壁部4aの両側から拘束されやすく、取付作業の際の第1の係止部材11の姿勢が安定しやすくなる。
【0046】
一実施形態によれば、外枠2bが周状に延びる方向と平行な方向(
図4~6において方向Z)の開口12aの長さW12a(
図3参照)は、開口部に挿通された係止部11bの部分の当該方向の長さW11c(
図3参照)より長く、かつ、当該長さW11cの110%以下の長さであることが好ましい。この形態によれば、上記平行な方向(Z方向)の両側から係止部11bが拘束されるので、取付作業の際の第1の係止部材11のぐらつきが抑制され、取付作業を行いやすくなる。また、当接部12cが気流方向Xの下流側に向かうにつれ狭くなる上述の形態を合わせて備えることで、第1の係止部材11が種々の方向から支持され、取付作業の際の第1の係止部材11のぐらつきが効果的に抑えられる。このため、エアフィルタ2の取付作業の効率が大きく向上する。
【0047】
空気清浄機1は、さらに、操作部7(
図1参照)と、ファン(不図示)と、電源プラグ(不図示)と、脚部(
図1参照)と、を備えている。
【0048】
操作部7は、ケーシング3の正面側を向く表面(前面)に配置されている。操作部7は、空気清浄機1の運転及び運転停止を指示するボタン等が設けられている。
【0049】
ファンは、ケーシング3内の下部に、吸気口2dの気流方向Xの下流側に配置されている。ファンは、操作部7の上記ボタンの操作により、空気清浄機1の運転が指示されると回転駆動し、これにより、吸気口2dから空気が取り込まれ、排気口2cに向かって流れる気流が形成される。
【0050】
電源プラグは、外部電源を空気清浄機1に供給するためのものである。
【0051】
脚部は、空気清浄機1を立設させるよう構成された部分である。具体的に、脚部は、ケーシング3の
図1の紙面奥側及び手前側に直線状に延びる形状を有し、ケーシング3の下端の、
図1の左右方向の両側の端部それぞれに取り付けられている。
図1に示す例では、脚部の延在方向の両端部に、キャスターが設けられている。
図2では、脚部の図示は省略されている。
【0052】
取付構造10の適用対象は、空気清浄機1に制限されない。取付構造10は、例えば、ビル、工場等の建物の空調設備を構成するダクトの途中に設置された、収容部4を有するケーシング3に対してエアフィルタ2を取り付けるものであってもよい。
【0053】
以上、本発明のエアフィルタの取付構造及び空気清浄機について詳細に説明したが、本発明のエアフィルタの取付構造及び空気清浄機は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0054】
気流方向の第2の側及び第1の側に関して、上記実施形態では、第1の側を下流側とし、第2の側を上流側とする場合を例に説明したが、一実施形態では、これとは逆に、第1の側を上流側とし、第2の側を下流側としていてもよい。この場合、上記空気清浄機1は、排気口2cを吸気口とし、吸気口2dを吸気口として、吸気口から排気口に向かう気流が形成されるよう構成される。このように構成された空気清浄機1において、上述のプレフィルタは省略され、代わりに、パンチングメタル6と、収容部4に収容されたエアフィルタ2との間にプレフィルタが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 空気清浄機
2 エアフィルタ
2a 濾材
2b 外枠
2c 排気口
2d 吸気口
3 ケーシング
4 収容部
4a 壁部
6 パンチングメタル
7 操作部
8 プレフィルタ
10 取付構造
11 第1の係止部材
11a ボルト受け部
11b 係止部
11c 第1の部分
11d 第2の部分
11e 先端部
12 第2の係止部材
12a 開口
12b 支持部
12c 当接部
12d 取付基部
13 ボルト