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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】希釈器
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20241210BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20241210BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241210BHJP
   B60L 50/72 20190101ALN20241210BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0662
H01M8/10 101
B60L50/72
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021197157
(22)【出願日】2021-12-03
(65)【公開番号】P2023083055
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】明本 斉
(72)【発明者】
【氏名】頭川 天洋
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-344476(JP,A)
【文献】特開2003-132915(JP,A)
【文献】特開2009-238762(JP,A)
【文献】特開2021-128877(JP,A)
【文献】特開2009-272090(JP,A)
【文献】特開2006-318821(JP,A)
【文献】特開2007-234387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04- 8/0668
B60L 50/70-50/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を画定する容器と、
前記内部空間を滞留室と希釈室に仕切る仕切壁と、
前記容器に設けられ、燃料電池から排出されたアノードオフガスを前記滞留室に流入させるアノードオフガス流入口と、
前記容器に設けられ、前記燃料電池から排出されたカソードオフガスを前記希釈室に流入させるカソードオフガス流入口と、
前記容器の内部において前記滞留室と前記希釈室とを連通させる連通口と、
を有し、前記アノードオフガスを前記カソードオフガスで希釈する希釈器であって、
水平面に沿う方向であって、前記容器の長手方向を第1方向とし、前記水平面に沿う方向の一つであって前記第1方向に直交する方向を第2方向とすると、
前記滞留室及び前記希釈室の各々は、前記第1方向の第1端から第2端に向けて延びるとともに前記仕切壁を挟んで前記第2方向に並ぶ部位を有しており、
前記アノードオフガス流入口は、前記滞留室における前記第1方向の第1端に配置され、
前記滞留室を前記第1方向に二等分する位置を前記滞留室の中間位置とすると、前記連通口は、前記第1方向において前記中間位置よりも前記第1方向の第2端に近い位置に配置され、前記連通口は、鉛直方向に対向する前記容器の内面を当該連通口の画定面の一部として形成されている希釈器。
【請求項2】
前記アノードオフガス流入口には、前記燃料電池に接続されたアノードオフガス排出路が接続されるとともに、前記アノードオフガス排出路には排気バルブが設けられ、前記排気バルブを一回開いたときに前記アノードオフガス排出路から前記アノードオフガス流入口を経由して前記滞留室に流入する前記アノードオフガスの量を排出量とすると、前記滞留室の容積は、前記排出量より大きい請求項1に記載の希釈器。
【請求項3】
前記容器は、前記鉛直方向に対向する底板及び天板を有し、
前記鉛直方向に対向する前記容器の内面は、前記底板によって形成される前記容器の内底面と、前記天板によって形成される前記容器の天井面であり、
前記アノードオフガス流入口は、前記容器の前記内底面から上側に離れている請求項1又は請求項2に記載の希釈器。
【請求項4】
前記連通口を経由して前記アノードオフガスが前記滞留室から前記希釈室に流れ出る方向を流出方向とすると、
前記カソードオフガス流入口は、前記流出方向において前記連通口と対向しない位置に配置されている請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の希釈器。
【請求項5】
前記連通口の開口面積は、前記滞留室の容積1リットルあたり650mm以上に設定されている請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の希釈器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノードオフガスをカソードオフガスで希釈して排出する希釈器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、希釈器を備える。希釈器は、燃料電池から排出されたアノードオフガスを、燃料電池から排出されたカソードオフガスで希釈して大気に排出する。
希釈器は容器を備える。容器の内側には、滞留室と希釈室が画定されている。滞留室には、燃料電池から排出されたアノードオフガスが流入する。アノードオフガスに含まれる水は、滞留室でアノードオフガスから分離されて滞留室に溜まる。
【0003】
希釈室には、燃料電池から排出されたカソードオフガスが流入する。滞留室に滞留するアノードオフガスの一部は、希釈室に流入する。希釈室では、カソードオフガスにアノードオフガスが混合される。希釈室で希釈されたアノードオフガスは希釈室の外へ排出される。
【0004】
希釈器内でのアノードオフガスの流れの急峻な変化や、アノードオフガスに水が巻き込まれることなどを原因として、様々な騒音が希釈器から発生する。希釈器の外部に漏れる騒音を低減するため、特許文献1には、希釈器の筐体の少なくとも一部が、複数枚の金属板をプレス加工して形成された積層部材で構成されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-272090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の希釈器は、希釈器の外部に漏れる騒音を低減するために、希釈器の部品点数の増加及び製造コストの増加を招いている。よって、希釈器は、希釈器の部品点数の増加及び製造コストの増加を招くことなく、騒音そのものの発生を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための希釈器は、内部空間を画定する容器と、前記内部空間を滞留室と希釈室に仕切る仕切壁と、前記容器に設けられ、燃料電池から排出されたアノードオフガスを前記滞留室に流入させるアノードオフガス流入口と、前記容器に設けられ、前記燃料電池から排出されたカソードオフガスを前記希釈室に流入させるカソードオフガス流入口と、前記容器の内部において前記滞留室と前記希釈室とを連通させる連通口と、を有し、前記アノードオフガスを前記カソードオフガスで希釈する希釈器であって、水平面に沿う方向であって、前記容器の長手方向を第1方向とし、前記水平面に沿う方向の一つであって前記第1方向に直交する方向を第2方向とすると、前記滞留室及び前記希釈室の各々は、前記第1方向の第1端から第2端に向けて延びるとともに前記仕切壁を挟んで前記第2方向に並ぶ部位を有しており、前記アノードオフガス流入口は、前記滞留室における前記第1方向の第1端に配置され、前記滞留室を前記第1方向に二等分する位置を前記滞留室の中間位置とすると、前記連通口は、前記第1方向において前記中間位置よりも前記第1方向の第2端に近い位置に配置され、前記連通口は、鉛直方向に対向する前記容器の内面を当該連通口の画定面の一部として形成されていることを要旨とする。
【0008】
アノードオフガス流入口から滞留室に流入したアノードオフガスは、滞留室において、流れの向きを大幅に変えることなく連通口に向けて第1方向へ流れる。その結果、滞留室に流入したアノードオフガスが、流れの向きを急峻に変えることを抑制できる。このため、希釈器は、流れの向きを急峻に変えること原因とした騒音の発生を抑制できる。また、アノードオフガスから分離された水は、滞留室に溜まる。連通口は、鉛直方向に対向する容器の内面を当該連通口の画定面の一部として形成されている。つまり、連通口は、容器の鉛直方向の寸法全体に亘って開口している。このため、連通口を経由して希釈室へ流れ出るアノードオフガスは、連通口の上側を通過するとともに、水は連通口の下側を通過する。つまり、アノードオフガスと水とは上下に分離されたまま連通口を通過する。このため、連通口付近でアノードオフガスに水が巻き込まれることを抑制できる。その結果、希釈器は、アノードオフガスに水が巻き込まれることを原因とした騒音の発生を抑制できる。したがって、希釈器は、希釈器の部品点数の増加及び製造コストの増加を招くことなく、騒音そのものの発生を抑制できる。
【0009】
希釈器について、前記アノードオフガス流入口には、前記燃料電池に接続されたアノードオフガス排出路が接続されるとともに、前記アノードオフガス排出路には排気バルブが設けられ、前記排気バルブを一回開いたときに前記アノードオフガス排出路から前記アノードオフガス流入口を経由して前記滞留室に流入する前記アノードオフガスの量を排出量とすると、前記滞留室の容積は、前記排出量より大きくてもよい。
【0010】
これによれば、滞留室にアノードオフガスが流入すると、滞留室に滞留しているアノードオフガスは、排出量に応じた容積で連通口を経由して滞留室の外へ押し出される。滞留室の容積が排出量より大きいほど、連通口から押し出されるアノードオフガスの流速は遅くなる。アノードオフガスが連通口を通過するとき、風切り音が発生する。この風切り音は、連通口から押し出されるアノードオフガスの流速を遅くするほど小さくなる。よって、滞留室の容積を排出量より大きくすることは、風切り音を小さくする。
【0011】
希釈器について、前記容器は、前記鉛直方向に対向する底板及び天板を有し、前記鉛直方向に対向する前記容器の内面は、前記底板によって形成される前記容器の内底面と、前記天板によって形成される前記容器の天井面であり、前記アノードオフガス流入口は、前記容器の前記内底面から上側に離れていてもよい。
【0012】
これによれば、アノードオフガス流入口から滞留室にアノードオフガスが流入したとき、内底面に溜まった水がアノードオフガスに巻き込まれることを抑制できる。このため、希釈器は、アノードオフガスに水が巻き込まれることを原因とした騒音の発生を抑制できる。
【0013】
希釈器について、前記連通口を経由して前記アノードオフガスが前記滞留室から前記希釈室に流れ出る方向を流出方向とすると、前記カソードオフガス流入口は、前記流出方向において前記連通口と対向しない位置に配置されていてもよい。
【0014】
これによれば、連通口を経由して滞留室から希釈室に流れ出るアノードオフガスと、カソードオフガス流入口から希釈室に流入するカソードオフガスとが衝突することを抑制できる。このため、希釈器は、アノードオフガスとカソードオフガスとが衝突することを原因とした騒音の発生を抑制できる。
【0015】
希釈器について、前記連通口の開口面積は、前記滞留室の容積1リットルあたり650mm以上に設定されていてもよい。
これによれば、滞留室にアノードオフガスが流入すると、滞留室に滞留しているアノードオフガスは連通口から押し出される。連通口の開口面積が大きいほど、連通口から押し出されるアノードオフガスの流速は遅くなる。アノードオフガスが連通口を通過するとき、風切り音が発生する。この風切り音は、連通口から押し出されるアノードオフガスの流速を遅くするほど小さくなる。よって、滞留室の容積1リットルあたり650mm以上に設定することは、風切り音を小さくする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、騒音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】燃料電池システムを示す概略構成図である。
図2】希釈器を示す斜視図である。
図3】希釈器の内部を示す斜視図である。
図4】希釈器の内部を示す図2の4-4線断面図である。
図5】希釈器の内部を示す図2の5-5線断面図である。
図6】希釈器の内部を示す図2の6-6線断面図である。
図7】連通口の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、希釈器を具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
<燃料電池システムの全体構成>
図1に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池スタック11、水素タンク12、エアコンプレッサ13、気液分離器14、排水タンク15、及び希釈器30を有する。また、燃料電池システム10は、アノードガス供給路16、カソードガス供給路17、第1排出路18、第2排出路19、排水路21、カソードオフガス排出路22、アノードガス循環路23、ガス排出路25及び排気バルブ24を有する。
【0019】
<燃料電池スタック>
燃料電池としての燃料電池スタック11は、複数の燃料電池セルをスタック化したものである。燃料電池セルは、固体分子型燃料電池である。燃料電池スタック11は、アノードガスである水素ガス、及びカソードガスである酸化剤ガスが供給されることによって発電する。酸化剤ガスは、空気である。
【0020】
<水素タンク、エアコンプレッサ、気液分離器、排水タンク>
水素タンク12は、水素ガスを貯蔵する。エアコンプレッサ13は、空気を圧縮する。気液分離器14は、燃料電池スタック11から排出されたアノードオフガスに含まれる水を、アノードオフガスから分離する。排水タンク15は、アノードオフガス及びカソードオフガスから分離された水を溜める。希釈器30は後に詳述する。
【0021】
<アノードガス供給路>
アノードガス供給路16は、燃料電池スタック11の図示しないアノードと水素タンク12を接続する。水素タンク12に貯留されているアノードガスは、水素タンク12から燃料電池スタック11に向けてアノードガス供給路16を流動する。
【0022】
<カソードガス供給路>
カソードガス供給路17は、燃料電池スタック11の図示しないカソードとエアコンプレッサ13を接続する。エアコンプレッサ13によって圧縮された空気は、カソードガス供給路17に供給される。エアコンプレッサ13によって圧縮された空気は、エアコンプレッサ13から燃料電池スタック11に向けてカソードガス供給路17を流動する。
【0023】
<第1排出路>
第1排出路18は、燃料電池スタック11の図示しないアノードと気液分離器14を接続する。燃料電池スタック11のアノードから排出されたアノードオフガスは、燃料電池スタック11のアノードから気液分離器14に向けて第1排出路18を流動する。アノードオフガスは、燃料電池スタック11で未反応の水素ガスと、水素と酸素とが反応したときに生成された水を主に含む。
【0024】
<第2排出路>
第2排出路19は、気液分離器14と希釈器30を接続する。上記第1排出路18と、上記気液分離器14と、第2排出路19とは、燃料電池スタック11と希釈器30を接続するアノードオフガス排出路20を構成する。
【0025】
気液分離器14から排出されたアノードオフガスは、気液分離器14から希釈器30に向けて第2排出路19を流動する。したがって、アノードオフガス排出路20の出口となる第2排出路19の出口からは、アノードオフガスが排出される。なお、気液分離器14でアノードオフガスから分離できなかった水は、第2排出路19を流動する。
【0026】
<ガス排出路>
ガス排出路25は、希釈器30に接続されている。
<排気バルブ>
排気バルブ24は、アノードオフガス排出路20に設けられている。具体的には、排気バルブ24は、アノードオフガス排出路20の第2排出路19に設けられている。排気バルブ24は、アノードオフガス排出路20の一部である第2排出路19を開閉する。排気バルブ24は、定常的に閉じられているが、気液分離器14に所定量のアノードオフガスが貯留されると瞬時的に開かれる。排気バルブ24が一回開くと、アノードオフガスが、気液分離器14から排出される。排気バルブ24が一回開かれたときに排出されるアノードオフガスの量を排出量とする。排出量は、燃料電池スタック11の容積と、排気バルブ24を開く前後での燃料電池スタック11の圧力差と、から算出できる。アノードオフガスの排出量の最大値は、実験等により予め確認されている。一例として、アノードオフガスの排出量の最大値は、燃料電池システム10の使用範囲内でのアノードオフガスの最大圧力と排気バルブ24の最長開時間とによって決められる。燃料電池スタック11の容積は、燃料電池セル一つ当たりの容積と、燃料電池セルの個数との積算値によって算出される。
【0027】
<排水路>
排水路21は、希釈器30と排水タンク15を接続する。希釈器30から排出された水は、排水路21を流動する。また、気液分離器14から排出されたアノードガスは、アノードガス循環路23からアノードガス供給路16に向けて流動する。
【0028】
<カソードオフガス排出路>
カソードオフガス排出路22は、燃料電池スタック11の図示しないカソードと希釈器30を接続する。カソードオフガスは、燃料電池スタック11から希釈器30に向けてカソードオフガス排出路22を流動する。カソードオフガスは、燃料電池スタック11で未反応の酸素を含む空気と、水素と酸素とが反応したときに生成された水を主に含む。
【0029】
<希釈器>
燃料電池スタック11から排出されたアノードオフガスは、希釈器30に流入する。詳細には、アノードオフガスは、第1排出路18、気液分離器14、及び第2排出路19を経由して希釈器30に流入する。また、燃料電池スタック11から排出されたカソードオフガスは、希釈器30に流入する。希釈器30は、希釈器30に流入したアノードオフガスの一部をカソードオフガスで希釈した排出ガスを排出する。排出ガスは、アノードオフガスとカソードオフガスの混合ガスである。
【0030】
図2図6に示すように、希釈器30は、容器31と、容器31の内部空間Sを仕切る仕切壁40と、を有する。仕切壁40は、容器31の内部空間Sを滞留室60と希釈室61の2つの部屋に仕切る。また、希釈器30は、連通口62を有する。連通口62は、滞留室60と希釈室61を連通させる。
【0031】
なお、希釈器30が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う2方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。以下の説明では、Z軸と平行な方向を鉛直方向Zともいい、X軸と平行な方向を第1方向Xともいう。また、Y軸と平行な方向を第2方向Yともいう。したがって、第2方向Yは、第1方向X及び鉛直方向Zの両方に直交する方向である。
【0032】
<容器>
図2及び図3に示すように、容器31は、第1方向Xに長手が延びる直方体状である。容器31の長手方向は第1方向Xと一致する。容器31の長手方向へ仮想的に直線状に延びる直線を第1仮想線L1とする。容器31の短手方向へ仮想的に直線状に延びる直線を第2仮想線L2とする。水平面上において、第1仮想線L1と第2仮想線L2は直交する。容器31の第1仮想線L1は、第1方向X、つまり容器31の長手方向へ延びる。したがって、第1方向Xは、水平面に沿う方向であって、容器31の長手方向であるといえる。容器31の第2仮想線L2は、第2方向Y、つまり容器31の短手方向へ延びる。したがって、第2方向Yは、水平面に沿う方向の一つであって、第1方向Xに直交する方向であるといえる。
【0033】
図2図6に示すように、容器31は鉛直方向Zに対向する底板32と天板33を有する。底板32及び天板33の各々は長四角板状である。底板32及び天板33の長縁は第1方向Xに延びる。底板32及び天板33の短縁は第2方向Yに延びる。底板32と天板33の鉛直方向Zの間隔は、第1方向X及び第2方向Yに一定であってもよいし、第1方向X及び第2方向Yの少なくとも一方において、一端から他端に向けて変化していてもよい。
【0034】
底板32は、板厚方向の一方面に内底面32aを有するとともに、板厚方向の他方面に外底面32bを有する。底板32の板厚方向は鉛直方向Zに一致する。天板33は、板厚方向の一方面に天井面33aを有するとともに、板厚方向の他方面に外端面33bを有する。天板33の板厚方向は鉛直方向Zに一致する。底板32の内底面32aと、天板33の天井面33aは鉛直方向Zに対向する。つまり、鉛直方向Zに対向する容器31の内面は、底板32によって形成される容器31の内底面32aと、天板33によって形成される容器31の天井面33aである。
【0035】
容器31は第2方向Yに対向する第1側板34と第2側板35を有する。第1側板34及び第2側板35の各々は長四角板状である。第1側板34及び第2側板35の長縁は第1方向Xに延びる。第1側板34及び第2側板35の短縁は鉛直方向Zに延びる。第1側板34は、板厚方向の一方面に内面34aを有するとともに、板厚方向の他方面に外面34bを有する。第1側板34の板厚方向は第2方向Yに一致する。第2側板35は、板厚方向の一方面に内面35aを有するとともに、板厚方向の他方面に外面35bを有する。第2側板35の板厚方向は第2方向Yに一致する。
【0036】
容器31は第1方向Xに対向する第1端板36と第2端板37を有する。第1端板36及び第1端板36は長四角板状である。第1端板36及び第2端板37の長縁は第2方向Yに延びる。第1端板36及び第2端板37の短縁は鉛直方向Zに延びる。第1端板36は、板厚方向の一方面に内面36aを有するとともに、板厚方向の他方面に外面36bを有する。第1端板36の板厚方向は第1方向Xに一致する。第2端板37は、板厚方向の一方面に内面37aを有するとともに、板厚方向の他方面に外面37bを有する。第2端板37の板厚方向は第1方向Xに一致する。
【0037】
底板32、天板33、第1側板34、第2側板35、第1端板36、及び第2端板37は、容器31を構成する板である。容器31の長手方向は、底板32、天板33、第1側板34及び第2側板35の長縁の延びる方向である。
【0038】
内部空間Sは、底板32の内底面32aと、天板33の天井面33aと、第1側板34の内面34aと、第2側板35の内面35aと、第1端板36の内面36aと、第2端板37の内面37aとによって画定されている。したがって、容器31は、内部空間Sを画定する。内部空間Sは、容器31の長手方向、つまり第1方向Xに長手の延びる空間である。
【0039】
<仕切壁>
仕切壁40は、第1仕切部41と第2仕切部42とを有する。第1仕切部41及び第2仕切部42は長四角板状である。仕切壁40は、第1仕切部41と第2仕切部42を組み合わせて形成されている。鉛直方向Zから仕切壁40を見ると、仕切壁40はL形状である。
【0040】
第1仕切部41は、板厚方向の一方面に第1内面41aを有するとともに、板厚方向の他方面に第1外面41bを有する。第1仕切部41の長縁は、第2方向Yに延びる。第1仕切部41の短縁は、鉛直方向Zに延びる。
【0041】
第1仕切部41は、長縁方向の一端縁に第1接合縁41cを有するとともに、長縁方向の他端縁に第1非接合縁41dを有する。第1仕切部41の第1接合縁41cは、第1側板34の内面34aに接合されている。第1側板34の長縁方向中間の位置を第1中間位置P1とする。第1仕切部41の第1接合縁41cは、第1方向Xにおける第1中間位置P1よりも第2端板37寄りの位置にある。第1仕切部41の第1非接合縁41dは、第2方向Yにおいて第2仕切部42から離れている。つまり、第1非接合縁41dは、第2仕切部42に対し接合されていない。また、第1非接合縁41dは、第2方向Yにおいて第2仕切部42に対向している。
【0042】
第2仕切部42は、板厚方向の一方面に第2内面42aを有するとともに、板厚方向の他方面に第2外面42bを有する。第2仕切部42の長縁は、第1方向Xに延びる。第2仕切部42の短縁は、鉛直方向Zに延びる。第1仕切部41の第1非接合縁41dは、第2仕切部42の第2内面42aから第2方向Yに離れている。
【0043】
第2仕切部42は、長縁方向の一端縁に第2接合縁42cを有するとともに、長縁方向の他端縁に第2非接合縁42dを有する。第2仕切部42の第2接合縁42cは、第1端板36の内面36aに接合されている。第1端板36の長縁方向中間の位置を第2中間位置P2とする。第2仕切部42の第2接合縁42cは、第2方向Yにおける第2中間位置P2よりも第2側板35寄りの位置にある。第2仕切部42の第2非接合縁42dは、第1方向Xにおいて第2端板37の内面37aに対向している。
【0044】
第1仕切部41及び第2仕切部42の下端縁は底板32の内底面32aに接合されている。第1仕切部41及び第2仕切部42の上端縁は天板33の天井面33aに接合されている。
【0045】
仕切壁40は、内部空間Sを滞留室60と希釈室61の2つの部屋に仕切る。滞留室60は、底板32の内底面32aと、天板33の天井面33aと、第1側板34の内面34aと、第1端板36の内面36aと、第1仕切部41の第1内面41aと、第2仕切部42の第2内面42aとによって画定された空間である。希釈室61は、内底面32aと、天井面33aと、内面34aと、内面35aと、内面36aと、内面37aと、第1外面41bと、第2外面42bとによって画定された空間である。
【0046】
滞留室60は、第1端板36から第2端板37に向けて長手が延びる空間である。滞留室60は、第1方向Xに長手が延びる直方体状に画定されている。滞留室60は、第1方向Xにおいて、第2方向Yへの寸法及び鉛直方向Zへの寸法の各々が一定である。ただし、滞留室60は、第2方向Yへの寸法、及び鉛直方向Zへの寸法の少なくとも一方において一定でなくてもよい。
【0047】
第1仕切部41を第2方向Yへ仮想的に延長した面を仮想面Mとする。希釈室61は、第1室61aと、第2室61bとから構成されている。第1室61aは、第1端板36の内面36aと、第2仕切部42の第2外面42bと、仮想面Mと、第2側板35の内面35aと、底板32の内底面32aと、天板33の天井面33aとによって画定されている。第2室61bは、仮想面Mと、第1仕切部41の第1外面41bと、第1側板34の内面34aと、第2端板37の内面37aと、第2側板35の内面35aと、底板32の内底面32aと、天板33の天井面33aとによって画定されている。
【0048】
第1室61aは、第1方向Xに長手の延びる直方体状である。第2室61bは、第2方向Yに長手の延びる直方体状である。第1室61aは、第2仕切部42を挟んで第2方向Yに滞留室60と並ぶ空間である。したがって、滞留室60及び希釈室61の各々は、第1方向Xの第1端である第1端板36から、第2端である第2端板37に向けて延びるとともに、仕切壁40を挟んで第2方向Yに並ぶ部位を有しているといえる。
【0049】
第2室61bは、第1仕切部41を挟んで第1方向Xに滞留室60と並ぶ空間である。また、第2室61bは、仮想面Mを挟んで第1方向Xに第1室61aと並ぶ空間である。鉛直方向Zに希釈室61を見て、希釈室61はL形状に画定されている。
【0050】
希釈室61は、第1方向Xにおいて、第2方向Yへの寸法及び鉛直方向Zへの寸法の各々が一定である。ただし、希釈室61は、第2方向Yへの寸法、及び鉛直方向Zへの寸法の少なくとも一方において一定でなくてもよい。滞留室60の容積は、希釈室61の容積より小さい。
【0051】
<連通口>
連通口62は、容器31の内部において滞留室60と希釈室61を連通させる。連通口62は、第1非接合縁41dと、第2仕切部42の第2内面42aのうち、第1非接合縁41dに対し第2方向Yに対向した一部と、底板32の内底面32aと、天板33の天井面33aとの間に画定されている。したがって、連通口62は、第1非接合縁41dと、第2仕切部42の第2内面42aの一部と、底板32の内底面32aと、天板33の天井面33aとを、連通口62の画定面として形成されている。
【0052】
連通口62は、第1非接合縁41dが第2仕切部42の第2内面42aから第2方向Yに離れることで画定されているともいえる。連通口62は、底板32の内底面32aと、天板33の天井面33aとを繋ぐように鉛直方向Z全体に亘って開口している。つまり、連通口62は、鉛直方向Zに対向する容器31の内面を当該連通口62の画定面の一部として形成されている。
【0053】
図6に示すように、第1方向Xに連通口62を見た場合、第1非接合縁41dに沿う直線と、第2内面42aに沿う直線と、内底面32aに沿う直線と、天井面33aに沿う直線とで、四角形が囲まれる。この四角形の面積を、連通口62の開口面積とする。この連通口62の開口面積は、滞留室60の容積1リットルあたり650mm以上となるように設定されている。
【0054】
ここで、滞留室60を第1方向Xに二等分する位置を滞留室60の中間位置Pとする。連通口62は、第1方向Xにおいて中間位置Pよりも第1方向Xの第2端である第2端板37に近い位置に配置されている。具体的には、連通口62は、滞留室60を画定する仕切壁40に配置されている。
【0055】
容器31は、アノードオフガス流入口50と、カソードオフガス流入口51と、排出口52と、排水口53と、を有する。
<アノードオフガス流入口>
図2図6に示すように、アノードオフガス流入口50は、燃料電池スタック11から排出されたアノードオフガスを滞留室60に流入させる。アノードオフガス流入口50は、第1端板36に配置されている。つまり、アノードオフガス流入口50は、滞留室60における第1方向Xの第1端となる第1端板36に配置されている。上記したように、連通口62は、滞留室60を画定する仕切壁40に配置されている。したがって、アノードオフガス流入口50と連通口62は、第1方向Xにおいて、滞留室60の両端に配置されている。
【0056】
アノードオフガス流入口50は、第1端板36を板厚方向に貫通している。アノードオフガス流入口50は、円形孔である。アノードオフガス流入口50は、鉛直方向Zでの第1端板36の位置のうち、第1端板36の上端に近い位置に配置されている。アノードオフガス流入口50は、鉛直方向Zにおいて底板32の内底面32aから上側に離れている。アノードオフガス流入口50は、鉛直方向Zにおいて底板32の内底面32aから上側に離れるほど好ましい。なお、第1端板36の位置のうち、第2方向Yでの位置は任意である。
【0057】
アノードオフガス排出路20は、アノードオフガス流入口50に接続されている。つまり、アノードオフガス流入口50には、燃料電池スタック11に接続されたアノードオフガス排出路20が接続されている。アノードオフガス排出路20の第2排出路19は、気液分離器14と希釈器30を接続したアノードオフガス排出管19aによって画定されている。そして、排気バルブ24が開くと、希釈器30に向けて気液分離器14からアノードオフガスが排出される。第2排出路19を流動するアノードオフガスは、アノードオフガス流入口50を経由して滞留室60に流入する。排気バルブ24が一回開かれたときのアノードオフガスの排出量は、アノードオフガス排出路20からアノードオフガス流入口50を経由して滞留室60に流入するアノードオフガスの量である。そして、アノードオフガスの排出量は、滞留室60の容積よりも小さい。言い換えると、滞留室60の容積は、アノードオフガスの排出量よりも大きい。アノードオフガスの排出量は、燃料電池システム10の使用範囲内において、排気バルブ24の一回の開時間が最長でアノードオフガスの圧力が最大のとき、最大となる。そして、滞留室60の容積は、アノードオフガスの最大排出量よりも大きく設定されているとよい。
【0058】
このとき、アノードオフガスに含まれる水も滞留室60に流入する。アノードオフガスに含まれる水は、滞留室60でアノードオフガスから分離される。アノードオフガスから分離された水は、滞留室60における内底面32a上に溜まる。
【0059】
排気バルブ24が閉じているときは、滞留室60にはアノードオフガスが滞留している。排気バルブ24が開いて、アノードオフガス流入口50から滞留室60にアノードオフガスが流入すると、滞留室60に滞留しているアノードオフガスは、上記排出量に応じた容積で、連通口62を経由して滞留室60の外へ押し出される。
【0060】
連通口62は、滞留室60と希釈室61を第1方向Xに連通させている。このため、連通口62から押し出されたアノードオフガスは、滞留室60から希釈室61に向けて第1方向Xに流れる。連通口62を経由してアノードオフガスが滞留室60から希釈室61に流れ出る方向を流出方向とする。この流出方向は第1方向Xに一致する。滞留室60の内底面32a上に溜まった水は、連通口62を経由して滞留室60から希釈室61に流れ出る。
【0061】
<カソードオフガス流入口>
カソードオフガス流入口51は、燃料電池スタック11から排出されたカソードオフガスを希釈室61に流入させる。カソードオフガス流入口51は、天板33に配置されている。カソードオフガス流入口51は、円形孔である。カソードオフガス流入口51は、天板33を板厚方向に貫通している。カソードオフガス流入口51は、天板33での位置のうち、第1方向Xにおける第1端板36寄りに配置されている。したがって、カソードオフガス流入口51は、連通口62からのアノードオフガスの流出方向において、連通口62と対向しない位置に配置されているといえる。
【0062】
カソードオフガス流入口51にはカソードオフガス排出路22が接続されている。なお、カソードオフガス排出路22は、燃料電池スタック11と希釈器30を接続したカソードオフガス排出管22aによって画定されている。そして、カソードオフガス排出路22を流動するカソードオフガスは、カソードオフガス流入口51を経由して希釈室61に流入する。
【0063】
カソードオフガス流入口51から希釈室61に流入したカソードオフガスは、底板32の内底面32a、天板33の天井面33a、第2側板35の内面35a、及び第2仕切部42の第2外面42bに接触して、第2端板37に向かうように向きを変える。
【0064】
希釈室61に流入したカソードオフガスは、第1方向Xへ第1室61aを流動した後、第2室61bを流動する。第2室61bでは、カソードオフガスは、底板32の内底面32a、天板33の天井面33a、第2端板37の内面37a、及び第1仕切部41の第1外面41bに接触する。この接触により、カソードオフガスの流れの向きが変わる。第2室61bでのカソードオフガスの流動方向は第2方向Yとなる。そして、第2室61bに流入したカソードオフガスは、排出口52に向けて第2室61bを流動する。
【0065】
<排出口>
排出口52は、容器31の第2端板37に配置されている。排出口52は、第2端板37の位置のうち、第2方向Yでの第1側板34寄りに配置されている。排出口52は、第2端板37を板厚方向に貫通する。排出口52にはガス排出路25が接続されている。なお、ガス排出路25は、ガス排出管25aによって画定されている。ガス排出管25aは、希釈器30に接続されている。
【0066】
希釈室61に流入したカソードオフガスは、第1室61a及び第2室61bを流動して、排出口52に向けて流動する。滞留室60から押し出されたアノードオフガスは、連通口62を経由して希釈室61に流れ込む。そして、希釈室61でアノードオフガスとカソードオフガスが混合された排出ガスは、排出口52を経由して希釈器30の外に排出される。
【0067】
<排水口>
排水口53は、容器31の底板32に配置されている。排水口53は、底板32の位置のうち、第1方向Xでの第2端板37寄りに配置されるとともに、第2方向Yでの第2側板35寄りに配置されている。排水口53は、底板32を板厚方向に貫通する。排水口53には排水路21が接続されている。そして、希釈室61に流れ出た水は、排水口53から希釈器30の外へ排出される。希釈器30の外へ排出された水は、排水路21を経由して排水タンク15に排出される。
【0068】
<作用>
希釈器30の作用を説明する。
排気バルブ24が閉じているとき、燃料電池スタック11から排出されたカソードオフガスは、カソードオフガス排出路22及びカソードオフガス流入口51を経由して希釈室61に流入している。希釈室61に流入したカソードオフガスは、排出口52に向けて、第1室61a及び第2室61bを流動する。希釈室61を流動したカソードオフガスは、排出口52を経由して希釈器30の外へ排出される。
【0069】
第2排出路19の排気バルブ24が一回開くと、アノードオフガスが気液分離器14から希釈器30に向けて排出される。すると、一定の排出量のアノードオフガスがアノードオフガス流入口50を経由して滞留室60に流入する。滞留室60に流入したアノードオフガスは、底板32の内底面32a、天板33の天井面33a、第1側板34の内面34a、及び第2仕切部42の第2内面42aに沿って、連通口62に向けて第1方向Xへ流動する。つまり、滞留室60に流入したアノードオフガスは、大幅に流れの向きを変えることなく、第1方向Xへ流動する。
【0070】
また、滞留室60にアノードオフガスが流入すると、滞留室60に滞留しているアノードオフガスは、排出量に応じた容積で連通口62から滞留室60の外へ押し出される。滞留室60から押し出されたアノードオフガスは、希釈室61の第2室61bにおいて、流動するカソードオフガスに混ぜ合わされる。カソードオフガスと混合されたアノードオフガスは、排出ガスとして排出口52から排出される。
【0071】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)アノードオフガス流入口50は、滞留室60を画定する第1端板36に配置されている。連通口62は、滞留室60を画定する仕切壁40に配置されている。アノードオフガス流入口50と連通口62は、第1方向Xにおいて、滞留室60の両端に配置されている。このため、アノードオフガス流入口50から滞留室60に流入したアノードオフガスは、滞留室60において、流れの向きを大幅に変えることなく、第1方向Xに沿って連通口62に向けて流れる。その結果、滞留室60に流入したアノードオフガスが、流れの向きを急峻に変えることを抑制できる。このため、希釈器30は、流れの向きを急峻に変えること原因とした騒音の発生を抑制できる。
【0072】
また、アノードオフガスから分離された水は、滞留室60に溜まる。連通口62は、鉛直方向Zに対向する底板32の内底面32aと天板33の天井面33aの間で開口している。つまり、連通口62は、内底面32aと天井面33aを当該連通口62の画定面の一部として形成されている。よって、連通口62は、容器31の鉛直方向Zの寸法全体に亘って開口している。そして、連通口62を経由して希釈室61へ流れ出るアノードオフガスは、連通口62の上側を通過するとともに、水は連通口62の下側を通過する。つまり、アノードオフガスと水とは上下に分離されたまま連通口62を通過する。このため、水が、連通口62付近でアノードオフガスに巻き込まれることを抑制できる。その結果、希釈器30は、水がアノードオフガスに巻き込まれることを原因とした騒音の発生を抑制できる。したがって、希釈器30は、希釈器30の部品点数の増加及び製造コストの増加を招くことなく、その全体で騒音の発生を抑制できる。
【0073】
(2)滞留室60の容積は、アノードオフガスの排出量より大きくなるように設定されている。滞留室60の容積が大きいほど、連通口62から押し出されるアノードオフガスの流速は遅くなる。そして、連通口62から押し出されるアノードオフガスの流速を遅くするほど、アノードオフガスが連通口62を通過する際の風切り音は小さくなる。よって、希釈器30は、アノードオフガスが連通口62を通過する際の風切り音を小さくできる。
【0074】
(3)アノードオフガス流入口50は、底板32の内底面32aから上側に離れている。このため、アノードオフガス流入口50から滞留室60にアノードオフガスが流入したとき、内底面32aに溜まった水がアノードオフガスに巻き込まれることを抑制できる。このため、希釈器30は、アノードオフガスに水が巻き込まれることを原因とした騒音の発生を抑制できる。
【0075】
(4)カソードオフガス流入口51は、天板33における第1端板36寄りに配置されている。そして、連通口62は、カソードオフガス流入口51よりも第1方向Xにおいて第2端板37寄りに配置されている。よって、カソードオフガス流入口51は、連通口62と対向しない位置に配置されている。このため、連通口62を経由して滞留室60から希釈室61に流れ出るアノードオフガスと、カソードオフガス流入口51から希釈室61に流入するカソードオフガスとが衝突することを抑制できる。このため、希釈器30は、アノードオフガスとカソードオフガスとが衝突することを原因とした騒音の発生を抑制できる。
【0076】
(5)連通口62の開口面積は、滞留室60の容積1リットルあたり650mm以上に設定されている。連通口62の開口面積が大きいほど、連通口62から押し出されるアノードオフガスの流速が遅くなる。連通口62から押し出されるアノードオフガスの流速を遅くするほど、アノードオフガスが連通口62を通過する際の風切り音は小さくなる。よって、希釈器30は、アノードオフガスが連通口62を通過する際の風切り音を小さくできる。
【0077】
(6)連通口62は、第1仕切部41の第1非接合縁41dと、第2仕切部42の第2内面42aとの間で、第1方向Xにおいて滞留室60と希釈室61を連通させる。つまり、連通口62は第1方向Xにアノードオフガスを流動させるように開口する。例えば、連通口62が、底板32を板厚方向に貫通して開口したり、連通口62が第2仕切部42の第2接合縁42c寄りで開口したりする場合を比較例とする。本実施形態は、比較例と異なり、アノードオフガスの流れは、急峻に変化しない。よって、連通口62の位置を規定することは、アノードオフガスの流れを急峻に変化させることを原因とした騒音の発生を抑制できる。
【0078】
(7)カソードオフガスは、第1室61aを流れた後、第2室61bで排出口52に向かうように屈曲して流れる。第1室61aは、滞留室60と同様に第1方向Xへ長手が延びる。第2室61bは、第2端板37に沿って第1室61aに対し交差するように延びる。このため、希釈室61を流動するカソードオフガスについて急峻に流れが変化することは抑制される。よって、希釈室61がL形状であっても、希釈器30は、カソードオフガスの流れを急峻に変化させることを原因とした騒音の発生を抑制できる。
【0079】
(8)希釈器30の容器31及び仕切壁40は金属板製である。希釈器30は、金属板の板金によって製造できる。このため、希釈器30の製造コストが安価である。
(9)連通口62からのアノードオフガスの流出方向は第1方向Xである。第2室61bでのカソードオフガスの流動方向は第2方向Yである。このため、アノードオフガスの流出方向は、第2室61bでのカソードオフガスの流動方向に交差する。よって、連通口62から希釈室61に流入したアノードオフガスは、カソードオフガスと混合せずに排出口52から排出されることが抑制される。その結果、第2室61bにおいて、カソードオフガスによるアノードオフガスの希釈効率を高めることができる。
【0080】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 連通口62の開口面積は、滞留室60の容積1リットルあたり650mm未満に設定されていてもよい。
【0081】
○ 天板33でのカソードオフガス流入口51の位置は、カソードオフガス流入口51が希釈室61に連通していれば適宜変更してもよい。
○ カソードオフガス流入口51が希釈室61に連通していれば、カソードオフガス流入口51は、第1側板34、第2側板35、及び第1端板36の任意の位置に配置されていてもよい。第2端板37にカソードオフガス流入口51を配置する場合、連通口62からのアノードオフガスの流出方向において、カソードオフガス流入口51が連通口62と対向しない位置であれば任意の位置に配置されていてもよい。
【0082】
○ 第1端板36でのアノードオフガス流入口50の位置は、内底面32aから離れていなくてもよい。
○ 滞留室60の容積は、排気バルブ24が一回開いたときのアノードオフガスの排出量と同じでもよいし、小さくてもよい。
【0083】
○ 連通口62は、第1仕切部41と第2仕切部42の間の隙間によって形成したが、これに限らない。第1仕切部41と第2仕切部42を接合して、仕切壁40をL形状とする。この仕切壁40のL形状の一端縁となる第2仕切部42の端縁を第1端板36の内面36aに接合するとともに、L形状の他端縁となる第1仕切部41の端縁を第1側板34の内面34aに接合する。そして、第1仕切部41の長縁方向のいずれかにスリットを形成して、そのスリットを連通口62としてもよい。この場合も、内底面32aと天井面33aを連通口62の画定面の一部として連通口62が形成される。
【0084】
又は、L形状の仕切壁40において、第2仕切部42における第1仕切部41寄りの位置にスリットを形成して、そのスリットを連通口62としてもよい。この場合も、内底面32aと天井面33aを連通口62の画定面の一部として連通口62が形成される。なお、この場合、滞留室60から希釈室61へのアノードオフガスの流出方向は第2方向Yになる。これにあわせて、カソードオフガス流入口51は、連通口62からのアノードオフガスの流出方向に対向しない位置に配置される。
【0085】
上記スリットよりなる連通口62の各々は、第1方向Xにおいて中間位置Pよりも第1方向Xの第2端となる第2端板37に近い位置に配置される。
○ 連通口62は、内底面32aと天井面33aを当該連通口62の画定面の一部として形成されていれば、開口形状は適宜変更してもよい。例えば、図7に示すように、第1仕切部41の上端縁を長縁方向の全体に亘って天井面33aから離すことにより、第1仕切部41の長縁方向の全体に亘って連通口62を開口させてもよい。また、第1仕切部41の第1接合縁41cを第1側板34の内面34aから離すことにより、連通口62を開口させてもよい。この場合、連通口62の内底面32a寄りの部分は、天井面33a寄りの部分よりも狭くなる。このため、アノードオフガスは、滞留室60から希釈室61へ流出しやすくなる一方で、水は、滞留室60から希釈室61へ流出しにくくなる。よって、連通口62において、アノードオフガスと水が混じりにくくなるため、アノードオフガスに水が巻き込まれることを原因とした騒音の発生を抑制できる。
【0086】
○ 希釈室61は、第1室61aだけで構成されていてもよい。この場合、滞留室60及び希釈室61の各々は、第1方向Xの第1端から第2端に向けて延びるとともに仕切壁40の第2仕切部42を挟んで第2方向Yに並ぶ部位を有しているといえる。
【0087】
○ 第1端板36について、希釈室61を画定する部分と、滞留室60を画定する部分とが段差状となるように形成する。第1端板36について、希釈室61を画定する部分を、滞留室60を画定する部分より、第1方向Xに第2端板37に近付けた位置に設ける。このようにすることで、希釈室61の第1室61aの第1方向Xへの寸法を、実施形態よりも短くする。このように構成した場合、希釈室61の第1室61aは、第2仕切部42を挟んで滞留室60の一部に対し第2方向Yに並ぶことになる。したがって、滞留室60は、第1方向Xの第1端から第2端に向けて延びるとともに仕切壁40を挟んで第2方向Yに並ぶ部位を有するといえる。
【0088】
○ 排出口52は、第2端板37ではなく、底板32、天板33、第1側板34、又は第2側板35に配置してもよい。
○ 容器31及び仕切壁40は樹脂成形されていてもよい。
【0089】
○ 容器31は円筒のパイプ状でもよい。
○ 燃料電池は、一つの燃料電池セルから構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0090】
P…中間位置、S…内部空間、X…第1方向、Y…第2方向、Z…鉛直方向、11…燃料電池としての燃料電池スタック、20…アノードオフガス排出路、24…排気バルブ、30…希釈器、31…容器、32…底板、32a…内面としての内底面、33…天板、33a…内面としての天井面、40…仕切壁、50…アノードオフガス流入口、51…カソードオフガス流入口、60…滞留室、61…希釈室、62…連通口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7