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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】伝熱構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20241210BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021083631
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177406
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】川西 康之
(72)【発明者】
【氏名】若松 洋平
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-133527(JP,A)
【文献】特開2012-248568(JP,A)
【文献】特開2015-170660(JP,A)
【文献】特開2015-084402(JP,A)
【文献】特開2017-017123(JP,A)
【文献】特開2016-042582(JP,A)
【文献】特開2002-141447(JP,A)
【文献】特開2006-278359(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146391(WO,A1)
【文献】特開2018-117100(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208690(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成され、取付先部材の被接着部に接着可能である接着部を有するシート部材と、
前記取付先部材より熱伝導率が高い部材で形成され、前記シート部材の配設部に一体的に設けられ、かつ、前記取付先部材に厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴内に伝熱対象に熱伝導可能な状態にて接触可能に収容可能である伝熱部材と、
を備え、
前記シート部材との間に空間を形成し、前記空間に前記伝熱部材を封入する封入部材を、さらに備えたことを特徴とする伝熱構造体。
【請求項2】
シート状に形成され、取付先部材の被接着部に接着可能である接着部を有するシート部材と、
前記取付先部材より熱伝導率が高い部材で形成され、前記シート部材の配設部に一体的に設けられ、かつ、前記取付先部材に厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴内に伝熱対象に熱伝導可能な状態にて接触可能に収容可能である伝熱部材と、
を備え、
前記シート部材は、厚み方向に貫通する1または複数のシート部材貫通孔を備えており、
前記伝熱部材は、前記シート部材の一方側に設けられた第1伝熱部材と、前記シート部材の他方側に設けられた第2伝熱部材と、前記シート部材貫通孔内に設けられ前記第1伝熱部材と前記第2伝熱部材とを連結する連結部と、を備えていることを特徴とする伝熱構造体。
【請求項3】
シート状に形成され、取付先部材の被接着部に接着可能である接着部を有するシート部材と、
前記取付先部材より熱伝導率が高い部材で形成され、前記シート部材の配設部に一体的に設けられ、かつ、前記取付先部材に厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴内に伝熱対象に熱伝導可能な状態にて接触可能に収容可能である伝熱部材と、
を備え、
前記伝熱部材が、シリコーン系、ウレタン樹脂系、ゴム系から選択されるベース材料に熱伝導性フィラーを添加した材料で形成されていることを特徴とする伝熱構造体。
【請求項4】
シート状に形成され、取付先部材の被接着部に接着可能である接着部を有するシート部材と、
前記取付先部材より熱伝導率が高い部材で形成され、前記シート部材の配設部に一体的に設けられ、かつ、前記取付先部材に厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴内に伝熱対象に熱伝導可能な状態にて接触可能に収容可能である伝熱部材と、
を備え、
前記シート部材が、樹脂成分のみからなる樹脂フィルムであることを特徴とする伝熱構造体。
【請求項5】
前記樹脂フィルムは、オレフィン系材料、オレフィン系エラストマー(TPO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウレタン系材料、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、フッ素樹脂から選択される材料で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の伝熱構造体。
【請求項6】
シート状に形成され、取付先部材の被接着部に接着可能である接着部を有するシート部材と、
前記取付先部材より熱伝導率が高い部材で形成され、前記シート部材の配設部に一体的に設けられ、かつ、前記取付先部材に厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴内に伝熱対象に熱伝導可能な状態にて接触可能に収容可能である伝熱部材と、を備えた伝熱構造体と、
前記取付先部材と、
により形成される伝熱用一体構造体の製造方法であって、
前記伝熱部材を前記シート部材に接着して前記伝熱構造体を製造する工程と、
その後、前記取付先部材に前記伝熱構造体を取り付ける工程と、
を有する、伝熱用一体構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝熱構造体の一形式として、特許文献1には、1または2以上の熱源11,12,13の表面を被覆する板であって熱源11,12,13の表面の凹凸に対応する第一内表面35を備えた放熱板30と、放熱板30の第一内表面35に付着するシートであって熱源11,12,13から放熱板30に熱を伝える機能を有する熱伝導シート20と、を備える放熱構造体1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-140262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示されている放熱構造体においては、熱源の表面の凹凸に対応するとともに高い放熱性(伝熱性)を有することができる。しかし、伝熱対象(熱源)が比較的熱伝導率の低い遮蔽部材で遮蔽された場合に、遮蔽部材を挟んで伝熱対象との間にて伝熱することは容易ではなく、比較的熱伝導率の低い遮蔽部材を挟んで伝熱対象との間にて伝熱させることが要請されている。
【0005】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、比較的熱伝導率の低い遮蔽部材を挟んで伝熱対象との間にて伝熱させることが可能となる伝熱構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る伝熱構造体は、シート状に形成され、取付先部材の被接着部に接着可能である接着部を有するシート部材と、前記取付先部材より熱伝導率が高い部材で形成され、前記シート部材の配設部に一体的に設けられ、かつ、前記取付先部材に厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴内に伝熱対象に熱伝導可能な状態にて接触可能に収容可能である伝熱部材と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る伝熱構造体によれば、取付先部材に備えられた取付先貫通穴内に、伝熱対象に熱伝導可能な状態にて接触するように伝熱部材を収容して、取付先部材に伝熱構造体を取り付けることが可能となり、その結果、伝熱対象の熱を、伝熱部材を介してすなわち取付先部材を挟んで伝熱対象の反対側に伝熱させることが可能となる。換言すると、比較的熱伝導率の低い遮蔽部材にて伝熱対象が遮蔽された場合において、比較的熱伝導率の低い遮蔽部材を取付先部材とし、遮蔽部材に伝熱部材を設けることにより、伝熱対象の熱を、伝熱部材を介してすなわち取付先部材を挟んで伝熱対象との間にて伝熱させることが可能となる。
【0008】
本発明による伝熱構造体においては、前記接着部は前記配設部を囲むように設けられていることが好ましい。これによれば、取付先貫通穴をシート部材によってシール(密閉)することが可能となる。
【0009】
本発明による伝熱構造体においては、前記シート部材との間に空間を形成し、前記空間に前記伝熱部材を封入する封入部材を、さらに備えたことが好ましい。これによれば、伝熱構造体を比較的容易に製造することが可能となる。
【0010】
本発明による伝熱構造体においては、前記伝熱部材は、前記シート部材の一方側に設けられる第1伝熱部材と、前記シート部材の他方側に設けられる第2伝熱部材と、を備えており、前記第1伝熱部材及び第2伝熱部材は、前記シート部材に密着されていることが好ましい。これによれば、伝熱構造体を比較的容易に製造することが可能となる。
【0011】
本発明による伝熱構造体においては、前記シート部材は、厚み方向に貫通する1または複数のシート部材貫通孔を備えており、前記伝熱部材は、前記シート部材の一方側に設けられた第1伝熱部材と、前記シート部材の他方側に設けられた第2伝熱部材と、前記シート部材貫通孔内に設けられ前記第1伝熱部材と前記第2伝熱部材とを連結する連結部と、を備えていることが好ましい。これによれば、熱伝導性が比較的高い伝熱構造体を比較的容易に製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、比較的熱伝導率の低い遮蔽部材を挟んで伝熱対象との間にて伝熱させることが可能となる伝熱構造体を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の第1実施形態に係る伝熱構造体540を適用した筐体10を示す断面図である。
図1B図1Aに示す伝熱用一体構造体30を示す断面図である。
図1C図1Aに示す第1ケーシング11を示す外観斜視図である。
図1D図1Aに示す第1ケーシング11を示す断面図である。
図1E図1Aに示す伝熱構造体540を示す断面図である。
図2A】第2実施形態に係る伝熱構造体40を適用した伝熱用一体構造体530を示す断面図である。
図2B図2Aに示す伝熱構造体40を示す断面図である。
図3】第3実施形態に係る伝熱構造体140を示す断面図である。
図4】第4実施形態に係る伝熱構造体240を示す断面図である。
図5】第4実施形態に係る伝熱構造体240の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明による第1実施形態の伝熱構造体540を適用した筐体10について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0015】
図1Aに示すように、筐体10は、第1ケーシング11と、第2ケーシング(蓋部材)12と、を備えている。筐体10内には、基板20が収容されている。基板20は、電子部品21が実装されており、電子部品21は、抵抗、コンデンサ、トランジスタ、マイクロプロセッサなどのIC(集積回路;integrated circuit)などが挙げられる。電子部品21のうちマイクロプロセッサなど比較的高温となる電子部品が伝熱対象である電子部品21aである。尚、電子部品21aは、マイクロプロセッサ以外のICでもよく、トランジスタ、FET(電界効果型トランジスタ;field-effect transistor)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ;insulated gate bipolar transistor)などのパワーデバイス(スイッチング素子)でもよい。また、本実施形態では、筐体10内にマイクロプロセッサを実装した基板20を収容するようにしたが、これに限定されず、伝熱対象21aとなる他の部材を収容するようにしてもよい。
【0016】
伝熱対象21aとは、伝熱部材31を介して放熱したり吸熱したり熱を伝える対象となる物である。すなわち、伝熱には、放熱及び吸熱を含んでいる。伝熱対象21aを降温(冷却)する場合には、伝熱対象21aの熱が伝熱部材31を伝わり伝熱対象21aが放熱し冷却される。また、伝熱対象21aを冷却する場合には、伝熱対象21aより低温の熱源の低温の熱(低熱)が伝熱部材31を伝わり伝熱対象21aが吸熱し冷却される。さらに、伝熱対象21aを昇温(加熱)する場合には、伝熱対象21aより高温の熱源の高温の熱(高熱)が伝熱部材31を伝わり伝熱対象21aが吸熱し昇温される。尚、熱は、本来高温物体から低温物体へと移動し、その移動現象を伝熱というが、本明細書においては低温物体から高温物体への熱の移動も伝熱としている。
【0017】
第1ケーシング11は、図1B図1Dに示すように、開口11aを有する箱状に合成樹脂材で形成されている。第1ケーシング11は、底部11bと壁部11cとを有している。底部11bと壁部11cとは、一体的に形成されている。尚、合成樹脂材は、合成した高分子化合物により形成される材料であり、合成樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。また、第1ケーシング11は、合成樹脂材以外の材料、例えば、木材、パラフィン、ナフタレンなどの有機固体材、セラミックス材、ガラスセラミックス材などで形成するようにしてもよい。
【0018】
底部11bは、多角形状(本実施形態では、四角形状である)に形成されており、底部11bの上面周縁部には、壁部11cの下端部が接続されている。尚、底部11bは、多角形状に限定されず、円形状、楕円形状に形成されてもよく、この場合、壁部11cは底部11bの形状に応じた形状に形成される。
【0019】
底部11bは、上述した合成樹脂材で板状に形成されている。底部11bは、厚み方向に貫通する貫通穴11b1が設けられている。このように、底部11bは、板状に形成され、厚み方向に貫通する貫通穴11b1を備えた板状部である。貫通穴11b1の形状は、伝熱対象21aまたは熱伝導可能部材(後述する)の形状に応じて設定されるのが好ましい。例えば、伝熱対象21aが四角形状である場合には、貫通穴11b1の形状は、図1Cに示すように、四角形状に形成される。
【0020】
図1Bに示すように、底部11bひいては第1ケーシング11には、伝熱構造体540が設けられている。すなわち、底部11bひいては第1ケーシング11は、伝熱構造体540が取り付けられる対象となる部材である取付先部材である。尚、貫通穴11b1は、取付先部材に形成された貫通穴である取付先貫通穴である。
【0021】
伝熱構造体540は、図1Bに示すように、伝熱部材31とシート部材である樹脂フィルム32とを備えている。貫通穴11b1には、伝熱部材31が設けられている。伝熱部材31は、底部11bより熱伝導率が高い部材で形成され、伝熱対象21aに熱伝導可能な状態にて接触可能に貫通穴11b1内に収容可能である。伝熱部材31は、樹脂フィルム32の配設部32cに一体的に設けられている。尚、伝熱部材31は、樹脂フィルム32に接着剤などによる接着されてもよく、熱溶着などにより融着されてもよい。また、伝熱部材31は、接着材を介さないで樹脂フィルム32の配設部32cに直接密着(粘着)させるようにしてもよい。
【0022】
尚、伝熱部材31は、底部(板状部)11bより熱伝導率が高い部材で形成され、伝熱対象21aに熱伝導可能な状態にて接触できるように貫通穴11b1内に設けられ伝熱対象21aとの間にて伝熱する伝熱部であると言える。また、底部11bと伝熱部材31とは、一体的に形成されており、伝熱用一体構造体30を形成する。ひいては、伝熱用一体構造体30は、第1ケーシング11と伝熱部材31とにより形成することが可能となる。尚、熱伝導可能な状態(熱伝導可能状態)とは、本実施形態のように、基板20など熱伝導可能な部材を介して伝熱対象21aと伝熱部材31との間で間接的に伝熱する状態だけでなく、熱伝導可能な部材(熱伝導可能部材)を介さないで伝熱対象21aと伝熱部材31との間で直接的に伝熱する状態を含む。換言すると、本実施形態のように、伝熱部材31が直接接触する接触先が熱伝導可能部材である場合もあれば、接触先が伝熱対象21aである場合もある。
【0023】
伝熱部材31は、シリコーン系、ウレタン樹脂系、ゴム系などのベース材料に熱伝導性を有するフィラー(熱伝導性フィラー)を添加した材料(伝熱材)にて形成されている。シリコーン系の材料としては、1液硬化型シリコーン、2液硬化型シリコーンが挙げられる。例えば、1液硬化型シリコーンは、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンを含有する主成分に、架橋材としての架橋性シリル基含有低分子化合物を含有したものである。1液硬化型シリコーンとしては、加熱脱水縮合型、湿気硬化型、脱オキシム型、脱酢酸型、過酸化物硬化反応型などのシリコーンが挙げられる。また、2液硬化型シリコーンは、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンを含有する主剤と硬化剤の混合により硬化するものである。2液硬化型シリコーンとしては、付加重合型、脱アルコール縮合型などのシリコーンが挙げられる。
【0024】
熱伝導性フィラーは、熱伝導率が高い材質にて粒子、粉状、粒状に形成されたものである。材質としては、金属や、酸化物系(アルミナ、チタン酸バリウム)、水酸化物系(ハイドロキシアパタイト)、窒化物系(窒化ケイ素)などのセラミックスなどが挙げられる。尚、伝熱部材31が電気的絶縁性を要求される場合には、絶縁性の高い(電気伝導性の低い)材質を選択するのが好ましい。
【0025】
伝熱部材31の熱伝導率は、板状部である底部11bの熱伝導率より大きい値に設定されるのが好ましい。例えば、底部11bの熱伝導率が1W/m・K未満である場合には、伝熱部材31の熱伝導率は、1W/m・K以上であるのが好ましく、2W/m・K以上であるのがより好ましく、5W/m・K以上であるのがさらに好ましい。
【0026】
伝熱部材31の硬度は、底部11bの硬度より低いことが好ましい。底部11bの硬度は、例えば、ショアA硬度100以上であり、伝熱部材31の硬度は、例えば、ショアA硬度50以下であることが好ましい。これによれば、伝熱部材31を、伝熱対象21aに接触している熱伝導可能部材や伝熱対象21aにより密着させることができ、すなわち伝熱部材31の密着性をより向上させることができる。その結果、伝熱部材31による放熱性(伝熱性)をより向上させることが可能となる。
【0027】
伝熱部材31の厚みは、底部11bの厚みより大きい値に設定されていることが好ましい。伝熱部材31が底部11bから突出する突出量は、伝熱部材31の上面及び下面(接触面)が接触先の被接触面とそれぞれ接触できる値に設定されている。例えば、突出量は、伝熱部材31の接触面と対向する被接触面との距離に伝熱部材31の潰し代を加算した値に設定するのが好ましい。これによれば、伝熱部材31が底部11bの表面及び裏面より突出させて配置することが可能となるので、伝熱部材31を熱伝導可能部材である基板20に直接的に接触(密着)させることができ、ひいては、伝熱部材31を伝熱対象21aである電子部品21aに熱伝導可能な状態にて接触させることができる。その結果、伝熱部材31による放熱性(伝熱性)をより向上させることが可能となる。また、他の部品を設けることなく、簡便な構造または低コストにて、伝熱部材31を伝熱対象21aに接触させることが可能となる。
【0028】
尚、伝熱部材31の厚みが底部11bの厚みより大きい値に設定されている場合であっても、伝熱部材31の上面及び下面(接触面)が底部11bから突出する場合もあれば、いずれか一方の接触面のみが底部11bから突出する場合もある。この場合には、他方の接触面は底部11bの表面より凹んでいるため、少なくともその凹んでいる量だけ被接触面を伝熱部材31に向けて突出するように設定するのが好ましい。
【0029】
また、伝熱部材31の厚みは、底部11bの厚みより小さい値に設定されるようにしてもよい。この場合、伝熱部材31の接触面が底部11bの表面より凹んでいるので、少なくともその凹んでいる量だけ被接触面を伝熱部材31に向けて突出するように設定するのが好ましい。これにより、接触先である伝熱対象21aまたは伝熱対象21aに接触する熱伝導可能な部材(熱伝導可能部材)の被接触面を伝熱部材31の表面に確実に接触させることができ、伝熱部材31と接触先(伝熱対象21aや熱伝導可能部材)との接触性(密着性)を確実に確保することが可能となる。
【0030】
図1Bに示すように、底部11bの下面には、樹脂フィルム32が貫通穴11b1を塞ぐように設けられている。樹脂フィルム32は、シート状に形成され、取付先部材である底部11bの被接着部11dに接着可能である接着部32bを有するシート部材である。樹脂フィルム32の大きさは、貫通穴11b1の大きさより大きくなるように設定されている。樹脂フィルム32の周縁部は、接着剤、両面テープなどの接着部材32aを介して貫通穴11b1の開口周縁部(被接着部11dである。)に接着されている。また、樹脂フィルム32の周縁部は、貫通穴11b1の開口周縁部と溶着されるようにしてもよい。樹脂フィルム32の周縁部は、第1ケーシング11の底部11bの被接着部11dに接着可能である接着部32bである。これによれば、貫通穴11b1を樹脂フィルム32によってシール(密閉)することが可能となる。接着部32bは、樹脂フィルム32にて伝熱部材31が配設される配設部32cを囲むように設けられるのが好ましい。これによれば、貫通穴11b1に配設された伝熱部材31によって高い伝熱性を確保しながら、貫通穴11b1を樹脂フィルム32によってシール(密閉)することが可能となる。また、樹脂フィルム32は、貫通穴11b1に形成された伝熱部材31を支持するためのものである。また、樹脂フィルム32は、平面状に形成されるのが好ましい。
【0031】
樹脂フィルム32は、オレフィン系であるポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系エラストマー(TPO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウレタン系、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(四フッ素化樹脂、PTFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(三フッ素化樹脂、PCTFE))などの材料で形成されている。樹脂フィルム32の厚みは、熱伝導性を考慮して例えば0.1~1.0mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0032】
壁部11cは、底部11bと同様に、合成樹脂材で板状に形成されている。壁部11cは、底部11bの辺の数に応じた数の複数の壁11c1~11c4により形成されている。壁11c1~11c4は、一体的に枠状に形成されている。
【0033】
第2ケーシング12は、図1Aに示すように、第1ケーシング11の開口11aを覆うように形成された蓋部材である。第2ケーシング12は、第1ケーシング11の底部11bと同様な形状(すなわち、本実施形態では、四角形状)に形成されている。第2ケーシング12は、第1ケーシング11と同様に合成樹脂材で形成されている。第2ケーシング12の下面周縁部は、第1ケーシング11の壁部11cの上端部に気密的ないし液密的に取り付けられている。筐体10は、第1ケーシング11及び第2ケーシング12により形成されるシール性(気密性)の高い筐体である。
【0034】
筐体10には、図1Aに示すように、ヒートシンクなどの放熱部材13が設けられている。放熱部材13は、支柱13bを介して第1ケーシング11(例えば、第1ケーシング11の底部11b)に取り付けられている。これによれば、放熱部材13が底部11bに取り付けられることにより、樹脂フィルム32が放熱部材13の上面(裏面)と底部11bの下面との間に挟持可能となり、樹脂フィルム32に接着(固着)されている伝熱部材31を貫通穴11b1により強固かつ確実に固定することが可能となる。尚、放熱部材13は、支柱13bなどの別部材を介することなく、樹脂フィルム32に直接接着するようにしてもよい。また、放熱部材13は、GAPフィラー、放熱シートなど密着性を有する放熱材を介して樹脂フィルム32に接触するようにしてもよい。
【0035】
放熱部材13は、取付先や接触先(本実施形態では、樹脂フィルム32)などに対して放熱・吸熱するための部材であり、熱伝導率の高いアルミニウム、鉄、銅などの金属材で形成されている。また、放熱部材13は、金属材に限定されず、熱伝導率が高い材料(例えば、熱伝導率が7W/m・K以上の材料)であればカーボン(C)、シリコン(Si)、カーボンナノチューブ(C)、水晶(SiO)など他の材料で形成してもよい。放熱部材13は、放熱・吸熱性能を増大するために表面積を増大させるような形状に形成されるのが好ましく、例えば、表面積増大部として板状または棒状のフィン13aを設ければよい。また、表面積増大部は、蛇腹状に形成してもよい。
【0036】
尚、伝熱部材31は、伝熱対象21aと熱伝導(熱交換)する相手(本実施形態では、放熱部材13)に熱伝導可能状態にて接触できるように設けられるのが好ましい。この場合、伝熱部材31は樹脂フィルム32を含んで形成されているので、本実施形態では、熱伝導可能状態とは、熱伝導可能部材を介さないで伝熱対象21aと伝熱部材31(樹脂フィルム32)との間で直接的に伝熱する状態であると言える。尚、GAPフィラー、放熱シートなどの熱伝導可能部材を介する場合、この熱伝導可能部材を介して伝熱対象21aと伝熱部材31(樹脂フィルム32)との間で間接的に伝熱する状態であると言える。
【0037】
前述した伝熱用一体構造体30の製造工程(製造方法)について説明する。最初に伝熱構造体540を製造する(図1E参照)。伝熱構造体540は、伝熱部材31を樹脂フィルム32に接着剤などによる接着や融着などにより接着して製造される。その後、別に成形された第1ケーシング11(図1D参照)に伝熱構造体540を取り付けることにより伝熱用一体構造体30を製造する。このとき、伝熱構造体540の伝熱部材31が取付先貫通穴11b1に挿入(収容)され、樹脂フィルム32の周縁部(接着部32b)が、接着部材32aを介して貫通穴11b1の開口周縁部(被接着部11d)に接着される。
【0038】
(第2実施形態)
さらに、図2A図2Bを参照して第2実施形態に係る伝熱構造体40を適用した伝熱用一体構造体530を説明する。伝熱用一体構造体530は、伝熱構造体540に代えて伝熱構造体40を備えた点で、上述した第1実施形態に係る伝熱用一体構造体30と相違する。図2Aに示すように、伝熱用一体構造体530は、第1実施形態と同様である第1ケーシング11と伝熱構造体40とを含んで形成されている。
【0039】
図2Aに示すように、伝熱構造体40は、伝熱部材41が第1ケーシング11の底部11bに設けられた貫通穴11b1に収容されるように、伝熱構造体40が取り付けられる取付先部材である第1ケーシング11に取り付けられている。貫通穴11b1には、伝熱構造体40(特に第1伝熱部材41a)が一体的に設けられている。底部11b(ひいては第1ケーシング11)と伝熱構造体40とは、一体的に形成されており、伝熱用一体構造体530を形成する。
【0040】
伝熱構造体40は、主として図2Bに示すように、シート部材42と伝熱部材41とを備えている。シート部材42は、シート状に形成され、取付先部材である第1ケーシング11の被接着部11d(図2A参照)に接着可能である接着部42aを有する。シート部材42は、平面状に形成されるのが好ましい。シート部材42は、上述した樹脂フィルム32と同様に、貫通穴11b1を塞ぐように設けられている。シート部材42の大きさは、貫通穴11b1の大きさより大きくなるように設定されている。シート部材42の周縁部は、接着剤、両面テープなどの接着部材32aを介して貫通穴11b1の開口周縁部に接着されている。シート部材42の周縁部は、第1ケーシング11の底部11bの被接着部11dに接着可能である接着部42aである。これによれば、貫通穴11b1をシート部材42によってシール(密閉)することが可能となる。接着部42aは、シート部材42にて伝熱部材41が配設される配設部42bを囲むように設けられるのが好ましい。これによれば、貫通穴11b1に配設された伝熱部材41によって高い伝熱性を確保しながら、貫通穴11b1をシート部材42によってシール(密閉)することが可能となる。
【0041】
伝熱部材41は、第1ケーシング11(取付先部材)より熱伝導率が高い部材(例えば、上述した伝熱部材31と同様の部材)で形成され、シート部材42の配設部42bに一体的に設けられ、かつ、第1ケーシング11に厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴である貫通穴11b1内に収容可能である伝熱部材である。
【0042】
伝熱部材41は、上述した伝熱部材31と同様の伝熱材にて形成されている。伝熱部材41は、シート部材42の一方側(上側)に設けられた第1伝熱部材41aと、シート部材42の他方側(下側)に設けられた第2伝熱部材41bと、を備えている。第1伝熱部材41a及び第2伝熱部材41bは、シート部材42に密着されている。具体的には、第1伝熱部材41aは、接着部材41a1を介してシート部材42の配設部42bに接着により固定されている。第2伝熱部材41bは、接着部材41b1を介してシート部材42の配設部42bに接着により固定されている。第1伝熱部材41a及び第2伝熱部材41bは、接着部材41a1、接着部材41b1及びシート部材42を挟んで対向するように配置されている。
【0043】
接着部材41a1、接着部材41b1及びシート部材42は、伝熱部材41全体として熱伝導率が所定値(例えば、2W/m・K)以上に維持可能である厚み、材料に設定されるのが好ましい。所定値は、伝熱部材31の熱伝導率と同程度に設定されるのが好ましい。換言すると、伝熱部材41は、接着部材41a1、接着部材41b1及びシート部材42も含めた伝熱部材41全体として底部11b(板状部)より熱伝導率が高くなるように形成されるのが好ましい。尚、第1伝熱部材41a及び第2伝熱部材41bは、接着部材41a1及び接着部材41b1をそれぞれ介さないでシート部材42の配設部42bに直接密着(粘着)させるようにしてもよい。
【0044】
前述したように、伝熱部材41は、底部11bより熱伝導率が高い部材で形成され、伝熱対象21aに接触可能に貫通穴11b1内に設けられ伝熱対象21aとの間にて伝熱する伝熱部(上述した伝熱部材31と同様の伝熱部)であると言える。尚、伝熱部材41のうち貫通穴11b1に設けられている部分(本実施形態では、第1伝熱部材41a)は、貫通穴11b1には接着されていない。また、第1伝熱部材41aは、接着剤などで貫通穴11b1に接着したり、シール剤などで貫通穴11b1に密着したりしてもよい。
【0045】
尚、伝熱用一体構造体530の製造工程(製造方法)については、最初に伝熱構造体40を製造し、その後、別に成形された第1ケーシング11に伝熱構造体40を取り付けることにより伝熱用一体構造体530を製造する。伝熱構造体40は、第1伝熱部材41a及び第2伝熱部材41bをシート部材42に接着して製造される。
【0046】
(第3実施形態)
さらに、図3を参照して第3実施形態に係る伝熱用一体構造体の伝熱構造体140を説明する。第3実施形態に係る伝熱用一体構造体は、伝熱構造体40に代えて伝熱構造体140を備えた点で、上述した第2実施形態に係る伝熱用一体構造体530と相違する。第3実施形態に係る伝熱用一体構造体は、第1実施形態と同様である第1ケーシング11と伝熱構造体140とを含んで形成されている。
【0047】
伝熱構造体140は、伝熱部材141が第1ケーシング11の底部11bに設けられた貫通穴11b1に収容されるように、伝熱構造体140が取り付けられる取付先部材である第1ケーシング11に取り付けられている。貫通穴11b1には、伝熱構造体140(特に第1伝熱部材41a)が一体的に設けられている。底部11b(ひいては第1ケーシング11)と伝熱構造体140とは、一体的に形成されており、第3実施形態に係る伝熱用一体構造体を形成する。
【0048】
伝熱構造体140は、図3に示すように、シート部材142と伝熱部材141とを備えている。シート部材142は、シート状に形成され、取付先部材である第1ケーシング11の被接着部11dに接着可能である接着部42aを有する。シート部材142は、上述したシート部材42と同様に形成されている。シート部材142は、上述したシート部材42と同様に、貫通穴11b1を塞ぐように設けられている。シート部材142の大きさは、貫通穴11b1の大きさより大きくなるように設定されている。シート部材142の周縁部は、接着剤、両面テープなどの接着部材32aを介して貫通穴11b1の開口周縁部に接着されている。シート部材142の周縁部は、第1ケーシング11の底部11bの被接着部11dに接着可能である接着部42aである。接着部42aは、シート部材142にて伝熱部材141が配設される配設部42bを囲むように設けられるのが好ましい。シート部材142は、厚み方向に貫通する1または複数のシート部材貫通孔142cを備えている。シート部材貫通孔142cは、配設部42bの範囲内に設けられるのが好ましい。
【0049】
伝熱部材141は、第1ケーシング11(取付先部材)より熱伝導率が高い部材(例えば、伝熱部材41と同様の部材)で形成され、シート部材142の配設部42bに一体的に設けられ、かつ、第1ケーシング11に厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴である貫通穴11b1内に収容可能である伝熱部材である。
【0050】
伝熱部材141は、上述した伝熱部材41と同様の伝熱材にて形成されている。伝熱部材141は、シート部材142の一方側(上側)に設けられた第1伝熱部材41aと、シート部材142の他方側(下側)に設けられた第2伝熱部材41bと、シート部材貫通孔142c内に設けられ第1伝熱部材41aと第2伝熱部材41bとを連結する1または複数の連結部141cと、を備えている。第1伝熱部材41a及び第2伝熱部材41bは、シート部材142を挟んで対向するように配置されている。第1伝熱部材41a及び第2伝熱部材41bは、シート部材142に密着(接着)されている。連結部141cは、1または複数のシート部材貫通孔142c内に形成されている。このように、第1伝熱部材41aと第2伝熱部材41bとが、1または複数の連結部141cを介してシート部材142を挟み込むことにより、伝熱部材141をシート部材142に強固に固定することが可能となる。
【0051】
シート部材142及びシート部材貫通孔142cは、伝熱部材141全体として熱伝導率が所定値(例えば、2W/m・K)以上に維持可能である厚み、形状に設定されるのが好ましい。所定値は、伝熱部材31の熱伝導率と同程度に設定されるのが好ましい。換言すると、伝熱部材141は、シート部材142も含めた伝熱部材141全体として底部11b(板状部)より熱伝導率が高くなるように形成されるのが好ましい。また、伝熱部材141は、伝熱部材41と同様に、底部11bより熱伝導率が高い部材で形成され、伝熱対象21aに接触可能に貫通穴11b1内に設けられ伝熱対象21aとの間にて伝熱する伝熱部(上述した伝熱部材31と同様の伝熱部)であると言える。
【0052】
尚、第3実施形態に係る伝熱用一体構造体の製造工程(製造方法)については、最初に伝熱構造体140を製造し、その後、別に成形された第1ケーシング11に伝熱構造体140を取り付けることにより第3実施形態に係る伝熱用一体構造体を製造する。伝熱構造体140は、第1伝熱部材41aを所望の形状に形成するための型(治具)を、シート部材142の上面に設置し、第2伝熱部材41bを所望の形状に形成するための型(治具)を、シート部材142の下面に設置した後、液状の伝熱材を流し込む。その後、伝熱材が硬化されて、伝熱構造体140が形成される(図3参照)。このとき、伝熱部材141は、シート部材貫通孔142cの壁面及びシート部材142に接着固定される。
【0053】
(第4実施形態)
さらに、図4を参照して第4実施形態に係る伝熱用一体構造体の伝熱構造体240を説明する。第4実施形態に係る伝熱用一体構造体は、伝熱構造体40に代えて伝熱構造体240を備えた点で、上述した第2実施形態に係る伝熱用一体構造体530と相違する。第4実施形態に係る伝熱用一体構造体は、第1実施形態と同様である第1ケーシング11と伝熱構造体240とを含んで形成されている。
【0054】
伝熱構造体240は、伝熱部材241が第1ケーシング11の底部11bに設けられた貫通穴11b1に収容されるように、伝熱構造体240が取り付けられる取付先部材である第1ケーシング11に取り付けられている。貫通穴11b1には、伝熱構造体240が一体的に設けられている。底部11b(ひいては第1ケーシング11)と伝熱構造体240とは、一体的に形成されており、第4実施形態に係る伝熱用一体構造体を形成する。
【0055】
伝熱構造体240は、図4に示すように、シート部材42と伝熱部材241と封入部材243とを備えている。シート部材42は、シート状に形成され、取付先部材である第1ケーシング11の被接着部11dに接着可能である接着部42aを有する。シート部材42は、貫通穴11b1を塞ぐように設けられている。シート部材42の大きさは、貫通穴11b1の大きさより大きくなるように設定されている。
【0056】
封入部材243は、シート部材42との間に空間Sを形成し、空間Sに伝熱部材241を封入する部材である。封入部材243は、シート部材42と同様の材料で形成されている。封入部材243は、空間Sを形成し伝熱部材241を収容可能である封入部243aと、封入部243aの周縁部に一体的に接続されてシート部材42に接続するための接続部243bとを備えている。封入部243aは、伝熱部材241が配設される配設部42bを覆うように設定されるのが好ましい。接続部243bは、シート部材42の周縁部に接着剤、熱圧着、溶着などにより接着されている。接続部243bは、接着剤、両面テープなどの接着部材32aを介して貫通穴11b1の開口周縁部に接着されている。シート部材42の周縁部は、第1ケーシング11の底部11bの被接着部11dに接着するための接着部42aである。接着部42aは、シート部材42にて伝熱部材241が配設される配設部42bを囲むように設けられるのが好ましい。
【0057】
伝熱部材241は、第1ケーシング11(取付先部材)より熱伝導率が高い部材(例えば、伝熱部材41と同様の部材)で形成され、シート部材42の配設部42bに一体的に設けられ、かつ、第1ケーシング11に厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴である貫通穴11b1内に収容可能である伝熱部材である。
【0058】
シート部材42及び封入部材243は、伝熱部材241全体として熱伝導率が所定値(例えば、2W/m・K)以上に維持可能である厚み、形状に設定されるのが好ましい。所定値は、伝熱部材31の熱伝導率と同程度に設定されるのが好ましい。換言すると、伝熱部材241は、シート部材42及び封入部材243も含めた伝熱部材241全体として底部11b(板状部)より熱伝導率が高くなるように形成されるのが好ましい。また、伝熱部材241は、伝熱部材41と同様に、底部11bより熱伝導率が高い部材で形成され、伝熱対象21aに接触可能に貫通穴11b1内に設けられ伝熱対象21aとの間にて伝熱する伝熱部(上述した伝熱部材31と同様の伝熱部)であると言える。
【0059】
尚、第4実施形態に係る伝熱用一体構造体の製造工程(製造方法)については、最初に伝熱構造体240を製造し、その後、別に成形された第1ケーシング11に伝熱構造体240を取り付けることにより第4実施形態に係る伝熱用一体構造体を製造する。第4実施形態に係る伝熱構造体240の製造工程(製造方法)の一つ目については、最初にシート部材42に空間Sを形成しながら封入部材243を取り付け固定し、その後、空間S内に液状の伝熱材を流し込み、余分な空気を吸引する。その後、伝熱材が硬化されて、伝熱構造体240が形成される(図4参照)。このとき、伝熱部材241は、シート部材42及び封入部材243に接着固定される。さらに、二つ目については、最初に伝熱部材241を所定形状(貫通穴11b1に応じた形状)に予め成形し、その後、その伝熱部材241をシート部材42と封入部材243とにより挟み込んで内部の空気を吸引しながらシート部材42と封入部材243との周縁部を融着する(真空ラミネート)。いずれの場合も、伝熱部材241は、シート部材42と封入部材243に密着固定される。
【0060】
また、上述した第4実施形態においては、平面状に形成したシート部材42を採用したが、下方に突出する凸部242cを設けたシート部材242を採用するようにしてもよい。この場合、図5に示すように、凸部242cは、配設部42bの範囲内に設けられるのが好ましく、封入部243aに対応する位置に設けられるのが好ましい。凸部242cと封入部243aとにより、伝熱部材241を収容する空間Sが形成されている。この変形例によれば、凸部242cの突出量を調整することで底部11bの下面からの突出量を調整することが可能となり、伝熱構造体240との密着程度を調整することが可能となる。
【0061】
(実施形態の作用・効果)
上述した実施形態に係る伝熱構造体40,140,240,540は、シート状に形成され、取付先部材(底部)11bの被接着部11dに接着可能である接着部32b,42aを有するシート部材32,42,142,242と、取付先部材(底部)11bより熱伝導率が高い部材で形成され、シート部材32,42,142,242の配設部32c,42bに一体的に設けられ、かつ、取付先部材(底部)11bに厚み方向に貫通するように形成された取付先貫通穴11b1内に伝熱対象21aに熱伝導可能な状態にて接触可能に収容可能である伝熱部材31,41,141,241と、を備えている。
【0062】
この伝熱構造体40,140,240,540によれば、取付先部材(底部)11bに備えられた取付先貫通穴11b1内に、伝熱対象21aに熱伝導可能な状態にて接触するように伝熱部材31,41,141,241を収容して、取付先部材(底部)11bに伝熱構造体40,140,240,540を取り付けることが可能となり、その結果、伝熱対象21aの熱を、伝熱部材31,41,141,241を介してすなわち取付先部材(底部)11bを挟んで伝熱対象21aの反対側に伝熱させることが可能となる。換言すると、比較的熱伝導率の低い遮蔽部材にて伝熱対象21aが遮蔽された場合において、比較的熱伝導率の低い遮蔽部材を取付先部材(底部)11bとし、遮蔽部材に伝熱部材31,41,141,241を設けることにより、伝熱対象21aの熱を、伝熱部材31,41,141,241を介してすなわち取付先部材(底部)11bを挟んで伝熱対象21aとの間にて伝熱させることが可能となる。さらには、比較的熱伝導率の低い遮蔽部材を挟んで伝熱対象21aとの間にて伝熱させることが可能となる伝熱構造体40,140,240,540を提供することが可能となる。
【0063】
また、伝熱構造体40,140,240,540においては、接着部32b,42aは配設部32c,42bを囲むように設けられていることが好ましい。これによれば、取付先貫通穴11b1をシート部材32,42,142,242によってシール(密閉)することが可能となる。さらには、取付先貫通穴11b1に配設された伝熱部材31,41,141,241によって高い伝熱性を確保しながら、取付先貫通穴11b1をシート部材32,42,142,242によってシール(密閉)することが可能となる。
【0064】
また、伝熱構造体240においては、シート部材42との間に空間Sを形成し、空間Sに伝熱部材241を封入する封入部材243を、さらに備えることが好ましい。これによれば、伝熱部材241を形成するための治具(型)を設けることなく、伝熱部材241を簡便に製造することが可能となり、ひいては、伝熱構造体40,140,240,540を比較的容易に製造することが可能となる。
【0065】
また、伝熱構造体40,140においては、伝熱部材141,241は、シート部材42,142の一方側に設けられる第1伝熱部材41aと、シート部材42,142の他方側に設けられる第2伝熱部材41bと、を備えており、第1伝熱部材41a及び第2伝熱部材41bは、シート部材42,142に密着されていることが好ましい。これによれば、伝熱構造体40,140を比較的容易に製造することが可能となる。
【0066】
また、伝熱構造体140においては、シート部材142は、厚み方向に貫通する1または複数のシート部材貫通孔142cを備えており、伝熱部材141は、シート部材142の一方側に設けられた第1伝熱部材41aと、シート部材142の他方側に設けられた第2伝熱部材41bと、シート部材貫通孔142c内に設けられ第1伝熱部材41aと第2伝熱部材41bとを連結する連結部141cと、を備えていることが好ましい。これによれば、熱伝導性が比較的高い伝熱構造体140を比較的容易に製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
11b…取付先部材(底部)、11b1…取付先貫通穴(貫通穴)、11d…被接着部、21a…伝熱対象、31,41,141,241…伝熱部材、32…樹脂フィルム、32,42,142,242…シート部材、32b,42a…接着部、32c,42b…配設部、40,140,240,540…伝熱構造体、41a…第1伝熱部材、41b…第2伝熱部材、141c…連結部、243…封入部材、S…空間。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3
図4
図5