(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】模擬ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
G09B 9/04 20060101AFI20241210BHJP
A63F 13/245 20140101ALI20241210BHJP
A63F 13/803 20140101ALI20241210BHJP
【FI】
G09B9/04 A
A63F13/245
A63F13/803
(21)【出願番号】P 2021071357
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 隆
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-116349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00- 9/56
A63F 9/00- 9/34
13/00-13/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールから延在するステアリングシャフトと、
前記ステアリングホイールの回転範囲を規制するストッパ機構と、を備え、
前記ストッパ機構は、
周方向の一部を占める小径部と、周方向の他の一部を占める大径部と、前記小径部と前記大径部との間に設けられた段部とを有し、前記ステアリングシャフトと一体的に回動するカムと、
前記カムの前記大径部の回転半径の外側に配置された固定ストッパと、
前記大径部の回転半径の内側に突出可能に配置され、前記大径部の回転半径の内側に突出する
ことで前記段部と前記固定ストッパとの間に噛み込んで前記ステアリングホイールの回転を規制するストッパアームと、
前記ステアリングホイールの前記回転範囲の終端付近で前記ストッパアームを前記大径部の回転半径の内側に突出させる、駆動機構と、
を備える、模擬ステアリング装置。
【請求項2】
請求項1記載の模擬ステアリング装置であって、前記駆動機構は、
前記ステアリングシャフトと一体的に回動する第1ギヤと、
前記第1ギヤと噛み合って回動する第2ギヤと、
前記第2ギヤを支持するギヤシャフトと、
前記ストッパアームを前記ギヤシャフトに固定する連結部材と、
を備え、
前記駆動機構は、前記ストッパアームを前記第2ギヤと共に回動させることで前記大径部の回転半径の内側に突出させる、
模擬ステアリング装置。
【請求項3】
請求項2記載の模擬ステアリング装置であって、前記第2ギヤの周長は前記第1ギヤの周長よりも長く、前記駆動機構は、前記ステアリングホイールの回転を減速して前記ストッパアームを回転させる、
模擬ステアリング装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の模擬ステアリング装置であって、
前記ストッパアームは前記連結部材に向けて突出した突起部を有し、
前記連結部材は前記突起部を収容して前記ストッパアームの前記ギヤシャフトに対する回動を規制する凹部を有し、
前記凹部は、前記突起部よりも周方向に広がって形成されており、前記連結部材は前記ストッパアームを前記ギヤシャフトの周方向の所定角度範囲で回動可能に連結する、
模擬ステアリング装置。
【請求項5】
請求項4記載の模擬ステアリング装置であって、
一端が前記連結部材に接続され、他端が前記ストッパアームに接続され、前記ストッパアームを前記連結部材に対して前記ギヤシャフトの周方向に付勢するコイルスプリングを有する、
模擬ステアリング装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の模擬ステアリング装置であって、
前記固定ストッパと、前記ストッパアームと、前記駆動機構とは、前記ステアリングシャフトを中心として左右に一対設けられる、
模擬ステアリング装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の模擬ステアリング装置であって、
前記段部及び前記ストッパアームの先端部の少なくとも一方に弾性部材が設けられる、
模擬ステアリング装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の模擬ステアリング装置であって、さらに、
前記ステアリングシャフトと一体的に回動する第3ギヤと、
前記第3ギヤに噛み合う駆動ギヤと、
前記駆動ギヤを通じて前記ステアリングシャフトに駆動力を与える駆動モータと、を備え、
前記駆動モータは前記ステアリングホイールが回転した際に、前記ステアリングホイールを中立位置に復帰させる力を発生させる、
模擬ステアリング装置。
【請求項9】
請求項8に記載の模擬ステアリング装置であって、さらに、
前記第3ギヤに噛み合うエンコーダギヤと、
前記エンコーダギヤに連結され、前記ステアリングシャフトの回転変位を検出するエンコーダと、を備える、
模擬ステアリング装置。
【請求項10】
請求項2~4のいずれか1項に記載の模擬ステアリング装置であって、
前記第2ギヤ及び前記ギヤシャフトは、前記ステアリングシャフトを通る本体フレームの中心線に対して左右に等距離離れた位置に一対設けられ、
前記固定ストッパは、一対の前記ギヤシャフトを結ぶ線分に沿って一対設けられ、
前記ステアリングホイールを第1方向の前記回転範囲の終端において、一方の前記第2ギヤに連結された前記ストッパアームが、前記カムと一方の前記固定ストッパとの間に噛み込んで前記ステアリングホイールの前記第1方向への回転を規制し、
前記ステアリングホイールを前記第1方向と反対の第2方向の前記回転範囲の終端において、他方の前記第2ギヤに連結された前記ストッパアームが、前記カムと他方の前記固定ストッパとの間に噛み込んで前記ステアリングホイールの前記第2方向への回転を規制する、
模擬ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブシミュレータやゲーム機において、運転者のステアリング操作の入力を受ける模擬ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブシミュレータ又はゲーム機において、ユーザの運転操作を受け付ける模擬ステアリング装置が用いられる。模擬ステアリング装置では、ステアリングホイールの回転範囲を規制するために、ストッパが用いられる。
【0003】
従来の模擬ステアリング装置では、ステアリングホイールの複数回の回転を可能とするために、複雑なストッパ機構が用いられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のストッパ機構では、ストッパ機構の強度を確保するために装置構成が大型になり、製造コストが増大するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点は、ステアリングホイールと、ステアリングホイールから延在するステアリングシャフトと、前記ステアリングホイールの回転範囲を規制するストッパ機構と、を備え、前記ストッパ機構は、周方向の一部を占める小径部と、周方向の他の一部を占める大径部と、前記小径部と前記大径部との間に設けられた段部とを有し、前記ステアリングシャフトと一体的に回動するカムと、前記カムの前記大径部の回転半径の外側に配置された固定ストッパと、前記大径部の回転半径の内側に突出可能に配置され、前記大径部の回転半径の内側に突出する前記段部と前記固定ストッパとの間に噛み込んで前記ステアリングホイールの回転を規制するストッパアームと、前記ステアリングホイールの前記回転範囲の終端付近で前記ストッパアームを前記大径部の回転半径の内側に突出させる、駆動機構と、を備える模擬ステアリング装置にある。
【発明の効果】
【0008】
上記観点の模擬ステアリング装置は、十分な強度を有するストッパ機構を小型且つ安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る模擬ステアリング装置の斜視図である。
【
図2】
図1の模擬ステアリング装置の本体フレームの背面図である。
【
図3】
図2の本体フレームから、第3板部材及び第2ギヤを取り外した状態の斜視図である。
【
図4】
図1の模擬ステアリング装置のストッパ機構の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す模擬ステアリング装置10は、運転シミュレータ(不図示)に搭載されて、使用者の運転操作の入力に用いられる。模擬ステアリング装置10は、使用者の操作力を受けるべく、ステアリングホイール12を備えている。ステアリングホイール12の外周形状は、円環状に形成される。使用者はステアリングホイール12を把持して、ステアリングホイール12の中心軸回り左右にステアリングホイール12を回転させることにより、運転操作の入力を行う。
【0011】
ステアリングホイール12の中心部からは、ステアリングシャフト14が延び出ている。ステアリングシャフト14は、操作者から見て奥側に向けて延びる。ステアリングシャフト14は、ステアリングホイール12の回転軸と同軸に配置される。ステアリングシャフト14は、ステアリングホイール12と一体的に回動する。ステアリングシャフト14の奥側には、ステアリングシャフト14を支持する本体フレーム16が設けられる。
【0012】
本体フレーム16は、3枚の板部材16a、16b、16cと、一対の側壁16dと、複数本の支柱部材16eとを備える。3枚の板部材16a、16b、16cは、ステアリングシャフト14に対して垂直な向きに配置された略矩形の板である。板部材16a、16b、16cは、例えば金属よりなる。板部材16a、16b、16cは、ステアリングホイール12側から、第1板部材16a、第2板部材16b及び第3板部材16cの順に配置される。これらの板部材16a、16b、16cは、ステアリングシャフト14の軸方向に所定距離離間して配置される。第1板部材16aと第2板部材16bとの間には、一対の側壁16dが配置される。一対の側壁16dは、例えば、金属板等よりなり、互いに同一の寸法に形成される。一方の側壁16dは、板部材16aの一方の側辺と板部材16bの一方の側辺との間に設けられる。他方の側壁16dは、板部材16aの他方の側辺と板部材16bの他方の側辺との間に設けられる。板部材16a、16b及び一対の側壁16dは、ねじ止め等の方法で互いに固定される。
【0013】
第2板部材16bと第3板部材16cとの間には、複数本の支柱部材16eが設けられる。第2板部材16b及び第3板部材16cは、複数本の支柱部材16eを介してねじ止め等の方法で固定される。支柱部材16eの各々は同一の長さに形成されており、第2板部材16bと第3板部材16cは互いに平行に固定される。
【0014】
本体フレーム16の一対の側壁16dには、模擬ステアリング装置10を、運転シミュレータのインスツルメンツパネルに取り付けるための枠部材22がねじ止め等の方法で接合される。
【0015】
板部材16a、16b、16cには、ステアリングシャフト14が貫通する貫通部16fがそれぞれ設けられる。このうち、第1板部材16aの貫通部16fと第3板部材16cの貫通部16fには、それぞれベアリング20が設けられる。ステアリングシャフト14は、これらのベアリング20を介して板部材16a、16cに対して回転可能に保持される。ベアリング20は、ステアリングシャフト14と本体フレーム16とを軸方向に位置決めする。
【0016】
第1板部材16aと第2板部材16bとの間には、ステアリングホイール12の回転角度を検出するエンコーダ24と、ステアリングホイール12にトルクを付与する駆動モータ26とが設けられる。また、ステアリングシャフト14と駆動モータ26との間で回転運動を伝達する機構部品が、第2板部材16bと第3板部材16cとの間に設けられる。ステアリングシャフト14の回転範囲を規制するストッパ機構50の一部が、第2板部材16bと第3板部材16cとの間に設けられる。さらに、第3板部材16cの奥側には、ストッパ機構50の他の一部(駆動機構52)が設けられる。
【0017】
図2に示すように、第3板部材16cの奥側には、ステアリングシャフト14の奥側の端部14aが突出する。端部14aには、ステアリングシャフト14と一体的に回動する第1ギヤ28が取り付けられる。また、第3板部材16cの奥側には、第1ギヤ28に噛み合う一対の第2ギヤ30が設けられる。一対の第2ギヤ30は、ステアリングシャフト14を通る本体フレーム16の中心線に対して左右に等距離離れた位置にそれぞれ設けられる。左右の第2ギヤ30は、互いに同一寸法に形成される。それぞれの第2ギヤ30は、第1ギヤ28よりも大きな周長を有しており、ステアリングシャフト14の回転を減速して伝達する。
【0018】
各々の第2ギヤ30は、中心部を通るギヤシャフト32によって支持される。ギヤシャフト32は、第2ギヤ30と一体的に回動する。ギヤシャフト32は、ステアリングシャフト14と平行に延びている。ギヤシャフト32は、ベアリング21を介して板部材16b、16cに対して回転可能に支持される。
【0019】
図3に示すように、第2板部材16bと第3板部材16cとの間のギヤシャフト32には、ギヤシャフト32と共に回動する連結部材34及びストッパアーム36が設けられる。連結部材34は、ギヤシャフト32の第2板部材16bに隣接する部分に設けられる。連結部材34は、ギヤシャフト32に接合されており、ギヤシャフト32と一体的に回動する。連結部材34は、円板状に形成されると共に、その外周部の一部分に凹部34aを備える。また、連結部材34には、後述するコイルスプリング38の一端を固定するためのバネ固定孔34bが設けられる。
【0020】
ストッパアーム36は、連結部材34の奥側に配置される。すなわち、ストッパアーム36は、連結部材34と第3板部材16cとの間に配置される。ストッパアーム36は、ギヤシャフト32に対して回動自在な軸孔36bを通じてギヤシャフト32に取り付けられる。ストッパアーム36の連結部材34側には、連結部材34の凹部34aに挿入される突起部36aが設けられる。突起部36aの周方向寸法は、凹部34aの周方向寸法よりも小さい。突起部36aと凹部34aとの間には隙間が形成される。ストッパアーム36は、隙間に応じた角度範囲でギヤシャフト32に対して回転可能な遊びを有する。このストッパアーム36の遊びは、ステアリングホイール12の回転範囲の終端付近での後述するカム40とストッパアーム36との微小な角度ずれの吸収を可能とする。
【0021】
また、ストッパアーム36と連結部材34との間には、コイルスプリング38(ねじりコイルバネ)が配置される。コイルスプリング38の一端は、連結部材34のバネ固定孔34bに挿入されており、コイルスプリング38の他端はストッパアーム36に引っ掛けられる。コイルスプリング38により、ストッパアーム36は、周方向においてステアリングシャフト14に向かう方向に付勢される。
【0022】
ストッパアーム36は、ギヤシャフト32から、径方向外方に延び出ている。ストッパアーム36は、後述するカム40の大径部40aの第1半径の内側に到達可能な長さを有する。ストッパアーム36の先端には、カム40の段部40cに当接する当接部36cが設けられる。当接部36cは、例えばゴム等の弾性部材よりなる。当接部36cは、例えば、ねじ止めによりストッパアーム36の先端に固定される。
【0023】
図示の状態は、ステアリングホイール12の中立状態となっている。中立状態では、奥側から見たときの左側のストッパアーム36と本体フレーム16の中心線との開き角度と、右側のストッパアーム36と本体フレーム16の中心線との開き角度とは、等しくなっている。すなわち、奥側から見て左右のストッパアーム36は、本体フレーム16の中心線を中心として線対称に配置される。各々のストッパアーム36は等しい寸法に形成される。
【0024】
第2板部材16bと第3板部材16cとの間には、さらに、一対の固定ストッパ42が設けられる。一対の固定ストッパ42は、一対のギヤシャフト32を結ぶ線分に沿ってそれぞれ設けられる。各々の固定ストッパ42は、カム40の回動を規制しないように、カム40の大径部40aの第1半径の外側に配置される。各々の固定ストッパ42は、板部材16b、16cに対して垂直な方向に延びる。各々の固定ストッパ42の一端と他端とは、それぞれ板部材16b、16cに例えば、ねじ止めにより固定される。
【0025】
ステアリングシャフト14の第2板部材16bと第3板部材16cとの間には、第2板部材16b側から順に、第3ギヤ44と、カム40とが設けられる。第3ギヤ44及びカム40は、ステアリングシャフト14に固定される。第3ギヤ44及びカム40は、ステアリングシャフト14と一体的に回動する。第3ギヤ44は、第1半径を有する歯車であり、エンコーダギヤ46と駆動ギヤ48とに噛み合う。
【0026】
エンコーダギヤ46及び駆動ギヤ48は、それぞれ第2板部材16bの近傍に設けられたギヤである。エンコーダギヤ46は、第2板部材16bの反対側のエンコーダ24に、ステアリングシャフト14の回転変位を伝達する。駆動ギヤ48は、一対の固定ストッパ42の間の部分で第3ギヤ44に噛み合っている。駆動ギヤ48は、第2板部材16bの反対側に設けられた駆動モータ26の駆動力をステアリングシャフト14に伝達するギヤである。
【0027】
駆動モータ26は、運転シミュレータで模擬された路面の抵抗感と、ステアリングホイール12を中立位置に復帰させる復元力を発生させる。駆動ギヤ48は、駆動モータ26の駆動力(トルク)をステアリングシャフト14に伝達する。
【0028】
カム40は、第3ギヤ44の奥側(第3板部材16c)側に隣接して配置される。カム40は、大径部40aと、小径部40bと、大径部40aと小径部40bとの間に形成された段部40cとを有する。大径部40aは、周方向の180°の範囲に亘って形成される。大径部40aは、奥側から見て、ステアリングシャフト14の中心から第1半径を有する半円形に形成される。小径部40bは、周方向の残りの180°の範囲に亘って形成される。小径部40bは、大径部40aの第2半径よりも小さな第1半径を有する半円形に形成される。段部40cは、大径部40aと小径部40bとの間に形成される。段部40cは、径方向に延びた面を有する。段部40cは、ステアリングホイール12の回転範囲の終端において、ストッパアーム36の当接部36cに面接触する。
【0029】
上記の模擬ステアリング装置10において、第1ギヤ28、第2ギヤ30、ギヤシャフト32、連結部材34、ストッパアーム36、カム40及び固定ストッパ42が、本実施形態のストッパ機構50を構成する。ストッパ機構50がステアリングホイール12の回転範囲の終端に達すると、ストッパアーム36はカム40の第1半径の内側に突出する。ストッパ機構50は、ストッパアーム36をカム40の段部40cと固定ストッパ42との間に噛み込ませることで、ステアリングシャフト14の回動を規制する。また、ストッパ機構50において、第1ギヤ28、第2ギヤ30、ギヤシャフト32、及び連結部材34が、ストッパアーム36を突出させる駆動機構52を構成する。
【0030】
以下、模擬ステアリング装置10の作用について説明する。
【0031】
図1に示すように、使用者がステアリングホイール12を操作して回動させると、
図2に示すように、ステアリングシャフト14及び第1ギヤ28が回動する。ステアリングシャフト14の回動変位は、第1ギヤ28を介して第2ギヤ30に伝達される。第2ギヤ30の回動に伴って、ストッパアーム36が回転変位する。例えば、
図1のステアリングホイール12を右に回転させると、
図2の左側のストッパアーム36がカム40に接近する方向に回転変位し、右側のストッパアーム36がカム40から離れる方向に回転変位する。また、
図1のステアリングホイール12を左に回転させると、
図2の右側のストッパアーム36がカム40に接近する方向に変位し、左側のストッパアーム36がカム40から離れる方向に回転変位する。
【0032】
第1ギヤ28の周長(歯数)に対して、第2ギヤ30の周長(歯数)が大きいため、ステアリングシャフト14の回転は、ギヤシャフト32に減速して伝達される。そのため、ストッパアーム36がカム40の回転を規制する位置に送り込まれるまでに、ステアリングシャフト14は複数回、回転することができる。
【0033】
図4に示すように、ステアリングホイール12を右側に所定角度だけ回動させると、左側のストッパアーム36がカム40の大径部40aの第1半径の内側に突出する。その後、左側のストッパアーム36は、固定ストッパ42に当接して停止する。その後、固定ストッパ42に、ストッパアーム36を介してカム40の段部40cが突き当る。これにより、ストッパアーム36がカム40と固定ストッパ42との間に噛み込んでステアリングシャフト14の回動が規制される。このとき、ステアリングシャフト14のトルクは、カム40及びストッパアーム36を通じて固定ストッパ42に伝達される。カム40の段部40cと、左側のストッパアーム36の荷重作用部分と、固定ストッパ42とは、一直線上に並んでおり、高い剛性が発揮される。
【0034】
また、左側のストッパアーム36と連結部材34との間に周方向の遊びが設けられる。そのため、ステアリングシャフト14の回転範囲の終端で、カム40とストッパアーム36との角度ずれがストッパアーム36の遊びによって吸収される。これにより、第1ギヤ28及び第2ギヤ30の間に大きな荷重が作用するのを防止できる。また、ストッパアーム36の、カム40の段部40cに当接する部分には、弾性部材よりなる当接部36cが設けられる。当接部36cは、ステアリングホイール12を回転範囲の終端に回し切った際の、衝撃の発生を緩和する。
【0035】
また、
図1のステアリングホイール12を左側に回動させると、
図4の右側のストッパアーム36がカム40の段部40cに当接することにより、ステアリングシャフト14の回動が規制される。この場合には、右側のストッパアーム36が右側の固定ストッパ42と段部40cとの間に噛み込むことにより、ステアリングシャフト14の回動が規制される。
【0036】
以上のように、本実施形態の模擬ステアリング装置10によれば、ギヤ類に大きな荷重を作用させることなく、ステアリングホイール12の回転を規制することができる。
【0037】
本実施形態の模擬ステアリング装置10は、以下の効果を奏する。
【0038】
本実施形態の模擬ステアリング装置10は、ステアリングホイール12と、ステアリングホイール12から延在するステアリングシャフト14と、ステアリングホイール12の回転範囲を規制するストッパ機構50と、を備え、ストッパ機構50は、周方向の一部を占める小径部40bと、周方向の他の一部を占める大径部40aと、小径部40bと大径部40aとの間に設けられた段部40cとを有し、ステアリングシャフト14と一体的に回動するカム40と、カム40の大径部40aの回転半径(第1半径)の外側に配置された固定ストッパ42と、大径部40aの回転半径(第1半径)の内側に突出可能に配置され、大径部40aの回転半径の内側に突出する段部40cと固定ストッパ42との間に噛み込んでステアリングホイール12の回転を規制するストッパアーム36と、ステアリングホイール12の回転範囲の終端付近でストッパアーム36を大径部40aの回転半径の内側に突出させる駆動機構52と、を備える。
【0039】
上記の構成によれば、ギヤ機構に大きな荷重をかけることなく、ステアリングホイール12の回転範囲を規制するストッパ機構50が得られる。これにより、模擬ステアリング装置10が小型化される。
【0040】
上記の模擬ステアリング装置10において、駆動機構52は、ステアリングシャフト14と一体的に回動する第1ギヤ28と、第1ギヤ28と噛み合って回動する第2ギヤ30と、第2ギヤ30を支持するギヤシャフト32と、ストッパアーム36をギヤシャフト32に固定する連結部材34と、を備え、駆動機構52は、ストッパアーム36を第2ギヤ30と共に回動させることで大径部40aの回転半径(第1半径)の内側に突出させる。この構成によれば、ストッパ機構50が安価な回転機構のみで実現できるので、模擬ステアリング装置10の製造コストを抑制できる。
【0041】
上記の模擬ステアリング装置10において、第2ギヤ30の周長は第1ギヤ28の周長よりも長く、駆動機構52は、ステアリングホイール12(ステアリングシャフト14)の回転を減速してストッパアーム36を回転させるように構成してもよい。この構成によれば、ストッパアーム36が突出するまでに、ステアリングホイール12を1回転以上回動できる。
【0042】
上記の模擬ステアリング装置10において、ストッパアーム36は連結部材34に向けて突出した突起部36aを有し、連結部材34は突起部36aを収容してストッパアーム36のギヤシャフト32に対する回動を規制する凹部34aを有し、凹部34aは、突起部36aよりも周方向に広がって形成されており、連結部材34はストッパアーム36をギヤシャフト32の周方向の所定角度範囲で回動可能に連結するように構成してもよい。この構成によれば、カム40とストッパアーム36との角度ずれを、ストッパアーム36の遊びで吸収することができる。これにより、カム40とストッパアーム36との角度ずれが生じても、第1ギヤ28及び第2ギヤ30に過大な荷重が作用するのを防止できる。
【0043】
上記の模擬ステアリング装置10において、一端が連結部材34に接続され、他端がストッパアーム36に接続され、ストッパアーム36を連結部材34に対してギヤシャフト32の周方向に付勢するコイルスプリング38を有してもよい。この構成によれば、コイルスプリング38は、その付勢力によりストッパアーム36を一定位置に配置できる。
【0044】
上記の模擬ステアリング装置10において、固定ストッパ42と、ストッパアーム36と、駆動機構52とは、ステアリングシャフト14を中心として左右に一対設けられてもよい。このような模擬ステアリング装置10では、ステアリングホイール12の一方と他方の回転方向の規制を、それぞれの駆動機構52、固定ストッパ42及びストッパアーム36が受け持つ。
【0045】
上記の模擬ステアリング装置10において、段部40c及びストッパアーム36の先端部の少なくとも一方に弾性部材(例えば、当接部36c)が設けられてもよい。このような弾性部材は、ステアリングホイール12の回転範囲の終端における衝撃を緩和する。
【0046】
上記の模擬ステアリング装置10において、さらに、ステアリングシャフト14と一体的に回動する第3ギヤ44と、第3ギヤ44に噛み合う駆動ギヤ48と、駆動ギヤ48を通じてステアリングシャフト14に駆動力を与える駆動モータ26と、を備え、駆動モータ26はステアリングホイール12が回転した際に、ステアリングホイール12を中立位置に復帰させる力を発生させるように構成してもよい。このような第3ギヤ44及び駆動モータ26は、実際の車両のステアリングホイール12の操作感覚の再現に好適である。
【0047】
なお、本発明は、上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0048】
10…模擬ステアリング装置 12…ステアリングホイール
14…ステアリングシャフト 14a…端部
26…駆動モータ 28…第1ギヤ
30…第2ギヤ 32…ギヤシャフト
34…連結部材 34a…凹部
36…ストッパアーム 36a…突起部
38…コイルスプリング 40…カム
40a…大径部 40b…小径部
40c…段部 42…固定ストッパ
44…第3ギヤ 48…駆動ギヤ
50…ストッパ機構 52…駆動機構