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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】自律型無人潜水機および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/00 20060101AFI20241210BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20241210BHJP
   B63G 8/14 20060101ALI20241210BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20241210BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B63C11/00 B
B63C11/48 D
B63G8/14
G05D1/00
B25J5/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021063183
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158359
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 和行
(72)【発明者】
【氏名】加賀 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】福井 厚市
(72)【発明者】
【氏名】岡矢 紀幸
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-265651(JP,A)
【文献】特開2019-182214(JP,A)
【文献】特開平11-024718(JP,A)
【文献】特開2013-067358(JP,A)
【文献】特開平11-139392(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110539867(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0042342(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010051491(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/00
B63C 11/48
B63G 8/14
G05D 1/00
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中にて延在する水中構造物の上方で前記水中構造物に沿って航走する自律型無人潜水機であって、
艇体と、
前記艇体に設けられ、前記艇体の前後方向に前記艇体を移動可能で且つ少なくとも前記艇体のヨー方向に姿勢変更可能な推進装置と、
前記艇体に設けられ、前記艇体から前斜め下に向かう方向に切断した断面における前記水中構造物の上面の輪郭を検出する輪郭検出器と、
前記艇体に設けられた制御装置および記憶装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記艇体が移動する間、所定間隔おきに前記輪郭検出器により検出された前記輪郭を取得する取得部と、
取得した前記輪郭ごとに、前記輪郭上の特定点を前記記憶装置に記憶する特定部と、
記憶された複数の前記特定点から、前記艇体の現在位置より前方に位置する複数の前記特定点を抽出する抽出部と、
抽出した複数の前記特定点の近似直線を算出する直線算出部と、
前記艇体を上面視して前記艇体の前後方向と前記近似直線とのなす角が小さくなり、且つ、前記艇体を上面視して前記艇体の所定箇所と前記近似直線との距離が小さくなるように、前記推進装置を制御する推進制御部と、を含む、自律型無人潜水機。
【請求項2】
前記水中構造物は、海底パイプライン、および、前記海底パイプラインを覆うカバー構造物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の自律型無人潜水機。
【請求項3】
前記特定部は、前記輪郭の左右方向における中心点であるという条件、および、前記輪郭の上下方向における最上点であるという条件のいずれかを満たす前記輪郭上の点を、前記特定点として特定する、請求項1または2に記載の自律型無人潜水機。
【請求項4】
前記近似直線は、3次元座標系における直線であり、
前記推進装置は、前記艇体のピッチ方向に姿勢変更可能であり、
前記推進制御部は、前記艇体を側面視して前記艇体の前後方向と前記近似直線とのなす角が小さくなるように、前記推進装置を制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の自律型無人潜水機。
【請求項5】
前記艇体の速度を測定する速度測定器を有し、
前記抽出部は、前記速度測定器により測定された速度に応じて、記憶された複数の前記特定点の中から、抽出する複数の前記特定点の範囲または個数を変更する、請求項1~4のいずれか1項に記載の自律型無人潜水機。
【請求項6】
前記艇体から延びるロボットアームを更に備え、
前記抽出部および前記直線算出部は、それぞれ、第1抽出部および第1直線算出部であり、
前記制御装置は、
記憶された複数の前記特定点から、前記艇体の現在位置より後方の複数の前記特定点を、アーム用抽出点として抽出する第2抽出部と、
抽出した複数の前記アーム用抽出点の近似直線を、第2近似直線として算出する第2直線算出部と、
前記ロボットアームの可動範囲内の所定の曲面と前記第2近似直線との交点に、前記ロボットアームの先端部が位置するように、前記ロボットアームを制御するアーム制御部と、を更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の自律型無人潜水機。
【請求項7】
前記所定の曲面は、前記ロボットアームの前記可動範囲を画定する境界面である、請求項6に記載の自律型無人潜水機。
【請求項8】
前記第2抽出部は、前記境界面の内側にある第1特定点、および、前記境界面の外側にあり且つ前記特定部が前記第1特定点を特定する直前に特定した第2特定点を、前記アーム用抽出点として抽出し、
前記第2直線算出部は、前記第1特定点と前記第2特定点とを通過する直線を前記第2近似直線として算出する、請求項7に記載の自律型無人潜水機。
【請求項9】
水中にて延在する水中構造物の上方で前記水中構造物に沿って航走する自律型無人潜水機の動作を制御するための制御プログラムであって、
前記自律型無人潜水機は、艇体と、前記艇体の前後方向に前記艇体を移動可能で且つ少なくとも前記艇体のヨー方向に姿勢変更可能な推進装置と、前記艇体から前斜め下に向かう方向に切断した断面における前記水中構造物の上面の輪郭を検出する輪郭検出器と、記憶装置と、を備え、
前記艇体が移動する間、所定間隔おきに前記輪郭検出器により検出された前記輪郭を取得する取得部と、
取得した前記輪郭ごとに、前記輪郭上の特定点を前記記憶装置に記憶する特定部と、
記憶された複数の前記特定点から、前記艇体の現在位置より前方に位置する複数の前記特定点を抽出する抽出部と、
抽出した複数の前記特定点の近似直線を算出する直線算出部と、
前記艇体を上面視して前記艇体の前後方向と前記近似直線とのなす角が小さくなり、且つ、前記艇体を上面視して前記艇体の所定箇所と前記近似直線との距離が小さくなるように、前記推進装置を制御する推進制御部と、
をコンピュータに機能させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律型無人潜水機、および自律型無人潜水機の動作を制御するための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2には、海底パイプラインに沿って航走しながら当該海底パイプラインを検査する自律型無人潜水機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle。以下、AUVともいう。)が開示されている。このAUVの艇体には、マルチビームソーナや形状把握用レーザなどの検出部が設けられている。AUVの艇体は、検出部により得た情報に基づき海底パイプラインを辿るよう制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-67358号公報
【文献】特開2019-182214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中にて延在する水中構造物をAUVが高速で辿るには、AUVの前方で水中構造物がどのような方向に延在しているかをAUV側で即時に把握してAUVの動作に反映させる必要がある。上記特許文献1、2には、海底パイプラインを辿るためのAUVの制御にマルチビームソーナや形状把握用レーザから得た情報をどのように利用するのかについて、具体的に示されていない。
【0005】
そこで本発明は、水中構造物をAUVが高速で辿ることができるよう、AUVの前方で水中構造物がどのような方向に延在しているかをAUV側で即時に把握してAUVの動作に反映させることができるAUVおよび制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るAUVは、水中にて延在する水中構造物の上方で前記水中構造物に沿って航走するAUVであって、艇体と、前記艇体に設けられ、前記艇体の前後方向に前記艇体を移動可能で且つ少なくとも前記艇体のヨー方向に姿勢変更可能な推進装置と、前記艇体に設けられ、前記艇体から前斜め下に向かう方向に切断した断面における前記水中構造物の上面の輪郭を検出する輪郭検出器と、前記艇体に設けられた制御装置および記憶装置と、を備え、前記制御装置は、前記艇体が移動する間、所定間隔おきに前記輪郭検出器により検出された前記輪郭を取得する取得部と、取得した前記輪郭ごとに、前記輪郭上の特定点を前記記憶装置に記憶する特定部と、記憶された複数の前記特定点から、前記艇体の現在位置より前方に位置する複数の前記特定点を抽出する抽出部と、抽出した複数の前記特定点の近似直線を算出する直線算出部と、前記艇体を上面視して前記艇体の前後方向と前記近似直線とのなす角が小さくなり、且つ、前記艇体を上面視して前記艇体の所定箇所と前記近似直線との距離が小さくなるように、前記推進装置を制御する推進制御部と、を含む。
【0007】
また、本発明の一態様に係る制御プログラムは、水中にて延在する水中構造物の上方で前記水中構造物に沿って航走するAUVの動作を制御するための制御プログラムであって、前記AUVは、艇体と、前記艇体の前後方向に前記艇体を移動可能で且つ少なくとも前記艇体のヨー方向に姿勢変更可能な推進装置と、前記艇体から前斜め下に向かう方向に切断した断面における前記水中構造物の上面の輪郭を検出する輪郭検出器と、記憶装置と、を備え、前記艇体が移動する間、所定間隔おきに前記輪郭検出器により検出された前記輪郭を取得する取得部と、取得した前記輪郭ごとに、前記輪郭上の特定点を前記記憶装置に記憶する特定部と、記憶された複数の前記特定点から、前記艇体の現在位置より前方に位置する複数の前記特定点を抽出する抽出部と、抽出した複数の前記特定点の近似直線を算出する直線算出部と、前記艇体を上面視して前記艇体の前後方向と前記近似直線とのなす角が小さくなり、且つ、前記艇体を上面視して前記艇体の所定箇所と前記近似直線との距離が小さくなるように、前記推進装置を制御する推進制御部と、をコンピュータに機能させる。
【0008】
上記の構成によれば、艇体の前方に位置する水中構造物の複数の特定点の近似直線を算出するという簡易な演算で、AUVの前方で水中構造物がどのような方向に延在しているかをAUV側で即時に把握できる。また、AUV側で把握した情報をAUVの動作に反映させて、艇体を上面視して艇体が水中構造物から離れるのを抑制できる。従って、AUVによる水中構造物の高速トラッキングを実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水中構造物をAUVが高速で辿ることができるよう、AUVの前方で水中構造物がどのような方向に延在しているかをAUV側で即時に把握してAUVの動作に反映させることができるAUVおよび制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るAUVの概略側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るAUVの概略上面図である。
図3図1に示すAUVの制御系統の構成を示すブロック図である。
図4】自律航走処理の流れを示すフローチャートである。
図5】(a)は、輪郭検出器により検出されたデータの極座標グラフであり、(b)は、(a)に示す極座標グラフを直交座標系に変換した直交座標グラフである。
図6】海底パイプラインと当該海底パイプラインに沿って航走するAUVの概略上面図である。
図7】海底パイプラインと当該海底パイプラインに沿って航走するAUVの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るAUVについて説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係るAUV1の概略側面図であり、図2は、本実施形態に係るAUV1の概略上面図である。本実施形態では、AUV1は、水中にて延在する水中構造物の上方で水中構造物に沿って航走する。
【0013】
水中構造物は、例えば海底パイプラインPである。図1、2には、AUV1の下方で延在する水中構造物として、その下半分が海底Gに埋まった海底パイプラインPが示されている。海底パイプラインPは、水中(海中)または水底(海底)において水平方向に延在している。海底パイプラインPは、その下半分が海底Gに埋まっていたり、海底Gから上方に延びる支持部材により支持されていたりする。
【0014】
海底パイプラインPの大部分は、基本的に水平方向に延びており、一部は水平方向に対して若干傾斜している。この延在方向に対して海底パイプラインPの外表面の垂直な断面は円形である。海底パイプラインPは、延在方向において一様な形状を有する。なお、本願の明細書および特許請求の範囲において、「水」とは、例えば海や湖などAUV1が航走可能な液体を意味しており、例えば「水中」は、海中や湖中などを含む。
【0015】
図1に示すように、AUV1は、艇体2と、艇体2に設けられた推進装置3と、推進装置3を制御する制御装置4を備える。艇体2には、バッテリ(図示せず)が収容されている。
【0016】
艇体2に対して、予め座標系(以下、「AUV座標系」と称する)が設定されている。AUV座標系は、互いに直交する前後軸X1、左右軸X2および上下軸X3を含む。AUV座標系の原点Oは、艇体2の所定の点である。艇体2が水平に直線状に延びる水中構造物に平行に航走する場合、艇体2は、基本的に、AUV座標系の前後軸X1が水中構造物の延在方向に平行となり、AUV座標系の左右軸X2が水平方向に平行となり、AUV座標系の上下軸X3が鉛直方向に平行となるように航走する。本願の明細書および特許請求の範囲において、AUV1の方向の概念は、AUV座標系を基準とした方向である。
【0017】
例えば艇体2は、その前部が水の抵抗の少ない流線型をなしている。
【0018】
推進装置3は、艇体2の前後方向、左右方向および上下方向に艇体2を移動可能で、且つ艇体2のヨー方向およびピッチ方向に姿勢変更可能に構成されている。なお、艇体2のヨー方向とは、AUV座標系の上下軸X3回りの回転方向であり、艇体2のピッチ方向とは、AUV座標系の左右軸X2回りの回転方向である。推進装置3は、複数のスラスタを含む。なお、図面では、艇体2の後部に設けられたスラスタのみ示し、それら以外のスラスタは省略する。
【0019】
制御装置4は、艇体2に収容されている。制御装置4は、艇体2が海底パイプラインPに対して非接触状態でこの海底パイプラインPを辿りながら航走するように推進装置3を制御する。制御装置4は、艇体2に設けられた各種機器から取得したデータに基づき、推進装置3を制御する。制御装置4による推進装置3の制御方法について、詳細は後述する。
【0020】
艇体2には、輪郭検出器5、慣性航法装置6、速度測定器7および記憶装置8が設けられている。
【0021】
輪郭検出器5は、艇体2から前斜め下に向かう方向に切断した断面における少なくとも海底パイプラインPの上面の輪郭を検出する。輪郭検出器5は、艇体2の前部のやや下側部分に設けられている。輪郭検出器5は、例えば、プロファイリングソーナーである。輪郭検出器5は、図2に一点鎖線で示すように上下軸X3に沿って見て音響ビームを放射状(扇形状)に照射して、海底パイプラインPおよび海底Gの上面の輪郭を点群データとして取得する。すなわち、輪郭検出器5は、検出対象の輪郭を線として検出しなくてもよく、輪郭を把握可能な輪郭上の複数の点を検出するものでもよい。
【0022】
輪郭検出器5は、左右軸X2に沿って見たときに、輪郭検出器5によるビームの照射方向が、図1に一点鎖線で示すように、上下軸X3に沿った下向きに対して照射角θの角度をなす前斜め下方向となるように、艇体2に固定されている。例えば照射角θは、20°以上70°以下、好ましくは30°以上45°以下の範囲内における任意の角度である。
【0023】
慣性航法装置6(INS; Inertial Navigation System)は、艇体2の加速度や艇体2の姿勢を検出する。慣性航法装置6は、互いに直交する3軸の各軸の延びる方向への加速度を検出する加速度計と、当該3軸の各軸の回りの角速度を検出するジャイロセンサとを含む。本実施形態において、慣性航法装置6の座標系の原点および3軸は、上述のAUV座標系の原点Oおよび3軸X1,X2,X3にそれぞれ一致している。ただし、慣性航法装置6の座標系の原点および3軸が、上述のAUV座標系の原点Oおよび3軸X1,X2,X3にそれぞれ一致していなくてもよい。
【0024】
速度測定器7は、艇体2の速度を測定する。例えば速度測定器7は、ドップラー速度ログ(DVL; Doppler Velocity Log)である。ドップラー速度ログは、海底Gにいくつかの音響ビームを放射して、海底Gからの反射波または散乱波から対地速度を計測するための装置である。
【0025】
制御装置4は、慣性航法装置6および速度測定器7を用いて、地理座標系(経度,緯度,高度)における艇体2の位置や姿勢を算出する。このため、制御装置4は、AUV座標系の任意の座標を地理座標系の座標に変換可能である。
【0026】
記憶装置8は、艇体2に設けられた各種機器により得られた測定結果や演算結果などを記憶する。記憶装置8は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、光ディスク等である。
【0027】
艇体2の下部からは、ロボットアーム10が延びている。ロボットアーム10は、制御装置4により制御される。また、ロボットアーム10の先端部には、ツール14が設けられている。本実施形態では、艇体2が海底パイプラインPに対して非接触状態で海底パイプラインPに沿って航走する間、ロボットアーム10は、海底パイプラインPにツール14を接触させる、あるいは、海底パイプラインPとツール14との距離が所定の範囲内に収まるように海底パイプラインPにツール14を接近させる。
【0028】
ロボットアーム10は、垂直多関節型のロボットアームである。具体的には、ロボットアーム10は、第1リンク11、第2リンク12、第3リンク13を有する。すなわちロボットアーム10は、3自由度をもつロボットアームである。
【0029】
本実施形態では、第1リンク11は、関節11aにより艇体2に、上下軸X3に平行な第1軸C1回りに回転可能に連結されている。第2リンク12は、関節12aにより第1リンク11に、第1軸C1に垂直な第2軸C2回りに回転可能に連結されている。第3リンク13は、関節13aにより第2リンク12に、第1軸C1および第2軸C2の双方に垂直な第3軸C3回りに連結されている。第3リンク13は、長尺なアーム部材である。ただし、ロボットアーム10の位置や構成はこれに限定されない。例えば、第1リンク11は、第1軸C1は、上下軸X3に平行な直線に対して直交または斜めに交差する方向に延びていてもよい。
【0030】
関節11a,12a,13aには、それぞれ、駆動部11b,12b,13bが設けられている(図3参照)。駆動部11b,12b,13bは、例えばサーボモータである。また、関節11a,12a,13aには、それぞれ、サーボモータの回転角度位置を検出する位置センサが設けられている。制御装置4は、位置センサからの回転角度位置情報に基づき、駆動部11b,12b,13bを制御する。ロボットアーム10の先端部は、ロボットアーム10の基端部よりも後方に位置するように制御される。
【0031】
ツール14は、長尺な第3リンク13の先端部に連結されている。ツール14と第3リンク13の先端部との間に、1以上の関節が介在していてもよい。この場合、ツール14と第3リンク13との間の1以上の関節のうちの1つまたは全部に、制御装置4により制御される駆動部が設けられてもよい。あるいは、ツール14と第3リンク13との間の1以上の関節のいずれにも、駆動部が設けられていなくてもよい。
【0032】
ツール14は、海底パイプラインPを検査またはメンテナンスするための1以上の検査機器を含む。例えばツール14が有する検査機器は、海底パイプラインPの防食処置(例えば防食塗装)の劣化の程度を検査するための防食検査器である。ツール14が有する検査機器は、防食検査器に限定されず、海底パイプラインPの外表面を撮像するためのカメラであってもよいし、例えば超音波を用いて海底パイプラインPの肉厚を検査可能な肉厚検査器であってもよい。
【0033】
海底パイプラインPにツール14が接触しながら艇体2が海底パイプラインPに沿って航走する場合、ツール14は、海底パイプラインPと接触する接触部として車輪などを有していてもよい。
【0034】
図3は、図1に示すAUV1の制御系統の構成を示すブロック図である。制御装置4は、推進装置3、輪郭検出器5、慣性航法装置6、速度測定器7、記憶装置8、およびロボットアーム10に電気的に接続されている。なお、制御装置4は、輪郭検出器5、慣性航法装置6、速度測定器7からデータを直接的に取得しなくてもよい。例えば、輪郭検出器5、慣性航法装置6、速度測定器7により計測されたデータは、記憶装置8に記憶されてもよく、制御装置4は、記憶装置8を介して輪郭検出器5、慣性航法装置6、速度測定器7から間接的に取得してもよい。
【0035】
制御装置4は、ハードウェア面において、例えば、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ及びI/Oインターフェース等を有する。また、制御装置4は、機能面において、取得部31、特定部32、第1抽出部33、第1直線算出部34、推進制御部35、第2抽出部36、第2直線算出部37およびアーム制御部38を有する。取得部31、特定部32、第1抽出部33、第1直線算出部34、推進制御部35、第2抽出部36、第2直線算出部37およびアーム制御部38は、不揮発性メモリに記憶された制御プログラムに基づいて、プロセッサ(コンピュータ)が揮発性メモリを用いて演算処理することで実現される。
【0036】
(自律航走処理)
取得部31、特定部32、第1抽出部33、第1直線算出部34、推進制御部35は、AUV1が海底パイプラインPを辿るための自律航走処理を実行する。自律航走処理について、自律航走処理の流れを示す図4を参照して説明する。
【0037】
取得部31が、艇体2が移動する間、所定間隔おきに輪郭検出器5により検出された輪郭を取得する(ステップS1)。取得部31が輪郭を取得する間隔は、予め定めた時間間隔(例えば数十ミリ秒)でもよいし、艇体2が航走する予め定めた距離間隔でもよい。取得部31は、複数の輪郭を取得する所定間隔を、AUV1の速度に応じて変更してもよい。
【0038】
図5(a)は、輪郭検出器5により検出されたデータの極座標グラフである。図5(a)において、横軸は、音響ビームの照射口を通過する左右軸X2に垂直な面に対する音響ビームの角度αであり(図2も参照)、縦軸は、音響ビームの照射口から反射面(すなわち海底Gまたは海底パイプラインPの上面)までの距離である。また、図5(b)は、図5(a)に示す極座標グラフを直交座標系に変換した直交座標グラフである。取得部31は、輪郭検出器5から直交座標系データを取得し、AUV座標系に変換する。
【0039】
その後、特定部32が、取得部31が取得した輪郭ごとに、輪郭上の特定点を記憶装置8に記憶する(ステップS2)。本実施形態では、特定部32は、海底パイプラインPの輪郭の上下方向における最上点であるという条件を満たす輪郭上の点を、特定点として特定する。
【0040】
本実施形態では、特定部32は、海底パイプラインPおよび海底Gの上面の輪郭を点群データのうち、図2に二点鎖線で示すように、最小二乗法を使用して、海底パイプラインPの上面の輪郭を構成すると推定される点群で近似される楕円を抽出する。そして、特定部32は、抽出した楕円の最上点の位置座標を特定点の位置として算出する。
【0041】
特定部32による海底パイプラインPの輪郭の最上点の特定方法は、特に限定されない。特定部32は、最小二乗法の代わりにハフ変換を使用して楕円を抽出してもよい。また、ハフ変換または最小二乗法を使用した楕円抽出のほか、テンプレートマッチングにより海底パイプラインPの輪郭および最上点を算出してもよい。
【0042】
海底パイプラインPの輪郭の最上点を特定点として特定した後、特定部32は、AUV座標系の特定点の座標を、地理座標系の座標に変換して、記憶装置8に記憶する。こうして、所定間隔おきに1つの特定点が記憶装置8に随時記憶されていく。
【0043】
第1抽出部33が、記憶された複数の特定点(すなわち複数の特定点の位置座標)から、艇体2の現在位置(例えばAUV座標系における原点Oの位置)より前方に位置する複数の特定点を抽出する(ステップS3)。
【0044】
図6は、海底パイプラインPと当該海底パイプラインPに沿って航走するAUV1の概略上面図である。図6には、海底パイプラインPにおいて、特定部32が特定した特定点Xs-3,Xs-2,Xs-1,Xs,…,Xt-3,Xt-2,Xt-1,Xtが示されている。なお、艇体2の現在位置より前方に位置する特定点には、tを含む添え字を付し、艇体2の現在位置より後方に位置する特定点には、sを含む添え字を付して表記している。最新に特定された特定点はXtという符合を付している。艇体2の現在位置は、例えばAUV座標系における原点Oの位置として定めてもよいし、ロボットアーム10の基端部の位置として定めてもよい。
【0045】
ステップS3において、第1抽出部33は、輪郭検出器5により検出された最新の輪郭の特定点Xtを含むように抽出する。本実施形態では、第1抽出部33が、速度測定器7により測定された速度に応じて、記憶された複数の特定点の中から、抽出する複数の特定点の個数を変更する。例えば第1抽出部33は、記憶装置8に記憶された複数の特定点から、最新のものから順に、艇体2の速度に応じた個数だけ特定点を抽出する。
【0046】
第1直線算出部34が、抽出した複数の特定点の第1近似直線L1を算出する(ステップS4)。第1近似直線L1は、3次元座標系である地理座標系における直線である。図6には、第1直線算出部34により算出される第1近似直線L1も示されている。
【0047】
推進制御部35が、艇体2を上面視して艇体2の前後方向(すなわち前後軸X1)と第1近似直線とのなす角が小さくなり、且つ、艇体2を上面視してAUV座標系における原点Oと第1近似直線L1との距離が小さくなるように、推進装置3を制御する(ステップS5)。
【0048】
図7は、海底パイプラインPと当該海底パイプラインPに沿って航走するAUV1の概略側面図である。ステップS5では、推進制御部35は、艇体2を側面視して艇体2の前後方向(すなわち前後軸X1)と第1近似直線L1とのなす角が小さくなるように、推進装置3を制御する。
【0049】
このようなステップS1~S5が繰り返されることで、AUV1は、海底パイプラインPに沿って自律航走する。
【0050】
(アーム制御処理)
制御装置4は、艇体2が移動する間、海底パイプラインPにツール14を接触させる、あるいは、ツール14と海底パイプラインPとの距離が所定の範囲内に収まるように海底パイプラインPにツール14を接近させるためのアーム制御処理を実行する。アーム制御処理は、取得部31、特定部32、第2抽出部36、第2直線算出部37、アーム制御部38により実行される。以下、アーム制御処理について、図6、7を参照して説明する。
【0051】
アーム制御処理でも、自律航走処理のステップS1、S2と同様、海底パイプラインPの輪郭の取得と、特定点の特定および記憶を行う。つまり、自律航走処理のステップS2において記憶装置7に記憶された特定点が、アーム制御処理でも使用される。
【0052】
第2抽出部36は、ステップS2で記憶された複数の特定点から、艇体2の現在位置より後方の複数の特定点を、アーム用抽出点として抽出する。第2直線算出部37は、抽出した複数のアーム用抽出点の近似直線を、第2近似直線L2として算出する。図6、7には、第2直線算出部37により算出される第2近似直線L2も示されている。第2近似直線L2は、3次元座標系である地理座標系における直線である。
【0053】
本実施形態では、第2抽出部36は、2つの特定点を抽出する。具体的には、第2抽出部36は、ロボットアーム10の可動範囲を画定する境界面Bの内側にある第1特定点Xs、および、境界面Bの外側にあり且つ特定部32が第1特定点Xsを特定する直前に特定した第2特定点Xs-1を抽出する。図6、7には、境界面Bが破線で示される。そして、第2直線算出部37は、第1特定点Xsと第2特定点Xs-1とを通過する直線を第2近似直線L2として算出する。
【0054】
アーム制御部38は、境界面Bと第2近似直線L2との交点に、ロボットアーム10の先端部、すなわちツール14が位置するように、ロボットアーム10を制御する。
【0055】
このように、アーム制御処理は、自律航走処理におけるステップS3の第1抽出部33の処理を、第2抽出部36の処理に置き換え、ステップS4の第1直線算出部34の処理を、第2直線算出部37の処理に置き換え、ステップS5の推進制御部35の処理を、アーム制御部38の処理に置き換えたものである。このようなステップが繰り返されることで、海底パイプラインPを検査・メンテナンス可能な位置にツール14を維持できる。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態に係るAUV1では、艇体2の前方に位置する海底パイプラインPの複数の特定点の第1近似直線L1を算出するという簡易な演算で、AUV1の前方で海底パイプラインPがどのような方向に延在しているかをAUV1側で即時に把握できる。また、AUV1側で把握した情報をAUV1の動作に反映させて、艇体2を上面視して艇体2が海底パイプラインPから離れるのを抑制できる。従って、AUV1による海底パイプラインPの高速トラッキングを実現できる。
【0057】
また、本実施形態では、艇体2の前方に位置する海底パイプラインPの複数の特定点の第2近似直線L2を算出し、ロボットアーム10の可動範囲内の所定の曲面Bと第2近似直線L2との交点にロボットアーム10の先端部が位置するように、ロボットアーム10が制御される。このため、簡単な演算で、ロボットアーム10の先端部と水中構造物との距離が一定の範囲内に維持するようロボットアーム10を制御できる。
【0058】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0059】
例えば艇体2が辿る水中構造物は、海底パイプラインPに限定されず、また、水中構造物の形状も断面円形のものに限定されない。艇体2が辿る水中構造物は、例えば、海底パイプラインPを覆うカバー構造物であってもよい。
【0060】
艇体2が辿る水中構造物は、外表面が円形であるものに限定されない。例えば、水中構造物の外表面は、水平な2辺と鉛直な2辺とからなる方形状であってもよい。この場合、特定部32は、輪郭の左右方向における中心点であるという条件を満たす輪郭上の点を、特定点として特定してもよい。特定点は、水中構造物の最上点でなくてもよい。水中構造物が水平な最上面を有する場合、水中構造物における延在方向に垂直な断面において、最上面の左右方向における一端を特定点としてもよい。水中構造物の上面に延在方向に延在する溝を有する場合、溝部分を特定点としてもよい。この場合、特定部32は、テンプレートマッチングにより水中構造物の特定点を算出してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、艇体2が海底パイプラインPに対して非接触状態でこの海底パイプラインPを辿りながら航走したが、艇体2は、水中構造物に対して接触しながら当該水中構造物に沿って航走してもよい。
【0062】
艇体2、ロボットアーム10およびツール14の形状や構成も、上記実施形態で説明されたものに限定されるものではない。また、ロボットアーム10は、艇体2の下部ではなく、艇体2の後部に連結されていてもよい。
【0063】
推進装置3は、複数のスラスタを含まなくてもよく、首振り式の1つのスラスタであってもよい。推進装置3は、艇体2の前後方向、左右方向および上下方向に艇体2を移動可能に構成されていたが、推進装置3は少なくとも前後方向に艇体2を移動可能に構成されていればよい。
【0064】
また、推進装置3は、艇体2のヨー方向およびピッチ方向に姿勢変更可能に構成されていたが、推進装置3は、艇体2の少なくともヨー方向に姿勢変更可能に構成されていればよい。推進制御部35は、艇体2を側面視して艇体2の前後方向(すなわち前後軸X1)と第1近似直線L1とのなす角が小さくするピッチ方向の制御を行わなくてもよい。上記実施形態では、第1近似直線L1および第2近似直線L2は、3次元座標系における直線として算出されたが、例えば地理座標系における高さ方向の次元を除く2次元座標系の直線として算出されてもよい。
【0065】
上記実施形態では、推進制御部35が、艇体2を上面視してAUV座標系における原点Oと第1近似直線L1との距離が小さくなるように推進装置3を制御したが、AUV座標系における原点O以外の艇体2の点と第1近似直線L1との距離が小さくなるように推進装置3を制御してもよい。
【0066】
輪郭検出器5は、プロファイリングソーナーでなくてもよく、艇体2から前斜め下に向かう方向に切断した断面における水中構造物の上面の輪郭を検出する装置であればよい。例えば輪郭検出器5は、音響ビームではなく光ビームを艇体2から前斜め下に向かう方向に放射状に照射するレーザーレンジファインダーであってもよい。
【0067】
速度測定器7は、ドップラー速度ログでなくてもよい。慣性航法装置6が速度測定器7として機能してもよい。すなわち、慣性航法装置6が、検出した艇体2の加速度から艇体2の速度を算出してもよい。
【0068】
上記実施形態では、制御装置4が、慣性航法装置6および速度測定器7を用いて、地理座標系における艇体2の位置を算出したが、地理座標系における艇体2の位置情報を算出するために必要な情報を取得する装置(以下、「座標情報取得装置」)は、これに限定されない。例えば座標情報取得装置は、艇体2に設けられた音響測位装置であってもよい。例えば、制御装置4は、艇体に設けられた音響測位装置を用いて、地理座標系が既知である基準位置に対する艇体2の位置を音響測位してもよい。この場合、AUV1は、座標情報取得装置として速度測定器7を備えなくてもよい。音響測位方式は、特に限定されず、LBL (Long Base Line)、SBL(Short Base Line)、SSBL(Super Short Base Line)のいずれでもよい。基準位置は、海底に予め設置されたトランスポンダの位置でもよいし、艇体2の上方において海上を航行する、GPSを搭載した母船の位置でもよい。
【0069】
上記実施形態では、特定部32は、AUV座標系の特定点の座標を、地理座標系の座標に変換して、記憶装置8に記憶したが、特定部32は、AUV座標系の特定点の座標をそのまま記憶装置8に記憶してもよい。ただし、この場合、記憶した過去の特定点は、AUV1の移動に応じた補正を行ってから近似直線の算出などに用いる必要がある。
【0070】
上記実施形態では、第2直線算出部37が、第1特定点Xsと第2特定点Xs-1とを通過する直線を第2近似直線L2として算出したが、第2近似直線L2の算出方法はこれに限定されない。例えば第2直線算出部37が、第1特定点Xsと第2特定点Xs-1とを含む3つ以上の特定点の近似直線を第2近似直線L2として算出してもよい。
【0071】
アーム制御部38は、ロボットアーム10の可動範囲を画定する境界面Bと第2近似直線L2との交点に、ロボットアーム10の先端部が位置するように、ロボットアーム10を制御したが、アーム制御部38は、ロボットアーム10の可動範囲内の別の曲面と第2近似直線L2との交点に、ロボットアーム10の先端部が位置するように、ロボットアーム10を制御してもよい。ロボットアーム10は4以上の自由度をもつロボットアームでもよい。
【0072】
前記水中構造物は、海底パイプライン、および、前記海底パイプラインを覆うカバー構造物のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0073】
前記特定部は、前記輪郭の左右方向における中心点であるという条件、および、前記輪郭の上下方向における最上点であるという条件のいずれかを満たす前記輪郭上の点を、前記特定点として特定してもよい。この構成によれば、上面視したときの水中構造物の中心線上に特定点を設定しやすい。
【0074】
前記近似直線は、3次元座標系における直線であり、前記推進装置3は、前記艇体のピッチ方向に姿勢変更可能であり、前記推進制御部は、前記艇体を側面視して前記艇体の前後方向と前記近似直線とのなす角が小さくなるように、前記推進装置3を制御してもよい。この構成によれば、艇体を側面視したときの艇体の進む向きを、艇体の前方の水中構造物の延在方向に近づけることができる。このため、艇体を側面視して、艇体が水中構造物に対して近づきすぎたり離れすぎたりすることを抑制できる。
【0075】
AUV1は、前記艇体の速度を測定する速度測定器を有し、前記抽出部は、前記速度測定器により測定された速度に応じて、記憶された複数の前記特定点の中から、抽出する複数の前記特定点の範囲または個数を変更してもよい。この構成によれば、艇体が水中構造物から離れるのを抑制するのに適した近似直線を算出することができる。
【0076】
AUVは、前記艇体から延びるロボットアームを更に備え、前記抽出部および前記直線算出部は、それぞれ、第1抽出部および第1直線算出部であり、前記制御装置は、記憶された複数の前記特定点から、前記艇体の現在位置より後方の複数の前記特定点を、アーム用抽出点として抽出する第2抽出部と、抽出した複数の前記アーム用抽出点の近似直線を、第2近似直線として算出する第2直線算出部と、前記ロボットアームの可動範囲内の所定の曲面と前記第2近似直線との交点に、前記ロボットアームの先端部が位置するように、前記ロボットアームを制御するアーム制御部と、を更に含んでもよい。この構成によれば、簡単な演算で、ロボットアームの先端部と水中構造物との距離が一定の範囲内に維持するようロボットアームを制御できる。
【0077】
前記所定の曲面は、前記ロボットアームの前記可動範囲を画定する境界面であってもよい。
【0078】
前記第2抽出部は、前記境界面の内側にある第1特定点、および、前記境界面の外側にあり且つ前記特定部が前記第1特定点を特定する直前に特定した第2特定点を、前記アーム用抽出点として抽出し、前記第2直線算出部は、前記第1特定点と前記第2特定点とを通過する直線を前記第2近似直線として算出してもよい。この構成によれば、水中構造物におけるロボットアーム先端部近傍部分と同じ方向に延びる第2近似直線を算出しやすい。
【0079】
制御プログラムは、記憶器に記憶される。前記記憶器は、コンピュータに内蔵または外付けされる読み書き可能または読み取り可能な装置であり、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、光ディスク等を用いることができる。前記記憶器に記憶されたプログラムは、前記記憶器が直接接続されるコンピュータにおいて実行されてもよいし、前記記憶器とネットワーク(例えば、インターネット)を介して接続されたコンピュータにおいてダウンロードされて実行されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 :AUV(自律型無人潜水機)
2 :艇体
3 :推進装置
4 :制御装置
5 :輪郭検出器
6 :慣性航法装置
7 :速度測定器
8 :記憶装置
10 :ロボットアーム
31 :取得部
32 :特定部
33 :第1抽出部
34 :第1直線算出部
35 :推進制御部
36 :第2抽出部
37 :第2直線算出部
38 :アーム制御部
P :海底パイプライン
G :海底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7