(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】離型フィルム、および離型フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241210BHJP
B32B 27/10 20060101ALN20241210BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/10
(21)【出願番号】P 2021159437
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000222255
【氏名又は名称】東洋クロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一柳 圭吾
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193171(JP,A)
【文献】国際公開第2020/149239(WO,A1)
【文献】特開2006-289670(JP,A)
【文献】特開2016-198924(JP,A)
【文献】特開2021-091230(JP,A)
【文献】特開2020-108937(JP,A)
【文献】特開2012-025891(JP,A)
【文献】特開2001-171048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた離型層とを有し、
前記離型層は、数平均分子量が
300,000以上、
550,000以下である高分子量シリコーン樹脂(A1)と、数平均分子量が1,000以上、
100,000以下である低分子量シリコーン樹脂(B1)とを含み、前記高分子量シリコーン樹脂(A1)および/または前記低分子量シリコーン樹脂(B1)は
、反応性官能基を有するポリオルガノシロキサンである架橋剤により架橋されており、
前記高分子量シリコーン樹脂(A1)は、架橋点において炭素数が3以上、12以下のアルキレン基を有しており、前記架橋点において炭素数が2以下のアルキレン基を有しておらず、
蛍光X線分析によって測定される前記離型層中のケイ素原子量が4kcps以上、40kcps以下であ
り、
前記離型層中、前記高分子量シリコーン樹脂(A1)と前記低分子量シリコーン樹脂(B1)の合計10質量部に対して、前記低分子量シリコーン樹脂(B1)の含有量は、6質量部以上、9.8質量部以下であることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
温度10~30℃、相対湿度30~80%RHの環境下において、前記離型層に標準アクリル粘着テープTESA7475を貼り付けて20時間静置した後、温度18~22℃、相対湿度61~69%RHの環境下において、引張速度300mm/分の速度で170°剥離を行う剥離試験における剥離力F1が100mN/25mm以下である請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
温度10~30℃、相対湿度30~80%RHの環境下において、前記離型層に標準アクリル粘着テープTESA7475を貼り付けて20時間静置した後、温度18~22℃、相対湿度61~69%RHの環境下において、引張速度10000mm/分の速度で20°剥離を行う剥離試験における剥離力F2が5.0N/25mm以下である請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
温度10~30℃、相対湿度30~80%RHの環境下において、前記離型層に標準アクリル粘着テープ日東31Bを貼り付けて20時間静置した後、温度18~22℃、相対湿度61~69%RHの環境下において、引張速度1500mm/分の速度で170°剥離を行う剥離試験における剥離力F3(N/25mm)と、引張速度30000mm/分の速度で170°剥離を行う剥離試験における剥離力F4(N/25mm)とが、下記式(1)を満たす請求項1~3のいずれかに記載の離型フィルム。
F4/F3≦4.0・・・(1)
【請求項5】
前記基材層と前記離型層との間にアンカーコート層を有する請求項1~
4のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項6】
数平均分子量が
300,000以上、
550,000以下である高分子量シリコーン樹脂(A2)、数平均分子量が1,000以上、
100,000以下である低分子量シリコーン樹脂(B2)、触媒、
ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンである架橋剤、および有機溶媒を混合して塗液を作製する工程、
前記塗液を基材層の一方の面に塗布して塗膜を形成する工程、および
前記塗膜を硬化させて離型層を形成する工程を含
み、
前記塗液中、前記高分子量シリコーン樹脂(A2)と前記低分子量シリコーン樹脂(B2)の合計10質量部に対して、前記低分子量シリコーン樹脂(B2)の含有量は、6質量部以上、9.8質量部以下であり、
前記高分子量シリコーン樹脂(A2)は、炭素数が3以上、12以下であるアルケニル基を有しており、炭素数が2以下のアルケニル基を有していないことを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム、および離型フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートの粘着面等を保護する目的で離型フィルムが積層されていた。このような離型フィルムとして、例えば特許文献1には、基材と、基材の少なくとも一方の面側に設けられた剥離剤層とを備え、基材が、プラスチックフィルムから構成され、原子間力顕微鏡を用いて、剥離剤層における基材とは反対の面側から測定される剥離シートの弾性率が1.5MPa以上、5.0MPa以下であり、剥離剤層の厚さが0.3μm以上、1.0μm以下である剥離シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、上記構成を有する離型フィルムが300mm/分の低速での180°剥離試験において優れた剥離性が発揮されることが開示されている。しかし、実際の剥離では離型フィルムを180°で剥離させることは希であり、170°程度もしくはそれ以下の角度で剥離させることが多い。また従来の離型フィルムは剥離角度によって剥離性が変動し易かったが、特許文献1では170°以下の剥離性について検討されていない。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は低速での170°剥離における剥離性に優れた離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る離型フィルムは、以下の通りである。
[1]基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた離型層とを有し、
前記離型層は、数平均分子量が250,000以上、1,300,000以下である高分子量シリコーン樹脂(A1)と、数平均分子量が1,000以上、200,000以下である低分子量シリコーン樹脂(B1)とを含み、前記高分子量シリコーン樹脂(A1)および/または前記低分子量シリコーン樹脂(B1)は架橋剤により架橋されており、
蛍光X線分析によって測定される前記離型層中のケイ素原子量が4kcps以上、40kcps以下であることを特徴とする離型フィルム。
【0006】
上記構成により、低速での170°剥離における剥離性に優れた離型フィルムを提供することができる。離型フィルムの好ましい態様は以下の[2]~[6]のいずれかの通りであり、離型フィルムの製造方法の好ましい態様は以下の[7]の通りである。
[2]温度10~30℃、相対湿度30~80%RHの環境下において、前記離型層に標準アクリル粘着テープTESA7475を貼り付けて20時間静置した後、温度18~22℃、相対湿度61~69%RHの環境下において、引張速度300mm/分の速度で170°剥離を行う剥離試験における剥離力F1が100mN/25mm以下である[1]に記載の離型フィルム。
[3]温度10~30℃、相対湿度30~80%RHの環境下において、前記離型層に標準アクリル粘着テープTESA7475を貼り付けて20時間静置した後、温度18~22℃、相対湿度61~69%RHの環境下において、引張速度10000mm/分の速度で20°剥離を行う剥離試験における剥離力F2が5.0N/25mm以下である[1]または[2]に記載の離型フィルム。
[4]温度10~30℃、相対湿度30~80%RHの環境下において、前記離型層に標準アクリル粘着テープ日東31Bを貼り付けて20時間静置した後、温度18~22℃、相対湿度61~69%RHの環境下において、引張速度1500mm/分の速度で170°剥離を行う剥離試験における剥離力F3(N/25mm)と、引張速度30000mm/分の速度で170°剥離を行う剥離試験における剥離力F4(N/25mm)とが、下記式(1)を満たす[1]~[3]のいずれかに記載の離型フィルム。
F4/F3≦4.0・・・(1)
[5]前記高分子量シリコーン樹脂(A1)は、架橋点において炭素数が3以上、12以下のアルキレン基を有しており、架橋点において炭素数が2以下のアルキレン基を有していない[1]~[4]のいずれかに記載の離型フィルム。
[6]前記基材層と前記離型層との間にアンカーコート層を有する[1]~[5]のいずれかに記載の離型フィルム。
[7]数平均分子量が250,000以上、1,300,000以下である高分子量シリコーン樹脂(A2)、数平均分子量が1,000以上、200,000以下である低分子量シリコーン樹脂(B2)、触媒、架橋剤、および有機溶媒を混合して塗液を作製する工程、
前記塗液を基材層の一方の面に塗布して塗膜を形成する工程、および
前記塗膜を硬化させて離型層を形成する工程を含むことを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば上記構成により、低速での170°剥離における剥離性に優れた離型フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態に係る離型フィルムは、基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた離型層とを有し、前記離型層は、数平均分子量が250,000以上、1,300,000以下である高分子量シリコーン樹脂(A1)と、数平均分子量が1,000以上、200,000以下である低分子量シリコーン樹脂(B1)とを含み、前記高分子量シリコーン樹脂(A1)および/または前記低分子量シリコーン樹脂(B1)は架橋剤により架橋されており、蛍光X線分析によって測定される前記離型層中のケイ素原子量が4kcps以上、40kcps以下である。
【0009】
上記構成により、低速での170°剥離における剥離性を向上することができる。以下では実施の形態に係る離型フィルムの各構成について詳述する。本明細書において、例示する樹脂、添加物、溶剤等は、特に断りのない限り、単独で又は複数種を組合せて使用することができる。
【0010】
基材層は、少なくとも一方の面に離型層を設けることができるものであることが好ましい。基材層として、樹脂フィルム、紙シート等が挙げられる。樹脂フィルムは、二軸延伸の樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムとして、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルム等が挙げられる。ポリエステルフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルを含むフィルム、ポリエステルからなるフィルム等が挙げられる。ポリオレフィンフィルムとして、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンを含むフィルム、ポリオレフィンからなるフィルムが挙げられる。これらのうち、ポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが更に好ましい。紙シートとして、上質紙、コート紙、グラシン紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙等の紙シートが挙げられる。基材層は、単層であってもよく複層であってもよい。複層の場合は、2種以上の層が積層されていてもよい。
【0011】
基材層の少なくとも一方の面は、離型層との密着性を向上させるための処理が施されていてもよい。このような処理として、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線照射処理、サンドブラスト処理、溶射処理、プライマー処理等が挙げられる。
【0012】
基材層の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、更により好ましくは20μm以上であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは125μm以下、更により好ましくは80μm以下である。
【0013】
離型層は、数平均分子量が250,000以上、1,300,000以下である高分子量シリコーン樹脂(A1)と、数平均分子量が1,000以上、200,000以下である低分子量シリコーン樹脂(B1)とを含み、高分子量シリコーン樹脂(A1)および/または低分子量シリコーン樹脂(B1)は架橋剤により架橋されている。少なくとも高分子量シリコーン樹脂(A1)が架橋剤により架橋されていることが好ましく、高分子量シリコーン樹脂(A1)と低分子量シリコーン樹脂(B1)が架橋剤により架橋されていることがより好ましい。
【0014】
高分子量シリコーン樹脂(A1)の数平均分子量は、250,000以上、1,300,000以下である。これにより剥離性を向上することができる。当該数平均分子量は、好ましくは300,000以上、より好ましくは350,000以上、更に好ましくは400,000超、更により好ましくは410,000以上であって、特に好ましくは430,000以上であって、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、更に好ましくは600,000以下、更により好ましくは550,000以下、特に好ましくは500,000以下である。当該数平均分子量は、高分子量シリコーン樹脂(A1)が架橋点においてアルキレン基を含む場合には、当該アルキレン基も含めた分子量である。また当該数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算値であることが好ましい。
【0015】
高分子量シリコーン樹脂(A1)として、ポリオルガノシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンとして、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等が好ましく、ポリジメチルシロキサンがより好ましい。
【0016】
高分子量シリコーン樹脂(A1)は、架橋点において炭素数が3以上、12以下のアルキレン基を有していることが好ましい。更に、高分子量シリコーン樹脂(A1)は、架橋点において炭素数が3以上、12以下のアルキレン基を有しており、架橋点において炭素数が2以下のアルキレン基を有していないことが好ましい。これにより、低速度と高速度の剥離における剥離性を向上することができる。更に剥離角20°近傍における剥離性を向上することができる。更に剥離速度の変化に伴う剥離力のばらつきを低減することができる。アルキレン基は、炭素数が3以上、12以下であることが好ましく、炭素数が4以上、10以下であることがより好ましく、炭素数が5以上、8以下であることが更に好ましく、炭素数が6であることが最も好ましい。アルキレン基は分岐していてもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキレン基として、具体的には、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルエチレン基、メチルトリメチレン基、メチルテトラメチレン基、メチルペンタメチレン基、メチルヘキサメチレン基、メチルヘプタメチレン基、メチルオクタメチレン基、メチルノナメチレン基、メチルデカメチレン基、メチルウンデカメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基;が挙げられる。また、高分子量シリコーン樹脂(A1)は、架橋点において炭素数が13以上のアルキレン基を有していないことが好ましい。
【0017】
低分子量シリコーン樹脂(B1)の数平均分子量は、1,000以上、200,000以下である。これにより剥離性を向上することができる。当該数平均分子量は、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、更により好ましくは5,000以上、特に好ましくは7,000以上であって、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは60,000以下、更により好ましくは30,000以下、特に好ましくは20,000以下である。当該数平均分子量は、低分子量シリコーン樹脂(B1)が架橋点においてアルキレン基を含む場合には、当該アルキレン基も含めた分子量である。また当該数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算値であることが好ましい。
【0018】
低分子量シリコーン樹脂(B1)として、ポリオルガノシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンとして、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等が好ましく、ポリジメチルシロキサンがより好ましい。
【0019】
低分子量シリコーン樹脂(B1)は、架橋点において炭素数が2以上、5以下のアルキレン基を有していることが好ましい。これにより剥離性を向上することができる。アルキレン基は、炭素数が2以上、5以下であることが好ましく、炭素数が2以上、4以下であることがより好ましく、炭素数が2以上、3以下であることが更に好ましく、炭素数が2であることが最も好ましい。アルキレン基は分岐していてもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキレン基として、具体的には、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルエチレン基、メチルトリメチレン基、メチルテトラメチレン基等の分岐鎖状アルキレン基;が挙げられる。低分子量シリコーン樹脂(B1)は、架橋点において炭素数が6以上のアルキレン基を有していないことが好ましい。
【0020】
離型層中の高分子量シリコーン樹脂(A1)と低分子量シリコーン樹脂(B1)の固形分の合計を10質量部としたとき、低分子量シリコーン樹脂(B1)の含有量は、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、更に好ましくは6質量部以上、更により好ましくは8質量部以上である。これにより低速度と高速度の剥離における剥離性を向上することができる。また剥離角20°近傍における剥離性を向上することができる。更に剥離速度の変化に伴う剥離力のばらつきを低減することができる。一方、低分子量シリコーン樹脂(B1)の含有量は、好ましくは9.8質量部以下、より好ましくは9.6質量部以下、更に好ましくは9.4質量部以下、更により好ましくは9.2質量部以下である。これにより良好な塗工外観を得ることができる。
【0021】
架橋剤により形成される架橋部の架橋点間の数平均分子量は200以上、3,500以下であることが好ましい。これにより剥離性を向上することができる。架橋点間の数平均分子量は、より好ましくは400以上、3,000以下、更に好ましくは600以上、2,800以下、更により好ましくは800以上、2,500以下である。架橋部は、ポリオルガノシロキサンにより形成されていることが好ましい。
【0022】
蛍光X線分析によって測定される離型層中のケイ素原子量は4kcps以上、40kcps以下である。これにより剥離性を向上することができる。ケイ素原子量は、好ましくは6kcps以上、より好ましくは8kcps以上であって、好ましくは35kcps以下、より好ましくは30kcps以下である。ケイ素原子量は後記する実施例に記載の方法により測定することができる。離型層中のケイ素原子量は、シリコーン樹脂量を制御することにより調整することができる。
【0023】
離型層100質量%中、高分子量シリコーン樹脂(A1)と低分子量シリコーン樹脂(B1)の合計の含有量は75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが更により好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。一方、当該合計量は、98質量%以下であってもよく、95質量%以下であってもよく、92質量%以下であってもよい。なお当該含有量は、架橋剤により架橋された架橋部分を含む量である。
【0024】
離型層は、触媒、滑剤、密着向上剤、軽剥離調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。離型層100質量%中、添加剤の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましい。一方、添加剤の含有量は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが更により好ましい。
【0025】
触媒については、後述する製造方法の記載を参照することができる。滑剤等として、無機粒子、有機粒子が挙げられる。無機粒子として、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機物を含む粒子が好ましく、無機物からなる粒子がより好ましい。有機粒子として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂等の有機物を含む粒子が好ましく、有機物からなる粒子がより好ましい。密着向上剤として、反応性基を含有する有機ケイ素化合物が好ましい。反応性基として、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基、ハロアルキル基、アミノ基等が挙げられる。軽剥離調整剤として、シリコーンオイルが挙げられる。
【0026】
離型層は、目付が0.1g/m2以上であることが好ましく、目付が0.2g/m2以上であることがより好ましく、0.3g/m2以上であることが更に好ましく、0.4g/m2以上であることが更により好ましい。一方、目付は2.0g/m2以下であることが好ましく、1.5g/m2以下であることがより好ましく、1.0g/m2以下であることが更に好ましい。これにより剥離性を向上することができる。
【0027】
離型フィルムは、基材層と離型層との間にアンカーコート層を有することが好ましい。アンカーコート層は、基材層の離型層側の表面上にアンカーコート剤を塗布して形成することができる。アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂、およびこれらの共重合体、および天然ゴム、合成ゴムを主成分とするコート剤等が挙げられる。アンカーコート層の厚さは、0.005μm以上、5μm以下であることが好ましく、0.01μm以上、1μm以下であることがより好ましい。
【0028】
離型フィルムは、温度10~30℃、相対湿度30~80%RHの環境下において、離型層に標準アクリル粘着テープTESA7475を貼り付けて20時間静置した後、温度18~22℃、相対湿度61~69%RHの環境下において、引張速度300mm/分の速度で170°剥離を行う剥離試験における剥離力F1が100mN/25mm以下であることが好ましい。これにより低速で離型フィルムを剥離し易くすることができる。剥離力F1は、より好ましくは95mN/25mm以下、更に好ましくは90mN/25mm以下、更により好ましくは80mN/25mm以下、特に好ましくは70mN/25mm以下、最も好ましくは60mN/25mm以下である。一方、剥離力F1は、10mN/25mm以上であってもよく、20mN/25mm以上であってもよい。なお剥離力F1(mN/25mm)の測定は、離型フィルムと標準アクリル粘着テープTESA7475の接触部分の幅が25mmとなるようにして行うものとする。
【0029】
離型フィルムは、温度10~30℃、相対湿度30~80%RHの環境下において、離型層に標準アクリル粘着テープTESA7475を貼り付けて20時間静置した後、温度18~22℃、相対湿度61~69%RHの環境下において、引張速度10000mm/分の速度で20°剥離を行う剥離試験における剥離力F2が5.0N/25mm以下であることが好ましい。これにより高速で離型フィルムを剥離し易くすることができる。またこれにより離型フィルムを端部から剥がし易くすることができる。剥離力F2は、より好ましくは4.5N/25mm以下、更に好ましくは4.0N/25mm以下、更により好ましくは3.5N/25mm以下、特に好ましくは3.0N/25mm以下である。一方、剥離力F2は、0.5N/25mm以上であってもよく、1.0N/25mm以上であってもよい。なお剥離力F2(N/25mm)の測定は、離型フィルムと標準アクリル粘着テープTESA7475の接触部分の幅が25mmとなるようにして行うものとする。
【0030】
離型フィルムは、温度10~30℃、相対湿度30~80%RHの環境下において、離型層に標準アクリル粘着テープ日東31Bを貼り付けて20時間静置した後、温度18~22℃、相対湿度61~69%RHの環境下において、引張速度1500mm/分の速度で170°剥離を行う剥離試験における剥離力F3(N/25mm)と、引張速度30000mm/分の速度で170°剥離を行う剥離試験における剥離力F4(N/25mm)とが、下記式(1)を満たすことが好ましい。なお剥離力F3(N/25mm)、剥離力F4(N/25mm)の測定は、離型フィルムと標準アクリル粘着テープ日東31Bの接触部分の幅が25mmとなるようにして行うものとする。
F4/F3≦4.0・・・(1)
【0031】
これにより剥離速度の変化に伴う剥離力のばらつきを低減することができる。式(1)の左辺の値は、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.0以下、更により好ましくは2.7以下である。一方、式(1)の左辺の値は、1.0以上であってもよく、1.0超であってもよく、1.5以上であってもよい。
【0032】
剥離力F3は、好ましくは0.07N/25mm以下、より好ましくは0.06N/25mm以下、更に好ましくは0.05N/25mm以下である。これにより中速度で離型フィルムを剥離し易くすることができる。一方、剥離力F3は、0.01N/25mm以上であってもよい。
【0033】
剥離力F4は、好ましくは0.20N/25mm以下、より好ましくは0.18N/25mm以下、更に好ましくは0.13N/25mm以下である。これにより高速で離型フィルムを剥離し易くすることができる。一方、剥離力F4は、0.03N/25mm以上であってもよい。
【0034】
離型フィルムは、ラベル、シール、両面テープ、粘着材料等の粘着面を保護する保護フィルム、液晶ディスプレイ用部品、プリント配線板等の製造の際の保護材料等に用いることができる。特にアクリル系粘着剤面の保護に好ましく用いることができる。
【0035】
本発明の実施の形態に係る離型フィルムの製造方法は、数平均分子量が250,000以上、1,300,000以下である高分子量シリコーン樹脂(A2)、数平均分子量が1,000以上、200,000以下である低分子量シリコーン樹脂(B2)、触媒、架橋剤、および有機溶媒を混合して塗液を作製する工程、塗液を基材層の一方の面に塗布して塗膜を形成する工程、および塗膜を硬化させて離型層を形成する工程を含む。
【0036】
高分子量シリコーン樹脂(A2)の数平均分子量は、250,000以上、1,300,000以下である。これにより剥離性を向上することができる。当該数平均分子量は、好ましくは300,000以上、より好ましくは350,000以上、更に好ましくは400,000超、更により好ましくは410,000以上であって、特に好ましくは430,000以上であって、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、更に好ましくは600,000以下、更により好ましくは550,000以下、特に好ましくは500,000以下である。当該数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算値であることが好ましい。
【0037】
高分子量シリコーン樹脂(A2)として、ポリオルガノシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンとして、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等が好ましく、ポリジメチルシロキサンがより好ましい。
【0038】
高分子量シリコーン樹脂(A2)は、架橋剤の反応性官能基と反応することが可能な反応性官能基を有することが好ましい。高分子量シリコーン樹脂(A2)は、片末端または両末端に反応性官能基を有していてもよく、側鎖に反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基としては、アルケニル基、ヒドロシリル基が好ましく、アルケニル基がより好ましい。アルケニル基は、炭素数が3以上、12以下であることが好ましく、炭素数が4以上、10以下であることがより好ましく、炭素数が5以上、8以下であることが更に好ましく、炭素数が6であることが最も好ましい。アルケニル基は分岐していてもよいが、直鎖状であることが好ましい。直鎖状のアルケニル基として、具体的には、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等が挙げられる。
【0039】
高分子量シリコーン樹脂(A2)は、炭素数が3以上、12以下であるアルケニル基を有していることが好ましく、炭素数が3以上、12以下であるアルケニル基を有しており、且つ炭素数が2以下のアルケニル基を有していないことが好ましい。また高分子量シリコーン樹脂(A2)は、炭素数が13以上であるアルケニル基を有していないことが好ましい。また高分子量シリコーン樹脂(A2)は、ヒドロシリル基を有さなくてもよい。
【0040】
低分子量シリコーン樹脂(B2)の数平均分子量は、1,000以上、200,000以下である。これにより剥離性を向上することができる。当該数平均分子量は、好ましくは2,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、更により好ましくは5,000以上、特に好ましくは7,000以上であって、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは60,000以下、更により好ましくは30,000以下、特に好ましくは20,000以下である。当該数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算値であることが好ましい。
【0041】
低分子量シリコーン樹脂(B2)として、ポリオルガノシロキサンが好ましい。ポリオルガノシロキサンとして、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等が好ましく、ポリジメチルシロキサンがより好ましい。
【0042】
低分子量シリコーン樹脂(B2)は、架橋剤の反応性官能基と反応することが可能な反応性官能基を有することが好ましい。低分子量シリコーン樹脂(B2)は、片末端または両末端に反応性官能基を有していてもよく、側鎖に反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基としては、アルケニル基、ヒドロシリル基が好ましく、アルケニル基がより好ましい。アルケニル基は、炭素数が2以上、5以下であることが好ましく、炭素数が2以上、4以下であることがより好ましく、炭素数が2以上、3以下であることが更に好ましく、炭素数が2であることが最も好ましい。即ちビニル基であることが最も好ましい。アルケニル基は分岐していてもよいが、直鎖状であることが好ましい。直鎖状のアルケニル基として、具体的には、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等が挙げられる。低分子量シリコーン樹脂(B2)は、炭素数が6以上であるアルケニル基を有していないことが好ましい。また低分子量シリコーン樹脂(B2)は、ヒドロシリル基を有さなくてもよい。
【0043】
架橋剤は、高分子量シリコーン樹脂(A2)および/または低分子量シリコーン樹脂(B2)の反応性官能基と反応することが可能な反応性官能基を、1分子中に2つ以上、有することが好ましい。架橋剤は、片末端または両末端に反応性官能基を有していてもよく、側鎖に反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基としては、アルケニル基、ヒドロシリル基が好ましく、ヒドロシリル基がより好ましい。アルケニル基として、炭素数が2以上、12以下のアルケニル基が好ましく、炭素数が2以上、10以下のアルケニル基がより好ましく、炭素数が2以上、8以下のアルケニル基が更に好ましく、炭素数が2以上、6以下のアルケニル基が最も好ましい。アルケニル基は分岐していてもよいが、直鎖状であることが好ましい。架橋剤として、反応性官能基を有するポリオルガノシロキサンが好ましく、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
【0044】
ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサンとして、ジメチルシロキサン-メチルヒドロシロキサンコポリマー、ジフェニルシロキサン-フェニルヒドロシロキサンコポリマー、ポリエチルヒドロシロキサン、メチルヒドロシロキサン-フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルヒドロシロキサン-オクチルメチルシロキサンコポリマー、ヒドロシリル基含有メチルシリコーン樹脂、ポリフェニル(ジメチルヒドロシロキシ)シロキサン等が挙げられる。
【0045】
架橋剤の数平均分子量は、200以上、3,500以下であることが好ましい。これにより剥離性を向上することができる。架橋剤の数平均分子量は、より好ましくは400以上、3,000以下、更に好ましくは600以上、2,800以下、更により好ましくは800以上、2,500以下である。架橋剤の数平均分子量は、低分子量シリコーン樹脂(B2)の数平均分子量よりも小さいことが好ましい。
【0046】
塗液中における高分子量シリコーン樹脂(A2)と低分子量シリコーン樹脂(B2)の固形分の合計を10質量部としたとき、低分子量シリコーン樹脂(B2)の含有量は、好ましくは2質量部以上、より好ましくは4質量部以上、更に好ましくは6質量部以上、更により好ましくは8質量部以上である。一方、低分子量シリコーン樹脂(B2)の含有量は、好ましくは9.8質量部以下、より好ましくは9.6質量部以下、更に好ましくは9.4質量部以下、更により好ましくは9.2質量部以下である。
【0047】
塗液の固形分100質量%中、高分子量シリコーン樹脂(A2)、低分子量シリコーン樹脂(B2)、および架橋剤の合計の含有量は75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが更により好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。一方、当該合計量は、98質量%以下であってもよく、95質量%以下であってもよく、92質量%以下であってもよい。
【0048】
塗液中における架橋剤の含有量は、高分子量シリコーン樹脂(A2)、および低分子量シリコーン樹脂(B2)の合計100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましい。一方、架橋剤の含有量は、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、4質量部以下であることが更に好ましい。
【0049】
触媒としては、ヒドロシリル化反応触媒が好ましい。ヒドロシリル化反応触媒として、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒が好ましく、白金系触媒がより好ましい。白金系触媒としては、微粒子状の白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状の白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体が挙げられる。パラジウム系触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等が挙げられる。ロジウム系触媒としては、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等が挙げられる。
【0050】
塗液中における触媒の含有量は、高分子量シリコーン樹脂(A2)、低分子量シリコーン樹脂(B2)、および架橋剤の合計100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましい。一方、触媒の含有量は、6質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、4質量部以下であることが更に好ましい。
【0051】
塗液は、触媒の他に、上述した滑剤、密着向上剤、軽剥離調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。塗液の固形分100質量%中、添加剤の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましい。一方、添加剤の含有量は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが更により好ましい。
【0052】
有機溶媒として、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。脂肪族炭化水素溶媒として、ヘプタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、イソヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルイソブチルケトンが好ましく、ヘプタン、メチルイソブチルケトンがより好ましく、ヘプタンが更に好ましい。芳香族炭化水素溶媒として、トルエン、キシレンが好ましく、トルエンがより好ましい。脂肪族炭化水素溶媒と芳香族炭化水素溶媒とを混合して用いてもよい。
【0053】
塗液100質量%中、有機溶媒の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。一方、有機溶媒の含有量は、95質量%以下であることが好ましく、92質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
塗液の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが使用できる。
【0055】
塗膜の硬化は、乾燥させることにより行うことができる。乾燥は加熱処理によって行うことが好ましい。乾燥温度は好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは120℃以上である。これによりヒドロシリル化反応が生じ易くなる。一方、乾燥温度は、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。これにより加熱し過ぎることによる樹脂の劣化を低減することができる。乾燥時間は、好ましくは20秒以上、より好ましくは40秒以上である。一方、乾燥時間は、好ましくは120秒以下、より好ましくは90秒以下である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0057】
〈ケイ素原子量の測定〉
離型フィルムの離型層中のケイ素原子量(kcps(count per second))は、リガク製の蛍光X線分析装置Supermini200を用いて下記条件でSi-Kα線強度を測定することにより測定した。
X線源:Pdターゲットセラミックス管
分析面積:30mmφ
分析元素:Si
分光結晶:PET
出力:50kv,4mA
測定雰囲気:真空
試料(面積=30mmφ)に励起X線(線源=Pdターゲットセラミックス管、出力=50kv,4mA)を照射し、分光結晶(=PET)にて分光されたSiの蛍光X線の強度を計測した。
【0058】
〈剥離力F1の測定〉
幅30mm、長さ200mmの離型フィルムを用意した。次に、温度23℃、相対湿度50%RHの環境下において、離型フィルムの離型層に幅25mmの標準アクリル粘着テープTESA7475を貼り付けて、5000gのゴムローラーを100mm/秒の速度で1往復させることにより圧着してから20時間静置した。その後、温度20℃、相対湿度65%RHの環境下において、株式会社島津製作所製の引張試験機(AG-50NX HS)を用いて、引張速度300mm/分の速度で170°剥離を行って剥離力F1(mN/25mm)を測定した。
【0059】
〈剥離力F2の測定〉
引張速度を10000mm/分としたこと、及び20°剥離を行ったこと、協和界面科学株式会社製の引張試験機(VPA-2)を用いたこと以外は剥離力F1と同様にして剥離力F2(N/25mm)を測定した。
【0060】
〈剥離力F3の測定〉
標準接着テープとして幅25mmの標準アクリル粘着テープ日東31Bを用いたこと、引張速度を1500mm/分としたこと、協和界面科学株式会社製の引張試験機(VPA-2)を用いたこと以外は剥離力F1と同様にして剥離力F3(N/25mm)を測定した。
【0061】
〈剥離力F4の測定〉
標準接着テープとして幅25mmの標準アクリル粘着テープ日東31Bを用いたこと、引張速度を30000mm/分としたこと、協和界面科学株式会社製の引張試験機(VPA-2)を用いたこと以外は剥離力F1と同様にして剥離力F4(N/25mm)を測定した。
【0062】
〈離型フィルムの作製〉
以下の手順により実施例1~7、比較例1の離型フィルムの作製を行った。
【0063】
〔実施例1〕
高分子量シリコーン樹脂(A2)としてのダウ・東レ株式会社製のオルガノポリシロキサンLTC310(数平均分子量:450,000)を、トルエンとヘプタンの混合溶剤(質量比40:60)に溶解させて固形分濃度が20質量%であるシリコーン樹脂溶液(A2)を得た。なおオルガノポリシロキサンLTC310は、ビニル基を有さずヘキセニル基を有するオルガノポリシロキサンであり、架橋剤としてヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(数平均分子量:2,000)が混合されているものである。
【0064】
次に、低分子量シリコーン樹脂(B2)としてのモメンティブ社製のオルガノポリシロキサンSL3832(数平均分子量:10,000)と、架橋剤としてのモメンティブ社製のヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンCL750(数平均分子量:1,000)とを、これらの質量比が97:3となるようにしてヘプタンに溶解させて、固形分濃度が20質量%であるシリコーン樹脂溶液(B2)を得た。オルガノポリシロキサンSL3832は、ビニル基を有するポリジメチルシロキサンである。
【0065】
次に固形分比率で、シリコーン樹脂溶液(A2)10質量部とシリコーン樹脂溶液(B2)90質量部とを、ヘプタンとメチルイソブチルケトンの混合溶剤(質量比80:20)に溶解させて、固形分濃度が14質量%である溶液を得た。更に、濃度が100質量%のモメンティブ社の白金系触媒(CM678)3質量部を溶液に添加して混合し、離型層形成用の塗液を得た。
【0066】
次に基材層としての厚さ50μmの東洋紡株式会社製の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(E5100)の一方の面に、得られた塗液をバーコーターにより塗布した。次いで150℃で1分間加熱して乾燥させて、塗膜を硬化させ、基材層の一方の面に離型層が形成された離型フィルムを得た。なお、当該塗布に当たっては、シリコーン樹脂の乾燥後の離型層に含まれるケイ素原子量が蛍光X線分析による測定値として10kcpsになるように塗布量を調整した。
【0067】
〔実施例2、3、比較例1〕
離型層に含まれるケイ素原子量が表1に示す量になるように塗布量を変更したこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0068】
〔実施例5~7〕
高分子量シリコーン樹脂(A2)と低分子量シリコーン樹脂(B2)との固形分の混合比率が、表1に示す固形分の混合比率となるようにシリコーン樹脂溶液(A2)とシリコーン樹脂溶液(B2)の混合比を変更したこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0069】
〔実施例4〕
高分子量シリコーン樹脂(A2)としてのダウ・東レ株式会社製のオルガノポリシロキサンLTC755(数平均分子量:450,000)をトルエンとヘプタンの混合溶剤(質量比40:60)に溶解させて固形分濃度が20質量%である高分子量シリコーン樹脂溶液(A2)を得た。オルガノポリシロキサンLTC755は、ビニル基とヘキセニル基とを有するオルガノポリシロキサンであり、架橋剤としてヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサン(数平均分子量:2,000)が混合されているものである。高分子量シリコーン樹脂(A2)の代わりに高分子量シリコーン樹脂溶液(A2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0070】
上記のようにして得られた実施例1~7、比較例1の離型フィルムに対して、標準接着テープに対する剥離力試験を行った。これらの結果を表1に示す。
【0071】