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特許7601738別部材に対する取付け構造を有するコネクタ部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】別部材に対する取付け構造を有するコネクタ部品
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/74 20060101AFI20241210BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
H01R13/74 G
H01R13/46 304Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021166049
(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公開番号】P2023056687
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 啓之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 辰也
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-187908(JP,A)
【文献】特開平05-335056(JP,A)
【文献】特開2008-034249(JP,A)
【文献】米国特許第05041018(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 13/73-13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
別部材に取り付けて使用される、第一コネクタ部材と第二コネクタ部材を備えたコネクタ部品であって、
前記第一コネクタ部材は、
嵌合凹部を有する第一ハウジングと、
前記第一ハウジングによって支持された第一端子と、を有し、
前記第二コネクタ部材は、
前記嵌合凹部に嵌め合わされる嵌合凸部を有する第二ハウジングと、
前記第二ハウジングによって支持された第二端子と、を有し、
前記嵌合凹部の内部に、前記嵌合凸部が前記嵌合凹部に前記嵌合凹部の開口側から前記嵌合凹部の奥側に向って嵌め合わされたときに前記嵌合凸部が挿入される中空部が形成されており、
前記第一ハウジングの周壁に、前記嵌合凸部と前記嵌合凹部の嵌合方向と直交する断面において前記中空部の内方に向って弾性変位可能であって、前記別部材に取り付けられたときに前記別部材に設けた被係止部に係止される係止部が設けられており、
前記係止部は、前記嵌合凹部に前記嵌合凸部が嵌め合わされていないときは、前記中空部を利用して前記断面において弾性変位可能とされているが、前記嵌合凹部に前記嵌合凸部が嵌め合わされたときは、前記中空部に位置する前記嵌合凸部によって前記中空部の内方に向う弾性変位が制限されるように構成され、
前記第一ハウジングは、前記嵌合方向に沿って組み付けられる第一ハウジング部材と第二ハウジング部材を含み、
前記係止部は、前記第二ハウジング部材の周壁に前記断面において外方に突出した状態で設けられており、
前記第一ハウジング部材には、前記係止部が前記嵌合方向に沿って案内されるスリットが設けられている、コネクタ部品。
【請求項2】
前記第一端子の一部は、前記嵌合方向に沿って、前記第一ハウジングの前記嵌合凹部の中空部に露出した状態で設けられており、
前記嵌合凹部に前記嵌合凸部が嵌め合わされたときに、前記第一端子の一部が前記第二ハウジングの端子挿入孔に挿入されて、前記第一端子と前記第二端子が接触するように構成されている、請求項1に記載のコネクタ部品。
【請求項3】
前記別部材は更に、前記嵌合方向において前記中空部よりも前記嵌合凹部の奥側に位置付けた、前記第一ハウジングが係止される他の被係止部を有し、
前記第一ハウジングは更に、前記嵌合方向において前記中空部よりも前記嵌合凹部の奥側に位置付けた、前記他の被係止部に係止させる他の係止部を有する、請求項1又は2に記載のコネクタ品。
【請求項4】
前記第一コネクタ部材は、前記第一ハウジングの内部に設けたシール部材を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のコネクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ部品、更に言えば、別部材に対する取付け構造を有するコネクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平09-045433号公報に、別部材に対する取付け構造を備えた可動コネクタの典型的な取付け構造の一例が開示されている。
【0003】
この取付け構造は、可動コネクタを別部材であるパネルに取り付けるためのものであって、パネルには、可動コネクタのハウジング外形寸法より大きく開口されることでハウジングとの間に可動コネクタが可動変位するための間隙を有する取付穴が設けられており、一方、可動コネクタには、可動コネクタのハウジング外面に設けられ可動コネクタを変位可能に取付穴の縁部に係止する可撓性を有した係止腕が設けられている。
係止腕は、ハウジングの後部からハウジングの挿入方向へ突出しており、係止腕の先端外側に係止爪が形成されている。係止腕は、ハウジングの外面と間隙を有して配設され、可撓性を有して構成されることから、コネクタ挿入方向に直交する平面方向へ変位可能となっており、可動コネクタが、取付穴に挿入されると、係止腕の先端が取付穴を通過し、その先端外側に設けた係止爪が挿入方向反対側の取付穴縁部に係止し、この結果、可動コネクタは、取付穴との間に可動可能な間隙を有した状態でパネルに取り付けられることになる。
【0004】
しかしながら、ここに開示された典型的なコネクタ構造では、可動コネクタは、取付穴との間に可動可能な間隙を有した状態でパネルに取り付けられることから、コネクタをハウジングに取り付けた後も、係止爪を比較的自由に変位させることができ、このため、衝突等を通じて衝撃が加わった際に、偶発的に、係止爪が変位して、コネクタがハウジングから容易に取り外されてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平09-045433
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の欠点を解消したコネクタ部品を提供することにあり、特に、第一コネクタ部材と第二コネクタ部材を有するコネクタ部品において、コネクタ部品が別部材にいったん取り付けられた後は、別部材から不用意に取り外されてしまうことがないコネクタ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によるコネクタ部品は、別部材に取り付けて使用される、第一コネクタ部材と第二コネクタ部材を備えたコネクタ部品であって、前記第一コネクタ部材は、嵌合凹部を有する第一ハウジングと、前記第一ハウジングによって支持された第一端子と、を有し、前記第二コネクタ部材は、前記嵌合凹部に嵌め合わされる嵌合凸部を有する第二ハウジングと、前記第二ハウジングによって支持された第二端子と、を有し、前記嵌合凹部の内部に、前記嵌合凸部が前記嵌合凹部に嵌め合わされたときに前記嵌合凸部が挿入される中空部が形成されており、前記第一ハウジングの周壁に、前記嵌合凸部と前記嵌合凹部の嵌合方向と直交する断面において前記中空部の内方に向って弾性変位可能であって、前記別部材に取り付けられたときに前記別部材に設けた被係止部に係止される係止部が設けられており、前記係止部は、前記嵌合凹部に前記嵌合凸部が嵌め合わされていないときは、前記中空部を利用して前記断面において弾性変位可能とされているが、前記嵌合凹部に前記嵌合凸部が嵌め合わされたときは、前記中空部に位置する前記嵌合凸部よって前記中空部内方に向う弾性変位が制限されるように構成されている、ことを特徴として有する。
この態様のコネクタ部品によれば、別部材へのコネクタ部品の取付けを二段階で行うことができ、別部材から不用意に取り外されてしまうことがないコネクタ部品が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第一コネクタ部材と第二コネクタ部材を有するコネクタ部品において、コネクタ部品が別部材にいったん取り付けられた後は、別部材から不用意に取り外されてしまうことがないコネクタ部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態によるコネクタ部品を利用した防水コネクタ部品の斜視図である。
図2】第一コネクタ部材の分解斜視図である。
図3】第一コネクタ部材の平面図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5図4のB-B線断面図である。
図6】第一ハウジング部材の斜視図である。
図7】第二ハウジング部材の斜視図である。
図8図8の(a)は、シール部材の正面図、(b)は、図8の(a)のC-C線断面図である。
図9】シール部材と第二コネクタ部材の斜視図である。
図10】シール部材に第二コネクタ部材を嵌入させた状態を示す側面図である。
図11図10のD-D線断面図である。
図12】第二コネクタ部材を背面側から見た斜視図である。
図13】接続状態にある第一コネクタ部材と第二コネクタ部材の平面図である。
図14図13のE-E線断面図である。
図15図14のF-F線断面図である。
図16】第二コネクタ部材の断面を第二端子に取り付けるケーブルとともに示した斜視図である。
図17】パネルハウジングに対する防水コネクタ部品の取付け方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、使用態様、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1に、本発明の一実施形態によるコネクタ部品を利用した防水コネクタ部品10の斜視図を示す。本発明の防水コネクタ部品10は、例えば、自転車のCAN通信に用いることができるものであって、実際の使用時には、防水コネクタ部品10とは、防水コネクタ部品10とは別部材、例えば、自転車のパネルハウジング(図17の「8」参照)に取り付けて使用される。防水コネクタ部品10の径は、例えば、6mm程度のものである。
【0012】
防水コネクタ部品10は、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60を含む。図1は、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続される前の状態を示している。尚、図1には、第二コネクタ部材60そのものではなく、モールド部材69を接続した第二コネクタ6を示しているが、モールド部材69は、第二コネクタ部材60ではなく、ケーブル(図16参照)等を収容するために第二コネクタ部材60に取り付けることができる部材の一例であって、本発明の防水コネクタ部品10の構成要素ではない。第一コネクタ部材20に取り付けたパッキン3も同様に、本発明の防水コネクタ部品10の実質的な構成要素ではない。
【0013】
第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60を接続するため、第一コネクタ部材20の第一ハウジング22に、嵌合凹部23が、これに対応して、第二コネクタ部材60の第二ハウジング62に、嵌合凸部63が、それぞれ設けられている。第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60の接続時には、嵌合凹部23に嵌合凸部63が嵌合方向「α」に沿って嵌合凹部23の開口側から嵌合凹部23の奥側に向って嵌め合わされる。この結果、第一コネクタ部材20に設けた第一端子21と第二コネクタ部材60(図10等参照)に設けた第二端子61が接触し、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が電気的に接続される。
【0014】
図2に、第一コネクタ部材20の分解斜視図、図3に、その平面図、図4に、図3のA-A線断面図、図5に、図4のB-B線断面図をそれぞれ示す。第一コネクタ部材20は、第一端子21と、第一端子21を支持する第一ハウジング22と、第一ハウジング22の内部に設けたシール部材50を含む。第一ハウジング22は更に、嵌合方向(α)に沿って互いに組み付けられる第一ハウジング部材、例えば、樹脂製の本体ケース部材30及び第二ハウジング部材、例えば、組付ケース部材40を含む。図6に、本体ケース部材30の斜視図を、また、図7に、組付ケース部材40の斜視図を、それぞれ示す。図6の(a)及び図7の(a)は、本体ケース部材30又は組付ケース部材40を前側から見た斜視図、図6の(b)及び図7の(b)は、それらを背面側から見た斜視図である。
【0015】
本体ケース部材30は、有底の略円筒形状を成す本体32を有し、更に、この本体32から組付ケース部材40との組み付け側とは反対側に延出した、本体32より小径の略円柱状突部36と、この略円柱状突部36から延出した端子支持部37を有する。
【0016】
本体32の端部は、組付ケース部材40との組み付け側において開放されている。第一コネクタ部材20の組み立て時には、この開放部38を通じて、本体ケース部材30に組付ケース部材40が組み付けられる。本体ケース部材30と組付ケース部材40を組み付けた際、シール部材50は、本体ケース部材30と組付ケース部材40を利用して、本体ケース部材30の内部に配置される。その後、本体ケース部材30に、第二コネクタ部材60を取り付けることにより、シール部材50は、実質的に外部を覆われた状態で、防水コネクタ部品10の内部に完全に収容される。
【0017】
本体32の周壁33に、組付ケース部材40との組み付け側の縁を切り欠いた切り欠き部34と、組付ケース部材40との組み付け側の縁から嵌合方向(α)に沿って切り欠いたスリット35が設けられている。更に、これら切り欠き部34とスリット35の周方向における中間部に、周壁33を貫通した係止孔31が設けられている。これらは、本体ケース部材30と組付ケース部材40の組み付け時に利用される。
【0018】
略円柱状突部36には、環状溝が2つ設けられている。環状溝36aには、防水用のパッキン3を取り付けることができる。パッキン3は、第一コネクタ部材20が別部材(図17の「8」参照)に取り付けられたときに、別部材と第一コネクタ部材20の隙間を埋める。一方、環状溝36bは、第一コネクタ部材20を別部材の所定部分(図17の「81」参照)に係止する係止部として機能する。
【0019】
端子支持部37は、第一ハウジング22に設置される第一端子21を支持する部分として用いられ、第一端子21の形状に対応する溝を有する。これらの溝は、第一端子21を設置するための貫通孔32aと連続した状態で設けられている。
【0020】
組付ケース部材40は、円筒状の大径部42と小径部46を含む。大径部42と小径部46は、嵌合方向(α)に沿って連通しており、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続されるときに第二コネクタ部材60の嵌合凸部63が挿入される中空部43をそれらの内部に形成する。中空部43は、シール部材50と協働して、第一ハウジング22の嵌合凹部23を形成する。
【0021】
小径部46の周壁46aに、大径部42と小径部46との間の径の差を利用して、嵌合方向(α)に沿って大径部42から延びる突条部44が設けられている。また、嵌合方向「α」と直交する断面(β-γ面)における、突条部44の対向位置に、断面方向(β-γ方向)において小径部46の周壁46aから外方に突出した係止部45が設けられている。係止部45は、断面方向(β-γ方向)において、中空部43の内方に向って弾性変位可能に設けられており、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60の接続時に、別部材の所定部分(図17の「85」参照)に係止されて、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60を固定する働きを有する。
【0022】
本体ケース部材30と組付ケース部材40が組み付けられる際、突条部44は、本体ケース部材30の切り欠き部34を通じて嵌合方向(α)に沿って案内される。一方、係止部45は、本体ケース部材30のスリット35を通じて嵌合方向(α)に沿って案内される。これらの働きにより、本体ケース部材30と組付ケース部材40を正しい方向に取り付けることができる。突条部44と係止部45の、周方向における中間部には、周壁46aから突出した係止突起41が設けられている。係止突起41は、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60の接続時に、本体ケース部材30の係止孔31に嵌って、組付ケース部材40を本体ケース部材30に固定するために使用される。また、係止突起41の、大径部42に寄った位置に、周壁46aを貫通した係止穴48が設けられている。係止穴48は、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60を固定するために使用される。
【0023】
第一端子21は、複数、本実施形態では計4個、設けられている。これらは全て、同じ大きさ及び形状を有し、それぞれ、本体ケース部材30に設けた貫通孔32aに挿通された状態で、嵌合方向(α)に沿って配置される。第一端子21を貫通孔32aに固定するため、第一端子21の中間部に、係止突部211が設けられている。第一端子21の先端側、即ち、第二端子61との接触部210は、棒状に形成されており、組付ケース部材40の中空部43、言い換えれば、第一ハウジング22の嵌合凹部23の内部においてに露出した状態で設けられている。第一端子21の後端側212も露出した状態で設けられており、防水コネクタ部品10が別部材(図17の「8」参照)に取り付けられたときに、別部材の所定部分(図示されていない)に接続される。
【0024】
図8の(a)に、シール部材50の正面図、(b)に、図8の(a)のC-C線断面図を、それぞれ示し、また、図9に、シール部材50と第二コネクタ部材60の斜視図を示す。
更に、図10に、シール部材50に第二コネクタ部材60を嵌入させた状態を側面図で示し、また、図11に、図10のD-D線断面図、図12に、第二コネクタ部材60を背面側から見た斜視図を、それぞれ示す。
図13は、接続状態にある第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60の平面図、図14は、図13のE-E線断面図、図15は、図14のF-F線断面図である。図13乃至図15はそれぞれ、第一コネクタ部材20の図3乃至図5に対応している。
【0025】
シール部材50は、例えば、シリコン、ゴム等、弾性変形可能な部材から成り、略円筒状の周壁50aと略円形の底壁50bを含み、全体として扁平且つ有底の略円筒形状を有する。シール部材50の一方の端部には、周壁50aの内面と底壁50bの内面を利用して、凹陥状の凹陥部54が形成されている。第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続されたとき、第一コネクタ部材20の嵌合凹部23に第二コネクタ部材60の嵌合凸部63が嵌め合わされ、この結果、凹陥部54に、嵌合凸部63の一部である略円柱部67が嵌入される。凹陥部54の内周面、言い換えれば、シール部材50の周壁50aの内面には、嵌入された略円柱部67とシール部材50との間の隙間を埋めるため、円環状の内方突出部59が設けられている。
【0026】
凹陥部54の底面は、凹陥部54に略円柱部67を嵌入させたときに略円柱部67の嵌合側の端面64と対向し、且つ、該端面64と少なくとも一部において当接し得る対向面55を形成する。この対向面55は、嵌合方向(α)と直交する断面(β-γ面)において略円形状を成している。対向面55には、第一端子21を貫通させる貫通孔51が、第一端子21と同じ数だけ、即ち、計4個設けられている。これら4個の貫通孔51は、略円形状を成す対向面55の円の中心53に対して点対称に配置されており、各貫通孔51の嵌合方向(α)における略中央付近には、縮径された縮径部51aが設けられている。これらの縮径部51aを利用して、第一端子21を貫通孔51に圧入保持することができる。
【0027】
対向面55には更に、貫通孔51に対応して、円の中心53に対して点対称に、同じ大きさ及び形状を有する計4個の環状突部52が設けられている。これらの環状突部52は、対向面55の側から端面64の側に向って嵌合方向(α)に沿って延びる先細り形状を有し、貫通孔51を貫通した第一端子21の周囲を密に取り囲んだ状態で貫通孔51の出口付近に設けられている。より多くの環状突部52を限られたスペースに配置するため、環状突部52は、対向面55によって形成される円の内部に、該円にそれぞれが内接した状態で配置されている。環状突部52は、後述するように嵌合凸部63の端面64と協働して、防水機能を高める働きを有する。更に、これに加え、絶縁破壊をより効果的に防ぐ働きをも有する。即ち、環状突部52を設けたことにより、貫通孔51に配置された第一端子同士は、シール部材50の形状に沿って、より大きな沿面距離を有するため、更に詳細には、傾斜面52aを有する山状の環状突部52を利用して、例えば、図8の(b)における「m」の位置から「n」の位置に至る距離だけ、シール部材50の面に互いに離間されることになり、従って、特許文献1に開示されているような、略平面状の軟質弾性体からなるシール部材よりも、より大きな沿面距離が提供される。よって、環状突部52を設けたことにより、絶縁破壊をより効果的に防止することができる。
【0028】
対向面55には更に、嵌合凹部23に嵌合凸部63が嵌め合わされた状態にあるときに環状突部と環状突部の間において嵌合方向(α)に沿って対向面55の側から端面64の側に向って突出して環状突部52同士を分断する分断用突部56が設けられている。分断用突部56は、略円形状を成す対向面55の円の中心53から、環状突部52同士を均等に仕切るように略十字状に放射状に延びている。分断用突部56を設けることにより、第一端子21同士の間の沿面距離を更に大きくすることができる。即ち、図8の(b)に示した、「m」の位置から「n」の位置に至る、シール部材50の形状に沿った距離は、分断用突部56の山の分だけ、より大きく離間される。沿面距離をより大きくするため、分断用突部56は、図に示すように、環状突部52よりも更に大きく、対向面55の側から端面64の側に向って突出しているのが好ましい。
【0029】
シール部材50は、第一ハウジング22の嵌合凹部23の底面、言い換えれば、本体ケース部材30の底面39に設置される。シール部材50を本体ケース部材30に固定するため、シール部材50の周壁50aの外面に円環状の外方突出部57が設けられている。シール部材50は、この外方突出部57を利用して、本体ケース部材30に圧入された状態で防水コネクタ部品10に設置される。シール部材50の外壁には更に、嵌合方向(α)において内方突出部59に対応する位置に、外方突出部58が設けられている。凹陥部54に略円柱部67が嵌入されて、シール部材50が内方突出部59を設けた位置で拡径されたとき、外方突出部58は、本体ケース部材30の開放部38における周状の内壁と衝突し、シール部材50を本体ケース部材30に対してより強く押し付けて、シール部材50と略円柱部67との間の隙間を埋める。このように、外方突出部58は、内方突出部59と協働して、防止機能を強化することができる。
【0030】
第二コネクタ部材60は、第二端子61と、第二端子61を支持する樹脂製の第二ハウジング62を含む。第二ハウジング62は、本体68と、本体68の一端側に設けた端面64を含む略円柱部67と、更に、本体68の他端側に設けた端子の取付け構造(73)を含む。第二ハウジング62は、実質的にその全体で、嵌合凸部63を成している。但し、第二ハウジング62の一部のみによって、嵌合凸部を形成してもよい。本体68と端子の取付け構造(73)は、フランジ71によって仕切られている。図1を参照して説明したように、実際の使用時には、取付け構造(73)はケーブル等とともに、モールド部材69等の内部に挿入される。
【0031】
本体68は、全体として略円柱形状をする。略円柱部67は、この本体68よりも小さな径に設定されている。本体68の側面には、外方に突出した係止突起68aが設けられている。係止突起68aは、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続されたときに、第一コネクタ部材20の組付ケース部材40に設けた係止穴48に嵌る。この結果、第二コネクタ部材60は第一コネクタ部材20に固定される。また、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続されたとき、フランジ71は、第一コネクタ部材20の中空部43の内部に設けた半環状の面43aに突き当てられる。この結果、第二コネクタ部材60は、係止突起68aとフランジ71の間に挟み込まれた状態で、第一コネクタ部材20の所定位置に位置決めされる。
【0032】
略円柱部67の端面64に、シール部材50と当接したときに、対向面55の環状突部52の少なくとも一部を受容する環状窪部65aが設けられている。環状窪部65aは、対向面55の環状突部52に対応して、環状突部52の対応位置に、環状突部52と同じ数だけ設けられている。これらの環状窪部65aは、対向面55の側から端面64の側に向って窪んだ形状を有し、また、同方向に向って先細る形状を有する。環状窪部65aは、第二端子61が配置された第二ハウジング62の端子挿入孔65と連通しており、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続される際に、第一コネクタ部材20に設けた第一端子21の接触部210を端子挿入孔65に挿入する案内する機能を有する。環状窪部65aによって案内された接触部210は、端子挿入孔65の内部において、第二端子61の接触部610と接触し、電気的に接続される。
【0033】
嵌合凸部63が嵌合凹部23に更に押し込まれたとき、環状窪部65aは、端子挿入孔65に第一端子21を貫通させた状態で、受容した環状突部52を、嵌合凹部23の底面39との間で挟持して、環状突部52の少なくとも一部を弾性収縮させる。これにより、第一端子21との隙間を更に狭め、且つ、環状突部52との密着性を高めることができる。この弾性収縮により、防水機能は向上する。更に、この構成によれば、絶縁破壊をより効果的に防ぐことができる。環状突部52に対応する形状を有する環状窪部65aを設けたことにより、第一端子同士の間の隙間、即ち、空間距離を実質的になくすことができ、従って、空間距離によって生ずる絶縁破壊を防ぐことができるからである。
【0034】
端面64には更に、対向面55の分断用突部56に対応して、略十字状に放射状に延びた突部収容部66が、環状窪部65aに隣接して設けられている。突部収容部66は、環状窪部65aと同様に、対向面55の側から端面64の側に向って窪んだ形状を有しており、端面64と対向面55が当接したときに、分断用突部56を収容することができる。突部収容部66を環状窪部65aの隣接に設けたことにより、突部収容部66には、分断用突部56のみならず、環状突部52の一部をも収容させることができる。環状突部52を弾性収縮させたとき、対向面55の円の中心側には、環状突部52の一部が皺寄せされることになるが、この皺寄せされた部分が行き場を失った場合、環状窪部65aと環状突部52の密着性を低下させるおそれがある。本構成によれば、この部分を突部収容部66に収容させるようにして、密着性を確保することができる。環状突部52の一部をも収容することができるように、突部収容部66は、分断用突部56が収容されたときでも隙間66aを維持する大きさとされている。尚、対向面55とは反対側に設けた突部56aに対しても、同様の隙間66bを設けることにより、その他の皺寄せ部分をも収容することができるようになっている。
【0035】
図16をも参照して、第二端子61、及び、第二ハウジング62における第二端子61の取付け構造について説明する。図16は、第二コネクタ部材60の断面を第二端子61に取り付けるケーブル9とともに示した斜視図である。
【0036】
第二端子61は、第一端子21と同じ数、即ち、計4個設けられている。これらは全て、平らな金属板を打ち抜くことによって形成されており、同じ形状及び大きさを有する。板状体として形成された第二端子61はそれぞれ、第二コネクタ部材60に設けた貫通孔65bに、嵌合方向(α)に沿って挿通される。第二端子61を貫通孔65bに固定するため、第二端子61の中間部に、係止突部611が設けられている。これら第二端子61のうち、第二端子61Aは、グランド端子として使用され、一方、残る3個の第二端子61Bは、信号端子として使用される。グランド端子として使用される第二端子61Aは、第二ハウジング62において、信号端子として使用される第二端子61Bよりも、若干、第一コネクタ部材20との接続側により近い側に位置付けられる。このように位置付けることにより、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続される際に、信号端子である第二端子61Bが信号接続を行う前に、グランド端子である第二端子61Aがグランド接続されることを確実にし、ノイズを防止することができる。
【0037】
第二端子61の、第一コネクタ部材20との嵌合側に、第一端子21と接触する接触部610が設けられている。接触部610は、第二ハウジング62の端面64に設けた環状窪部65a及び貫通孔65bの双方と連通している端子挿入孔65の内部に配置されており、端面64を通じて、端子挿入孔65に挿入された第一端子21と、端子挿入孔65の内部において接続される。更に言えば、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続されたとき、嵌合凹部23に嵌合凸部63が嵌め合わされ、第一端子21の接触部210は、端面64に設けた環状窪部65aによって端子挿入孔65に導かれ、貫通孔65bに配置された第二端子61と接触する。第二端子61の接触部610は、二点接触構造を有しており、第一端子21と第二端子61の接触時には、第一端子21の接触部210を接触部610の接点部610a同士の間に挟み込んだ状態でそれを保持する。第一コネクタ部材20との嵌合側とは反対側の、第二端子61の一部612は、通常の状態においては、更に言えば、例えば、モールド部材69を接続する前においては、第二ハウジング62から第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60の嵌合方向(α)に沿って露出している。この第二端子61の露出部612は、ケーブルを取り付ける結線部として使用可能な部分であり、その少なくとも一部は、第二ハウジング62の壁72によって周状に取り囲まれている。ケーブル9の被覆92から露出させた芯線91の取り付けを容易にするため、これらの結線部である露出部612には、貫通孔613を設けるのが好ましい。貫通孔613を設けることにより、貫通孔613に半田の一部を取り込んだ状態で、芯線91を、貫通孔613の周辺に確実に固定することができる。
【0038】
壁72を設けることにより、壁72の内側に、露出部612の少なくとも一部を収容する空間74が形成される。この空間74は更に、第一コネクタ部材20との嵌合側とは反対側に突出した状態で矩形部75同士を仕切る仕切板73によって、第二端子61毎に仕切られてもよい。仕切板73は、第二端子61同士を均等に仕切るように、壁72の内壁72aによって形成された、嵌合方向(α)と直交する断面方向(β-γ方向)における円の中心76aから四方向に放射状に延びている。第二端子61は、これらの仕切板73にそれぞれ板面を沿わせた状態で嵌合方向(α)に沿って配置されている。ケーブル9の芯線91を露出部612に取り付ける際、壁72等を利用して形成された空間74に芯線91の先端を挿入した状態とすることにより、芯線91を第二端子61の適当な位置に容易に位置付けた状態で半田作業を行うことができる。
【0039】
図17を参照して、別部材、ここでは、パネルハウジング8に対する防水コネクタ部品10の取付け方法について説明する。勿論、以下に説明する機構を利用することができるのであれば、パネルハウジング8以外の部材に取り付けることもできる。この取付けは二段階で行う。第一段階として、第一コネクタ部材20をパネルハウジング8に仮留めする。その後、この第一コネクタ部材20に対して第二コネクタ部材60を取り付ける。以下、図面を参照して説明する。
【0040】
防水コネクタ部品10を取り付けるため、パネルハウジング8には、嵌合方向(α)に沿って挿入穴83が設けられている。先ず、この挿入穴83に、第一コネクタ部材20が挿入される。第一コネクタ部材20の構成部材である組付ケース部材40に設けた係止部45は、嵌合方向(α)と直交する断面方向(β-γ方向)において外方に突出しているが、第一コネクタ部材20を挿入穴83に挿入される際は、嵌合凸部63は、嵌合凹部23を形成している組付ケース部材40の中空部43に嵌め合わされていないため、係止部45は中空部43を利用して嵌合方向(α)と直交する断面方向(β-γ方向)において自由に弾性変位することができる。従って、第一コネクタ部材20は挿入穴83に何ら問題なく挿入される。そうして、挿入穴83に対する第一コネクタ部材20の挿入完了時には、図17の(b)に示すように、係止部45の弾性変位状態は解除され、係止部45は、パネルハウジング8の内壁に設けた被係止部である、例えば、係止穴85に係止される。また、これと同時に、第一コネクタ部材20の構成部材である本体ケース部材30に設けた環状溝(他の係止部)36bに、パネルハウジング8の先端側の内壁に設けた内方に突出する環状突部(他の被係止部)83bが嵌る。環状溝36bは、嵌合方向(α)において中空部43よりも更に嵌合凹部23の奥側に位置付けられており、同様に、環状突部83bは、嵌合方向(α)において中空部43よりも更に嵌合凹部23の奥側に位置付けられている。この結果、環状溝36bに環状突部83bが嵌ったときは、嵌合凹部23に嵌合凸部63が嵌め合わされる前であっても、言い換えれば、係止部45の、中空部43の内方に向う弾性変位が、中空部43に位置する嵌合凸部63によって制限された後は勿論のこと、制限される前であっても、嵌合方向(α)における前後の位置で、第一コネクタ部材20は、パネルハウジング8に安定した状態で仮留めされる。
【0041】
第一コネクタ部材20を、パネルハウジング8に仮留めした後、次いで、第二段階として、図17の(c)に示すように、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続される、言い換えれば、嵌合凹部23に嵌合凸部63が嵌め合わされる。嵌合凹部23に嵌合凸部63が嵌め合わされることにより、嵌合凹部23の中空部43は、嵌合凸部63で埋まり、この結果、係止部45の、中空部43の内方に向う弾性変位は、中空部43に位置する嵌合凸部63によって制限されることになる。このように、第一コネクタ部材20と第二コネクタ部材60が接続された状態では、係止部45を弾性変位させることができないことから、パネルハウジング8に対する防水コネクタ部品10の取付け状態は容易には解除されない。防水コネクタ部品10をパネルハウジング8から取り外す場合には、上とは逆の作業を行う必要がある。即ち、先ず、第一コネクタ部材20を第二コネクタ部材60から取り外し、その後に、第一コネクタ部材20をパネルハウジング8から取り外す。このように、上記の構造を採用することにより、防水コネクタ部品が別部材にいったん取り付けられた後は、不用意に、パネルハウジング8から取り外されてしまうことを効果的に防止することができる。
【0042】
本発明に関連する分野の当業者であれば、上記の説明で示された教示の助けを借りれば、本発明の多くの修正形態または他の実施形態を思いつくであろうし、当業者には、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、本発明の変形および修正を行うことができることは明らかであろう。したがって、本発明は、開示されている特有の実施形態に限定されず、修正形態およびその他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれるよう意図されているものと理解されたい。本明細書では特定の用語が使用されているが、それらの用語は、限定目的ではなく、一般的かつ説明的な意味で用いられているに過ぎない。
例えば、本実施形態では、防止コネクタを例に挙げて説明したが、本発明の構成は、防水コネクタ以外の、例えば、電気コネクタ等にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0043】
9 ケーブル
91 芯線
92 被覆
10 防水コネクタ部品
20 第一コネクタ部材
21 第一端子
210 接触部
22 第一ハウジング
23 嵌合凹部
30 本体ケース部材(第一ハウジング部材)
31 係止孔
32 本体
32a 貫通孔
33 周壁
36 円柱状突部
36b 環状溝(他の係止部)
38 収容凹部
39 底面
40 組付ケース部材(第二ハウジング部材)
41 係止突起
45 係止部
50 弾性シール部材
51 貫通孔
52 環状突部
52a 傾斜面
54 凹陥部
55 対向面
56 分断用突部
6 第二コネクタ
60 第二コネクタ部材
61 第二端子
610 接触部
612 後端側
62 第二ハウジング
63 嵌合凸部
64 端面
65 端子挿入孔
65a 環状窪部
66 突部収容部
66a 隙間
68 本体
72a 内壁
73 仕切板
74 空間
75 矩形部
76 円
83b 環状突部(他の被係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17