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特許7601740脱水処理用の凝集剤を選択する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】脱水処理用の凝集剤を選択する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20241210BHJP
   C02F 11/121 20190101ALI20241210BHJP
   C02F 11/147 20190101ALI20241210BHJP
【FI】
B01D21/01 101Z
C02F11/121 ZAB
C02F11/147
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021166364
(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公開番号】P2023056885
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】御供 信薫
(72)【発明者】
【氏名】楠本 勝子
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 智弘
(72)【発明者】
【氏名】安永 利幸
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-035669(JP,A)
【文献】特開2022-175217(JP,A)
【文献】特開2021-179361(JP,A)
【文献】特開平11-169899(JP,A)
【文献】特開2020-187770(JP,A)
【文献】特開2018-167191(JP,A)
【文献】特開2012-157862(JP,A)
【文献】特開2004-275912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/01
B01D 21/02-21/34
C02F 1/52- 1/56
C02F 11/00-11/20
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液に添加すべき凝集剤を選択するための方法であって、
前記懸濁液の性状を、機械学習により構築された学習済みモデルに入力し、
凝集剤の物性の推奨値を前記学習済みモデルから出力し、
前記物性の推奨値に基づいて、前記懸濁液に添加すべき凝集剤をデータベース内の複数の凝集剤から選択することを含み、
前記懸濁液の性状は、
TS(g/L):Total Solids
SS(g/L):Suspended Solids
CST(sec):Capillary Suction Time
コロイド荷電(meq/L)
導電率(mS/m)
アルカリ度(mg/L)
pH
VSS(%):volatile suspended solids
VTS(%):Volatile Total Solids
繊維分(%)
粗粒子(%)
無機凝集剤の添加量
無機凝集剤添加有無
のうちの少なくとも1つであり、
前記学習済みモデルは、複数種の懸濁液の複数の性状と、正解ラベルとしての複数種の凝集剤の物性の複数の値を含む訓練データを用いて、機械学習により構築されたモデルであることを特徴とする脱水処理用の凝集剤を選択する方法。
【請求項2】
前記物性の推奨値に基づいて前記懸濁液に添加すべき凝集剤を前記データベース内の複数の凝集剤の中から選択することは、前記物性の推奨値と同じまたは近い物性を有する凝集剤を前記データベース内の複数の凝集剤から選択することであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物性の推奨値と同じまたは近い物性を有する凝集剤を前記データベース内の複数の凝集剤から選択することは、
粘度およびイオン性指標を座標軸に持つ座標系上に、前記物性の推奨値から特定される推奨点をプロットし、
前記推奨点を中心とするターゲット範囲内に存在する凝集剤を、前記座標系上の複数の凝集剤から選択することであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
懸濁液に添加すべき凝集剤を選択するための装置であって、
機械学習により構築された学習済みモデルを有し、前記懸濁液の性状を前記学習済みモデルに入力し、凝集剤の物性の推奨値を前記学習済みモデルから出力する物性算定部と、
データベースを有し、前記物性の推奨値に基づいて、前記懸濁液に添加すべき凝集剤を、前記データベース内の複数の凝集剤から選択する凝集剤決定部と、
前記選択された凝集剤を溶媒に溶解させる凝集剤溶解槽と、
前記溶媒に溶解した前記凝集剤を懸濁液に添加して凝集フロックを形成する凝集槽と、
前記凝集フロックが形成された前記懸濁液を脱水する脱水装置と、
を備えており、
前記懸濁液の性状は、
TS(g/L):Total Solids
SS(g/L):Suspended Solids
CST(sec):Capillary Suction Time
コロイド荷電(meq/L)
導電率(mS/m)
アルカリ度(mg/L)
pH
VSS(%):volatile suspended solids
VTS(%):Volatile Total Solids
繊維分(%)
粗粒子(%)
無機凝集剤の添加量
無機凝集剤添加有無
のうちの少なくとも1つであり、
前記学習済みモデルは、複数種の懸濁液の複数の性状と、正解ラベルとしての複数種の凝集剤の物性の複数の値を含む訓練データを用いて、機械学習により構築されたモデルであることを特徴とする脱水処理用の凝集剤を選択する装置。
【請求項5】
懸濁液に添加すべき凝集剤を選択するための装置であって、
機械学習により構築された学習済みモデルを有し、前記懸濁液の性状を前記学習済みモデルに入力し、凝集剤の物性の推奨値を前記学習済みモデルから出力する物性算定部と、
データベースを有し、前記物性の推奨値に基づいて、前記懸濁液に添加すべき凝集剤を、前記データベース内の複数の凝集剤から選択する凝集剤決定部と、
前記選択された凝集剤を溶媒に溶解させる凝集剤溶解槽としての瞬間溶解装置と、
前記溶媒に溶解した前記凝集剤を懸濁液に添加して凝集フロックを形成する凝集槽と、
前記凝集フロックが形成された前記懸濁液を脱水する脱水装置と、
を備えていることを特徴とする脱水処理用の凝集剤を選択する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水処理に使用される凝集剤を選択する技術に関し、特に汚泥またはスラリーなどの懸濁液を濁質と液体とに分離させる操作において、懸濁液に適した凝集剤の物性値をAIモデルを用いて予測する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下水処理場、し尿処理場、産業排水処理場などの液体処理施設から排出される懸濁液(例えば汚泥)を圧搾して、該懸濁液から水を分離する脱水装置が使用されている。脱水の前処理として、凝集槽にて凝集剤を懸濁液に添加し、凝集剤と懸濁液との混合液を攪拌して、凝集フロックを形成し、固液分離をし易い状態にする。その後に、凝集フロックが形成された懸濁液を脱水装置に送り、脱水装置より懸濁液を脱水する。脱水装置からはケーキあるいは脱水ケーキと呼ばれる低含水率の固形物が排出される。
【0003】
水処理現場の脱水装置において、処理対象の懸濁液に対する最適な凝集剤は一意に決まる。一方、処理対象の懸濁液の性状は常に変動しているため、懸濁液に対して最適な凝集剤の性状も変動する。しかし、現場で頻繁に懸濁液性状を測り、最適な凝集剤を選定し、適用することは難しいため、常に懸濁液に対して最適な凝集剤で脱水するという要望に応えられていない現状がある。
【0004】
最近では、人工知能(AI)を用いて最適な凝集剤を選択する技術が開発されている。例えば、機械学習により構築されたモデルを用いて最適な凝集剤が選択される。このような人工知能を活用した凝集剤の選択は、作業員のスキルや経験に依存しないので、比較的安定した選択結果が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-35669号公報
【文献】特開2020-065964号公報
【文献】特開2004-177122号公報
【文献】特開2011-156529号公報
【文献】特開平11-169899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、検査用のフロックの画像を学習済みモデルに入力することにより、学習用のフロックの画像に使用した複数の凝集剤の中から適した凝集剤を選定する。しかしながら、この技術は、学習に使用した凝集剤のみ選定可能である。学習に使用されなかった凝集剤を選択可能とするためには、その凝集剤を学習用データに加えて、機械学習を再度実行する必要がある。さらに、特許文献1に記載の技術では、機械学習モデル構築において、学習用データとして、フロックの画像データが必要であった。
【0007】
特許文献2の技術では、凝集剤の添加量を機械学習モデルで予測するが、この技術では、凝集剤の物性は固定であるため、現場の汚泥の物性により決まる適切な物性の凝集剤を適用させることができない。
【0008】
特許文献3の技術では、被測定水の吸収スペクトルまたは発光スペクトルを制御情報に用いる凝集剤の選定を行っているが、凝集剤の選定のためには、スペクトル以外の様々な情報を基に分析する必要がある。
【0009】
特許文献4の技術では、pH、導電率、コロイド荷電が凝集剤の注入量と相関があることを示している。しかし、凝集剤の選定のために凝集剤の物性値(粘度、カチオン度等)を予測する技術や、予測精度向上のためのTS等他の物性も予測に用いる技術には触れていない。
【0010】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、汚泥またはスラリーなどの懸濁液に添加すべき凝集剤を適切に選択することができる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、懸濁液に添加すべき凝集剤を選択するための方法であって、前記懸濁液の性状を、機械学習により構築された学習済みモデルに入力し、凝集剤の物性の推奨値を前記学習済みモデルから出力し、前記物性の推奨値に基づいて、前記懸濁液に添加すべき凝集剤をデータベース内の複数の凝集剤から選択することを特徴とする脱水処理用の凝集剤を選択する方法が提供される。
【0012】
一態様では、前記データベースは、複数の凝集剤の識別名称、および前記複数の凝集剤のそれぞれの複数の物性のデータを含むことを特徴とする。
一態様では、凝集剤の前記物性は、凝集剤の粘度およびイオン性指標であり、前記イオン性指標は凝集剤のカチオン度またはアニオン度またはコロイド当量値であることを特徴とする。
一態様では、前記物性の推奨値に基づいて前記懸濁液に添加すべき凝集剤を前記データベース内の複数の凝集剤の中から選択することは、前記物性の推奨値と同じまたは近い物性を有する凝集剤を前記データベース内の複数の凝集剤から選択することであることを特徴とする。
一態様では、前記物性の推奨値と同じまたは近い物性を有する凝集剤を前記データベース内の複数の凝集剤から選択することは、粘度およびイオン性指標を座標軸に持つ座標系上に、前記物性の推奨値から特定される推奨点をプロットし、前記推奨点を中心とするターゲット範囲内に存在する凝集剤を、前記座標系上の複数の凝集剤から選択することであることを特徴とする。
一態様では、前記学習済みモデルは、複数種の懸濁液の複数の性状と、正解ラベルとしての複数種の凝集剤の物性の複数の値を含む訓練データを用いて、機械学習により構築されたモデルであることを特徴とする。
【0013】
一態様では、懸濁液に添加すべき凝集剤を選択するための装置であって、機械学習により構築された学習済みモデルを有し、前記懸濁液の性状を前記学習済みモデルに入力し、凝集剤の物性の推奨値を前記学習済みモデルから出力する物性算定部と、データベースを有し、前記物性の推奨値に基づいて、前記懸濁液に添加すべき凝集剤を、前記データベース内の複数の凝集剤から選択する凝集剤決定部と、前記選択された凝集剤を溶媒に溶解させる凝集剤溶解槽と、前記溶媒に溶解した前記凝集剤を懸濁液に添加して凝集フロックを形成する凝集槽と、前記凝集フロックが形成された前記懸濁液を脱水する脱水装置と、
を備えていることを特徴とする脱水処理用の凝集剤を選択する装置が提供される。
【0014】
一態様では、懸濁液に添加すべき凝集剤を選択するための凝集剤選択装置であって、機械学習により構築された学習済みモデルを有し、前記懸濁液の性状を前記学習済みモデルに入力し、凝集剤の物性の推奨値を前記学習済みモデルから出力する物性算定部と、データベースを有し、前記物性の推奨値に基づいて、前記懸濁液に添加すべき凝集剤を、前記データベース内の複数の凝集剤から選択する凝集剤決定部を備えていることを特徴とする凝集剤選択装置が提供される。
【0015】
一態様では、前記データベースは、複数の凝集剤の識別名称、および前記複数の凝集剤のそれぞれの複数の物性のデータを含むことを特徴とする。
一態様では、凝集剤の前記物性は、凝集剤の粘度およびイオン性指標であり、前記イオン性指標は凝集剤のカチオン度またはアニオン度またはコロイド当量値であることを特徴とする。
一態様では、前記凝集剤決定部は、前記物性の推奨値と同じまたは近い物性を有する凝集剤を、前記データベース内の複数の凝集剤から選択するように構成されていることを特徴とする。
一態様では、前記凝集剤決定部は、粘度およびイオン性指標を座標軸に持つ座標系上に、前記物性の推奨値から特定される推奨点をプロットし、前記推奨点を中心とするターゲット範囲内に存在する凝集剤を、前記座標系上の複数の凝集剤から選択するように構成されていることを特徴とする。
一態様では、前記学習済みモデルは、複数種の懸濁液の複数の性状と、正解ラベルとしての複数種の凝集剤の物性の複数の値を含む訓練データを用いて、機械学習により構築されたモデルであることを特徴とする。
【0016】
一態様では、上記凝集剤選択装置と、前記凝集剤選択装置によって選択された凝集剤を溶媒に溶解させる凝集剤溶解槽と、前記溶媒に溶解した前記凝集剤を懸濁液に添加して凝集フロックを形成する凝集槽と、前記凝集フロックが形成された前記懸濁液を脱水する脱水装置を備えていることを特徴とする脱水処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、学習済みモデルから出力された凝集剤の物性の推奨値に基づいて、処理対象の懸濁液に適した凝集剤が選択される。特に、本発明によれば、物性の推奨値と同じまたは近い物性を有する凝集剤を、市場で入手可能な多くの凝集剤の中から選択することができる。結果として、処理対象の懸濁液に適した凝集剤を用いて凝集フロックを形成し、脱水装置で含水率の低い脱水ケーキを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】脱水処理システムの一実施形態を示す模式図である。
図2】データベースの一例を示す模式図である。
図3】クラウドサーバとして機能する凝集剤選択装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、懸濁液を脱水するための脱水処理システムの一実施形態を示す模式図である。懸濁液の例としては、汚泥、食品加工時に排出される廃液、紙などの工業製品加工時に排出される廃液などが挙げられる。以下の実施形態の説明では、懸濁液として汚泥が使用されるが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。汚泥の例としては、初沈汚泥、終沈汚泥、混合生汚泥、上水汚泥、下水汚泥、水処理余剰汚泥、し尿浄化槽汚泥、農魚業集落排水処理汚泥などが挙げられる。
【0020】
図1に示すように、脱水処理システムは、懸濁液としての汚泥が貯留される貯留槽1と、凝集剤を汚泥に添加して凝集フロックを形成する凝集槽2と、凝集フロックが形成された汚泥を濃縮させる濃縮装置5と、濃縮された汚泥を脱水する脱水装置7を備えている。汚泥は、貯留槽1、凝集槽2、濃縮装置5、脱水装置7の順に移送される。
【0021】
汚泥は、まず、貯留槽1から凝集槽2に供給される。凝集槽2内の汚泥には、凝集剤が添加され、攪拌羽根2aの回転によって凝集剤と汚泥とが攪拌される。凝集槽2内で凝集剤と汚泥を攪拌することにより、汚泥内の懸濁物質が集合した凝集フロックが形成される。凝集フロックが形成された汚泥は、濃縮装置5に移送される。濃縮装置5は、汚泥内の水分を減少させることにより、汚泥を濃縮する装置である。濃縮装置5として、ベルト型濃縮機のような公知の濃縮装置を用いることができる。濃縮装置5は、省略されることもある。
【0022】
濃縮された汚泥は、脱水装置7に移送される。脱水装置7は、汚泥を圧搾することで水分を汚泥から除去し、脱水された汚泥である脱水ケーキを生成する。脱水装置7の例としては、スクリュープレス型脱水装置、ベルトプレス型脱水装置、フィルタープレス型脱水装置などの公知の脱水装置が使用される。
【0023】
脱水処理システムは、汚泥に添加すべき凝集剤を選択するための凝集剤選択装置10をさらに備えている。凝集剤選択装置10は、記憶装置10aと演算装置10bを有する。記憶装置10aは、その内部に、プログラム11と、機械学習により構築された学習済みモデル12と、複数の凝集剤の情報を含むデータベース15を格納している。演算装置10bは、プログラム11に含まれる命令に従って演算を実行するように構成され、さらに学習済みモデル12に従って演算を実行するように構成されている。記憶装置10aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置10bの例としては、CPU(中央演算装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、凝集剤選択装置10の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0024】
脱水処理システムは、凝集剤選択装置10によって選択された凝集剤を溶媒に溶解させる凝集剤溶解槽17をさらに備えている。凝集剤溶解槽17は、その内部に攪拌羽根17aを有している。一般に、凝集剤は、粉体または濃縮液の形態である。したがって、凝集剤を溶媒(例えば水)内に投入し、攪拌羽根17aの回転によって凝集剤と溶媒とを混合することで、凝集槽2で使用可能な凝集剤が得られる。凝集剤溶解槽17で生成された凝集剤は、凝集槽2内の汚泥に添加される。凝集剤溶解槽17のタイプは特に限定されないが、凝集剤溶解槽17として瞬間溶解装置を使用することができる。瞬間溶解装置は、攪拌ではなく、ろ過方式やすりつぶしの方法を用いる場合がある。瞬間溶解装置は市場で入手可能であり、または自作することも可能である。用いる凝集剤溶解槽17は、現場の対象汚泥性状の変動頻度に基づいて、選定される。
【0025】
凝集剤選択装置10は、その内部に仮想的に構築された物性算定部21および凝集剤決定部22を備えている。物性算定部21は記憶装置10a内に格納された上記学習済みモデル12を有し、凝集剤決定部22は記憶装置10a内に格納された上記データベース15を有する。データベース15は、複数の凝集剤の識別名称、およびこれら複数の凝集剤のそれぞれの複数の物性のデータを含む。演算装置10bは、物性算定部21と凝集剤決定部22の両方に共有されている。
【0026】
凝集剤には、通常、高分子凝集剤が使用される。各凝集剤の識別名称は、例えば、商品名、銘柄、品番などであり、各凝集剤に一意に付されたものである。各凝集剤の物性は、凝集剤の粘度およびイオン性指標を少なくとも含み、イオン性指標はカチオン度またはアニオン度またはコロイド当量値である。
【0027】
凝集剤の粘度とは、凝集剤を特定濃度で水媒体に溶解して測定した数値であり例えば、単位mPa・sで表される。水媒体としては水道水、脱イオン水などが使用され、溶解濃度は一般的には0.1~1.0%である。粘度測定器には回転粘度計(B型粘度計)が使用されることが多い。溶解条件が異なると粘度の値も違ってくるので、結果を比較するには統一した溶解方法にしておく必要がある。また、脱イオン水などに溶解して粘度を測定すると得られる数値幅が広くなり再現性が低下する場合があるので、所定濃度の無機中性塩を添加した水溶液で測定した塩粘度を使用することも行われている。無機中性塩としては硝酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが使用されている。高分子凝集剤の粘度は分子量とある程度の相関があり分子量が高くなると粘度も高くなる。一般に分子量(粘度)が高くなるほど凝集時の架橋能力が高くなるので有効であるが、汚泥の脱水機によっては必ずしも分子量(粘度)が高い方が好ましいわけではないので、選定においては重要な指標である。
【0028】
次にイオン性指標としてアニオン度、カチオン度については、凝集剤を構成する各単量体成分のうちアニオン基を有する単量体のモル%をアニオン度、カチオン基を有する単量体のモル%をカチオン度と称する。汚泥脱水に使用されるカチオン系高分子凝集剤について述べるとカチオン基を有する単量体の比率が高いものを高カチオン(強カチオン)と言い、低いものを低カチオン(弱カチオン)、中程度のものを中カチオンと一般的に称している。カチオン系高分子凝集剤のカチオン性部分以外はノニオン系単量体や一部アニオン系単量体が共重合されている。なお、一般的に分子中にカチオン性基とアニオン性基の両方を有するものを両性高分子凝集剤と呼んでいる。
【0029】
カチオン性単量体としては、以下のような各種のアクリレートモノマーまたはメタクリレートモノマーの中和塩、あるいは四級化物が挙げられる。具体的には、ジメチルアミノエチルアクリレートまたはメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートまたはメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリルアミドまたはメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドまたはメタクリルアミドやこれらのハロゲン化水素、硫酸、硝酸、酢酸などによる中和塩、ハロゲン化アルキル、ベンジルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸などによる四級化物などが挙げられる。
【0030】
ノニオン性単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0031】
アニオン性単量体としては、アニオン性ビニルモノマーが好ましく、具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミドエタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタアクリルアミドエタンスルホン酸、2-メタアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4-アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2-メタクリロイルオキエタンスルホン酸、3-メタアクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4-メタアクリロイルオキシブタンスルホン酸及びこれらのアルカリ金属などの金属塩またはアンモニウム塩が挙げられる。
【0032】
近年、難脱水性汚泥の脱水に良く使用されているポリアミジンは全体がカチオン基から構成されておりカチオン度は100モル%である。
コロイド当量値は高分子凝集剤を水溶液にした場合イオン基が全て解離しなかったり、他の官能基と相殺されてしまう場合を考慮してコロイド滴定法にて実際の解離の状況を測定する標準的な方法である。カチオン性高分子凝集剤の場合には、例えば下水道試験法に測定手順が記載されている。
また高分子凝集剤はブレンドして使用されることもあるが、このような場合には各高分子凝集剤のカチオン度(コロイド当量値)を配合比により計算した値を使用すればよい。
【0033】
物性算定部21は、貯留槽1内の汚泥(すなわち処理対象の汚泥)に適した凝集剤の物性の推奨値を学習済みモデル12に従って生成するように構成される。処理対象の汚泥に適した凝集剤とは、後段の脱水装置7によって生成される脱水ケーキの含水率が目標範囲内となるような凝集剤である。すなわち、凝集槽2にて良好な凝集フロックが形成されると、脱水装置7から排出される脱水ケーキの含水率は目標範囲内に収まることが予想される。脱水ケーキの含水率の目標範囲は、作業員によって予め定められる。
【0034】
物性算定部21は、凝集剤が投入される汚泥(すなわち処理対象の汚泥)の性状を学習済みモデル12に入力し、学習済みモデル12に従って演算を実行することで、凝集剤の物性の推奨値を学習済みモデル12から出力するように構成されている。汚泥の性状は、以下に示す項目の少なくとも1つを含む。
・TS(g/L):Total Solids
・SS(g/L):Suspended Solids
・CST(sec):Capillary Suction Time
・コロイド荷電(meq/L)
・導電率(mS/m)
・アルカリ度(mg/L)
・pH
・VSS(%):volatile suspended solids
・VTS(%):Volatile Total Solids
・繊維分(%)
・粗粒子(%)
・無機凝集剤の添加量
・無機凝集剤添加有無
【0035】
物性算定部21は、汚泥の性状に加えて、以下に示す項目のうちのいずれか1つからなる付加情報をさらに学習済みモデル12に入力してもよい。
・汚泥の取得地域
・汚泥処理の対象分野(例えば、下水、食品など)
・脱水装置7の種類
【0036】
凝集剤の上記性状は、貯留槽1にて作業員が測定器を用いて測定した値を物性算定部21に手作業で入力するか、または測定用センサを貯留槽1に設置し、汚泥性状の測定データを測定用センサから物性算定部21に自動で送信し、入力してもよい。
【0037】
物性算定部21は、上述した汚泥の性状(および付加情報)を学習済みモデル12に入力し、学習済みモデル12に従って演算を実行することで、凝集剤の物性の推奨値を算定する。物性の推奨値は、凝集剤決定部22に送られる。凝集剤決定部22は、物性の推奨値に基づいて、処理対象の汚泥に添加すべき凝集剤をデータベース15内の複数の凝集剤から選択するように構成されている。
【0038】
図2は、データベース15の一例を示す模式図である。データベース15は、複数の凝集剤A~Hの識別名称、およびこれら複数の凝集剤A~Hのそれぞれの複数の物性のデータを含む。本実施形態では、データベース15は、粘度およびイオン性指標を座標軸に持つ座標系の形態で表されており、複数の凝集剤A~Hは座標系上に予めプロットされている。図2に示す例では、イオン性指標は、凝集剤のカチオン度およびアニオン度[mol%]で表されている。一実施形態では、イオン性指標は、凝集剤のコロイド当量値[meq/g]で表されてもよい。カチオン系凝集剤またはアニオン系凝集剤のいずれかのみを使用することが予定されている場合には、データベース15のイオン性指標は、凝集剤のカチオン度またはアニオン度またはコロイド当量値のいずれか一つのみで表されてもよい。
【0039】
凝集剤決定部22は、物性算定部21によって決定された物性の推奨値と同じまたは近い物性を有する凝集剤を、データベース15内の複数の凝集剤から選択し、選択された凝集剤の識別名称を出力するように構成されている。図2に示す実施形態では、凝集剤決定部22は、物性の推奨値から定まる推奨点P1を座標系上にプロットし、推奨点P1を中心とするターゲット範囲R内に存在する凝集剤を、座標系上の複数の凝集剤から選択する。推奨点P1の座標系上の位置は、物性の推奨値を構成する粘度およびカチオン度またはアニオン度またはコロイド当量値から特定される。ターゲット範囲Rは、粘度の予め定められた範囲と、イオン性指標の予め定められた範囲によって定義された矩形領域である。一実施形態では、ターゲット範囲Rは、推奨点P1を中心とする円形領域であってもよい。ターゲット範囲Rの大きさは、予め定められているが、適宜変更可能である。また、ターゲット範囲Rは、所定の大きさでもよいし、学習済みモデルの評価指標を基準に決定し、例えば平均絶対誤差・二乗平均平方根誤差と同じ値にすることや、係数倍にするようにしてもよい。
【0040】
図2に示す例では、ターゲット範囲R内に凝集剤Fが存在する。したがって、凝集剤決定部22は、汚泥に添加すべき凝集剤として凝集剤Fを選択し、凝集剤Fの識別名称を出力する。凝集剤Fは、言い換えれば、処理対象の汚泥の凝集フロック形成に推奨される凝集剤である。
【0041】
凝集剤Fは、図1に示す凝集剤溶解槽17内に投入され、凝集剤Fと溶媒(例えば水)とが混合されることで、適切な濃度の凝集剤Fが生成される。このようにして得られた凝集剤Fは凝集槽2(図1参照)に投入され、汚泥と混合されることで凝集フロックを形成する。本実施形態によれば、凝集剤Fは物性の推奨値に基づいて決定されているので、後段の脱水装置7で汚泥が適切に脱水され、脱水ケーキの含水率は所定の目標範囲内に収まることが期待される。
【0042】
新たな凝集剤のデータは、データベース15に追加することが可能である。例えば、新商品として市場で入手可能な凝集剤のデータを、その物性に基づいてデータベース15の座標系上にプロットすることにより、その新しい凝集剤のデータを簡単にデータベース15に追加することが可能である。したがって、凝集剤決定部22は、物性の推奨値と同じまたは近い物性を有する凝集剤を多くの凝集剤の中から選択することができる。結果として、処理対象の汚泥に適した凝集剤を用いて凝集フロックを形成し、脱水装置7で含水率の低い脱水ケーキを生成することができる。
【0043】
ターゲット範囲R内に複数の凝集剤が存在することもありうる。そのような場合には、凝集剤決定部22は、推奨される凝集剤として、ターゲット範囲R内に存在する複数の凝集剤を選択し、選択された複数の凝集剤のそれぞれの識別名称を出力する。この場合、推奨点P1からの距離が短い順に優先順位を付けて複数の凝集剤の識別名称を出力してもよい。汚泥に実際に添加される凝集剤は、凝集剤決定部22によって選択された複数の凝集剤のすべてであってもよいし、またはいずれか1つであってもよい。
【0044】
複数の凝集剤を汚泥に添加する場合は、これら凝集剤の濃縮液および/または粉体を混合した後に凝集剤溶解槽17に投入してもよいし、あるいは凝集剤の濃縮液および/または粉体を混合せずに別々に凝集剤溶解槽17に投入し、凝集剤溶解槽17内で混合してもよい。
【0045】
一実施形態では、凝集剤決定部22は、座標系上に存在する複数の凝集剤のうち、液状の凝集剤、粉体状の凝集剤、ポリアミジン系凝集剤、および架橋系または架橋系でない凝集剤のうち少なくとも1つを選択し、選択された凝集剤の識別名称を出力してもよい。
【0046】
次に、学習済みモデル12の作成方法について説明する。学習済みモデル12は、訓練データを用いて、機械学習により構築されたモデルである。訓練データは、複数種の汚泥(懸濁液)の複数の性状と、正解ラベルとしての複数種の凝集剤の物性の複数の値を含む。複数種の凝集剤は、複数種の汚泥にそれぞれ対応している。すなわち、各凝集剤は、対応する汚泥の凝集フロック形成に使用され、良好な脱水結果が得られたものである。複数種の汚泥とは、性状の異なる汚泥をいい、成分が同じであって性状が異なる汚泥や、成分および性状が異なる汚泥も含まれうる。
【0047】
訓練データに使用される複数種の汚泥は、図1に示す脱水処理システムまたは別の脱水処理システムで実際に処理された汚泥(懸濁液)である。これら汚泥の性状の具体的項目は、学習済みモデル12に入力される上述した性状の項目と同じである。汚泥の性状に加えて、上述した付加情報(例えば汚泥の取得地域)が学習済みモデル12に入力される場合には、訓練データには付加情報の同じ項目がさらに含まれる。汚泥の性状および付加情報は、予測したい凝集剤の物性の推奨値を導出するための説明変数である。
【0048】
正解ラベルとしての凝集剤の物性の値は、目的変数であり、より具体的には、脱水装置7によって実際に生成された脱水ケーキの含水率が目標範囲内に収めることができた凝集剤の物性値である。正解ラベルに使用される複数種の凝集剤は、複数種の汚泥に実際にそれぞれ添加された凝集剤である。訓練データに使用されるこれら複数種の凝集剤は、説明変数としての上記実際に処理された複数種の汚泥にそれぞれ関連付けられる。このようにして作成された訓練データは、凝集剤選択装置10の記憶装置10a内に格納される。訓練データは、学習データとも呼ばれる。
【0049】
物性算定部21は、上記訓練データを用いて、モデルを機械学習のアルゴリズムに従って作成する。機械学習によって構築されたモデルは、学習済みモデル12として、記憶装置10a内に格納される。機械学習アルゴリズムの例としては、SVR法(サポートベクター回帰法)、PLS法(部分最小二乗法:Partial Least Squares)、ディープラーニング法(深層学習法)、ランダムフォレスト法、決定木法、勾配ブースティング法、各種アンサンブル学習などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。学習済みモデル12の構造は、使用される機械学習によって異なる。例えば、ランダムフォレスト法が機械学習に使用される場合には、学習済みモデル12は決定木である。他の例では、ディープラーニング法が機械学習に使用される場合には、学習済みモデル12は、入力層と、複数の中間層(隠れ層)と、出力層を有するニューラルネットワークである。
【0050】
凝集剤選択装置10は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。前記少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。凝集剤選択装置10は、凝集槽2および脱水装置7が設置された工場内に配置されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークに接続されたクラウドサーバであってもよい。
【0051】
凝集剤選択装置10は、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークにより接続された少なくとも1つのコンピュータであってもよい。例えば、凝集剤選択装置10は、クラウドサーバであってもよく、あるいはエッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。物性算定部21と凝集剤決定部22は、別々の場所に設置された複数のコンピュータ内にそれぞれ構成されてもよい。物性算定部21と凝集剤決定部22のそれぞれは、記憶装置10aと演算装置10bを備えてもよい。
【0052】
図3は、クラウドサーバとして機能する凝集剤選択装置10の一実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図1および図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図3に示すように、凝集剤選択装置10は、凝集槽2および脱水装置7などが設置された処理施設から離れた遠隔地に配置されており、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークに接続されている。
【0053】
ユーザーは、端末装置30(例えば、ノートパソコン、スマートフォン、またはタブレット型デバイス)を通信ネットワークを経由して凝集剤選択装置10に接続することができる。端末装置30は、処理対象の汚泥の性状データを通信ネットワークを介して凝集剤選択装置10に送信し、汚泥の性状データは物性算定部21に入力される。凝集剤決定部22はその汚泥に最適な凝集剤をデータベース15内の複数の凝集剤から選択し、選択された凝集剤の識別名称を端末装置30に送信する。
【0054】
選択された凝集剤は、凝集槽2内の汚泥に添加され、凝集フロックを形成する。凝集フロックが形成された汚泥は、濃縮装置5により濃縮され、次いで脱水装置7により脱水される。脱水装置7から排出された脱水ケーキの含水率は、目標範囲内にあると推定される。したがって、凝集剤決定部22によって選択された凝集剤の物性値(粘度およびイオン性指標)は、物性算定部21に入力された汚泥の性状とともに、訓練データに追加されてもよい。
【0055】
処理対象の汚泥の性状データは、作業員により端末装置30に入力され、通信ネットワークを介して凝集剤選択装置10の物性算定部21に送信されてもよいし、または測定用センサを貯留槽1に設置し、測定用センサにより得られた汚泥の性状データを通信ネットワークを介して凝集剤選択装置10の物性算定部21に送信してもよい。
【0056】
このようにして、ユーザーは、遠隔地にいながら凝集剤選択装置10を使用することが可能である。端末装置30から凝集剤選択装置10にアクセスする方法は、アプリケーションを用いてもよいし、ウェブブラウザを用いてもよい。凝集剤選択装置10は、凝集剤選択装置10に登録された端末装置のみのアクセスを許容するセキュリティ機能を有してもよい。
【0057】
図3に示す実施形態では、凝集剤選択装置10は、通信ネットワークを経由して他の脱水処理システムに接続されている。これら他の脱水処理システムで使用された汚泥の性状のデータと、良好な脱水結果が得られた(すなわち脱水ケーキの含水率が目標範囲内に収まった)凝集剤の物性のデータは、通信ネットワークを介して凝集剤選択装置10に送信され、上述した訓練データに追加される。
【0058】
ユーザーは、端末装置30を操作して凝集剤選択装置10に指令を発して機械学習を実行させてもよい。さらに、凝集剤選択装置10は、定期的または不定期に、最新の訓練データを用いた機械学習を実行して学習済みモデル12を更新してもよい。例えば、脱水装置7により生成された脱水ケーキの含水率が目標範囲内に収まらなくなった場合には、凝集剤選択装置10は、機械学習を実行して学習済みモデル12を更新してもよい。
【0059】
今まで説明した実施形態では、懸濁液の例として汚泥が用いられているが、懸濁液は汚泥に限定されない。例えば、懸濁液は、果実、油等の食品の処理で排出される懸濁液、または古紙の再生処理などの工業製品の処理で排出される懸濁液あってもよい。
【0060】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 貯留槽
2 凝集槽
5 濃縮装置
7 脱水装置
10 凝集剤選択装置
11 プログラム
12 学習済みモデル
15 データベース
17 凝集剤溶解槽
21 物性算定部
22 凝集剤決定部
30 端末装置
図1
図2
図3