(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】水平維持装置
(51)【国際特許分類】
B66F 17/00 20060101AFI20241210BHJP
B66F 7/10 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
B66F17/00 E
B66F7/10
(21)【出願番号】P 2021068499
(22)【出願日】2021-04-14
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000235163
【氏名又は名称】範多機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509198653
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 泰
(72)【発明者】
【氏名】木下 洋一
(72)【発明者】
【氏名】畠中 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 康正
(72)【発明者】
【氏名】石川 茂
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-061798(JP,A)
【文献】特開2000-190879(JP,A)
【文献】米国特許第09938737(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 17/00
B66F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の作業装置が水平に固定されている状態を保つための水平維持装置において、
建設機械の作業装置が固定され、概略三角形状の板状部材である制御対象板と、
制御対象板の三角形の頂点に相当する位置に配置されるアクチュエータと、
制御対象板の傾斜を計測する計測装置と、
当該計測装置の計測結果に基づいて、前記アクチュエータの伸長量或いは収縮量を決定する制御装置を含み、
当該制御装置は、
前記アクチュエータの何れか一つを中立位置に固定した状態で制御対象板が水平になる様に、他の二つのアクチュエータの仮想的な伸長量或いは収縮量を演算する機能と、
中立位置に固定した状態のアクチュエータ以外の二つのアクチュエータの伸長量或いは収縮量を前記仮想的な伸長量或いは収縮量よりも減少させるため、演算された
前記仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて補正値を演算
し、前記仮想的な伸長量或いは収縮量と前記補正値から
前記中立位置に固定した状態のアクチュエータ及びそれ以外の二つのアクチュエータの各々の伸長量或いは収縮量を演算する機能を備えており、
前記制御装置は、水平維持制御により伸長或いは収縮したアクチュエータを、同時に、同方向に、同一距離だけ、1回或いは複数回、伸長或いは収縮する機能を有していることを特徴とする水平維持装置。
【請求項2】
建設機械の作業装置が水平に固定されている状態を保つための水平維持装置において、
建設機械の作業装置が固定され、概略三角形状の板状部材である制御対象板と、
制御対象板の三角形の頂点に相当する位置に配置されるアクチュエータと、
制御対象板の傾斜を計測する計測装置と、
当該計測装置の計測結果に基づいて、前記アクチュエータの伸長量或いは収縮量を決定する制御装置を含み、
当該制御装置は、
前記アクチュエータの何れか一つを中立位置に固定した状態で制御対象板が水平になる様に、他の二つのアクチュエータの仮想的な伸長量或いは収縮量を演算する機能と、
中立位置に固定した状態のアクチュエータ以外の二つのアクチュエータの伸長量或いは収縮量を前記仮想的な伸長量或いは収縮量よりも減少させるため、演算された前記仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて補正値を演算し、前記仮想的な伸長量或いは収縮量と前記補正値から前記中立位置に固定した状態のアクチュエータ及びそれ以外の二つのアクチュエータの各々の伸長量或いは収縮量を演算する機能を備えており、
前記制御装置は、前記建設機械の作業装置を使用しない状態では、全ての前記アクチュエータを中立位置に保つ機能を有していることを特徴とする水平維持装置。
【請求項3】
前記水平維持装置は、建設機械に搭載されている請求項1
、2の何れかの水平維持装置。
【請求項4】
前記制御装置は、最大の仮想的な伸長量と最小の仮想的な収縮量の加算値の1/2の数値を前記補正値とする機能を有している請求項1
~3の何れか
1項の水平維持装置。
【請求項5】
前記制御装置は、何れかのアクチュエータの実際の伸長量或いは収縮量が所定値以下である場合に、全てのアクチュエータにおける伸長量或いは収縮量を所定値だけ増減する機能を有する請求項1~
4の何れか1項の水平維持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばバランスアーム等の揚重装置等の建設機械に関し、特に建設機械の作業装置の水平を維持するための水平維持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械における揚重装置の一例であるバランスアームは、リンク機構と補助動力(エア圧モータや電気モータ等のアクチュエータ)を含み、先端部分に重量物が取り付けられていても僅かな力で当該重量物を移動することが出来て、例えば、工場等で加工機械を支持する等、広範に用いられている(例えば特許文献1参照)。
ここで、揚重装置等の建設機械は、作業装置が水平状態を保たれていないと、例えば揚重機械であるバランスアームであれば主軸が自由回転してしまうため、重量物を吊り下げているバランスアーム先端の位置が安定せず、重量物による負荷のため作業者により当該先端位置を調整することが困難である。
【0003】
建設現場において、揚重装置として例えばバランスアームを用いて、ブロック等の重量物を作業者の少ない労力で移動することが試みられている。
しかし、建設現場では地面の凹凸が激しく、傾斜が不均一であり、いわゆる「足元が不安定な場所」が多いので、バランスアームの水平状態を確保することが出来ず、バランスアームにより重量物を取り扱い、自由に上下旋回移動することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、地面等の不陸が大きく、傾斜が不均一であり、いわゆる「足元が不安定な場所」が多い建設現場においても、バランスアーム等の揚重装置の様な建設機械の作業装置の水平を維持することが出来る水平維持装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水平維持装置(10)は、建設機械(30)の作業装置(例えばバランスアーム20)の基部(21)が水平に固定されている状態を保つための水平維持装置(10)において、
建設機械(30)の作業装置(20)が固定され(例えばバランスアーム20の基部21が固定され)、概略三角形状の板状部材である制御対象板(1)と、
制御対象板(1)の三角形の頂点に相当する位置に配置されるアクチュエータ(R、L、C:例えばピストン・シリンダ機構、ジャッキ機構などの伸縮機構)と、
制御対象板(1)の傾斜を計測する計測装置(2:X軸傾斜角度センサ2A、Y軸傾斜角度センサ2B)と、
当該計測装置(2)の計測結果に基づいて、前記アクチュエータ(R、L、C)の伸長量或いは収縮量を決定する制御装置(3:コントロールユニット)を含み、
当該制御装置(3)は、
前記アクチュエータ(R、L、C)の何れか一つ(例えばアクチュエータR)を中立位置に固定した状態で制御対象板(1)が水平になる様に、他の二つのアクチュエータ(例えばアクチュエータL、C)の仮想的な伸長量或いは収縮量(仮伸長量或いは仮収縮量)を演算する機能と、
アクチュエータ(R、L、C)の伸長或いは収縮後の位置が中立位置に近接する様に、演算された仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて補正値(F:振り分け補正値)を演算する機能と、
中立位置に固定した状態のアクチュエータ(例えばアクチュエータR)以外の二つのアクチュエータ(例えばアクチュエータL、C)の伸長量或いは収縮量を前記仮想的な伸長量或いは収縮量よりも減少させるため、演算された前記仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて補正値を演算し、前記仮想的な伸長量或いは収縮量と前記補正値から前記中立位置に固定した状態のアクチュエータ(例えばアクチュエータR)及びそれ以外の二つのアクチュエータ(例えばアクチュエータL、C)の各々の伸長量或いは収縮量を演算する機能を備えており、
前記制御装置(3)は、水平維持制御により伸長或いは収縮したアクチュエータを、同時に、同方向に、同一距離だけ、1回或いは複数回、伸長或いは収縮する機能を有していることを特徴としている。
ここで水平維持制御は、制御対象板(1)を複数のアクチュエータ(例えばアクチュエータR、L、C)により水平に支持する制御を意味している。
また、中立位置とは、アクチュエータ(R、L、C)の最大伸縮量(ストローク:例えば120mm)の1/2だけ伸長している状態(例えば60mm伸長させた状態)を意味する文言として、本明細書では用いられている。中立位置であれば、そこから伸長する伸長量及び収縮する収縮量の双方が最大になる。
なお、X軸傾斜角度センサ(2A)、Y軸傾斜角度センサ(2B)については、包括的に「計測装置(2)」と記載する場合がある。
また本発明の平維持装置(10)は、建設機械(30)の作業装置(例えばバランスアーム20)の基部(21)が水平に固定されている状態を保つための水平維持装置(10)において、
建設機械(30)の作業装置(20)が固定され(例えばバランスアーム20の基部21が固定され)、概略三角形状の板状部材である制御対象板(1)と、
制御対象板(1)の三角形の頂点に相当する位置に配置されるアクチュエータ(R、L、C:例えばピストン・シリンダ機構、ジャッキ機構などの伸縮機構)と、
制御対象板(1)の傾斜を計測する計測装置(2:X軸傾斜角度センサ2A、Y軸傾斜角度センサ2B)と、
当該計測装置(2)の計測結果に基づいて、前記アクチュエータ(R、L、C)の伸長量或いは収縮量を決定する制御装置(3:コントロールユニット)を含み、
当該制御装置(3)は、
前記アクチュエータ(R、L、C)の何れか一つ(例えばアクチュエータR)を中立位置に固定した状態で制御対象板(1)が水平になる様に、他の二つのアクチュエータ(例えばアクチュエータL、C)の仮想的な伸長量或いは収縮量(仮伸長量或いは仮収縮量)を演算する機能と、
アクチュエータ(R、L、C)の伸長或いは収縮後の位置が中立位置に近接する様に、演算された仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて補正値(F:振り分け補正値)を演算する機能と、
中立位置に固定した状態のアクチュエータ(例えばアクチュエータR)以外の二つのアクチュエータ(例えばアクチュエータL、C)の伸長量或いは収縮量を前記仮想的な伸長量或いは収縮量よりも減少させるため、演算された前記仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて補正値を演算し、前記仮想的な伸長量或いは収縮量と前記補正値から前記中立位置に固定した状態のアクチュエータ(例えばアクチュエータR)及びそれ以外の二つのアクチュエータ(例えばアクチュエータL、C)の各々の伸長量或いは収縮量を演算する機能を備えており、
前記制御装置(3)は、前記建設機械(30)の作業装置(20)を使用しない状態では、全ての前記アクチュエータ(R、L、C)を中立位置に保つ機能を有していることを特徴としている。
【0007】
本発明において、前記水平維持装置(10)(及びバランスアーム20)は、建設機械(30)に搭載されているのが好ましい。
また、前記制御装置(3)は、最大の仮想的な伸長量(正の数値)に最小の仮想的な収縮量(負の数値)を加算した数値の1/2の数値を前記補正値(F:振り分け補正値)とする機能を有しているのが好ましい。
【0008】
また、前記制御装置(3)は、何れかのアクチュエータ(R、L、C)の実際の伸長量或いは収縮量が所定値(δ:例えば5mm)以下である場合に、全てのアクチュエータ(R、L、C)における伸長量或いは収縮量を所定値(δ)だけ増減する機能を有することが好ましい(最少ストローク補正制御:
図11)。
【0011】
また、上述した本発明の水平維持装置(10:請求項1~6の何れか1項の水平維持装置)を用いた方法では、
建設機械(30)の作業装置(例えばバランスアーム20の基部21)が水平に固定されている状態を保つため、
前記アクチュエータ(R、L、C)の何れか一つ(例えばアクチュエータR)を中立位置に固定した状態で制御対象板(1)が水平になる様に、他の二つのアクチュエータ(例えばアクチュエータL、C)の仮想的な伸長量或いは収縮量(仮伸長量或いは仮収縮量)を演算する仮伸縮量演算工程と、
アクチュエータ(R、L、C)の伸長或いは収縮後の位置が中立位置に近接する様に、演算された仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて補正値(F:振り分け補正値)を演算する補正値演算工程と、
前記仮想的な伸長量或いは収縮量と前記補正値(F)から、前記アクチュエータ(R、L、C)の伸長量或いは収縮量を演算する工程を備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明の方法は、前記水平維持装置(10)及び作業装置(バランスアーム20)を搭載した建設機械(30)で実行されることが好ましい。
【0013】
本発明の方法において、前記補正値演算工程では、
最大の仮想的な伸長量(正の数値)と最小の仮想的な収縮量(負の数値)の加算値の1/2の数値を前記補正値(F:振り分け補正値)に決定するのが好ましい。
【0014】
また本発明の方法において、
何れかのアクチュエータ(R、L、C)の実際の伸長量或いは収縮量が所定値(δ:例えば5mm)以下である場合に、全てのアクチュエータ(R、L、C)における伸長量或いは収縮量を所定値(δ)だけ増減する工程を有することが好ましい(
図11参照)。
【0015】
或いは、制御対象板(1)を水平に支持するため伸長或いは収縮したアクチュエータ(R、L、C)を、同時に、同方向に、同一距離(σ:例えば5mm)だけ、1回或いは複数回、伸長或いは収縮する工程を有することが好ましい(
図12参照)。
【0016】
さらに、前記建設機械(30)の作業装置(20)を使用しない状態では(例えば、バランスアーム20を装着した建設機械30を用いた作業を終了した後、当該建設機械30を格納場所まで移動する場合等)、全ての前記アクチュエータ(R、L、C)を中立位置に保つのが好ましい(
図13参照)。
【発明の効果】
【0017】
上述の構成を具備する本発明によれば、建設機械(30)の作業装置(例えばバランスアーム20の基部21)が水平に固定されている状態を保つため、水平維持装置(10)が建設機械(30)に搭載されており、いわゆる「足場が悪い」現場や、不陸が大きい現場で用いられる場合でも、建設機械(30)の作業装置(20)の基部を水平な状態に保ち、それにより建設機械(30)の作業装置(20)の機能を確実に発揮せしめ、以て作業者は建設機械(30)の作業装置(例えばバランスアーム20)を用いて重量物を吊り下げる等の作業を容易に実行することが出来る。
そして、アクチュエータ(R、L、C)の何れか一つ(例えばアクチュエータR)を中立位置に固定した状態で制御対象板(1)が水平になる様に、他の二つのアクチュエータ(例えばアクチュエータL、C)の仮想的な伸長量或いは収縮量(仮伸長量或いは仮収縮量)を演算し、アクチュエータ(R、L、C)の伸長或いは収縮後の位置が中立位置に近接する様に、演算された仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて補正値(F:振り分け補正値)を演算し、前記仮想的な伸長量或いは収縮量と前記補正値(F)から、前記アクチュエータ(R、L、C)の(実際の)伸長量或いは収縮量を演算するので、複雑な制御を実行する必要がなく、制御装置(3)に大きな負荷を掛けることなく、建設機械(30)の作業装置(例えばバランスアーム20の基部21)及びそれが固定される制御対象板(1)を水平に支持することが出来る。
さらに、演算された仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて補正値(F:振り分け補正値)を演算し、当該補正値(F)から、前記アクチュエータ(R、L、C)の(実際の)伸長量或いは収縮量を演算するので、前記アクチュエータ(R、L、C)の伸長或いは収縮の余裕(マージン)を確保することが出来て、アクチュエータ(R、L、C)の最大ストローク(伸縮量)を超えてしまう様な実現不可能な制御がされることが防止される。
【0018】
本発明において、何れかのアクチュエータ(R、L、C)の実際の伸長量或いは収縮量が所定値(δ:例えば5mm)以下である場合に、全てのアクチュエータ(R、L、C)における伸長量或いは収縮量を所定値(δ)だけ増減すれば、アクチュエータ(R、L、C)の実際の伸長量或いは収縮量が小さ過ぎてしまい、制御が困難な事態に陥ることを防止することが出来る。
また本発明において、制御対象板(1)を水平に支持するため伸長或いは収縮したアクチュエータ(R、L、C)を、同時に、同方向に、同一距離(σ:例えば5mm)だけ、1回或いは複数回、伸長或いは収縮すれば、各々のアクチュエータ(R、L、C)が目標とする伸長量よりも伸長してしまうか、或いは、目標とする収縮量よりも収縮してしまい、アクチュエータ(R、L、C)間で、伸長或いは収縮した後の誤差が生じて、制御対象板(1)が傾斜する(水平な状態に支持できない)ことを防止出来る。
或いは本発明において、前記建設機械(30)の作業装置(20)を使用しない状態では(例えば、バランスアーム20を装着した建設機械(30)を用いた作業を終了した後、当該建設機械(30)を格納場所まで移動する場合等)、全ての前記アクチュエータ(R、L、C)を中立位置に保つようにすれば、地面の不陸による振動等が作用しても、当該振動等がアクチュエータ(R、L、C)及び制御対象板(1)に悪影響を及ぼすことが防止され、建設機械(30)の作業装置(20)に歪み等が生じる恐れが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態を適用した建設機械を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る水平維持装置の平面図である
【
図4】本発明における水平維持制御の原理を示す説明図である。
【
図5】
図4と同様に、水平維持制御の原理を示す説明図である。
【
図6】
図4、
図5と同様に、水平維持制御の原理を示す説明図である。
【
図7】
図4~
図6と同様に、水平維持制御の原理を示す説明図である。
【
図8】実施形態におけるコントロールユニットの機能ブロック図である。
【
図9】実施形態における水平維持制御を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態における水平維持制御を示すフローチャートであって、
図9に続く工程を示すフローチャートである。
【
図11】図示の実施形態における最少ストローク補正制御を示すフローチャートである。
【
図12】図示の実施形態における繰り返し移動制御を示すフローチャートである。
【
図13】図示の実施形態における中立位置保持制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図示の実施形態では、建設機械の作業装置としてバランスアームを例示している。
図1には、本発明の実施形態に係る水平維持装置10を備えたバランスアーム20(建設機械の作業装置)を搭載した建設機械30が示されている。
図1において、作業装置であるバランスアーム20を搭載した建設機械30は無限軌道33を備えており、バランスアーム20は、建設機械30の運転席31の後方(矢印RR方向)に設けられている。バランスアーム20自体は、従来技術と同様に、4節リンク機構とアクチュエータを組み合わせて構成されており、例えばコンクリートブロック等の重量物40が負荷されても、作業員の手動により、その重量物40を容易に移動することが出来る。
水平維持装置10は、制御対象板1、アクチュエータR、L、C、図示しないコントロールユニット3(制御装置、
図2、
図8参照)を含んでいる。
建設機械30の運転席31の後方(矢印RR方向)には平坦な載置部32が設けられ、載置部32には複数のアクチュエータR、L、C(
図1ではアクチュエータL、Cのみを表示)が配置されている。
アクチュエータR、L、Cのロッド先端(本明細書では「アクチュエータ先端」と記載する場合がある)には制御対象板1が取り付けられている。明確には図示されていないが、バランスアーム20の基部21はフランジを介して制御対象板1に固定されている。制御対象板1は、図示の実施形態における制御により水平を維持される対象物であり、概略三角形状の板状部材である。
【0021】
制御対象板1は、建設機械30が作業現場で停車して、固定される際に、複数(図示の実施形態では3本)のアクチュエータR、L、Cにより水平となる様に保持される。
制御対象板1を支持する複数のアクチュエータR、L、Cは、バランスアーム20による作業をしていない場合には、中立位置を保持する。これについては、
図13を参照して後述する。
ここで、「中立位置」なる文言は、アクチュエータR、L、Cの最大伸縮量(ストローク:例えば120mm)の1/2だけ伸長している状態(例えば60mm伸長させた状態)を示す文言として、本明細書で用いられている。中立位置においては、そこから伸長或いは収縮する伸長量或いは収縮量が最大になる。
【0022】
図示の実施形態に係る水平維持装置10の平面図である
図2において、制御対象板1は平面形状が概略三角形状であり、三角形の頂点のそれぞれにアクチュエータR、L、Cが配置されている。換言すれば、制御対象板1の三角形の頂点のそれぞれが、アクチュエータR、L、Cのアクチュエータ先端(ロッド先端)により支持されている。矢印FRは建設機械30(
図1)の前方を示し、矢印RRは建設機械30の後方を示す。
制御対象板1には、前後方向(X軸方向)の傾斜を検出するX軸傾斜角度センサ2Aと、左右方向(Y軸方向)の傾斜を検出するY軸傾斜角度センサ2Bが配置されており、X軸傾斜角度センサ2A及びY軸傾斜角度センサ2Bの検出結果は、それぞれ信号伝達ラインSL1、SL2を介してコントロールユニット3(制御装置)送信される。
図2には、アクチュエータR、C間のX軸方向距離L
Xと、アクチュエータR、L間のY軸方向距離L
Yが示されている。X軸方向距離L
X及びY軸方向距離L
Yは、コントロールユニット3(制御装置)の記憶ブロック3B(
図8)に保存される。
図8を参照して後述するが、コントロールユニット3からアクチュエータR、L、Cへの制御信号は、それぞれ信号伝達ラインSL12-1、SL12-2、SL12-3により送信される。
アクチュエータCは制御対象板1の後端(矢印RR方向端部:
図2では上端)に位置している。
図2の矢印AC方向から視た側面図である
図3において、アクチュエータRは制御対象板1の右端(
図2では左端)に位置しており、アクチュエータLは
図3では左端(
図2では右端)に位置している。
【0023】
アクチュエータR、L、Cは流体圧アクチュエータ(例えば油圧シリンダ)であり、
図3において、建設機械30の載置部32(
図1)に配置されている。そして、アクチュエータR、L、Cの上端は制御対象板1に対して回転自在に軸支されている。
アクチュエータR、L、Cの各々には伸長量或いは収縮量を計測するポテンショメータ4が設けられており、また図示はしないが、倒れ防止用のストッパが取り付けられている。
【0024】
図示の実施形態における水平維持制御において制御対象板1を水平にする概要について、
図4~
図7を参照して説明する。ここで、「水平維持制御」なる文言は、制御対象板1を3本のアクチュエータR、L、Cにより水平に支持するための制御を意味している。
図4~
図7において、説明の平易化のため、具体的な数値を例示して説明する。また、
図4~
図7で示す制御対象板1は水平面に対して傾斜しているため、
図4~
図7ではアクチュエータRとアクチュエータLの横方向位置(
図4~
図7の左右方向位置)が一致していない。
また、
図4~
図6を参照して説明する後述する仮収縮或いは仮伸長では、アクチュエータRの頂点を基準としている。そのため、
図4~
図6では、アクチュエータRは中立位置から伸縮しておらず、中立位置に固定されている。ただし、頂点Rではなく頂点L(アクチュエータL)或いは頂点C(アクチュエータC)を基準として、中立位置から伸縮しない制御も当然に可能である。
【0025】
図4において、傾斜した△RLCは、水平維持制御の対象となる制御対象板1に相当する。上述した通り、制御対象板1の各頂点にアクチュエータR、L、Cの各頂点がそれぞれ配置されているので、
図4~
図7では、△RLCの各頂点を頂点R、頂点L、頂点Cと表現している。
図4~
図7において、上下方向は制御対象板1を支持するアクチュエータR、L、Cの先端の高さ位置を示し、当該高さ位置が変動することは、アクチュエータR、L、Cが伸長或いは収縮することを意味している
図4~
図7で示す例では、水平維持制御を行う直前の状態では、
図4で示す様に、
頂点Lは頂点Rに対して52mm上方にあり、
頂点Cは、頂点RLの中点Mに対して43mm上方にある。
この時点において、アクチュエータR、L、Cはストローク(120mm)の1/2だけ伸びた状態(中立位置)となっている。
【0026】
図4で示す状態から、アクチュエータLを52mm(仮収縮量)だけ収縮すれば、
図5で示す様に、頂点Rと頂点Lは水平になる。前記アクチュエータLの収縮は、
図5では矢印Pで示されている。
アクチュエータLを収縮することにより、頂点R、Lは水平になり、頂点R、Lの中点Mは26mm(=52÷2)だけ下方に移動する。その結果、
図5では、頂点Cは中点M(頂点R、L)に対して69mm(=43mm+26mm)上方に位置する。
【0027】
図5の状態から、アクチュエータCを69mm(仮収縮量)収縮すれば(
図6の矢印Q)、
図6で示す様に、頂点R、L、Cは水平となり、制御対象板1は水平な状態となる。すなわち、アクチュエータLを仮収縮量52mmだけ収縮し、アクチュエータCを仮収縮量69mmだけ収縮すれば、制御対象板1は水平に支持される。
ここで、頂点Rを基準に(頂点Rが動かないように)仮収縮量を決定したので、アクチュエータRの仮伸縮量はゼロである。
そして各アクチュエータの仮伸縮量は、
アクチュエータRは0mm(伸長或いは収縮せず)
アクチュエータLは52mm収縮
アクチュエータCは69mm収縮
である。ここで、アクチュエータLを52mm収縮すると、アクチュエータLにおける収縮のマージン(中立位置から最大60mm)が乏しくなり、好ましくない。また、アクチュエータCを中立位置から69mm収縮することは不可能である。
図示の実施形態においては、仮収縮量或いは仮伸長量だけ伸縮したと仮定した場合に水平に支持される制御対象板1において、実際の収縮量或いは伸長量を(仮収縮量或いは仮伸長量に対して)補正することにより、実際の伸長或いは収縮後のアクチュエータR、L、Cを中立位置に近づけて、伸長或いは収縮の各々についてマージンを持たせている。
【0028】
以下において、伸長量或いは仮伸長量は「正」の数値であり、その逆方向の変位である収縮量或いは仮収縮量は「負」の数値として、表現されている。本明細書では、数値の「正」「負」に拘わらず、絶対値が大きい数値は絶対値が小さい数値より大きく、絶対値が小さい数値は絶対値が大きい数値より小さいものとして記載する。
三本のアクチュエータR、L、Cを等距離(同量)だけ伸縮すれば、△RLC(制御対象板1)が
図6で示す水平な状態を維持しながら、アクチュエータR、L、Cを中立位置に近づけて、伸長或いは収縮の各々についてマージンを持たせることが出来る。
そのため、アクチュエータR、L、Cにおいて、仮伸長量が最小となるアクチュエータにおける仮伸長量(アクチュエータR:仮伸長量が+0mm)と、仮収縮量が最大のアクチュエータにおける仮収縮量(アクチュエータC:仮収縮量-69mm)との和を求め(0+(-69)=-69mm)、当該和の値(-69mm)の1/2の値(-69/2=-34.5mm)を補正値F(振り分け補正値)とする。そして、
図6を参照して説明した三本のアクチュエータ全ての仮伸長量、仮収縮量から振り分け補正値Fを減算した数値を、アクチュエータの伸縮の目標値とする。すなわち、
アクチュエータR→0-(-34.5)=34.5mm(伸長)
アクチュエータL→-52-(-34.5)=-17.5mm(収縮)
アクチュエータC→-69-(-34.5)=-34.5mm(収縮)
図7には、振り分け補正値F(-34.5mm)により補正した各アクチュエータの伸縮の目標値が示されている。
【0029】
ここで、
図4~
図6を参照して説明した際に、「伸長」、「収縮」としたのは、演算上或いは仮想空間上のことであり、実際のアクチュエータR、L、Cは
図4~
図6で示す段階では伸長或いは収縮してはいない。
仮収縮量(或いは仮伸長量)から補正値F(振り分け補正値)を減算して、アクチュエータR、L、Cの実際の伸長量或いは収縮量を演算したならば、
図7で示す様に、当該演算された実際の伸長量或いは収縮量(目標値)に、アクチュエータR、L、Cの各々は伸長或いは収縮する。アクチュエータR、L、Cの仮収縮量或いは仮伸長量ではなく、実際の伸長量或いは収縮量は、
アクチュエータR→34.5mm伸長
アクチュエータL→17.5mm収縮
アクチュエータC→34.5mm収縮
アクチュエータR、L、Cをこの様に伸縮すれは、
図7で示す様に、△RLC(制御対象板1)が水平な状態となり、且つ、伸長或いは収縮後のアクチュエータR、L、Cは中立位置に近くなっており、
図6の状態に比較してマージンを持つ。
【0030】
図4~
図7を参照して概要を説明した水平維持制御を実行するコントロールユニット3(制御装置)の機能ブロック図が
図8である。
図8において、コントロールユニット3は、アクチュエータ先端位置特定ブロック3A、記憶ブロック3B、第1のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3C、第2のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3D、最大仮伸長量/最小仮収縮量決定ブロック3E、仮伸縮量補正値決定ブロック3F、アクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3G、最少ストローク補正ブロック3H、制御対象板繰り返し移動ブロック3I、中立位置保持ブロック3Jを有している。
図8~
図13において、水平維持制御に際しては、
図4~
図7を参照して説明したのと同様に、アクチュエータRの頂点を基準にして(頂点Rを中立位置に固定して)、他のアクチュエータの頂点L、Cの値を演算している。そして、第1のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Cにおける「第1のアクチュエータ」は「アクチュエータL」であり、第2のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Dにおける「第2のアクチュエータ」は「アクチュエータC」である。
【0031】
アクチュエータ先端位置特定ブロック3Aは、X軸傾斜角度センサ2A(
図2参照)からX軸傾斜角度θ
Xの計測信号を信号伝達ラインSL1を介して取得し、Y軸傾斜角度センサ2B(
図2)からY軸傾斜角度θ
Yの計測信号を信号伝達ラインSL2を介して取得する。アクチュエータ先端位置特定ブロック3Aは、記憶ブロック3Bから信号伝達ラインSL3を介して、アクチュエータR、C間のX軸方向距離L
X(
図2参照)と、アクチュエータR、L間のY軸方向距離L
Y(
図2参照)を取得する。
アクチュエータ先端位置特定ブロック3Aは、取得したX軸傾斜角度θ
X、Y軸傾斜角度θ
Y、アクチュエータR、C間のX軸方向距離L
X、アクチュエータR、L間のY軸方向距離L
Yにより、各アクチュエータR、L、Cの先端位置を特定する機能を有している。
図示されていないが、アクチュエータ先端位置特定ブロック3Aは、水平維持制御当初において、アクチュエータR、L、Cが中立位置にある旨の情報を、ポテンショメータ4により、アクチュエータR、L、C側から受信に送信することが可能である。
アクチュエータ先端位置特定ブロック3Aによる各アクチュエータR、L、Cの先端位置を決定したならば、当該先端位置は、信号伝達ラインSL4を介して第1のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Cに送信され、信号伝達ラインSL5を介して第2のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Dに送信される。また、後述するように、各アクチュエータR、L、Cの先端位置を比較ブロック3Lに送信することが好ましい。
【0032】
記憶ブロック3Bは、アクチュエータR、C間のX軸方向距離L
X及びアクチュエータR、L間のY軸方向距離L
Y、その他、水平維持制御に必要或いは有効なデータを記録している。また記憶ブロック3Bには、各制御ブロックによる演算結果、決定結果を記録することが可能である。
記憶ブロック3Bに保存されるデータは、必要に応じて各機能ブロックに送信される。
図8の煩雑化を防止するため、記憶ブロック3Bの信号の授受を示す矢印等の図示は省略する。
【0033】
図8において、第1のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Cは、アクチュエータ先端位置特定ブロック3Aから取得した第1のアクチュエータ(アクチュエータL)、第2のアクチュエータ(アクチュエータC)、アクチュエータRの先端位置情報(X軸傾斜角度θ
X、Y軸傾斜角度θ
Y、アクチュエータR、C間のX軸方向距離L
X、アクチュエータR、L間のY軸方向距離L
Y)に基づき、アクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RLを演算し、決定する機能を有している。
アクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RLは、次式
δ
RL=L
YSinθ
Y
により演算することが出来る(
図9のフローチャートのステップS2参照)。
第1のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3CによるアクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RLの演算結果は、信号伝達ラインSL6を介して最大仮伸長量/最小仮収縮量決定ブロック3Eに送信され、信号伝達ラインSL7を介してアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gに送信される。
【0034】
第2のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Dは、アクチュエータ先端位置特定ブロック3Aから取得した第1のアクチュエータ(アクチュエータL)、第2のアクチュエータ(アクチュエータC)、アクチュエータRの先端位置情報(X軸傾斜角度θ
X、Y軸傾斜角度θ
Y、アクチュエータR、C間のX軸方向距離L
X、アクチュエータR、L間のY軸方向距離L
Y)に基づき、アクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RCを演算し、決定する機能を有している。
アクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RCは、次式
δ
RC=L
XSinθ
X+(1/2)L
YSinθ
Y
により演算することが出来る(
図9のフローチャートのステップS2)。
仮伸縮量δ
RCの演算式の右辺第2項「(1/2)L
YSinθ
Y」は、頂点RLの中点M(
図4~
図7参照)の伸縮量である。
第2のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3DによるアクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RCの演算結果は、信号伝達ラインSL8を介して最大仮伸長量/最小仮収縮量決定ブロック3Eに送信され、信号伝達ラインSL9を介してアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gに送信される。
【0035】
図8において、最大仮伸長量/最小仮収縮量決定ブロック3Eは、第1のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Cから取得したアクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RLの演算結果、第2のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Dより取得したアクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RCの演算結果に基づき、仮伸縮量δ
RL(アクチュエータL)、仮伸縮量δ
RC(アクチュエータC)、仮伸縮量0(基準となるアクチュエータRにおける仮伸縮量)において、最大仮伸長量(「正」の値)及び最小仮収縮量(絶対値が最大の収縮量:「負」の値)を決定する機能を有している。
最大仮伸長量/最小仮収縮量決定ブロック3Eで決定された最大仮伸長量及び最小仮収縮量は、信号伝達ラインSL10を介して仮伸縮量補正値決定ブロック3Fに送信される。
【0036】
仮伸縮量補正値決定ブロック3Fは、最大仮伸長量/最小仮収縮量決定ブロック3Eから取得した最大仮伸長量及び最小仮収縮量に基づき、仮伸縮量の補正値である振り分け補正値Fを決定する機能を有している。
図4~
図7を参照して説明したように、振り分け補正値Fは、制御対象板1が水平であり、且つ、アクチュエータR、L、Cの伸長或いは収縮後の位置が中立位置に近接する様に設定される。そして振り分け補正値Fは、最大仮伸長量/最小仮収縮量決定ブロック3Eで決定された最大仮伸長量及び最小仮収縮量に基づいて演算される。振り分け補正値Fの演算式は、次式
補正値F={(最大仮伸長量)+(最小仮収縮量)}/2
で表される(最大仮伸長量は「正」の値、最小仮収縮量は「負」の値)。
仮伸縮量補正値決定ブロック3Fで決定された振り分け補正値Fは、信号伝達ラインSL11を介してアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gに送信される。
【0037】
アクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gは、第1のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Cから取得したアクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δRLの演算結果と、第2のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Dから取得したアクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δRCの演算結果を、仮伸縮量補正値決定ブロック3Fから取得した振り分け補正値F(仮伸縮量の補正値)に基づき補正し、アクチュエータR、L、Cのそれぞれの実際の伸縮量を演算し、決定する機能を有している。アクチュエータR、L、Cのそれぞれの実際の伸縮量は、次式により演算される。
アクチュエータLの実際の伸縮量
=(アクチュエータLの仮伸縮量δRL)-(振り分け補正値F)
アクチュエータCの実際の伸縮量
=(アクチュエータCの仮伸縮量δRC)-(振り分け補正値F)
アクチュエータRの実際の伸縮量
=(アクチュエータRの仮伸縮量0)-(振り分け補正値F)
アクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gによる実際の伸縮量の決定結果は、信号伝達ラインSL12を介して比較ブロック3Lに送信される。
【0038】
比較ブロック3Lには、アクチュエータ選択位置特定ブロック3Aで決定された各アクチュエータR、L、Cの先端位置が入力される。或いは、比較ブロック3Lには、ポテンショメータ4からの計測結果が入力され、その計測結果に基づいて各アクチュエータR、L、Cの先端位置を決定することも可能である。そして比較ブロック3Lは、伸縮量決定ブロック3Gから入力された実際の伸縮量の決定結果と、アクチュエータ選択位置特定ブロック3Aからの(或いはポテンショメータ4からの計測結果に基づき決定された)各アクチュエータR、L、Cの先端位置とを比較する機能を有している。そして比較ブロック3Lは、当該比較結果を信号伝達ラインSL21を介して伸縮制御信号発生ブロック3Mに送信する機能を有している。
伸縮制御信号発生ブロック3Mは、比較ブロック3Lの比較結果に基づいて、アクチュエータR、L、Cの各々に対する伸長或いは収縮の制御信号を生成し、発信する機能を有している。伸縮制御信号発生ブロック3Mで生成された伸長或いは収縮の制御信号は、信号伝達ラインSL12(SL12-1、SL12-2、SL12-3)を介して各アクチュエータR、L、Cに送信され、各アクチュエータR、L、Cは前記制御信号に従って、伸長或いは収縮動する。
【0039】
図8において、最少ストローク補正ブロック3Hは、アクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gから各アクチュエータR、L、Cの実際の伸縮量の決定結果を、信号伝達ラインSL13を介して取得し、後述する最少ストローク補正制御(
図11参照)を実行する機能を有している。最少ストローク補正ブロック3Hによる補正結果(所定値δ)は、信号伝達ラインSL14を介してアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gに送信される。
また、制御対象板繰り返し移動ブロック3Iは、作業者の手入力による水平AUTOスイッチ5から信号伝達ラインSL15を介して送信される入力信号により、後述する制御対象板繰り返し移動制御(
図12参照)を実行する機能を有している。制御対象板繰り返し移動ブロック3Iにより決定された制御内容(所定値σ)は、信号伝達ラインSL16を介してアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gに送信される
。
中立位置保持ブロック3Jは、信号伝達ラインSL17を介して伝達される操作盤6からの操作信号を受け、後述する中立位置保持制御(
図13参照)を実行する機能を有している。中立位置保持ブロック3Jにより決定された中立位置制御信号は、信号伝達ラインSL18を介してアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gに送信される。
【0040】
図8を参照しつつ、主として
図9、
図10に基づいて、
図4~
図7で概要を説明した水平維持制御の手順を説明する。
図9において、ステップS1では、アクチュエータ先端位置特定ブロック3Aが、記憶ブロック3BからアクチュエータR、C間のX軸方向距離L
X、アクチュエータR、L間のY軸方向距離L
Yを取得すると共に、X軸傾斜角度センサ2AからX軸傾斜角度θ
X、Y軸傾斜角度センサ2BからY軸傾斜角度θ
Yを取得する。上述した様に、アクチュエータR、C間のX軸方向距離L
X、アクチュエータR、L間のY軸方向距離L
Y、X軸傾斜角度θ
X、Y軸傾斜角度θ
Yは、各アクチュエータR、L、Cの先端位置を特定するためのパラメータである。
そしてステップS2に進む。
【0041】
ステップS2では、ステップS1で取得したデータに基づき、アクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RLを演算すると共に、アクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RCを演算する。なお図示の実施形態では、アクチュエータRは基準として中立位置に固定されるため、仮伸縮量は0(ゼロ)である。
上述した様に、アクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RLは、次式
δ
RL=L
YSinθ
Y で演算され、
アクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RCは、次式
δ
RC=L
XSinθ
X+(1/2)L
YSinθ
Y により演算される。仮伸縮量δ
RCの演算式における右辺第2項は頂点RLの中点M(
図4他)の仮伸縮量δ
RMであり、仮伸縮量δ
RMは次式で演算される。
δ
RM=(1/2)L
YSinθ
Y
ステップS2のアクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RL、アクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RCの演算は、それぞれ第1のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3C、第2のアクチュエータ仮伸縮量決定ブロック3Dにより実行される(仮伸縮量演算工程)。
そして、ステップS3に進む。
【0042】
図9のステップS3では、最大仮伸長量/最小仮収縮量決定ブロック3Eにより、ステップS2によるアクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RL、アクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RCの演算結果、及び基準となるアクチュエータRの仮伸縮量(=0mm)の中から、最大仮伸長量及び最小仮収縮量を決定する。そしてステップS4に進む。
ステップS4では、ステップS3で決定した最大仮伸長量及び最小仮収縮量に基づき、仮伸縮量補正値決定ブロック3Fにより、仮伸縮量の補正値である振り分け補正値Fを決定する(補正値演算工程)。
上述した様に、補正値Fは次式により演算される。そしてステップS5に進む。
補正値F={(最大仮伸長量)+(最小仮収縮量)}/2
【0043】
ステップS5では、アクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gにより、ステップS2によるアクチュエータL(第1のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RLの演算結果、アクチュエータC(第2のアクチュエータ)の仮伸縮量δ
RCの演算結果、アクチュエータRの仮伸縮量0に対して、ステップS4で決定した仮伸縮量の補正値(振り分け補正値F)に基づき補正し、各アクチュエータR、L、C(L、C、R)の実際の伸縮量を決定する(実際の伸縮量演算工程)。実際の伸縮量の演算式については
図8のアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gの説明の中で示した通りである。
ステップS5で各アクチュエータR、L、Cの実際の伸縮量が決定したならば、
図10で示す様に、各アクチュエータR、L、Cを作動して制御対象板1を水平に支持するための制御を行う。
なお、ステップS5の工程の後、後述する最少ストローク補正制御(
図11)を実行することが可能である。
【0044】
図9に続く工程を示す
図10において、ステップS11では、
図9のステップS5で決定したアクチュエータLの実際の伸縮量に基づき、アクチュエータLの伸長或いは収縮を液圧制御(例えば油圧制御)する。
図8に関連して上述した様に、アクチュエータ選択位置特定ブロック3Aで決定された各アクチュエータR、L、Cの先端位置に基づいて、コントロールユニット3は、アクチュエータR、L、Cの各々の伸長量或いは収縮量が目標値に到達したか否かを判断することが出来る。或いは、アクチュエータR、L、Cの各々に設けられたポテンショメータ4(
図3)で計測された伸長量或いは収縮量に基づいて、コントロールユニット3は、アクチュエータR、L、Cの各々の伸長量或いは収縮量が目標値に到達したか否かを判断することが出来る。
次のステップS12では、アクチュエータLの伸長量或いは収縮量が所定時間(例えば10秒)以内に目標値になったか否かを判断する。なお、所定時間は図示しないタイマーにより計測される。
ステップS12で、アクチュエータLの伸長量或いは収縮量が所定時間(例えば10秒)以内に目標値になった場合(ステップS12が「Yes」)はステップS13に進み、アクチュエータLの伸長量或いは収縮量が所定時間(例えば10秒)以内に目標値にならない場合(ステップS12が「No」)はステップS14に進む。
ステップS14(アクチュエータLの伸縮量が所定時間以内に目標値にならない場合)では、アクチュエータLの制御に関して何らかの不具合が存在すると判断して、操作盤6(
図8)の図示しないERRランプ(エラーランプ)を点灯させる。
【0045】
一方、ステップS13(アクチュエータLの伸縮量が所定時間以内に目標値になった場合)では、
図9のステップS5で決定したアクチュエータRの実際の伸縮量に基づき、アクチュエータRを油圧制御する。そしてステップS15に進む。
ステップS15では、アクチュエータRの伸長量或いは収縮量が所定時間(例えば10秒)以内に目標値になったか否かを判断する。
ステップS15において、アクチュエータRの伸長量或いは収縮量が所定時間以内に目標値になった場合(ステップS15が「Yes」)はステップS16に進み、目標値にならない場合(ステップS15が「No」)はステップS14に進む。
ステップS14(アクチュエータRの伸長量或いは収縮量が所定時間以内に目標値にならない場合)では、操作盤6(
図8)の図示しないERRランプ(エラーランプ)を点灯させる。
【0046】
ステップS16(アクチュエータRの伸長量或いは収縮量が所定時間以内に目標値になった場合)では、
図9のステップS5で決定したアクチュエータCの実際の伸縮量に基づき、アクチュエータCを油圧制御する。そしてステップS17に進む。
次のステップS17では、アクチュエータCの伸長量或いは収縮量が所定時間(例えば10秒)以内に目標値になったか否かを判断する。
ステップS17において、アクチュエータCの伸長量或いは収縮量が所定時間(例えば10秒)以内に目標値になった場合(ステップS17が「Yes」)は水平維持制御を終了する。
一方、アクチュエータCの伸長量或いは収縮量が所定時間(例えば10秒)以内に目標値にならない場合(ステップS17が「No」)はステップS14に進む。ステップS14(アクチュエータCの伸長量或いは収縮量が所定時間以内に目標値にならない場合)では、操作盤6(
図8)の図示しないERRランプ(エラーランプ)を点灯させる。
ステップS17の工程の後、後述する制御対象板の繰り返し移動制御(
図12)を実行することが可能である。
ここで、伸縮量を制御するアクチュエータの順番は、アクチュエータL、アクチュエータR、アクチュエータCの順番には限定されない。
図10で示すのとは異なる順番でアクチュエータの伸縮量を制御することが可能である。
【0047】
図11を参照して、最少ストローク補正制御について説明する。
アクチュエータR、L、Cの何れかにおいて、制御対象板1を水平にするための伸長量或いは収縮量が所定値δ(例えば5mm)以下である場合には、伸縮量(ストローク)が小さ過ぎて(短すぎて)アクチュエータ制御が困難になる。
図示の実施形態では、その様な難しいアクチュエータ制御を避けるため、アクチュエータ伸長量或いは収縮量がアクチュエータの全ストロークの1/2(
図4~
図7の場合、アクチュエータの全ストロークが120mmであるので、60mm)を超えないという条件で、アクチュエータR、L、Cの伸長量或いは収縮量を所定値δだけ増減するという、一種の補正を実行する。ここで、アクチュエータ収縮は「負」であるため、δmmだけアクチュエータ収縮量の絶対値が増加した場合には、ストロークはδmm減少する。係る制御を、本明細書では「最少ストローク補正制御」と記載する場合がある。
【0048】
図11の最少ストローク補正制御は、最少ストローク補正ブロック3H(
図8)により、例えば
図9のステップS5で各アクチュエータR、L、Cの(実際の)伸縮量が決定された直後に実行される。その際、最少ストローク補正ブロック3Hで決定された補正量(演算結果)はアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gに伝達され、アクチュエータR、L、Cの伸縮量に反映される。
図11において、ステップS21では、
図9のステップS5において決定されたアクチュエータR、L、Cの何れかの伸長量或いは収縮量が、所定値δ(例えば5mm)以下であるか否かを判断する。
ステップS21の判断の結果、アクチュエータR、L、Cの何れかの伸長量或いは収縮量が所定値δ(例えば5mm)以下である場合(ステップS21が「Ye
s」)はステップS22に進む。
一方、アクチュエータR、L、Cの何れの伸長量或いは収縮量も所定値δ(例えば5mm)より大きい場合(ステップS21が「No」)は、
図10のステップS11に進み、
図9のステップS5で決定された各アクチュエータR、L、Cの実際の伸長量或いは収縮量に基づいてアクチュエータの伸縮制御を実行する。
【0049】
図11において、ステップS22(アクチュエータR、L、Cの何れかの伸長量或いは収縮量が所定値δ以下である場合)では、
図9のステップS5で決定されたアクチュエータR、L、Cの伸長量に所定値δを加算した値が、アクチュエータの全ストロークの1/2(図示の実施形態では60mm)を超えず、且つ、
図9のステップS5で決定されたアクチュエータR、L、Cの収縮量から所定値δ(例えば5mm)を減算した値が、アクチュエータの全ストロークの1/2(例えば-60mm)を下回らないかを判断する。
ステップS22において、
図9のステップS5で決定されたアクチュエータR、L、Cの伸長量に所定値δを加算した値がアクチュエータの全ストロークの1/2を超えず、且つ、
図9のステップS5で決定されたアクチュエータR、L、Cの収縮量から所定値δを減算した値がアクチュエータの全ストロークの1/2(-60mm)を下回らない場合(ステップS22が「Yes」)はステップS23に進む。
一方、ステップS22の判断の結果、
図9のステップS5で決定されたアクチュエータR、L、Cの伸長量に所定値δを加算した値がアクチュエータの全ストロークの1/2(60mm)以上であり、或いは、
図9のステップS5で決定されたアクチュエータR、L、Cの収縮量から所定値δを減算した値がアクチュエータの全ストロークの1/2(-60mm)以下の場合(ステップS22が「No」)、ステップS24に進む。
図4~
図7で説明したのと同様に、アクチュエータの伸長は「正」の値であり、アクチュエータの収縮は「負」の値であるため、アクチュエータ収縮量に所定値δを減算すると、その絶対値は増加する。換言すれば、収縮量から所定値δを減算した値の絶対値が、全ストロークの1/2(-60mm)の絶対値より大きくなった場合には、ステップS24に進む。
【0050】
ステップS23(伸長の場合は全ストロークの1/2を超えず、且つ、収縮の場合は全ストロークの1/2を下回らない場合)では、全てのアクチュエータR、L、Cの伸縮量について、
図9のステップS5で決定された伸長量に前記所定値δ(例えば5mm)を加算した値に補正する。或いは
図9のステップS5で決定された収縮量から前記所定値δ(例えば5mm)を減算した値に補正する。所定量δだけ伸縮の絶対値を大きくすることにより、伸長量或いは収縮量も大きくなるので、少ない距離だけ伸長或いは収縮する困難性が緩和する。
ステップS24(伸長の場合は全ストロークの1/2以上であり、収縮の場合は全ストロークの1/2以下の場合)では、アクチュエータR、L、Cの伸長量或いは収縮量は、
図9のステップS5で決定された伸長量或いは収縮量を補正せずに、ステップS5で決定された数値をそのまま採用する。絶対値が全ストロークの1/2以上となる様な伸長或いは収縮はアクチュエータの伸縮制御を不安定にするので、その様なアクチュエータの伸縮制御は回避するのである。
図11の最少ストローク補正制御が終了したら、
図10のステップS11に進み、各アクチュエータR、L、Cの制御を続行する。
【0051】
次に
図12を参照して、繰り返し移動制御について説明する。
伸長或いは収縮しているアクチュエータが停止した際に、いわゆる「オーバーシュート」により、目標とする伸長量よりも伸長してしまうか、或いは、目標とする収縮量よりも収縮してしまう場合がある。図示の実施形態では、3本のアクチュエータR、L、Cをそれぞれ伸長或いは収縮するので、オーバーシュートにより1mm程度の誤差が生じる恐れがある。
オーバーシュートによる誤差を解消するため、図示の実施形態では、水平維持制御により伸長或いは収縮したアクチュエータR、L、Cを、同時に、同方向に、同一距離σ(例えば5mm)だけ、1回或いは複数回、伸長或いは収縮している。3本のアクチュエータを同時に、同方向に、同一距離σだけ移動して、オーバーシュートによる誤差を小さくするためである。
繰り返し移動制御は、水平維持制御により伸長或いは収縮したアクチュエータ(例えば、R、L、C)を、同時に、同方向に、同一距離σだけ、伸長或いは収縮することにより、オーバーシュートによる前記誤差を小さくする制御の意味で、本明細書では用いられている。また、一回のみ伸長或いは収縮する場合も「繰り返し移動制御」に含む。
【0052】
繰り返し移動制御は、制御対象板繰り返し移動ブロック3I(
図8)により、例えば
図10のステップS17が「Yes」と判断された直後に実行される。その際、制御対象板繰り返し移動ブロック3Iにより決定された制御内容はアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gに伝達され、アクチュエータR、L、Cの伸縮量制御に反映される。
図12において、ステップS31では、「繰り返し移動制御」の実行指令が入力されたか否かを判断する。当該指令は、例えば、作業者が操作盤における水平AUTOスイッチ5(
図8)を長押しすることにより発せられる。
「繰り返し移動制御」の実行指令が入力された場合(ステップS31が「Ye
s」)はステップS32に進み、「繰り返し移動制御」の実行指令が入力されない場合(ステップS31が「No」)は繰り返し移動制御は行われない。
【0053】
ステップS32(「繰り返し移動制御」の実行指令が入力された場合)では、「繰り返し移動」の回数tを、「t=1」に設定する。そしてステップS33に進む。
ステップS33では、制御対象板1を水平に支持するため伸長或いは収縮した各アクチュエータR、L、Cを、同時に、同方向に、同一距離σ(例えば5mm)だけ、1回移動させる。その際、アクチュエータR、L、Cについて移動させるので、制御対象板1の水平状態は維持される。オーバーシュートが生じても、アクチュエータR、L、Cにおいて、同時に、同方向に、同一距離σだけ移動するので、オーバーシュートによるアクチュエータR、L、Cの誤差は概略同一となるので、アクチュエータ相互の誤差は極めて小さくなる。
そしてステップS34に進む。ステップS34では、「繰り返し移動」の回数を、
「t=t+1」 に設定する。そしてステップS35に進む。なお、1回のみ伸長或いは収縮する場合には、ステップS34~S36は実行しない。
【0054】
ステップS35では、「繰り返し移動」の回数tが、所定回数(例えば2回)となったか否かを判断する。
ステップS35の判断の結果、「繰り返し移動」の回数tが所定回数(例えば2回)となった場合(ステップS35が「Yes」)、繰り返し移動制御を終了する。
一方、「繰り返し移動」の回数tが所定回数(例えば2回)に満たない場合(ステップS35が「No」)、ステップS36に進む。
ステップS36では、ステップS33における各アクチュエータR、L、Cの移動の方向(伸長か収縮か)が直前の制御サイクルと逆方向となるように、当該移動の方向を設定する。そしてステップS33に戻り、各アクチュエータR、L、Cを直前の制御サイクルにおける移動方向と逆方向に移動させる(伸長或いは収縮させる)。
ステップS33~ステップS36の制御ループは、「繰り返し移動」の回数tが所定回数(例えば2回)となるまで繰り返される。
上述した様に、「繰り返し移動」の回数tは1回のみであっても良い。
【0055】
図13を参照して、中立位置保持制御を説明する。
ここで、中立位置保持制御は、例えばバランスアーム20(
図1)を装着した建設機械30(
図1)を用いた作業を終了した後、当該建設機械30を格納場所まで移動する際に、アクチュエータR、L、Cを中立位置に保つ制御である。アクチュエータ伸縮量を中立位置に保つことで、地面の不陸による振動等が作用してもアクチュエータR、L、C及び制御対象板1には悪影響がなく、バランスアーム20に歪み等が生じる恐れが無くなる。なお中立位置は、上述した様に、アクチュエータR、L、Cの最大伸縮量(全ストローク:例えば120mm)の1/2(例えば60mm)だけ伸長している状態を意味している。
【0056】
中立位置保持制御は、中立位置保持ブロック3Jにより実行される。その際、中立位置保持ブロック3Jによる中立位置制御信号はアクチュエータR、L、Cの伸縮量決定ブロック3Gに伝達されて、アクチュエータR、L、Cが中立位置となる様に伸縮量が決定される。
図13において、ステップS41では、バランスアーム20による作業を実行中であるか否かを判断する。当該判断は例えば作業者が行い、バランスアーム20による作業が実行中でなければ(終了していれば)、作業者が操作盤6(
図8)を操作して、バランスアーム20による作業が行われていない旨を発信する。
ステップS41において、バランスアーム20による作業を実行中の場合(ステップS41が「Yes」)はステップS42に進み、バランスアーム20による作業を実行中でなければ(例えば、終了していれば)(ステップS41が「No」)、ステップS43に進む。
【0057】
ステップS42(バランスアーム20による作業を実行中の場合)では、水平維持制御(
図9~
図12の制御)を実行(継続)する(ステップS41がYesのループ)。
ステップS43(バランスアーム20による作業を実行していない場合)ではアクチュエータR、L、Cがそれぞれ中立位置であるか否かを判断する。ステップS43における中立位置であるか否かの判断は、信号伝達ラインSL23(
図8参照)を介して伝達されるポテンショメータ4からの計測結果に基づき決定することが出来る。或いは、図示されていないが、アクチュエータ先端位置特定ブロック3A(
図8参照)において各アクチュエータR、L、Cの先端位置を特定して、中立位置であるか否かを判断することが可能である。
ステップS43において、アクチュエータR、L、Cがそれぞれ中立位置である場合(ステップS43が「Yes」)はステップS44に進み、アクチュエータR、L、Cのうち一部或いは全てが中立位置ではない場合(ステップS43が「No」)はステップS45に進む。
【0058】
ステップS44(アクチュエータR、L、Cがそれぞれ中立位置である場合)では、アクチュエータR、L、Cを中立位置に保持する。すなわち、現状の中立位置を維持する様に、アクチュエータR、L、Cを制御する。
ステップS45(アクチュエータR、L、Cのうち一部或いは全てが中立位置ではない場合)では、アクチュエータR、L、Cの内、中立位置でないアクチュエータを中立位置にするべく伸縮制御して、アクチュエータR、L、Cの全てを中立位置にせしめる。
【0059】
図示の実施形態によれば、バランスアーム20の基部21が水平に固定されている状態を保つため、水平維持装置10が建設機械30に搭載されており、いわゆる「足場が悪い」現場や、不陸が大きい現場で用いられる場合でも、バランスアーム20の機能を確実に発揮して、重量物を吊り下げる等の作業を容易に実行することが出来る。
そして、コントロールユニット3は、アクチュエータR、L、Cの内、一つのアクチュエータ(例えばアクチュエータR)を中立位置として固定し、その状態で制御対象板1が水平になる様に、アクチュエータR、L間のY軸方向距離L
Y(
図2)、アクチュエータR、C間のX軸方向距離L
X(
図2)、X軸傾斜角度θ
X(
図2)、Y軸傾斜角度θ
Y(
図2)に基づいて、他の二つのアクチュエータL、Cの仮想的な伸長量或いは収縮量を演算し、演算された仮想的な伸長量或いは収縮量に基づいて振り分け補正値Fを演算し、仮想的な伸長量或いは収縮量と、振り分け補正値Fから、アクチュエータR、L、Cの実際の伸長量或いは収縮量を演算している。そのため、複雑な制御を実行する必要がなく、コントロールユニット3に大きな負荷を掛けることなく、バランスアーム20の基部21及びそれが固定される制御対象板1を水平に支持することが出来る。
さらに、振り分け補正値Fを用いてアクチュエータR、L、Cの実際の伸長量或いは収縮量を演算するので、アクチュエータR、L、Cの伸長或いは収縮の余裕(マージン)を確保することが出来ると共に、アクチュエータR、L、Cの最大ストローク(伸縮量)を超えてしまう様な実現不可能な制御がされることが防止される。
【0060】
図示の実施形態において、コントロールユニット3(制御装置)は最少ストローク補正ブロック3Hを備えているので、アクチュエータ機構R、L、Cの実際の伸長量或いは収縮量が小さ過ぎて、伸縮制御が困難になる事態を回避出来る。
また図示の実施形態において、コントロールユニット3(制御装置)は制御対象板繰り返し移動ブロック3Iを備えており、制御対象板1を水平に支持するため伸長或いは収縮したアクチュエータR、L、Cを、同時に、同方向に、同一距離σ(例えば5mm)だけ、1回或いは複数回、伸長或いは収縮するので、各々のアクチュエータR、L、Cのオーバーシュートによる相対誤差を可能な限り小さくして、制御対象板1が傾斜してしまうことを防止出来る。
それに加えて図示の実施形態において、バランスアーム20を使用しない状態では(例えば、バランスアーム20を装着した建設機械30を用いた作業を終了した後、当該建設機械30を格納場所まで移動する場合等)、全てのアクチュエータR、L、Cを中立位置に保つ様にするので、地面の不陸による振動等が作用してもアクチュエータR、L、C及び制御対象板1に悪影響を及ぼすことが防止され、バランスアーム20に歪み等が生じる恐れが無くなる(
図13参照)。
【0061】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では建設機械30の作業装置としてバランスアームを例示したが、バランスアーム以外の揚重機械やその他の作業装置の水平を維持するために本発明を適用することが出来る。
【符号の説明】
【0062】
1・・・制御対象板
2・・・計測装置
2A・・・X軸傾斜角度センサ
2B・・・Y軸傾斜角度センサ
3・・・コントロールユニット(制御装置)
10・・・水平維持装置
20・・・バランスアーム
21・・・バランスアームの基部
30・・・建設機械
R、L、C・・・アクチュエータ
F・・・補正値(振り分け補正値)
δ・・・収縮量の所定値(最少ストローク補正制御)
σ・・・伸縮する同一距離(繰り返し移動制御)