(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】計画評価装置及び計画評価方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0637 20230101AFI20241210BHJP
【FI】
G06Q10/0637
(21)【出願番号】P 2021086680
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 祐太
(72)【発明者】
【氏名】森 靖英
(72)【発明者】
【氏名】恵木 正史
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0300955(US,A1)
【文献】国際公開第2018/220885(WO,A1)
【文献】特開2020-113161(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0049621(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の計画を組み合わせて立案される計画表を評価する計画評価装置であって、
所定の変換ルールに基づいて、前記計画表を計画成分に分割し、分割した各計画成分を特徴量に変換する特徴量変換部と、
前記特徴量を入力として、前記計画表のKPI(Key Performance Indicator)を目的変数とする機械学習モデルを作成するモデル学習部と、
前記機械学習モデルに対する各前記特徴量の寄与率を算出する寄与率計算部と、
前記特徴量の寄与率に基づいて、当該特徴量の変換元の前記計画成分が前記計画表のKPIに及ぼす影響度を算出する影響度計算部と、
を備えることを特徴とする計画評価装置。
【請求項2】
前記特徴量変換部は、複数の前記変換ルールに基づいて、それぞれ分割した各計画成分を前記特徴量に変換し、
前記モデル学習部は、各前記変換ルールに基づいて変換された前記特徴量ごとに、複数の前記機械学習モデルを作成し、
前記寄与率計算部は、それぞれ前記機械学習モデルにおける前記特徴量の寄与率を算出し、
前記影響度計算部は、それぞれの前記機械学習モデルにおいて高い前記寄与率が算出された前記特徴量を重ね合わせて前記影響度を算出するとともに、前記重ね合わせた前記特徴量の変換元の前記計画成分を抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載の計画評価装置。
【請求項3】
前記特徴量変換部は、任意の方法による前記変換ルールに基づいて、前記計画表を計画成分に分割し、分割した計画成分ごとに、当該計画成分の項目値を1の数値またはカテゴリ値に圧縮変換することによって前記特徴量を得る
ことを特徴とする請求項2に記載の計画評価装置。
【請求項4】
前記影響度計算部は、前記寄与率計算部によって算出された前記特徴量の寄与率を各特徴量の変換元の前記計画成分に分配し、分配後の寄与率を用いて、それぞれの前記機械学習モデルにおいて高い前記寄与率が算出された前記特徴量を重ね合わせて前記影響度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の計画評価装置。
【請求項5】
前記モデル学習部は、前記作成した複数の機械学習モデルを統合し、
前記寄与率計算部は、前記モデル学習部が統合した統合モデルから、前記特徴量の寄与率を算出し、
前記影響度計算部は、前記寄与率計算部によって算出された前記統合モデルにおける前記特徴量の寄与率を各特徴量の変換元の前記計画成分に分配し、前記計画成分ごとに、分配された寄与率を重ね合わせて前記影響度を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の計画評価装置。
【請求項6】
前記計画表には、前記影響度の算出対象とされる対象計画表と、前記対象計画表の比較対象とされる基準計画表とが含まれ、
前記対象計画表と前記基準計画表との差分が評価の対象とされ、かつ、前記差分の計画成分について前記特徴量変換部によって変換された前記対象計画表における第1の特徴量と前記特徴量変換部によって変換された前記基準計画表における第2の特徴量とを交換しても両計画表に矛盾が生じない場合、
前記影響度計算部は、前記差分の計画成分ごとに、当該計画成分を交換した場合の両計画表における前記寄与率の組み合わせを計算することにより、前記計画成分による影響度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の計画評価装置。
【請求項7】
前記計画表が複数のKPIを有する場合に、
前記影響度計算部は、各KPIに対する前記影響度をそれぞれ算出し、各KPIの重み付けに基づいて各影響度を合算することにより、前記複数のKPIの全体に対する影響度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の計画評価装置。
【請求項8】
前記特徴量変換部は、前記計画表に含まれる項目の値またはその範囲に基づいて自動作成される前記変換ルールに基づいて、前記計画表を計画成分に分割し、分割した各計画成分を前記特徴量に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の計画評価装置。
【請求項9】
前記特徴量変換部は、ユーザから指定された独自の前記変換ルールに基づいて、前記計画表を計画成分に分割し、分割した各計画成分を前記特徴量に変換する
ことを特徴とする請求項1に記載の計画評価装置。
【請求項10】
所定のアルゴリズムによって、与えられた条件を満たすように前記計画表を立案する計画生成部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の計画評価装置。
【請求項11】
影響度計算部によってKPIに及ぼす前記影響度が算出された前記計画表のうちから、間接的に前記KPIの変化に寄与する計画成分を意味する間接影響成分を、前記計画表における計画成分間の依存関係に基づいて抽出する間接影響関係計算部を、さらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の計画評価装置。
【請求項12】
前記計画表には、前記影響度の算出対象とされる対象計画表と、前記対象計画表とは別の立案済みの履歴計画表とが含まれ、
間接影響関係計算部は、影響度計算部によってKPIに及ぼす前記影響度が算出された前記対象計画表の計画成分から1つの着目計画成分を決定し、前記着目計画成分を有する前記履歴計画表において前記着目計画成分と同時に出現する計画成分を探索し、当該探索で該当した前記計画成分を、前記着目計画成分に対する前記間接影響成分と判定して抽出する
ことを特徴とする請求項11に記載の計画評価装置。
【請求項13】
所定のアルゴリズムによって、与えられた条件を満たす計画表を立案する計画生成部と、
前記計画生成部に計画表の立案を指示する計画生成制御部と、
をさらに備え、
前記計画表には、前記影響度の算出対象とされる対象計画表と、前記対象計画表の比較対象とされる基準計画表とが含まれ、
前記間接影響関係計算部は、前記影響度計算部によってKPIに及ぼす前記影響度が算出された前記対象計画表の計画成分から、1つの着目計画成分を決定し、前記着目計画成分とは別の計画成分を間接影響候補として設定し、さらに、前記間接影響候補を前記基準計画表の前記間接影響候補に対応する計画成分に置き換え、
前記計画生成制御部は、前記着目計画成分と前記置き換え後の前記間接影響候補とを有する模擬の計画表の立案を前記計画生成部に指示し、
前記間接影響関係計算部は、前記計画生成部による前記模擬の計画表の立案において問題が生じた場合に、前記置き換え前の前記間接影響候補を、前記着目計画成分に対する前記間接影響成分と判定して抽出する
ことを特徴とする請求項11に記載の計画評価装置。
【請求項14】
前記影響度計算部による前記影響度の算出結果を出力装置に表示させる画面出力部をさらに備え、
前記画面出力部は、前記算出結果の表示において、前記影響度計算部によって前記影響度が算出された複数の前記計画成分のうち、所定の基準を超える高い影響度が算出された計画成分を強調表示する
ことを特徴とする請求項1から請求項13のうちの何れか1項に記載の計画評価装置。
【請求項15】
複数の計画を組み合わせて立案される計画表を評価する計画評価装置による計画評価方法であって、
前記計画評価装置が、所定の変換ルールに基づいて、前記計画表を計画成分に分割し、分割した各計画成分を特徴量に変換する特徴量変換ステップと、
前記計画評価装置が、前記特徴量変換ステップで変換された前記特徴量を入力として、前記計画表のKPI(Key Performance Indicator)を目的変数とする機械学習モデルを作成するモデル学習ステップと、
前記計画評価装置が、前記モデル学習ステップで作成された前記機械学習モデルに対する各前記特徴量の寄与率を算出する寄与率計算ステップと、
前記計画評価装置が、前記寄与率計算ステップで算出された前記特徴量の寄与率に基づいて、当該特徴量の変換元の前記計画成分が前記計画表のKPIに及ぼす影響度を算出する影響度計算ステップと、
を備えることを特徴とする計画評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計画評価装置及び計画評価方法に関し、計画の立案支援、評価、および情報抽出を行う計画評価装置及び計画評価方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
製品の生産計画や従業員のシフトスケジュールなどの業務計画作成においては、時間、空間、設備、人といったリソース等、各種の事項に関する制約条件を順守しつつ、かつ、生産量の最大化、設備の稼働率の最大化、作業員の人数の最小化等の計画の評価指標(KPI:Key Performance Indicator)を考慮した計画表を作成する必要がある。従来は、これらの高度なノウハウをもった従業員(職人)が計画表を作成していたが、後継者不足や業務効率化の観点から、計算機による計画作成装置を作成し、上記条件を考慮しながら自動立案をさせるケースが増加している。
【0003】
一方、計画表の立案における制約条件やKPIは非常に多く、それぞれが複雑に影響し合っている。そのため、計画作成装置の開発に多くの工数が掛かる場合があり、その工数削減が求められる。工数増大の原因として、立案された計画表を評価し、問題点の発見と修正案を検討するための作業時間が掛かることがあげられる。評価方法には、KPIの数値や制約条件の違反度合いに基づく定量的な方法と、意図していないバグの発見や職人の計画と比べて定式化しきれていない条件発見のために、計画表を目視で確認する方法とがある。しかし、計画表は場合によっては数千項目以上の非常に大きいものとなり、目視による確認が困難な場合がある。
【0004】
上記のような計画表の評価支援技術に関して、特許文献1には、計画表の全体評価値を複数の部分評価成分の重ね合わせによって算出し、その全体評価値を悪化させる方向で寄与度の大きい部分評価成分を取り出し、その部分評価成分がさらに小さい部分評価成分の重ね合わせによって算出されている場合、同様の方法で大きく寄与している部分評価成分を取り出す操作を繰り返すことで、全体の評価値に対して最も好ましくない方向に寄与している計画表の成分を取り出す方法が記載されている。
【0005】
また、非特許文献1には、計画表を数値的に評価するための基盤技術として、ある製品を生産する/しないなど、各計画で決定変数となる組み合わせに対して、(0,1)のダミー変数による表現方法が記載されている。
【0006】
また、非特許文献2には、機械学習等のAIモデルの分野において、評価対象データを変化させて生成した複数の摂動データと、各摂動データをAIに入力して得られた予測値との組を用いて、単純な数値列である各特徴量についてAIの予測値に対する寄与率を算出するための方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Christian D. Hubbs, Can Li, Nikolaos V. Sahinidis, Ignacio E.Grossmann, John M. Wassick, “A deep reinforcement learning approach forchemical production scheduling,” Computers and Chemical Engineering, 106982,vol.141, (2020).
【文献】Lundberg, Scott M., and Su-In Lee, "A unified approach tointerpreting model predictions," Advances in Neural Information ProcessingSystems, pp. 4765-4774, (2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載された技術には、部分評価が可能なKPIでなければ解析対象にできないという問題があった。部分評価とは、計画表を分割した上で個々に評価を行うことを意味する。また、部分評価のための計画表分割ルールを評価者が指定する必要があり、追加の工数がかかってしまう。さらに、最終的に得られる計画成分は、直接的にKPIの値を悪化させる成分となるが、計画表の成分は複雑に影響し合っているため、直接的にKPIを変化させなくても他の計画成分に影響することによって間接的にKPIに影響する成分も存在する。しかし、特許文献1の技術では直接的にKPIを変化させない成分を抽出できないという問題があった。
【0010】
また、非特許文献1に記載された技術によって計画表を記述する場合は、可能性のある全ての組み合わせに対してダミー変数を作成しなければならず、計画表が高次元でスパースなデータ構造となってしまい、非常に扱いにくいという問題があった。
【0011】
また、非特許文献2に記載の技術では、単純な数値列である特徴量の予測に対する寄与率は算出できるが、そのままでは計画表の評価に適用することはできないという問題があった。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、機械学習モデルにおける特徴量の影響度算出方法を計画表の評価に拡張することにより、部分評価できないKPIに対しても直接的または間接的に影響度が大きい成分を計画表から抽出することが可能な計画評価装置及び計画評価方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため本発明においては、複数の計画を組み合わせて立案される計画表を評価する計画評価装置であって、所定の変換ルールに基づいて、前記計画表を計画成分に分割し、分割した各計画成分を特徴量に変換する特徴量変換部と、前記特徴量を入力として、前記計画表のKPI(Key Performance Indicator)を目的変数とする機械学習モデルを作成するモデル学習部と、前記機械学習モデルに対する各前記特徴量の寄与率を算出する寄与率計算部と、前記特徴量の寄与率に基づいて、当該特徴量の変換元の前記計画成分が前記計画表のKPIに及ぼす影響度を算出する影響度計算部と、を備える計画評価装置が提供される。
【0014】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、複数の計画を組み合わせて立案される計画表を評価する計画評価装置による計画評価方法であって、前記計画評価装置が、所定の変換ルールに基づいて、前記計画表を計画成分に分割し、分割した各計画成分を特徴量に変換する特徴量変換ステップと、前記計画評価装置が、前記特徴量変換ステップで変換された前記特徴量を入力として、前記計画表のKPI(Key Performance Indicator)を目的変数とする機械学習モデルを作成するモデル学習ステップと、前記計画評価装置が、前記モデル学習ステップで作成された前記機械学習モデルに対する各前記特徴量の寄与率を算出する寄与率計算ステップと、前記計画評価装置が、前記寄与率計算ステップで算出された前記特徴量の寄与率に基づいて、当該特徴量の変換元の前記計画成分が前記計画表のKPIに及ぼす影響度を算出する影響度計算ステップと、を備える計画評価方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、計画表の評価において、部分評価できないKPIに対しても直接的または間接的に影響度が大きい成分を計画表から抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る計画評価装置1000の構成例を示すブロック図である。
【
図2】評価指標リスト1013の一例を示す図である。
【
図4】KPIデータ1015の一例を示す図である。
【
図5】影響度算出処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図6】特徴量変換ルール1022の一例を示す図である。
【
図7】特徴量変換処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図8】特徴量変換処理における圧縮変換のイメージを説明するための図である。
【
図9】計画特徴量表1023の一例を示す図である。
【
図10】寄与率算出結果1024の一例を示す図である。
【
図11】影響度情報集計処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図12】影響度算出結果1025の一例を示す図である。
【
図13】寄与率を分配及び統合する処理のイメージを説明するための図である。
【
図14】影響度算出結果1025に基づく出力画面の一例を示す図である。
【
図15】統合モデルによる影響度算出処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図16】統合モデルによる影響度算出処理において影響度を計算する処理のイメージを説明するための図である。
【
図17】本発明の第2の実施形態に係る計画評価装置1700の構成例を示すブロック図である。
【
図18】第1の間接影響関係抽出処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図19】間接影響関係を探索する処理のイメージを説明するための図である。
【
図20】間接影響関係を含めた影響度算出結果1025の一例を示す図である。
【
図21】第2の間接影響関係抽出処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。
【0018】
なお、以下では専ら、依頼を適切な従業員に割り当てる人員配置計画の評価について述べるが、本発明に係る計画評価方法は、航空機やバス、鉄道などの輸送機関の運行計画や、工場における製品製造計画など、さまざまな評価観点を複合的に組み合わせて計画を作成/変更する必要のあるシステムに対して広く適用できるものである。
【0019】
また、以下に詳述する各実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0020】
以下に説明する発明の構成において、同一または類似する構成あるいは機能には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、各実施形態で説明する構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の構成または機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0021】
また、図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、及び範囲等は、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、及び範囲等を表していない場合がある。そして、各図面において制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。したがって、本発明は、図面等に開示された位置、大きさ、形状、及び範囲等に限定されない。
【0022】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態に係る計画評価装置1000の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、計画評価装置1000は、記憶装置1001、処理装置1002、入力装置1003、及び出力装置1004を備えて構成される。
【0023】
記憶装置1001は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の、データを永続的に格納する汎用の装置であり、計画情報1010と影響度関連情報1020とを有する。なお、記憶装置1001は、計画評価装置1000を構成する他の装置と同様の端末上に構成されてもよいし、上記他の装置と同じ端末上ではなく、クラウドや外部サーバー上に存在し、ネットワーク経由でデータが参照できる構成であってもよい。
【0024】
計画情報1010は、複数の計画を組み合わせて立案される計画表を生成するための入力となる業務関係データ1011、制約リスト1012、及び評価指標リスト1013(詳細は
図2参照)と、評価対象である計画表1014(詳細は
図3参照)と、評価結果であるKPIデータ1015(詳細は
図5参照)とを含む。なお、本文では、評価指標とKPI(Key Performance Indicator)を同義とする。
【0025】
業務関係データ1011は、例えば、従業員のスキル情報や依頼割り当て可能時間情報、割り当て依頼の日付や開始・終了の時間情報や、スキル条件情報、及びその他のマスタ情報である。
【0026】
制約リスト1012は、例えば、従業員の割り当て不可能な時間に依頼を割り当てていないかどうか、残業時間が規定値以上になっていないかなど、計画表1014が必ず守らなければならない制約条件を格納したデータであって、計画生成に利用される。
【0027】
影響度関連情報1020は、計画表1014とKPIとの影響関係を学習する機械学習モデル1021と、計画表1014をモデル(機械学習モデル1021)に入力するために計画表1014の成分を変換するルールを保持する特徴量変換ルール1022(詳細は
図6参照)と、計画表1014を変換して得られた特徴量を保持する計画特徴量表1023(詳細は
図9参照)と、機械学習モデル1021に対する特徴量の寄与率の算出結果を保持する寄与率算出結果1024(詳細は
図10参照)と、影響度の算出結果を保持する影響度算出結果1025(詳細は
図12参照)と、を含む。
【0028】
処理装置1002は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ等を有して構成される汎用の計算機である。処理装置1002は、その内部に、計画立案関係処理部1030、影響度評価処理部1040、画面出力部1050、及びデータ入力部1060を、ソフトウェアプログラムとしてメモリに格納されるなどの形態で有する。
【0029】
計画立案関係処理部1030は、記憶装置1001のデータを入力して計画表1014を出力する計画生成部1031と、得られた計画表1014を評価し、KPI値を出力する評価指標計算部1032とを有する。
【0030】
影響度評価処理部1040は、計画表1014を自動もしくは特徴量変換ルール1022に基づいて計画特徴量表1023を得る特徴量変換部1041と、機械学習モデル1021を生成するモデル学習部1042と、モデル(機械学習モデル1021)における特徴量の寄与率を求める寄与率計算部1043と、KPIに対する計画表1014の影響部分を抽出する影響度計算部1044と、を有する。
【0031】
画面出力部1050は、出力装置1004に所定の画面を表示させるための情報を出力する機能を有する。具体的には例えば、画面出力部1050は、影響度計算部1044によって算出された影響度算出結果1025に基づいて、画面表示用の情報を生成し、出力装置1004に送信する。この結果、出力装置1004は、影響度算出結果1025に基づく出力画面を表示する(
図14参照)。
【0032】
データ入力部1060は、開発者(以後、ユーザ)による入力装置1003に対する入力操作に応じて、処理の実行指示やデータを入力する機能を有し、計画表にユーザから変更を加える場合や、パラメータを設定する際に活用される。具体的には例えば、データ入力部1060は、ユーザ独自の特徴量変換ルールが指定される場合、ユーザが操作する入力装置1003から特徴量変換ルールを受け取り、記憶装置1001に特徴量変換ルール1022として格納する。
【0033】
入力装置1003は、計算機用の汎用的な入力装置であり、例えばマウス、キーボード、またはタッチパネル等である。
【0034】
出力装置1004は、ディスプレイ等の装置であり、画面出力部1050を介して、処理装置1002による評価結果(例えば影響度算出結果1025)を表す出力画面を表示する。なお、処理装置1002による評価結果を人間が確認する必要が無い場合(例えば、計画を自動立案するシステムに直接、評価結果を渡す場合)は、計画評価装置1000に出力装置1004を設けなくてもよい。
【0035】
図2は、評価指標リスト1013の一例を示す図である。評価指標リスト1013は、各指標に割り当てられた番号が格納される指標番号21、指標番号に係る評価指標の名称が格納される指標名称22、指標番号に係る評価指標の定義内容が格納される指標定義23、及び、指標番号に係る評価指標の値の計算処理24を有するデータベースである。評価指標リスト1013は、例えば、ユーザにより入力され、または所定の情報処理装置から取得される情報である。
【0036】
図3は、計画表1014の一例を示す図である。
図3に例示した計画表1014は、評価対象の計画表(対象計画表)であり、詳しくは、
図5で後述する影響度算出処理において影響度の算出対象とされるデータである。
【0037】
計画表1014は、マトリックスデータ(表データ)として構成されており、全ての計画表に共通して固定の計画マスタ情報31と、それぞれの計画表に固有のターゲット項目32とに分けられる。計画表1014の種類については後述する。
【0038】
計画マスタ情報31は、日付、依頼の開始時間と終了時間、及び依頼番号といった計画表の基本的な情報を格納する。計画マスタ情報31の各項目のデータは、業務関係データ1011から出力されて計画表1014に格納される。
【0039】
ターゲット項目32は、当該計画表に固有の情報を格納する。ターゲット項目32は、計画生成部1031によって制約リスト1012の条件を満たしつつ、評価指標リスト1013の値を最適にするように、組み合わせが決定される。例えば、計画評価装置1000が人員配置計画を評価する場合は、
図3の例に示したように、ターゲット項目32は従業員番号となり、人員配置計画の評価は、既定の依頼に対する従業員の割り当てを決定する組み合わせ問題となる。
【0040】
上記のように、ある項目の組み合わせを求める計画表1014であれば、どのような問題でも計画評価装置1000による評価対象となる。また、本発明で述べる計画成分とは、計画表1014における1つの行を指す。そして、「計画表のKPIに対する影響度を算出する」とは、「ある計画表の中でKPIの変化に大きく寄与した計画成分を抽出すること」を指す。
【0041】
なお、本実施形態では、対象計画表、履歴計画表、及び基準計画表の3種類の計画表1014が用いられる。全ての計画表において、計画マスタ情報31は共通しており、ターゲット項目32は異なるか同じものを含む。
【0042】
対象計画表は、影響度を算出して解析を行う対象とされる計画表であり、後述する
図5のS501で生成される。
【0043】
履歴計画表は、対象計画表とは別のプロセスで予め生成された(過去に生成された)計画表である。履歴計画表の生成プロセスは、職人による手作業、対象計画表とは異なる計画生成アルゴリズム、または、対象計画表と同様のアルゴリズムのランダム性を活用したもの等であり、生成された履歴計画表が、対象計画表と同一の計画マスタ情報31と、対象計画表と同様の形式のターゲット項目32とを有していればよい。履歴計画表は、対象計画表に対する影響度の算出精度を高めるために有用な計画表である。
【0044】
基準計画表は、履歴計画表の一種と考えてよいものであり、対象計画表の明確な比較対象となる計画表である。基準計画表は、例えば、職人によって作成された見本としての計画表、または、ある修正作業を行う前の計画生成アルゴリズムで作成された計画表が該当する。
【0045】
図4は、KPIデータ1015の一例を示す図である。KPIデータ1015は、評価指標リスト1013に基づいて計画表1014を評価した結果(KPI値)を格納するデータである。KPIデータ1015は、対象計画表、履歴計画表、及び基準計画表の各種の計画表ごとに存在する。
【0046】
KPIデータ1015は、各指標に割り当てられた番号が格納される指標番号41と、指標番号41に係る評価指標の名称が格納される指標名称42と、評価結果の値43とを有するデータベースである。指標番号41に格納される番号は、
図2の評価指標リスト1013の指標番号21の番号と対応する。値43には、数値、バイナリ値、カテゴリ値などのKPI値が格納される。また、KPIデータ1015は、評価結果の算出元とされた計画表1014と1対1で対応し、ファイル名等によって、計画表1014とKPIデータ1015との対応関係が区別できるものとする。
【0047】
以下では、対象計画表の影響度を算出する影響度算出プロセスについて、適宜図面を参照しながら説明する。
【0048】
図5は、影響度算出処理の処理手順例を示すフローチャートである。本実施形態において計画評価装置1000は、影響度算出処理の実行により、計画表1014の成分を単純な数値列である特徴量の形式に圧縮変換し、得られた特徴量とKPI値との関係を学習する機械学習モデル1021を作成する。さらに、計画評価装置1000は、得られた機械学習モデル1021における各特徴量の出力への寄与率を算出し、対象計画表の成分へ分配・統合することで、対象計画表の成分がKPI値に及ぼす影響度を算出する。
【0049】
図5によればまず、処理装置1002の計画生成部1031が、記憶装置1001から業務関係データ1011及び制約リスト1012を読み込み、対象計画表を生成する(ステップS501)。ステップS501で生成される対象計画表は、例えば
図3に示した計画表1014であり、記憶装置1001に保存される。なお、ステップS501において計画生成部1031が対象計画表を生成する具体的な方法は、組み合わせ最適化ソルバーや機械学習モデルなど、制約条件を考慮しながらターゲット項目32の組み合わせ解を求める方法であればよい。
【0050】
次に、評価指標計算部1032が、評価指標リスト1013及びステップS501で出力された対象計画表(計画表1014)を入力し、対象計画表のKPI値を計算し、その算出結果を示すKPIデータ1015を記憶装置1001に保存する(ステップS502)。なお、計画生成部1031と評価指標計算部1032が同一プログラムまたは同一アーキテクチャで構成される場合は、ステップS501,S502の処理は同時に実行される。
【0051】
次に、各計画表をモデル学習部1042に入力するための特徴量変換を行うにあたって、ユーザ独自の特徴量変換ルール1022を導入するか否かをユーザが選択する(ステップS503)。ステップS503においてユーザ独自の特徴量変換ルール1022の導入が選択されなかった場合は、計画表を自動的に特徴量に変換する自動ルールが特徴量変換で利用されるとして、ステップS505に進む。
【0052】
一方、ステップS503においてユーザ独自の特徴量変換ルール1022の導入が選択された場合(ステップS503のYES)、ユーザが入力装置1003を操作して、導入する特徴量変換ルール1022を記述する(ステップS504)。特徴量変換ルール1022の記述方法の詳細は、
図6を参照して後述する。そしてデータ入力部1060が、記述された特徴量変換ルール1022を記憶装置1001に格納した後、ステップS505に進む。
【0053】
ステップS505では、特徴量変換部1041が、ステップS501で生成された対象計画表、過去に得られた履歴計画表、及び対象計画表と履歴計画表のKPI値(KPIデータ1015)を入力し、ステップS503~S504で選択された特徴量変換ルール1022または自動ルール、あるいは特徴量変換ルール1022と自動ルールとの組み合わせを利用して、対象計画表の特徴量への変換を複数回実行する特徴量変換処理を実行する。特徴量変換処理の詳細な処理手順は、
図7を参照して後述するが、特徴量変換処理において特徴量変換部1041は、計画表を変換して得られた特徴量を、計画特徴量表1023として記憶装置1001に格納する。
【0054】
次に、ステップS506において、影響度評価処理部1040がステップS505の特徴量変換処理で得られた複数の計画特徴量表1023から1つを選択し、機械学習のループ処理を開始する。
【0055】
機械学習のループ処理では、まず、ステップS507において、モデル学習部1042が、ステップS506で選択された計画特徴量表1023を入力、当該計画特徴量表1023に対応するKPIデータ1015(計画特徴量表1023のKPI93と読み替えてもよい)を出力(目的変数)として入力し、機械学習を行うことにより、各計画表とKPIデータ1015との関係を学習した機械学習モデル1021を作成する。ステップS507で作成された機械学習モデル1021は記憶装置1001に格納される。なお、モデル学習部1042によって作成される機械学習モデル1021は、入力データに対する処理を実行して予測値を出力するような、教師あり学習である決定木やニューラルネットワークに基づくものを想定している。
【0056】
次のステップS508では、寄与率計算部1043が、ステップS507で作成された機械学習モデル1021、ステップS506で選択された計画特徴量表1023、及び当該計画特徴量表1023に対応するKPIデータ1015に基づいて、各特徴量の寄与率を算出し、その算出結果を示す情報(寄与率算出結果1024)を記憶装置1001に格納する。
【0057】
寄与率計算部1043による寄与率の計算方法は、例えば非特許文献2に記載された方法を適用することができる。但し、この方法に限定されるものではなく、機械学習モデルにおける各特徴量の予測に対する寄与率を算出できる方法であればよい。ここで、寄与率算出のために用いられる初期値は、基準計画表であることが望ましい。
【0058】
なお、対象計画表と基準計画表のそれぞれから得られた計画特徴量表1023に対して、各特徴量を入れ替えても各計画表に矛盾が生じない場合は、ステップS507において機械学習モデル1021を作成せずとも、ステップS508において寄与率計算部1043が、非特許文献2に記載されたShapley値の算出方法によって、直接的にKPIへの寄与率(すなわち、影響度)を計算するようにしてもよい。
【0059】
上記した機械学習のループ処理(ステップS506~S508)は、ステップS505の特徴量変換処理で得られた複数の計画特徴量表1023の全てに対して繰り返し実行され(ステップS509)、全ての計画特徴量表1023について処理が終了すると、ステップS510に進む。
【0060】
ステップS510では、影響度計算部1044が、上記ループ処理においてステップS508で得られた寄与率を分配及び統合し、KPI値に対する対象計画表成分の影響度を算出する、影響度情報集計処理を実行する。影響度情報集計処理の詳細な処理手順は、
図11を参照して後述する。
【0061】
次に、影響度計算部1044は、ステップS510の処理で算出した各影響度と、各影響度の算出に用いられたKPI値及び対象計画表とを集計することによって、影響度算出結果1025を作成し、作成した影響度算出結果1025を記憶装置1001に格納する(ステップS511)。
【0062】
そして最後に、画面出力部1050が、ステップS511で作成された影響度算出結果1025に基づいて画面表示用の情報を生成し、出力装置1004に送信する。この結果、出力装置1004には、影響度算出結果1025に基づく出力画面が表示される(ステップS512)。出力画面の具体例は、後述する
図14に示す。
【0063】
図6は、特徴量変換ルール1022の一例を示す図である。
図6に示す特徴量変換ルール1022は、
図5のステップS504で記述される特徴量変換ルール1022の具体例である。
【0064】
計画表を直接的に機械学習可能な特徴量に変換する場合、非特許文献1に記載されたようなダミー変数に変換する方法が一般的であるが、このようなダミー変数に変換すると、高次元でスパースなデータ構造となり、扱いづらいという問題があった。そこで、本実施形態では、計画表を1以上の方法で圧縮変換することで特徴量を得るようにする。圧縮方法は、計画表の一部の列情報を活用するようにしてもよいし、ランダムに決定するようにしてもよい。
【0065】
図6に例示した特徴量変換ルール1022では、特徴量変換のルール番号61と、圧縮に活用する計画表1014の列情報である計画表列62、及びその圧縮条件63が記載される。
図6では、人員配置計画の例として、具体的にはルール番号「1」に、計画表の「日付」の列情報について「日付ごと」に圧縮することが記述され、ルール番号「2」に、計画表の「従業員番号」の列情報について「番号ごと」に圧縮することが記述されている。なお、本説明では、可読性のために自然言語に基づいて圧縮条件63を記述しているが、最終的には、圧縮条件63は特徴量変換部1041に適したプログラムあるいは数式の形式に変換される。
【0066】
図7は、特徴量変換処理の処理手順例を示すフローチャートである。
図7に示す特徴量変換処理は、
図5のステップS505の処理に相当し、特徴量変換部1041によって実行される。
【0067】
図7によれば、特徴量変換部1041は、ステップS501で生成された対象計画表、過去に得られた履歴計画表、及び対象計画表と履歴計画表のKPI値(KPIデータ1015)を入力し、以下の特徴量変換のループ処理を開始する(ステップS701)。
【0068】
特徴量変換のループ処理において、特徴量変換部1041はまず、
図5のステップS503におけるユーザ指定に基づいて、特徴量の変換に特徴量変換ルール1022を適用するか否かを判定する(ステップS702)。特徴量変換ルール1022を適用する場合(ステップS702のYES)、特徴量変換部1041は
図5のステップS504で作成された特徴量変換ルール1022を読み込んだ後、ステップS703に進み、読み込んだ特徴量変換ルール1022からルールを1つ選択し、ステップS705に進む。なお、ステップS703で読み込まれなかったルールは、次回以降の特徴量変換のループ処理において順次選択される。
【0069】
一方、特徴量の変換に特徴量変換ルール1022を適用すると指定されていない場合は(ステップS702のNO)、特徴量変換部1041は、ランダムな分割、若しくは対象計画表における計画マスタ情報31の任意の列を指定し、当該列の情報に対する特徴量の変換ルール(自動ルール)を自動作成し(ステップS704)、ステップS705に進む。詳しくは、ステップS704において特徴量変換部1041は、指定した列の情報がカテゴリの場合はカテゴリごとに、数値の場合はその最大値及び最小値などの範囲に基づいて、当該列の情報に対する特徴量の変換ルールを自動指定する。この変換ルールを指定する際には、基本的なクラスタリングアルゴリズムや条件分岐を用いることができる。
【0070】
なお、
図2に示した評価指標リスト1013から明らかなように、通常は、KPI(指標)ごとに計算処理24が異なるため、KPIごとに計算可能な形式に計画表を自動で分割することは難しい。しかし、本実施形態に係る計画評価装置1000は、数値計算によってKPI値を算出するために計画表を分割するのではなく、機械学習モデル1021に入力させるために計画表を変換するため、KPIごとに計算可能な形式でなくても、特徴量として単純な数値列に圧縮できればよい。そのため、任意の方法により、ユーザ指定されたルール、自動指定されたルール、あるいはランダムに、計画表を分割しても問題がなく、部分評価できないKPIに対する影響度も算出可能となる。
【0071】
ステップS705では、特徴量変換部1041は、計画表の差分を抽出するか否かを判定する。計画表の差分とは対象計画表と基準計画表との差分であり、対象計画表のターゲット項目32を基準計画表との差分のみにして、この差分を評価することで、比較やモデル学習が容易になる場合がある。そのため、本実施形態では、計画表の差分を抽出するか否かをユーザから指定可能としている。計画表の差分を抽出する場合は(ステップS705のYES)、ステップS706を経てステップS707に進み、計画表の差分を抽出しない場合は(ステップS705のNO)、そのままステップS707に進む。
【0072】
ステップS706では、特徴量変換部1041は、対象計画表及び基準計画表以外の履歴計画表に対して、基準計画表とターゲット項目32が異なる成分(
図3の例では、1つの行が「成分」に相当する)のみを抽出し、これを新しい対象計画表及び履歴計画表として、記憶装置1001の計画表1014に保存する。
【0073】
ステップS707では、特徴量変換部1041は、ステップS703またはステップS704で得られたルールに沿って、計画表(対象計画表及び履歴計画表)を分割する。
【0074】
次に、特徴量変換部1041は、ステップS707で分割された各計画表について、計画ごとに項目(ターゲット項目32)の値を、カテゴリまたは数値による「特徴量」に変換する圧縮変換を行う(ステップS708)。圧縮変換の方法は、各計画表の組み合わせに対してユニークな特徴量(カテゴリまたは数値)に変換してもよいし、コサイン距離など既存の距離尺度によって数値に変換してもよい。圧縮変換の具体例は、
図8を参照しながら後述する。
【0075】
次に、特徴量変換部1041は、ステップS708で圧縮変換された計画ごとの特徴量と、対応するKPI値(KPIデータ1015の値43)とを組み合わせて計画特徴量表1023を作成し、記憶装置1001に格納する(ステップS709)。なお、具体例は
図9を参照しながら後述するが、計画特徴量表1023では、各特徴量の成分とステップS708で変換する前のターゲット項目32との対応関係が後で確認できるように、紐付けが行われる。
【0076】
そして、特徴量変換部1041は、所定の繰り返し上限に達するまで、ステップS702~S709の処理を繰り返す(ステップS710)。なお、繰り返し上限は、ユーザが指定した特徴量変換ルール1022の数に基づいて指定されてもよいし、明示的に時間や変換数(ループ回数)が予め指定されてもよい。但し、ユーザによって特徴量変換ルール1022が新規に記述された場合は(
図5のステップS504参照)、この特徴量変換ルール1022に従った特徴量変換を優先的に実行することが好ましい。
【0077】
上記のように、特徴量変換処理では、特徴量変換のループ処理が行われて複数の圧縮変換が行われることにより、計画評価装置1000が、様々な観点から計画表を分析することが可能となり、算出する影響度の信頼性も高めることができる。
【0078】
図8は、特徴量変換処理における圧縮変換のイメージを説明するための図である。
図8に示した圧縮変換のイメージは、
図7のステップS708の処理を、具体例を用いて視覚化したものである。具体的には、基準計画表である計画Aについて、特徴量に圧縮変換する前の基準計画表81と特徴量に圧縮変換した後の基準計画表84,85が示され、対象計画表である計画Bについて、特徴量に圧縮変換する前の対象計画表82と特徴量に圧縮変換した後の対象計画表86,87が示され、複数存在する履歴計画表のうちの1つである計画Cについて、特徴量に圧縮変換する前の履歴計画表83と特徴量に圧縮変換した後の履歴計画表88,89が示されている。
【0079】
図8の例では、計画表の分割ルールとして「日付ごと」と「ランダム」を採用している。以下にそれぞれの分割ルールに従った圧縮変換について具体的に説明する。
【0080】
「日付ごと」の分割ルールによる圧縮変換では、特徴量に圧縮変換した後の基準計画表84、対象計画表86、及び履歴計画表88において、日ごとの列に対して数値が割り振られる。これらの数値は、元の計画表における従業員番号を圧縮して変換したものであり、具体的には例えば、計画Aの元の基準計画表81に現れる組み合わせを「0」とし、基準計画表81には現れない異なる組み合わせを「1」などの別の数値とする圧縮ルールを採用している。
【0081】
上記の圧縮ルールを採用したことにより、計画Aの圧縮変換後の基準計画表84では、各日付の値は当然、全て「0」に変換される。
【0082】
また、計画Bの圧縮変換後の対象計画表86では、対象計画表82における「8/1」の従業員番号が基準計画表81とは異なる組み合わせであることから、当該日付の値が「1」に変換され、対象計画表82における「8/2」及び「8/3」の従業員番号が基準計画表81と同じ組み合わせであることから、当該日付の値が「0」に変換されている。
【0083】
また、計画Cの場合は、履歴計画表83における「8/2」の従業員番号が基準計画表81と同じ組み合わせであり、履歴計画表83における「8/1」及び「8/3」の従業員番号が基準計画表81とは異なる組み合わせである。ここで、上述した計画Bと同様に圧縮変換を行うと、計画Cの圧縮変換後の履歴計画表88では、「8/2」の値が「0」に変換され、「8/1」と「8/3」の値が「1」に変換されることになる。
【0084】
但し、
図8の場合は、更なる圧縮ルールとして、履歴計画表(計画C)の圧縮変換においては、元の履歴計画表に現れる組み合わせが、基準計画表(計画A)及び対象計画表(計画B)の両方に対して異なる場合には、「2」に変換するというルールを採用している。このとき、履歴計画表83における「8/1」の従業員番号の組み合わせ(「0002」と「0004」)は、基準計画表81における「8/1」の従業員番号の組み合わせ(「0001」と「0002」)とも、対象計画表82における「8/1」の従業員番号の組み合わせ(「0001」と「0004」)とも異なっていることから、計画Cの圧縮変換後の履歴計画表88において、「8/
1」の値は「2」に変換されている。
【0085】
次に、「ランダム」の分割ルールによる圧縮変換では、列(例えば日付)ごとの値などの明確なルールではなく、ランダムな列の組み合わせで、各計画表を行ごとにそれぞれ分割し、分割した項目に対して「日付ごと」の分割ルールと同様の圧縮ルールを採用することにより、従業員番号の組み合わせが数値による特徴量に変換される。
【0086】
具体的には例えば、「ランダム」の分割ルールにおいて、「1行目と3行目」が列の組み合わせとして選択された場合、圧縮変換前の履歴計画表83(計画C)における「1行目と3行目」の従業員番号の組み合わせは「0001」と「0003」となる。したがって、特徴量変換部1041は、この従業員番号の組み合わせを、基準計画表81(計画A)及び対象計画表82(計画B)における同様の従業員番号の組み合わせと比較することにより、履歴計画表89の当該項目の特徴量(値)を決定することができる。
【0087】
なお、上述した圧縮変換の方法はあくまで一例に過ぎず、本実施形態における特徴量の圧縮変換はこれに限定されるものではない。例えば、上述した圧縮ルールは、基準計画表81(計画A)における組み合わせをベースラインとしたものであったが、ベースラインは基準計画表に限定されるものではない。
【0088】
図9は、計画特徴量表1023の一例を示す図である。
図9に示した計画特徴量表1023は、
図7のステップS709において特徴量変換部1041が作成して記憶装置1001に格納する計画特徴量表1023の具体例であり、各特徴量の元となった計画番号91(ステップS709で述べた、特徴量の成分と圧縮変換前のターゲット項目32とを紐付けるための情報)と、機械学習モデル1021の入力変数となる特徴量92と、機械学習モデル1021の目的変数となるKPI93と、を有して構成される。
【0089】
前述した
図5のステップS507では、上記のように構成された計画特徴量表1023が機械学習モデル1021に取り込まれることで、次のステップS508において、モデルへの特徴量の寄与率(
図10の寄与率算出結果1024における寄与率103)が算出される。
【0090】
図10は、寄与率算出結果1024の一例を示す図である。
図10に示した寄与率算出結果1024は、
図5のステップS508において寄与率計算部1043によって算出される、機械学習モデル1021への各特徴量の寄与率の算出結果を示す情報である。
【0091】
図10に示すように、寄与率算出結果1024は、各特徴量のカラム名である特徴量名101と、その特徴量の値102と、その特徴量の機械学習モデル1021への寄与率103と、を有して構成される。寄与率算出結果1024は、1以上の機械学習モデル1021に対してそれぞれ作成され、1以上の機械学習モデル1021において各計画特徴量に対する寄与率が得られた後、
図11に示す影響度情報集計処理(
図5のステップS510)が実行される。
【0092】
図11は、影響度情報集計処理の処理手順例を示すフローチャートである。
図11に示す影響度情報集計処理は、
図5のステップS510の処理に相当し、影響度計算部1044が、ステップS509で算出された寄与率を、対象計画表の成分に分配し、統合することにより、対象計画表の成分がKPI値に及ぼす影響度を算出する処理である。
【0093】
図11によれば、影響度計算部1044は、以下の寄与率統合のループ処理を開始する(ステップS1101)。このとき、影響度算出処理の機械学習ループ(
図5のステップS506~S509)は終了しているため、対象計画表ごとに寄与率算出結果1024は算出済みである。
【0094】
寄与率統合のループ処理において、影響度計算部1044はまず、寄与率算出結果1024、及びそれに対応する対象計画表(計画表1014)を1組、抽出する(ステップS1102)。
【0095】
次に、影響度計算部1044は、ステップS1102で抽出した寄与率算出結果1024に寄与率が示された各特徴量について、寄与率を計画成分へ分配する寄与率分配のループ処理を開始する(ステップS1103)。寄与率は単純な数値列の各特徴量に対する予測への影響度である。しかし特徴量は各計画成分を変換した数値のため、その寄与率のみでは計画成分のKPIに対する影響度は得られない。そこで本発明では、寄与率分配のループ処理を実行して、寄与率を計画成分に分配することで、機械学習モデル1021における寄与率を計画表に適用する。
【0096】
寄与率分配のループ処理において、影響度計算部1044は、ステップS1102で抽出した寄与率算出結果1024から特徴量を1つ選択する(ステップS1104)。
図10の寄与率算出結果1024を例にとると、ステップS1104において影響度計算部1044は、1つの行を抽出する。
【0097】
次に、影響度計算部1044は、ステップS1102で抽出した対応する計画表から、ステップS1104で選択した特徴量の変換前となる計画成分を抽出する(ステップS1105)。
【0098】
次に、影響度計算部1044は、ステップS1104で寄与率算出結果1024から抽出した行の寄与率103を、ステップS1105で抽出した計画成分に分配する(ステップS1106)。この分配方法は特に限定されないが、例えば、寄与率を各計画成分に均等に割り付けする方法や、そのままの値(寄与率)を割り付ける方法がある。また例えば、機械学習モデルなどのアルゴリズムを用いて寄与率の分配を決定するようにしてもよい。
【0099】
また、ステップS1106において、影響度計算部1044は、既に別の機械学習モデル1021における寄与率が計画成分に存在する場合には、既存の寄与率と新たに分配した寄与率とを統合する。この統合方法は特に限定されず、単純な足し合わせ、重み付け、または掛け合わせなど、任意の方法を採用してよい。
【0100】
そして、影響度計算部1044は、ステップS1102で抽出した寄与率算出結果1024に示された特徴量の種類だけ、寄与率分配のループ処理(ステップS1104~S1106)を繰り返す(ステップS1107)。
【0101】
そして、寄与率分配のループ処理が終了した後は、影響度計算部1044は、全ての寄与率算出結果1024について、寄与率統合のループ処理(ステップS1102~S1107)を繰り返し(ステップS1108)、その後、影響度情報集計処理を終了する。
【0102】
図12は、影響度算出結果1025の一例を示す図である。
図12に示した影響度算出結果1025は、
図5のステップS511において影響度計算部1044が作成して記憶装置1001に格納する影響度算出結果1025の具体例である。
【0103】
影響度算出結果1025は、
図3に示した計画表1014と同様に、マトリックスデータ(表データ)として構成されており、全ての計画表に共通して固定の計画マスタ情報1201、それぞれの計画表に固有のターゲット項目1202、及び、算出された影響度1203の項目を有する。
【0104】
図12のような形式で影響度算出結果1025が作成されることにより、ユーザ(開発者)は、影響度算出結果1025を参照することで、膨大な計画表の成分のうちから、KPIに対して影響の度合いが大きい成分を即座に見つけることができ、KPI改善のための修正案の検討に素早く取り組むことができる。
【0105】
さらに、影響度算出結果1025に示される影響度1203は、機械学習モデル1021によって計画表1014とKPI値(KPIデータ1015)との関係性を学習した結果から得られる影響度であることから、直接的にKPI値を変化させる成分しか抽出できない特許文献1の技術とは異なり、本実施形態に係る計画評価装置1000は、KPI値に直接的に影響を及ぼす成分だけでなく、KPI値に間接的に影響を及ぼしている可能性がある成分も抽出することができる。
【0106】
図13は、寄与率を分配及び統合する処理のイメージを説明するための図である。
図8に示したイメージは、
図11のステップS1106の処理を、具体例を用いて視覚化したものである。
【0107】
図13には、「日付ごと」の分割ルールによる圧縮変換で生成された特徴量に対する寄与率算出結果1301と、従業員番号の「番号ごと」の分割ルールによる圧縮変換で生成された特徴量に対する寄与率算出結果1302とを基に、これらの寄与率を各計画成分に分配及び統合して影響度算出結果1303を作成するイメージが示されている。
【0108】
なお、
図13の場合は、寄与率の分配方法に「平均割り付け」を用い、寄与率の統合に「単純な足し合わせ」を用いている。例えば影響度算出結果1303の計画成分の1行目に着目すると、まず、日付が「8/1」であることから、寄与率算出結果1301の特徴量「8/1」の寄与率を確認すると「+0.3」であり、この寄与率を分配した「+0.1」が「日付ごとの分配」の寄与率に記載されている。ここで、「+0.3」の寄与率を分配した値が「+0.1」になっているのは、影響度算出結果1303において日付が「8/1」である成分が3つ(上から1~3行目)存在していことから、平均割り付けの分配方法に従って三分割したためである。影響度算出結果1303の計画成分の1行目では、同様に、従業員番号「0001」の寄与率も分配した結果、「従業員番号ごとの分配」の寄与率として「+0.1」が記載されている。そして影響度算出結果1303の計画成分の1行目では、最後に、日付「8/1」の寄与率「+0.1」と従業員番号「0001」の寄与率「+0.1」とが統合(ここでは、単純な足し合わせ)されることで、統合結果の影響度として「+0.2」が算出される。
【0109】
図14は、影響度算出結果1025に基づく出力画面の一例を示す図である。
図14に示す出力画面1400は、
図5のステップS512で出力装置1004に表示される出力画面の具体例であって、
図5のステップS511で作成された影響度算出結果1025の内容を、ユーザから理解し易い形態に整形して表示している。
【0110】
図14の出力画面1400は、人員配置計画におけるガントチャートの形式で出力したものであり、従業員番号1401、各依頼の日付1402、影響度の小さい計画成分1403、及び、影響度の大きい計画成分1404から構成されている。本例の場合、計画成分1403,1404に記載された計画成分の値は、人員配置計画における依頼番号(例えば
図12の計画マスタ情報1201の「依頼番号」)を意味する。
【0111】
なお、出力画面1400において、各計画成分(本例では依頼番号)を影響度の小さい計画成分1403と影響度の大きい計画成分1404の何れに分類するかは、影響度算出結果1025における影響度の値に基づいて任意の方法で決定してよく、例えば、上位から所定数までの影響度を示す依頼番号を影響度の大きい計画成分1404に分類したり、所定の閾値を超える影響度を示す依頼番号を影響度の大きい計画成分1404に分類したりすればよい。
【0112】
図14では、依頼番号「105」及び依頼番号「112」が、影響度の大きい計画成分1404として、ハイライトによって強調表示されることにより、ユーザは、出力画面1400から即座に重要部分を特定することができる。なお、表示方法は限定されるものではなく、例えば、影響度の小さい計画成分1403の表示を省略する方法や、影響度算出結果1025における影響度の値に基づいて、影響度の大きさを色のグラデーションで表示する方法など、任意の方法であってよい。
【0113】
前述した
図5の影響度算出処理では、機械学習モデル1021ごとに寄与率を算出してから、それらを分配及び統合することで、計画表の成分(計画成分)ごとの影響度を算出したが、本実施形態に係る計画評価装置1000は、影響度算出処理の別の処理手順として、先に機械学習モデル1021を統合してから寄与率を算出し、計画成分ごとの影響度を算出することもできる。このよう処理手順による影響度算出処理を、統合モデルによる影響度算出処理と称し、以下の
図15にその処理手順の一例を示す。
【0114】
図15は、統合モデルによる影響度算出処理の処理手順例を示すフローチャートである。なお、
図15に示す各処理のうち、
図5に示した影響度算出処理と同様の処理については、詳細な説明を省略することがある。
【0115】
図15ではまず、
図5のステップS501~S505と同様の処理が行われることにより、最終的に特徴量変換部1041が計画特徴量表1023を生成する(ステップS1501)。
【0116】
次に、影響度評価処理部1040がステップS1501で得られた複数の計画特徴量表1023から1つを選択し、機械学習のループ処理を開始する(ステップS1502)。
【0117】
機械学習のループ処理では、まず、
図5のステップS507と同様の方法で、モデル学習部1042が、計画特徴量表1023を入力、当該計画特徴量表1023に対応するKPIデータ1015(計画特徴量表1023のKPI93と読み替えてもよい)を出力として入力し、機械学習を行うことにより、各計画表とKPIデータ1015との関係を学習した機械学習モデル1021を作成する(ステップS1503)。
【0118】
そして、
図15の機械学習のループ処理では、
図5の機械学習のループ処理とは異なる点として、
図5のステップS508に相当する処理を行わずに、複数の計画特徴量表1023の全てに対してステップS1503の処理を繰り返し実行され(ステップS1504)、全ての計画特徴量表1023について機械学習モデル1021が作成されると、ステップS1505に進む。
【0119】
ステップS1505では、モデル学習部1042が、機械学習のループ処理で作成した複数の機械学習モデル1021を統合する。統合されたモデルを統合モデルと称する。ステップS1505における統合モデルの統合方法は、既存の統合方法を採用してよく、例えば、出力の重み付け平均や、さらに機械学習モデル1021を重ねるスタッキング手法等を用いることができる。
【0120】
次に、寄与率計算部1043が、ステップS1505で統合された統合モデルにおける各特徴量の寄与率を算出し、その算出結果を示す情報(寄与率算出結果1024)を記憶装置1001に格納する(ステップS1506)。寄与率の算出方法には、
図5のステップS508で説明したのと同様に、既存の技術を用いてよい。
【0121】
次に、影響度計算部1044が、対象計画表の各計画成分を対象として、影響度計算のループ処理を開始する(ステップS1507)。対象計画表のある計画成分に着目したとき、
図5の影響度算出処理では、1つの機械学習モデル1021につき1つの特徴量に圧縮変換されていたが、
図15の影響度算出処理では、複数の機械学習モデル1021が統合モデルに統合されているため、この1つの統合モデルに対して複数の特徴量に変換されている。
【0122】
影響度計算のループ処理において、まず、影響度計算部1044は、対象計画表のうちから、影響度の計算対象とする計画成分を1つ選択する(ステップS1508)。
【0123】
次に、影響度計算部1044は、ステップS1508で選択した計画成分が変換元に含まれる特徴量を、統合モデルから選択する(ステップS1509)。
【0124】
次に、影響度計算部1044は、ステップS1509で選択した特徴量の寄与率の合計値を算出する(ステップS1510)。ステップS1510で算出される寄与率の合計値は、対象とする計画成分の影響度の近似値として採用される。そのため、より多くの計画特徴量表1023から機械学習モデル1021を生成して統合するほど、対象とする計画成分についてより多くの特徴量を圧縮変換することができ、特徴量の影響度を算出することに繋がる。すなわち、より多くの計画特徴量表1023から機械学習モデル1021を生成して統合するほど、影響度の元となる情報が増え、ステップS1510で算出される影響度(寄与率の合計値)の信頼性の向上に繋がる。
【0125】
上記した影響度計算のループ処理(ステップS1507~S1510)は、対象計画表に含まれる全ての計画成分に対して繰り返し実行され(ステップS1511)、全ての計画成分に対して影響度が算出されると、ステップS1512に進む。
【0126】
ステップS1512では、影響度計算部1044は、影響度計算のループ処理で算出した各計画成分の影響度と、各影響度の算出に用いられたKPI値及び対象計画表とを集計することによって、影響度算出結果1025を作成し、作成した影響度算出結果1025を記憶装置1001に格納する。
【0127】
そして最後に、画面出力部1050が、ステップS1512で作成された影響度算出結果1025に基づいて画面表示用の情報を生成し、出力装置1004に送信する。この結果、出力装置1004には、影響度算出結果1025に基づく出力画面が表示される(ステップS1513)。
【0128】
図16は、統合モデルによる影響度算出処理において影響度を計算する処理のイメージを説明するための図である。
図16に示したイメージは、
図15のステップS1510の処理を、具体例を用いて視覚化したものである。
【0129】
図16には、
図15の影響度算出処理で影響度の算出対象とする対象計画表の一例としての対象計画表1601と、同処理のステップS1506で算出される統合モデルの寄与率算出結果1024の一例としての寄与率算出結果1602と、同処理のステップS1512で作成される影響度算出結果1025の一例としての影響度算出結果1603とが示されている。
【0130】
図16における影響度算出結果1603の作成について、具体的な値を参照しながら一例を説明する。対象計画表1601の1行目の計画成分に着目すると、日付が「8/1」、従業員番号が「0001」であることから、寄与率算出結果1602では、「8/1」と「0001」の特徴量に変換されていることが分かる。これらの特徴量の寄与率は、ともに「+0.3」であり、本例ではこれらの寄与率を単純に足し合わせた結果を、着目した計画成分の影響度として、影響度算出結果1603に出力している。すなわち、影響度算出結果1603では、日付「8/1」の従業員番号「0001」の特徴量の影響度が「+0.6」として算出される。
【0131】
以上に説明したように、第1の実施形態に係る計画評価装置1000によれば、機械学習モデル1021における特徴量の影響度の算出方法を計画表の評価(計画成分ごとの評価)に拡張し、その評価結果を作成及び出力することにより、部分評価可能なKPIだけでなく、部分評価できないKPIに対しても直接的または間接的に影響度が大きい成分を計画表から抽出することができる。
【0132】
また、上述した第1の実施形態では、影響度の算出対象とされる対象計画表を1つとした場合の、計画評価装置1000による評価結果の解釈や比較の方法について述べた。しかし、例えば計画生成部1031が繰り返し計算を行うアルゴリズムである場合は、一度に複数の計画(対象計画表)が立案されるケースが存在する。
【0133】
そして上記のように対象計画表が複数存在する場合にも、本実施形態に係る計画評価装置1000を適用することができる。具体的には、計画評価装置1000は、ある共通の基準計画表を1つ定めて、それぞれの対象計画表の影響度を算出することで、影響度の高い計画成分の変化等を評価し、可視化することができる。その結果、ユーザ(開発者)は、例えば繰り返し計算の途中経過において、高い影響度を有する計画部分が得られていたにも拘わらず、最終出力では別の項目に置き換えられてしまった等の洞察を得ることができる。
【0134】
また、上述した本実施形態の説明では、単一のKPIに対しる影響度を算出したが、計画評価装置1000は、このプロセスを繰り返すことにより、複数のKPIに対する各計画成分の影響度を算出することができる。そして、任意の方法で定めた各KPIの重みなどを活用して足し合わせることで、計画評価装置1000は、全体のKPIに対する各計画成分の影響度を算出することができる。
【0135】
また、本実施形態に係る計画評価装置1000では、データ入力部1060を活用し、対象計画表の計画成分を一部入れ替え、入替後の計画表における影響度を算出するという運用も実行可能である。このような運用を行うことにより、計画表を修正した場合の評価をインタラクティブに若しくは自動的に行うことが可能となり、開発工数の削減に寄与することができる。
【0136】
(2)第2の実施形態
本発明の第2の実施形態は、第1の実施形態を発展させたものである。上述した第1の実施形態では、機械学習モデル1021に基づいて計画成分の影響度を算出したことから、計画成分には、直接的にKPIを変化させる計画成分と間接的にKPIを変化させる計画成分の両方が含まれていた。すなわち、第1の実施形態では、計画成分同士のどこが間接的な影響関係にあるかを抽出するまではしていなかった。そこで第2の実施形態では、第1の実施形態で得られた影響度から、さらに、計画成分同士の間接的な影響関係(以後、間接影響関係と称する)を抽出する。
【0137】
図17は、本発明の第2の実施形態に係る計画評価装置1700の構成例を示すブロック図である。
図1と比較すると明らかなように、第2の実施形態に係る計画評価装置1700は、第1の実施形態に係る計画評価装置1000を拡張した構成を備える。具体的には、計画評価装置1000からの追加点として、計画評価装置1700は、計画立案関係処理部1030に計画生成制御部1701を備え、影響度評価処理部1040に間接影響関係計算部1702を備える。これらの追加された構成の具体的な活用方法は、後段の説明で述べる。
【0138】
第2の実施形態では、間接影響関係を抽出するために、計画生成にランダム性が有る場合に有効な第1のアプローチと、複数回の計画の生成が難しい場合などに有効な第2のアプローチと、を採用することができる。
【0139】
まず、第1のアプローチによる間接影響関係の抽出処理について説明する。
【0140】
図18は、第1の間接影響関係抽出処理の処理手順例を示すフローチャートである。第1の間接影響関係抽出処理は、第1のアプローチに基づいて、既に立案済みの履歴計画表を用いて間接影響関係を抽出する処理であって、第1の実施形態で説明した
図5または
図15の影響度算出処理の終了後に、間接影響関係計算部1702によって実行される。
【0141】
図18によればまず、間接影響関係計算部1702は、影響度算出処理で算出された対象計画表の影響度算出結果1025と、計画生成部1031の処理によって得られた履歴計画表とを読み込む(ステップS1801)。
【0142】
次に、間接影響関係計算部1702は、ステップS1801で読み込んだ影響度算出結果1025から、着目する計画成分を1つ決定する(ステップS1802)。以下の処理は、この着目計画成分に対する間接影響関係を抽出するものである。したがって、ステップS1802で選択する計画成分は、影響度の大きいものなど、詳細な解析を行いたい計画成分であることが好ましい。
【0143】
次に、間接影響関係計算部1702は、ステップS1801で読み込んだ履歴計画表のうちから、ステップS1802で決定した着目計画成分が現れている履歴計画表を抽出する(ステップS1803)。
【0144】
次に、間接影響関係計算部1702は、間接影響関係を探索するループ処理を開始する(ステップS1804)。
【0145】
間接影響探索のループ処理では、間接影響関係計算部1702は、まず、着目計画成分と間接影響の関係にある計画成分の候補である「間接影響候補」を、対象計画表のうちから1つ設定する(ステップS1805)。間接影響候補の設定方法は、任意の方法でよいが、機械学習モデル1021による影響度の大きい部分のなかには間接影響の意味で重要な計画成分が含まれている可能性が高いことから、着目計画成分以外で影響度の大きい計画成分から順に、間接影響候補に設定して以下の探索を行う方法が一般的である。
【0146】
次に、間接影響関係計算部1702は、ステップS1801で読み込んだ履歴計画表のうちから、ステップS1805で設定した間接影響候補が現れている履歴計画表を抽出し、ステップS1803で抽出した着目計画成分を含む履歴計画表との間に関係性を有するか否かを判定する(ステップS1806)。関係性を判定する最も一般的な方法は、それぞれの履歴計画表の数を比較する方法であるが、相関関係など何らかの定量的な指標を用いて関係性を判定してもよい。
【0147】
ステップS1806において、間接影響候補を含む履歴計画表の数と着目計画成分を含む履歴計画表の数とが等しいなど、両計画表に関係性が有る場合(ステップS1806のYES)、間接影響関係計算部1702は、間接影響関係が有るとして、ステップS1805で設定した間接影響候補を所定の記録先に記録する(ステップS1807)。すなわち、ステップS1807で記録される間接影響候補は、着目計画成分に対して間接的にKPIの変化に影響を与える計画成分(間接影響成分)に相当する。
【0148】
一方、ステップS1806において、間接影響候補を含む履歴計画表の数と着目計画成分を含む履歴計画表の数とが等しくないなど、両計画表に関係性が無い場合(ステップS1806のNO)、間接影響関係計算部1702は、間接影響関係がないとして、ステップS1805で設定した計画成分を間接影響候補から除外する(ステップS1808)。
【0149】
そして、ステップS1807またはステップS1808の後、間接影響関係計算部1702は、間接影響候補の探索に関する所定の探索上限に達するまで、ステップS1804~S1807(またはS1808)のループ処理を繰り返し実行し(ステップS1809)、その終了後はステップS1810に進む。なお、間接影響候補の探索に関する所定の探索上限は、例えば、計算時間、または候補とする成分の影響度の閾値などによって決定されればよい。
【0150】
ステップS1810では、上記処理による間接影響関係の探索結果(具体的には、ステップS1807で記録した間接影響候補)を、ステップS1801で読み込んだ影響度算出結果1025に付け加えて更新し、間接影響関係抽出処理を終了する。
【0151】
図19は、間接影響関係を探索する処理のイメージを説明するための図である。
図19に示したイメージは、
図18のステップS1801~S1808の処理の概要を、具体例を用いて視覚化したものである。
【0152】
図19には、対象計画表1901と、対象計画表1901の着目計画成分について間接影響関係の有無が判定される履歴計画表の一例として、その他の履歴計画表1902,1903が示されている。
【0153】
対象計画表1901において、1行目の計画成分に着目し、日付が「8/2」の行と「8/3」の行を間接影響候補とする。ここで、その他の履歴計画表1902,1903を確認すると、
図19に示した間接影響候補1については、履歴計画表1902,1903の両方で現れていることから、間接影響候補1は間接影響関係にあると判定され、記録される。一方、
図19に示した間接影響候補2については、履歴計画表1902には現れているが、履歴計画表1903には現れていないことから、間接影響候補2は間接影響関係にないと判定され、間接影響候補から除外される。
【0154】
図20は、間接影響関係を含めた影響度算出結果1025の一例を示す図である。
図20に示した影響度算出結果2000は、
図18に示した間接影響関係抽出処理によって間接影響関係の判定結果が更新された後の影響度算出結果1025の具体例である。
【0155】
影響度算出結果2000は、
図3に示した計画表1014や
図12に示した影響度算出結果1025と同様にマトリックスデータ(表データ)として構成されており、全ての計画表に共通して固定の計画マスタ情報1201、それぞれの計画表に固有のターゲット項目1202、及び、算出された影響度1203の項目を有する。さらに、影響度算出結果2000は、
図12の影響度算出結果1025から新たに加えられた項目として、間接影響関係にある計画成分を示す間接影響関係2004を有している。
【0156】
図20の例では、間接影響関係2004には、依頼番号が記載されている。具体的には例えば、2行目の計画成分は、間接影響関係2004に「102」の依頼番号が記載されることで、3行目の計画成分(依頼番号「102」)に対して間接影響の関係を有することを示している。なお、間接影響関係2004の記載形式は、上記のような依頼番号を参照する形式に限定されるものではなく、計画成分を特定できる形式であれば、例えば、他の列や行番号を指定するなどであってもよい。
【0157】
次に、第2のアプローチによる間接影響関係の抽出処理について説明する。
【0158】
図21は、第2の間接影響関係抽出処理の処理手順例を示すフローチャートである。第2の間接影響関係抽出処理は、第2のアプローチに基づいて、計画表を立案した上で間接影響関係を抽出する処理であって、第1の実施形態で説明した
図5または
図15の影響度算出処理の終了後に、計画生成制御部1701及び間接影響関係計算部1702によって実行される。なお、
図21では、
図18の間接影響関係抽出処理と同様の処理は、同じステップ番号を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0159】
図21によれば、まず、間接影響関係計算部1702が、
図18と同様の方法で、ステップS1801,S1802,S1804,S1805の処理を実行する。
【0160】
次に、間接影響探索のループ処理のなかで、間接影響関係計算部1702が、対象計画表における間接影響候補を、基準計画表の同じ成分に存在するターゲット項目に置き換える(ステップS2101)。
【0161】
次に、計画生成部1031の最終出力(すなわち、計画生成部1031によって立案される計画表)に着目計画成分とステップS2101で置き換えた間接影響候補(すなわち、基準計画表のターゲット項目)とが現れるように、間接影響関係計算部1702から計画生成制御部1701に指定を行い、計画生成制御部1701が、上記指定に従った模擬的な計画を計画生成部1031に立案させる(ステップS2102)。なお、計画生成制御部1701による指定及び立案に係る制御方法は、計画生成部1031のアルゴリズムに依存する。
【0162】
次に、間接影響関係計算部1702が、ステップS2102で出力される計画表を確認し、問題なく計画が立案されたか否かを判定する(ステップS2103)。ステップS2103における判定では、具体的には、計画表が出力されずにプログラムエラーが発生した、指定された成分が出力されなかった、あるいは、通常の出力では守られていた制約条件を満たさない計画が出力された、などの異常が発生していないかが確認される。
【0163】
ステップS2103において上記異常が確認されずに通常通りの計画表が生成された場合には(ステップS2103のYES)、ステップS2101で置き換えた間接影響候補がなくても問題がない(影響しない)ことを表すことから、間接影響関係計算部1702は、ステップS1805で設定した計画成分を間接影響候補から除外する(ステップS2104)。
【0164】
一方、ステップS2103において上記異常が確認された場合(ステップS2103のNO)、ステップS2101で置き換えた間接影響候補が出力できない場合には着目計画成分も現れないということであるから、間接影響関係計算部1702は、間接影響関係が有るとして、ステップS1805で設定した間接影響候補を所定の記録先に記録する(ステップS2105)。すなわち、ステップS2105で記録される間接影響候補は、着目計画成分に対して間接的にKPIの変化に影響を与える計画成分(間接影響成分)に相当する。
【0165】
そして、ステップS2104またはステップS2105の後、間接影響関係計算部1702は、間接影響候補の探索に関する所定の探索上限に達するまで、ステップS1804~S2104(またはS2105)のループ処理を繰り返し実行し(ステップS2106)、その終了後はステップS1810に進む。なお、間接影響候補の探索に関する所定の探索上限は、例えば、計算時間、または候補とする成分の影響度の閾値などによって決定されればよい。
【0166】
ステップS1810では、
図18のステップS1810と同様に、間接影響関係の探索結果(具体的には、ステップS2105で記録した間接影響候補)を、ステップS1801で読み込んだ影響度算出結果1025に付け加えて更新し、間接影響関係抽出処理を終了する。
【0167】
以上、第1のアプローチ及び第2のアプローチによる間接影響関係抽出処理を説明したが、第2の実施形態では、計画の特徴に応じて、これらのアプローチを使い分けることで、適切な計画の立案を支援することができる。
【0168】
すなわち、計画成分の組み合わせが多く、ユーザ(開発者)が計画作成ボタンを押すたびに異なるパターンの計画表が立案されるような場合には、計画生成にランダム性があるといえ、このような場合には第1のアプローチを採用して、立案済みの計画(履歴計画表)を用いて、計画成分同士の間接的な影響関係(間接影響関係)を探索することにより、ランダム性がある中でも適切な計画を立案するための情報を得ることができる。
【0169】
また、構成が複雑で1つの計画表を立案する際に時間が掛かる場合などは、複数回の計画の生成が難しく、このような場合には第2のアプローチを採用して、明示的な指示に基づいて立案した計画表を用いて、計画成分同士の間接的な影響関係(間接影響関係)を探索することにより、着目計画成分を生成するために不可欠な成分(ランダムに変化してはならない成分)を抽出することができ、それら影響関係の分析から、適切な計画の立案に貢献することができる。なお、上記の明示的な指示は、ユーザ(開発者)によるものであってもよい。
【符号の説明】
【0170】
1000,1700・・・計画評価装置、1001・・・記憶装置、1002・・・処理装置、1003・・・入力装置、1004・・・出力装置、1010・・・計画情報、1011・・・業務関係データ、1012・・・制約リスト、1013・・・評価指標リスト、1014・・・計画表、1015・・・KPIデータ、1020・・・影響度関連情報、1021・・・機械学習モデル、1022・・・特徴量変換ルール、1023・・・計画特徴量表、1024・・・寄与率算出結果、1025・・・影響度算出結果、1030・・・計画立案関係処理部、1031・・・計画生成部、1032・・・評価指標計算部、1040・・・影響度評価処理部、1041・・・特徴量変換部、1042・・・モデル学習部、1043・・・寄与率計算部、1044・・・影響度計算部、1050・・・画面出力部、1060・・・データ入力部、1701・・・計画生成制御部、1702・・・間接影響関係計算部