(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】ポンプの監視方法、及び監視装置
(51)【国際特許分類】
F04D 13/00 20060101AFI20241210BHJP
F04D 29/046 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F04D13/00 D
F04D29/046 A
(21)【出願番号】P 2021120337
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124180(JP,A)
【文献】特開2019-065828(JP,A)
【文献】特開2009-074530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/00
F04D 15/00
F04D 29/00
F04D 29/046
F16C 17/02
F16C 17/14
G01H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水槽内の水を排出する排水機構の振動を振動検出部によって検出し、
前記振動検出部の検出結果に基づいて前記排水機構を構成する水中軸受の摩耗検出の要否を判断し、
前記摩耗検出が必要と判断した場合、供給機構によって前記水中軸受と回転軸の間に流体を供給し、前記供給機構が供給する流体圧
とポンプケーシングの内圧との差圧を検出する差圧検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗量を判断
し、
前記摩耗量が定められた隙間警報値以上の場合、前記水中軸受の交換準備を促す報知を報知部によって行い、前記摩耗量が前記隙間警報値未満の場合、前記水中軸受以外の異常の可能性を促す報知を前記報知部によって行う、
ポンプの監視方法。
【請求項2】
吸水槽内の水を排出する排水機構を構成する水中軸受の摩耗検出の要否を判断する測定時間が経過したか否かを判断し、
前記測定時間が経過した場合、前記排水機構の振動を振動検出部によって検出し、
前記振動検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗検出の要否を判断し、
前記摩耗検出が必要と判断した場合、供給機構によって前記水中軸受と回転軸の間に流体を供給し、前記供給機構が供給する流体圧とポンプケーシングの内圧との差圧を検出する差圧検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗量を判断する、
ポンプの監視方法。
【請求項3】
前記摩耗量が定められた隙間警報値以上の場合、前記水中軸受の交換準備を促す報知を行い、
前記摩耗量が前記隙間警報値未満の場合、前記水中軸受以外の異常の可能性を促す報知を行う、
請求項
2に記載のポンプの監視方法。
【請求項4】
前記振動検出部の検出結果が定められた振動警報値以上の場合、又は前記振動検出部の検出結果は前記振動警報値未満であるが検出結果の増加勾配が定められた警報勾配以上の場合、前記摩耗検出が必要と判断する
、請求項1
から3のいずれか1項に記載のポンプの監視方法。
【請求項5】
前記振動警報値は、前記ポンプケーシングを設置したときの前記振動検出部の検出結果と前記差圧検出部の検出結果とに基づいて設定される、請求項
4に記載のポンプの監視方法。
【請求項6】
前記隙間警報値は、前記ポンプケーシングを設置したときの前記振動検出部の検出結果と前記差圧検出部の検出結果とに基づいて設定される、請求項
1又は3に記載のポンプの監視方法。
【請求項7】
ポンプケーシングと、
前記ポンプケーシング内に配置された部分に羽根車が取り付けられた回転軸、及び前記回転軸を回転可能に支持する水中軸受を有し、吸水槽内の水を排出する排水機構と
を備えるポンプの監視装置であって、
前記排水機構の振動を検出する振動検出部と、
前記回転軸と前記水中軸受の間に流体を供給する供給機構と、
前記供給機構が供給する流体圧と前記ポンプケーシングの内圧との差圧を検出する差圧検出部と、
前記振動検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗検出の要否を判断し、前記摩耗検出が必要と判断すると、前記供給機構を駆動させ、前記差圧検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗量を判断する制御部と
、
前記排水機構の異常を報知するための報知部と
を備え
、
前記制御部は、前記摩耗量が定められた隙間警報値以上の場合、前記水中軸受の交換準備を促す報知を前記報知部によって行い、前記摩耗量が前記隙間警報値未満の場合、前記水中軸受以外の異常の可能性を促す報知を前記報知部によって行う、ポンプの監視装置。
【請求項8】
ポンプケーシングと、
前記ポンプケーシング内に配置された部分に羽根車が取り付けられた回転軸、及び前記回転軸を回転可能に支持する水中軸受を有し、吸水槽内の水を排出する排水機構と
を備えるポンプの監視装置であって、
前記排水機構の振動を検出する振動検出部と、
前記回転軸と前記水中軸受の間に流体を供給する供給機構と、
前記供給機構が供給する流体圧と前記ポンプケーシングの内圧との差圧を検出する差圧検出部と、
前記水中軸受の摩耗検出の要否を判断する測定時間が経過したか否かを判断し、前記測定時間が経過した場合に前記振動検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗検出の要否を判断し、前記摩耗検出が必要と判断すると、前記供給機構を駆動させ、前記差圧検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗量を判断する制御部と
を備える、ポンプの監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプの監視方法、及び監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された立軸ポンプは、ポンプケーシング内に回転軸を回転可能に支持する水中軸受を備え、ポンプケーシング外に水中軸受の摩耗状態を監視する監視装置を備える。監視装置は、回転軸と水中軸受の間に流体を供給する供給機構と、供給機構が供給する流体圧とポンプケーシングの内圧との差圧を検出する差圧検出部と、差圧検出部の検出結果に基づいて水中軸受の摩耗量を検出する制御部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の監視装置による水中軸受の摩耗検出は、複数の水中軸受を個別かつ順番に行う必要があるため、ポンプ全体の点検には1日以上(通常では2日)の作業時間が必要である。この点検作業中にはポンプを運転できないため、定められた期間毎に点検を行う時間計画保全管理には改善の余地がある。
【0005】
本発明は、保全管理のためにポンプが運転不可能になる期間を削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、吸水槽内の水を排出する排水機構の振動を振動検出部によって検出し、前記振動検出部の検出結果に基づいて前記排水機構を構成する水中軸受の摩耗検出の要否を判断し、前記摩耗検出が必要と判断した場合、供給機構によって前記水中軸受と回転軸の間に流体を供給し、前記供給機構が供給する流体圧とポンプケーシングの内圧との差圧を検出する差圧検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗量を判断し、前記摩耗量が定められた隙間警報値以上の場合、前記水中軸受の交換準備を促す報知を報知部によって行い、前記摩耗量が前記隙間警報値未満の場合、前記水中軸受以外の異常の可能性を促す報知を前記報知部によって行う、ポンプの監視方法を提供する。
【0007】
また、本発明の他の態様は、ポンプケーシングと、前記ポンプケーシング内に配置された部分に羽根車が取り付けられた回転軸、及び前記回転軸を回転可能に支持する水中軸受を有し、吸水槽内の水を排出する排水機構とを備えるポンプの監視装置であって、前記排水機構の振動を検出する振動検出部と、前記回転軸と前記水中軸受の間に流体を供給する供給機構と、前記供給機構が供給する流体圧と前記ポンプケーシングの内圧との差圧を検出する差圧検出部と、前記振動検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗検出の要否を判断し、前記摩耗検出が必要と判断すると、前記供給機構を駆動させ、前記差圧検出部の検出結果に基づいて前記水中軸受の摩耗量を判断する制御部と、前記排水機構の異常を報知するための報知部とを備え、前記制御部は、前記摩耗量が定められた隙間警報値以上の場合、前記水中軸受の交換準備を促す報知を前記報知部によって行い、前記摩耗量が前記隙間警報値未満の場合、前記水中軸受以外の異常の可能性を促す報知を前記報知部によって行う、ポンプの監視装置を提供する。
【0008】
排水機構の振動は水中軸受の摩耗が進むに従って大きくなるため、排水運転時に検出した排水機構の検出結果から水中軸受の摩耗量を予測(同定)できる。そのため、排水機構の振動検出によって水中軸受の摩耗検出が必要と判断した場合のみ、実際に摩耗検出を行うことで、長い作業時間を要する水中軸受の摩耗検出の回数を低減できる。その結果、保全管理のためにポンプが運転不可能になる期間を削減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、保全管理のためにポンプが運転不可能になる期間を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る監視装置を用いたポンプ設備を示す断面図。
【
図2】ポンプケーシングから排水機構を取り外した状態を示す断面図。
【
図5】水中軸受の隙間と回転軸の回転数との関係を示すグラフ。
【
図6】水中軸受の隙間と排水機構の振動との関係を示すグラフ。
【
図7】スラリー濃度が異なる場合の水中軸受の摩耗傾向を示すグラフ。
【
図8】ポンプ設備を新設した際に行う設定処理のフローチャート。
【
図9A】制御部による設備監視処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る監視装置60を用いた立軸ポンプ(以下「ポンプ」と略す。)10を備えるポンプ設備を示す。監視装置60は、据付床1に取り付けられたポンプ10が備える排水機構40の振動を検出し、排水機構40が備える水中軸受56の摩耗検出が必要と判断した場合のみ、水中軸受56の摩耗量を検出するように構成されている(状態監視保全)。
【0013】
まず、
図1及び
図2を参照してポンプ10の構成を説明する。
【0014】
ポンプ10は、排水路を構成するポンプケーシング20と、ポンプケーシング20内を通して吸水槽2内の水(液体)を下流側へ排出するための排水機構40とを備える。排水機構40は、回転軸42、羽根車48、及び水中軸受56を備える。本実施形態のポンプ10は、ポンプケーシング20から排水機構40を取外可能としたプルアウト型である。
【0015】
(ポンプケーシングの構成)
引き続いて
図1及び
図2を参照すると、ポンプケーシング20は、据付床1の貫通孔1aに上方から差し込まれ、据付床1に固定されている。ポンプケーシング20は、吸水槽2内に配置される揚水管21と、据付床1上に配置される吐出し管25とを備え、全体として筒状である。吐出し管25の上側には更に、モータ台30が取外可能に取り付けられている。
【0016】
揚水管21は、据付床1から吸水槽2内に鉛直方向へ垂下されている。揚水管21は、揚水管本体22、ベーンケース23、及びベルマウス24を備え、この順で上側から下側へ接続されている。揚水管本体22は直管状であり、全長又は数の変更によって、揚水管21の全長を変更可能である。ベーンケース23の内部には、後述するボウルブッシュ54を支持する支持板23aが、周方向に間隔をあけて複数設けられている。ベルマウス24は、上端から下端に向けて次第に拡開した円錐筒状である。ベルマウス24の下端は、吸水槽2内の水を吸い込む吸込口24aであり、吸水槽2の底(図示せず)と間隔をあけて配置されている。
【0017】
吐出し管25は、揚水管21の上端に接続されたデリベンド26を備える。デリベンド26は、揚水管21の軸線に沿って垂直方向に延びる第1直管部27と、水平方向に延びる第2直管部28とを備える。第1直管部27の内部と第2直管部28の内部とは空間的に連通しており、揚水は、第1直管部27の下端から流入して、第2直管部28の吐出口28aから流出する。
【0018】
第1直管部27の上端は円形状の開口部27aである。開口部27aの中心は揚水管21の軸線上に位置し、開口部27aの直径は回転軸42を軸方向から見たときの羽根車48の外形よりも大きい。
【0019】
第1直管部27の下部には、据付床1に固定するためのベースプレート29が設けられている。但し、ベースプレート29は、揚水管本体22の上部に設けられてもよい。
【0020】
モータ台30は、ボルト止めによって第1直管部27の上端に取り付けられて、開口部27aを塞ぐ閉鎖板31を備える。また、モータ台30は、閉鎖板31を取り囲む筒状の第1枠部32、第1枠部32の上端に取り付けられた隔板33、隔板33の上側に取り付けられた筒状の第2枠部34、及び第2枠部34の上端に取り付けられた端板35を備える。モータ台30は更に、第1直管部27内に配置され、第1直管部27内に流入した揚水を第2直管部28へ導くガイド板36を備える。
【0021】
端板35上には、電動式の駆動モータ37が取り付けられている。駆動モータ37の出力軸は、その軸線が揚水管21の軸線と同一直線上に位置するように、端板35を貫通して端板35と隔板33の間に配置されている。
【0022】
閉鎖板31には回転軸42を貫通させる貫通孔が設けられ、この貫通孔が軸封装置38の台座によって塞がれている。軸封装置38は、回転軸42との間を水密にシールする。
【0023】
(排水機構の構成)
引き続いて
図1及び
図2を参照すると、排水機構40は、前述のように回転軸42、羽根車48、及び水中軸受56を備える。また、排水機構40は回転軸42を取り囲む吊下げ管(内筒)50を備え、この吊下げ管50に羽根車48の振れ回りを防ぐボウルブッシュ54が取り付けられている。水中軸受56は、吊下げ管50とボウルブッシュ54にそれぞれ取り付けられている。
【0024】
回転軸42は、モータ台30を貫通して揚水管21の軸線に沿って配置されている。回転軸42は、ポンプケーシング20内に配置された内側部42aと、モータ台30内に配置された外側部42bとを備える。本実施形態の回転軸42は、複数(本実施形態では3本)の軸部材43と、隣り合う軸部材43をそれぞれ連結する軸継手44とで構成されている。
【0025】
内側部42aの下端は、ボウルブッシュ54を貫通し、ボウルブッシュ54と吸込口24aとの間に配置されている。外側部42bの上端は、モータ台30の隔板33と端板35の間に配置され、カップリング45を介して駆動モータ37の出力軸に機械的に接続されている。外側部42bは、隔板33上に配置された転がり軸受46によって支持されている。
【0026】
羽根車48は、ボウルブッシュ54の下側に配置され、回転軸42の内側部42aの下端に取り付けられている。回転軸42の軸方向から見たときの羽根車48の外形は、開口部27aの直径(外形)よりも小さい。駆動モータ37によって回転軸42が回転されると、羽根車48は、回転軸42と一体に回転し、ポンプケーシング20内を通して吸水槽2内の水を下流側へ排出する。
【0027】
吊下げ管50は、モータ台30から下向きに延び、回転軸42の内側部42aのうちボウルブッシュ54(羽根車48)よりも上側を取り囲む。吊下げ管50は、ボルト止めによってモータ台30に取り付けられている。より具体的には、吊下げ管50は、軸封装置38の台座にボルト止めされ、台座が閉鎖板31にボルト止めされている。
【0028】
本実施形態の吊下げ管50は、複数(2本)の筒体51と、隣り合う筒体51を接続する筒状の接続部材52とで構成されている。最も上側の筒体51の上端は、前述のようにボルト止めによって軸封装置38の台座(閉鎖板31)に取り付けられている。最も下側の筒体51の下端は、接続部材52を介してボウルブッシュ54に接続されている。接続部材52は、水中軸受56を保持するホルダによって構成されている。
【0029】
ボウルブッシュ54は、回転軸42の軸方向から見ると羽根車48の外形よりも小さい概ね楕円筒形状であり、ポンプケーシング20の開口部27aを通して出し入れ可能である。ポンプケーシング20内への取り付けによってボウルブッシュ54は、支持板23aによって支持され、ベーンケース23内に同軸で配置される。これにより、ボウルブッシュ54の下側に配置された羽根車48の振れ回りを抑制できる。
【0030】
水中軸受56は、吊下げ管50が備える2つの接続部材52とボウルブッシュ54の挿通部54aとに取り付けられ、回転軸42を回転可能に支持する。水中軸受56は、回転軸42の外周面に摺接する円筒状の摺接部材57を備える。
【0031】
図3を参照すると、摺接部材57には半径方向に貫通した連通孔57aが設けられている。連通孔57aは、接続部材52の接続口52aに対して空間的に連通する。ボウルブッシュ54に配置された摺接部材57も連通孔を備え、この連通孔が挿通部54aの接続口に連通する。これにより、接続口52aと連通孔57aとを通して、後述する供給機構63から供給された圧縮空気を摺接部材57(水中軸受56)と回転軸42の間に供給できる。
【0032】
通常の排水運転時、吊下げ管50内には、水中軸受56の潤滑液として清水(上水)が注水されてもよい。潤滑液が水中軸受56と回転軸42との間に供給されることで、これらの焼き付きを防止できるとともに、水中軸受56の摩耗を抑制できる。このように用いられる吊下げ管50は、保護管とも呼ばれ、内部の潤滑液と外部の揚水とを仕切る。但し、吊下げ管50には、潤滑液を注水することなく、揚水を流入可能な多数の通水孔が設けられていてもよい。
【0033】
図1及び
図2を参照すると、このように構成した排水機構40には、後述する内部配管74が、モータ台30を貫通し、回転軸42に沿ってポンプケーシング20内に配置され、一体化されている。
【0034】
図2に示すように回転軸42と駆動モータ37(
図1参照)の連結を解除した状態では、羽根車48を含む回転軸42の軸方向の移動は水中軸受56によって規制され、水中軸受56の移動は接続部材52(吊下げ管50)への取り付けによって規制され、吊下げ管50の移動はモータ台30への取り付けによって規制され、内部配管74の移動は接続部材52(水中軸受56)への接続によって規制されている。
【0035】
そのため、ボルトの取り外しによって吐出し管25とモータ台30の連結を解除した状態では、モータ台30、回転軸42、吊下げ管50、及び内部配管74のいずれかを吊り上げることで、開口部27aを通して内部配管74を一緒に排水機構40をポンプケーシング20から取り外すことができる。この際、ポンプケーシング20は、据付床1に固定されたままであり、分解の必要はない。
【0036】
但し、据付床1を備える建屋の天井(高さ)が排水機構40の全高よりも低い場合、内部配管74を含む排水機構40を上下方向において複数の区画に分割し、段階的に分解してもよい。
【0037】
次に、
図1及び
図4を参照してポンプ10の監視装置60について説明する。
【0038】
(監視装置の構成)
監視装置60は、水中軸受56の摩耗量の検出と交換時期の判断、及び水中軸受56以外を原因とするポンプ10の異常を監視する。具体的には、監視装置60は、排水機構40の振動を検出する振動センサ61、水中軸受56の摩耗を検出する摩耗検出部62、排水運転中のポンプ吐出し流量を検出する流量検出部77、及びこれらを制御する制御部80を備える。
【0039】
排水運転中の排水機構40の振動値は、水中軸受56の摩耗量と相関を有し、水中軸受56の摩耗量の増大に従って大きくなる。また、排水運転中の排水機構40の振動値は、ポンプ吐出し流量と相関を有し、ポンプ吐出し流量の変化に応じて変化する。そのため、本実施形態の監視装置60では、排水運転中に検出した振動センサ61による検出結果と流量検出部77による検出結果とに基づいて、水中軸受56の摩耗量を予測(同定)する。そして、振動値(同定摩耗量)が許容値を超えていない場合には排水運転を続行し、振動値が許容値を超えている場合には排水運転を中断し、摩耗検出部62によって水中軸受56の実際の摩耗量を検出する。これにより、排水運転の停止回数を低減するとともに、水中軸受56以外を原因とする排水機構40の異常も判断可能としている。
【0040】
以下、振動センサ(振動検出部)61、摩耗検出部62、流量検出部77、及び制御部80の構成を具体的に説明する。
【0041】
振動センサ61は、排水機構40の振動を検出し、電気的に接続された制御部80に検出結果を出力する振動センサである。振動センサは、排水機構40の振動を検出できる構成であれば、どのような型式のセンサでも用いることができる。本実施形態では、転がり軸受46のブラケットに振動センサ61が配置されている。つまり、振動センサ61によって転がり軸受46のブラケット振動を検出することで、排水機構40の軸振動を同定している。但し、排水機構40の状態が良好に表れる部分であれば、転がり軸受46のブラケット以外の部分の振動を検出してもよい。
【0042】
ここで、排水機構40の振動は、ポンプ揚程と効率から最高効率点で最小になる。排水機構40の軸振動と転がり軸受46のブラケット振動は、いずれもポンプ吐出し流量に依存するため、ポンプ吐出し流量の変化に伴って変化し、締切点で最大値になる。ポンプ吐出し量に対する排水機構40の軸振動と転がり軸受46のブラケット振動の関係は同じである。つまり、排水機構40の軸振動と転がり軸受46のブラケット振動の相関は大きい。これらの相関は、ポンプ吐出し流量を変化させても線形近似式で求めることができる。よって、ポンプ吐出し流量を概ね一定に保ち、転がり軸受46のブラケット振動を測定することで、排水機構40の軸振動の経年変化を推定できる。
【0043】
摩耗検出部62は、回転軸42と水中軸受56の間に圧縮空気(流体)を供給する供給機構63と、供給機構63が供給する空気圧とポンプケーシング20の内圧との差圧を検出する差圧センサ(差圧検出部)75とを備える。
【0044】
供給機構63は、ブロワ64、切換弁65、定流量弁66、及び逆止弁67を備える。供給機構63は更に、ブロワ64の給気圧を検出する圧力センサ68と、ブロワ64の給気を補うための圧力タンク69とを備える。また、供給機構63は、3種の配管72~74を備える。
【0045】
ブロワ64は、電気的に接続された制御部80の指令によって駆動され、外部から取り込んだ空気を接続配管72に吐出する。
【0046】
切換弁65は、電気的に接続された制御部80の指令によって、複数の水中軸受56のうちのいずれかとブロワ64とを選択的に接続する。本実施形態では、3個の水中軸受56が用いられているため、切換弁65には四方弁が用いられている。切換弁65のうち、1つの入口には接続配管72(ブロワ64)が接続され、3つの出口には外部配管73(水中軸受56)がそれぞれ接続されている。外部配管73は、据付床1上に配置され、モータ台30内で内部配管74に接続されている。
【0047】
内部配管74は、回転軸42に沿うようにポンプケーシング20内に配置されている。内部配管74の一端(上端)は、閉鎖板31を貫通してモータ台30内に配置され、外部配管73に分離可能に接続されている。内部配管74の他端(下端)は、接続部材52の接続口52a及びボウルブッシュ54の接続口のいずれかに接続されている。つまり、本実施形態の内部配管74は、前述のように排水機構40と一体化され、ポンプケーシング20から排水機構40と一緒に取外可能になっている。
【0048】
定流量弁66は、外部配管73にそれぞれ介設され、水中軸受56に供給する圧縮空気の流量を一定に保つ。
【0049】
逆止弁67は、外部配管73のうち定流量弁66の下流側にそれぞれ介設され、定流量弁66から水中軸受56に向けた空気の流動を許容し、逆向きの空気の流動を阻止する。
【0050】
圧力センサ68は、接続配管72に介設され、検出結果(ブロワ64の給気圧)を制御部80に出力する。
【0051】
圧力タンク69は、接続配管72のうち圧力センサ68と切換弁65の間に分岐接続されている。分岐管には、電磁弁70と逆止弁71が並列に接続されている。ブロワ64が吐出した空気が逆止弁71を通して圧力タンク69に定められた容量で貯留される。ブロワ64による給気が不足している場合、制御部80の指令によって閉状態の電磁弁70が開弁され、圧力タンク69が貯留した空気が切換弁65(水中軸受56)に供給さる。
【0052】
差圧センサ75は、一端が接続配管72のうち圧力タンク69の分岐接続部と切換弁65の間に接続され、他端が台座(閉鎖板31)を貫通して吊下げ管50内に配置された差圧測定配管76に介設されている。差圧センサ75は、ブロワ64から水中軸受56への給気圧と吊下げ管50の内圧との差を検出し、検出結果(差圧)を電気的に接続された制御部80に出力する。
【0053】
ここで、水中軸受56と回転軸42の間の隙間が小さい時(水中軸受56の摩耗が少ない時)の差圧センサ75による検出値Psは、水中軸受56と回転軸42の隙間が大きくなった時の検出値Psよりも大きい。つまり、差圧センサ75による検出値Psは、水中軸受56の摩耗が進むに従って次第に小さくなる。よって、水中軸受56の摩耗量は、差圧センサ75の検出値Psと予め記憶された摩耗量のデータテーブルとの比較によって判断できる。
【0054】
流量検出部77は、ポンプ吐出し流量、つまりポンプケーシング20内を流れる揚水量を検出し、検出結果(ポンプ吐出し流量)を電気的に接続された制御部80に出力する。本実施形態の流量検出部77は、第1直管部27内のうちガイド板36よりも上側の圧力を検出する第1圧力センサ78と、第2直管部28内の圧力を検出する第2圧力センサ79とによって構成されている。
【0055】
排水運転時、第1圧力センサ78による検出圧力P1は、第2圧力センサ79による検出圧力P2よりも小さくなる。これらの圧力差(P2-P1)は、ポンプ吐出し流量に依存し、ポンプ吐出し流量が多くなるに従って大きくなる。よって、ポンプ吐出し流量は、圧力差(P1-P2)と予め記憶されたポンプ吐出し流量のデータテーブルとの比較によって判断できる。
【0056】
図4を参照すると、制御部80は、駆動モータ37、振動センサ61、ブロワ64、切換弁65、圧力センサ68、電磁弁70、差圧センサ75、第1圧力センサ78、第2圧力センサ79、及び報知部82に電気的に接続されている。接続されたセンサ61,68,75,78,79の検出結果に基づいて、制御部80は、駆動モータ37、ブロワ64、切換弁65、電磁弁70、及び報知部82を制御する。
【0057】
なお、報知部82は、排水機構40の異常状態をオペレータに知らせる手段であり、例えば音声出力、モニターへの文字表示、及び回転灯による表示等が含まれる。また、排水機構40の異常状態は、離れた集中管理センターに送信される構成であってもよい。
【0058】
制御部80は、パーソナルコンピュータによって構成されている。また、制御部80は、単一又は複数のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより構成されてもよい。制御部80は、制御プログラム、及び制御プログラムで使用する判定値のデータテーブルと閾値が記憶された記憶部81を備える。
【0059】
記憶部81に記憶された判定値には、振動センサ61による検出結果(以下「振動計測値Vmv」という。)に対応する振動値のデータテーブル、摩耗検出部62による検出結果(以下「隙間計測値Gmv」という。)に対応する摩耗量のデータテーブル、及び流量検出部77の検出結果(以下「流量計測値Fmv」という。)に対応するポンプ吐出し流量のデータテーブルが含まれている。
【0060】
記憶部81に記憶された閾値には、振動センサ61が検出した振動計測値Vmvに対する振動警報値Vav、及び摩耗検出部62が検出した隙間計測値Gmvに対する隙間警報値Gavと隙間限界値Glvが含まれている。そのうち、振動警報値Vavは、異なる流量計測値Fmv(ポンプ吐出し流量)毎に設定されている。
【0061】
ここで、水中軸受56の隙間(クリアランス)と排水機構40の危険回転数の関係を
図5に示し、水中軸受56の隙間と排水機構40の軸振動の関係を
図6に示す。
図5では、縦軸が排水機構40の危険回転数を示し、横軸が水中軸受56の隙間を示している。
図6では、縦軸が軸受面圧、接触遷移面圧、及び軸振動を示し、横軸が水中軸受56の隙間を示している。
【0062】
排水機構40の軸振動は、排水機構40の回転数と固有振動数の相違(離調)が大きいほど小さくなる。
図5を参照すると、水中軸受56の隙間は摩耗等によって大きくなり、それに伴って排水機構40の固有振動数は低下していく。排水機構40の危険速度(危険回転数)と固有振動数の一致点が、共振現象によって排水機構40に振れ回りが生じ、水中軸受56まわりや据付床1が損傷する一次危険速度である。
【0063】
図6を参照すると、水中軸受56の隙間と排水機構40の軸振動は、前述のように相関を有し、排水機構40の軸振動を記録することで、水中軸受56の隙間を同定できる。具体的には、排水機構40の軸振動は、水中軸受56の隙間増大に従って上昇し、ピークを越えると、水中軸受56の隙間増大に従って低下していく。但し、軸振動がピークになった時点で水中軸受56まわりや据付床1への影響は過大であり、それ以上の排水機構40の駆動には支障がある。つまり、水中軸受56は、排水機構40の軸振動がピークに達する前に交換する必要がある。
【0064】
隙間限界値Glvとしては、排水機構40の危険速度と固有振動数が一致し、排水機構40の軸振動がピークになる時点(
図5及び
図6では隙間「2.5」)よりも手前の適切な時点(例えば
図5及び
図6では隙間「2.0」)の摩耗量が設定される。また、隙間警報値Gavとしては、隙間限界値Glvよりも手前の時点(例えば
図5及び
図6では隙間「1.5」)の摩耗量が設定される。さらに、振動警報値Vavとしては、隙間警報値Gavに対応する振動値(
図6では「0.2」)が、異なる流量計測値Fmv(ポンプ吐出し流量)毎に変換して設定される。また、これらの閾値Vav,GVA,GVLは、ポンプ10を据付床1に新設した際の実際の検出結果に基づいて設定される。
【0065】
記憶部81には、振動センサ61が検出した振動計測値Vmvが、新しい方から順に定められた回数分記憶される。記憶数が上限になると、最も古い振動計測値Vmvが削除され、最新の振動計測値Vmvが記憶される。記憶された複数回分の振動計測値Vmvは、振動値の増加勾配IGの算出に用いられる。
【0066】
記憶部81には更に、算出した増加勾配IGと比較する警報勾配WGが記憶されている。警報勾配WGは、ポンプ10の新設時、実際に排出する水に含まれるスラリー濃度に基づいて設定される。
図7に示すように、排水機構40の振動振幅は、振動時刻歴が進むに従って大きくなる。また、水中軸受56の摩耗量は揚水に含まれるスラリー濃度と相関を有し、スラリー濃度が高くなるに従って水中軸受56の摩耗量は多くなり、時刻歴に対する振動振幅の傾斜勾配は急になる。一方、排水に含まれるスラリー濃度は、ポンプ10が設置される排水機場によって異なる。そのため、警報勾配WGは、排水機場の実際のスラリー濃度に基づいて設定されている。
【0067】
次に、
図8を参照して、ポンプ10の新設後に行う閾値Vav,Gav,Glv、及び警報勾配WGの設定について説明する。
【0068】
ポンプ10の設置が完了すると、ステップS1で駆動モータ37を始動し、ステップS2で、振動警報値Vavの決定に必要な複数のポンプ吐出し流量(流量計測値Fmv)のうちの1つになるように、駆動モータ37の回転数を設定する。その後、ステップS3で、振動センサ61によって振動値Vb(Qi)を検出(測定)させた後、ステップS4で、測定結果(Vb(Qi))を記憶させる。
【0069】
続いて、ステップS5で、全てのポンプ吐出し流量で振動値Vb(Qi)を測定し終えたか否かを確認し、測定し終えていない場合にはステップS2に戻り、残りのポンプ吐出し流量が全て完了するまで、ステップS2からS4を繰り返す。
【0070】
全てのポンプ吐出し流量でブラケット振動の値Vb(Qi)を測定し終えた場合、ステップS6で駆動モータ37を停止させた後、ステップS7で、検出したブラケット振動値Vb(Qi)から排水機構40の軸振動を演算する。その後、ステップS8で、水中軸受56以外の原因による異常を判断するために、振動周波数分析と卓越周波数選定をフーリエ変換によって求める。続いて、ステップS9で、供給機構63を駆動させ、差圧センサ75によって実際の隙間値Cを測定する。
【0071】
続いて、ステップS10で、異なるポンプ吐出し流量毎に測定した振動値Vb(Qi)、隙間値C、及びこれらの相関から以下の数式を決定(設定)する。
(数1)
C=f(Vb(Qi))
C:水中軸受の隙間
Vb(Qi):所定流量での振動値
f:実測した水中軸受の隙間と振動値から得られる関数
【0072】
最後に、ステップS11で、振動警報値Vav、隙間警報値Gav、隙間限界値Glvを決定するとともに、排出する実際の水に含まれるスラリー濃度に基づいて警報勾配WGを決定し、これらを記憶部81に記憶させる。
【0073】
このように、ポンプ10を設置した実際の排水機場毎に振動警報値Vav、隙間警報値Gav、隙間限界値Glv、及び警報勾配WGを設定するため、予期しないポンプの故障を抑制できる。
【0074】
次に、
図9A及び
図9Bを参照して制御部80による設備監視処理を説明する。
【0075】
制御部80による設備監視処理は、ポンプ1の排水運転が開始されると同時に開始される。制御部80は、ステップS21で、定められた測定時間Tが経過するまで待機する。測定時間Tは、例えばポンプ振動が定常値に達する時間であり、この定常値に達する過渡的な時間はポンプ10によって異なるため、
図8の設定処置で設定される。そして、測定時間になると、ステップS22で、振動センサ61によって排水機構40の振動計測値Vmvを検出させた後、ステップS23で、流量検出部77によってポンプ10の流量計測値Fmvを検出させる。その後、ステップS24で、測定結果Vmv,Fmvを記憶部81に記憶する。
【0076】
続いて、検出した振動計測値Vmvに基づいて摩耗検出の要否を判断する。具体的には、ステップS25で、振動センサ61による振動計測値Vmvが振動警報値Vav以上を示しているか否かを判断する。
【0077】
振動計測値Vmvが振動警報値Vav以上を示す場合、制御部80は、振動原因を明らかにするために摩耗検出部62による摩耗検出が必要と判断し、ステップS28(摩耗検出)に進む。
【0078】
振動計測値Vmvが振動警報値Vav未満を示す場合、ステップS26で、記憶部81に記憶された振動計測値Vmvによって増加勾配IGを演算する。その後、演算した増加勾配IGに基づいて摩耗検出の要否を判断する。具体的には、ステップS27で、演算した増加勾配IGが記憶された警報勾配WG以上を示しているか否かを判断する。
【0079】
増加勾配IGが警報勾配WG以上を示す場合、つまり振動計測値Vmvは振動警報値Vav未満であるが増加勾配IGが警報勾配WG以上の場合、制御部80は、振動原因を明らかにするために摩耗検出部62による摩耗検出が必要と判断し、ステップS28(摩耗検出)に進む。
【0080】
増加勾配IGが警報勾配WG未満を示す場合、つまり振動計測値Vmvが振動警報値Vav未満、かつ、増加勾配IGが警報勾配WG未満の場合、制御部80は、ポンプ10が健全で、摩耗検出部62による摩耗検出は不要と判断し、ステップS21に戻って排水運転を継続する。
【0081】
水中軸受56の摩耗検出を行う場合、制御部80は、ステップS28で、駆動モータ37を停止して排水運転を中断する。続いて、ステップS29で、水中軸受56の摩耗量(隙間)を測定するために、制御部80は、供給機構63を駆動させ、差圧センサ75によって差圧(隙間計測値Gmv)を検出させる。より具体的には、制御部80は、切換弁65によってブロワ64と3個の水中軸受56との接続状態を順番に切り換え、全ての水中軸受56の摩耗量について個別に判断する。
【0082】
続いて、検出した隙間計測値Gmvに基づいて水中軸受56の異常の有無を判断する。具体的には、ステップS30で、摩耗検出部62による隙間計測値Gmvが隙間限界値Glv以上を示しているか否かを判断する。本実施形態では、水中軸受56が3個用いられているため、3つの隙間計測値Gmvと隙間限界値Glvをそれぞれ比較する。
【0083】
3つの隙間計測値Gmvのうち1つでもが隙間限界値Glv以上を示す場合、制御部80は、水中軸受56の摩耗が限界に達したと判断し、ステップS31で、水中軸受56の異常を知らせる報知を報知部82によって行い、設備監視処理を終了する。これにより、ポンプ10の排水運転は停止される。また、水中軸受56の異常が報知されたオペレータは、排水機構40をポンプケーシング20から引き抜き、水中軸受56の交換及び水中軸受56まわりの部品の点検修理を行う。
【0084】
3つの隙間計測値Gmv全てが隙間限界値Glv未満を示す場合、制御部80は、ステップS32で、摩耗検出部62による隙間計測値Gmvが隙間警報値Gav以上を示しているか否かを判断する。
【0085】
3つの隙間計測値Gmvのうち1つでも隙間警報値Gav以上を示す場合、制御部80は、ステップS33で記憶部81に判断結果を記憶させた後、ステップS34で水中軸受56の交換準備を促す報知を報知部82によって行う。その後、ステップS21に戻って排水運転を継続する。なお、判断結果の記憶は、複数の水中軸受56毎に行ってもよいし、全ての水中軸受56を纏めて行ってもよい。これにより、オペレータは、未使用の水中軸受56を手配し、交換準備を行う。
【0086】
3つの隙間計測値Gmv全てが隙間警報値Gav未満を示す場合、つまり水中軸受56の摩耗量は許容範囲内であるにも拘わらず、排水機構40の振動が許容値以上又は過剰な増加傾向を示す場合、制御部80は、ステップS35で、水中軸受56以外の異常の可能性を促す報知を報知部82によって行い、設備監視処理を終了する。これにより、ポンプ10の排水運転は停止される。水中軸受56以外の異常が報知されたオペレータは、記憶部81に記憶された複数の振動計測値Vmvから振動の原因とメカニズムを特定し、その振動が将来も増加する可能性があるか否かを判断し、水中軸受56以外の観点から振動低減対策を立案及び準備する。また、振動が将来も増加する可能性があるか不明の場合、ポンプ10の運転を再開し、定期的な振動検出及び摩耗検出を継続し、必要であれば振動検出の頻度を増やす(測定周期を短くする)。
【0087】
このように構成したポンプ10は、以下の特徴を有する。
【0088】
排水機構40の振動は水中軸受56の摩耗が進むに従って大きくなるため、排水運転時に検出した排水機構40の振動計測値Vmvから水中軸受56の摩耗量を予測(同定)できる。そのため、排水機構40の振動検出によって水中軸受56の摩耗検出が必要と判断した場合のみ、実際に摩耗検出を行うことで、長い作業時間を要する摩耗検出部62による水中軸受56の摩耗検出の回数を低減できる。その結果、保全管理のためにポンプ10が運転不可能になる期間を削減できる。
【0089】
振動センサ61による振動計測値Vmvが定められた振動警報値Vav以上の場合、又は振動センサ61の検出結果は振動警報値Vav未満であるが振動計測値Vmvの増加勾配IGが定められた警報勾配WG以上の場合、実際に摩耗検出が必要と判断する。よって、予期しない気象条件により排水に多くのスラリーが混入し、水中軸受56が過剰に摩耗した場合の異常も検出できるため、ポンプ10の信頼性を向上できる。
【0090】
水中軸受56の摩耗検出の結果、水中軸受56の隙間計測値Gmvが隙間警報値Gav以上の場合、水中軸受56の交換準備を促す報知を行う。一方、振動計測値Vmvが振動警報値Vav以上であるにも拘わらず、水中軸受56の隙間計測値Gmvが隙間警報値Gav未満の場合、水中軸受56以外に振動の原因があることを意味し、このような場合に水中軸受56以外の異常の可能性を促す報知を行う。そのため、予期しないポンプ10の故障を抑制できる。
【0091】
許容可能な排水機構40の振動値と水中軸受56の摩耗量は、同じ型式のポンプであっても実際に設置する排水機場によって異なる。これに対して、振動警報値Vavと隙間警報値Gavを、ポンプ10を設置したときの振動センサ61と摩耗検出部62それぞれの検出結果Vmv,Gmvに基づいて設定するため、ポンプ10の故障を効果的に抑制できる。
【0092】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、振動センサ61は1つに限られず、複数の振動センサ61を排水機構40の異なる箇所にそれぞれ配置してもよい。この場合、摩耗検出部62による水中軸受56の摩耗検出は、複数の振動センサ61のうち1つでも振動警報値Vavを超えた場合に行ってもよいし、複数の振動センサ61のうち半数以上が振動警報値Vavを超えた場合に行ってもよい。
【0094】
振動警報値Vav、隙間警報値Gav、隙間限界値Glv、及び警報勾配WGは、ポンプ10を新設した際に排水機場毎に設定するようにしたが、全ての排水機場で共通であってもよい。
【0095】
振動センサ61による振動計測値Vmvが振動警報値Vav未満であっても、振動計測値Vmvの増加勾配IGが定められた警報勾配WG以上の場合、摩耗検出が必要と判断するようにしたが、増加勾配IGは考慮しない構成であってもよい。
【0096】
監視装置60は、空気(気体)の供給によって水中軸受56の摩耗状態を監視する構成に限られず、水(液体)の供給によって水中軸受56の摩耗状態を監視してもよい。また、回転軸42と水中軸受56の間に流体を供給するための内部配管74をポンプケーシング20内に配置したが、流体供給のための配管構造は、必要に応じて変更が可能である。
【0097】
ポンプ10は、ポンプケーシング20から排水機構40を取外可能なプルアウト型としたが、取外不可能な固定式であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 据付床
1a 貫通孔
2 吸水槽
10 立軸ポンプ
20 ポンプケーシング
21 揚水管
22 揚水管本体
23 ベーンケース
23a 支持板
24 ベルマウス
24a 吸込口
25 吐出し管
26 デリベンド
27 第1直管部
27a 開口部
28 第2直管部
28a 吐出口
29 ベースプレート
30 モータ台
31 閉鎖板
32 第1枠部
33 隔板
34 第2枠部
35 端板
36 ガイド板
37 駆動モータ
38 軸封装置
40 排水機構
42 回転軸
42a 内側部
42b 外側部
43 軸部材
44 軸継手
45 カップリング
46 転がり軸受
48 羽根車
50 吊下げ管
51 筒体
52 接続部材
52a 接続口
54 ボウルブッシュ
54a 挿通部
56 水中軸受
57 摺接部材
57a 連通孔
60 監視装置
61 振動センサ(振動検出部)
62 摩耗検出部
63 供給機構
64 ブロワ
65 切換弁
66 定流量弁
67 逆止弁
68 圧力センサ
69 圧力タンク
70 電磁弁
71 逆止弁
72 接続配管
73 外部配管
74 内部配管
75 差圧センサ(差圧検出部)
76 差圧測定配管
77 流量検出部
78 第1圧力センサ
79 第2圧力センサ
80 制御部
81 記憶部
82 報知部