(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】縦格子の取付構造
(51)【国際特許分類】
E06B 11/02 20060101AFI20241210BHJP
E06B 9/01 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
E06B11/02 R
E06B9/01 B
(21)【出願番号】P 2021212366
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 信二
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-228279(JP,A)
【文献】特開昭63-118470(JP,A)
【文献】実開昭60-159199(JP,U)
【文献】特開2004-285776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 11/00ー11/08
E06B 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った取付面部を有する縦材と、前記取付面部に当接する被取付面部を有する中空形状の縦格子とで構成され、
前記縦材の取付面部には、当該取付面部から突出した軸部および前記軸部の先端に形成された膨大頭部を有した突出部が設けられ、
前記膨大頭部は、前記軸部よりも大きい幅寸法とされ、
前記縦格子の被取付面部には、前記突出部が挿通する孔部が設けられ、
前記孔部は、前記膨大頭部が挿通する挿通孔および前記挿通孔から延びると共に前記軸部が配置される長孔を有し、
前記縦格子内には、前記突出部に係合する楔部材が配置され、
前記楔部材は、前記被取付面部に固定された楔本体部と、前記楔本体部に形成されると共に前記膨大頭部が挿通される楔挿通孔と、前記楔挿通孔から延びると共に前記軸部が配置される楔溝部と、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって前記楔本体部から突出した圧接部とを有し、
前記圧接部は、前記軸部が前記楔溝部に配置された状態で、前記膨大頭部に対して、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって圧接する配置とされる
ことを特徴とする縦格子の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の縦格子の取付構造において、
前記楔本体部は、板状に形成され、
前記圧接部は、前記被取付面部における前記長孔の両縁に沿って配置された一対の板ばね部で構成され、
前記板ばね部は、前記縦材から離間する側に向かって前記楔本体部から立ち上げられた案内板部と、前記案内板部に連続する平板部と、前記平板部を前記楔本体部に連結する連結板部とを有し、
前記案内板部は、前記平板部に連続する端部が前記楔本体部に連続する端部よりも前記縦材から離間する側に位置するように前記被取付面部に対して傾斜し、
前記楔部材は、前記膨大頭部の少なくとも一部が前記平板部にかかった位置で前記突出部に係合する
ことを特徴とする縦格子の取付構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の縦格子の取付構造において、
前記長孔は、前記挿通孔から上方に延びて形成され、
前記楔溝部は、前記楔挿通孔から上方に延びて形成される
ことを特徴とする縦格子の取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載の縦格子の取付構造において、
前記孔部は、前記縦格子の上端部、下端部、並びに、前記上端部および前記下端部の間に配置される中間部のそれぞれに設けられ、
前記突出部は、前記縦格子の前記上端部における前記孔部に挿通される上方突出部と、前記縦格子の前記下端部における前記孔部に挿通される下方突出部と、前記縦格子の前記中間部における前記孔部に挿通される中間突出部とを有し、
前記上方突出部、前記下方突出部および前記中間突出部のそれぞれは、前記軸部および前記膨大頭部を有し、
前記楔部材は、前記中間突出部に係合する配置とされ、
前記縦格子内には、前記上方突出部に係合する上方楔部材と、前記下方突出部に係合する下方楔部材とが更に配置され、
前記上方楔部材は、前記被取付面部に沿って前記縦格子内に挿入配置される楔本体部と、前記楔本体部に形成されると共に前記上方突出部の前記膨大頭部が挿通される楔挿通孔と、前記楔挿通孔から上方に延びると共に前記軸部が配置される楔溝部と、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって前記楔本体部から突出した圧接部とを有し、前記上方楔部材における前記圧接部は、前記軸部が前記楔溝部に配置された状態で、前記上方突出部の前記膨大頭部に対して、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって圧接する配置とされ、
前記下方楔部材は、前記被取付面部に沿って前記縦格子内に挿入配置される楔本体部と、前記楔本体部に形成されると共に前記下方突出部の前記膨大頭部が挿通される楔挿通孔と、前記楔挿通孔から下方に延びると共に前記軸部が配置される楔溝部と、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって前記楔本体部から突出した圧接部とを有し、前記下方楔部材における前記圧接部は、前記軸部が前記楔溝部に配置された状態で、前記下方突出部の前記膨大頭部に対して、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって圧接する配置とされる
ことを特徴とする縦格子の取付構造。
【請求項5】
請求項3に記載の縦格子の取付構造において、
前記孔部は、前記縦格子の上端部、下端部、並びに、前記上端部および前記下端部の間に配置される中間部のそれぞれに設けられ、
前記突出部は、前記縦格子の前記上端部における前記孔部に挿通される上方突出部と、前記縦格子の前記下端部における前記孔部に挿通される下方突出部と、前記縦格子の前記中間部における前記孔部に挿通される中間突出部とを有し、
前記上方突出部、前記下方突出部および前記中間突出部のそれぞれは、前記軸部および前記膨大頭部を有し、
前記楔部材は、前記縦格子の前記上端部、前記下端部および前記中間部のそれぞれに設けられた前記孔部に対応した位置に固定され、
前記楔部材の圧接部は、前記縦格子の前記上端部、前記下端部および前記中間部のそれぞれの前記孔部に挿通される前記上方突出部、前記下方突出部および前記中間突出部の膨大頭部に圧接する配置とされる
ことを特徴とする縦格子の取付構造。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の縦格子の取付構造において、
前記縦格子の上端部および下端部における小口には、当該小口を覆うキャップ部材が取り付けられる
ことを特徴とする縦格子の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦格子を門柱や門扉縦框などの縦材に対して取り付ける縦格子の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、門扉の柱や縦框に対して、中空形状の複数の縦格子が横材に固定された門柱装飾部材や門扉装飾部材を取り付ける門ユニットが知られている(特許文献1参照)。この門ユニットでは、縦格子は柱や縦框に直接に取り付けられるのではなく、横材を介して柱や縦框の屋外側に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の門ユニットでは、縦格子は柱や縦框などの縦材に対して横材を介して取り付けられるので、縦格子と縦材との間に横材が配置される分、面外方向の寸法が大きくなってしまう。
ここで、横材を介さずに縦格子を縦材に直接に取り付けて面外方向の寸法を抑えることが考えられる。例えば固定ねじを用いて縦格子を縦材に直接に取り付ける場合には、縦材の固定ねじを屋内側から通す必要があり、固定ねじを通すための孔などが外部に露出する構成となり得、意匠的に好ましくない。前述した孔などが外部に露出しない縦格子の取付構造として、例えば、縦材に段付きビスなどを突出させて設ける一方、中空形状の縦格子に対してその上端部や下端部に楔部材自体を打ち込んで段付きビスに係合させることが挙げられる。
しかし、前述したように楔部材を用いて縦格子を縦材に直接に取り付ける場合には、楔部材を打ち込む作業の間は縦格子を所定位置に保持しなければならない。このため、縦格子の取付作業に手間を要してしまい、施工性を向上することが困難である。
【0005】
本発明の目的は、縦格子を縦材に対して取り付ける施工性を向上できる縦格子の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の縦格子の取付構造は、長手方向に沿った取付面部を有する縦材と、前記取付面部に当接する被取付面部を有する中空形状の縦格子とで構成され、前記縦材の取付面部には、当該取付面部から突出した軸部および前記軸部の先端に形成された膨大頭部を有した突出部が設けられ、前記膨大頭部は、前記軸部よりも大きい幅寸法とされ、前記縦格子の被取付面部には、前記突出部が挿通する孔部が設けられ、前記孔部は、前記膨大頭部が挿通する挿通孔および前記挿通孔から延びると共に前記軸部が配置される長孔を有し、前記縦格子内には、前記突出部に係合する楔部材が配置され、前記楔部材は、前記被取付面部に固定された楔本体部と、前記楔本体部に形成されると共に前記膨大頭部が挿通される楔挿通孔と、前記楔挿通孔から延びると共に前記軸部が配置される楔溝部と、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって前記楔本体部から突出した圧接部とを有し、前記圧接部は、前記軸部が前記楔溝部に配置された状態で、前記膨大頭部に対して、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって圧接する配置とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、縦格子を縦材に対して取り付ける施工性を向上できる縦格子の取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る縦格子の取付構造が形成される門扉を示す外観姿図。
【
図2】第1実施形態に係る縦格子の取付構造が形成される門扉を示す平面図。
【
図3】第1実施形態に係る縦格子の取付構造における縦格子を示す説明図。
【
図4】第1実施形態に係る縦格子の取付構造における楔部材を示す斜視図。
【
図5】第1実施形態係る縦格子の取付構造を形成する手順を示す説明図
【
図6】本発明の第2実施形態に係る縦格子の取付構造を形成する手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示す門扉1は、両開き式のものであり、地面に立設された門柱2(縦材)と、門柱2に開閉可能に支持される扉体3とを備えている。門柱2は、断面中空矩形状のアルミ製の形材で構成され、屋外側に面した見付け面部である取付面部21を有しており、取付面部21には後述する縦格子4Cと同様に構成された縦格子4Dが取り付けられている。扉体3は、アルミ製の断面中空矩形状の上框31、下框32、戸先側縦框33(縦材)および吊元側縦框34(縦材)を框組みした框体と、上框31および下框32の屋外側の見付け面部311,321に取り付けられた複数の縦格子4Aと、戸先側縦框33の屋外側における見付け面部である取付面部331に取り付けられた複数の縦格子4Bと、吊元側縦框34の屋外側の見付け面部である取付面部341に取り付けられた複数の縦格子4Cとを備えている。戸先側縦框33には、開閉操作用のハンドル36が設けられている。第1実施形態に係る縦格子の取付構造は、縦格子4Cの吊元側縦框34に対する取付構造や縦格子4Dの門柱2に対する取付構造である。
以下の説明において、門扉1の左右方向をX軸方向とし、門扉1の上下方向をY軸方向とし、門扉1の見込み方向(面外方向)をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0010】
縦材である門柱2、戸先側縦框33および吊元側縦框34の取付面部21,331,341には、Z軸方向において屋外側に突出した段付きビス5(突出部)が設けられている。段付きビス5は、戸先側縦框33の取付面部331に対して取り付けられる後述する複数の短尺の形材41Bの各上端部および各下端部に対応した位置に設けられている。また、段付きビス5は、吊元側縦框34の上端部342、下端部343、中間部344に対して、それぞれ取り付けられている。これらの段付きビス5のうち、吊元側縦框34の上端部342に取り付けられる段付きビス5は本発明における上方突出部であり、吊元側縦框34の下端部343に取り付けられる段付きビス5は本発明における下方突出部であり、吊元側縦框34の中間部344に取り付けられる段付きビス5は本発明における中間突出部である。門柱2に対する段付きビス5の取付位置は、第1実施形態では吊元側縦框34に対する段付きビス5の取付位置と同様である。
段付きビス5は、取付面部21,331,341から屋外側に突出した軸部51および当該軸部51の先端に形成された膨大頭部52を有している。膨大頭部52は、軸部51よりも大きい幅寸法とされている。
【0011】
複数の縦格子4Aは、断面中空矩形状のアルミ製の形材41Aで構成されており、形材41Aの屋内側の見付け面部が図示しない固定ねじなどによって上框31および下框32の見付け面部311,321に取り付けられている。なお、複数の縦格子4Aのうち戸先側に配置される縦格子4Aは、ハンドル36と干渉しないように上下に分断された形材41Aを連結材で連結して構成されている。なお、形材41Aの上下の小口にはキャップ部材が取り付けられている。
【0012】
複数の縦格子4Bは、縦格子4AよりもY軸方向に短尺とされた断面中空矩形状のアルミ製の形材41Bと、形材41B内の上端部および下端部に挿入配置された上方楔部材7および下方楔部材8とを備えている。形材41Bの屋内側の見付け面部(被取付面部)における上端部および下端部には、いわゆるダルマ孔6(孔部)が形成されている。このダルマ孔6は後述する縦格子4Cのダルマ孔6と同様に形成されている。
この縦格子4Bは、ダルマ孔6に挿通される戸先側縦框33の段付きビス5が上方楔部材7および下方楔部材8に係合することで、戸先側縦框33の取付面部331に取り付けられている。本実施形態では、形材41Bは、ハンドル36に対して上側の位置にX軸方向に二つ並んで配置されている。また、ハンドル36に対して下側の位置であってX軸方向に二つ並んで配置されている。なお、形材41Bの上下の小口にはキャップ部材が取り付けられている。この形材41Bには上方楔部材7および下方楔部材8が挿入配置されるが、これらに代えて、後述する楔部材9を形材41Bの屋内側の見付け面部(被取付面部)における上端部および下端部であってダルマ孔6に対応する位置に固定してもよい。
【0013】
複数の縦格子4Cは、
図3に示すように、取付面部341に当接可能な被取付面部411を有して中空形状に形成されており、縦格子4Aと等しい上下寸法とされている。縦格子4Cは、断面中空矩形状のアルミ製の形材41Cと、形材41C内の上端部412および下端部413に挿入配置された上方楔部材7および下方楔部材8と、形材41C内において当該形材41Cの上端部412および下端部413の間であってこれら双方からY軸方向に離れた中間部414に配置される楔部材9とを備えており、形材41Cの上端部412および下端部413における上下の小口には、当該小口を覆うキャップ部材10が取り付けられている。
縦格子4Cの被取付面部411には、各段付きビス5が挿通する孔部としてダルマ孔6が設けられており、このダルマ孔6は縦格子4Cの上端部412、下端部413および中間部414にそれぞれ配置されている。
ダルマ孔6は、膨大頭部52が挿通する挿通孔61と、挿通孔61から上方に延びると共に軸部51が配置される長孔62とを有している。長孔62の幅寸法は、膨大頭部52の幅寸法よりも小さい寸法とされており、このため、縦格子4Cを吊元側縦框34に対して位置決めし易い構成となっている。
【0014】
上方楔部材7は、被取付面部411の内面に沿って形材41C内に上方からY軸方向に挿入して上端部412におけるダルマ孔6に対応した位置に配置される板状の楔本体部71と、楔本体部71に形成されると共に上方突出部としての段付きビス5の膨大頭部52が挿通される円形の楔挿通孔72と、楔挿通孔72からY軸方向に沿って上方に延びると共に当該段付きビス5の軸部51が配置される楔溝部73と、Z軸方向(面外方向)において吊元側縦框34から離間する側に向かって、楔本体部71から屋外側に切り起こされて突出した圧接部74とを有している。楔本体部71の上部には、板状の楔打込み部711が屋外側に折曲されて形成されている楔本体部71のY軸方向に沿った両側縁下部は、当該楔本体部71が下方に向かって先窄まり形状となるようにY軸方向に対して傾斜しており、形材41C内への挿入性を向上している。圧接部74は、軸部51が楔溝部73に配置された状態で、膨大頭部52に対して、Z軸方向において吊元側縦框34から離間する側に向かって圧接する配置とされている。この上方楔部材7は、上方突出部としての段付きビス5に係合する。
【0015】
下方楔部材8は、被取付面部411の内面に沿って形材41C内に下方からY軸方向に挿入して下端部413におけるダルマ孔6に対応した位置に配置される板状の楔本体部81と、楔本体部81に形成されると共に下方突出部としての段付きビス5の膨大頭部52が挿通される楔挿通孔82と、楔挿通孔82からY軸方向に沿って下方に延びると共に当該段付きビス5の軸部51が配置される楔溝部83と、Z軸方向(面外方向)において吊元側縦框34から離間する側に向かって、楔本体部81から屋外側に切り起こされて突出した圧接部84とを有している。楔本体部81の下部には、板状の楔打込み部811が屋外側に折曲されて形成されている楔本体部81のY軸方向に沿った両側縁上部は、当該楔本体部81が下方に向かって先窄まり形状となるようにY軸方向に対して傾斜しており、形材41C内への挿入性を向上している。圧接部84は、軸部51が楔溝部83に配置された状態で、膨大頭部52に対して、Z軸方向において吊元側縦框34から離間する側に向かって圧接する配置とされている。この下方楔部材8は、上方楔部材7を上下反転させた形状とされており、下方突出部としての段付きビス5に係合する。
【0016】
楔部材9は、
図4に示すように、被取付面部411の内面にねじ止めされた矩形板状の楔本体部91と、楔本体部91に形成されると共に中間突出部としての段付きビス5の膨大頭部52が挿通される楔挿通孔92と、楔挿通孔92からY軸方向に沿って上方に延びると共に当該段付きビス5の軸部51が配置される楔溝部93と、Z軸方向(面外方向)において吊元側縦框34から離間する側に向かって、楔本体部91から屋外側に切り起こされて突出した圧接部94とを有している。
圧接部94は、被取付面部411における長孔62の両縁に沿って配置されたY軸方向に沿った一対の板ばね部95で構成されている。板ばね部95は、Z軸方向において吊元側縦框34から離間する側に向かって、楔本体部91から立ち上げられた案内板部951と、案内板部951に連続していると共にY軸向に沿った平板部952と、平板部952を楔本体部91に連結する連結板部953とを有している。案内板部951は、平板部952に対して下方に配置されており、その上端(平板部952に連続する端部)が下端(楔本体部91に連続する端部)よりも吊元側縦框34から離間する側に位置するように、被取付面部411であってY軸方向に対して傾斜している。連結板部953は、平板部952に対して上方に配置されており、その下端が上端よりも吊元側縦框34から離間する側に位置するように、案内板部951とは逆向きにY軸方向に対して傾斜している。連結板部953の傾斜角度は、案内板部951の傾斜角度よりも大きい。圧接部94は、軸部51が楔溝部93に配置された状態で、膨大頭部52に対して、Z軸方向において吊元側縦框34から離間する側に向かって圧接する。
この楔部材9は、膨大頭部52の一部が平板部952に掛かり且つ当該膨大頭部52の上側部分が平板部952を上方に越えて連結板部953とZ軸方向に対向する位置に配置されることで、中間突出部としての段付きビス5に係合した係合状態となる。
【0017】
なお、縦格子4Dは前述したように縦格子4Cと同様に構成されて門柱2に取り付けられているので、縦格子4Dの詳細な説明を省略する。
【0018】
以下、門扉1の吊元側縦框34に縦格子4Cを取り付ける手順について説明する。
まず、吊元側縦框34の上端部342、下端部343および中間部344における取付面部341に段付きビス5を先付けしておく。
次に、
図5(A)に示すように、形材41Cの各挿通孔61に各段付きビス5を挿通させると共に、中間突出部としての段付きビス5を楔部材9の楔挿通孔92にも挿通させる。
次に、形材41Cを上方から打ち込み、
図5(B)に示すように、各段付きビス5を形材41Cの長孔62に配置すると共に、中間突出部としての段付きビス5の軸部51を楔溝部93に配置する。このとき、形材41Cが吊元側縦框34に対して下方に移動するにつれて、中間突出部としての段付きビス5の膨大頭部52は板ばね部95の案内板部951に摺接しながら屋外側へ案内され、続いて平板部952に圧接しながら摺動し、形材41Cが更に下方に移動するにつれて、膨大頭部52の一部が平板部952に掛かり且つ当該膨大頭部52の上側部分が平板部952を上方に越えて連結板部953とZ軸方向に対向する位置に配置される。この位置では平板部952が膨大頭部52に圧接し、楔部材9および段付きビス5が係合した係合状態となる。このようにして形材41Cは吊元側縦框34に対する所定位置に仮位置決めされ、例えば吊元側縦框34に対して屋外側に離間してしまうことを抑制できる。
次に、
図5(C)に示すように、上方楔部材7を形材41C内に上方から挿入し、楔挿通孔72に吊元側縦框34の上端部342における段付きビス5の膨大頭部52を挿通させる。続いて、上方楔部材7の楔打込み部711を下方に向かって打ち込み、段付きビス5の軸部51を楔溝部73に配置しつつ膨大頭部52を圧接部74に圧接させる。このようにして上方楔部材7および上方突出部としての段付きビス5が係合する。また、下方楔部材8を形材41C内に下方から挿入し、楔挿通孔82に吊元側縦框34の下端部343における段付きビスの膨大頭部52を挿通させる。続いて、下方楔部材8の楔打込み部711を下方に向かって打ち込み、段付きビス5の軸部51を楔溝部73に配置しつつ膨大頭部52を圧接部84に圧接させる。このようにして下方楔部材8および下方突出部としての段付きビス5が係合する。
次に、
図5(D)に示すように、キャップ部材10を形材41Cの上下の小口を覆うように取り付け、
図5(E)に示す状態とする。
以上のようにして、縦格子4Cを吊元側縦框34に直接に取り付けることで、被取付面部411を取付面部341に当接した縦格子4Cの取付構造を構成する。なお、縦格子4Dの門柱2に対する取り付けも概略同様に行われて縦格子4Dの取付構造を構成する。
【0019】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
第2実施形態に係る縦格子の取付構造は、第1実施形態に係る縦格子の取付構造に対して概略同様に構成されているが、
図6に示すように、縦格子4Cにおいて、上方楔部材7および下方楔部材8に代えて、形材41Cの被取付面部411の内面に固定された楔部材9を備えている。このため、第2実施形態では、楔部材9は、形材41Cの上端部412、下端部413および中間部414のそれぞれにおけるダルマ孔6に対応した位置にそれぞれ固定されている。このため、楔部材9の圧接部94は、各ダルマ孔6に挿通される上方突出部、下方突出部および中間突出部としての各段付きビスの膨大頭部52に圧接する。
【0020】
第2実施形態では、縦格子4Cは次の手順で吊元側縦框34に取り付けられる。
まず、
図6の(A)に示すキャップ部材10を形材41Cの上下の小口に取り付けて縦格子4Cを構成する。キャップ部材10は予め取り付けておいてもよい。
次に、
図6(B)に示すように、縦格子4Cの挿通孔61および楔挿通孔72,82,92に各段付きビス5を挿通させる。続いて、
図6(C)に示すように、縦格子4C自体を上方から打ち込み、各段付きビス5の軸部51を前述した楔溝部73,83,93に配置して、各膨大頭部52に圧接部74,84,94を圧接させ、各楔部材9および段付きビス5を係合状態とする。このようにして縦格子4Cを吊元側縦框34に取り付け、縦格子4Cの取付構造を構成する。
なお、第2実施形態における縦格子4Dは、当該第2実施形態における縦格子4Cと同様に構成され、概略同様に門柱2(第1実施形態参照)に取り付けられてもよい。
【0021】
[変形例]
第1、第2実施形態では、圧接部94は板ばね部95で構成されているが、縦格子4Cが下方移動することで楔部材9および段付きビス5が係合可能あれば、板ばね部95戸八戸となる構成で圧接部94を構成してもよい。
第1実施形態では、Y軸方向において上方楔部材7および下方楔部材8の間にある楔部材9は一つとして縦格子4Cの取付時の抵抗を極力少なくしているが、縦格子4Cの長手方向における寸法などに応じて、Y軸方向に間隔を隔てて複数配置してもよい。また、第2実施形態においても、縦格子4Cの中間部414における楔部材9を複数配置してもよい。なお、楔部材9に応じてダルマ孔6を形成される。
第1実施形態では、縦格子4Cの上端部412および下端部413に上方楔部材7および下方楔部材8が挿入配置されているが、例えば上方楔部材7および下方楔部材8の一方を楔部材9に代えて被取付面部411に固定してもよい。
第1、第2実施形態では、ダルマ孔6の長孔62と、楔部材9の楔溝部93は、上方に延びて形成されているが、これに限らず、例えば、下方に延びて形成されていてもよく、また、Z軸方向に直交し且つY軸方向に対して交差する方向に延びて形成されていてもよい。
第1、第2実施形態では、縦格子の取付構造を門扉に構成したが、フェンスに構成してもよく、この場合、縦材はフェンスの柱である。
【0022】
[発明のまとめ]
本発明の縦格子の取付構造は、長手方向に沿った取付面部を有する縦材と、前記取付面部に当接する被取付面部を有する中空形状の縦格子とで構成され、前記縦材の取付面部には、当該取付面部から突出した軸部および前記軸部の先端に形成された膨大頭部を有した突出部が設けられ、前記膨大頭部は、前記軸部よりも大きい幅寸法とされ、前記縦格子の被取付面部には、前記突出部が挿通する孔部が設けられ、前記孔部は、前記膨大頭部が挿通する挿通孔および前記挿通孔から延びると共に前記軸部が配置される長孔を有し、前記縦格子内には、前記突出部に係合する楔部材が配置され、前記楔部材は、前記被取付面部に固定された楔本体部と、前記楔本体部に形成されると共に前記膨大頭部が挿通される楔挿通孔と、前記楔挿通孔から延びると共に前記軸部が配置される楔溝部と、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって前記楔本体部から突出した圧接部とを有し、前記圧接部は、前記軸部が前記楔溝部に配置された状態で、前記膨大頭部に対して、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって圧接する配置とされることを特徴とする。
本発明の縦格子の取付構造によれば、縦格子の孔部に突出部を挿通させ、縦格子を縦材に対して移動することで、楔部材の圧接部を膨大頭部に圧接させることができ、縦格子を縦材に直接に取り付けた取付状態にできる。このように、例えば、縦格子を所定位置に保持しつつ楔部材を打ち込む取付作業に比べ、縦格子自体を移動させるだけでよいので、縦格子を縦材に対して直接に取り付ける取付作業を簡単に行うことができ、施工性を向上できる。
【0023】
本発明の縦格子の取付構造では、前記楔本体部は、板状に形成され、前記圧接部は、前記被取付面部における前記長孔の両縁に沿って配置された一対の板ばね部で構成され、前記板ばね部は、前記縦材から離間する側に向かって前記楔本体部から立ち上げられた案内板部と、前記案内板部に連続する平板部と、前記平板部を前記楔本体部に連結する連結板部とを有し、前記案内板部は、前記平板部に連続する端部が前記楔本体部に連続する端部よりも前記縦材から離間する側に位置するように前記被取付面部に対して傾斜し、前記楔部材は、前記膨大頭部の少なくとも一部が前記平板部にかかった位置で前記突出部に係合してもよい。
このような構成によれば、一対の板ばね部が長孔の両縁に沿って配置されているので、一対の板ばね部が膨大頭部に圧接することで、例えば長孔の一方縁だけに沿って板ばね部が配置される場合と比べて、縦格子が縦材から離れにくい係合状態にでき、縦格子の縦材に対する取付状態を安定させることができる。
また、板ばね部において、楔本体部から傾斜した案内板部によって膨大頭部を平板部側へ円滑に案内できる一方、連結板部が平板部および楔本体部を連結しているので、連結板部がない場合と比べて、平板部の膨大頭部に対する圧接力を高めることができて、膨大頭部が板ばね部から外れにくい状態にでき、このため、楔部材および突出部の係合状態を安定させることができる。
【0024】
本発明の縦格子の取付構造では、前記長孔は、前記挿通孔から上方に延びて形成され、前記楔溝部は、前記楔挿通孔から上方に延びて形成されてもよい。
このような構成によれば、縦格子を縦材に対して下方に移動することで、楔部材の圧接部を膨大頭部に圧接させることができる。
【0025】
本発明の縦格子の取付構造では、前記孔部は、前記縦格子の上端部、下端部、並びに、前記上端部および前記下端部の間に配置される中間部のそれぞれに設けられ、前記突出部は、前記縦格子の前記上端部における前記孔部に挿通される上方突出部と、前記縦格子の前記下端部における前記孔部に挿通される下方突出部と、前記縦格子の前記中間部における前記孔部に挿通される中間突出部とを有し、前記上方突出部、前記下方突出部および前記中間突出部のそれぞれは、前記軸部および前記膨大頭部を有し、前記楔部材は、前記中間突出部に係合する配置とされ、前記縦格子内には、前記上方突出部に係合する上方楔部材と、前記下方突出部に係合する下方楔部材とが更に配置され、前記上方楔部材は、前記被取付面部に沿って前記縦格子内に挿入配置される楔本体部と、前記楔本体部に形成されると共に前記上方突出部の前記膨大頭部が挿通される楔挿通孔と、前記楔挿通孔から上方に延びると共に前記軸部が配置される楔溝部と、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって前記楔本体部から突出した圧接部とを有し、前記上方楔部材における前記圧接部は、前記軸部が前記楔溝部に配置された状態で、前記上方突出部の前記膨大頭部に対して、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって圧接する配置とされ、前記下方楔部材は、前記被取付面部に沿って前記縦格子内に挿入配置される楔本体部と、前記楔本体部に形成されると共に前記下方突出部の前記膨大頭部が挿通される楔挿通孔と、前記楔挿通孔から下方に延びると共に前記軸部が配置される楔溝部と、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって前記楔本体部から突出した圧接部とを有し、前記下方楔部材における前記圧接部は、前記軸部が前記楔溝部に配置された状態で、前記下方突出部の前記膨大頭部に対して、面外方向において前記縦材から離間する側に向かって圧接する配置とされてもよい。
このような構成によれば、例えば縦格子の中間部に孔部および楔部材がない場合には、縦格子の上端部および下端部だけが縦材に対して取り付けられる構成となり、縦格子の長手方向における寸法が大きいほど、風等の影響により中間部が微振動してビビリ音が発生し易くなるおそれがあるが、本発明では縦格子の中間部に孔部および楔部材を配置するので、縦格子の中間部を縦材に取り付けることができ、前述したビビリ音が発生することを抑制できる。
また、縦格子の上端部および下端部に上方楔部材および下方楔部材を挿入配置する前に、楔部材および中間突出部を係合しておくことができ、このため、縦格子を所定位置に保持する手間を軽減できて、縦格子の縦材に対する取付施工性を向上できる。
【0026】
本発明の縦格子の取付構造では、前記孔部は、前記縦格子の上端部、下端部、並びに、前記上端部および前記下端部の間に配置される中間部のそれぞれに設けられ、前記突出部は、前記縦格子の前記上端部における前記孔部に挿通される上方突出部と、前記縦格子の前記下端部における前記孔部に挿通される下方突出部と、前記縦格子の前記中間部における前記孔部に挿通される中間突出部とを有し、前記上方突出部、前記下方突出部および前記中間突出部のそれぞれは、前記軸部および前記膨大頭部を有し、前記楔部材は、前記縦格子の前記上端部、前記下端部および前記中間部のそれぞれに設けられた前記孔部に対応した位置に固定され、前記楔部材の圧接部は、前記縦格子の前記上端部、前記下端部および前記中間部のそれぞれの前記孔部に挿通される前記上方突出部、前記下方突出部および前記中間突出部の膨大頭部に圧接する配置とされてもよい。
このような構成によれば、例えば縦格子の中間部に孔部および楔部材がない場合には、縦格子の上端部および下端部だけが縦材に対して取り付けられる構成となり、縦格子の長手方向における寸法が大きいほど、風等の影響により中間部が微振動してビビリ音が発生し易くなるおそれがあるが、本発明では縦格子の中間部に孔部および楔部材を配置するので、縦格子の中間部を縦材に取り付けることができ、前述したビビリ音が発生することを抑制できる。
また、縦格子の各孔部に縦材の上方突出部、中間突出部および下方突出部を挿通させ、当該縦格子を下方に移動させるだけで、各楔部材の圧接部を各膨大頭部に圧接させることができる、つまり、縦格子自体を上方から打ち込むだけで、縦材に直接に取り付けることができ、例えば縦格子に固定されていない楔部材を、当該縦格子の上端部や下端部に対して挿入配置する手間をなくし得、縦格子を縦材に対して簡単に取り付けることができる。
【0027】
本発明の縦格子の取付構造では、前記縦格子の上端部および下端部における小口には、当該小口を覆うキャップ部材が取り付けられてもよい。
このような構成によれば、縦格子の小口にキャップ部材が取り付けられるので、小口の露出をなくし得る。
また、例えば縦格子の上端部や下端部に上方楔部材や下方楔部材が縦格子内に挿入配置される形態では、上方楔部材や下方楔部材が不意に外れようとしてもキャップ部材がこれらに当たるので、楔外れを抑制できる。
【符号の説明】
【0028】
1…門扉、10…キャップ部材、2…門柱、21,331,341…取付面部、3…扉体、31…上框、311,321…見付け面部、32…下框、33…戸先側縦框、34…吊元側縦框、342,412…上端部、343,413…下端部、344,414…中間部、36…ハンドル、411…被取付面部、41A~41C…形材、4A~4D…縦格子、5…段付きビス、51…軸部、52…膨大頭部、6…ダルマ孔(孔部)、61…挿通孔、62…長孔、7…上方楔部材、71,81,91…楔本体部、711,811…楔打込み部、72,82,92…楔挿通孔、73,83,93…楔溝部、74,84,94…圧接部、8…下方楔部材、9…楔部材、95…板ばね部、951…案内板部、952…平板部、953…連結板部。