(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】医用画像診断装置及び医用情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
G01T1/161 A
(21)【出願番号】P 2021071206
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2024-02-26
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】エホド エルラン
(72)【発明者】
【氏名】イ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシュヌ バララマン
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-005439(JP,A)
【文献】特開2020-038231(JP,A)
【文献】特開2018-112455(JP,A)
【文献】特開2019-200162(JP,A)
【文献】特開2013-186083(JP,A)
【文献】米国特許第06255655(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0044248(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58 、
G01T 1/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出器結晶にて検出されたガンマ線の第1事象と
、前記複数の検出器結晶にて前記第1事象より後に検出された事象である第2事象とを検出するように構成された処理部を備えた医用画像診断装置であって、
前記処理部は、
前記第2事象が、前記第1事象
の検出時刻から所定の時間長の時間ウインドウ内で且つ前記第1事象の検出位置
の周囲に設定されるゾーン割当内である場合に、前記第2事象を前記第1事象とデマルチプレクサの同一の第1セルに分類し、
前記第2事象が、前記時間ウインドウ及び前記
ゾーン割当の少なくとも一方を満たさない場合に、前記第1セルとは異なる、前記デマルチプレクサの第2セルに分類する、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記複数の検出器結晶に含まれる第1検出器結晶において、第1時間情報と、第1エネルギー情報と、第1位置情報とを含む前記第1事象を検出し、
前記第1事象と、前記第1時間情報と、前記第1エネルギー情報と、前記第1位置情報とを、前記第1セルに割り当て、
前記第1時間情報に基づいて、前記時間ウインドウとして、所定の時間長を有する第1時間ウインドウを決定し、
前記第1位置情報に基づいて、前記
ゾーン割当として、前記第1検出器結晶を含む第1ゾーン割当を決定し、
第2検出器結晶において、第2時間情報と、第2エネルギー情報と、第2位置情報とを含む前記第2事象を検出し、
前記第2時間情報と前記第2位置情報とに基づいて、前記第2事象が前記第1時間ウインドウ内でかつ
前記第1ゾーン割当内で検出されるかどうかを判定し、
前記第2事象が、前記第1時間ウインドウ内で且つ前記第1ゾーン割当内で検出されると判定した場合に、前記第2事象を、前記第1事象の散乱事象として、前記第1事象と共に前記第1セルに分類し、
前記第2事象が、前記第1時間ウインドウ及び前記第1ゾーン割当の少なくとも一方を満たさない場合に、前記第2事象を、1次事象として、前記第2セルに分類する、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記複数の検出器結晶は、複数の検出器ブロックに分類され、
前記処理部は、
前記第1位置情報に基づいて、前記第1検出器結晶を含む第1検出器ブロックの位置を決定し、少なくとも前記第1検出器ブロックを含んで、前記第1検出器ブロックの周囲の領域であってその領域内でさらなる事象を検出して前記第1事象に関連付けることが可能な領域を画定する前記第1ゾーン割当を決定する、請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記第1時間ウインドウに基づいて前記第1セルのアクティビティステータスを判定し、前記第1セルがアクティブな場合に、検出事象を前記第1セルに送るように事象ポインタで指定し、
第3時間情報を含む第3事象が前記第1時間ウインドウの所定の時間長の外で検出されると判定した場合に、前記事象ポインタによる指定を前記第2セルに割り当て、前記デマルチプレクサの前記第1セル内の情報を受信装置に送信する、請求項2又は3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記デマルチプレクサの前記第1セル内の前記情報を含むデータセットに基づいて画像を再構成する、請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記処理部は、
前記第2事象が、前記第1時間ウインドウ及び前記第1ゾーン割当の少なくとも一方を満たさない場合に、
前記第2事象の前記第2時間情報に基づいて、前記所定の時間長を有する第2時間ウインドウを決定し、
前記第2事象の前記第2位置情報に基づいて、前記第2検出器結晶を含む第2検出器ブロックの位置を決定し、少なくとも前記第2検出器ブロックを含んで、かつ前記第2検出器ブロックの周囲の領域であってその領域内でさらなる事象を検出して前記第2事象に関連付けることが可能な領域を画定する第2ゾーン割当を決定する、請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記処理部は、検出器アレイに通信可能に接続され、且つ、前記検出器アレイに実質的に近接して配置され、
新規事象を検出し、前記新規事象が先の検出事象の前記時間ウインドウ内でかつゾーン割当内で検出されたかどうかを判定して、ガンマ線が検出される度に前記新規事象を前記デマルチプレクサのセルに割り当てる、請求項1~6のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記デマルチプレクサは、FPGAと、ASICと、EEPROMとからなるグループの内の少なくとも1つによって具現される、請求項1~7のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記デマルチプレクサの各セルは、前記ガンマ線に関する2つの事象の分類であって
、1次事象後のシングルコンプトン散乱事象を表す分類を行なう、請求項1~8のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記デマルチプレクサの各セルは、前記ガンマ線に関する3つの事象の分類であって
、1次事象後のダブルコンプトン散乱事象を表す分類を行なう、請求項1~8のいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
複数の検出器結晶にて
第1事象より後に検出されたガンマ線の第2事象が、当該ガンマ線の第1事象
の検出時刻から所定の時間長の時間ウインドウ内で且つ前記第1事象の検出位置
の周囲に設定されるゾーン割当内である場合に、前記第2事象を前記第1事象とデマルチプレクサの同一の第1セルに分類し、
前記第2事象が、前記時間ウインドウ及び前記
ゾーン割当の少なくとも一方を満たさない場合に、前記第1セルとは異なる、前記デマルチプレクサの第2セルに分類する
ことを含む、医用情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像診断装置及び医用情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)及び単一光子放射断層撮影(Single Photon Emission Computed Tomography:SPECT)は、放射性トレーサを用いることでヒトや動物の生化学プロセスを撮像可能な機能的イメージングモダリティである。例えば、PETイメージングでは、トレーサ剤が、注射、吸入、または経口摂取によって撮影対象の患者の体内に導入される。投与後、トレーサ剤はその物理的性質および生体分子的性質の作用で患者の身体の特定位置に集中する。トレーサ剤の実際の空間分布と、蓄積領域の強度と、投与から最終的な消滅までの過程の動力学とはいずれも臨床的有意性を有する因子である。
【0003】
上記過程の間に、トレーサ剤に付与されたトレーサがポジトロンを放出する。放出されたポジトロンが電子と衝突すると、対消滅事象が起き、ポジトロンと電子とが結合する。ほとんどの場合、対消滅事象は、ほぼ180度離れて移動する2本のガンマ線(511keV)を発生する。
【0004】
ポジトロン放射断層撮影(PET)において、測定された同時係数は真の同時係数とバックグラウンド信号(例えば、偶発同時係数)との両方を含んでいる。再構成されたPET信号での画像品質を高めるためには、このバックグラウンド信号を推定および解明することが望ましい。該バックグラウンド信号には偶発事象と散乱事象とに基づく計数が含まれている。PETにおけるバックグラウンド信号は主として偶発的な同時計数(偶発とも呼ばれる)と散乱とで構成される。
【0005】
体内の散乱フォトンの大半は検出面で検出されないが、一部の散乱フォトンは検出されて記録され、不正確な同時計数線(line-of-response:LOR)を生じさせる。この散乱事象は、検出器結晶内において、放射を受けた第1結晶から一部のエネルギーが散乱して隣接結晶内に蓄積するときに起こる。ある実施態様では、不正確なLORを生じさせる上記散乱事象の一部をエネルギー弁別によって除去することができている。これは散乱事象を引き起こすコンプトン散乱の間にフォトンのエネルギーの一部が失われるためである。その場合でも、一部の散乱フォトン(散乱)と一部の偶発同時計数(偶発)とが不可避的に記録されるので、バックグラウンド信号には偶発と散乱とが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、散乱事象のリアルタイム判定の精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の医用画像診断装置は、複数の検出器結晶にて検出されたガンマ線の第1事象と第2事象とを検出するように構成された処理部を備える。前記処理部は、前記第2事象が、前記第1事象に基づいて決定される時間ウインドウ内で且つ前記第1事象の検出位置に基づいて決定される位置情報に関する制約を満たす場合に、前記第2事象を前記第1事象とデマルチプレクサの同一の第1セルに分類し、前記第2事象が、前記時間ウインドウ及び前記位置情報に関する制約の少なくとも一方を満たさない場合に、前記第1セルとは異なる、前記デマルチプレクサの第2セルに分類する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、一実施形態に係る、PETスキャナの体軸横断面の概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示の一実施形態に係る、第1結晶の体軸方向ドメインにおける効率の正規化を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、一実施形態に係る、散乱のない状態での検出を示す概略図である。
【
図1D】
図1Dは、一実施形態に係る、単一散乱事象を伴う検出を示す概略図である。
【
図1E】
図1Eは、一実施形態に係る、多重散乱事象を伴う検出を示す概略図である。
【
図1F】
図1Fは、一実施形態に係る、検出器ブロックのゾーン割当を示す概略図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る、アセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る、パラメータ化された複数のセルの内の1セルを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る、事象ストリームの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る、第1事象に関してアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示す図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る、第1事象の第1ゾーン割当を示す概略図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る、事象をトリアージするときのアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示す図である。
【
図8】
図8は、一実施形態に係る、さらなるゾーン割当を示す概略図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に係る、散乱事象の検出時におけるアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。
【
図10】
図10は、一実施形態に係る、散乱事象のゾーン割当を示す概略図である。
【
図11】
図11は、一実施形態に係る、散乱事象の検出時におけるアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。
【
図12】
図12は、一実施形態に係る、散乱事象のゾーン割当を示す概略図である。
【
図13】
図13は、一実施形態に係る、散乱事象の検出時におけるアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。
【
図14】
図14は、一実施形態に係る、散乱事象のゾーン割当を示す概略図である。
【
図15】
図15は、一実施形態に係る、新たな1次事象の検出時におけるアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。
【
図16】
図16は、一実施形態に係る、新たな1次事象のゾーン割当の概略を示す図である。
【
図17】
図17は、一実施形態に係る、検出事象を分類する方法のフローチャートの非限定的一例を示す図である。
【
図18A】
図18Aは、一実施形態に係る、ポジトロン放射断層撮影(PET)スキャナを示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、医用画像診断装置及び医用情報処理方法の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
ある実施形態では、タイムスタンプと位置とに基づく、パラメータ化されたセルベースの循環ソーティングアルゴリズムを備え、エネルギー補正感度と、システム性能と、再構成画像品質とを向上させる医用画像診断装置及び医用情報処理方法について説明する。
【0012】
以下の開示により本明細書の主題の種々の特徴を具現する種々の実施形態(または実施例)が示される。本開示の理解を図るために構成要素と構成との具体例を以下に述べるが、言うまでもなくこれらは単なる例であって限定的なものではない。例えば、後に続く説明での第2形態上の第1形態の形成には、第1、第2の形態が直接接触して形成される実施形態と、第1、第2の形態が直接接触しないようにさらなる形態が第1、第2の形態間に形成される実施形態とが含まれる。また、本開示は種々の実施例で参照数字および/または符号を繰り返して用いている。この繰り返しは簡潔明瞭を図るためのものであり、それ自体は本記載の種々の実施形態および/または構成間の関係を示すものではない。さらに、本明細書において「上」、「下」、「真下」、「下」、「下方」、「上」、「上方」などの空間的関係を示す用語は、図に示したある構成要素または形態の他の構成要素または形態に対する関係を述べる上での説明を容易にするために用いられる。これらの空間的関係を示す用語は、図に示した方位に加えて使用時または動作時の装置の種々の方位をも含むものである。システムの向きは図示以外の向き(90度回転させた向きまたはその他の向き)でもよく、本明細書で用いる空間的関係を示す記述子の意味内容はそれに応じて相応に解釈される。
【0013】
本明細書で述べる種々のステップの記載順は行論を明確にするためのものである。一般にこれらのステップは任意の適当な順で実行可能なものである。さらに、本明細書における種々の形態、技術、構成などはそれぞれ本開示の様々な箇所で記述されるが、それらの概念は互いに独立してまたは組み合わせて実行可能なものである。したがって、本発明は様々な形で具現されかつ様々に解釈され得る。
【0014】
図1Aは、本開示の一実施形態に係る、PETスキャナ100の体軸横断面の概略図である。一実施形態において、PETスキャナ100は、中心軸の周囲にリング状に配列された、ガンマ線を検出するように構成された検出器ブロック130を備えている。PETスキャナ100は、付加的な検出器ブロック130のリングであって該リングの軸沿いに検出器ブロック130が配置されているリングを備えている。さらなるPETスキャナ100の形態を
図18A、18Bに示すが、これについては添付の解説において後述する。ファントムまたはヒトなどの、スキャン対象の被検体110は検出器ブロック130の中央に配置される。
【0015】
図1Bは、本開示の一実施形態に係る、検出器モジュール125を示す概略図である。図示の検出器モジュール125は、平板化して示したリングの1つを上方視で示したものである。検出器モジュール125は複数のサブモジュール120を含む。サブモジュール120は複数の検出器ブロック130を含む。検出器ブロック130は、検出器素子とも呼ばれる複数の検出器結晶105を含む。
【0016】
前述したとおり、ファントムまたはヒトから放出されたポジトロンが電子と衝突すると、対消滅事象が起きてポジトロンと電子とが結合する。ほとんどの場合、この対消滅事象はほぼ180度離れて移動する2本のガンマ線(511keV)を発生する。このガンマ線の一方を単独115と呼ぶ。断層撮影再構成原理によってトレーサの空間時間分布を再構成するために、各検出事象は、そのエネルギー(発生した光の量)、位置、およびタイミング毎に特徴付けられる。前記2本のガンマ線(2つの単独115)を検出し、それらの位置をつなぐ線(すなわち、同時計数線(LOR))を引くことによって、最初の崩壊が起きたと考えられる位置を判定することができる。対消滅事象の位置からほぼ180度離れて移動する2つの単独115となった一組の単独115を対と呼ぶ。
【0017】
図1Cは、本開示の一実施形態に係る、散乱のない状態での検出を示す概略図である。
図1Dは、本開示の一実施形態に係る、単一散乱事象を伴う検出を示す概略図である。
図1Eは、本開示の一実施形態に係る、多重散乱事象を伴う検出を示す概略図である。
【0018】
一実施形態において、単独115が検出器モジュール125に吸収されると、単独115(すなわち、ガンマ線)のエネルギーが第1結晶105aに蓄積される。理想的な検出事象ではそれ以上の散乱は起きず、単独115が入射した第1結晶105aの位置での事象として第1結晶105aに記録される(
図1C)。理想的には、検出器モジュール125内で第1結晶105aに対向する結晶が、対消滅事象の位置からほぼ180度離れて移動する単独115を検出し、適正なLORが決定される。また、理想的には各単独115の検出エネルギーはほぼ511keVと計測される。検出された単独115の位置とエネルギーとに加えて、検出時刻(例えば、タイムスタンプ)が検出事象に伴って記録される。この検出は専ら光電効果に基づく検出と考えられる。
【0019】
しかし、多くの場合、単独115のエネルギーの一部が散乱して(例えば、コンプトン散乱による散乱)、例えば第1結晶105aに隣接した第2結晶105bなどの、他の結晶中に蓄積する(
図1D)。このシナリオでは、第2の特有なエネルギーと、位置と、タイムスタンプとを有する第2検出事象が記録される。この検出はコンプトン効果と光電効果との混合に基づく検出と考えられる。後述するデマルチプレクサの各セルは、検出ガンマ線に関する2つの事象の分類であって、
図1Dに示すような1次事象後のシングルコンプトン散乱事象を表す分類を行なうことができる。単独115の散乱はさらに何度も起こり得る。例えば
図1Eに示したとおり、2つの散乱事象が第1結晶105aから第2結晶105bに対して起こり、さらに第2結晶105bから、例えば第2結晶105bに隣接した第3結晶105cなどの、他の結晶に対して起こる。このシナリオでは、第3の特有なエネルギーと、位置と、タイムスタンプとを有する第3検出事象が記録される。後述するデマルチプレクサの各セルは、検出ガンマ線に関する3つの事象の分類であって、
図1Eに示すような1次事象後のダブルコンプトン散乱事象を表す分類を行なうことができる。
【0020】
図1Fは、本開示の一実施形態に係る、検出器ブロック130のゾーン割当を示す概略図である。
図1Fに示す検出器ブロック130のゾーン割当は、位置情報に関する制約の一例である。一実施形態において、複数の検出器ブロック130を組み合わせてゾーンを形成する。ゾーンのサイズは該ゾーンに分類された検出器ブロック130の数に基づいて調整される。例えば、2つの検出器ブロック130を組み合わせてベースゾーンを形成する(
図1Fに数字「0」で示したゾーン)。さらにこのサイズのゾーンを組み合わせて縦横に拡張された十字形のゾーンを形成する。これを第1拡張ゾーン(
図1Fに数字「1」で示した拡張部分(ベースゾーンも含まれている))とする。同様に、この十字形ゾーンのコーナ部がさらなる組合せにより充填されて第2の拡張ゾーン(
図1Fに数字「2」で示した拡張部分(ベースゾーンと第1拡張ゾーンも含まれている))が形成される。拡張部分はさらに追加し得る。これらゾーンは、検出事象をグループ化して起こり得る全ての散乱事象を取り込めるように形成および調整される。
【0021】
なお、
図1Fにおいては複数の検出器結晶が複数の検出器ブロックに分類される場合を示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。即ち、位置情報に関する制約は、検出器ブロックへの分類と関係なしに設定されてもよい。例えば、第1結晶105aの位置から所定の距離に含まれる複数の検出器結晶で形成されるゾーンを、位置情報に関する制約として設定することとしても構わない。
【0022】
散乱エネルギーの蓄積により事象が破棄されると、単独115の感度が約30%低下し、対の感度が約50%低下する(単独115の効率が2乗される)。ここで述べたとおり、検出器データの複数の事象をタイムスタンプと位置とに基づいてアセンブルすることで一次入射から散乱した「情報」(エネルギー)が回復される。このアセンブルモードによってPET装置のエネルギー補正感度が高められ、ひいては装置性能と画像品質とが向上する。
【0023】
図2は、本開示の一実施形態に係る、アセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。このアセンブルされたデマルチプレクサモジュールはパラメータ化された複数のセル205の周囲に形成される。また、このアセンブルされたデマルチプレクサモジュールは所定数のパラメータ化セル205を含む。
【0024】
図3は、本開示の一実施形態に係る、パラメータ化された複数のセル205の内の1セルを示すブロック図である。パラメータ化セル205は所定の設定に基づいて独自の判断を行うことができる。所定の設定として、タイムウィンドウ、ゾーン割当、および1つのタイムウィンドウまたはゾーン割当内に収集可能な複数の事象などがある。
【0025】
一実施形態において、タイムウィンドウ設定に基づいて、アセンブルされたモジュール内でインスタンス化されたパラメータ化セル205の所定数が計算される。パラメータ化セル205は逆並列接続されて循環操作チェーンを形成しており、それによって最小限のリソースでのリアルタイム処理が可能になっている。事象ポインタにより事象ストリームに対するアクセスポイントが示される。すなわち、事象ポインタは回転データポインタであり、セルパイプライン内の最初のエントリ位置を示すものである。事象ポインタは、事象ストリームにおける全ての事象をアクティブなタイムウィンドウ内のアクティブなパラメータ化セル205に送る。あるタイムウィンドウが終了すると、ポインタはチェーン内の次のパラメータ化セル205に移り、全ての事象をアクティブなパラメータ化セル205に送る。所定のタイムウィンドウ内で、パラメータ化セル205は、調査中の事象を保持するべきかまたは次のパラメータ化セル205に送るべきかを見きわめる。対応するパラメータ化セル205に関するタイムウィンドウが終了すると、その対応するパラメータ化セル205は該パラメータ化セル205内の全てのアセンブルされた事象を送信する。このパラメータ化セル205は最大数の検出事象をグループ化できる。この最大数は増減され得る。
【0026】
パラメータ化セル205の所定数は、1次事象と比較される連続事象の最大数によって決定される。最大数は、最大事象レート(標準偏差を用いた期待値)と、不同性と、最大タイムウィンドウとによって定まる。一例では、不同性(すなわち、事象の多重度)は1.16であり、2次散乱事象の数の標準偏差は√0.16すなわち0.4であり、全ての2次散乱事象を1次検出事象と併せて含む4σウインドウは1+0.4×4、すなわち2.6である。同じ例において、有用な事象と混合されるバックグラウンド事象の数は、144MHz×10ns、すなわち1.44であるタイムウィンドウ内のバックグラウンド事象の平均数によって与えられ、ポアソン分布からの標準偏差は√1.44すなわち1.2であり、最大タイムウィンドウの1象限内に含まれる検出事象に基づく4σの信頼水準は1.2×4すなわち4.8である。したがって、2.6と4.8を合計すると7.4になり、切り上げて8になる。すなわち、9番目の事象は第1事象のタイムウィンドウ外にあり、グループ化セル数は5になる。
【0027】
図4は、本開示の一実施形態に係る、事象ストリームの一例を示す図である。この実施形態においては、
図4の最上部に全事象が示され、その下方に分類された諸事象が示される。ここで事象のソーティングについて説明する。
【0028】
図5は、本開示の一実施形態に係る、第1事象に関してアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示す図である。一実施形態において、第1事象が入力されると、第1パラメータ化セル205aが該第1事象の検出時刻に基づく第1タイムウィンドウを含んでインスタンス化される。第1タイムウィンドウ(ここで述べた他のタイムウィンドウも同様)とは所定の時間長であって、その時間内でさらなる事象が起きて、その事象が第1事象(または該タイムウィンドウにおけるそれぞれの事象)から派生した散乱事象と考えられる所定の時間長のことである。第1パラメータ化セル205aは第1事象を取り込んでその第1事象を1次事象に指定する。
図6は、本開示の一実施形態に係る、第1事象の第1ゾーン割当を示す概略図である。第1パラメータ化セル205aはさらに第1ゾーン割当を作成する。第1ゾーン割当のサイズ(範囲)と位置とは、後続の入力事象と比較するために第1事象の検出位置に基づいて定められる。図示のとおり、第1事象の第1ゾーン割当は、縦横3個ずつ配置された9つの検出器ブロック130からなり、第1事象はこれら検出器ブロック130の内の中央のブロックに配置される。
図1Fに示したとおり、ゾーン割当の種々のサイズによって、検出事象が1次事象であるか散乱事象であるかを判定する際の種々の感度と自由度とを得ることができる。
【0029】
検出事象が散乱事象と判定されるのは、(1)その事象の検出時が第1タイムウィンドウ内であって、かつ(2)第1ゾーン割当内で検出された場合である。つまり、条件(1)について言えば、第1事象の検出時と散乱事象の検出時との差が第1タイムウィンドウより小さい場合である。例えば、ゾーン割当のサイズを大きくすることで、さらなる検出事象が条件(2)を満足するようになる。
【0030】
上述の設定では、第2事象が第1パラメータ化セル205a(アクティブなパラメータ化セル)によって検出および評価された後、上述の条件(1)と(2)とを両方共満足しない限りその第2事象は第1パラメータ化セル205aによって拒絶される。すなわち、第1パラメータ化セル205aは、第2事象が散乱事象ではなく1次事象であると判定する。
【0031】
図7は、本開示の一実施形態に係る、事象をトリアージするときのアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示す図である。
図8は、本開示の一実施形態に係る、さらなるゾーン割当を示す概略図である。一実施形態において、条件(1)と(2)とが満足されないと、1次事象と判定される第2事象の検出時に基づいて、第2パラメータ化セル205bが第2タイムウィンドウを含んでインスタンス化される。同様に、条件(1)と(2)とが満足されないと、1次事象と判定される第3事象の検出時に基づいて、第3パラメータ化セル205cが第3タイムウィンドウを含んでインスタンス化される。
図8に示したとおり、第2事象と第3事象とは第1事象の第1ゾーン割当の外で検出される。第2パラメータ化セル205bはさらに第2ゾーン割当を作成する。第2ゾーン割当のサイズ(範囲)と位置とは、後続の入力事象と比較するために第2事象の検出位置に基づいて定められる。同様に、第3パラメータ化セル205cはさらに第3ゾーン割当を作成する。第3ゾーン割当のサイズ(範囲)と位置とは、後続の入力事象と比較するために第3事象の検出位置に基づいて定められる。
図8に示したとおり、第2事象と第3事象とに関するゾーン割当はサイズと形状とが第1事象に類似しており、それぞれの事象の検出位置は第1事象の場合と同様に中央に位置している。
【0032】
図9は、本開示の一実施形態に係る、散乱事象の検出時におけるアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。
図10は、本開示の一実施形態に係る、散乱事象のゾーン割当を示す概略図である。一実施形態において、事象ポインタが、第1パラメータ化セル205aをアクティブなパラメータ化セルと指定する。例えば第1パラメータ化セル205aであるアクティブなパラメータ化セルによって第4事象が検出および評価されて、第1事象の第1タイムウィンドウ内でかつ第1ゾーン割当内に位置すると判定される。このようにして、第4事象は、第1事象から派生して第1事象の場合と同様に分類された散乱(2次)事象と判定される。
【0033】
図11は、本開示の一実施形態に係る、散乱事象の検出時におけるアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。
図12は、本開示の一実施形態に係る、散乱事象のゾーン割当を示す概略図である。一実施形態において、例えば第1パラメータ化セル205aであるアクティブなパラメータ化セルによって第5事象が検出および評価されて、第1タイムウィンドウまたは第1ゾーン割当のいずれかの外に位置すると判定される。次いで第5事象の情報が第2パラメータ化セル205bにより評価されて第2タイムウィンドウまたは第2ゾーン割当のいずれかの外に位置すると判定される。第5事象の情報は次に第3パラメータ化セル205cにより評価されて第3タイムウィンドウ内でかつ第3ゾーン割当内に位置すると判定される。このようにして、第5事象は、第3事象から派生して第3事象の場合と同様に分類された散乱(2次)事象と判定される。
【0034】
図13は、本開示の一実施形態に係る、散乱事象の検出時におけるアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。
図14は、本開示の一実施形態に係る、散乱事象のゾーン割当を示す概略図である。一実施形態において、例えば第1パラメータ化セル205aであるアクティブなパラメータ化セルによって第6事象が検出および評価されて、第1タイムウィンドウまたは第1ゾーン割当のいずれかの外に位置すると判定される。次いで第6事象の情報が第2パラメータ化セル205bにより評価されて、第2タイムウィンドウ内でかつ第2ゾーン割当内に位置すると判定される。このようにして、第6事象は、第2事象から派生して第2事象の場合と同様に分類された散乱(2次)事象と判定される。
【0035】
一実施形態において、第6事象の検出時が第1タイムウィンドウの長さを超えた時点と判定されると、事象ポインタがインクリメントして第2パラメータ化セル205bをアクティブセルと指定する。このように、タイムウィンドウが第1事象から派生する全ての起こり得る追加散乱事象に対して閉じるために、第6事象は第1パラメータ化セル205aによる評価をスキップする。さらに、事象ポインタが第2パラメータ化セル205bにインクリメントすると、第1パラメータ化セル205aから取り込まれた全ての検出事象データが送信される。例えば、取り込まれた検出事象データはアセンブルされた事象フォーマッタに送信され、次いで集中コントローラに送られてさらなる処理を受ける。その後、第1パラメータ化セル205aは空になり次の検出事象データを受け入れ可能な状態と判断される。
【0036】
図15は、本開示の一実施形態に係る、新たな1次事象の検出時におけるアセンブルされたデマルチプレクサモジュールを示すブロック図である。
図16は、本開示の一実施形態に係る、新たな1次事象のゾーン割当を示す概略図である。一実施形態において、例えば第2パラメータ化セル205bであるアクティブなパラメータ化セルによって第7事象が検出および評価されて、第2タイムウィンドウまたは第2ゾーン割当のいずれかの外に位置すると判定される。次いで第7事象の情報が第3パラメータ化セル205cにより評価されて、第3タイムウィンドウまたは第3ゾーン割当のいずれかの外に位置すると判定される。したがって、条件(1)と(2)とが満足されず第7事象は1次事象と判定されると、第7事象の検出時に基づいて第4パラメータ化セル205dが第4タイムウィンドウを含んでインスタンス化される。第4パラメータ化セル205dはさらに第4ゾーン割当を作成する。第4ゾーン割当のサイズ(範囲)と位置とは、後続の入力事象と比較するために第7事象の検出位置に基づいて定められる。
【0037】
一実施形態において、第7事象の検出時が第2タイムウィンドウの長さを超えた時点と判定されると、事象ポインタがインクリメントして第3パラメータ化セル205cをアクティブセルと指定する。このように、タイムウィンドウが第2事象から派生する全ての可能な追加散乱事象に対して閉じるために、第7事象は第2パラメータ化セル205bによる評価をスキップする。さらに、事象ポインタが第3パラメータ化セル205cにインクリメントすると、取り込まれた全ての検出事象データが第2パラメータ化セル205bから送信される。
【0038】
一実施形態において、処理回路は、前述の諸ステップ、すなわち、事象の検出と、事象のソーティングと、アセンブルされたデマルチプレクサモジュール内の対応するセルへの事象の割当とを行う。例えば、処理回路は、リアルタイム処理を容易にするためにFPGA内に実装される。なお、かかる処理回路は、処理部の一例である。FPGAは、同一のパラメータ化セルをパイプライン方式でカスケード接続したセルモジュールを用いている。この接続では、チェーンサークルの最後のセルに対応するタイムウィンドウが該最後のセルに対して閉じると最後のセルは最初のセルに戻る。さらに、処理回路(例えば、FPGA内の処理回路)はPETスキャナ100に通信可能に接続され、リアルタイム処理をさらに容易にするために検出器アレイ130に近接して配置される。これにより内部メモリと外部メモリとのいずれも要することなくスケーラブルなソリューションが得られる。また、セルの連鎖骨格により追加のリソース(コンパレータ、RAM)が不要になり、ロジックが簡単になると共に、データ転送が速くなる。
【0039】
なお、パラメータ化セル205は時刻対応セルである。すなわち、入力事象ストリームにおいて長い中断が後に続く事象の場合、アクティブなパラメータ化セルはその事象を1次事象として受け入れ、タイムウィンドウが経過するとその事象(および関連する全ての事象)の情報を出力部に送ると共に、事象ポインタが次のパラメータ化セル205にインクリメントする。さらに、パラメータ化セル205は先のセルからの入力事象を事象ポインタからの入力事象に対して優先的に処理する。この場合、事象ポインタポートに存在する事象は1クロックサイクルの間保持された後、対象のパラメータ化セル205に読み込まれる。
【0040】
散乱エネルギーの蓄積により事象が破棄されると、単独115の感度が約30%低下し、対の感度が約50%低下する(単独115の効率が2乗される)。
【0041】
単独115と対との両方に対してより高感度な、破棄されない散乱事象を含むデータを有効に利用してスキャン対象の被検体のより正確な仕上がり画像を再構成することで診断およびその他の医療関連の処置を向上させることができる。
【0042】
要約すると、事象はストリーミング順に入力されて、パイピングや、バッファリングや、遅延を生じることなくリアルタイムで処理され得る。このメカニズムの循環論理性(タイムウィンドウが閉じるとアクティブなパラメーカ化セルが連接チェーンの最後のパラメーカ化セルになる)によってリソース(例えば、FPGAリソース)の最適化が可能になり、処理能力が向上する。
【0043】
図17は、本開示の一実施形態に係る、検出事象を分類する方法1700のフローチャートの非限定的一例を示す図である。ステップ1705で、第1事象が第1結晶105aで検出される。ステップ1710で、第1事象が第1パラメータ化セル205aに割り当てられる。ステップ1715で、第1事象の第1タイムウィンドウが決定される。ステップ1720で、検出器ブロック130の第1検出器ブロックの位置が決定される。ステップ1725で、第1事象の第1ゾーン割当が決定される。ステップ1730で、第2事象が第2結晶で検出される(この第2結晶は第2結晶105bと同じでなくてもよい)。ステップ1735で、第2事象の検出時と検出位置とに基づいて第2事象を第1事象と共に分類できるかどうかが判定される。第2事象が第1事象の第1タイムウィンドウ内でかつ第1ゾーン割当内で検出された場合は、ステップ1740で第2事象は第1事象と共に第1パラメータ化セル205aに分類される。検出されない場合は、ステップ1745で第2事象はデマルチプレクサの第2パラメータ化セル205bに割り当てられる。ステップ1750で、第2事象の第2タイムウィンドウが決定される。ステップ1755で、検出器ブロック130の第2検出器ブロックの位置が決定される。ステップ1760で、第2事象の第2ゾーン割当が決定される。ステップ1765で、さらなる検出事象があるかどうかが判定される。さらなる検出事象がある場合は、方法1700はステップ1730から繰り返される。ない場合は、方法1700は終了する。
【0044】
図18A、18Bに、方法100および200を実装可能なPETスキャナ1800の非限定的例を示す。PETスキャナ1800は、医用画像診断装置の一例である。PETスキャナ1800は、それぞれが方形の検出器モジュールとして構成された複数のガンマ線検出器(Gamma-Ray Detector:GRD)(例えば、GRD1-GRDN)を備えている。一実施態様によれば、検出器リングは40個のGRDを含んでいる。別の実施態様では、48個のGRDが備わっている。使用するGRDの数が多い程PETスキャナ1800の内径が大きくなる。
【0045】
各GRDは個々の検出器結晶を並べた2次元アレイからなる。各検出器結晶はガンマ放射を吸収してシンチレーションフォトンを放出する。シンチレーションフォトンは、検出器結晶と同様にGRD内に配列された光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)の2次元アレイにより検出される。検出器結晶アレイとPMTアレイとの間にはライトガイドが配置されている。
【0046】
あるいは、シンチレーションフォトンは、各検出器結晶に備えられたシリコン光電子増倍管(Silicon Photomultiplier:SiPM)のアレイによって検出される。
【0047】
各光検出器(例えば、PMTまたはSiPM)はアナログ信号を発生し、このアナログ信号によりシンチレーション事象の発生時と、検出事象を引き起こすガンマ線のエネルギーとが示される。また、1つの検出器結晶から放出されたフォトンを2つ以上の光検出器によって検出し、各光検出器で発生したアナログ信号に基づいて、検出事象に対応する検出器結晶を例えばアンガーロジックによる結晶位置計算を用いて判定することもできる。
【0048】
図18Bは、被検体OBJから放出されるガンマ線を検出するように配列された複数のガンマ線フォトン計数検出器(GRD)を備えたPETスキャナ装置を示す概略図である。GRDによって、各ガンマ線検出に対応するタイミングと、位置と、エネルギーとを計測することができる。一実施形態において、
図18A、18Bに示したとおり、このガンマ線検出器はリング状に配列される。検出器結晶は、個々のシンチレータ素子を2次元アレイ状に配列したシンチレータ結晶からなる。シンチレータ素子は任意の公知のシンチレーション材料からなる。PMTは各シンチレータ素子からの光が複数のPMTに検出されるように配列されており、それによってシンチレーション事象のアンガーロジックによる結晶位置計算が可能になっている。
【0049】
図18Bに示したPETスキャナ1800の配列例では、撮像対象の被検体OBJがテーブル1816上に静置し、GRDモジュールGRD1-GRDNが被検体OBJとテーブル1816との周囲に配列されている。各GRDは環状部材1820に固定接続され、環状部材1820はガントリ1840に固定接続されている。ガントリ1840にはPET撮像装置の多数の部品が収容されている。また、PET撮像装置のガントリ1840には開放開口が設けられ、この開口を通して被検体OBJとテーブル1816とが移送される。対消滅事象により被検体OBJから反対方向に放出されるガンマ線はGRDに検出される。また、タイミング情報とエネルギー情報とを用いてガンマ線対の同時計数が決定される。
【0050】
また、
図18Bに示した回路とハードウェアとによりガンマ線検出データの取り込み、保存、処理、および区分が行われる。この回路およびハードウェアは、プロセッサ1870と、ネットワークコントローラ1874と、メモリ1878と、データ取り込みシステム(Data Acquisition System:DAS)1876とを備えている。PET撮像装置はさらにデータチャネルを備えており、これにより検出および測定結果がGRDからDAS1876と、プロセッサ1870と、メモリ1878と、ネットワークコントローラ1874とに送られる。DAS1876は、検出器からの検出データの取り込みと、デジタル化と、ルーティングとの制御を行う。ある実施態様では、DAS1876がベッド1816の移動を制御する。プロセッサ1870は、ここで述べた、検出データからの画像の再構成と、検出データのプリ再構成処理と、画像データのポスト再構成処理などの機能を果たす。
【0051】
プロセッサ1870は、ここで述べた方法100および/または200の種々のステップおよびそれらの変形を実行するように構成される。即ち、プロセッサ1870は、デマルチプレクサの一例である。プロセッサ1870は、離散論理ゲート、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、または他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)として実装されるCPUを含む。FPGAまたはCPLDの実装は、VHDL、Verilog、または他のハードウェア記述言語でコード化され、そのコードはFPGAまたはCPLDに内蔵された電子メモリ、または別体の電子メモリに格納される。また、メモリはROM、EPROM、EEPROM、またはフラッシュ(登録商標)メモリなどの不揮発メモリでもよい。さらに、メモリはスタティックRAMやダイナミックRAMなどの揮発メモリでもよい。また、マイクロコントローラやマイクロプロセッサなどのプロセッサを設けて電子メモリの制御並びにFPGAまたはCPLDとメモリとの相互作用の制御を行うようにしてもよい。
【0052】
あるいは、プロセッサ1870のCPUが、方法100および/または200の各ステップを実行するコンピュータ読取可能命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行することもできる。このプログラムは、前述の非一時的電子メモリおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、フラッシュ(登録商標)ドライブ、または公知の他の各種記憶媒体に格納される。さらに、コンピュータ読取可能命令はユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、オペレーティングシステムのコンポーネント、またはそれらの組合せとして与えられ、米国インテル製のXenonプロセッサや米国AMD製のOpteronプロセッサなどのプロセッサ、並びにマイクロソフトVISTA、UNIX(登録商標)、Solaris、LINUX(登録商標)、Apple、MAC-OSおよびその他の当業者に公知のオペレーティングシステムとの協働で実行されてもよい。さらに、CPUは、並列協調動作により命令を実行する複数プロセッサとして実装されてもよい。
【0053】
なお、上述した方法100および/または200の種々のステップおよびそれらの変形がプロセッサ1870において実行される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述した方法100および/または200の種々のステップおよびそれらの変形は、DAS1876において実行することとしてもよい。即ち、DAS1876が、デマルチプレクサとして機能する場合であってもよい。各GRDの出力により近い部分にデマルチプレクサを配置することで、散乱事象の判定をより迅速に行なうことが可能となる。
【0054】
メモリ1878は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュ(登録商標)ドライブ、RAM、ROM、または当業者に公知の他の各種電子記憶装置からなる。
【0055】
ネットワークコントローラ1874(米国インテル社製インテルイーサネット(登録商標)PROネットワークインタフェースカードなど)によりPET撮像装置の各部が相互にインタフェース接続される。さらに、ネットワークコントローラ1874により外部ネットワークとのインタフェース接続が行われる。周知のように、外部ネットワークとして、インターネットなどの公衆ネットワーク、LANやWANネットワークなどのプライベートネットワーク、またはそれらの各種組合せがある。また、PSTNやISDNサブネットワークなどもある。外部ネットワークとしては、イーサネットネットワークなどの有線ネットワークや、EDGE、3G、4G、および5G無線セルラシステムなどのセルラネットワークなどの無線ネットワークがある。さらに無線ネットワークとしてWiFi、ブルートゥース(登録商標)、または公知の他の各種無線通信方式などもある。
【0056】
以上の説明では、処理システムの特定の配置並びにシステムで用いた様々な構成要素およびプロセスの説明などを具体的に詳述した。しかし、ここで述べた技術は上記具体的詳細から逸脱した他の実施形態でも実施可能であり、それら具体的詳細は説明のためのものであって限定するためのものではないことは明らかである。
【0057】
例えば、上述した実施形態ではPET撮像装置を例として説明したが、SPECT撮像装置についても同様に適用が可能である。例えば、SPECT撮像装置は、ガンマ線を検出する検出器(ガンマカメラ)を備え、当該検出器の複数の検出器結晶にて、ガンマ線の第1事象と第2事象とが検出される。また、SPECT撮像装置は、上記のプロセッサ1870と同様に、処理部を備える。当該処理部は、第2事象が、第1事象に基づいて決定される時間ウインドウ内で且つ第1事象の検出位置に基づいて決定される位置情報に関する制約を満たす場合に、第2事象を第1事象とデマルチプレクサの同一の第1セルに分類し、第2事象が、時間ウインドウ及び位置情報に関する制約の少なくとも一方を満たさない場合に、第1セルとは異なる、デマルチプレクサの第2セルに分類することができる。
【0058】
本開示の実施形態の説明は添付図面を参照しつつ行った。同様に、説明のために、特定の数、材料、および構成を述べて十分な理解が得られるようにした。しかしながら、各実施形態はそれら具体的詳細を含まずに実施することも可能である。なお、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素には同一の参照符号を付して、冗長な記述を省略している。
【0059】
各実施形態の円滑な理解を図るために様々な技術を複数の離散操作として説明したが、説明の順序は必ずしもそれらの操作が順序依存性のものであることを意味するものではない。実際にはこれらの操作は説明した順通りに実行しなくてもよい。また、本記載の諸操作を前述の実施形態とは異なる順に実行してもよい。様々な追加操作を実行してもよい、かつ/あるいは追加の実施形態において本記載の操作を省略してもよい。
【0060】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、散乱事象のリアルタイム判定の精度を向上させることができる。
【0061】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1800 PETスキャナ
1870 プロセッサ