(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】生体情報処理方法、生体情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20241210BHJP
【FI】
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2021134859
(22)【出願日】2021-08-20
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 拓
(72)【発明者】
【氏名】大浦 光宏
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 壮祐
【審査官】井海田 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-34667(JP,A)
【文献】特開2005-34342(JP,A)
【文献】特開2005-185763(JP,A)
【文献】特開2011-24886(JP,A)
【文献】特開平4-92649(JP,A)
【文献】国際公開第2020/217815(WO,A1)
【文献】特開2017-70317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 ー 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が超音波を被検者の生体組織に向けて出射するように構成された複数の超音波素子を有する超音波センサを用いて、前記被検者の体内を流れる流体に関連する情報を自動的に取得するための生体情報処理方法であって、
前記生体組織によって反射された複数の超音波の反射信号を取得するステップと、
前記複数の反射信号に基づいて、前記複数の超音波素子のうち前記流体が流れる管に対向する二以上の超音波素子を特定するステップと、
前記二以上の超音波素子のうちの第1超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第1超音波素子に対向する前記管の部分の前記超音波の照射方向における第1位置を特定するステップと、
前記二以上の超音波素子のうちの第2超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第2超音波素子に対向する前記管の部分の前記超音波の照射方向における第2位置を特定するステップと、
前記第1位置と前記第2位置に基づいて、前記超音波の照射方向に対する前記管の角度を特定するステップと、
前記第1超音波素子又は前記第2超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記管内を流れる流体により反射された超音波に生じるドップラ偏移周波数を特定するステップと、
前記管の角度と前記ドップラ偏移周波数とに少なくとも基づいて、前記流体に関連する情報を取得するステップと、
を含む、コンピュータによって実行される生体情報処理方法。
【請求項2】
前記流体に関する情報は、前記流体の速度を含む、
請求項1に記載の生体情報処理方法。
【請求項3】
前記流体に関する情報は、前記流体の流量を含み、
前記生体情報処理方法は、前記管の断面積を特定するステップをさらに含み、
前記管の断面積と、前記流体の速度とに基づいて、前記流体の流量が特定される、
請求項2に記載の生体情報処理方法。
【請求項4】
前記管の断面積を特定するステップは、
前記第1超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第1超音波素子に対向する前記管の部分の前側壁及び後側壁の位置を特定するステップと、
前記前側壁の位置と前記後側壁の位置との間の距離を特定するステップと、
前記照射方向に対する前記管の角度と、前記前側壁の位置と前記後側壁の位置との間の距離とに基づいて、前記管の断面積を特定するステップと、
を含む、請求項3に記載の生体情報処理方法。
【請求項5】
前記流体の流量に関連する情報を出力するステップをさらに含む、
請求項3又は4に記載の生体情報処理方法。
【請求項6】
前記流体の流量に関連する情報を出力するステップは、前記流体の流量の時間変化を示す波形データを視覚的に提示するステップを含む、
請求項5に記載の生体情報処理方法。
【請求項7】
前記流体の流量に関連する情報を出力するステップは、前記流体の流量が所定の閾値以下であるとの判定に応じてアラートを可聴的に出力するステップを含む、
請求項5に記載の生体情報処理方法。
【請求項8】
前記照射方向における前記第1位置を特定するステップは、
前記第1超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第1超音波素子に対向する前記管の部分の前記照射方向における第1前側壁及び第1後側壁の位置を特定するステップと、
前記照射方向における前記第1前側壁と前記第1後側壁との間の第1中間点の位置を特定するステップと、
を含み、
前記照射方向における前記第2位置を特定するステップは、
前記第2超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第2超音波素子に対向する前記管の部分の前記照射方向における第2前側壁及び第2後側壁の位置を特定するステップと、
前記照射方向における前記第2前側壁と前記第2後側壁との間の第2中間点の位置を特定するステップと、
を含み、
前記第1中間点の位置と前記第2中間点の位置に基づいて、前記超音波の照射方向に対する前記管の角度が特定される、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の生体情報処理方法。
【請求項9】
パルスドップラ法又はカラードップラ法を通じて前記ドップラ偏移周波数が特定される、
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の生体情報処理方法。
【請求項10】
前記管に対向する二以上の超音波素子が特定された後に、前記管に対向する前記二以上の超音波素子のみが駆動される、
請求項1から9のうちいずれか一項に記載の生体情報処理方法。
【請求項11】
前記流体は、血液又は尿であり、
前記管は、血管又は尿管である、
請求項1から10のうちいずれか一項に記載の生体情報処理方法。
【請求項12】
前記超音波センサは前記被検者の頸部に装着され、
前記管は、頸動脈である、
請求項11に記載の生体情報処理方法。
【請求項13】
請求項1から12のうちいずれか一項に記載の生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
シートと、前記シート上に二次元状に配置されると共に、各々が超音波を被検者の生体組織に向けて出射するように構成された複数の超音波素子と、を有する超音波センサを用いて前記被検者の体内を流れる流体に関連する情報を自動的に取得するように構成された生体情報処理装置であって、
前記生体情報処理装置は、
一以上のプロセッサと、
命令を記憶するメモリと、
を備え、
前記命令が前記プロセッサにより実行されるときに、前記生体情報処理装置に、
前記生体組織によって反射された複数の超音波の反射信号を取得させ、
前記複数の反射信号に基づいて、前記複数の超音波素子のうち前記流体が流れる管に対向する二以上の超音波素子を特定させ、
前記二以上の超音波素子のうちの第1超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第1超音波素子に対向する前記管の部分の前記超音波の照射方向における第1位置を特定させ、
前記二以上の超音波素子のうちの第2超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第2超音波素子に対向する前記管の部分の前記超音波の照射方向における第2位置を特定させ、
前記第1位置と前記第2位置に基づいて、前記超音波の照射方向に対する前記管の角度を特定させ、
前記第1超音波素子又は前記第2超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記管内を流れる流体により反射された超音波に生じるドップラ偏移周波数を特定させ、
前記管の角度と前記ドップラ偏移周波数とに少なくとも基づいて、前記流体に関連する情報を取得させる、
生体情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体情報処理方法及び生体情報処理装置に関する。特に、本開示は、二次元上に配置された複数の超音波素子を有する超音波センサを用いた生体情報処理方法及び生体情報処理装置に関する。さらに、本開示は、当該生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波ビームを出射する複数の振動素子を備えた超音波センサを用いて患者の生体組織の関心領域(ROI)を示す画像データを生成した上で、当該画像データを表示部に表示する超音波診断装置が現在普及している(例えば、特許文献1参照)。超音波センサは、患者の様々な生体組織に関する情報を検出することができ、例えば、患者の血管内を流れる血液の速度(血流速度)及び血液の量(血流量)を検出することが可能となっている。この点において、患者の脳の状態を診断するために、超音波センサを用いて頸動脈の血流速度から頸動脈の血流量に関する情報が取得される場合がある。ここで、超音波センサを用いて患者の血流速度を算出するためには、血液中の赤血球により反射された超音波のドップラ偏移周波数を測定する必要がある。さらに、超音波ビームの照射方向に対する血管の角度を考慮した上で、測定されたドップラ偏移周波数から血流速度が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来では、医療従事者は、超音波センサにより取得された超音波画像データと超音波ビームの設定角度から超音波ビームの照射方向に対する血管の角度を目視により決定していた。一方で、血管の角度の決定は医療従事者の経験やスキルに依存するため、担当する医療従事者によって血管の角度の精度にバラツキが生じる場合がある。この結果、担当する医療従事者に応じて、最終的に決定される血流速度や血流量の精度にバラツキが生じていた。このように、上記観点より、血管の血流量等の被検者の体内を流れる流体に関連する情報を自動的に取得するための手法について検討の余地がある。
【0005】
本開示は、被検者の体内を流れる流体に関連する情報を自動的に取得することが可能な生体情報処理方法及び生体情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る生体情報処理方法は、各々が超音波を被検者の生体組織に向けて出射するように構成された複数の超音波素子を有する超音波センサを用いて、前記被検者の体内を流れる流体に関連する情報を自動的に取得するための方法であって、
前記生体組織によって反射された複数の超音波の反射信号を取得するステップと、
前記複数の反射信号に基づいて、前記複数の超音波素子のうち前記流体が流れる管に対向する二以上の超音波素子を特定するステップと、
前記二以上の超音波素子のうちの第1超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第1超音波素子に対向する前記管の部分の前記超音波の照射方向における第1位置を特定するステップと、
前記二以上の超音波素子のうちの第2超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第2超音波素子に対向する前記管の部分の前記超音波の照射方向における第2位置を特定するステップと、
前記第1位置と前記第2位置に基づいて、前記超音波の照射方向に対する前記管の角度を特定するステップと、
前記第1超音波素子又は前記第2超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記管内を流れる流体により反射された超音波に生じるドップラ偏移周波数を特定するステップと、
前記管の角度と前記ドップラ偏移周波数とに少なくとも基づいて、前記流体に関連する情報を取得するステップと、
を含む。
【0007】
上記方法によれば、被検者の体内を流れる流体(例えば、血液)に関連する情報(例えば、血流速度や血流量)を自動的に取得することが可能な生体情報処理方法が提供される。このように、流体に関連する情報が自動的に取得されるため、担当する医療従事者の経験やスキルに応じて流体に関連する情報の精度にバラツキが生じてしまうことを好適に防止することが可能となる。さらに、医療従事者による手動操作なしに流体に関連する情報が自動的に取得されるので、医療従事者による作業負荷を低減することが可能となる。
【0008】
また、前記生体情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供されてもよい。
【0009】
本開示の一態様に係る生体情報処理装置は、シートと、前記シート上に二次元状に配置されると共に、各々が超音波を被検者の生体組織に向けて出射するように構成された複数の超音波素子と、を有する超音波センサを用いて前記被検者の体内を流れる流体に関連する情報を自動的に取得するように構成されている。
前記生体情報処理装置は、一以上のプロセッサと、命令を記憶するメモリと、を備える。
前記命令が前記プロセッサにより実行されるときに、前記生体情報処理装置に、
前記生体組織によって反射された複数の超音波の反射信号を取得させ、
前記複数の反射信号に基づいて、前記複数の超音波素子のうち前記流体が流れる管に対向する二以上の超音波素子を特定させ、
前記二以上の超音波素子のうちの第1超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第1超音波素子に対向する前記管の部分の前記超音波の照射方向における第1位置を特定させ、
前記二以上の超音波素子のうちの第2超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記第2超音波素子に対向する前記管の部分の前記超音波の照射方向における第2位置を特定させ、
前記第1位置と前記第2位置に基づいて、前記超音波の照射方向に対する前記管の角度を特定させ、
前記第1超音波素子又は前記第2超音波素子に関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、前記管内を流れる流体により反射された超音波に生じるドップラ偏移周波数を特定させ、
前記管の角度と前記ドップラ偏移周波数とに少なくとも基づいて、前記流体に関連する情報を取得させる。
【0010】
上記構成によれば、被検者の体内を流れる流体(例えば、血液)に関連する情報(例えば、血流速度や血流量)を自動的に取得することが可能な生体情報処理装置が提供される。このように、流体に関連する情報が自動的に取得されるため、担当する医療従事者の経験やスキルに応じて流体に関連する情報の精度にバラツキが生じてしまうことが好適に防止することが可能となる。さらに、医療従事者による手動操作なしに流体に関連する情報が自動的に取得されるので、医療従事者による作業負荷を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、被検者の体内を流れる流体に関連する情報を自動的に取得することが可能な生体情報処理方法及び生体情報処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)に係る生体情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】超音波センサの一例を概略的に示す平面図である。
【
図3】超音波センサが被検者の頸部に取り付けられた様子を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る生体情報処理方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】超音波センサに設けられた各超音波素子が被検者の頸動脈に対向している状態を示す図である。
【
図6】超音波の照射方向に対する頸動脈の角度θを特定するための処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】Z軸方向における頸動脈の前側壁と後側壁との間の中間点の位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。最初に、
図1を参照して本実施形態に係る生体情報処理装置2(以下、単に処理装置2という。)のハードウェア構成について以下に説明する。
図1は、処理装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。
図1に示すように、処理装置2は、制御部20と、記憶装置21と、通信部25と、表示部22と、音声出力部28と、入力操作部26と、センサインターフェース23とを備える。これらの構成要素はバス27を介して互いに通信可能に接続されている。処理装置2は、超音波センサ3に電気的に接続されている。
【0014】
処理装置2は、被検者P(
図3参照)の生体情報を表示するための医療機器(例えば、生体情報モニタ)であってもよいし、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、スマートフォン、タブレット、医療従事者の身体(例えば、腕や頭等)に装着されるウェアラブルデバイス(例えば、ARグラス等)であってもよい。
【0015】
制御部20は、メモリとプロセッサを備えている。メモリは、コンピュータ可読命令(プログラム)を記憶するように構成されている。例えば、メモリは、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)やプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)のうちの少なくとも一つにより構成される。CPUは、複数のCPUコアによって構成されてもよい。GPUは、複数のGPUコアによって構成されてもよい。プロセッサは、記憶装置21又はROMに組み込まれた各種プログラムから指定されたプログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されてもよい。特に、プロセッサが
図4に示す一連の処理を実行する生体情報処理プログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で当該プログラムを実行することで、制御部20が
図4に示す一連の処理を実行する。生体情報処理プログラムの詳細については後述する。
【0016】
記憶装置21は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置(ストレージ)であって、プログラムや各種データを格納するように構成されている。記憶装置21には、生体情報処理プログラムが組み込まれてもよい。また、記憶装置21には、超音波センサ3から出力された生体信号に基づいて生成された生体情報データ(例えば、血流量及び/又は血流速度の時間変化を示す波形データ等)が保存されてもよい。
【0017】
通信部25は、処理装置2を院内ネットワークに接続するように構成されている。具体的には、通信部25は、院内ネットワークに配置されたセントラルモニタやサーバと通信するための各種有線接続端子を含んでもよい。また、通信部25は、セントラルモニタやサーバと無線通信するための無線通信モジュールを含んでもよい。通信部25は、例えば、医用テレメータシステムに対応した無線通信モジュールを含んでもよい。また、通信部25は、Wi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線通信規格に対応した無線通信モジュールおよび/又はSIMを用いた移動体通信システムに対応する無線通信モジュールを含んでもよい。院内ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)により構成されてもよい。処理装置2は、院内ネットワークを介してインターネットに接続されてもよい。
【0018】
表示部22は、リアルタイムに取得された被検者Pの頸動脈を流れる血液に関連する情報を表示するように構成されており、例えば、液晶パネル又は有機ELパネルによって構成されている。音声出力部28は、一以上のスピーカにより構成されており、被検者Pの頸動脈を流れる血液に関連する情報に応じて音声アラートを可聴的に出力するように構成されている。入力操作部26は、例えば、表示部22上に重ねて配置されたタッチパネル、マウス、及び/又はキーボード等である。入力操作部26は、医療従事者の入力操作を受け付けると共に、医療従事者の入力操作に対応した操作信号を生成するように構成されている。入力操作部26によって生成された操作信号がバス27を介して制御部20に送信された後、制御部20は、当該操作信号に応じて所定の動作を実行する。
【0019】
超音波センサ3は、超音波を被検者の生体組織に向けて出射することで、被検者の生体組織に関連する情報(本例では、頸動脈を流れる血液に関連する情報)を検出するように構成されている。
図2に示すように、超音波センサ3は、シート32と、複数の超音波素子30と、シート固定部35と、接続ケーブル34とを備える。超音波センサ3は、使い捨てのセンサであってもよい。シート32は、被検者Pに所定の部位(本例では、頸部)に貼り付けられる(
図3参照)。シート32は、例えば、シリコーン等の可撓性材料によって構成されている。
【0020】
複数の超音波素子30は、シート32の一面上に二次元状に配置されている。本例では、複数の超音波素子30が8行×8列のマトリックス状に配置されている。行方向及び列方向において互いに隣接する超音波素子30の間の距離は略一定であってもよい。各超音波素子30は、被検者Pの生体組織に向けて超音波を送信するように構成されると共に、生体組織によって反射された超音波を受信するように構成されている。特に、各超音波素子30は、後述する駆動回路331から送信された電気的な駆動信号(高周波信号)に応じて振動することで超音波を送信すると共に、生体組織によって反射された超音波を電気的な信号に変換するように構成されている。各超音波素子30から出力された後、生体組織によって反射された超音波の反射信号は、シート固定部35及び接続ケーブル34を介してセンサインターフェース23に入力される。また、本実施形態では、各超音波素子30は、所定の周波数(例えば、8kHz)の超音波パルスを出力してもよい。
【0021】
センサインターフェース23は、超音波センサ3を処理装置2に通信可能に接続するためのインターフェースである。センサインターフェース23は、超音波センサ3から出力される生体信号が入力される入力端子を含んでもよい。入力端子は、超音波センサ3のコネクタと物理的に接続されてもよい。また、センサインターフェース23は、超音波処理回路33を含んでもよい。超音波処理回路33は、駆動回路331と、アナログ処理回路332とを有する。駆動回路331は、発振回路を備えており、超音波センサ3の超音波素子30を駆動するための駆動信号を生成した上で、当該駆動信号を各超音波素子30に送信するように構成されている。アナログ処理回路332は、各超音波素子30から出力された超音波の反射信号を信号処理するように構成されている。アナログ処理回路332は、例えば、各超音波素子30から出力された反射信号のうちノイズ成分を除去するフィルタ処理回路と、反射信号を増幅する信号増幅回路と、反射信号をアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換回路とを少なくとも含む。このように、超音波センサ3から出力されたアナログの超音波の反射信号がセンサインターフェース23によってデジタルの超音波の反射信号に変換された上で、デジタルの反射信号が制御部20に送信される。
【0022】
次に、
図4を主に参照して本実施形態に係る生体情報処理方法(特に、被検者Pの頸動脈を流れる血液に関連する情報を取得する一連の処理)について以下に説明する。
図4は、本実施形態に係る生体情報処理方法を説明するためのフローチャートである。尚、以下の説明では、
図5に示すように、超音波センサ3に対して相対的に設定されたX軸方向、Y軸方向、Z軸方向について言及する。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のうちの一方は、残りの2方向に対して直交するものとする。複数の超音波素子30は、XY平面内において二次元状に配列されているものとする。超音波センサ3のシート32は、
図3に示すように、被検者Pの頸部に貼り付けられており、複数の超音波素子30の一部がXY平面に垂直なZ軸方向において被検者Pの頸動脈100(血管の一例)に対向するものとする。各超音波素子30から出射される超音波ビームの照射方向は、Z軸方向に平行であるものとする。
【0023】
図4に示すように、ステップS1において、処理装置2の制御部20は、超音波センサ3から超音波処理回路33を介して、被検者Pの生体組織によって反射された複数の超音波40の反射信号(デジタル信号)を取得する(ステップS1)。特に、制御部20は、複数の超音波素子30から出力された複数の超音波40の反射信号を取得する。
【0024】
ステップS2において、制御部20は、複数の超音波の反射信号に基づいて、Z軸方向において被検者Pの頸動脈100に対向する超音波素子30を特定する。
図5に示すように、本例では、複数の超音波素子30のうち超音波素子30a~30hがZ軸方向において頸動脈100に対向しているものとする。
【0025】
この点において、制御部20は、複数の超音波40の反射信号の成分に基づいて、Z軸方向において頸動脈100に対向する超音波素子30a~30hを特定する。一般的に、超音波は、音響特性インピーダンスが異なる媒質間の境界で反射するため、頸動脈100と頸動脈100に隣接する生体組織との間の境界において反射する。特に、頸動脈100と頸動脈100に隣接する生体組織との間の音響インピーダンスの差が大きいため、超音波40は、頸動脈100の前側壁120及び後側壁130においてそれぞれ強く反射する。また、頸動脈100の前側壁120及び後側壁130によって反射された超音波40の反射信号成分のパターンは予め判明している。ここで、制御部20は、所定の反射信号成分(例えば、
図7に示す反射信号成分C1、C2等)を有する反射信号に関連付けられた超音波素子30をZ軸方向において頸動脈100に対向している超音波素子として決定することができる。
【0026】
次に、ステップS3において、制御部20は、超音波40(超音波ビーム)の照射方向(Z軸方向)に対する頸動脈100の角度θを特定する。ステップS3の具体的な処理について
図6及び
図7を参照して以下に詳細に説明する。
図6は、超音波40の照射方向(Z軸方向)に対する頸動脈100の角度θを特定するための処理を説明するためのフローチャートである。
図7は、Z軸方向における頸動脈100の前側壁120と後側壁130との間の中間点の位置Z3,Z6を説明するための図である。尚、以下の説明では、頸動脈100に対向する超音波素子30a~30hのうち2つの超音波素子30b,30dから送信された超音波40の反射信号に基づいて、Z軸方向に対する頸動脈100の角度θが特定されるものとする。また、頸動脈100の壁の肉厚は十分に小さいものとする。
【0027】
図6に示すように、ステップS10において、制御部20は、超音波素子30b(第1超音波素子の一例)から送信された超音波40の反射信号を解析することで、超音波素子30bに対向する頸動脈100の部分のZ軸方向における前側壁120の位置Z1と後側壁130の位置Z2とを特定する。具体的には、制御部20は、超音波素子30bから送信された超音波40の反射信号を解析することで、前側壁120によって反射された超音波40の反射信号成分を特定する。次に、制御部20は、前側壁120によって反射された超音波40の反射信号成分の受信時刻を特定する。その後、制御部20は、超音波40の送信時刻t
0と、前側壁120によって反射された超音波40の反射信号成分の受信時刻t
1とに基づいて、Z軸方向における超音波素子30bと前側壁120との間の距離L1を特定する。ここで、距離L1=c(t
1-t
0)/2となる。cは生体組織内を進む超音波40の音速である。このように、制御部20は、Z軸方向における前側壁120の位置Z1を特定することが可能となる。
【0028】
同様に、制御部20は、超音波素子30bから送信された超音波40の反射信号を解析することで、後側壁130によって反射された超音波40の反射信号成分を特定する。次に、制御部20は、後側壁130によって反射された超音波40の反射信号成分の受信時刻を特定する。その後、制御部20は、超音波40の送信時刻t0と、後側壁130によって反射された超音波40の反射信号成分の受信時刻t2とに基づいて、Z軸方向における超音波素子30bと後側壁130との間の距離L2(L2=c(t2-t0)/2)を特定する。このように、制御部20は、Z軸方向における後側壁130の位置Z2を特定することが可能となる。
【0029】
次に、ステップS11において、制御部20は、Z軸方向における前側壁120の位置Z1と後側壁130の位置Z2との間の中間点の位置Z3(Z3=(Z1+Z2)/2)を特定する。
【0030】
ステップS12において、制御部20は、超音波素子30d(第2超音波素子の一例)から送信された超音波40の反射信号を解析することで、超音波素子30dに対向する頸動脈100の部分のZ軸方向における前側壁120の位置Z4と後側壁130の位置Z5とを特定する。具体的には、制御部20は、超音波素子30dから送信された超音波40の反射信号を解析することで、前側壁120によって反射された超音波40の反射信号成分C1(
図7参照)を特定する。次に、制御部20は、前側壁120によって反射された超音波40の反射信号成分C1の受信時刻を特定する。その後、制御部20は、超音波40の送信時刻と、前側壁120によって反射された超音波40の反射信号成分C1の受信時刻とに基づいて、Z軸方向における超音波素子30dと前側壁120との間の距離を特定する。このように、制御部20は、Z軸方向における前側壁120の位置Z4を特定することが可能となる。
【0031】
同様に、制御部20は、超音波素子30dから送信された超音波40の反射信号を解析することで、後側壁130によって反射された超音波40の反射信号成分C2(
図7参照)を特定する。次に、制御部20は、後側壁130によって反射された超音波40の反射信号成分C2の受信時刻を特定する。その後、制御部20は、超音波40の送信時刻と、後側壁130によって反射された超音波40の反射信号成分C2の受信時刻とに基づいて、Z軸方向における超音波素子30dと後側壁130との間の距離を特定する。このように、制御部20は、Z軸方向における後側壁130の位置Z5を特定することが可能となる。
【0032】
次に、ステップS13において、制御部20は、Z軸方向における前側壁120の位置Z4と後側壁130の位置Z5との間の中間点の位置Z6(Z6=(Z4+Z5)/2)を特定する。
【0033】
ステップS14において、制御部20は、中間点の位置Z3と中間点の位置Z6とに基づいて超音波40の照射方向に対する頸動脈100の角度θを特定する。具体的には、
図7に示すように、制御部20は、Z軸方向における位置Z6と位置Z3との間の距離ΔZと、X軸方向における超音波素子30bと超音波素子30dとの間の距離ΔXに基づいて、X軸方向に対する頸動脈100の角度θ1を特定する。より具体的には、角度θ1は、θ1=tan
-1(ΔZ/ΔX)によって算出される。また、角度θ=(90°-θ1)であることから、制御部20は、算出した角度θ1からZ軸方向に対する頸動脈100の角度θを特定することが可能となる。
【0034】
尚、距離ΔXは、X軸方向における超音波素子30bの中心位置と超音波素子30dの中心位置との間の距離であってもよい。また、本例では、超音波素子30b,30dから送信された超音波40の反射信号に基づいて頸動脈100の角度θが特定されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波素子30b,30c若しくは超音波素子30c,30dから送信された超音波40の反射信号に基づいて頸動脈100の角度θが特定されてもよいし、頸動脈100に対向する超音波素子30a~30hのうちの任意の2つの超音波素子から送信された超音波40の反射信号に基づいて頸動脈100の角度θが特定されてもよい。
【0035】
また、本例では、2つの中間点の位置Z3,Z6との間の距離に基づいて頸動脈100の角度θが決定されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、Z軸方向における前側壁120の位置Z1,Z4との間の距離に基づいて頸動脈100の角度θが決定されてもよいし、後側壁130の位置Z2,Z5との間の距離に基づいて頸動脈100の角度θが決定されてもよい。
【0036】
図4に戻ると、ステップS4において、制御部20は、頸動脈100を流れる血液により反射された超音波40に生じるドップラ偏移周波数f
dを特定する。この点において、制御部20は、頸動脈100に対向する超音波素子30a~30hのうちの一以上の超音波素子から送信された超音波40の反射信号を解析することで、血液(より、具体的には赤血球)により反射された超音波に生じるドップラ偏移周波数f
dを特定してもよい。
【0037】
頸動脈100中を流れる血液の速度(血流速度)がvである場合に、血液中に含まれる赤血球も速度vで頸動脈100内を移動する。また、Z軸方向に対する頸動脈100の角度がθである場合、赤血球はvcosθの速度でZ軸方向を移動しているように観測される。また、超音波素子30から送信され、頸動脈100内を通過する超音波40の一部は、Z軸方向にvcosθで移動する赤血球により反射された後に、超音波素子30bにより受信される。このように、Z軸方向にvcosθで移動する赤血球により反射された超音波40の周波数がドップラ効果によって変化する。
【0038】
ここで、超音波素子30から送信される超音波40の周波数をf0、ドップラ偏移周波数をfd、頸動脈100中を流れる血液の速度をv、Z軸方向に対する頸動脈100の角度をθ、生体組織内を進む超音波の音速をcとした場合に、ドップラ偏移周波数fdは以下式(1)により導出される。
【0039】
fd=2vf0×cosθ/c・・・(1)
【0040】
上記の式(1)より、ドップラ偏移周波数fdは、頸動脈100中を流れる血流速度vに比例して変化することが理解される。換言すれば、ドップラ偏移周波数fdを測定することで頸動脈100の血流速度vを測定することが可能となる。
【0041】
制御部20は、例えば、パルスドップラ法又はカラードップラ法によって、超音波素子30a~30hのうちの少なくとも一つに関連付けられた超音波40の反射信号を解析することで、ドップラ偏移周波数f
dを特定することができる。例えば、パルスドップラ法によってドップラ偏移周波数f
dが特定される場合には、制御部20は、各超音波パルスに対する頸動脈100中の赤血球により反射された超音波の反射信号成分C3(
図7参照)の輝度値の総和の変化を示すデータを取得した上で、当該取得されたデータに対して高速フーリエ変換(FFT)処理を実行することで、ドップラ偏移周波数f
dを特定することが可能となる。一方、カラードップラ法によってドップラ偏移周波数f
dが特定される場合には、制御部20は、自己相関法によってドップラ偏移周波数f
dを推定することが可能となる。また、超音波の周波数が8kHzである場合(換言すれば、1秒間に8000個の超音波パルスが出力される場合)、制御部20は、140個の超音波パルス毎にドップラ偏移周波数f
dを演算してもよい。この場合、ドップラ偏移周波数f
dの更新レートは57Hzとなる。
【0042】
また、パルスドップラ法ではFFTによる演算負荷が大きいため、パルスドップラ法を通じた演算処理よりもカラードップラ法を通じた演算処理の方が制御部20の演算負荷が小さい点で有利である。
【0043】
次に、ステップS5において、制御部20は、頸動脈100を流れる血液の速度(血流速度)vを特定する。この点において、上記の式(1)は以下のように変形される。
v=(cfd)/(2f0cosθ)・・・(2)
【0044】
制御部20は、上記式(2)に基づいて、ドップラ偏移周波数fdと、周波数f0と、頸動脈100の角度θと、音速cとから血流速度vを算出することが可能となる。
【0045】
次に、ステップS6において、制御部20は、頸動脈100の断面積Sを特定する。ここで、頸動脈100の断面積Sは、頸動脈100の軸方向に垂直な断面積であって、血液が流れる頸動脈100の中空部分の断面積を指すものである。ここで、頸動脈100の内径をRとした場合に、頸動脈100の断面積Sは、S=πR
2/4となる。また、
図7に示すように、位置Z1と位置Z2との間の距離を|Z1-Z2|とした場合、内径Rは、R=|Z1-Z2|sinθにより算出される。同様に、位置Z3と位置Z5との間の距離を|Z4-Z5|とした場合、内径Rは、R=|Z4-Z5|sinθにより算出される。尚、上記したように、頸動脈100の壁の肉厚は十分に小さいものとする。
【0046】
超音波素子30bに関連付けられた超音波の反射信号に基づいて頸動脈100の断面積Sが算出される場合について以下に簡単に説明する。この場合、最初に、制御部20は、超音波素子30bに関連付けられた超音波の反射信号を解析することで、Z軸方向における前側壁120の位置Z1と後側壁130の位置Z2とを特定する。次に、制御部20は、前側壁120の位置Z1と後側壁130の位置Z2との間の距離|Z1-Z2|を特定する。その後、制御部20は、R=|Z1-Z2|sinθの関係式に基づいて、頸動脈100の角度θと距離|Z1-Z2|から頸動脈100の内径Rを特定する。最後に、制御部20は、S=πR2/4の関係式により、頸動脈100の内径Rから頸動脈100の断面積Sを特定する。尚、頸動脈100に対向する超音波素子30a~30hのうちの少なくとも一つに関連する超音波の反射信号に基づいて頸動脈100の断面積Sが算出されてもよい。
【0047】
次に、ステップS7において、制御部20は、頸動脈100を流れる血液の流量(血流量)Qを特定する。ここで、血流量Qは、Q=Sv(vは血流速度、Sは頸動脈の断面積)となる。このように、制御部20は、演算した血流速度vと頸動脈100の断面積Sに基づいて、頸動脈100の血流量Qを特定することができる。
【0048】
ステップS8において、制御部20は、頸動脈100を流れる血液に関連する情報を出力する。例えば、制御部20は、頸動脈100の血流量Qの時間変化を示す波形データ及び/又は頸動脈100の血流速度vの時間変化を示す波形データを表示部22の表示画面上に表示してもよい。この場合、医療従事者は、表示部22に表示された波形データを見ることで被検者Pの症状を的確に把握することが可能となる。特に、医療従事者は、頸動脈100の血流量Q若しくは血流速度vの時間変化を観察することで、被検者Pの脳の状態(特に、脳に流れる血液の供給状態)を的確に把握することが可能となる。
【0049】
また、制御部20は、頸動脈100の血流量Qが所定の閾値Qth以下であるかどうかを判定した上で、頸動脈100の血流量Qが所定の閾値Qth以下であるとの判定に応じてアラートを音声出力部28から可聴的に出力してもよい。同様に、制御部20は、頸動脈100の血流速度vが所定の閾値vth以下であるかどうかを判定した上で、頸動脈100の血流速度vが所定の閾値vth以下であるとの判定に応じてアラートを音声出力部28から可聴的に出力してもよい。
【0050】
この場合、医療従事者は、処理装置2の音声出力部28から出力されたアラートを聞くことで、被検者Pの脳の状態(特に、脳に流れる血液の供給状態)の変化を瞬時に把握することが可能となる。また、制御部20は、頸動脈100の血流量Q若しくは血流速度vが所定の閾値以下であるとの判定に応じて、警告表示を表示部22の表示画面上に表示させてもよい。この場合でも同様に、医療従事者は、表示部22に表示された警告表示を見ることで、被検者Pの脳の状態の変化を瞬時に把握することが可能となる。さらに、制御部20は、血流量Q若しくは血流速度vの時間変化を示す波形データを記憶装置21に保存してもよいし、通信部25を介して院内ネットワーク上に設けられたセントラルモニタやサーバに送信してもよい。
【0051】
尚、上記説明では、制御部20は、頸動脈100の血流量Q若しくは血流速度vが所定の閾値以下であるとの判定に応じて、可聴的又は視覚的に警告を医療従事者に提示しているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御部20は、血流量Q若しくは血流速度vの変化幅が所定の閾値以下であるとの判定に応じて、可聴的又は視覚的に警告を医療従事者に提示してもよい。ここで、「血流量Q若しくは血流速度vの変化幅」とは、現在の血流量Q若しくは血流速度vと所定時間前の血流量Q若しくは血流速度vとの間の差分に相当する。
【0052】
また、本実施形態では、頸動脈100に対向する超音波素子30a~30hに関連する超音波の反射信号に基づいて頸動脈100を流れる血液に関連する情報が取得される。このため、ステップS2において頸動脈100に対向する超音波素子30a~30hが特定された後に、超音波素子30a~30hのみが駆動されてもよい。つまり、駆動回路331は、超音波素子30a~30hのみに駆動信号を供給してもよい。この場合、超音波素子30a~30hのみが駆動するため、被検者Pの生体組織に向けて照射される超音波の照射量を減らすことが可能となる。このように、超音波の照射によって生じる被検者Pの生体組織の影響を可能な限り抑えることができると共に、超音波センサ3の電力消費量を低減することが可能となる。
【0053】
以上、本実施形態によれば、頸動脈100を流れる血液に関連する血流情報(例えば、血流速度vや血流量Qの時間変化を示す波形データ)を医療従事者の手動操作なしに自動的に取得することが可能な処理装置2を提供することができる。このように、血流情報が自動的に取得されるため、担当する医療従事者の経験やスキルに応じて血流情報の精度にバラツキが生じてしまうことを好適に防止することが可能となる。さらに、医療従事者による手動操作なしに血流情報が自動的に取得されるため、医療従事者の作業負荷を低減することが可能となる。特に、従来の超音波診断方法と比較して、超音波ビームの照射方向に対する頸動脈100の角度θと頸動脈100の軸方向に垂直な断面積Sが処理装置2によって自動的に決定されるため、血流情報の精度を向上することができると共に、医療従事者の作業負荷を低減することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態に係る処理装置2をソフトウェアによって実現するためには、生体情報処理プログラムが記憶装置21又はROMに予め組み込まれていてもよい。または、生体情報処理プログラムは、磁気ディスク(例えば、HDD、フロッピーディスク)、光ディスク(例えば、CD-ROM,DVD-ROM、Blu-ray(登録商標)ディスク)、光磁気ディスク(例えば、MO)、フラッシュメモリ(例えば、SDカード、USBメモリ、SSD)等のコンピュータ読取可能な記憶媒体に格納されていてもよい。この場合、記憶媒体に格納された生体情報処理プログラムが記憶装置21に組み込まれてもよい。さらに、記憶装置21に組み込まれた当該プログラムがRAM上にロードされた上で、プロセッサがRAM上にロードされた当該プログラムを実行してもよい。このように、本実施形態に係る生体情報処理方法が処理装置2によって実行される。また、生体情報処理プログラムは、通信ネットワーク上のコンピュータから通信部25を介してダウンロードされてもよい。この場合も同様に、ダウンロードされた当該プログラムが記憶装置21に組み込まれてもよい。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0056】
例えば、本実施形態の説明では、頸動脈を流れる血液に関連する情報が処理装置2に自動的に取得されているが、血管は頸動脈に限定されるものではない。例えば、頸動脈以外の血管を流れる血液に関連する情報が処理装置2によって自動的に取得されてもよい。
【0057】
さらに、本実施形態では血液の流量や速度が処理装置2によって自動的に取得されているが、処理装置2は、血液以外の被検者の体内を流れる流体に関連する情報を自動的に取得してもよい。例えば、処理装置2は、被検者の菅の他の一例として尿管を流れる尿の流量や速度を自動的に取得してもよい。この場合、超音波センサ3のシート32が尿管に対向するように被検者に貼り付けられる。さらに、処理装置2は、Z軸方向において尿管に対向する超音波素子を特定した上で、尿管に対向する二以上の超音波素子から送信された超音波の反射信号を解析することで、超音波の照射方向に対する尿管の角度θを決定する。その後、処理装置2は、尿により反射された超音波に生じるドップラ偏移周波数を特定することで、尿管を流れる尿の速度と尿の流量を決定する。その後、処理装置2は、尿の流量や速度に関連する情報(尿の流量の時間変化を示す波形データ等)を表示部22に表示してもよい。
【符号の説明】
【0058】
2:生体情報処理装置(処理装置)
3:超音波センサ
20:制御部
21:記憶装置
22:表示部
23:センサインターフェース
25:通信部
26:入力操作部
28:音声出力部
30,30a~30h:超音波素子
32:シート
33:超音波処理回路
40:超音波
100:頸動脈
120:前側壁
130:後側壁
331:駆動回路
332:アナログ処理回路