(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】新規なエステラーゼ及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 9/18 20060101AFI20241210BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241210BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241210BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241210BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241210BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241210BHJP
C12Q 1/44 20060101ALI20241210BHJP
C11D 3/386 20060101ALI20241210BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
C12N9/18
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/44
C11D3/386
C12N15/55 ZNA
(21)【出願番号】P 2021504395
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2019070289
(87)【国際公開番号】W WO2020021118
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-25
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514245373
【氏名又は名称】キャルビオス
【氏名又は名称原語表記】CARBIOS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ドゥケーヌ,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】トゥルニエ,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】マルティ,アラン
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第18/011281(WO,A1)
【文献】国際公開第18/011284(WO,A1)
【文献】国際公開第12/099018(WO,A1)
【文献】国際公開第15/085920(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/00- 9/99
C07K 1/00-19/00
C12Q 1/00- 3/00
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号:1に示される全長アミノ酸配列に対して少なくとも90
%の同一性を有し、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、F208I+D203C+S248C又はF208W+D203C+S248Cから選択される少なくとも1つの置換の組み合わせ及びV170I、V177I、T176N、T61M、S65T、Y92G及びN211Mから選択される1つの置換を有し、(iii)配列番号:1のエステラーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性及び向上した熱安定性を示す、
エステラーゼ。
【請求項2】
(i)配列番号:1に示される全長アミノ酸配列に対して少なくとも95%の同一性を有する、請求項1記載のエステラーゼ。
【請求項3】
前記エステラーゼが、さらに、親エステラーゼにおけるのと同様に、S130、D175又はH207から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、請求項1
又は2記載のエステラーゼ。
【請求項4】
前記エステラーゼが、さらに、A121S、N213P、S212F/T/I/L、A125G、N204D/I/L/Y/H/F、G135A、W69R、N214D/I/L/F/Y/H、N241P、N243P、R12F/Y/H、P179E、V242Y、V167Q又はN211D/Mから選択される少なくとも1つの置換を含む、請求項1~
3のいずれか一項記載のエステラーゼ。
【請求項5】
前記エステラーゼが、以下の表に列記された置換の組み合わせから選択される置換の組み合わせを含む、請求項1~
4のいずれか一項記載のエステラーゼ。
【表1】
【請求項6】
前記エステラーゼが、配列番号:2に示されるアミノ酸配列及びF208I+D203C+S248C又はF208W+D203C+S248Cから選択される少なくとも1つの置換の組み合わせ及びV170I、V177I、T61M、T176N、S65T、N211M又はF92Gから選択される1つの置換を有し、ここで、該位置は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を参照してナンバリングされ、配列番号:1のエステラーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性及び向上した熱安定性を示す、請求項1~
5のいずれか一項記載のエステラーゼ。
【請求項7】
前記エステラーゼが、さらに、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列をN末端に含む、請求項1~
6のいずれか一項記載のエステラーゼ。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項記載のエステラーゼをコードする、
核酸。
【請求項9】
請求項
8記載の核酸を含む、
発現カセット又はベクター。
【請求項10】
請求項
8記載の核酸又は請求項
9記載の発現カセットもしくはベクターを含む、
ホスト細胞。
【請求項11】
請求項1~
7のいずれか一項記載のエステラーゼ又は請求項
10記載のホスト細胞
、及び賦形剤を含む、
組成物。
【請求項12】
ポリエステル含有材料の少なくとも1種のポリエステルを分解する方法であって、
(a)ポリエステル含有材料を請求項1~
7のいずれか一項記載のエステラーゼ又は請求項
10記載のホスト細胞又は請求項11記載の組成物と接触させることを含む、
方法。
【請求項13】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンスクシナート(PBS)、ポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)及びこれらの材料のブレンド/混合物から選択される、請求項
12記載の方法。
【請求項14】
請求項1~
7のいずれか一項記載のエステラーゼ又は請求項
10記載のホスト細胞又は請求項
11記載の組成物を含有する、
ポリエステル含有材料。
【請求項15】
請求項1~
7のいずれか一項記載のエステラーゼ又は請求項
10記載のホスト細胞又は請求項
11記載の組成物を含む、
洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエステラーゼ、とりわけ、親エステラーゼと比較して改善された活性及び/又は改善された熱安定性を有するエステラーゼに関する。また、本発明は、ポリエステル含有材料、例えば、プラスチック製品を分解するための前記新規なエステラーゼの使用に関する。本発明のエステラーゼは、ポリエチレンテレフタラート及びポリエチレンテレフタラート含有材料を分解するのに特に適している。
【0002】
背景
エステラーゼは、ポリエステルを含む各種のポリマーの加水分解を触媒可能である。この文脈において、エステラーゼは、食器洗浄及び洗濯用途のための洗剤として、バイオマス及び食品を加工するための分解酵素として、環境汚染物質の無毒化における生体触媒として又は織物産業におけるポリエステル布地の処理のためを含む、多くの産業用途において有望な効果を示している。ポリエチレンテレフタラート(PET)を加水分解するための分解酵素としてのエステラーゼの使用は特に興味深い。実際に、PETは、衣類、カーペットの製造又は包装もしくは自動車用プラスチック等の製造のための熱硬化性樹脂の形態等の多数の技術分野で使用されている。その結果、埋め立てごみ処理地におけるPETの蓄積は、ますます生態学的問題となっている。
【0003】
ポリエステル、特に、PETの酵素分解は、プラスチック廃棄物の蓄積を減少させるための興味深い解決策と考えられる。実際に、酵素は、ポリエステル含有材料、とりわけ、プラスチック製品の加水分解を、モノマーレベルにまでも加速させることができる。さらに、加水分解物(すなわち、モノマー及びオリゴマー)は、新しいポリマーを合成するための材料として再利用することができる。
【0004】
この文脈において、幾つかのエステラーゼが、ポリエステルのための分解酵素の候補として特定されており、このようなエステラーゼの一部の変異体が開発されている。エステラーゼの中で、クチナーゼ(クチンヒドロラーゼとしても公知)(EC 3.1.1.74)が特に興味深い。クチナーゼは、種々の真菌(P.E. Kolattukudy in 「Lipases」, Ed. B. Borg- strom and H.L. Brockman, Elsevier 1984, 471-504)、細菌及び植物花粉から特定されている。近年、メタゲノミクスのアプローチにより、更なるエステラーゼが特定されている。
【0005】
しかしながら、ポリエステル分解プロセスをより効率的に、それにより、より競争力のあるものにするために、既知のエステラーゼと比較して改善された活性及び/又は改善された熱安定性を有するエステラーゼが依然として必要とされている。
【0006】
発明の概要
本発明は、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有する親エステラーゼ又は野生型エステラーゼと比較して、向上した活性及び/又は向上した熱安定性を示す、新規なエステラーゼを提供する。この野生型エステラーゼは、Sulaiman et al., Appl Environ Microbiol. 2012 Marに記載されているメタゲノム由来クチナーゼのアミノ酸配列のアミノ酸36~293に対応し、SwissProtのG9BY57に言及されている。本発明のエステラーゼは、プラスチック製品、とりわけ、PETを含有するプラスチック製品を分解するための方法に特に有用である。
【0007】
これについて、本発明の目的は、(i)配列番号:1に示される全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、F208、D203、S248、V170、V177、T176、T61、S65又はY92から選択される位置に少なくとも4つの置換を含有し、(iii)配列番号:1のエステラーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性及び/又は向上した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、(i)配列番号:1に示される全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、F208、D203、S248、V170、V177、T176、T61、S65、N211又はY92から選択される位置に少なくとも4つの置換を含有し、(iii)配列番号:1のエステラーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性及び/又は向上した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。
【0009】
好ましくは、該エステラーゼは、F208+D203+S248の位置における置換の組み合わせ及びV170、V177、T176、T61、S65、N211又はY92から選択される位置に1つ又は2つの置換を少なくとも含む。
【0010】
本発明の別の目的は、本発明のエステラーゼをコードする核酸を提供することである。また、本発明は、前記核酸を含む発現カセット又は発現ベクター及び前記核酸、発現カセット又はベクターを含むホスト細胞に関する。
【0011】
また、本発明は、本発明のエステラーゼ、本発明のホスト細胞又はその抽出物を含む、組成物を提供する。
【0012】
本発明の更なる目的は、(a)本発明のホスト細胞を、エステラーゼをコードする核酸を発現するのに適した条件下で培養することと、場合により、(b)前記エステラーゼを細胞培養物から回収することとを含む、本発明のエステラーゼを製造する方法を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、ポリエステルを分解する方法であって、(a)ポリエステルを本発明のエステラーゼ又は本発明のホスト細胞又は本発明の組成物と接触させることと、場合により、(b)モノマー及び/又はオリゴマーを回収することとを含む、方法を提供することである。
【0014】
特に、本発明は、PETを分解する方法であって、PETを少なくとも1種の本発明のエステラーゼと接触させることと、場合により、PETのモノマー及び/又はオリゴマーを回収することとを含む、方法を提供することである。
【0015】
また、本発明は、ポリエステル含有材料の少なくとも1種のポリエステルを分解する方法であって、下記工程:(a)ポリエステル含有材料を本発明のエステラーゼ又はホスト細胞と接触させることにより、ポリエステル含有材料の少なくとも1種のポリエステルを分解する工程と、場合により、(b)前記少なくとも1種のポリエステルのモノマー及び/又はオリゴマーを回収する工程とを含む、方法に関する。
【0016】
また、本発明は、PET又はPETを含有するプラスチック製品を分解するための、本発明のエステラーゼの使用に関する。
【0017】
また、本発明は、本発明のエステラーゼ又はホスト細胞又は組成物が含まれている、ポリエステル含有材料に関する。
【0018】
また、本発明は、本発明のエステラーゼもしくはホスト細胞又は本発明のエステラーゼを含む組成物を含む、洗剤組成物に関する。
【0019】
発明の詳細な説明
定義
本開示は、下記定義を参照することにより最も良く理解されるであろう。
【0020】
本明細書において、「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」、「酵素」という用語は、鎖を形成するアミノ酸の数にかかわらず、ペプチド結合により連結されたアミノ酸の鎖を指す。本明細書において、アミノ酸は、下記命名法に従った1文字又は3文字のコードにより表される:A:アラニン(Ala);C:システイン(Cys);D:アスパラギン酸(Asp);E:グルタミン酸(Glu);F:フェニルアラニン(Phe);G:グリシン(Gly);H:ヒスチジン(His);I:イソロイシン(Ile);K:リシン(Lys);L:ロイシン(Leu);M:メチオニン(Met);N:アスパラギン(Asn);P:プロリン(Pro);Q:グルタミン(Gln);R:アルギニン(Arg);S:セリン(Ser);T:トレオニン(Thr);V:バリン(Val);W:トリプトファン(Trp)及びY:チロシン(Tyr)。
【0021】
「エステラーゼ」という用語は、酵素命名法に従ってEC 3.1.1に分類されるヒドロラーゼのクラスに属し、エステルの酸とアルコールとへの加水分解を触媒する酵素を指す。「クチナーゼ」又は「クチンヒドロラーゼ」という用語は、酵素命名法に従ってEC 3.1.1.74に分類され、クチン及び水からのクチンモノマーの生成の化学反応を触媒可能なエステラーゼを指す。
【0022】
「野生型タンパク質」又は「親タンパク質」という用語は、天然に存在するポリペプチドの非突然変異版を指す。本件では、親エステラーゼは、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するエステラーゼを指す。
【0023】
「突然変異体」及び「変異体」という用語は、配列番号:1に由来し、1つ以上の(例えば、複数の)位置に少なくとも1つの修飾又は改変、すなわち、置換、挿入及び/又は欠失を含み、ポリエステル分解活性を有するポリペプチドを指す。変異体は、当技術分野において周知の種々の技術により得ることができる。特に、野生型タンパク質をコードするDNA配列を改変するための技術の例は、部位特異的突然変異誘発、ランダム突然変異誘発及び合成オリゴヌクレオチド構築を含むが、これらに限定されない。このため、本明細書で使用する場合、特定の位置に関する「修飾」及び「改変」という用語は、この特定の位置のアミノ酸が野生型タンパク質におけるこの特定の位置のアミノ酸と比較して修飾されていることを意味する。
【0024】
「置換」は、アミノ酸残基が別のアミノ酸残基により置き換えられていることを意味する。好ましくは、「置換」という用語は、天然の標準的な20種のアミノ酸残基、天然に稀に存在するアミノ酸残基(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、アロヒドロキシリシン、6-N-メチルリシン、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、アロイソロイシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、ピログルタミン、アミノ酪酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン)及び多くの場合合成される非天然アミノ酸残基(例えば、シクロヘキシルアラニン)から選択される別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置き換えを指す。好ましくは、「置換」という用語は、天然の標準的な20種アミノ酸残基(G、P、A、V、L、I、M、C、F、Y、W、H、K、R、Q、N、E、D、S及びT)から選択される別のアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置き換えを指す。「+」という符号は、置換の組み合わせを示す。本明細書において、下記専門用語は、置換を指定するのに使用される:L82Aは、親配列の82位のアミノ酸残基(ロイシン、L)がアラニン(A)により置換されていることを指す。A121V/I/Mは、親配列の121位のアミノ酸残基(アラニン、A)が下記アミノ酸:バリン(V)、イソロイシン(I)又はメチオニン(M)のうちの1つにより置換されていることを指す。置換は、保存的置換又は非保存的置換であることができる。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リシン及びヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸及びアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン及びトレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン及びバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン)及び小型アミノ酸(グリシン、アラニン及びセリン)のグループ内である。
【0025】
特に断りない限り、本願で開示された位置は、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を参照してナンバリングされる。
【0026】
本明細書で使用する場合、「配列同一性」又は「同一性」という用語は、2つのポリペプチド配列間の一致(同一のアミノ酸残基)の数(又は割合%として表現される分率)を指す。配列同一性は、配列ギャップを最小限にしながら、重複及び同一性を最大限にするようにアライメントされた場合の配列を比較することにより決定される。特に、配列同一性は、2つの配列の長さに応じて、多数の数学的グローバル又はローカルアラインメントアルゴリズムのいずれかを使用して決定することができる。類似の長さの配列は、好ましくは、配列を全長にわたって最適にアライメントさせるグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman及びWunschアルゴリズム;Needleman and Wunsch, 1970)を使用してアライメントされ、一方、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、ローカルアラインメントアルゴリズム(例えば、Smith及びWatermanアルゴリズム(Smith and Waterman, 1981)又はAltschulアルゴリズム(Altschul et al., 1997;Altschul et al., 2005))を使用してアライメントされる。アミノ酸配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、例えば、インターネットウェブサイト、例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/又はhttp://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/上で利用可能な公衆に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の範囲内である種々の方法で達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するのに適したパラメーターを決定することができる。本明細書の目的で、% アミノ酸配列同一性値は、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して2つの配列の最適なグローバルアラインメントを生成するペアワイズ配列アラインメントプログラムEMBOSS Needleを使用して生成される値を指し、ここで、全ての検索パラメーターは、デフォルト値、すなわち、スコアリングマトリックス=BLOSUM62、ギャップオープン=10、ギャップエクステンド=0.5、エンドギャップペナルティ=偽、エンドギャップオープン=10及びエンドギャップエクステンド=0.5に設定される。
【0027】
「ポリマー」は、その構造が共有化学結合により連結された複数のモノマー(繰り返し単位)から構成される化合物又は化合物の混合物を指す。本発明の文脈において、ポリマーという用語は、単一種の繰り返し単位(すなわち、ホモポリマー)又は異なる繰り返し単位の混合物(すなわち、コポリマー又はヘテロポリマー)から構成される天然又は合成ポリマーを含む。本発明によれば、「オリゴマー」は、2~約20個のモノマーを含有する分子を指す。
【0028】
本発明の文脈において、「ポリエステル含有材料」又は「ポリエステル含有製品」は、少なくとも1種のポリエステルを結晶、半結晶又は完全に非晶質の形態で含む製品、例えば、プラスチック製品を指す。特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のプラスチック材料から製造される任意の品目、例えば、プラスチックシート、チューブ、ロッド、プロファイル、シェイプ、フィルム、塊状ブロック等を指す。これらは、少なくとも1種のポリエステルと、場合により、他の物質又は添加剤、例えば、可塑剤、鉱物又は有機充填剤を含有する。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、プラスチック製品を製造するのに適した、溶融状又は固体状のプラスチックコンパウンド又はプラスチック配合物を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のポリエステルを含む織物、布地又は繊維を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック廃棄物又は繊維廃棄物を指す。
【0029】
本説明において、「ポリエステル」という用語は、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンスクシナート(PBS)、ポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)及びこれらのポリマーのブレンド/混合物を包含するが、これらに限定されない。
【0030】
新規なエステラーゼ
本発明は、親エステラーゼと比較して改善された活性及び/又は改善された熱安定性を有する新規なエステラーゼを提供する。とりわけ、本発明者らは、工業プロセスでの使用に特に適した新規な酵素を設計した。本発明のエステラーゼは、ポリエステル、とりわけ、PET(PET含有材料及び特に、PETを含有するプラスチック製品を含む)を分解するのに特に適している。特定の実施態様では、エステラーゼは、向上した活性及び向上した熱安定性の両方を示す。
【0031】
したがって、本発明の目的は、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するエステラーゼと比較して、向上した活性を示すエステラーゼを提供することである。
【0032】
特に、本発明者らは、基質とエステラーゼとの接触を促進し、ポリマーの吸着を増加させかつ/又はそれによりこのポリマーに対するエステラーゼの活性を向上させるように有利に修飾されていることができる、エステラーゼのX線結晶構造(すなわち、折り畳まれた3D構造)においてポリマー基質と接触することが意図される、配列番号:1の特定のアミノ酸残基を特定した。
【0033】
本発明の文脈において、「向上した活性」又は「向上した分解活性」という用語は、配列番号:1のエステラーゼが同じ温度で同じポリエステルを分解する能力と比較して、所定の温度でポリエステルを分解するエステラーゼの向上した能力及び/又はポリエステルに吸着する向上した能力を示す。特に、本発明のエステラーゼは、向上したPET分解活性を有する。このような向上は、配列番号:1のエステラーゼのPET分解活性より少なくとも10%、好ましくは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%以上高いことができる。特に、分解活性は、ポリエステルのモノマー及び/又はオリゴマーをもたらす脱重合活性であり、モノマー及び/又はオリゴマーをさらに回収し、場合により再利用することができる。
【0034】
エステラーゼの「分解活性」は、当業者に公知の方法に従って、当業者が評価することができる。例えば、分解活性は、特定のポリマーの脱重合活性速度の測定、アガープレート中に分散された固体ポリマーコンパウンドを分解する速度の測定又は反応器中でのポリマーの脱重合活性速度の測定により評価することができる。特に、分解活性は、エステラーゼの「比分解活性」を測定することにより評価することができる。PETについてのエステラーゼの「比分解活性」は、反応の最初の期間(すなわち、最初の24時間)におけるエステラーゼ1mgあたりに加水分解されたPET μmol/分又はmg 生成された当量のTA/時間に相当し、反応の加水分解曲線の直線部分から決定され、このような曲線は、最初の24時間の間に異なる時間に行われる複数回のサンプリングにより設定される。別の例として、「分解活性」は、ポリマー又はポリマー含有プラスチック製品を分解酵素と接触させる場合、温度、pH及びバッファーの適切な条件下で放出されるオリゴマー及び/又はモノマーの割合を、定義された期間後に測定することにより評価することができる。
【0035】
酵素が基質に吸着する能力は、当業者により、当技術分野においてそれ自体公知の方法に従って評価することができる。例えば、酵素が基質に吸着する能力は、酵素を含有する溶液から測定することができ、ここで、酵素は、適切な条件下で基質と予めインキュベーションされる。
【0036】
また、本発明者らは、高温、有利には、50℃超、好ましくは、70℃超の温度で、対応するエステラーゼの安定性を改善する(すなわち、改善された熱安定性)のに有利に改変することができる、配列番号:1におけるターゲットアミノ酸残基を特定した。
【0037】
したがって、本発明の目的は、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するエステラーゼの熱安定性と比較して向上した熱安定性を示す、新規エステラーゼを提供することである。
【0038】
本発明の文脈において、「向上した熱安定性」という用語は、配列番号:1のエステラーゼと比較して、エステラーゼが、高温、特に、50℃~90℃の温度で、その化学的及び/又は物理的構造の変化に抵抗する向上した能力を示す。
【0039】
特に、熱安定性は、エステラーゼの融解温度(Tm)の評価により評価することができる。本発明の文脈において、「融解温度」は、考慮される酵素集団の半分がアンフォールドされるか又はミスフォールドされる温度を指す。典型的には、本発明のエステラーゼは、配列番号:1のエステラーゼのTmと比較して、約1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、10℃、12℃以上のTmの上昇を示す。特に、本発明のエステラーゼは、配列番号:1のエステラーゼと比較して、50℃~90℃の温度で延長した半減期を有することができる。
【0040】
エステラーゼの融解温度(Tm)は、当業者により、当技術分野においてそれ自体公知の方法に従って測定することができる。例えば、DSFを使用して、エステラーゼの熱変性温度の変化を定量化し、それにより、そのTmを決定することができる。代替的には、Tmは、円二色性を使用したタンパク質フォールディングの分析により評価することができる。好ましくは、Tmは、実験部で触れられたDSF又は円二色性を使用して測定される。本発明の文脈において、Tmの比較は、同じ条件(例えば、pH、ポリエステルの性質及び量等)下で測定されるTmにより行われる。
【0041】
代替的には、熱安定性は、異なる温度でインキュベーションした後のエステラーゼのエステラーゼ活性及び/又はポリエステル脱重合活性を測定し、親エステラーゼのエステラーゼ活性及び/又はポリエステル脱重合活性と比較することにより評価することができる。異なる温度でポリエステルの脱重合アッセイを複数回行う能力も評価することができる。迅速かつ価値のある試験は、種々の温度でのインキュベーション後にアガープレート中に分散された固体ポリエステル化合物を分解するエステラーゼの能力のハロー直径測定による評価からなることができる。
【0042】
このため、本発明の目的は、(i)配列番号:1に示される全長アミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、(ii)配列番号:1のアミノ酸配列と比較して、F208、D203、S248、V170、V177、T176、T61、S65、N211又はY92から選択される位置に少なくとも4つの置換を含有し、(iii)配列番号:1のエステラーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性及び/又は向上した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。
【0043】
本発明によれば、ターゲットアミノ酸は、19種の他のアミノ酸のいずれか1つにより置き換えることができる。
【0044】
特定の実施態様では、該エステラーゼ変異体は、F208I/W、D203C、S248C、V170I、V177I、T176N、T61M、S65T又はY92G/Pから選択される少なくとも4つの置換を含有する。
【0045】
別の特定の実施態様では、該エステラーゼ変異体は、F208I/W、D203C、S248C、V170I、V177I、T176N、T61M、S65T、N211D/M又はY92G/PもしくはY92Fから選択される少なくとも4つの置換を含有する。
【0046】
好ましい実施態様では、本発明のエステラーゼは、親エステラーゼにおけるのと同様に、S130、D175又はH207から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、すなわち、本発明のエステラーゼは、これらの位置のうちの1つ、2つ又は全てで修飾されていない。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼにおけるのと同様に、S130+D175+H207の組み合わせを含む。
【0047】
特定の実施態様では、該エステラーゼは、F208+D203+S248の位置における置換の組み合わせ及びV170、V177、T176、T61、S65、N211又はY92から選択される位置における1つの置換を少なくとも含む。特定の実施態様では、該エステラーゼは、F208+D203+S248+V170、F208+D203+S248+V177、F208+D203+S248+T61、F208+D203+S248+Y92、F208+D203+S248+T176、F208+D203+S248+S65、F208+D203+S248+N211又はF208+D203+S248+V170+Y92から選択される位置の少なくとも1つの置換の組み合わせを含む。特に、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C又はF208W+D203C+S248Cから選択される置換の組み合わせ及びT61M、V170I、V177I、T176N、S65T、N211D/M又はY92G/P/Fから選択される1つの置換を少なくとも含む。
【0048】
特定の実施態様によれば、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I、F208W+D203C+S248C+V170I、F208I+D203C+S248C+V177I、F208W+D203C+S248C+V177I、F208I+D203C+S248C+Y92G、F208W+D203C+S248C+Y92G、F208I+D203C+S248C+Y92F、F208W+D203C+S248C+Y92F、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G、F208W+D203C+S248C+V170I+Y92G、F208I+D203C+S248C+T61M、F208W+D203C+S248C+T61M、F208I+D203C+S248C+T176N、F208W+D203C+S248C+T176N、F208I+D203C+S248C+S65T及びF208W+D203C+S248C+S65Tからなる組み合わせから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0049】
特定の実施態様によれば、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+N211D、F208W+D203C+S248C+N211D、F208I+D203C+S248C+N211M及びF208W+D203C+S248C+N211Mからなる組み合わせから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0050】
実施態様において、該エステラーゼは、F208+D203+S248の位置における置換の組み合わせ及びV170又はY92の位置における1つ又は2つの置換を少なくとも含む。好ましくは、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C又はF208W+D203C+S248Cから選択される置換の組み合わせ及びV170I又はY92Gから選択される1つ又は2つの置換を少なくとも含む。特に、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I、F208I+D203C+S248C+Y92G又はF208I+D203C+S248C+V170I+Y92Gから選択される置換の組み合わせを含む。代替的には、該エステラーゼは、F208W+D203C+S248C+V170I、F208W+D203C+S248C+Y92G又はF208W+D203C+S248C+V170I+Y92Gから選択される置換の組み合わせを含む。
【0051】
特定の実施態様では、本発明の変異体は、さらに、T11、R12、A14、W69、R73、A205、N214、A215、A216、I217、F238、V242、D244、P245、A246、L247、D94、R138、D158、Q182、F187、P10、L15、D18、N87、S88、S95、Q99、K159、A174、A125、S218、S13、T16、L202、N204、S212、V219、Y220、Q237、L239、N241、N243、A62、L67、D91、P93、M131、P210、A209、P179、R30、G37、R72、S98、A68、R96、H156、H183、A17、T27、S48、F90、L82、G135、A140、N143、S145、A149、S164、V167、S206、N213、T252、E173、G53、A121、T157、N211、Y60、D63又はS66から選択される位置に少なくとも1つの置換を含む。
【0052】
特定の実施態様では、本発明の変異体は、さらに、N213、N211、A121、N204、S212、A125、G135、W69、N214、N241、N243、R12、P179、V242又はV167から選択される位置に少なくとも1つの置換を含む。
【0053】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、さらに、置換N213P/D、好ましくは、N213Pを含む。特に、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P、F208I+D203C+S248C+V170I+N213P又はF208I+D203C+S248C+Y92G+N213Pから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。好ましくは、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213Pからなる置換の組み合わせを含む。
【0054】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、さらに、置換N211D/Mを含む。特に、該変異体は、F208I/W+D203C+S248C+V170I+Y92G+N211D/M、F208I/W+D203C+S248C+V170I+N211D/M又はF208I/W+D203C+S248C+Y92G+N211D/Mから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。好ましくは、該変異体は、F208I/W+D203C+S248C+V170I+Y92G+N211M、F208I/W+D203C+S248C+V170I+N211M又はF208I/W+D203C+S248C+Y92G+N211Mから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0055】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、さらに、置換A121Sを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+A121S、F208I+D203C+S248C+V170I+A121S又はF208I+D203C+S248C+Y92G+A121Sから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0056】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、さらに、置換N204D/I/L/Y/H/Fを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N204D/I/L/Y/H/F、F208I+D203C+S248C+V170I+N204D、F208I+D203C+S248C+Y92G+N204Dから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0057】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、さらに、置換S212F/T/I/Lを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+S212F/T/I/L、F208I+D203C+S248C+V170I+S212F又はF208I+D203C+S248C+Y92G+S212Fから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0058】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換A125Gを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+A125G、F208I+D203C+S248C+V170I+A125G又はF208I+D203C+S248C+Y92G+A125Gから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0059】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換G135Aを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+G135Aの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0060】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換W69Rを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+W69R、F208I+D203C+S248C+V170I+W69R又はF208I+D203C+S248C+Y92G+W69Rの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0061】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換N214D/I/L/F/Y/Hを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N214D/I/L/F/Y/Hの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0062】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換N241Pを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N241Pの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0063】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換N243Pを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N243Pの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0064】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換R12F/Y/Hを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+R12F/Y/Hの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0065】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換P179Eを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+P179Eの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0066】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換V242Yを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+V242Yの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0067】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換V167Qを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+V167Qの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0068】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、置換A140Sを含む。
【0069】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、さらに、T11、R12、A14、W69、R73、A205、N214、A215、A216、F238、V242、D244、P245、A246、L247、Q182、F187又はS218から選択される位置に少なくとも1つの置換を含む。該置換は、より好ましくは、T11M/E/I/S/N/D/Q、R12Q/D/N/G/P/F/V/E/L/Y、R12H、A14E/D、W69D/M/E/R、R73I/G/M/D/E/S/C/Q/F/N/V、A205D、N214D/E/C、N214I/L/F/Y/H、A215N、A216Q、F238E、V242P/Y、D244E/C、P245D/Y/E、A246S/D/H/E、L247T、Q182D/E、F187Y/I又はS218Aから選択される。実施態様において、該エステラーゼは、T11M/I/S/N/D、R12N/G/P/V/L、A14E、W69M、R73I/G/D/S/C/Q/F/N/V、A205D、N214E/C、A215N、P245Y又はA246D/Hから選択される少なくとも1つの置換を含む。別の特定の実施態様では、本発明の変異体は、さらに、T11、R12、A14、W69、R73、A205、N214、A215、A216、I217、F238、V242、D244、P245、A246、L247、D94、R138、D158、Q182、F187、P10、L15、D18、N87、S88、S95、Q99、K159、A174、A125、S218、S13、T16、L202、N204、S212、V219、Y220、Q237、L239、N241、N243、A62、L67、D91、P93、M131、P210、A209、P179、R30、G37、R72、S98、A68、R96、H156、H183、A17、T27、S48、F90、L82、G135、A140、N143、S145、A149、S164、V167、S206、N213、T252、E173、G53、A121、T157、N211、Y60、D63又はS66から選択される位置に少なくとも2つの置換を含む。
【0070】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、さらに、S212F+N213Pの置換の組み合わせを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+S212F+N213P、F208I+D203C+S248C+Y92G+S212F+N213P又はF208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+S212F+N213Pから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0071】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、N213P、G135A、A140S、V167Q、N241P又はR12Hから選択される少なくとも2つの置換を含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+R12H+N241P、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+R12H+V167Q、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+A140S+V167Q又はF208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N241P+V167Qから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0072】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、N213P、G135A、V167Q、N241P又はR12Hから選択される少なくとも3つの置換を含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A+V167Q、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A+N241P、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A+R12H又はF208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N241P+V167Q+R12Hから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0073】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、A17T、T27S、S48T、F90L、L82I、G135A、A140S、N143I、S145T、A149G、S164P、V167Q、S206T、N213P又はT252Sから選択される少なくとも1つの置換、好ましくは、少なくとも2つの置換を含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+Y92F+A17T+T27S+S48T+L82I+G135A+A140S+N143I+S145T+A149G+S164P+V167Q+S206T+N213P+T252S、F208I+D203C+S248C+Y92G+A17T+T27S+S48T+L82I+F90L+G135A+A140S+N143I+S145T+A149G+S164P+V167Q+S206T+N213P+T252S又はF208I+D203C+S248C+Y92F+T27S+S48T+L82I+F90L+G135A+A140S+N143I+S145T+A149G+S164P+V167Q+S206T+N213P+T252Sから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0074】
別の特定の実施態様では、該エステラーゼは、さらに、WO第2018/011284号及び/又はWO第2018/011281号で言及された、1つもしくは複数の置換又は置換の組み合わせを含む。更なる実施態様では、本発明のエステラーゼは、さらに、親エステラーゼにおけるのと同様に、C240+C257又はS130+D175+H207+C240+C257から選択されるアミノ酸の組み合わせを少なくとも含む、すなわち、本発明のエステラーゼは、配列番号:1と比較して、これらの位置で修飾されていない。
【0075】
別の実施態様では、本発明のエステラーゼは、さらに、親エステラーゼにおけるのと同様に、G59、Y60、T61、D63、S65、S66、N85、T86、R89、F90、H129、W155、T157、T176、V177、A178及びN211から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、すなわち、本発明のエステラーゼは、配列番号:1と比較して、これらの位置のうちの1つで修飾されていない。好ましくは、該エステラーゼは、親エステラーゼにおけるのと同様に、アミノ酸残基F90を含む。
【0076】
本発明の更なる目的は、(i)配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有し、(ii)F208、D203、S248、V170、V177、T176、S65、T61又はF92から選択される位置に少なくとも4つの置換を有し、ここで、該位置は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を参照してナンバリングされ、(iii)配列番号:1のエステラーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性及び/又は向上した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。
【0077】
本発明の更なる目的は、(i)配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有し、(ii)F208、D203、S248、V170、V177、T176、S65、T61、N211又はF92から選択される位置に少なくとも4つの置換を有し、ここで、該位置は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を参照してナンバリングされ、(iii)配列番号:1のエステラーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性及び/又は向上した熱安定性を示す、エステラーゼを提供することである。
【0078】
配列番号:2に示されるアミノ酸配列は、配列番号:1と比較して、A17T+T27S+S48T+L82I+F90L+Y92F+G135A+A140S+N143I+S145T+A149G+S164P+V167Q+S206T+N213P+T252Sの置換の組み合わせを有する、配列番号:1のアミノ酸配列の変異体に相当する。
【0079】
特定の実施態様では、該エステラーゼ変異体は、配列番号:2のエステラーゼと比較して、F208I/W、D203C、S248C、V170I、V177I、T176N、T61M、S65T又はF92G/Pから選択される少なくとも4つの置換を含有する。
【0080】
特定の実施態様では、該エステラーゼ変異体は、配列番号:2のエステラーゼと比較して、F208I/W、D203C、S248C、V170I、V177I、T176N、T61M、S65T、N211D/M又はF92G/Pから選択される少なくとも4つの置換を含有する。
【0081】
好ましい実施態様では、本発明のエステラーゼは、配列番号:2におけるのと同様に、S130、D175又はH207から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、すなわち、本発明のエステラーゼは、これらの位置の1つ、2つ又は全てで修飾されていない。好ましくは、該エステラーゼは、配列番号:2におけるのと同様に、S130+D175+H207の組み合わせを含む。
【0082】
特定の実施態様では、該エステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、F208+D203+S248の位置における置換の組み合わせ及びV170、V177、T176、T61又はF92から選択される位置における1つの置換を少なくとも含む。特定の実施態様では、該エステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、F208+D203+S248の位置における置換の組み合わせ及びV170、V177、T176、T61、S65、N211又はF92から選択される位置における1つの置換を少なくとも含む。特定の実施態様では、該エステラーゼは、F208+D203+S248+V170、F208+D203+S248+V177、F208+D203+S248+T61、F208+D203+S248+F92、F208+D203+S248+T176、F208+D203+S248+S65、F208+D203+S248+N211又はF208+D203+S248+V170+F92から選択される位置に1つの置換の組み合わせを含む。特に、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C又はF208W+D203C+S248Cから選択される置換の組み合わせ及びT61M、V170I、V177I、T176N、S65T、N211D/M又はF92G/Pから選択される1つの置換を少なくとも含む。
【0083】
特定の実施態様によれば、該エステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、F208I+D203C+S248C+V170I、F208W+D203C+S248C+V170I、F208I+D203C+S248C+V177I、F208W+D203C+S248C+V177I、F208I+D203C+S248C+F92G、F208W+D203C+S248C+F92G、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G、F208W+D203C+S248C+V170I+F92G、F208I+D203C+S248C+T61M、F208W+D203C+S248C+T61M、F208I+D203C+S248C+T176N、F208W+D203C+S248C+T176N、F208I+D203C+S248C+S65T及びF208W+D203C+S248C+S65Tからなる組み合わせから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0084】
特定の実施態様によれば、該エステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、F208I+D203C+S248C+N211D、F208W+D203C+S248C+N211D、F208I+D203C+S248C+N211M、F208W+D203C+S248C+N211Mからなる組み合わせから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0085】
特定の実施態様では、該エステラーゼは、F208+D203+S248の位置における置換の組み合わせ及びV170又はF92から選択される位置における1つ又は2つの置換を少なくとも含む。好ましくは、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C又はF208W+D203C+S248Cから選択される位置における置換の組み合わせ及びV170I又はF92Gから選択される1つ又は2つの置換を少なくとも含む。特に、該エステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I、F208I+D203C+S248C+F92G又はF208I+D203C+S248C+V170I+F92Gから選択される少なくとも1つの置換の組み合わせを含む。代替的には、該エステラーゼは、F208W+D203C+S248C+V170I、F208W+D203C+S248C+F92G又はF208W+D203C+S248C+V170I+F92Gから選択される置換の組み合わせを含む。
【0086】
特定の実施態様では、本発明の変異体は、さらに、T11、R12、A14、W69、R73、A205、N214、A215、A216、I217、F238、V242、D244、P245、A246、L247、D94、R138、D158、Q182、F187、P10、L15、D18、N87、S88、S95、Q99、K159、A174、A125、S218、S13、T16、L202、N204、S212、V219、Y220、Q237、L239、N241、N243、A62、L67、D91、P93、M131、P210、A209、P179、R30、G37、R72、S98、A68、R96、H156、H183、E173、G53、A121、T157、N211、Y60、D63又はS66から選択される位置に少なくとも1つの置換を含む。ここで、該位置は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を参照してナンバリングされる。
【0087】
特定の実施態様では、本発明の変異体は、さらに、N211、A121、N204、S212、A125、W69、N214、N241、N243、R12、P179又はV242から選択される位置に少なくとも1つの置換を含む。
【0088】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換N211D/Mを含む。特に、該変異体は、F208I/W+D203C+S248C+V170I+F92G+N211D/M、F208I/W+D203C+S248C+V170I+N211D/M又はF208I/W+D203C+S248C+F92G+N211D/Mから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。好ましくは、該変異体は、F208I/W+D203C+S248C+V170I+F92G+N211M、F208I/W+D203C+S248C+V170I+N211M又はF208I/W+D203C+S248C+F92G+N211Mから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0089】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換A121Sを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+A121S、F208I+D203C+S248C+V170I+A121S又はF208I+D203C+S248C+F92G+A121Sから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0090】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換N204D/I/L/Y/H/Fを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+N204D/I/L/Y/H/F、F208I+D203C+S248C+V170I+N204D又はF208I+D203C+S248C+F92G+N204Dから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0091】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換S212F/T/I/Lを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+S212F/T/I/L、F208I+D203C+S248C+V170I+S212F又はF208I+D203C+S248C+F92G+S212Fから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0092】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換A125Gを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+A125G、F208I+D203C+S248C+V170I+A125G又はF208I+D203C+S248C+F92G+A125Gから選択される置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0093】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換W69Rを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+W69R、F208I+D203C+S248C+V170I+W69R又はF208I+D203C+S248C+F92G+W69Rの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0094】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換N214D/I/L/F/Y/Hを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+N214D/I/L/F/Y/Hの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0095】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換N241Pを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+N241Pの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0096】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換N243Pを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+N243Pの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0097】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換R12F/Y/Hを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+R12F/Y/Hの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0098】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換P179Eを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+P179Eの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0099】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、置換V242Yを含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+V242Yの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0100】
実施態様において、本発明の変異体は、さらに、T11、R12、A14、W69、R73、A205、N214、A215、A216、F238、V242、D244、P245、A246、L247、Q182、F187又はS218から選択される位置に少なくとも1つの置換を含む。該置換は、より好ましくは、T11M/E/I/S/N/D/Q、R12Q/D/N/G/P/F/V/E/L/Y、R12H、A14E/D、W69D/M/E/R、R73I/G/M/D/E/S/C/Q/F/N/V、A205D、N214D/E/C、N214I/L/F/Y/H、A215N、A216Q、F238E、V242P/Y、D244E/C、P245D/Y/E、A246S/D/H/E、L247T、Q182D/E、F187Y/I又はS218Aから選択される。実施態様において、該エステラーゼは、T11M/I/S/N/D、R12N/G/P/V/L、A14E、W69M、R73I/G/D/S/C/Q/F/N/V、A205D、N214E/C、A215N、P245Y又はA246D/Hから選択される少なくとも1つの置換を含む。
【0101】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、さらに、T11、R12、A14、W69、R73、A205、N214、A215、A216、I217、F238、V242、D244、P245、A246、L247、D94、R138、D158、Q182、F187、P10、L15、D18、N87、S88、S95、Q99、K159、A174、A125、S218、S13、T16、L202、N204、S212、V219、Y220、Q237、L239、N241、N243、A62、L67、D91、P93、M131、P210、A209、P179、R30、G37、R72、S98、A68、R96、H156、H183、E173、G53、A121、T157、N211、Y60、D63又はS66から選択される位置に少なくとも2つの置換を含む。ここで、該位置は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を参照してナンバリングされる。
【0102】
実施態様において、本発明のエステラーゼは、配列番号:2のエステラーゼと比較して、N241P+R12Hの置換の組み合わせを少なくとも含む。特に、該変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G+N241P+R12Hの置換の組み合わせを少なくとも含む。
【0103】
特定の実施態様では、該エステラーゼは、さらに、WO第2018/011284号及び/又はWO第2018/011281号で言及された、1つもしくは複数の置換又は置換の組み合わせを含む。
【0104】
更なる実施態様では、本発明のエステラーゼは、さらに、配列番号:2におけるのと同様に、C240+C257又はS130+D175+H207+C240+C257から選択されるアミノ酸残基の少なくとも1つの組み合わせを含む、すなわち、本発明のエステラーゼは、配列番号:2と比較して、これらの位置で修飾されていない。
【0105】
別の実施態様では、本発明のエステラーゼは、さらに、配列番号:2におけるのと同様に、G59、Y60、T61、D63、S65、S66、N85、T86、R89、H129、W155、T157、T176、V177、A178及びN211から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む、すなわち、本発明のエステラーゼは、配列番号:2と比較して、これらの位置のうちの1つで修飾されていない。
【0106】
特定の実施態様では、配列番号:1又は配列番号:2から得られた本発明のエステラーゼは、さらに、配列番号:3に示される全長アミノ酸配列に対して少なくとも55%、65%、75%、85%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列をN末端に含む。特に、該エステラーゼは、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6又は配列番号:7に示されるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列をN末端に含むことができる。特に、配列番号:1から得られた本発明のエステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G、F208I+D203C+S248C+V170I又はF208I+D203C+S248C+Y92Gから選択される置換の組み合わせ及び配列番号:5(SPSVEAQ)をN末端に少なくとも含む。特に、配列番号:2から得られた本発明のエステラーゼは、F208I+D203C+S248C+V170I+F92G、F208I+D203C+S248C+V170I又はF208I+D203C+S248C+F92Gから選択される置換の組み合わせ及び配列番号:5(SPSVEAQ)をN末端に少なくとも含む。
【0107】
特定の実施態様では、該エステラーゼ変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I、F208I+D203C+S248C+Y92G、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G、F208I+D203C+S248C+V177I、F208W+D203C+S248C+Y92G、F208W+D203C+S248C+V177I、F208I+D203C+S248C+N211M、F208W+D203C+S248C+N211Mから選択される置換の組み合わせを含む。このようなエステラーゼは、配列番号:1又は配列番号:2のエステラーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性及び向上した熱安定性の両方を示す。
【0108】
特定の実施態様では、該エステラーゼ変異体は、F208I+D203C+S248C+V170I、F208I+D203C+S248C+Y92G、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G、F208I+D203C+S248C+V177I、F208W+D203C+S248C+Y92G、F208W+D203C+S248C+V177I、F208I+D203C+S248C+N211M、F208W+D203C+S248C+N211M、F208W+D203C+S248C+V170I、F208W+D203C+S248C+T176N、F208I+D203C+S248C+T176N、F208I+D203C+S248C+V170I+A121S、F208I+D203C+S248C+Y92G+A121S、F208W+D203C+S248C+S65T、F208I+D203C+S248C+S65T、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N204H、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N241P、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N243P、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+R12F、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+R12Y、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+P179E、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+V242Y、F208I+D203C+S248C+V170Iから選択される置換の組み合わせ+配列番号:5をN末端に、F208I+D203C+S248C+Y92Gから選択される置換の組み合わせ+配列番号:5をN末端に、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+V167Q、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A+V167Q、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A+N241P、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A+R12H、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+R12H+N241P、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+R12H+V167Q又はF208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+A140S+V167Qから選択される置換の組み合わせを含む。このようなエステラーゼは、配列番号:1又は配列番号:2のエステラーゼと比較して、向上したポリエステル分解活性及び向上した熱安定性の両方を示す。
【0109】
好ましくは、該エステラーゼ変異体は、F208W+D203C+S248C+V177I、F208W+D203C+S248C+T176N、F208W+D203C+S248C+S65T、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A+N241P、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A+R12H、F208I+D203C+S248C+Y92G、F208I+D203C+S248C+V170I+Y92G、F208I+D203C+S248C+Y92Gから選択される置換の組み合わせ+配列番号:5をN末端に又はF208I+D203C+S248C+V170I+Y92G+N213P+G135A+V167Qから選択される置換の組み合わせを含む。
【0110】
変異体のポリエステル分解活性
本発明の目的は、エステラーゼ活性を有する新規な酵素を提供することである。特定の実施態様では、本発明の酵素は、クチナーゼ活性を示す。
【0111】
特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、ポリエステル分解活性、好ましくは、ポリエチレンテレフタラート(PET)分解活性及び/又はポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)分解活性及び/又はポリブチレンスクシナート(PBS)分解活性及び/又はポリカプロラクトン(PCL)分解活性、より好ましくは、ポリエチレンテレフタラート(PET)分解活性及び/又はポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)分解活性及び/又はポリカプロラクトン(PCL)分解活性を有する。さらにより好ましくは、本発明のエステラーゼは、ポリエチレンテレフタラート(PET)分解活性を有する。
【0112】
有利には、本発明のエステラーゼは、少なくとも20℃~90℃、好ましくは、40℃~80℃、より好ましくは、50℃~70℃、さらにより好ましくは、60℃~70℃の温度範囲でポリエステル分解活性を示す。特定の実施態様では、該エステラーゼは、65℃でポリエステル分解活性を示す。特定の実施態様では、該エステラーゼは、70℃でポリエステル分解活性を示す。特定の実施態様では、ポリエステル分解活性は、60℃~90℃の温度でも依然として測定可能である。
【0113】
特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、配列番号:1のエステラーゼと比較して、所定の温度、とりわけ、40℃~80℃、より好ましくは、50℃~70℃、さらにより好ましくは、60℃~70℃、さらにより好ましくは、65℃の温度で、向上したポリエステル分解活性を有する。
【0114】
特定の実施態様では、該エステラーゼは、配列番号:1のエステラーゼのポリエステル分解活性より、少なくとも5%、好ましくは、少なくとも10%、20%、50%、100%、130%以上高い65℃でのポリエステル分解活性を有する。
【0115】
特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、少なくともpH5~11の範囲、好ましくは、pH6~9の範囲、より好ましくは、pH6.5~9の範囲、さらにより好ましくは、pH6.5~8の範囲で測定可能なエステラーゼ活性を示す。
【0116】
核酸、発現カセット、ベクター、ホスト細胞
本発明の更なる目的は、上記定義されたエステラーゼをコードする核酸を提供することである。
【0117】
本明細書で使用する場合、「核酸」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「ヌクレオチド配列」という用語は、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドの配列を指す。核酸は、DNA(cDNA又はgDNA)、RNA又はそれらの混合物であることができる。核酸は、一本鎖の形態もしくは二本鎖の形態又はそれらの混合物であることができる。核酸は、リコンビナント、人工及び/又は合成起源であることができ、例えば、修飾結合、修飾プリンもしくはピリミジン塩基又は修飾糖を含む修飾ヌクレオチドを含むことができる。本発明の核酸は、単離又は精製された形態であることができ、当技術分野においてそれ自体公知の技術、例えば、cDNAライブラリのクローニング及び発現、増幅、酵素合成又はリコンビナント技術により生成し、単離しかつ/又は操作することができる。また、核酸は、例えば、Belousov (1997) Nucleic Acids Res. 25:3440-3444に記載されているように、周知の化学合成技術によりin vitroで合成することもできる。
【0118】
また、本発明は、ストリンジェントな条件下で、上記定義されたエステラーゼをコードする核酸にハイブリダイズする、核酸を包含する。好ましくは、このようなストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーションフィルターを2×SSC/0.1% SDS中において約42℃で約2.5時間インキュベーションし、続けて、このフィルターを1×SSC/0.1% SDS中において65℃で15分間4回洗浄することを含む。使用されるプロトコールは、Sambrook et al.(Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor N.Y. (1988))及びAusubel(Current Protocols in Molecular Biology (1989))等の参考文献に記載されている。
【0119】
また、本発明は、本発明のエステラーゼをコードする核酸を包含し、ここで、前記核酸の配列又は少なくとも前記配列の一部は、最適化されたコドン利用を使用して操作されている。
【0120】
代替的には、本発明の核酸は、本発明のエステラーゼの配列から推定することができ、コドン利用は、核酸が転写されるであろうホスト細胞に応じて適合させることができる。これらの工程は、当業者に周知の方法に従って行うことができる。同方法の一部は、参考文献マニュアルSambrook et al.(Sambrook et al., 2001)に記載されている。
【0121】
本発明の核酸は、選択されたホスト細胞又は系におけるポリペプチドの表現を引き起こし又はレギュレーションするのに使用することができる、更なる核酸配列、すなわち、レギュラトリー配列、すなわち、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、ターミネーター、シグナルペプチド等をさらに含むことができる。
【0122】
さらに、本発明は、適切なホスト細胞において前記核酸の発現に向けさせる1つ以上の制御配列に操作可能に連結された本発明の核酸を含む、発現カセットに関する。
【0123】
本明細書で使用する場合、「発現」という用語は、ポリペプチドの産生に関与する任意の工程を指し、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾及び分泌を含むがこれらに限定されない。
【0124】
「発現カセット」という用語は、コード領域、すなわち、本発明の核酸及びレギュラトリー領域、すなわち、操作可能に連結された1つ以上の制御配列を含む領域を含む核酸構築物を指す。
【0125】
典型的には、発現カセットは、制御配列、例えば、転写プロモーター及び/又は転写ターミネーターに操作可能に連結された本発明の核酸を含むか又はそれからなる。制御配列は、本発明のエステラーゼをコードする核酸の発現のためにホスト細胞又はin vitro発現系に認識されるプロモーターを含むことができる。プロモーターは、酵素の発現を媒介する転写制御配列を含有する。プロモーターは、突然変異プロモーター、切断プロモーター及びハイブリッドプロモーターを含むホスト細胞中で転写活性を示す任意のポリヌクレオチドであることができ、ホスト細胞と同種又は異種のいずれかの細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得ることができる。また、制御配列は、転写ターミネーターであることができる。転写ターミネーターは、ホスト細胞に認識されて、転写を終結させる。ターミネーターは、エステラーゼをコードする核酸の3’末端に操作可能に連結される。ホスト細胞において機能的である任意のターミネーターを本発明に使用することができる。典型的には、発現カセットは、転写プロモーター及び転写ターミネーターに操作可能に連結された本発明の核酸を含むか又はそれからなる。
【0126】
また、本発明は、上記定義された核酸又は発現カセットを含む、ベクターに関する。
【0127】
本明細書で使用する場合、「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、リコンビナント遺伝物質をホスト細胞に移入するための媒体として使用される、本発明の発現カセットを含むDNA又はRNA分子を指す。主要な種類のベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、ウイルス、コスミド及び人工染色体である。ベクター自体は、一般的には、インサート(異種核酸配列、導入遺伝子)及びベクターの「骨格」として機能するより大きな配列からなるDNA配列である。遺伝情報をホストに伝達するベクターの目的は、典型的には、ターゲット細胞中でインサートを単離し、増幅させ又は発現させることである。発現ベクター(発現構築物)と呼ばれるベクターは、ターゲット細胞中で異種配列の発現に特異的に適合され、一般的には、ポリペプチドをコードする異種配列の発現を駆動するプロモーター配列を有する。一般的には、発現ベクターに存在するレギュラトリーエレメントは、転写プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター及び場合により存在するオペレーターを含む。また、好ましくは、発現ベクターは、ホスト細胞における自律複製のための複製起点、選択マーカー、限られた数の有用な制限酵素部位及び高いコピー数の可能性も含有する。発現ベクターの例は、クローニングベクター、修飾されたクローニングベクター、特異的に設計されたプラスミド及びウイルスである。異なる宿主において適切なレベルのポリペプチド発現を提供する発現ベクターは、当技術分野において周知である。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入されるホスト細胞とのベクターの適合性により決まるであろう。好ましくは、発現ベクターは、線状又は環状二本鎖DNA分子である。
【0128】
本発明の別の目的は、上記された核酸、発現カセット又はベクターを含む、ホスト細胞を提供することである。このため、本発明は、ホスト細胞を形質転換し、トランスフェクションし又は形質導入するための、本発明の核酸、発現カセット又はベクターの使用に関する。ベクターの選択は、典型的には、ベクターが導入される必要があるホスト細胞とのベクターの適合性により決まるであろう。
【0129】
本発明によれば、ホスト細胞は、一過性又は安定な様式で形質転換され、トランスフェクションされ又は形質導入されることができる。本発明の発現カセット又はベクターは、そのカセット又はベクターが染色体組み込み体として又は自己複製染色体外ベクターとして維持されるように、ホスト細胞に導入される。また、「ホスト細胞」という用語は、複製の間に起こる突然変異のために親ホスト細胞と同一でなくなった親ホスト細胞の任意の子孫も包含する。ホスト細胞は、本発明の変異体の産生に有用な任意の細胞、例えば、原核生物又は真核生物であることができる。原核生物ホスト細胞は、グラム陽性又はグラム陰性細菌のいずれかであることができる。また、ホスト細胞は、真核生物細胞、例えば、酵母、真菌、ほ乳類、昆虫又は植物細胞であることもできる。特定の実施態様では、ホスト細胞は、Escherichia coli、Bacillus、Streptomyces、Trichoderma、Aspergillus、Saccharomyces、Pichia、Vibrio又はYarrowiaの群から選択される。
【0130】
本発明の核酸、発現カセット又は発現ベクターは、当業者に公知の任意の方法、例えば、エレクトロポレーション、コンジュゲーション、形質導入、コンピテント細胞形質転換、プロトプラスト形質転換、プロトプラスト融合、バイオリスティック「遺伝子銃」形質転換、PEG媒介形質転換、脂質補助形質転換又はトランスフェクション、化学媒介形質転換、酢酸リチウム媒介形質転換、リポソーム媒介形質転換により、ホスト細胞に導入することができる。
【0131】
場合により、本発明の核酸、カセット又はベクターの2つ以上のコピーをホスト細胞に挿入して、変異体の産生を増加させることができる。
【0132】
特定の実施態様では、ホスト細胞は、リコンビナント微生物である。実際に、本発明により、ポリエステル含有材料を分解する能力が改善された微生物の操作が可能とする。例えば、本発明の配列は、系統の能力を改善しかつ/又は向上させるために、ポリエステルを分解可能であることが既知の真菌又は細菌の野生型系統を補完するのに使用することができる。
【0133】
エステラーゼの製造
本発明の別の目的は、エステラーゼをコードする核酸を発現させ、場合により、エステラーゼを回収することを含む、本発明のエステラーゼの製造方法を提供することである。
【0134】
特に、本発明は、(a)本発明の核酸、カセット又はベクターをin vitro発現系と接触させることと、(b)産生されたエステラーゼを回収することとを含む、本発明のエステラーゼを製造するin vitro方法に関する。in vitro発現系は、当業者に周知であり、市販されている。
【0135】
好ましくは、この製造方法は、
(a)本発明のエステラーゼをコードする核酸を含むホスト細胞を、該核酸を発現させるのに適した条件下で培養することと、場合により
(b)細胞培養物から前記エステラーゼを回収することとを含む。
【0136】
有利には、ホスト細胞は、リコンビナントBacillus、リコンビナントE. coli、リコンビナントAspergillus、リコンビナントTrichoderma、リコンビナントStreptomyces、リコンビナントSaccharomyces、リコンビナントPichia、リコンビナントVibrio又はリコンビナントYarrowiaである。
【0137】
ホスト細胞は、当技術分野において公知の方法を使用して、ポリペプチドの産生に適した栄養培地中で培養される。例えば、細胞は、振とうフラスコ培養又は適切な培地中で、酵素が発現されかつ/又は単離されるのが可能な条件下で行われる実験室又は工業発酵槽中での小規模もしくは大規模発酵(連続、バッチ、フェドバッチ、又は固体相発酵を含む)により培養することができる。培養は、商業的供給元から又は公開された組成物(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ)に従って調製された適切な栄養培地中で行われる。
【0138】
該エステラーゼが、栄養培地中に分泌される場合、該エステラーゼは、培養上清から直接回収することができる。逆に、該エステラーゼは、細胞ライゼートから又は透過後に回収することができる。該エステラーゼは、当技術分野において公知の任意の方法を使用して回収することができる。例えば、該エステラーゼは、従来の手法により栄養培地から回収することができる。同手法は、回収、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿を含むが、これらに限定されない。場合により、該エステラーゼは、当技術分野において公知の各種の手法により部分的又は完全に精製することができる。同手法は、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除)、電気泳動法(例えば、調製用等電点電気泳動)、示差溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE又は実質的に純粋なポリペプチドを得るための抽出を含むが、これらに限定されない。
【0139】
該エステラーゼは、ポリエステル及び/又はポリエステル含有材料、例えば、ポリエステルを含有するプラスチック製品の分解及び/又は再利用に関与する酵素反応を触媒するために、単独で又は更なる酵素と組み合わせて、精製された形態でそのまま使用することができる。該エステラーゼは、可溶性の形態であることができ又は固体相上にあることができる。特に、該エステラーゼは、細胞膜又は脂質小胞又は合成支持体、例えば、ビーズ、カラム、プレート等の形態にある、ガラス、プラスチック、ポリマー、フィルター、膜等に結合することができる。
【0140】
組成物
本発明の更なる目的は、本発明のエステラーゼ又はホスト細胞又はその抽出物を含む、組成物を提供することである。本発明の文脈において、「組成物」という用語は、本発明のエステラーゼ又はホスト細胞を含む、任意の種類の組成物を包含する。
【0141】
本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~99.9重量%、好ましくは、0.1重量%~50重量%、より好ましくは、0.1重量%~30重量%、さらにより好ましくは、0.1重量%~5重量%のエステラーゼ含むことができる。代替的には、該組成物は、5~10重量%の本発明のエステラーゼを含むことができる。
【0142】
該組成物は、液体であることができ又は乾燥していることができ、例えば、粉末の形態にあることができる。一部の実施態様では、該組成物は、凍結乾燥物である。
【0143】
該組成物は、賦形剤及び/又は試薬等をさらに含むことができる。適切な賦形剤は、生化学において一般に使用されるバッファー、pHを調節するための作用剤、防腐剤、例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸ナトリウム、保存剤、保護剤又は安定化剤、例えば、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、塩、糖、例えば、ソルビトール、トレハロース又はラクトース、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、金属イオン封鎖剤、例えば、EDTA、還元剤、アミノ酸、担体、例えば、溶媒又は水溶液等を包含する。本発明の組成物は、エステラーゼを1種又は複数種の賦形剤と混合することにより得ることができる。
【0144】
特定の実施態様では、該組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~99.9重量%、好ましくは、50重量%~99.9重量%、より好ましくは、70重量%~99.9重量%、さらにより好ましくは、95重量%~99.9重量%の賦形剤を含む。代替的には、該組成物は、90重量%~95重量%の賦形剤を含むことができる。
【0145】
特定の実施態様では、該組成物は、酵素活性を示す更なるポリペプチドをさらに含むことができる。本発明のエステラーゼの量は、例えば、分解するポリエステル及び/又は組成物中に含まれる更なる酵素/ポリペプチドの性質に応じて、当業者により容易に適合されるであろう。
【0146】
特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、1種又は複数種の賦形剤、特に、ポリペプチドを安定化し又は分解から保護可能な賦形剤と共に水性媒体中で可溶化される。例えば、本発明のエステラーゼを、最終的に、更なる成分、例えば、グリセロール、ソルビトール、デキストリン、デンプン、グリコール、例えば、プロパンジオール、塩等と共に、水に可溶化させることができる。ついで、得られた混合物を乾燥させて、粉末を得ることができる。このような混合物を乾燥させる方法は、当業者に周知であり、凍結乾燥(lyophilisation)、凍結乾燥(freeze-drying)、噴霧乾燥、超臨界乾燥、ダウンドラフト蒸発、薄層蒸発、遠心分離蒸発、コンベヤー乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0147】
特定の実施態様では、該組成物は、粉末形態にあり、エステラーゼと、安定化/可溶化量のグリセロール、ソルビトール又はデキストリン、例えば、マルトデキストリン及び/もしくはシクロデキストリン、デンプン、グリコール、例えば、プロパンジオール並びに/又は塩とを含む。
【0148】
特定の実施態様では、本発明の組成物は、本発明のエステラーゼを発現する少なくとも1種のリコンビナント細胞又はその抽出物を含む。「細胞の抽出物」は、細胞から得られる任意の画分、例えば、細胞上清、細胞破片、細胞壁、DNA抽出物、酵素もしくは酵素調製物又は化学的、物理的及び/もしくは酵素的処理により細胞から得られる任意の調製物を指し、生きている細胞を本質的に含まない。好ましい抽出物は、酵素活性抽出物である。本発明の組成物は、本発明の1種又は複数種のリコンビナント細胞又はその抽出物及び場合により、1種又は複数種の更なる細胞を含むことができる。
【0149】
実施態様において、該組成物は、本発明のエステラーゼを発現し、分泌するリコンビナント微生物の培養培地からなるか又はそれを含む。特定の実施態様では、該組成物は、凍結乾燥されたこのような培養培地を含む。
【0150】
エステラーゼの使用
本発明の更なる目的は、好気性又は嫌気性条件において、ポリエステル又はポリエステル含有材料を分解しかつ/又は再利用するための、本発明のエステラーゼを使用する方法を提供することである。本発明のエステラーゼは、PET及びPET含有材料を分解するのに特に有用である。
【0151】
したがって、本発明の目的は、ポリエステルの酵素分解のために、本発明のエステラーゼ又は対応するリコンビナント細胞もしくはその抽出物又は組成物を使用することである。
【0152】
特定の実施態様では、該エステラーゼのターゲットとなるポリエステルは、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリブチレンスクシナート(PBS)、ポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリエチレンフラノアート(PEF)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(エチレンアジパート)(PEA)、ポリエチレンナフタラート(PEN)及びこれらの材料のブレンド/混合物、好ましくは、ポリエチレンテレフタラートから選択される。
【0153】
好ましい実施態様では、ポリエステルは、PETであり、少なくともモノマー(例えば、モノエチレングリコール又はテレフタル酸)及び/又はオリゴマー(例えば、メチル-2-ヒドロキシエチルテレフタラート(MHET)、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、1-(2-ヒドロキシエチル) 4-メチルテレフタラート(HEMT)及びジメチルテレフタラート(DMT)が回収される。
【0154】
また、本発明の目的は、ポリエステル含有材料の少なくとも1種のポリエステルの酵素分解のために、本発明のエステラーゼ又は対応するリコンビナント細胞もしくはその抽出物又は組成物を使用することである。
【0155】
本発明の別の目的は、ポリエステル含有材料の少なくとも1種のポリエステルを分解するための方法であって、ポリエステル含有材料を本発明のエステラーゼ又はホスト細胞又は組成物と接触させ、それにより、ポリエステル含有材料の少なくとも1種のポリエステルを分解する、方法を提供することである。
【0156】
有利には、ポリエステルは、モノマー及び/又はオリゴマーまで脱重合される。
【0157】
特に、本発明は、PET含有材料のPETを分解するための方法であって、PET含有材料を本発明のエステラーゼ又はホスト細胞又は組成物と接触させ、それにより、PETを分解する、方法を提供する。
【0158】
実施態様において、少なくとも1種のポリエステルは、再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーに分解され、これらは、再使用するために有利に回収することができる。回収されたモノマー/オリゴマーは、再利用(例えば、ポリエステルの再重合)又はメタン化に使用することができる。特定の実施態様では、少なくとも1種のポリエステルは、PETであり、モノエチレングリコール、テレフタル酸、メチル-2-ヒドロキシエチルテレフタラート(MHET)、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、1-(2-ヒドロキシエチル)4-メチルテレフタラート(HEMT)及び/又はジメチルテレフタラート(DMT)が回収される。
【0159】
実施態様において、ポリエステル含有材料のポリエステルは完全に分解される。
【0160】
ポリエステル含有材料を分解するのに必要な時間は、ポリエステル含有材料自体(すなわち、ポリエステル含有材料の性質及び起源、その組成、形状等)、使用されるエステラーゼの種類及び量並びに種々のプロセスパラメータ(すなわち、温度、pH、更なる作用剤等)に応じて変化させることができる。当業者であれば、プロセスパラメータをポリエステル含有材料及び想定される分解時間に容易に適合させることができる。
【0161】
有利には、該分解方法は、20℃~90℃、好ましくは、40℃~80℃、より好ましくは、50℃~70℃、より好ましくは、60℃~70℃に含まれる温度で行われる。特定の実施態様では、分解プロセスは、65℃で行われる。別の特定の実施態様では、該分解方法は、70℃で行われる。より一般的には、温度は、エステラーゼが不活性化される(すなわち、その最適温度でのその活性と比較して、80%超の活性が失われる)かつ/又はリコンビナント微生物がもはやエステラーゼを合成しない温度に対応する不活性化温度未満に維持される。特に、温度は、ターゲットとなるポリエステルのガラス転移点(Tg)未満に維持される。
【0162】
有利には、該方法は、エステラーゼを数回使用しかつ/又は再利用することができる温度での連続流動法で行われる。
【0163】
有利には、分解方法は、5~11の間に含まれるpH、好ましくは、6~9の間のpH、より好ましくは、6.5~9の間のpH、さらにより好ましくは、6.5~8の間のpHで行われる。
【0164】
特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、ポリエステルとエステラーゼとの間の接触表面を増加させるようにその構造を物理的に変化させるために、エステラーゼと接触させる前に前処理することができる。
【0165】
本発明の別の目的は、ポリエステル含有材料からモノマー及び/又はオリゴマーを製造する方法であって、ポリエステル含有材料を本発明のエステラーゼ又は対応するリコンビナント細胞もしくはその抽出物又は組成物に暴露することと、場合により、モノマー及び/又はオリゴマーを回収することとを含む、方法を提供することである。
【0166】
脱重合により生じるモノマー及び/又はオリゴマーは、順次又は連続的に回収することができる。出発ポリエステル含有材料に応じて、1つの種類のモノマー及び/もしくはオリゴマー又は複数の異なる種類のモノマー及び/もしくはオリゴマーを回収することができる。
【0167】
本発明の方法は、モノエチレングリコール及びテレフタル酸から選択されるモノマー並びに/又はメチル-2-ヒドロキシエチルテレフタラート(MHET)、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)、1-(2-ヒドロキシエチル)4-メチルテレフタラート(HEMT)及びジメチルテレフタラート(DMT)から選択されるオリゴマーを、PET及び/又はPETを含むプラスチック製品から製造するのに特に有用である。
【0168】
回収されたモノマー及び/又はオリゴマーは、全ての適切な精製方法を使用してさらに精製することができ、再重合可能な形態に調整することができる。精製方法の例は、ストリッピングプロセス、水溶液による分離、水蒸気選択的凝縮、バイオプロセス後のろ過及び媒体の濃縮、分離、蒸留、真空蒸発、抽出、電気透析、吸着、イオン交換、沈殿、結晶化、濃縮及び酸添加脱水及び沈殿、ナノろ過、酸触媒処理、半連続モード蒸留又は連続モード蒸留、溶媒抽出、蒸発濃縮、蒸発結晶化、液体/液体抽出、水素化、共沸蒸留プロセス、吸着、カラムクロマトグラフィー、単純真空蒸留並びに精密ろ過の組み合わせ又は単独を含む。
【0169】
回収された再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーは、例えば、ポリエステルを合成するのに再利用することができる。有利には、同じ性質のポリエステルが再重合される。ただし、例えば、新たなコポリマーを合成するために、回収されたモノマー及び/又はオリゴマーを他のモノマー及び/又はオリゴマーと混合することが可能である。代替的には、回収されたモノマーは、目的の新たな化合物を生成するために、化学中間体として使用することができる。
【0170】
また、本発明は、ポリエステル含有材料の表面加水分解又は表面官能化の方法であって、ポリエステル含有材料を本発明のエステラーゼ又は対応するリコンビナント細胞もしくはその抽出物又は組成物に暴露することを含む、方法に関する。本発明の方法は、ポリエステル材料の親水性又は吸水性を向上させるのに特に有用である。このように向上した親水性は、織物製造、エレクトロニクス及び生物医学的用途において特に興味深い場合がある。
【0171】
本発明の更なる目的は、本発明のエステラーゼ及び/又は前記エステラーゼを発現し、分泌するリコンビナント微生物が含まれる、ポリエステル含有材料を提供することである。一例として、本発明のエステラーゼを含むこのようなポリエステル含有材料を製造するための方法は、WO第2013/093355号、同第2016/198650号、同第2016/198652号、同第2019/043145号及び同第2019/043134号の特許出願に開示されている。
【0172】
このため、本発明の目的は、本発明のエステラーゼ及び/又はリコンビナント細胞及び/又は組成物もしくはその抽出物と、少なくともPETを含有する、ポリエステル含有材料を提供することである。実施態様によれば、本発明は、PETと、PET分解活性を有する本発明のエステラーゼとを含む、プラスチック製品を提供する。
【0173】
このため、本発明の別の目的は、本発明のエステラーゼ及び/又はリコンビナント細胞及び/又は組成物もしくはその抽出物と、少なくともPBATとを含有するポリエステル含有材料を提供することである。実施態様によれば、本発明は、PBATと、PBAT分解活性を有する本発明のエステラーゼとを含む、プラスチック製品を提供する。
【0174】
このため、本発明の別の目的は、本発明のエステラーゼ及び/又はリコンビナント細胞及び/又は組成物もしくはその抽出物と、少なくともPBSとを含有するポリエステル含有材料を提供することである。実施態様によれば、本発明は、PBSと、PBS分解活性を有する本発明のエステラーゼとを含む、プラスチック製品を提供する。
【0175】
このため、本発明の別の目的は、本発明のエステラーゼ及び/又はリコンビナント細胞及び/又は組成物もしくはその抽出物と、少なくともPCLとを含有するポリエステル含有材料を提供することである。実施態様によれば、本発明は、PCLと、PCL分解活性を有する本発明のエステラーゼとを含む、プラスチック製品を提供する。
【0176】
古典的には、本発明のエステラーゼは、洗剤、食品、動物飼料及び医薬用途に使用することができる。とりわけ、本発明のエステラーゼは、洗剤組成物の成分として使用することができる。洗剤組成物は、手洗い又は機械洗濯洗剤組成物、例えば、しみの付いた布地の前処理に適した洗濯添加剤組成物及びすすぎ添加布地柔軟剤組成物、一般的な家庭用硬質表面洗浄作業に使用するための洗剤組成物、手洗い又は機械食器洗い作業のための洗剤組成物を含むが、これらに限定されない。特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、洗剤添加剤として使用することができる。このため、本発明は、本発明のエステラーゼを含む洗剤組成物を提供する。特に、本発明のエステラーゼは、織物洗浄中のピリング作用及びグレーイング作用を低減するために、洗剤添加剤として使用することができる。
【0177】
また、本発明は、動物飼料に本発明のエステラーゼを使用するための方法並びに本発明のエステラーゼを含む飼料組成物及び飼料添加剤も対象にする。「飼料」及び「飼料組成物」という用語は、動物による摂取に適した又は動物による摂取を意図した任意のコンパウンド、調製物、混合物又は組成物を指す。別の特定の実施態様では、本発明のエステラーゼは、タンパク質を加水分解し、ペプチドを含む加水分解物を製造するのに使用される。このような加水分解物は、飼料組成物又は飼料添加剤として使用することができる。
【0178】
実施例
実施例1-エステラーゼの構築、発現及び精製
構築
本発明のエステラーゼを、プラスミド構築物pET26b-LCC-Hisを使用して生成した。このプラスミドは、NdeI及びXhoI制限部位間のEscherichia coli発現に最適化された、配列番号:1のエステラーゼをコードする遺伝子のクローニングからなる。エステラーゼ変異体を生成するために、供給元の推奨に従って、Agilent(Santa Clara, California, USA)製の2つの部位特異的突然変異誘発キット:QuikChange II Site-Directed Mutagenesisキット及びQuikChange Lightning Multi Site-Directedを使用した。
【0179】
エステラーゼの発現及び精製
Stellar(商標)(Clontech, California, USA)系統及びE. coli One Shot(登録商標) BL21 DE3(Life technologies, Carlsbad, California, USA)系統を連続的に利用して、LB-Miller培地又はZYM自己誘引培地(Studier et al., 2005- Prot. Exp. Pur. 41, 207-234) 50mL中でクローニング及びリコンビナント発現を行った。LB-Miller培地中での誘引を0.5mM イソプロピル β-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG、Euromedex, Souffelweyersheim, France)により16℃で行った。培養をAvanti J-26 XP遠心分離機(Beckman Coulter, Brea, USA)における遠心分離(8000rpm、20分、10℃)により停止させた。細胞をTalonバッファー(20mM Tris-HCl、300mM NaCl、pH8) 20mLに懸濁させた。ついで、細胞懸濁液をFB 705超音波処理装置(Fisherbrand, Illkirch, France)により、振幅の30%(2秒ON及び1秒OFFのサイクル)で2分間超音波処理した。ついで、遠心分離の工程をEppendorf遠心分離機中において11000rpm、10℃、30分間で実現した。可溶性画分を収集し、親和性クロマトグラフィーに供した。この精製工程をTalon(登録商標)Metal Affinity Resin(Clontech, CA, USA)で完了した。タンパク質溶出を、イミダゾールを補充したTalonバッファーの工程で行った。精製タンパク質を、Talonバッファーで透析し、次いで、Bio-Radタンパク質アッセイを使用し、製造メーカーの説明書(Lifescience Bio-Rad, France)に従って定量し、+4℃で保存した。
【0180】
実施例2-エステラーゼの分解活性の評価
エステラーゼの分解活性を決定し、配列番号:1のエステラーゼの分解活性と比較した。
【0181】
比活性を評価するための複数の方法を使用した。
(1)PET加水分解に基づく比活性
(2)固体状のポリエステルの分解に基づく活性
(3)100mLを超える反応器中でのPET加水分解に基づく活性
【0182】
2.1 PET加水分解に基づく比活性
100mg 非晶質PET(粉末状、WO第2017/198786号に従って調製し、20%未満の結晶化度に達した)を秤量し、100mLのガラス瓶に導入した。Talonバッファー(20mM Tris-HCl、0.3M NaCl、pH8)中において、0.02又は0.03mg/mLに調製された配列番号:1のエステラーゼ(参照対照として)又は本発明のエステラーゼを含むエステラーゼ調製物 1mLをガラス瓶に導入した。最後に、0.1M リン酸カリウムバッファー(pH8) 49mLを加えた。
【0183】
脱重合を、各ガラス瓶を60℃、65℃又は70℃及び150rpmで、Max Q 4450インキュベーター(Thermo Fisher Scientific, Inc. Waltham, MA, USA)中でインキュベーションすることにより開始した。
【0184】
脱重合反応の初速度(mg 生成された当量のTA/時間)を最初の24時間の間に異なる時点で行ったサンプリングにより決定し、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により分析した。必要であれば、サンプルを0.1M リン酸カリウムバッファー(pH8)で希釈した。ついで、メタノール 150μL及び6N HCl 6.5μLをサンプル又は希釈液 150μLに加えた。混合し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した後、サンプルをUHPLCにロードして、テレフタル酸(TA)、MHET及びBHETの遊離をモニターした。使用したクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、25℃に温度調節されたカラムオーブン及び240nmでのUV検出器を含むUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific, Inc. Waltham, MA, USA)とした。使用したカラムは、Discovery(登録商標)HS C18 HPLCカラム(150×4.6mm、5μm、プレカラムを備える、Supelco, Bellefonte, USA)とした。TA、MHET及びBHETを1mM H2SO4中のMeOHの勾配(30%~90%)を使用して1mL/分で分離した。インジェクションは、サンプル 20μLとした。TA、MHET及びBHETを市販のTA及びBHET並びに自社合成したMHETからサンプルと同じ条件で作成した検量線に従って測定した。PET加水分解の比活性(mg 当量のTA/時間/mg 酵素)を反応の加水分解曲線の直線部分において決定し、このような曲線を最初の24時間の間に異なる時点で行ったサンプリングにより設定した。当量のTAは、測定されたTAと、測定されたMHET及びBHETに含まれるTAとの合計に相当する。
2.2 固体状のポリエステルの分解に基づく活性
誘引細胞、半精製タンパク質抽出物又は精製タンパク質を、このようなエステラーゼの活性を評価するための本発明のエステラーゼを含む組成物として使用することができる。
【0185】
誘引細胞は、ZYM自己誘引培地での培養後又はLB-Miller培地(実施例1に記載)中でのIPTGによる誘引後のいずれかで得られた細胞培養物のサンプルに対応する。
【0186】
半精製タンパク質抽出物をZYM自己誘引培地での培養後又はLB-Miller培地(実施例1に記載)中でのIPTGによる誘引後のいずれかから、下記プロトコールに従って得た。培養をAvanti J-26 XP遠心分離機(Beckman Coulter, Brea, USA)における遠心分離(8000rpm、20分、10℃)により停止させた。細胞ペレットを溶解バッファー(20mM Tris-HCl、300mM NaCl、pH8)に懸濁させた。細胞を、-80℃で2時間の凍結/解凍サイクル、続けて、リソナーゼバイオプロセシング試薬(Merck Millipore, Darmstadt, Germany) 1μLの添加及び15分毎のボルテックスホモジナイゼーションを含む28℃での1時間のインキュベーションにより破壊した。ライゼートを遠心分離(2250×g、15分、4℃)により清澄化した。半精製画分を生成するために、ライゼートを70℃で1時間処理し、遠心分離(2250×g、15分、4℃)により清澄化した。画分のタンパク質濃度を、製造メーカーの説明書(Lifescience Bio-Rad, France)に従って、Bio-Radタンパク質アッセイを使用して定量した。
【0187】
精製タンパク質を実施例1に記載されたようにして得た。
【0188】
組成物のサンプルを、PET又は以下のように調製された別の固体ポリエステル化合物(例えば、PBAT又は類似体)を含有するアガーオムニトレイの表面上又は同トレイに形成されたウェル内のいずれかに置いた。PETを含有するアガープレートの作製を、500mg PETをヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)に可溶化し、この媒体を水溶液 250mLに注ぐことにより実現した。140mbar下、52℃でのHFIPの蒸発後、溶液を、3% アガーを含有する0.2M リン酸カリウムバッファー(pH8)とv/v混合した。混合物 約30mLを使用して、各オムニトレイを作製し、4℃で保存した。
【0189】
野生型エステラーゼ及び本発明の変異体によるポリエステル分解により形成されたハローの表面積又は直径を測定し、60℃、65℃又は70℃で2~24時間後に比較した。
【0190】
2.3 反応器中でのPET加水分解に基づく活性
100mM リン酸カリウムバッファー(pH8) 80mL中で調製された、0.69μmol~2.07μmol 精製エステラーゼを、500mLのMinibio反応器(Applikon Biotechnology, Delft, The Netherlands)中で20g 非晶質PET(WO第2017/198786号に従って調製、20%未満の結晶化度に達する)と混合した。60℃での温度レギュレーションを水浴浸漬により行い、1つのマリンインペラ(marine impeller)を使用して、250rpmで一定の撹拌を維持した。PET脱重合アッセイのpHを6N NaOHによりpH8にレギュレーションし、my-Control bio controllerシステム(Applikon Biotechnology, Delft, The Netherlands)により保証した。塩基消費をアッセイ中に記録し、PET脱重合アッセイの特徴決定に使用することができる。
【0191】
PET脱重合アッセイの最終収率を残留PET重量の測定又は生成された当量のTA及びEGの測定又は塩基消費のいずれかにより決定した。残留PETの重量測定は、反応の終わりに、12~15μmグレードの11無灰ろ紙(Dutscher SAS, Brumath, France)を通して反応体積をろ過し、このような残留物を乾燥させ、その後に秤量することにより評価した。生成された当量のTA及びEGの測定を、2.1に記載されたUHPLC法を使用して実現し、% 加水分解を、初期サンプル中に含まれるTAの総量に対する所定時間におけるモル濃度(TA+MHET+BHET)の比に基づいて計算した。PET脱重合により、塩基で中和されて反応器内のpHを維持可能であろう酸性モノマーが生成された。生成された当量のTAの測定は、対応するモル塩基消費量を使用して計算し、% 加水分解を初期サンプルに含まれるTAの総量に対する当量のTAの所与の時間におけるモル濃度の比に基づいて計算した。
【0192】
本発明のエステラーゼ(変異体)の比分解活性を以下の表1に示す。配列番号:1のエステラーゼの比分解活性を参照として使用し、100%の比分解活性とみなす。比分解活性を実施例2.1に示したように測定する。
【0193】
【0194】
変異体V1~V83は、表1にそれぞれ列挙された置換の組み合わせを除いて、配列番号:1に示された正確なアミノ酸配列を有する。
【0195】
本発明のエステラーゼ(変異体)の分解活性を反応器中で実施例2.3に従って測定し、比較した。該変異体のPET脱重合の24時間後でのPET脱重合割合及び90%の割合に達する時間を評価し、配列番号:1と比較した。配列番号:1のエステラーゼは、このような条件において、24時間後に66%のPET脱重合に達し、90%の割合のPET脱重合に達するのに43.5時間必要である。結果を以下の表2に示す。
【0196】
【0197】
実施例3-本発明のエステラーゼの熱安定性の評価
本発明のエステラーゼの熱安定性を決定し、配列番号:1のエステラーゼの熱安定性と比較した。
【0198】
種々の方法を使用して、熱安定性を推定した。
(1)溶液中のタンパク質の円二色性
(2)所定の温度、時間及びバッファー条件下でタンパク質をインキュベーションした後の残留エステラーゼ活性
(3)所定の温度、時間及びバッファー条件下でタンパク質をインキュベーションした後の残留ポリエステル脱重合活性
(4)所定の温度、時間及びバッファー条件下でタンパク質をインキュベートションした後のアガープレート中に分散した固体ポリエステル化合物(例えば、PET又はPBATもしくは類似体)を分解する能力
(5)所定の温度、バッファー、タンパク質濃度及びポリエステル濃度の条件下でポリエステル脱重合アッセイを複数回行う能力
(6)示差走査フルオロメトリー(DSF)
【0199】
このような方法のプロトコールの詳細を以下に示す。
【0200】
3.1 円二色性
円二色性(CD)を、配列番号:1のエステラーゼの融解温度(Tm)(Tm=84.7℃)を本発明のエステラーゼのTmと比較するために、Jasco 815装置(Easton, USA)により行った。技術的に、タンパク質サンプル 400μLをTalonバッファー中に0.5mg/mLで調製し、CDに使用した。タンパク質の正しいフォールディングに対応するCDの2つの最大強度を決定するために、280~190nmの1回目のスキャンを実現した。ついで、2回目のスキャンをこのような最大強度に対応する長さの波で25℃~110℃で行い、Sigmaplotバージョン11.0ソフトウェアにより分析された特定の曲線(シグモイド3パラメーター y=a/(1+e^((x-x0)/b)))を提供し、x=x0の場合に、Tmを決定した。得られたTmは、所定のタンパク質の熱安定性を反映している。Tmが高いほど、変異体は、高温でより安定である。
【0201】
3.2 残留エステラーゼ活性
40mg/L(Talonバッファー中) 配列番号:1のエステラーゼ又は本発明のエステラーゼの溶液 1mLを、種々の温度(65、70、75、80及び90℃)で10日間インキュベーションした。サンプルを定期的に採取し、0.1M リン酸カリウムバッファー(pH8.0)で1~500倍に希釈し、パラニトロフェノール-ブチラート(pNP-B)アッセイを実現した。サンプル 20μLを1M リン酸カリウムバッファー(pH8.0) 175μL及び2-メチル-2ブタノール中のpNP-B溶液(40mM) 5μLと混合する。酵素反応を撹拌下、30℃で15分間行い、405nmでの吸光度をマイクロプレート分光光度計(Versamax, Molecular Devices, Sunnyvale, CA, USA)により取得した。pNP-B加水分解の活性(μmol pNPB/分で表現される初速度)を、加水分解曲線の直線部分における遊離したパラニトロフェノールについての検量線を使用して決定した。
【0202】
3.3 残留ポリエステル脱重合活性
40mg/L(Talonバッファー中) 配列番号:1のエステラーゼ及び本発明のエステラーゼそれぞれの溶液 10mLを、種々の温度(65、70、75、80及び90℃)で1~30日間インキュベーションした。サンプル 1mLを定期的に採取し、250~500μmに微粉化した100mg 非晶質PET(WO第2017/198786号に従って調製、20%未満の結晶化度に達する)及び0.1M リン酸カリウムバッファー(pH8.0) 49mLを含有するボトルに移し、65℃でインキュベーションした。バッファー 150μLを定期的にサンプリングした。必要に応じて、サンプルを0.1M リン酸カリウムバッファー(pH8)で希釈した。ついで、メタノール 150μL及び6N HCl 6.5μLをサンプル又は希釈液 150μLに加えた。混合し、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した後、サンプルをUHPLCにロードして、テレフタル酸(TA)、MHET及びBHETの遊離をモニターした。使用したクロマトグラフィーシステムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、25℃に温度調節されたカラムオーブン及び240nmでのUV検出器を含むUltimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific, Inc. Waltham, MA, USA)とした。使用したカラムは、Discovery(登録商標)HS C18 HPLCカラム(150×4.6mm、5μm、プレカラムを備える、Supelco, Bellefonte, USA)とした。TA、MHET及びBHETを1mM H2SO4中のMeOHの勾配(30%~90%)を使用して1mL/分で分離した。インジェクションは、サンプル 20μLとした。TA、MHET及びBHETを市販のTA及びBHET並びに自社合成したMHETからサンプルと同じ条件で作成した検量線に従って測定した。PET加水分解の活性(μmol 加水分解されたPET/分又はmg 生成された当量のTA/時間)を加水分解曲線の直線部分において決定し、このような曲線を最初の24時間の間に異なる時点で行ったサンプリングにより設定した。当量のTAは、測定されたTAと、測定されたMHET及びBHETに含まれるTAとの合計に相当する。
【0203】
3.4 固体状のポリエステルの分解
40mg/L(Talonバッファー中) 配列番号:1のエステラーゼ及び本発明のエステラーゼそれぞれの溶液 1mLを、種々の温度(65、70、75、80及び90℃)で1~30日間インキュベーションした。酵素調製物 20μLを、PETを含有するアガープレート中に作製されたウェルに規則正しく入れた。PETを含有するアガープレートの作製を、500mg PETをヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)に可溶化し、この媒体を水溶液 250mLに注ぐことにより実現した。140mbar下、52℃でのHFIPの蒸発後、溶液を、3% アガーを含有する0.2M リン酸カリウムバッファー(pH8)とv/v混合した。混合物 約30mLを使用して、各オムニトレイを作製し、4℃で保存した。
【0204】
野生型エステラーゼ及び本発明の変異体によるポリエステル分解により形成されたハローの直径又は表面積を測定し、60℃、65℃又は70℃で2~24時間後に比較した。所定の温度での酵素の半減期は、ハローの直径又は表面積が1/2になるのに必要な時間に相当する。
【0205】
3.5 複数回のポリエステルの脱重合
エステラーゼが連続回のポリエステル脱重合アッセイを行う能力を酵素反応器で評価した。Minibio 500反応器(Applikon Biotechnology B.V., Delft, The Netherlands)を、3g 非晶質PET(WO第2017/198786号に従って調製、20%未満の結晶化度に達する)及び3mg LC-エステラーゼを含有する10mM リン酸カリウムバッファー(pH8) 100mLで開始した。攪拌は、マリンインペラを使用して250rpmに設定した。バイオリアクターを外付け水浴に浸漬させることにより、60℃、65℃又は70℃で温度調節した。pHを3M KOHの添加により8にレギュレーションした。種々のパラメーター(pH、温度、撹拌、塩基の添加)を、BioXpertソフトウェアV2.95によりモニターした。1.8g 非晶質PETを20時間毎に加えた。反応媒体 500μLを定期的にサンプリングした。
【0206】
TA、MHET及びBHETの量を、実施例2.3に記載されたようにHPLCにより決定した。EGの量を、65℃に温度調節されたAminex HPX-87Kカラム(Bio-Rad Laboratories, Inc, Hercules, California, United States)を使用して決定した。溶出液は、0.6mL.分-1での5mM K2HPO4とした。インジェクションは、20μLとした。エチレングリコールを、屈折計を使用してモニターした。
【0207】
% 加水分解を、初期サンプル中に含まれるTAの総量に対する所定時間におけるモル濃度(TA+MHET+BHET)の比に基づいて又は初期サンプル中に含まれるEGの総量に対する所定時間におけるモル濃度(EG+MHET+2×BHET)の比に基づいて計算した。分解速度を1時間あたりのmg 総遊離TA又は1時間あたりのmg 総EGで計算する。
【0208】
酵素の半減期を、分解速度の50%の損失を得るのに必要なインキュベーション時間として評価した。
【0209】
3.6 示差走査フルオロメトリー(DSF)
DSFを使用して、タンパク質集団の半分がアンフォールドされる温度である融解温度(Tm)を決定することにより、野生型タンパク質(配列番号:1)及びその変異体の熱安定性を評価した。タンパク質サンプルを14μM(0.4mg/mL)の濃度で調製し、20mM Tris HCl(pH8.0)、300mM NaClからなるバッファーA中に保存した。DMSO中のSYPROオレンジ色素5000×ストック溶液を、最初に水で250×に希釈した。タンパク質サンプルを白色透明96ウェルPCRプレート(Bio-Rad cat# HSP9601)上にロードした。ここで、各ウェルは25μlの最終容量を含有した。各ウェル中のタンパク質及びSYPROオレンジ色素の最終濃度はそれぞれ、5μM(0.14mg/ml)及び10×であった。ウェル当たりにロードされた容量を以下のとおりとした:バッファーA 15μL、0.4mg/mL タンパク質溶液 9μL及び250×Syproオレンジ希釈溶液 1μL。ついで、PCRプレートを光学品質シールテープでシールし、2000rpm、室温で1分間回転させた。ついで、DSF実験を、450/490励起及び560/580発光フィルターを使用するように設定されたCFX96リアルタイムPCRシステムを使用して行った。サンプルを0.3℃/秒の速度で25~100℃に加熱した。1回の蛍光測定を0.03秒毎に行った。融解温度をBio-Rad CFX Managerソフトウェアを使用して、融解曲線の一次導関数のピークから決定した。
【0210】
ついで、配列番号:1のエステラーゼ及び本発明のエステラーゼをそれらのTm値に基づいて比較した。異なる調製由来の同じタンパク質についての実験間の高い再現性のために、0.8℃のΔTmは、変異体を比較するのに有意であるとみなした。Tm値は、少なくとも3回の測定の平均に対応する。配列番号:1のエステラーゼのTmを84.7℃で評価した。
【0211】
本発明のエステラーゼ変異体の熱安定性を以下の表3に示し、Tm値で表現し、実施例2.6に従って評価した。配列番号:1のエステラーゼと比較したTmの上昇を括弧内に示す。
【0212】
【0213】
変異体V1~V83は、表3にそれぞれ列挙された置換の組み合わせを除いて、配列番号:1に示される正確なアミノ酸配列を有する。
【配列表】