IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

特許7601690医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20241210BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
G01T1/161 A
A61B6/03 577
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021062562
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2021173755
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】16/860,425
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウエンユエン チー
(72)【発明者】
【氏名】ユジエ リュウ
(72)【発明者】
【氏名】エヴレン アズマ
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー コルサマー
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ユウ
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008061(JP,A)
【文献】特開2017-067765(JP,A)
【文献】特開2013-238603(JP,A)
【文献】特開2020-038231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0131774(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0070050(US,A1)
【文献】国際公開第2005/076038(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PETスキャンの初期の画像再構成に対応する放射マップおよび減衰マップを取得する取得部と、
放射輸送方程式(Radiative Transfer Equation:RTE)法を使用して、前記放射マップおよび前記減衰マップに基づいて前記PETスキャンの対象の散乱源マップを計算する算出部と
前記RTE法を使用して、前記放射マップ、前記減衰マップ、および前記散乱源マップに基づいて、散乱を推定する推定部と
前記推定された散乱、および前記対象の前記PETスキャンからのデータに基づいて、前記PETスキャンの反復画像再構成を実行する、再構成部と
を備える、医用画像処理装置。
【請求項2】
前記推定された散乱は、1次の散乱フラックス項およびより高次の散乱フラックス項からの寄与を含む、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記減衰マップは、前記対象のデュアルエネルギーX線CTスキャンに基づく、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記推定された散乱は、2つの生成されたガンマ線のうちの一方のみが散乱する消滅イベントに基づいて推定される、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記推定された散乱は、生成されたガンマ線の対の両方が散乱する消滅イベントに基づいて推定される、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記PETスキャンの前記対象の前記散乱源マップは、等方性源散乱源マップである、請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記再構成部は、最尤期待値最大化法を使用して、前記PETスキャンの前記反復画像再構成を実行する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記推定部は、検出器のLOR(Line Of Response)ごとに、前記散乱を推定する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
医用画像処理装置により行われる医用画像処理方法であって、
PETスキャンの初期の画像再構成に対応する放射マップおよび減衰マップを取得し、
放射輸送方程式(Radiative Transfer Equation:RTE)法を使用して、前記放射マップおよび前記減衰マップに基づいて前記PETスキャンの対象の散乱源マップを計算し、
前記RTE法を使用して、前記放射マップ、前記減衰マップ、および前記散乱源マップに基づいて、散乱を推定し、
前記推定された散乱、および前記対象の前記PETスキャンからのデータに基づいて、前記PETスキャンの反復画像再構成を実行する、
医用画像処理方法。
【請求項10】
PETスキャンの初期の画像再構成に対応する放射マップおよび減衰マップを取得し、
放射輸送方程式(Radiative Transfer Equation:RTE)法を使用して、前記放射マップおよび前記減衰マップに基づいて前記PETスキャンの対象の散乱源マップを計算し、
前記RTE法を使用して、前記放射マップ、前記減衰マップ、および前記散乱源マップに基づいて、散乱を推定し、
前記推定された散乱、および前記対象の前記PETスキャンからのデータに基づいて、前記PETスキャンの反復画像再構成を実行する処理をコンピュータに実行させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)は、体の特定の特徴を撮像するための弱放射性マーク医薬(すなわち、トレーサー)の使用に基づく核医学におけるイメージング方法である。PET画像は、経時的な放射性医薬の空間分布を表示し、それによって、医師または臨床医が、例えば代謝活性または血流についての結論を引き出すことができる。
【0003】
PETイメージングにおいて、(例えば、注射、吸入、または摂取を介して、)撮像される患者内にトレーサー薬が導入される。投与の後、薬の物理的および生体分子の特性により、薬は患者の体内の特定の場所に集中する。薬の実際の空間分布、薬の蓄積の領域の強度、および投与から薬の最終的な除去までのプロセスの速度はすべて、臨床的な重要性を有し得る要因である。
【0004】
このプロセスの間、薬に付加されたトレーサーは、電子の反物質に相当するポジトロンを放出する。放出されたポジトロンが電子と衝突すると、電子およびポジトロンは消滅し、結果として、511keVのエネルギーをそれぞれ有する1対のガンマ線を放射し、2本のガンマ線が略180°離れて移動する。
【0005】
トレーサーの時空分布は、例えば、そのエネルギー(すなわち、生成された光の量)、場所、およびタイミングについてそれぞれの検出イベントを特徴付けることによって、断層撮影再構成原理を介して再構成される。2本のガンマ線が同時計数タイムウィンドウ内で検出されると、おそらく、同じポジトロン消滅イベントに起因し、したがって、同時計数ペアであるとして識別される。それらの場所間で線(すなわち、レスポンスの線(Line-Of-Response:LOR))を引いて、ポジトロン消滅イベントの可能性のある場所を判定することができる。タイミング情報はまた、2本のガンマ線の飛行時間情報に基づいて消滅についてのLORに沿って統計の分布を決定するために使用され得る。多数のLORを蓄積することによって、患者内の放射能(例えばトレーサー濃度)の空間分布のボリュメトリック画像を決定するために、断層撮影の再構成が実行され得る。
【0006】
放射線への被曝に関する健康懸念のため、医療イメージングにおける臨床医は、合理的に達成可能な限り放射線量を低く維持するように努める。合理的に達成可能な限り放射線量を低く維持するためのこの努力は、放射線量および測定された信号の信号対ノイズ比を減らしながら再構成された画像品質を継続して改善する動機となる。
【0007】
例えば、散乱は、PET画像再構成において主要な劣化要因である。散乱補正のための2つの主要な方法、すなわち、モンテカルロシミュレーションおよびモデルベース1回散乱シミュレーション(Single Scatter Simulation:SSS)それぞれが欠点を有する。モンテカルロシミュレーションの離散的性質は、本質的にノイズを多くするが、これは、シミュレーションの数を増加させることによって克服され得る。しかしながら、多数のモンテカルロシミュレーションを実行することは、かなりの時間およびコンピュータ処理を要し、多くの場合、商用の実装にとってこのアプローチは遅すぎる。代替として、SSSは比較的速く、PET散乱補正の商用の用途に好ましいアプローチになる。しかしながら、SSSは、1回イベント散乱推定のみを含み、したがって、より高次の散乱を無視するため、本質的に不正確である。
【0008】
したがって、PET散乱補正を実行し、それによって、PET画像の画像品質を改善するために、改善方法が望まれる。現在の方法と比較して、これらの改善方法は、改善された精度もしくはコンピュータ効率のいずれか、または両方を有するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2018/0204356号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0014806号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0286785号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画質を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、算出部と、推定部と、再構成部とを備える。取得部は、PETスキャンの初期の画像再構成に対応する放射マップおよび減衰マップを取得する。算出部は、放射輸送方程式(Radiative Transfer Equation:RTE)法を使用して、放射マップおよび減衰マップに基づいてPETスキャンの対象の散乱源マップを計算する。推定部は、前記RTE法を使用して、前記放射マップ、前記減衰マップ、および前記散乱源マップに基づいて、散乱を推定する。再構成部は、前記推定された散乱、および前記対象の前記PETスキャンからのデータに基づいて、前記PETスキャンの反復画像再構成を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るPET装置の一例を示した図である。
図2図2は、実施形態に係るPET装置の一例を示した図である。
図3A図3Aは、実施形態に係る、散乱イベントがないときのガンマ線生成および検出について説明した図である。
図3B図3Bは、実施形態に係る、1次の散乱イベントのガンマ線生成および検出について説明した図である。
図3C図3Cは、実施形態に係る、2次の散乱イベントのガンマ線生成および検出について説明した図である。
図3D図3Dは、実施形態に係る、3次の散乱イベントのガンマ線生成および検出について説明した図である。
図3E図3Eは、実施形態に係る、両側の1次の散乱イベントのガンマ線生成および検出について説明した図である。
図4図4は、実施形態に係る、散乱を推定してPET画像を再構成する方法のフローチャートである。
図5A図5Aは、実施形態に係る、PET画像を再構成する方法のサブプロセスのフローチャートである。
図5B図5Bは、実施形態に係る、PET画像を再構成する方法のサブプロセスのフローチャートである。
図5C図5Cは、実施形態に係る、PET画像を再構成する方法のサブプロセスのフローチャートである。
図6A図6Aは、実施形態に係る、計算された散乱源マップの図である。
図6B図6Bは、実施形態に係る、検出器Bでの推定された散乱フラックスの図である。
図7図7は、実施形態に係る、関連する散乱源マップを使用し得る1つの検出器Aからの可能性のある複数のレスポンスの線の図である。
図8A図8Aは、実施形態に係る、計算された等方性源散乱源マップの図である。
図8B図8Bは、実施形態に係る、検出器Aおよび検出器Bでの推定された散乱フラックスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本明細書で使用される用語「複数の」は、2つ以上と定義される。本明細書で使用される用語「別の」は、少なくとも第2以上と定義される。本明細書で使用される用語「含む」および/または「有する」は、備える(すなわち、オープンランゲージ)と定義される。この文書全体にわたる、「1つの実施形態」、「ある実施形態」、「実施形態」、「実施態様」、「例」、または同様の用語への参照は、実施形態と関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、そのような語句の、またはこの明細書全体にわたる様々な場所における出現は、必ずしも、同じ実施形態へのすべての参照ではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、限定することなく、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされ得る。
【0015】
PETにおいて、測定された同時計数は、真の同時計数およびバックグラウンド信号(例えば、偶発同時計数)の両方を含む。再構成されたPET信号の画像品質を改善するために、このバックグラウンド信号を推定して考慮することが望ましい。例えば、バックグラウンド信号は、推定されたバックグラウンド信号に基づいてベースライン減算を使用してデータを補正することによって考慮され得るか、またはPET画像を反復して再構成するために対数尤度目的関数が使用されるとき、対数尤度式が、推定されたバックグラウンド信号に基づいてバックグラウンド信号項を含むことができる。バックグラウンド信号は、偶発イベントおよび散乱イベントによる計数を含む。PETにおいて、バックグラウンド信号は、主に、偶発および散乱としても知られるアクシデンタルコインシデンスから構成される。
【0016】
多くの消滅イベントについて、他方の光子がPET検出器リングの面の外で吸収されるかまたは散乱するため、1対の光子の一方の光子のみが検出される。さらに、検出器の量子効率が1よりも小さいことにより、PET検出器リングのシンチレーション検出器に達するいくつかの光子は、検出されない。1対の光子のうちの一方のみが検出される検出イベントは、「シングル」と呼ばれ得る。別の消滅からの2つのシングルが同時計数タイミングウィンドウ内で検出されるとき、同じ消滅から生じたとして誤って登録される。これは、偶発イベントとしても知られるアクシデンタルコインシデンス(Accidental Coincidence:AC)イベントと呼ばれる。異なる言い方では、ACイベントは、同時計数タイミングウィンドウ内で2つの関連のないシングルが検出されるときに生じる。
【0017】
体内のほとんどの散乱光子は検出器面で検出されないが、それでもいくつかの散乱光子は、検出されて登録され、結果として不正確なLORになる。ある実施形態において、散乱イベントを起こすコンプトン相互作用時に光子がそれらのエネルギーをわずかに失うため、結果として不正確なLORになるこれらの散乱イベントのいくつかは、エネルギー弁別によって除去され得る。そうであっても、いくつかの散乱光子(散乱)およびいくつかの偶発同時計数(偶発)が不可避的に記録され、したがってバックグラウンド信号が、偶発および散乱を含む。
【0018】
様々な補正がPETデータにおいて実行され得、結果として画像品質がより良くなる。例えば、ガンマ線は、患者を通じて伝播すると減衰し、検出器素子は、それらの検出効率で変化し、偶発および散乱同時計数は真の同時計数イベントと共に記録される。これらの効果についての補正は、画像品質を改善し、結果として画像が臨床的に有用となり、PET検査からの量的情報が正確となる。
【0019】
消滅場所から検出器への経路上でより多くの物質または密度がより高い物質にぶつかるガンマ線は、体のより密度が希薄な部分を通じて移動するガンマ線よりもより吸収されやすいか、またはより散乱(すなわち、減衰)しやすい。このために、デュアルエネルギーX線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)が、ポジトロンの機能としての物質成分および濃度の3次元マップを生成するために使用され得る。様々な物質成分の散乱および減衰特性が知られているなかで、再構成されたCT画像が、ポジトロンの機能としてのガンマ線減衰および散乱断面積(すなわち、減衰マップ/画像および散乱断面積マップ/画像)を決定するために使用され得る。
【0020】
減衰補正なしにサイノグラムから画像が再構成されるとき、密度がより低いエリア(例えば、肺)からのガンマ線は、過度に表され(例えば、実際よりもガンマ線をより多く放出しているかのように見え)、密度がより高い組織は、過小に表される。減衰補正がないとき、再構成された画像は、画像の視覚的外観を損なうだけでなくトレーサー摂取の不正確な定量化を導くアーチファクトの影響を受けやすいであろう。
【0021】
減衰補正を適用するために、減衰マップが生成され、それによってすべてのLORについて患者を通った減衰を決定することができる。例えば、独立型のPET装置において、これは、透過スキャンで行われ得、透過スキャンにおいて、外部のポジトロン源が患者の周囲で回転して、透過したガンマ線の減衰が決定される。組み合わせPET/CTスキャナーにおいて、取得されたCT画像は、PET減衰補正のために使用され得る。すなわち、後述の取得部は、減弱マップを取得する。減弱マップは、例えば対象のCTスキャンに基づく。
【0022】
さらに、ある実施形態において、PETデータについて減衰マップおよび活性分布の両方を同時に得るためにジョイント推定法が使用され得る。
【0023】
減衰マップのように、ポジトロンの機能としての散乱断面積のマップはまた、PET再構成プロセスにおいてバックグラウンド信号を考慮することによって、PET画像の画像品質を改善するために使用され得る。例えば、PET画像は、次の式(1)に従って再構成された画像fを反復して更新することによって、最尤期待値最大化(Maximum-Likelihood Expectation Maximization:ML-EM)法を使用して再構成され得る。すなわち、後述の再構成部は、最尤期待値最大化法を使用して、PETスキャンの反復画像再構成を実行する。
【0024】
【数1】
【0025】
ここで、giは、第i番目のLORにおける測定された計数であって、Hは、システム行列であって、fj kは、第k番目の反復での第j番目のボクセルにおける推定された活性であって、平均バックグラウンド信号は、s_iで示され、これは、偶発イベントおよび散乱イベントによる計数を含む。本明細書に記載される本方法は、RTEを使用することによって、s_iのよりよい(例えば、より速いおよび/またはより少ないノイズの)推定を提供する。
【0026】
上記で導入されたように、散乱は、PET画像再構成において主な劣化要因である。散乱補正のための2つの関連する方法、すなわち、モンテカルロシミュレーションおよびモデルベースSSSそれぞれが欠点を有する。モンテカルロシミュレーションの離散的性質は、それを本質的にノイズにし、多数のモンテカルロシミュレーションを実行することは、かなりの時間、および一般的な産業用途についてそれを実行不可能にするコンピュータ処理を要する。SSSは、比較的速く、PET散乱補正の商用の用途を好ましいアプローチにするが、1回散乱推定のみを含み、それによって、より高次の散乱を無視するため、本質的に不正確である。
【0027】
本明細書に記載される本方法は、RTEアプローチを使用して散乱(すなわち、散乱項s_i)を推定するため、モンテカルロシミュレーションおよびSSS法を超える利点を有する。SSSアプローチと比較して、本明細書に記載される本方法は、それぞれのLORにおける1つの検出器についての合計の散乱およびそれぞれのLORにおける両方の2つの検出器についての合計の散乱の両方を含む、より正確な散乱推定を提供する。MCアプローチと比較して、本明細書に記載される本方法は、より速い散乱推定およびより低いノイズを実現する。
【0028】
ここで、同様の参照数字がいくつかの図全体を通して同一のまたは対応する部分を示す図を参照すると、図1および図2は、矩形の検出器モジュールとしてそれぞれ構成された多数のガンマ線検出器(Gamma-Ray Detector:GRD)(例えば、GRD1、GRD2からGRDNまで)を含むPET装置800を示す。一実施形態によると、検出器リングは40個のGRDを含む。別の実施形態において、48個のGRDがあり、より多くの数のGRDが、PET装置800についてのより大きな口径サイズを形成するために使用される。GRDは、光検出器によって検出されるシンチレーション光子に(例えば、光学、赤外線、および紫外線波長で)ガンマ線を変換するためのシンチレーター結晶アレイを含む。
【0029】
それぞれのGRDは、ガンマ放射線を吸収してシンチレーション光子を放出する、個々の検出器結晶の2次元アレイを含むことができる。シンチレーション光子は、光電子倍増管(PhotoMultiplier Tube:PMT)の2次元アレイによって検出され得、PMTはまた、GRDに配置される。導波路は、検出器結晶のアレイとPMTとの間に配置され得る。さらに、それぞれのGRDは、様々なサイズの多数のPMTを含むことができ、それぞれのPMTは、複数の検出器結晶からシンチレーション光子を受け取るように配置される。それぞれのPMTは、シンチレーションイベントが生じるときを示すアナログ信号、および検出イベントを生成するガンマ線のエネルギーを生成することができる。さらに、1つの検出器結晶から放出される光子は、複数のPMTによって検出され得、それぞれのPMTで生成されるアナログ信号に基づいて、検出イベントに対応する検出器結晶は、例えば、アンガーロジックおよび結晶デコーディングを使用して決定され得る。なお、アンガー演算は、結晶と光子検出器との間の1対1対応がある場合は必ずしも必要ではない。
【0030】
図2は、対象OBJから放出されるガンマ線を検出するように配置されたGRDを有するPETシステムの概略図を示す。GRDは、それぞれのガンマ線検出に対応するタイミング、位置、およびエネルギーを測定することができる。一実施形態において、ガンマ線検出器は、図1および図2に示すように、リングで配置される。検出器結晶は、シンチレーター結晶であり得、シンチレーター結晶は、2次元アレイで配置された個々のシンチレーター素子を有し、シンチレーター素子は、任意の既知のシンチレーション物質であり得る。それぞれのシンチレーター素子からの光が複数のPMTによって検出されてシンチレーションイベントのアンガー演算および結晶デコーディングを可能にするようにPMTが配置され得る。
【0031】
図2は、撮像される対象OBJがテーブル816に置かれ、GRD1からGRDNまでのGRDモジュールが対象OBJおよびテーブル816の円周に配置される、PET装置800の配置の例を示す。GRDは、ガントリ840に固定して接続された円形構成要素820に固定して接続され得る。ガントリ840は、PET撮像装置の多くの部品を収容する。PET撮像装置のガントリ840はまた、対象OBJおよびテーブル816が通過することができる開放開口を含み、消滅イベントにより対象OBJから反対方向に放出されるガンマ線は、GRDによって検出され得、タイミングおよびエネルギー情報は、ガンマ線ペアについての同時計数を決定するために使用され得る。
【0032】
図2において、ガンマ線検出データを取得、記憶、処理、および分配するための回路およびハードウェアも示される。回路およびハードウェアは、プロセッサー870と、ネットワークコントローラー874と、メモリー878と、データ取得システム(Data acquisition System:DAS)876とを含む。PET撮像装置はまた、GRDからDAS876、プロセッサー870、メモリー878、およびネットワークコントローラー874へ検出測定結果を伝送するデータチャネルを含む。データ取得システム876は、検出器からの検出データの取得、デジタル化、およびルーティングを制御することができる。一実施形態において、DAS876は、テーブル816の移動を制御する。プロセッサー870は、本明細書で論じるように、(図4で示されて以下に記載される)方法100に従って検出データから画像を再構成することと、検出データの前の再構成処理と、画像データの後の再構成処理とを含む機能を実行する。
【0033】
実施形態によると、図1および図2のPET装置800のプロセッサー870は、本明細書に記載するように、方法100を実行するように構成され得る。プロセッサー870は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、または他のコンプレックスプログラマブルロジックデバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)などの別個のロジックゲートとして実装され得るCPUを含むことができる。FPGAまたはCPLD実装は、VHDL、ヴェリログ、または任意の他のハードウェア記述言語でコード化され得、コードは、FPGAまたはCPLD内の、または別の電子メモリーとしての電子メモリーにおいて直接記憶され得る。
【0034】
プロセッサー870は、取得機能、算出機能、推定機能、再構成機能の各機能を有する。実施形態では、取得機能、算出機能、推定機能、再構成機能にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリー878へ記憶されている。プロセッサー870はプログラムをメモリー878から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサーである。換言すると、各プログラムを読み出した状態のプロセッサーは、図2のプロセッサー870内に示された各機能を有することになる。なお、図2においては単一プロセッサー870にて、取得機能、算出機能、推定機能、再構成機能にて行われる処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサーを組み合わせてプロセッサー870を構成し、各プロセッサーがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つのプロセッサー870が各プログラムを実行する場合であってもよい。別の例として、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、図2において、取得機能、算出機能、推定機能、再構成機能は、それぞれ取得部、算出部、推定部、再構成部の一例である。
【0035】
さらに、メモリー878は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュ(登録商標)ドライブ、RAM、ROM、または当該技術分野で既知の任意の他の電子ストレージであり得る。メモリー878は、ROM、EPROM、EEPROM、またはFLASH(登録商標)メモリーなどの不揮発性であり得る。メモリー878はまた、スタティックまたはダイナミックRAMなどの揮発性であり得、マイクロコントローラーまたはマイクロプロセッサーなどのプロセッサーは、FPGAまたはCPLDとメモリーとの間のインタラクションだけでなく電子メモリーを管理するために提供され得る。
【0036】
あるいは、プロセッサー870におけるCPUは、本明細書に記載される方法100を実行するコンピュータ可読命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行することができ、プログラムは、上述の不揮発性電子メモリーおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュ(登録商標)ドライブもしくは任意の他の既知の記憶媒体のいずれかにおいて記憶されている。さらに、コンピュータ可読命令は、アメリカのインテル(登録商標)のゼノン(登録商標)プロセッサーまたはアメリカのAMD(登録商標)のオプテロン(登録商標)プロセッサーなどのプロセッサー、およびマイクロソフト(登録商標)ヴィスタ(登録商標)、ユニックス(登録商標)、ソラリス(登録商標)、リナックス(登録商標)、アップル(登録商標)、macOS(登録商標)、および当業者に既知の他のオペレーティングシステムなどのオペレーティングシステムと関連して実行する、実用的なアプリケーション、バックグラウンドデーモン、もしくはオペレーティングシステムの構成要素、またはその組み合わせとして提供され得る。さらに、CPUは、協同的に機能して命令を並行して実行する複数のプロセッサーとして実装され得る。
【0037】
一実施形態において、再構成された画像は、ディスプレーに表示され得る。ディスプレーは、LCDディスプレー、CRTディスプレー、プラズマディスプレー、OLED、LED、または当該技術分野で既知の任意の他のディスプレーであり得る。
【0038】
アメリカのインテル株式会社(登録商標)のインテルイーサネット(登録商標)プロネットワークインターフェイスカードなどのネットワークコントローラー874は、PET撮像装置の様々な部品間でインターフェイスすることができる。さらに、ネットワークコントローラー874はまた、外部のネットワークとインターフェイスすることができる。理解され得るように、外部のネットワークは、インターネットなどの公衆ネットワーク、もしくはLANもしくはWANネットワークなどのプライベートネットワーク、またはその任意の組み合わせであり得、また、PSTNまたはISDNサブネットワークを含むことができる。外部のネットワークはまた、イーサネットワーク(登録商標)などの有線であり得るか、またはEDGE、3G、および4Gワイヤレスセルラーシステムを含むセルラーネットワークなどのワイヤレスであり得る。ワイヤレスネットワークはまた、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、または任意の他の既知の通信のワイヤレス形式であり得る。
【0039】
図3Aから図3Eまでは、0次のイベントからより高次のイベント(例えば、2回以上の散乱)までのガンマ線生成、散乱、および検出を視覚的に表す。
【0040】
図3Aは、散乱がないときのガンマ線検出の図を示す。ポジトロン消滅510は、第1の軌道512(A)および第2の軌道512(B)に沿って、略180°離れて放出される2本のガンマ線を生成する。2本のガンマ線はそれぞれ、第1の検出器540(A)および第2の検出器540(B)で検出され、その結果、LORが、2つの検出器間で測定され/得られ得る。
【0041】
対照的に、図3Bは、散乱イベントが第2の軌道512(B)の経路に沿って生じるときの例を示す。そのような散乱イベントは、本明細書において片側の散乱の一例となりうる。この場合、ガンマ線は、角度θで点520で散乱し、散乱したガンマ線は、別の第2の検出器540(B)で検出され、その結果、得られたLORは、ポジトロン消滅510の点を通過しない。
【0042】
図3Cおよび図3Dは、より高次の散乱の場合を示す。図3Cは、2次の散乱を示し、図3Dは3次の散乱を示す。散乱点520は、第2の検出器540(B)によって検出される前にガンマ線が散乱する最後の点である。図3Cにおける散乱点530ならびに図3Dにおける散乱点530(1)および5320(2)は、最後の散乱点の前に生じる散乱点である。
【0043】
図3Eは、ポジトロン消滅で生成されたガンマ線がそれぞれ、点520(A)または点520(B)のいずれかで少なくとも1回散乱する両側の散乱の場合を示す。そして、散乱したガンマ線は、1次の散乱の場合に検出器540(A)および検出器540(B)で検出され得、LORは、その間に形成される。両側散乱イベントに関して、より高次の散乱イベントが可能であることがわかる。
【0044】
図1および図2に関する上述のPET装置800は、図4図5A図5B、および図5Cに関連して上記および以下に記載される方法を実行するために、図3Aから図3Eまでを考慮して構成され得る。
【0045】
図4は、RTEベースアプローチを使用して散乱を推定し、推定された散乱を使用してPET画像を再構成するための方法100のフローチャートである。所与のLORについて図4に関連して記載される方法100が、検出器の所与の数および所与の対象ボリュームのすべてのLORについて適用され得ることがわかる。このように、反復して再構成された画像は、対象ボリュームの1つのLOR、対象ボリュームの所定の領域、または対象ボリュームの全体のボリュームについて推定された散乱に基づいて、反復して生成され得る。
【0046】
所与のLOR(例えば、検出器Aと検出器Bとの間のLOR)について、散乱が次の式(2)のように計算され得る。
【0047】
【数2】
【0048】
ここで、以下の式(3)は、検出器Bについての片側の散乱イベントを表す。
【0049】
【数3】
【0050】
また、以下の式(4)は、検出器Aについての片側の散乱イベントを表す。
【0051】
【数4】
【0052】
上記の式のそれぞれについて、図6Aを参照すると、A,Bはそれぞれ、検出器Aおよび検出器Bであって、Oは、消滅点であって、εAA ')は、511keVでの検出器Aの検出器効率(すなわち、散乱エネルギー)であって、qO(VO)は、Oでの放射濃度(すなわち、放射ボリューム)であって、σAOは、Oと検出器Aとの間の光子線に対して垂直な検出器断面積であって、RAOは、検出器AからOまでの距離であって、μは、511keVでの線形消滅係数である。なお、Rは、検出器AについてRTEから計算された散乱フラックスであって、Rは、検出器BについてRTEから計算された散乱フラックスであって、IABは、Oからの検出器Aおよび検出器Bについての両側の散乱イベントを表し、ここで、Oで生成されて検出器で受け取られた2本のガンマ線のそれぞれは、少なくとも1回散乱する。
【0053】
このことを理解すると、検出器Aと検出器Bとの間の所与のLORについて散乱を決定するために、検出器AおよびBでの散乱フラックスがRTEによって決定されなければならない。このようにして、散乱イベントI、I、およびIABが決定されてもよい。
【0054】
正確な物理モデルでの1次の散乱および多次の散乱フラックスのシミュレーションを含む正確な散乱解は、以下の式(5)のようにRTEを使用して得られる。
【0055】
【数5】
【0056】
ここで、ψ(r(ベクトル記号),E,Ω(ハット記号))は、点r(ベクトル記号)、エネルギーE、および方向Ω(ハット記号)での光子フラックスの比強度であって、E’(Ω'(ハット記号))およびE(Ω(ハット記号))は、フラックスの入射および出射エネルギー(角度)であって、q(r(ベクトル記号),E,Ω(ハット記号))は、放射マップであって、n(ハット記号)は、境界面の法線方向であって、f(r(ベクトル記号),E,E’,Ω(ハット記号),Ω'(ハット記号))は、散乱断面積(PETについて、コンプトン散乱のみが考慮される)であって、μ(r(ベクトル記号),E)は、μマップからの様々な組織の合計の減衰係数である。実施形態において、μマップは、対象のコンピュータ断層撮影画像などのX線撮影画像、または同様のプロービングスキャンから得られ得る。すなわち、取得部は、PETスキャンの初期の画像再構成に対応する減衰マップを取得する。
【0057】
ここで、以下の式(6)で与えられる放射境界条件が適用され得る。
【0058】
【数6】
【0059】
また、RTEベースアプローチの、ある実施形態において、1次の散乱が次の式(7)のようにシミュレートされ得る。
【0060】
【数7】
【0061】
ここで、ψ1(r(ベクトル記号),E,Ω(ハット記号))における下付き文字1は、点r(ベクトル記号)での1次の散乱を示し、Eは、エネルギーであって、Ω(ハット記号)は、光子フラックスについての伝播の方向における単位ベクトルであって、ψ0(r(ベクトル記号)’,E’,Ω')における下付き文字Oは、0次の散乱(すなわち、散乱がないときの光子ビーム)を示す。さらに、消滅点Oは、光子経路についての開始点を示し、f(r’(ベクトル記号),E,E’,Ω(ハット記号),Ω'(ハット記号))は、光子PETについてのコンプトンおよびレイリー散乱の両方を含む散乱断面積である。最後に、変数μ(r(ベクトル記号),E)は、点r(ベクトル記号)およびエネルギーEでの光子についての合計の減衰係数を表す。この積分方程式は、座標r(ベクトル記号)、E、Ω(ハット記号)、r’(ベクトル記号)、E’、Ω'、およびr’’(ベクトル記号)を離散化してから、数値的に解くことによって解かれ得る。
【0062】
1次の散乱ψ1(r(ベクトル記号),E,Ω(ハット記号))に加えて、複数の散乱ψs(r(ベクトル記号),E,Ω(ハット記号))は、より高次の散乱を含むことができる。例えば、複数の散乱は、次の式(8)のように反復して計算され得る。
【0063】
【数8】
【0064】
ここで、右辺の第1の項は、1次の散乱であって、右辺の第2の項(すなわち、積分)は、より高次の散乱を表す。
【0065】
そして、位置r(ベクトル記号)に位置する、検出器での散乱光子場は、次の式(9)のように表現され得る。
【0066】
【数9】
【0067】
特定の実施形態において、被積分関数における散乱断面積項f(r’(ベクトル記号),E,E’,Ω(ハット記号)、Ω'(ハット記号))ならびに光子フラックス項ψs(r’(ベクトル記号),E’,Ω(ハット記号))およびψ0(r’(ベクトル記号),E',Ω'(ハット記号))は、級数展開において最低次の球面調和関数項を使用して展開および表現され得、計算を簡易にする。例えば、第1の散乱フラックスは、次の式(10)によって与えられる離散化された積分式によって計算され得る。
【0068】
【数10】
【0069】
ここで、Ylm*(Ω(ハット記号))は、角度lおよびm次の球面調和関数の複素共役であって、ψ1(r(ベクトル記号),E,l,m)は、球面調和ドメインにおける第1の散乱フラックスの強度である。球面調和関数は、次の式(11)によって与えられ得る。
【0070】
【数11】
【0071】
ここで、Ylm(Ω(ハット記号))は、角度lおよびm次の球面調和関数であって、P_l は、関連するルジャンドル多項式であって、Nは、規格化定数であって、θおよびφはそれぞれ、余緯度および経度を表す。第1の散乱フラックスを近似するために使用される球面調和の数は、点r’(ベクトル記号)での物質成分および散乱断面ならびに散乱のタイプ(例えば、コンプトンおよびレイリー散乱)に依存し得る。
【0072】
さらに、複数の散乱のフラックスは、次の式(12)によって与えられる離散化された積分球面調和式を使用して計算され得る。
【0073】
【数12】
【0074】
ここで、ψs (k+1)(r(ベクトル記号),E,l,m)およびψs k(r’(ベクトル記号),E',l,)はそれぞれ、k+1次およびk次までのすべての散乱イベントを含む複数の散乱についてのフラックスの強度であって、f(r’(ベクトル記号),E,E’,l)は、散乱断面積がルジャンドル多項式を使用して展開されるときの第l番目の係数である。
【0075】
【数13】
【0076】
上記の式(13)を定義することによって、上記で定義された反復の式はψs (k+1)=Aψs k1のようにより簡単に表現され得る。
【0077】
したがって、散乱は、正確な物理モデルを表すために第1の散乱フラックスおよび複数回の散乱フラックスの両方を含めることによって、正確にシミュレートされ得る。
【0078】
ここで、図4に戻って、上述したように、散乱は、方法100のサブプロセス110で推定され得る。言い換えると、所与のLOR115について、R(すなわち、検出器AについてRTEから計算された合計の片側の散乱フラックス)、R(検出器BについてRTEから計算された合計の片側の散乱フラックス)、およびIAB(すなわち、Oからの検出器Aおよび検出器Bについての合計の両側の散乱イベント)が決定され得る。
【0079】
換言すると、実施形態において、算出部は、RTE法を使用して、放射マップ及び減衰マップに基づいてPETスキャン対象の散乱減マップ(散乱フラックス)を計算する。推定部は、RTE法を利用して、放射マップ、減衰マップ及び計算された散乱減マップに基づいて、散乱を推定する。
【0080】
したがって、方法100のサブプロセス110で、所与のLOR115についての1次の散乱フラックスおよびより高次の散乱フラックスがRTEによって推定され得る。すなわち、推定された散乱は、一時の散乱フラックス項およびより高次の散乱フラックス項からの寄与を含む。方法100のサブプロセス110での散乱の推定は、方法100のステップ103で得られた放射マップを用いて行われる。方法100のステップ103で得られた放射マップは、PETスキャンの初期の再構成、またはPETスキャンの「粗い」再構成であってもよい。すなわち、取得部は、PETスキャンの初期の画像再構成に対応する放射マップを取得してもよい。当該放射マップによって、方法100のサブプロセス110で散乱が推定され得る基礎を形成する。さらに、例えば、Rを決定するために、関連する検出器AのそれぞれのLORについて、散乱推定が実行され得ることがわかる。例えば、複数のLORは、検出器Bと、検出器B’と、検出器B’’とを含み得る。同様のプロセスがRについて従われ得る。換言すると、推定部は、検出器のLORごとに、散乱を推定する。方法100のサブプロセス110で実行されるように、散乱推定は、図4に関連してさらに詳細に記載される。
【0081】
方法100のステップ120で、推定された散乱は、生のPETスキャンデータを考慮して、反復の画像再構成または「精細な」画像再構成のために利用される。「精細な」画像再構成時、生のPETスキャンデータは、方法100のステップ107で得られ、PETのためのML-EMアルゴリズムにより変更され得る。すなわち、再構成部は、推定された散乱及び撮影対象のPETスキャンからのデータに基づいて、PETスキャンの反復画像再構成を実行する。
【0082】
基本的に、PETのためのML-EMアルゴリズムについての反復の更新式は、次の式(14)である。
【0083】
【数14】
【0084】
ここで、gは、第i番目のLORにおける測定された計数であって、f は、第k番目の反復での第j番目のボクセルにおける推定された活性である。
【0085】
また、以下の式(15)が成り立つ。
【0086】
【数15】
【0087】
反復の再構成における散乱補正を、上記のSABまたは、上記の式を考慮して推定された散乱sとして含めると、散乱補正を有する反復の更新式は、次の式(16)である。
【0088】
【数16】
【0089】
ここで、gは、第i番目のLORにおける測定された計数であって、Hは、システム行列であって、f は、第k番目の反復での第j番目のボクセルにおける推定された活性であって、SABは、sで示され、これは、偶発イベントおよび散乱イベントによる計数を含む。
【0090】
所与のLOR115についての方法100のサブプロセス110で実行された散乱推定、および方法100のステップ120での反復の(すなわち、「精細な」)画像再構成の上述の計算は、特定の検出器のそれぞれの所与のLOR115について反復して実行され得る。適切な変更例で、上述の方法はまた、検出器リングの複数の検出器の別の検出器のそれぞれのLOR115について反復して実行され得る。このようにして、患者の全体のスキャンボリュームが評価され得、そこから再構成された画像は、散乱のないより正確な画像を提供するために反復して更新され得る。
【0091】
方法100のステップ120の上述の反復の画像再構成を実行して、結果が、方法100のステップ125で再構成された画像を反復して生成するために使用されてもよい。
【0092】
上述のように、散乱は、所与のLOR115について、R(すなわち、検出器AについてRTEから計算された合計の片側の散乱フラックス)、R(検出器BについてRTEから計算された合計の片側の散乱フラックス)、およびIAB(すなわち、Oからの検出器Aおよび検出器Bについての合計の両側の散乱イベント)として決定され得る。すなわち、散乱は、2つの生成されたガンマ線のうち一方のみが散乱する消滅イベントに基づいて、及び生成されたガンマ線の対の両方が散乱する消滅イベントに基づいて推定される。
【0093】
図5A図5B、および図5Cは、RTEベースアプローチを使用する散乱を推定する方法100のサブプロセス110を説明するフローチャートである。図5Aから図5Cまでは、2本のガンマ線、ガンマAおよびガンマBが反対方向に生成される1つの消滅イベントを考慮する。
【0094】
実施形態において、図5Aは、検出器Aと検出器Bとの間のLORに関連して、ガンマBのみが散乱するときの検出器Bで検出される散乱フラックスを推定する。実施形態において、図5Bは、検出器Aと検出器Bとの間のLORに関連して、ガンマAのみが散乱するときの検出器Aで検出される散乱フラックスを推定する。実施形態において、図5Cは、検出器Aと検出器Bとの間のLORに関連して、ガンマAおよびガンマBの両方が散乱するときの検出器Aおよび検出器Bの両方で検出される散乱フラックスを推定する。このようにしてI、I、およびIABが決定されてもよい。
【0095】
図5Aに関して、散乱断面積マップは、消滅イベントの1本のガンマ線のみが散乱するときの所与のLORについて上述のRTE法を使用して計算されてもよい。RTE法に関連して散乱断面積マップとして記載された散乱断面積マップは、以下で散乱源マップと呼ばれる。この用語は、図に示されていることをより視覚的に表している。上記で導入されたように、片側の散乱は、図5Aおよび図5Bを見れば理解され得るが、図5Aおよび図5Bでは、消滅点で生成された1本のガンマ線に様々な散乱源が影響を与える。散乱する消滅イベントの1本のガンマ線は、例えば、検出器Bで検出され得る。したがって、上述のように、Rは、RTEによって検出器Aに対して計算されてもよい。
【0096】
図5Aのサブプロセス110のステップ105Aで、例えば、検出器Aに対する散乱源マップが、RTE法を使用して計算され、サブプロセス110のステップ102で得られた減衰マップおよびサブプロセス110のステップ103で得られた放射マップを用いて行われ、検出器Bで検出された散乱の推定において実装されてもよい。図6Aに例が示されている散乱源マップは、PETスキャンボリュームまたはその断面の離散化に基づいて反復して計算され、ここで、PETスキャンボリュームのそれぞれの離散化された領域は、散乱源と考えてもよい。実施形態において、散乱源マップは、一部、CTスキャンに基づいて決定されてもよい。散乱源マップ(すなわち、散乱断面積マップ)は、次の式(17)及び式(18)で反復して計算され得る。
【0097】
【数17】
【0098】
【数18】
【0099】
反復のプロセスの第1の計算またはステップについて、上述のψs(r’(ベクトル記号),E',Ω’(ハット記号))が0に設定され得る。そして、計算の以後の反復は、所望の精度により決定され得る。
【0100】
サブプロセス110のステップ105Aで検出器Aに対して散乱源マップを計算して、検出器Bで測定され、サブプロセス110のステップ102で得られた減衰マップおよびサブプロセス110のステップ103で得られた放射マップの情報を基に、散乱フラックスは、次の式(19)によって、サブプロセス110のステップ112で計算されてもよい。
【0101】
【数19】
【0102】
上記で計算される検出器Bでの散乱フラックスは、図6Bに示すように、1次およびより高次の散乱フラックスの推定を含む。
【0103】
実施形態によると、検出器Aに対する上述の散乱源マップは、検出器Aが含まれる消滅点Oに起因する複数のLORで使用されてもよい。例えば、検出器B’、検出器B’’、および検出器B’’’での散乱フラックス推定は、LORがAとB’、AとB’’、およびAとB’’’との間で得られ得る上述の散乱源マップにより計算されてもよい。例において、図7に示すように、少なくとも2本のLORが検出器Aの範囲に基づいて存在し得、LORは、検出器Bおよび検出器B’を含む。
【0104】
図5Bに関して、図5Aの上記の散乱源マップと同様の散乱源マップが、消滅イベントの1本のガンマ線のみが散乱するときの所与のLORについて計算されてもよい。そのような片側の散乱は、図6Aおよび図6Bにより理解され得るが、図6Aおよび図6Bでは、消滅点で生成される1本のガンマ線に様々な散乱源が影響を与える。散乱する消滅イベントの1本のガンマ線は、例えば、検出器Aで検出され得る。したがって、上述のように、Rは、RTEによって検出器Bに対して計算されてもよい。
【0105】
図5Bのサブプロセス110のステップ105Bで、例えば、検出器Bに対する散乱源マップが、RTEを使用して計算され、サブプロセス110のステップ102で得られた減衰マップおよびサブプロセス110のステップ103で得られた放射マップの情報を基に、検出器Aで検出された散乱の推定において実装されてもよい。散乱源マップは、PETスキャンボリュームまたはその断面の離散化に基づいて反復して計算され得、ここで、PETスキャンボリュームのそれぞれの離散化された領域は、散乱源と考えてもよい。実施形態において、散乱源マップは、一部、CTスキャンに基づいて決定されてもよい。散乱源マップ(すなわち、散乱断面積)は、次の式(20)及び式(21)で反復して計算され得る。
【0106】
【数20】
【0107】
【数21】
【0108】
反復のプロセスの第1の計算またはステップについて、上述のψs(r’(ベクトル記号),E',Ω'(ハット記号))が0に設定され得る。そして、計算の次の反復は、所望の精度により決定され得る。
【0109】
サブプロセス110のステップ105Bで検出器Bに対する散乱源マップが計算されると、検出器Aで測定され、サブプロセス110のステップ102で得られた減衰マップおよびサブプロセス110のステップ103で得られた放射マップの情報を基に、散乱フラックスは、次の式(22)によって、サブプロセス110のステップ113で計算されてもよい。
【0110】
【数22】
【0111】
上記で計算される検出器Aでの散乱フラックスは、1次およびより高次の散乱フラックスの推定を含む。
【0112】
実施形態によると、検出器Bに対する上述の散乱源マップは、検出器Bが含まれる消滅点Oに起因する複数のLORで使用されてもよい。例えば、検出器A’、検出器A’’、および検出器A’’’での散乱フラックス推定は、LORがBとA’、BとA’’、およびBとA’’’との間で得られ得る上述の散乱源マップにより計算されてもよい。例において、少なくとも2本のLORが検出器Bの範囲に基づいて存在し得、LORは、検出器Aおよび検出器A’を含む。
【0113】
図5Aおよび図5Bで、IおよびIを表す、LORに沿って検出器Aおよび検出器Bで検出される片側の散乱のそれぞれを計算したら、ガンマAおよびガンマBの両方が散乱する両側の散乱イベントが考慮されなければならない。このために、検出器Aおよび検出器Bそれぞれの散乱イベントを表すIABが計算され得る。最初に、散乱源マップが、サブプロセス110のステップ105ABで計算され、サブプロセス110のステップ102で取得された減衰マップおよびサブプロセス110のステップ103で得られた放射マップによって通知され得る。サブプロセス110のステップ105ABで計算された散乱源マップ(すなわち、散乱断面積マップ)は、次の式(23)を使用して計算される等方性源散乱断面積マップであり得る。すなわち、PETスキャンの対象の散乱源マップは、等方性源散乱源マップである。
【0114】
【数23】
【0115】
等方性源散乱断面積マップの例は、図8Aに示される。サブプロセス110のステップ105ABで計算された等方性源散乱断面積マップで、図8Bに示される、検出器Aおよび検出器Bのそれぞれで検出された散乱フラックスは、サブプロセス110のステップ114で推定され、サブプロセス110のステップ102で得られた減衰マップおよびサブプロセス110のステップ103で得られた放射マップによって通知されてもよい。散乱は、次の式(24)及び(25)のそれぞれを使用することによって推定されてもよい。
【0116】
【数24】
【0117】
【数25】
【0118】
検出器Aおよび検出器Bのそれぞれについて上記で計算される散乱フラックスは、1次およびより高次の散乱フラックスの推定を含む。
【0119】
実施形態によると、上述の等方性源散乱断面積マップは、消滅点Oに起因する複数のLORで使用されてもよい。
【0120】
明らかに、多くの変更例および変形例が、上記の教示に照らして可能である。したがって、添付の請求項の範囲内で、本発明が、本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で行われ得ることが理解されるべきである。
【0121】
したがって、前述の議論は、本発明の単なる例示的な実施形態を開示および記載する。当業者によって理解されるように、本発明は、その精神または本質的な特性を逸脱することなく他の特定の形式で実施され得る。したがって、本発明の開示は、例示を意図するものであるが、他の請求項だけでなく本発明の範囲の限定を意図するものではない。本明細書の教示の任意の容易に識別可能な変形を含む本開示は、一部、発明の主題が公共の用に供されないような前述の請求項の用語の範囲を定義する。
【0122】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、画質を向上させることができる。
【0123】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0124】
870 プロセッサー
874 ネットワークコントローラー
876 データ取得システム
878 メモリー
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B