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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】部品実装装置および接触検知方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
H05K13/04 B
H05K13/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021119359
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015530
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠節
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-115142(JP,A)
【文献】特開2019-061991(JP,A)
【文献】特開2007-317737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を保持するノズルが取り付けられるヘッドと、前記ヘッドを上下方向に移動させるモータとを含む、ヘッドユニットと、
前記モータに供給された電流値を計測する電流計測部と、
前記部品の吸着または基板への前記部品の実装の少なくとも一方を行う際に、前記電流計測部により計測された前記電流値または前記電流値に基づく前記ヘッドの推力前記ヘッドの下降途中の所定区間における移動平均値である接触検知用平均値に基づいて、前記部品と前記基板との接触、または、前記ノズルと前記部品との接触を検知する制御を行う制御部とを備える、部品実装装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記接触検知用平均値が予め設定された接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、前記部品と前記基板との接触、または、前記ノズルと前記部品との接触を検知するとともに、前記モータを減速または停止させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ヘッドの下降途中において、前記接触検知用平均値が予め設定された接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、前記部品と前記基板との接触を検知するとともに、前記基板の高さ位置を取得する制御を行うように構成されている、請求項1または2に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記接触検知用しきい値は、前記ノズルの高さ位置ごとに設定されており、
前記制御部は、前記ヘッドの下降途中において、前記ノズルの高さ位置が変化するごとに算出される前記接触検知用平均値が、算出された前記接触検知用平均値に対応する前記ノズルの高さ位置に設定された前記接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、前記部品と前記基板との接触を検知する制御を行うように構成されている、請求項3に記載の部品実装装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ヘッドの下降途中において、前記ヘッドの下降速度を一定に保持した定速状態にして、前記接触検知用平均値を算出する制御を行うように構成されている、請求項3または4に記載の部品実装装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ヘッドを下降させる際に、減速した後に前記定速状態に保持した状態で、算出した前記接触検知用平均値が前記接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、前記基板の高さ位置を取得する制御を行うように構成されている、請求項5に記載の部品実装装置。
【請求項7】
前記制御部は、複数の前記基板の各々に前記部品を前記定速状態で実装した場合において、複数の前記基板の各々における同一の実装位置の高さ位置が所定回数以上略同じ高さ位置である場合に、前記基板の高さ位置に基づく基板面の推定高さ位置を保存する制御を行うように構成されている、請求項6に記載の部品実装装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記推定高さ位置を取得したことに基づいて、前記基板の高さ位置を取得するための前記定速状態から、前記ヘッドを下降させる際に、減速状態を維持して前記定速状態にすることなく前記推定高さ位置に向かって前記ヘッドを下降させる非定速下降状態に切り替えて、前記基板に前記部品を実装する制御を行うように構成されている、請求項7に記載の部品実装装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記推定高さ位置における前記接触検知用平均値が前記接触検知用しきい値未満になったことに基づいて、前記非定速下降状態から前記定速状態に切り替えて、前記基板の高さ位置を再取得する制御を行うように構成されている、請求項8に記載の部品実装装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記推定高さ位置を取得した後、前記接触検知用平均値が前記基板と前記部品との過度な接触を検知するための接触異常検知用しきい値以上になった場合に、前記基板面の高さ位置が異常であることを報知する制御を行うように構成されている、請求項7~9のいずれか1項に記載の部品実装装置。
【請求項11】
部品を保持するノズルが取り付けられたヘッドをモータにより下降させるステップと、
前記部品の吸着または基板への前記部品の実装の少なくとも一方を行う際に、前記モータに供給された電流値を計測する電流計測部により計測された前記電流値または前記電流値に基づく前記ヘッドの推力前記ヘッドの下降途中の所定区間における移動平均値である接触検知用平均値に基づいて、前記基板または前記部品への接触を検知するステップとを備える、接触検知方法。
【請求項12】
部品を保持するノズルが取り付けられるヘッドと、前記ヘッドを上下方向に移動させるモータとを含む、ヘッドユニットと、
前記モータに供給された電流値を計測する電流計測部と、
前記部品の吸着または基板への前記部品の実装の少なくとも一方を行う際に、前記電流計測部により計測された前記電流値、または、前記電流値に基づく前記ヘッドの推力、の所定区間における平均値である接触検知用平均値に基づいて、前記部品と前記基板との接触、または、前記ノズルと前記部品との接触を検知する制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記ヘッドの下降途中において、前記接触検知用平均値が予め設定された接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、前記部品と前記基板との接触を検知するとともに、前記基板の高さ位置を取得する制御を行うように構成されている、部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品実装装置および接触検知方法に関し、特に、部品を保持するノズルが取り付けられるヘッドを含むヘッドユニットを備える部品実装装置および接触検知方法。
【背景技術】
【0002】
従来、部品を保持するノズルが取り付けられるヘッドを含むヘッドユニットを備える部品実装装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、部品を保持するノズルが取り付けられるヘッドを含む搭載ヘッド(ヘッドユニット)を備える部品搭載装置(部品実装装置)が開示されている。この部品搭載装置は、サーボモータと、搭載ヘッド制御部とを備えている。サーボモータは、ノズルにより基板に部品を搭載させる際の昇降動作に必要な駆動力を発生させる。搭載ヘッド制御部は、サーボモータによるヘッドの昇降動作を制御するように構成されている。具体的には、搭載ヘッド制御部は、推力検知部と、着地検知部とを含んでいる。
【0004】
上記特許文献1の推力検知部は、サーボモータに供給される電流に基づいて、サーボモータに発生している推力を検知する。着地検知部は、サーボモータの推力が推力制限値に到達したことに基づいて、部品が基板に着地したことを検知する。このように、搭載ヘッド制御部は、推力検知部および着地検知部により、部品を基板に搭載する制御を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-61990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の部品搭載装置では、推力検知部により検知される推力にばらつきが生じている場合、基板への部品の着地を着地検知部により正確に検知することができないため、基板へ部品を正確な荷重で搭載することが困難になる。このため、上記特許文献1の部品搭載装置では、検知される推力のばらつきを抑制して基板への部品の着地(実装)を正確に検知することにより、基板へ部品を正確な荷重で搭載することが望まれている。なお、部品を吸着する際にも、同様のことが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、基板への部品の実装および部品の吸着を正確な荷重で行うことが可能な部品実装装置および接触検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における部品実装装置は、部品を保持するノズルが取り付けられるヘッドと、ヘッドを上下方向に移動させるモータとを含む、ヘッドユニットと、モータに供給された電流値を計測する電流計測部と、部品の吸着または基板への部品の実装の少なくとも一方を行う際に、電流計測部により計測された電流値または電流値に基づくヘッドの推力ヘッドの下降途中の所定区間における移動平均値である接触検知用平均値に基づいて、部品と基板との接触、または、ノズルと部品との接触を検知する制御を行う制御部とを備える
【0009】
この発明の第1の局面による部品実装装置では、上記のように、部品の吸着または基板への部品の実装の少なくとも一方を行う際に、電流計測部により計測された電流値または電流値に基づくヘッドの推力ヘッドの下降途中の所定区間における移動平均値である接触検知用平均値に基づいて、部品と基板との接触、または、ノズルと部品との接触を検知する制御を行う制御部を設ける。これにより、1点のみの推力(電流値)に基づいて判断する場合と異なり、所定区間における電流値または推力の移動平均値である接触検知用平均値を用いることにより、電流値またはヘッドの推力のばらつきを抑制して部品と基板との接触を正確に検知することができるので、基板へ部品を正確な荷重で実装(搭載)することができる。また、接触検知用平均値により、電流値またはヘッドの推力のばらつきを抑制してノズルと部品との接触を正確に検知することができるので、部品を正確な荷重で吸着することができる。また、接触検知用平均値により、専用の荷重計測装置を設けることなく、部品と基板との接触、または、ノズルと部品との接触を正確に検知することができるので、部品実装装置の構成品の数が増大することおよび構造が複雑化することを抑制することができる、また、上記専用の荷重計測装置を設ける必要がないので、部品実装装置の設計変更をしないようにすることができる。
【0010】
上記第1の局面による部品実装装置において、好ましくは、制御部は、接触検知用平均値が予め設定された接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、部品と基板との接触、または、ノズルと部品との接触を検知するとともに、モータを減速または停止させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、接触検知用平均値が予め設定された接触検知用しきい値を超えた場合にはモータを減速または停止させることにより、部品に対して過剰な荷重が与えられることを抑制することができるので、過剰な荷重に起因する部品の破損を抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による部品実装装置において、好ましくは、制御部は、ヘッドの下降途中において、接触検知用平均値が予め設定された接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、部品と基板との接触を検知するとともに、基板の高さ位置を取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、予め設定されていた基板の高さ位置を更新することができるので、部品の基板への実装作業を正確かつ適切に行うことができる。
【0012】
この場合、好ましくは、接触検知用しきい値は、ノズルの高さ位置ごとに設定されており、制御部は、ヘッドの下降途中において、ノズルの高さ位置が変化するごとに算出される接触検知用平均値が、算出された接触検知用平均値に対応するノズルの高さ位置に設定された接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、部品と基板との接触を検知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ノズルの高さ位置に合わせて接触検知用しきい値が適切に設定されているので、部品と基板との接触をより正確に検知することができる。
【0013】
上記ヘッドの下降途中に接触検知用平均値を算出する部品実装装置において、好ましくは、制御部は、ヘッドの下降途中において、ヘッドの下降速度を一定に保持した定速状態にして、接触検知用平均値を算出する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、ヘッドを定速状態にすることにより、ヘッドの加減速に起因する慣性力がかからない状態で接触検知用平均値を取得(算出)することができるので、上記慣性力に起因する接触検知用平均値のばらつきの増加を抑制することができる。
【0014】
上記定速状態で接触検知用平均値を算出する部品実装装置において、好ましくは、制御部は、ヘッドを下降させる際に、減速した後に定速状態に保持した状態で、算出した接触検知用平均値が接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、基板の高さ位置を取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、上記慣性力に起因するばらつきを抑制した状態の接触検知用平均値と、接触検知用しきい値との比較に基づいて、基板の高さ位置を取得することができるので、より正確な基板の高さ位置を取得することができる。
【0015】
上記定速状態で基板の高さ位置を取得する部品実装装置において、好ましくは、制御部は、複数の基板の各々に部品を定速状態で実装した場合において、複数の基板の各々における同一の実装位置の高さ位置が所定回数以上略同じ高さ位置である場合に、基板の高さ位置に基づく基板面の推定高さ位置を保存する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、定速状態において基板の高さ位置を取得することなく、保存した基板面の推定高さ位置の情報を用いて部品を実装することができるので、その分基板への部品の実装時間の増加を抑制することができる。なお、略同じ高さとは、同一の高さ位置であってもよいし、同一の高さ位置に対して一定範囲に収まる高さ位置であってもよい。
【0016】
上記推定高さ位置を取得する部品実装装置において、好ましくは、制御部は、推定高さ位置を取得したことに基づいて、基板の高さ位置を取得するための定速状態から、ヘッドを下降させる際に、減速状態を維持して定速状態にすることなく推定高さ位置に向かってヘッドを下降させる非定速下降状態に切り替えて、基板に部品を実装する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、推定高さ位置を取得した後に非定速下降状態に切り替えることにより、定速状態において基板への部品の実装を行い続ける場合と比較して、基板への部品の実装時間の増加を抑制することができる。
【0017】
上記非定速下降状態に切り替える部品実装装置において、好ましくは、制御部は、推定高さ位置における接触検知用平均値が接触検知用しきい値未満になったことに基づいて、非定速下降状態から定速状態に切り替えて、基板の高さ位置を再取得する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、推定高さ位置において部品と基板との接触を検知できなかった場合に基板の高さ位置を再取得することにより、再取得した基板の高さ位置において基板に部品を実装することができるので、確実に基板に部品を実装することができる。
【0018】
上記推定高さ位置を取得する部品実装装置において、好ましくは、制御部は、推定高さ位置を取得した後、接触検知用平均値が基板と部品との過度な接触を検知するための接触異常検知用しきい値以上になった場合に、基板面の高さ位置が異常であることを報知する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、基板と部品との過度な接触の異常をユーザが確実に知ることができるので、基板と部品との過度な接触の異常を解消するための作業をユーザに確実に行わせることができる。
【0019】
この発明の第2の局面における接触検知方法は、部品を保持するノズルが取り付けられたヘッドをモータにより下降させるステップと、部品の吸着または基板への部品の実装の少なくとも一方を行う際に、モータに供給された電流値を計測する電流計測部により計測された電流値または電流値に基づくヘッドの推力ヘッドの下降途中の所定区間における移動平均値である接触検知用平均値に基づいて、基板または部品への接触を検知するステップとを備える。
【0020】
この発明の第2の局面による接触検知方法では、上記のように、部品の吸着または基板への部品の実装の少なくとも一方を行う際に、モータに供給された電流値を計測する電流計測部により計測された電流値または電流値に基づくヘッドの推力ヘッドの下降途中の所定区間における移動平均値である接触検知用平均値に基づいて、基板または部品への接触を検知するステップを設ける。これにより、1点のみの推力(電流値)に基づいて判断する場合と異なり、所定区間における電流値または推力の移動平均値である接触検知用平均値を用いることにより、電流値またはヘッドの推力のばらつきを抑制して部品と基板との接触を正確に検知することができるので、基板へ部品を正確な荷重で実装(搭載)することが可能な接触検知方法を取得することができる。また、接触検知用平均値により、電流値またはヘッドの推力のばらつきを抑制してノズルと部品との接触を正確に検知することができるので、部品を正確な荷重で吸着することが可能な接触検知方法を取得することができる。
この発明の第3の局面による部品実装装置は、部品を保持するノズルが取り付けられるヘッドと、ヘッドを上下方向に移動させるモータとを含む、ヘッドユニットと、モータに供給された電流値を計測する電流計測部と、部品の吸着または基板への部品の実装の少なくとも一方を行う際に、電流計測部により計測された電流値、または、電流値に基づくヘッドの推力、の所定区間における平均値である接触検知用平均値に基づいて、部品と基板との接触、または、ノズルと部品との接触を検知する制御を行う制御部とを備え、制御部は、ヘッドの下降途中において、接触検知用平均値が予め設定された接触検知用しきい値を超えたことに基づいて、部品と基板との接触を検知するとともに、基板の高さ位置を取得する制御を行うように構成されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、基板への部品の実装および部品の吸着を正確な荷重で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態による部品実装装置を示した平面図である。
図2】一実施形態による部品実装装置を示した側面図である。
図3】一実施形態による部品実装装置の制御装置およびヘッドユニットの関係を示したブロック図である。
図4】一実施形態による部品実装装置において経過時間に伴うヘッドの推力の変化およびノズルの高さ位置の関係を示したグラフである。
図5】一実施形態による部品実装装置の制御部の定速状態におけるノズルの高さ位置の変化および速度の変化を示したグラフである。
図6】一実施形態による部品実装装置の制御部の非定速下降状態におけるノズルの高さ位置の変化および速度の変化を示したグラフである。
図7】一実施形態による部品実装装置の制御部の再取得状態におけるノズルの高さ位置の変化および速度の変化を示したグラフである。
図8】一実施形態による部品実装装置の表示部において基板面の高さ位置の異常を報知する画面を示した図である。
図9】一実施形態による部品実装装置における接触検知方法の前段部分を示したフローチャートである。
図10】一実施形態による部品実装装置における接触検知方法の中段部分を示したフローチャートである。
図11】一実施形態による部品実装装置における接触検知方法の後段部分を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(部品実装装置)
図1図8を参照して、本発明の一実施形態による部品実装装置100の構成について説明する。
【0025】
図1に示すように、部品実装装置100は、IC、トランジスタ、コンデンサおよび抵抗などの部品(電子部品)Eを部品実装装置100に配置されたプリント基板(基板Su)などに実装するように構成されている。
【0026】
ここで、部品実装装置100において、基板Suを搬送する搬送方向をX1方向とし、基板Suを搬送する搬送方向の逆方向をX2方向とし、X1方向およびX2方向を合わせた方向をX方向とする。また、水平方向のうちのX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向の一方をY1方向とし、Y方向の他方をY2方向とする。また、X方向およびY方向に直交する上下方向をZ方向(上下方向)とし、Z方向の一方をZ1方向(上方向)とし、Z方向の他方をZ2方向(下方向)とする。
【0027】
部品実装装置100は、基台1と、フィーダ配置部2と、基板搬送部3と、支持部4と、一対のレール部5と、ヘッドユニット6と、部品認識カメラ7と、基板認識カメラ8と、制御装置9と、表示部10とを備えている。
【0028】
(基台)
基台1は、部品実装装置100において各構成要素を配置する基礎となる台である。基台1上には、構成要素として、基板搬送部3、レール部5、および、部品認識カメラ7が設けられている。また、基台1内には、制御装置9が設けられている。また、基台1には、Y方向の両側(Y1方向側およびY2方向側)に、複数のテープフィーダ2aを配置可能なフィーダ配置部2が設けられている。
【0029】
(テープフィーダ)
テープフィーダ2aは、基板Suに実装される部品Eを供給する部品供給装置である。テープフィーダ2aは、複数の部品Eを所定の間隔を隔てて保持した部品供給テープを巻き回したリール(図示せず)を保持している。
【0030】
(基板搬送部)
図1に示すように、基板搬送部3は、部品実装装置100の外部から基板Suを搬入し、基板Suを搬送方向(X1方向)に搬送するように構成されている。
【0031】
基板搬送部3は、一対のコンベア31と、モータ(図示せず)とを含んでいる。一対のコンベア31の各々は、プーリ(図示せず)と、プーリに掛け回された輪状の搬送ベルトとを有している。基板搬送部3は、制御装置9と電気的に接続されている。基板搬送部3では、制御装置9からの制御信号に基づいて、モータ(図示せず)を制御することにより、一対のコンベア31上に載置された基板Suの搬送速度を制御するように構成されている。
【0032】
(支持部)
支持部4は、基板Suに部品Eを実装するために移動するヘッドユニット6をX方向に移動可能に支持するように構成されている。支持部4は、ボールねじ軸41と、モータ42とを含んでいる。ボールねじ軸41は、X方向に延びている。支持部4は、制御装置9と電気的に接続されている。これにより、支持部4では、制御装置9からの制御信号に基づいて、モータ42を制御することにより、ボールねじ軸41と係合するボールナットに取り付けられたヘッドユニット6をX方向に移動させる制御を行うように構成されている。
【0033】
(レール部)
一対のレール部5は、支持部4をY方向に移動可能に支持するように構成されている。レール部5は、ボールねじ軸51と、ガイドレール52と、モータ53とを含んでいる。ボールねじ軸51は、Y方向に延びている。ガイドレール52は、Y方向に延びている。レール部5は、制御装置9と電気的に接続されている。レール部5では、制御装置9からの制御信号に基づいて、モータ53を制御することにより、ボールねじ軸51と係合するボールナットに取り付けられた支持部4をY方向に移動させる制御を行うように構成されている。
【0034】
このような構成により、ヘッドユニット6は、基台1上を水平面内で(X方向およびY方向に)移動可能に構成されている。
【0035】
(ヘッドユニット)
図2および図3に示すように、ヘッドユニット6は、部品実装用のヘッドユニットであり、基板SuのZ1方向(上方)を移動するとともに基板Suに対して所定の作業(実装作業)を行うように構成されている。
【0036】
具体的には、ヘッドユニット6は、ヘッド61と、Z軸モータ62と、R軸モータ63と、電流計測部64と、制御部65と、記憶部66とを含んでいる。なお、Z軸モータ62は、特許請求の範囲の「モータ」の一例である。
【0037】
ヘッド61には、部品Eを保持するノズル61aが取り付けられている。ノズル61aには、部品Eを基板Suに実装(搭載)する際の荷重を吸収するためにばね67が取り付けられている。ヘッド61は、基板作業位置に固定された基板Su上の目標搭載位置(図示せず)にノズル61aにより保持された部品Eを実装するように構成されている。ヘッド61は、X方向に一列に複数(4個)並んで配置されている。
【0038】
複数のヘッド61の各々は、圧力発生装置(図示せず)に接続されており、圧力発生装置により生じる負圧によって、先端に取り付けられたノズル61aに部品Eを保持(吸着)可能に構成されている。また、複数のヘッド61の各々は、圧力発生装置による負圧を正圧に切り換えることによって、部品Eを基板Suに実装可能に構成されている。
【0039】
Z軸モータ62は、ヘッド61をZ方向(上下方向)に昇降させるように構成されている。また、R軸モータ63は、ヘッド61を回転軸回りに回転可能に構成されている。
【0040】
電流計測部64は、Z軸モータ62に供給された電流値を計測する。制御部65は、ヘッドユニット6を制御するように構成されている。具体的には、制御部65は、Z軸モータ62を制御するためのモータドライバである。制御部65は、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部66は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリを有する記憶装置である。記憶部66には、ヘッド61を昇降させるためのヘッド制御プログラムが記憶されている。なお、Z軸モータ62によるヘッド61の昇降動作の制御に関しては後に詳細に説明する。
【0041】
(部品認識カメラ)
部品認識カメラ7は、基板Suへの部品Eの実装に先立ってノズル61aに保持(吸着)された部品Eを撮像する部品撮像用のカメラである。部品認識カメラ7は、基台1上に固定されており、部品Eの下方(Z2方向)から、ノズル61aに保持(吸着)された部品Eを撮像するように構成されている。
【0042】
(基板認識カメラ)
基板認識カメラ8は、ヘッドユニット6に取り付けられ、基板Suへの部品Eの実装に先立って、基板Suの上面に付されたFIマーク(Fiducial Mark(フィデューシャルマーク):図示せず)を撮像するマーク撮像用のカメラである。FIマークは、基板Suの位置を確認するためのマークである。
【0043】
(制御装置)
制御装置9は、CPUとしての制御部91と、記憶部92とを含み、部品実装装置100の動作を制御する。制御装置9は、テープフィーダ2a、基板搬送部3、支持部4、レール部5、ヘッドユニット6、部品認識カメラ7および基板認識カメラ8に電気的に接続されている。
【0044】
記憶部92は、ROMおよびRAMなどのメモリを有する記憶装置である。記憶部92には、部品実装プログラムが記憶されている。部品実装プログラムは、基板Su上に実装される部品Eの実装処理を行うためのプログラムである。また、記憶部92には、あらかじめ設定された初期基板面高さ位置Z0、基板Suの上反りまたは下反りの大きさに関する情報である基板反り情報Tb、および、部品Eの部品厚みTcが記憶されている。
【0045】
(表示部)
表示部10(図1参照)は、液晶ディスプレイなどから構成されている。表示部10は、制御装置9から送信された情報を画面に表示するように構成されている。
【0046】
(推力に基づく接触検知)
部品実装装置100では、部品Eを基板Suに実装(搭載)する際に部品Eにかかる荷重を吸収するばね67がノズル61aに取り付けられているが、厚みが薄い部品Eまたは小さな部品Eを実装する場合があるので、可能な限り、部品Eを基板Suに実装する際に部品Eにかかる荷重を抑制することが望まれている。このため、部品Eを基板Suに実装(搭載)する際にヘッド61の推力を計測し、計測したヘッド61の推力に基づいて部品Eと基板Suとの接触を検知することが考えられる。しかしながら、部品Eを基板Suに実装する際に部品Eにかかるヘッド61の推力を計測する専用の荷重計測装置を設けたのでは、部品実装装置100の構成品の数が増大するとともに、部品実装装置100の設計変更が必要になってしまう。また、部品Eを基板Suに実装(搭載)する際のヘッド61の推力のばらつき(図4の二点鎖線を参照)に起因して、部品Eと基板Suとの接触位置の誤検知が発生する可能性がある。
【0047】
そこで、図4に示すように、本実施形態の制御部65は、基板Suの部品Eの実装を行う際に、電流計測部64により計測された電流値に基づくヘッド61の推力の所定区間における平均値である接触検知用平均値Maに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部65は、基板Suの部品Eの実装を行う際に、ヘッド61の推力の移動平均値に基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知する制御を行うように構成されている。このように、接触検知用平均値Maは、移動平均値である。
【0048】
具体的には、制御部65は、接触検知用平均値Maが予め設定された接触検知用しきい値Thを超えたことに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知するとともに、Z軸モータ62を減速または停止させる制御を行うように構成されている。また、制御部65は、ヘッド61の下降途中において、接触検知用平均値Maが予め設定された接触検知用しきい値Thを超えたことに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知するとともに、基板Suの高さ位置Hを取得する制御を行うように構成されている。なお、基板Suの高さ位置Hは、ノズル61aの先端(下端)の高さ位置Hnと、部品Eの厚みとを加算することにより算出される。
【0049】
接触検知用しきい値Thは、ノズル61aの先端(下端)の高さ位置Hnごとに設定されている。接触検知用しきい値Thは、ヘッド61の推力の移動平均値を算出しつつ、ノズル61aを下降させて基板Suに部品Eを接触させることなく上昇させる昇降動作を複数回行うことにより予め設定される。すなわち、接触検知用しきい値Thは、上記昇降動作を複数回行った場合における、ノズル61aの高さ位置Hnごとのヘッド61の推力の平均値に、ノズル61aの高さ位置Hnごとのヘッド61の推力の標準偏差の3倍を加算することにより算出される。
【0050】
このように、制御部65は、ヘッド61の下降途中において、ノズル61aの高さ位置Hnが変化するごとに算出される接触検知用平均値Maが、算出された接触検知用平均値Maに対応するノズル61aの高さ位置Hnに設定された接触検知用しきい値Thを超えたことに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知する制御を行うように構成されている。
【0051】
ここで、図5に示すように、制御部65は、ヘッド61の下降途中において基板Suの高さ位置Hを取得する場合に、Z軸モータ62の加減速に起因するヘッド61の慣性力を抑制した状態で、ヘッド61の推力を計測する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部65は、ヘッド61の下降途中において、ヘッド61の下降速度を一定に保持した定速状態T1にして、接触検知用平均値Maを算出する制御を行うように構成されている。ここで、下降途中とは、ヘッド61を下降させている途中において、ノズル61aの高さ位置Hnが所定高さ位置Hdになったタイミングを示す。所定高さ位置Hdは、初期基板面高さ位置Z0から部品Eの部品厚みTcおよび設定値の差分を算出することにより取得される。なお、設定値は、部品厚みTcおよび基板Suの反りに合わせて適宜設定される。また、制御部65は、定速状態T1ではなく、ヘッド61が僅かに加減速した状態で接触検知用平均値Maを取得してもよい。
【0052】
また、制御部65は、ヘッド61を下降させる際に、減速した後に定速状態T1に保持した状態で、算出した接触検知用平均値Maが接触検知用しきい値Thを超えたことに基づいて、基板Suの高さ位置Hを取得する制御を行うように構成されている。定速状態T1は、部品Eと基板Suとの接触を検知して、基板Suの高さ位置Hを取得するための接触検知区間N1におけるヘッド61の速度の状態である。
【0053】
ここで、制御部65は、複数の基板Suの各々に部品Eを定速状態T1で実装した場合において、複数の基板Suの各々における同一の搭載点(実装位置)の高さ位置Hが所定回数以上略同じ高さ位置である場合に、基板Suの高さ位置Hに基づく基板面の推定高さ位置Heを保存する制御を行うように構成されている。なお、略同じ高さとは、同一の高さ位置Hであってもよいし、同一の高さ位置Hに対して一定範囲に収まる高さ位置Hであってもよい。また、一定範囲は、部品Eの種類によって基板Suの高さ位置Hの測定精度が異なるので、部品Eの厚みによって変化する。たとえば、一定範囲は、部品Eの厚みが薄いものほど狭くなる。また、推定高さ位置Heは、あらかじめ設定された初期基板面高さ位置Z0から部品厚みTcおよび基板反り情報Tbの差分に基づいて算出される。
【0054】
また、図6に示すように、制御部65は、基板面の推定高さ位置Heを取得した後、定速状態T1に起因する部品Eの基板Suへの実装時間の増大を抑制するために、定速状態T1にすることなく、基板Suへの部品Eの実装を行うように構成されている。具体的には、制御部65は、推定高さ位置Heを取得したことに基づいて、基板Suの高さ位置Hを取得するための定速状態T1から、ヘッド61を下降させる際に、減速状態を維持して定速状態T1にすることなく推定高さ位置Heに向かってヘッド61を下降させる非定速下降状態T2に切り替えて、基板Suに部品Eを実装する制御を行うように構成されている。
【0055】
また、制御部65は、非定速下降状態T2の後の接触検知区間N2において、接触検知用平均値Maに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知して、基板Suの高さ位置Hを取得する制御を行うように構成されている。ここで、接触検知区間N2では、ヘッド61の状態は、移動を停止した停止状態である。
【0056】
図7に示すように、制御部65は、推定高さ位置Heにおいて部品Eと基板Suとの接触を検知できなかった場合に、非定速下降状態T2から定速状態T1に切り替えて基板Suの高さ位置Hを再取得する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部65は、非定速下降状態T2で部品Eと基板Suと接触していなかったことを接触検知区間N2において検知した場合に、非定速下降状態T2から定速状態T1に切り替えて、基板Suの高さ位置Hを再取得する制御を行うように構成されている。また、制御部65は、接触検知区間N2において部品Eと基板Suとの接触が検知できなかった場合に、非定速下降状態T2から定速状態T1に切り替えた後、接触検知区間N3において基板Suの高さ位置Hを再取得する制御を行うように構成されている。
【0057】
また、図8に示すように、制御部65は、推定高さ位置Heを取得した後、接触検知用平均値Maが基板Suと部品Eとの過度な接触を検知するための接触異常検知用しきい値以上になった場合に、基板面の高さ位置Hが異常であることを表示部10により報知する制御を行うように構成されている。ここで、接触異常検知用しきい値は、接触検知用しきい値Thよりも大きな値である。さらに、制御部65は、前回までの複数の高さ位置Hの平均値と、今回の高さ位置Hとの比較に基づいて、今回の基板Suの高さ位置Hが所定範囲外である場合にも、基板面の高さ位置Hが異常であることを表示部10により報知する制御を行うように構成されている。
【0058】
(接触検知方法)
以下に、図9図11を参照して、制御部65による部品Eと基板Suとの接触を検知する接触検知方法について説明する。
【0059】
図9に示すように、ステップS1において、ヘッド61が基板Su上の搭載位置(実装位置)まで水平方向に移動する。この際、制御装置9から制御部65に、基板Suに関する情報、部品実装装置100に関する情報、部品Eの部品厚みTcに関する情報、および、予め設定された初期基板面高さ位置Z0に関する情報が送信される。ステップS2において、初めての搭載点か否かが判断される。初めての搭載点である場合には、ステップS3に進み。初めての搭載点でない場合にはステップS6に進む。
【0060】
ステップS3において、ヘッド61が初期基板面高さ位置Z0に向けて部品Eの下降を開始する。ステップS4において、初期基板面高さ位置Z0よりも上方の所定高さ位置Hdに到達したか否かが判断される。所定高さ位置Hdに到達した場合にはステップS5に進み、所定高さ位置Hdに到達していない場合にはステップS4を繰り返す。ステップS5において、ヘッド61は定速状態T1により下降する。そして、図10に示すステップS10に進む。
【0061】
図9に示すように、ステップS6において、他の基板Suと同一の搭載点(実装位置)で所定回数の高さ情報(基板Suの高さ位置Hの情報)が保存されているか否かが判断される。所定回数の高さ情報が保存されていない場合にはステップS3に進み、所定回数の高さ情報が保存されている場合にはステップS7に進む。ステップS7において、非定速下降状態T2でヘッド61の下降が開始される。この際、基板反り情報Tbが取得される。そして、基板反り情報Tbに基づいて、推定高さ位置Heが算出される。そして、ヘッド61は、推定高さ位置Heに向かって部品Eを下降させる。
【0062】
ステップS8において、ノズル61aの高さ位置Hnに基づく部品Eの下端位置が、推定高さ位置Heに到達したか否かが判断される。部品Eの下端位置が推定高さ位置Heに到達していた場合にはステップS9に進み、部品Eの下端位置が推定高さ位置Heに到達しない場合にはステップS8を繰り返す。ステップS10に進む。
【0063】
図10に示すように、ステップS10において、接触検知用平均値Maが、接触検知用しきい値Thを超えたか否かが判断される。接触検知用平均値Maが接触検知用しきい値Thを超えた場合にはステップS11に進み、接触検知用平均値Maが接触検知用しきい値Th以下の場合にはステップS18に進む。ステップS11において、接触検知用平均値Maが接触異常検知用しきい値以上か否かが判断される。接触検知用平均値Maが接触異常検知用しきい値以上の場合にはステップS21に進み、接触検知用平均値Maが接触異常検知用しきい値未満の場合にはステップS12に進む。
【0064】
ステップS12において、部品Eが基板Suに搭載(実装)される。ステップS13において、部品Eが基板Suに搭載された後、ヘッド61が上昇を開始する。ステップS14において、接触検知用平均値Maが接触検知用しきい値Th以上になったタイミングの基板Suの高さ位置Hが保存される。ステップS15において、前回までの基板Suの高さ位置Hの平均値を超えるか否かが判断される。前回までの基板Suの高さ位置Hの平均値を超える場合にはステップS17に進み、前回までの基板Suの高さ位置Hの平均値以下の場合にはステップS16に進む。ステップS16において、制御部65から基板Suの高さ位置Hが制御装置9に送信され、基板Suの高さ位置Hが制御装置9に保存される。そして、図11のステップS26に進む。また、ステップS17において、基板面の高さ位置Hが異常であることがユーザに報知された後、図11のステップS28に進む。
【0065】
また、ステップS18において、定速状態T1によりヘッド61が下降開始する。ステップS19において、接触検知用平均値Maが接触検知用しきい値Thを超えたか否かが判断される。接触検知用平均値Maが接触検知用しきい値Thを超えた場合にはステップS20に進み、接触検知用平均値Maが接触検知用しきい値Th以下の場合にはステップS19を繰り返す。ステップS20において、部品Eが基板Suに搭載された後、ステップS13に進む。
【0066】
また、ステップS21において、部品Eが基板Suに搭載された後、ステップS22において、部品実装装置100の運転を停止する。ステップS23において、保存された基板Suの高さ位置Hがリセット(消去)される。ステップS24において、生産を継続するか否かが判断される。生産を継続する場合にはステップS16に進み、生産を継続しない場合には接触検知方法を終了する。
【0067】
ステップS26において、他の基板Suと同一の搭載点(実装位置)で所定回数の高さ情報(基板Suの高さ位置Hの情報)が保存されているか否かが判断される。すなわち、所定回数以上略同じ高さ位置の基板Suの高さ位置Hが、保存されているか否かが判断される。所定回数の同じ高さ位置の高さ位置Hの情報が保存されている場合にはステップS27に進み、所定回数の略同じ高さ位置の高さ位置Hの情報が保存されていない場合にはステップS28に進む。ステップS27において、所定回数以上略同じ高さ位置の基板Suの高さ位置Hに基づいて、基板反り情報Tbが作成されるととともに、基板反り情報Tbが保存される。ステップS28において、ヘッド61が初期位置(上昇端位置)で停止する。ステップS29において、次の搭載点(実装位置)があるか否かが判断される。次の搭載点がある場合にはステップS1に戻り、次の搭載点がない場合には接触検知方法を終了する。
【0068】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0069】
本実施形態では、上記のように、部品実装装置100は、基板Suへの部品Eの実装を行う際に、電流値に基づくヘッド61の推力の所定区間における平均値である接触検知用平均値Maに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知する制御を行う制御部65を備えている。これにより、1点のみの推力(電流値)に基づいて判断する場合と異なり、所定区間における電流値または推力の平均値である接触検知用平均値Maを用いることにより、電流値またはヘッド61の推力のばらつきを抑制して部品Eと基板Suとの接触を正確に検知することができるので、基板Suへ部品Eを正確な荷重で実装(搭載)することができる。また、接触検知用平均値Maにより、専用の荷重計測装置を設けることなく、部品Eと基板Suとの接触を正確に検知することができるので、部品実装装置100の構成品の数が増大することおよび構造が複雑化することを抑制することができる。また、専用の荷重計測装置を設ける必要がないので、部品実装装置100の設計変更をしないようにすることができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、制御部65は、接触検知用平均値Maが予め設定された接触検知用しきい値Thを超えたことに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知するとともに、Z軸モータ62を減速または停止させる制御を行うように構成されている。これにより、接触検知用平均値Maが予め設定された接触検知用しきい値Thを超えた場合にはZ軸モータ62を減速または停止させることにより、部品Eに対して過剰な荷重が与えられることを抑制することができるので、過剰な荷重に起因する部品Eの破損を抑制することができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、制御部65は、ヘッド61の下降途中において、接触検知用平均値Maが予め設定された接触検知用しきい値Thを超えたことに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知するとともに、基板Suの高さ位置Hを取得する制御を行うように構成されている。これにより、予め設定されていた基板Suの高さ位置Hを更新することができるので、部品Eの基板Suへの実装作業を正確かつ適切に行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、接触検知用しきい値Thは、ノズル61aの高さ位置Hnごとに設定されている。制御部65は、ヘッド61の下降途中において、ノズル61aの高さ位置Hnが変化するごとに算出される接触検知用平均値Maが、算出された接触検知用平均値Maに対応するノズル61aの高さ位置Hnに設定された接触検知用しきい値Thを超えたことに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知する制御を行うように構成されている。これにより、ノズル61aの高さ位置Hnに合わせて接触検知用しきい値Thが適切に設定されているので、部品Eと基板Suとの接触をより正確に検知することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、制御部65は、ヘッド61の下降途中において、ヘッド61の下降速度を一定に保持した定速状態T1にして、接触検知用平均値Maを算出する制御を行うように構成されている。これにより、ヘッド61を定速状態T1にすることにより、ヘッド61の加減速に起因する慣性力がかからない状態で接触検知用平均値Maを取得(算出)することができるので、上記慣性力に起因する接触検知用平均値Maのばらつきの増加を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、制御部65は、ヘッド61を下降させる際に、減速した後に定速状態T1に保持した状態で、算出した接触検知用平均値Maが接触検知用しきい値Thを超えたことに基づいて、基板Suの高さ位置Hを取得する制御を行うように構成されている。これにより、上記慣性力に起因するばらつきを抑制した状態の接触検知用平均値Maと、接触検知用しきい値Thとの比較に基づいて、基板Suの高さ位置Hを取得することができるので、より正確な基板Suの高さ位置Hを取得することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、制御部65は、複数の基板Suの各々に部品Eを定速状態で実装した場合において、複数の基板Suの各々における同一の実装位置の高さ位置Hが所定回数以上略同じ高さ位置である場合に、基板Suの高さ位置Hに基づく基板面の推定高さ位置Heを保存する制御を行うように構成されている。これにより、定速状態T1において基板Suの高さ位置Hを取得することなく、保存した基板面の推定高さ位置Heの情報を用いて部品Eを実装することができるので、その分基板Suへの部品Eの実装時間の増加を抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、制御部65は、推定高さ位置Heを取得したことに基づいて、基板Suの高さ位置Hを取得するための定速状態T1から、ヘッド61を下降させる際に、減速状態を維持して定速状態T1にすることなく推定高さ位置Heに向かってヘッド61を下降させる非定速下降状態T2に切り替えて、基板Suに部品Eを実装する制御を行うように構成されている。これにより、推定高さ位置Heを取得した後に非定速下降状態T2に切り替えることにより、定速状態T1において基板Suへの部品Eの実装を行い続ける場合と比較して、基板Suへの部品Eの実装時間の増加を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、制御部65は、推定高さ位置Heにおける接触検知用平均値Maが接触検知用しきい値Th未満になったことに基づいて、非定速下降状態T2から定速状態T1に切り替えて、基板Suの高さ位置Hを再取得する制御を行うように構成されている。これにより、推定高さ位置Heにおいて部品Eと基板Suとの接触を検知できなかった場合に基板Suの高さ位置Hを再取得することにより、再取得した基板Suの高さ位置Hにおいて基板Suに部品Eを実装することができるので、確実に基板Suに部品Eを実装することができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、制御部65は、推定高さ位置Heを取得した後、接触検知用平均値Maが基板Suと部品Eとの過度な接触を検知するための接触異常検知用しきい値以上になった場合に、基板面の高さ位置Hが異常であることを報知する制御を行うように構成されている。これにより、基板Suと部品Eとの過度な接触の異常をユーザが確実に知ることができるので、基板Suと部品Eとの過度な接触の異常を解消するための作業をユーザに確実に行わせることができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、接触検知方法は、基板Suへの部品Eの実装を行う際に、Z軸モータ62に供給された電流値に基づくヘッド61の推力の所定区間における平均値である接触検知用平均値Maに基づいて、基板Suまたは部品Eへの接触を検知するステップS10を備えている。これにより、1点のみの推力(電流値)に基づいて判断する場合と異なり、所定区間における電流値または推力の平均値である接触検知用平均値Maを用いることにより、電流値またはヘッド61の推力のばらつきを抑制して部品Eと基板Suとの接触を正確に検知することができるので、基板Suへ部品Eを正確な荷重で実装(搭載)することが可能な接触検知方法を取得することができる。
【0080】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0081】
たとえば、上記実施形態では、制御部65は、基板Suの部品Eの実装を行う際に、接触検知用平均値Maに基づいて、部品Eと基板Suとの接触を検知する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、部品を吸着する際に、接触検知用平均値に基づいて、ノズルと部品との接触を検知する制御を行うように構成されていてもよい。これにより、接触検知用平均値により、電流値またはヘッドの推力のばらつきを抑制してノズルと部品との接触を正確に検知することができるので、部品を正確な荷重で吸着することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、制御部65は、前回までの複数の基板Suの高さ位置Hの平均値と、今回の基板Suの高さ位置Hとの比較に基づいて、今回の基板Suの高さ位置Hが所定範囲外である場合に、基板面の高さ位置Hが異常であることを報知する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、前回までの複数の基板の高さ位置の中央値と、今回の基板の高さ位置との比較に基づいて、今回の基板の高さ位置が所定範囲外である場合に、基板面の高さ位置が異常であることを報知する制御を行うように構成されていてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、接触検知用しきい値Thは、昇降動作を複数回行った場合における、ノズル61aの高さ位置Hnごとのヘッド61の推力の平均値に、ノズル61aの高さ位置Hnごとのヘッド61の推力の標準偏差の3倍を加算することにより算出される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接触検知用しきい値は、昇降動作を複数回行った場合における、ノズルの高さ位置ごとのヘッドの推力の平均値に、ノズルの高さ位置ごとのヘッドの推力の標準偏差の3倍の最大値を加算することにより算出されてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、制御部65は、ヘッド61の下降途中において、ヘッド61の下降速度を一定に保持した定速状態T1にして、接触検知用平均値Maを算出する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、ヘッドの下降途中において、定速状態にすることなく、接触検知用平均値を算出する制御を行うように構成されていてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、制御部65は、基板Suに部品Eを定速状態T1で複数回実装した場合において、基板Suの高さ位置Hが所定回数以上略同じ高さ位置である場合に、基板Suの高さ位置Hを基板面の推定高さ位置Heとして保存する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、基板に部品を定速状態で複数回実装した場合において、基板の高さ位置が所定回数以上略同じ高さ位置である場合に、基板の高さ位置を基板面の推定高さ位置として保存する制御を行わなくてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、制御部65は、推定高さ位置Heを取得したことに基づいて、推定高さ位置Heに向かってヘッド61を下降させる非定速下降状態T2に切り替えて、接触検知用平均値Maを取得しつつ、基板Suに部品Eを実装する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、推定高さ位置を取得したことに基づいて、推定高さ位置に向かってヘッドを下降させる非定速下降状態に切り替えなくてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、制御部65は、推定高さ位置Heにおいて部品Eと基板Suとの接触を検知できなかった場合に、非定速下降状態T2から定速状態T1に切り替えて基板Suの高さ位置を再取得する制御を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部は、推定高さ位置において部品と基板との接触を検知できなかった場合に、非定速下降状態から定速状態に切り替えて基板の高さ位置を再取得する制御を行わなくてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部65の制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0089】
6 ヘッドユニット
61 ヘッド
61a ノズル
62 Z軸モータ
64 電流計測部
65 制御部
100 部品実装装置
E 部品
H 基板の高さ位置
Hd 所定高さ位置
He 推定高さ位置
Ma 接触検知用平均値
Su 基板
T1 定速状態
T2 非定速下降状態
Th 接触検知用しきい値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11