(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】光通信ネットワークの管理装置及び通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/075 20130101AFI20241210BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H04B10/075
H04J14/02 101
(21)【出願番号】P 2021157216
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
(72)【発明者】
【氏名】吉兼 昇
(72)【発明者】
【氏名】相馬 大樹
(72)【発明者】
【氏名】若山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】別府 翔平
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/004702(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0280570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/075
H04J 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信ネットワークの管理装置であって、
第1通信装置から第2通信装置に至る信号光の経路それぞれについて、前記第2通信装置が受信する前記信号光に与えられる群遅延を示す経路情報を保持する保持手段と、
前記第2通信装置から前記第2通信装置が受信する前記信号光に与えられている群遅延を示す群遅延情報を取得する取得手段と、
前記群遅延情報が示す群遅延と、前記経路情報と、に基づき前記信号光の経路を判定する判定手段と、
を備えていることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記管理装置は、さらに、
前記第1通信装置から前記第2通信装置に至る前記信号光の経路を第1経路に設定する制御信号を前記光通信ネットワークの装置に送信する制御手段を備え、
前記判定手段は、前記制御手段が前記制御信号を送信した後、前記第2通信装置から取得する前記群遅延情報と、前記経路情報と、に基づき、前記信号光の経路が前記第1経路となっているかを判定することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
光通信ネットワークの管理装置であって、
第1通信装置から第2通信装置に至る信号光の経路それぞれについて、前記第2通信装置が受信する前記信号光に与えられる群遅延を補償するための補償情報を保持する保持手段と、
前記第1通信装置から前記第2通信装置に至る前記信号光の経路を第1経路に設定する際、前記信号光の経路を前記第1経路に設定するための第1制御信号を前記光通信ネットワークの装置に送信し、かつ、前記補償情報に基づき前記第1経路を経由した前記信号光に与えられている群遅延を補償する様に前記第2通信装置に設けられた群遅延フィルタを構成するための第2制御信号を前記第2通信装置に送信する制御手段と、
前記制御手段が前記第1制御信号及び前記第2制御信号を送信した後の前記第2通信装置の状態に基づき前記信号光の経路が前記第1経路であるか否かを判定する判定手段と、
を備えていることを特徴とする管理装置。
【請求項4】
前記第1通信装置から前記第2通信装置に至る前記信号光の経路それぞれについて、前記第2通信装置が受信する前記信号光に与えられる群遅延は異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
光通信ネットワークの通信装置であって、
別の通信装置から前記通信装置に至る信号光の経路それぞれについて、前記通信装置が受信する前記信号光に与えられる群遅延を示す経路情報を保持する保持手段と、
受信する前記信号光に与えられている群遅延を判定し、判定した前記群遅延と、前記経路情報と、に基づき前記信号光の経路を判定する判定手段と、
を備えていることを特徴とする通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信ネットワークにおいて信号光の経路を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、光通信ネットワークの一例を示している。端局装置5-1及び5-2は、所定のデータを送受信するために信号光を送受信する光通信装置である。また、光ノード3は、端局装置5-1と端局装置5-2との間で送受信される信号光を中継する光通信装置である。光ノード3は、例えば、光クロスコネクト(ОXC)や、光アドドロップ多重化装置(ОADM)であり、入力された所定波長の信号光を出力するインタフェースを設定可能に構成される。なお、以下の説明において、4つの光ノード3を区別する場合、光ノード#1~光ノード#4と表記する。
図1において、光ノード#1と光ノード#2は光リンク12により接続され、光ノード#2と光ノード#4は光リンク24により接続され、光ノード#1と光ノード#3は光リンク13により接続され、光ノード#3と光ノード#4は光リンク34により接続されている。さらに、
図1において、端局装置5-1は、光リンクにより光ノード#1に接続され、端局装置5-2は、光リンクにより光ノード#4に接続されている。なお、各光リンクは、1つ以上の光増幅器を含み得る。
図1には、各光リンクが接続される光ノード3のインタフェース(IF)も示している。例えば、光リンク12は、光ノード#1のIF#3と、光ノード#2のIF#1とに接続されている。
【0003】
図1の構成において、端局装置5-1から端局装置5-2に至る信号光の経路には、光ノード#2を経由する経路と、光ノード#3を経由する経路と、の2つの経路が存在する。光ノード#2を経由する経路を使用する場合、光ノード#1は、端局装置5-1からの信号光をIF#3に出力する様に設定され、光ノード3を経由する経路を使用する場合、光ノード#1は、端局装置5-1からの信号光をIF#4に出力する様に設定される。なお、この設定は、図示しない管理装置から入力される。
【0004】
特許文献1は、光リンクに障害が発生した場合、光ノードの設定を変えることで、障害となった光リンクに収容されている信号光の経路を切り替える構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ノード3による信号光の経路の切り替えは、保守上の理由により光リンクを計画的に断とする場合にも使用される。例えば、
図1の構成において、端局装置5-1から端局装置5-2に至る所定波長の信号光(以下、端局装置5-1から端局装置5-2に至る所定波長の信号光を第1信号光と表記する)の経路として、光ノード2を経由する経路が使用されているものとする。この場合において、保守作業のために光リンク24を所定期間だけ切断する必要が生じると、光通信ネットワークの保守者は、管理装置を介して、光ノード#1、#3及び#4それぞれに、第1信号光の経路を光ノード#3を経由する経路に切り替えるための制御信号を送信する。光ノード#1への制御信号は、IF#1に入力される第1信号光の出力先をIF#4に設定するためのコマンドを含む。光ノード#3への制御信号は、IF#2に入力される第1信号光の出力先をIF#3に設定するためのコマンドを含む。光ノード#4への制御信号は、IF#1に入力される第1信号光の出力先をIF#3に設定するためのコマンドを含む。
【0007】
しかしながら、何らかの理由により制御信号が光ノード#1、#3及び#4に届かないことによって、第1信号光の経路が切り替わらず、元の経路のままとなることが生じ得る。この場合、事前の経路切替により光リンク24には第1信号光が収容されていないと認識している保守者が光リンク24を切断すると、思わぬ障害が発生することになる。
【0008】
本発明は、光通信ネットワークにおいて信号光の経路を判定する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、光通信ネットワークの管理装置は、第1通信装置から第2通信装置に至る信号光の経路それぞれについて、前記第2通信装置が受信する前記信号光に与えられる群遅延を示す経路情報を保持する保持手段と、前記第2通信装置から前記第2通信装置が受信する前記信号光に与えられている群遅延を示す群遅延情報を取得する取得手段と、前記群遅延情報が示す群遅延と、前記経路情報と、に基づき前記信号光の経路を判定する判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、光通信ネットワークにおいて信号光の経路を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】一実施形態による光通信ネットワークの構成図。
【
図3】群遅延フィルタが与える群遅延と、信号光に与えられた群遅延の例を示す図。
【
図5】一実施形態による信号光に与えられた群遅延の判定方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴うち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第一実施形態>
図2は、本実施形態による光通信ネットワークの構成図である。なお、
図1で説明したのと同じ構成要素については、同じ参照符号を付与してその説明については省略する。本実施形態では、各光ノード3の各インタフェースに群遅延フィルタを設ける。
図1において、光ノード#N(Nは、1から4までの整数)のIF#M(Mは、1から4までの整数)には、群遅延フィルタN-Mが設けられている。また、管理装置100は、端局装置5-1及び5-2と、各光ノード3と、を制御する。なお、
図2では、図の簡略化のため、管理装置100と端局装置5-2が制御信号を送受信するための信号線のみを点線で示しているが、管理装置100は、端局装置5-1及び5-2、並びに、各光ノード3と制御信号の送受信が可能な様に構成される。
【0014】
群遅延フィルタは、通過する信号光に群遅延を与えるフィルタである。なお、信号光が複数の群遅延フィルタを通過する場合、当該信号光に与えられる群遅延は、通過した各群遅延フィルタによって与えられる群遅延を足し合わせたものとなる。例えば、第1群遅延フィルタが
図3(A)に示す群遅延60を与え、第2群遅延フィルタが
図3(B)に示す群遅延61を与えるものとする。この場合、第1群遅延フィルタ及び第2群遅延フィルタの両方を通過した信号光には、
図3(C)に示す群遅延62が与えられる。
【0015】
本実施形態においては、送信側の端局装置から受信側の端局装置までの間に信号光に与えられる群遅延の合計が当該信号光の取り得る経路毎に異なる様に、各群遅延フィルタN-Mが信号光に与える群遅延を決定する。例えば、
図2に示す構成において、端局装置5-1から端局装置5-2への第1信号光が取り得る経路は、光ノード2を経由する第1経路と、光ノード3を経由する第2経路の2つである。したがって、第1信号光が第1経路を通過した場合に端局装置5-2が受信する第1信号光に与えられている群遅延と、第1信号光が第2経路を通過した場合に端局装置5-2が受信する第1信号光に与えられている群遅延とが異なる様に、各群遅延フィルタN-Mが通過する信号光に与える群遅延は決定される。なお、その他の信号光についても同様である。
【0016】
なお、信号光には、群遅延フィルタに加えて、経路固有の群遅延が与えられる。経路固有の群遅延は、例えば、光リンクや、光ノード内の光スイッチ等の構成要素を信号光が通過する際に信号光に与えられる。したがって、第1信号光が第1経路を通過する場合、第1信号光には、群遅延フィルタを設けない場合に与えられる第1経路固有の群遅延に加えて、群遅延フィルタ1-1、1-3、2-1、2-4、4-2、4-3による群遅延が与えられる。
【0017】
本実施形態では、信号光に与えられる群遅延を、当該信号光の取り得る経路毎に判定し、経路と信号光に与えられる群遅延との関係を経路毎に示す経路情報を管理装置100に格納しておく。経路毎の群遅延は、例えば、サービス開始前に実際に測定を行うことで取得することができる。或いは、光リンク、光ノードの光学的なパラメータと、群遅延フィルタの特性と、に基づき計算により判定することができる。
【0018】
図4は、本実施形態による端局装置5の受信側の構成図である。なお、端局装置5とは、
図2の端局装置5-1及び5-2の総称である。受信部51は、信号光を、例えば、コヒーレント受信し、アナログの電気信号をアナログデジタル(AD)変換部52に出力する。AD変換部52は、アナログの電気信号をデジタルデータに変換して補償復調部53に出力する。
【0019】
補償復調部53は、プロセッサを有し、デジタルデータに対して各種の補償処理を行い、補償後のデータに基づき復調を行う。ここで、通常、補償処理は、信号光に与えられた群遅延を補償する処理を含む。言い換えると、端局装置5は、信号光の復調のために、当該信号光に与えられた群遅延を判定する。補償復調部53は、群遅延を補償するために判定した、信号光に与えられた群遅延を示す群遅延情報を、管理装置100からの要求に応答して管理装置100に送信する。或いは、補償復調部53は、所定周期毎や、信号光が断となり、その後、信号光を再度検出した等の所定条件が満たされる度に、群遅延情報を管理装置100に送信する。
【0020】
管理装置100は、経路情報に基づき端局装置5が受信した信号光の経路を判定することができる。例えば、管理装置100は、端局装置5-2から受信した群遅延情報が示す第1信号光に与えられた群遅延と、経路情報が示す第1信号光が取り得る経路それぞれの群遅延との誤差を判定し、第1信号光が取り得る経路の内、第1信号光に与えられた群遅延との誤差が最小の群遅延に対応する経路を第1信号光の経路であると判定することができる。なお、誤差は、最小二乗誤差を使用することできる。つまり、例えば、
図3に示す様な群遅延を波形と見做し、2つの群遅延の同じ周波数における遅延時間の差の二乗を周波数領域において積算した値を誤差とすることができる。したがって、例えば、管理装置100が第1信号光を第1経路から第2経路に切り替える制御信号を各光ノード3に送信した場合、端局装置5-2から受信する第1信号光に与えられている群遅延に基づき、第1信号光の経路が第1経路から第2経路に切り替わったか否かを判定することができる。
【0021】
なお、経路の判定には、フーリエ解析を使用することができる。例えば、
図3(C)は、実際には、周波数と遅延量との関係を示すものであるが、
図3(C)に示す波形を時間軸上の波形と見做してフーリエ変換を行う。当該フーリエ変換により、
図5に示す様に、
図3(A)に示す群遅延60に対応する信号成分と、
図3(B)に示す群遅延61に対応する信号成分とが得られる。フーリエ変換後の信号成分を比較することで、経路を判定することができる。なお、この場合、経路情報は、例えば、フーリエ変換後の信号成分と、経路との関係を示すものとすることができる。
【0022】
なお、群遅延フィルタには、任意のものを使用することができる。一例として、群遅延フィルタには、リング共振器型フィルタ、多層薄膜フィルタ、多段マハツェンダ干渉計型光導波路フィルタ等を使用することができる。リング共振器型フィルタを使用する場合、リング共振器の共振器長や、リング共振器と入出力導波路の結合量を調整することで、
図3(A)及び
図3(B)に示す様な、周波数軸上で正弦波状に変動する群遅延を信号光に与えることができる。この様な特性の群遅延は、上述したフーリエ解析を使用する場合に有利である。
【0023】
また、群遅延フィルタを光ノードのインタフェースに設けるのではなく、光ノードの光スイッチ部に設ける構成とすることもできる。なお、光スイッチ部は、光ノードのインタフェースに対応するポートを有している。例えば、光スイッチ部には、光信号の位相特性を制御する液晶シリコン(LCoS)デバイスを利用しているものがある。この様な光スイッチ部においては、信号光の周波数毎に異なる位相遅延を与えることができ、よって、群遅延フィルタとして機能させることができる。
【0024】
以上、本実施形態によると、信号光に与えられた群遅延に基づき、信号光の経路を判定する。なお、本実施形態では、経路情報と、群遅延情報と、に基づき管理装置100が信号光の経路を判定していたが、経路情報を端局装置5に格納し、端局装置5において経路を判定する構成とすることもできる。
【0025】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について、第一実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、
図6に示す様に、端局装置の受信部51の上流側に、信号光に群遅延を与えるフィルタ部54を設ける。フィルタ部54は、上述した液晶シリコン(LCoS)デバイス等、信号光に与える群遅延を動的に構成可能なものを使用する。管理装置100は、端局装置5に制御信号を送信することで、フィルタ部54が信号光に与える群遅延を制御する。
【0026】
管理装置100は、信号光に与えられた群遅延を相殺する様に、フィルタ部54が信号光に与える群遅延を制御する。具体的には、第一実施形態と同様に、信号光が取り得る経路それぞれについて、信号光に与えられる群遅延を予め求める。そして、信号光が取り得る経路それぞれについて、信号光に与えられる群遅延を相殺する様に、当該信号光に与える群遅延を示す情報を、補償情報として管理装置100に格納しておく。なお、本実施形態における補償情報は、第一実施形態における経路情報と実質的には同じである。
【0027】
管理装置100は、例えば、第1信号光が第1経路を通過している場合、補償情報において第1経路に関連付けられている群遅延を端局装置5-2のフィルタ部54が信号光に与える様に、端局装置5-2のフィルタ部54を構成する。また、補償復調部53は、正常に復調できなくなった場合、警報を管理装置100に通知する。例えば、信号光が搬送するデータは、通常、誤り訂正符号や誤り検出符号により保護される。補償復調部53は、誤り訂正符号や誤り検出符号により、エラーの発生頻度を検出し、閾値と比較することで、正常に復調できているか否かを判定することができる。
【0028】
例えば、第1信号光が第1経路を通過し、端局装置5-2のフィルタ部54が第1信号光に与えられた群遅延を相殺している場合、補償復調部53で検出する群遅延は、略フラットな特性となる。また、補償復調部53は、通常、第1信号光を正常に復調することができ警報を発出しない。
【0029】
管理装置100は、第1信号光の経路を第1経路から第2経路に切り替える場合、各光ノード3に経路切替のための第1制御信号を送信すると共に、補償情報において第2経路に関連付けられている群遅延を端局装置5-2のフィルタ部54が第1信号光に与える様に、端局装置5-2に第2制御信号を送信する。第1信号光の経路が第1経路から第2経路に切り替わらないと、フィルタ部54は、第1信号光に与えられた群遅延を補償できなくなる。この場合、補償復調部53で検出する群遅延は、略フラットな特性から大きく変動し、補償復調部53がこの大きな変動に追随して群遅延を補償するまで、補償復調部53は警報を発出することになる。一方、第1信号光の経路が第1経路から第2経路に切り替わると、補償復調部53で検出する群遅延は、略フラットな特性となる。この場合でも、補償復調部53は、瞬間的に警報を発出し得るが、警報を発出する期間は、第1信号光の経路が第1経路から第2経路に切り替わらない場合と比較して大変短くなる。したがって、管理装置100は、第1制御信号及び第2制御信号を送信した後の端局装置5-2の状態、例えば、警報の持続時間により経路が正常に切り替わったか否かを判定することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、光リンクの障害により信号光の経路を切り替える場合にも、管理装置100は、経路切替後の信号光に与えられる群遅延を相殺する様に、端局装置5のフィルタ部54を構成する。
【0031】
図7は、本実施形態による管理装置100の構成図である。保持部10は、第一実施形態においては経路情報を保持し、第二実施形態においては補償情報を保持する。通信部14は、各端局装置5及び各光ノード3と制御信号の送受信を行い、かつ、各端局装置5及び各光ノード3から警報を受信する。取得部11は、第一実施形態の場合に設けられ、通信部14を介して、端局装置5が受信する信号光に与えられている群遅延を示す群遅延情報を当該端局装置5から取得する。判定部12は、第一実施形態の場合に設けられ、各端局装置5から取得する群遅延情報が示す各信号光に与えられている群遅延と、経路情報と、に基づき、各信号光の経路を判定する。制御部13は、各信号光の経路の設定・経路切替を行う際、通信部14を介して、各光ノード3に制御信号を送信する。なお、第二実施形態の場合、制御部13は、各光ノード3に制御信号を送信して信号光の経路設定・経路切替を行う際、補償情報に基づき、当該信号光を受信する端局装置5のフィルタ部54が当該信号光に与えられる群遅延を補償する様に当該フィルタ部54を構成するための制御信号を当該端局装置5に送信する。
【0032】
図8は、第一実施形態による光ノード3の構成図である。光ノード3は、インタフェース部31と、光スイッチ部32と、を有する。インタフェース部31は、複数の光リンクに接続するための複数のインタフェースを有する。複数のインタフェースは、それぞれ、光スイッチ部32の対応するポートに接続される。光スイッチ部32は、所謂、波長スイッチ機能を有し、各インタフェース(各ポート)を介して入力される波長多重された複数の信号光それぞれを、別のインタフェース(ポート)から出力する。なお、入力された信号光を出力するインタフェース(ポート)は、管理装置100からの制御信号に基づき変更可能に構成される。各インタフェースは、様々な特性の群遅延フィルタの内の任意の1つを個別に実装できる様に構成される。なお、群遅延フィルタを、インタフェースに設けるのではなく、光スイッチ部32の各光インタフェースに対応する光ポートに設ける構成とすることもできる。
【0033】
なお、本発明による管理装置100は、コンピュータの1つ以上のプロセッサで実行されると、当該コンピュータを上述した管理装置100として動作させるプログラムにより実現することができる。これらプログラムは、デバイス可読記憶媒体に格納されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0034】
上記構成により、光通信ネットワークの各信号光の現在の経路を判定することできる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0035】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0036】
10:保持部、11:取得部、12:判定部