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特許7601757多結晶ダイヤモンドスラスト軸受及びその要素
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】多結晶ダイヤモンドスラスト軸受及びその要素
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/12 20060101AFI20241210BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20241210BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20241210BHJP
   F16C 33/24 20060101ALI20241210BHJP
   E21B 4/00 20060101ALI20241210BHJP
【FI】
F16C33/12 A
B24B1/00 B
F16C17/04 Z
F16C33/24 Z
E21B4/00
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2021505866
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019043744
(87)【国際公開番号】W WO2020028188
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】16/049,617
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524194034
【氏名又は名称】エックスアール リザーブ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】ミース デヴィッド ピー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ マイケル ヴイ
(72)【発明者】
【氏名】スパッツ エドワード シー
(72)【発明者】
【氏名】リース マイケル アール
(72)【発明者】
【氏名】プレヴォスト グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】キング ウィリアム ダブリュ
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-275286(JP,A)
【文献】米国特許第08833635(US,B1)
【文献】米国特許第09309923(US,B1)
【文献】米国特許第05364192(US,A)
【文献】特開2002-070507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0084196(US,A1)
【文献】特表2005-530966(JP,A)
【文献】特開2001-172766(JP,A)
【文献】特開2016-211727(JP,A)
【文献】特開2017-002948(JP,A)
【文献】特開平07-004437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/12
B24B 1/00
F16C 17/04
F16C 33/24
E21B 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラスト軸受組立体であって、
多結晶ダイヤモンド要素を含み、多結晶ダイヤモンド要素が係合面を有するスラスト面と、
ダイヤモンド反応性材料を有する金属面を含む、対向するスラスト面であって、前記ダイヤモンド反応性材料が金属であり、前記ダイヤモンド反応性材料が前記ダイヤモンド反応性材料の総重量を基準として少なくとも2wt.%のダイヤモンド触媒又はダイヤモンド溶媒を含む、対向するスラスト面と、
を備え、
前記スラスト面の前記係合面は、前記対向するスラスト面の前記金属面と摺動するように接触する、スラスト軸受組立体。
【請求項2】
前記多結晶ダイヤモンド要素の係合面が平面である、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項3】
前記多結晶ダイヤモンド要素の係合面が凸面である、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項4】
前記多結晶ダイヤモンド要素の係合面が、高度にラップ仕上げされ、研磨され、又は高度に研磨されている、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項5】
前記多結晶ダイヤモンド要素の係合面が、10μinRa以下の表面仕上げを有する、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項6】
対向する係合面が炭素で飽和している、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項7】
前記対向するスラスト面上に固体潤滑剤を更に備える、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項8】
前記ダイヤモンド反応性材料は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、クロム、マンガン、銅、チタン、又はタンタルを含む、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項9】
前記ダイヤモンド反応性材料は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、マンガン、銅、又はタンタルを含む、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項10】
前記ダイヤモンド反応性材料は、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、又はタンタルを含む、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項11】
前記スラスト軸受組立体は、
前記スラスト面を有し、前記多結晶ダイヤモンド要素を結合させたスラストリングと、
前記対向するスラスト面を有する、対向するスラストリングと、
を備える、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項12】
前記多結晶ダイヤモンド要素の係合面のエッジが、エッジ半径を有する、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項13】
前記エッジ半径が少なくとも0.050インチの半径である、請求項12に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項14】
前記スラスト面は、前記金属面と前記係合面のエッジとの間の接触が排除されるように、前記対向するスラスト面と係合する、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項15】
前記係合面が鈍いエッジを有する、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項16】
前記金属が超硬材料よりも柔らかい、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項17】
前記金属が金属合金である、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項18】
前記ダイヤモンド反応性材料は、鉄合金を有する、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項19】
前記スラスト面は、複数の多結晶ダイヤモンド要素を含み、各係合面が前記金属面と摺動するように接触し、前記複数の多結晶ダイヤモンド要素が離間している、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項20】
前記多結晶ダイヤモンド要素は、多結晶ダイヤモンド焼結体を有する、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項21】
前記多結晶ダイヤモンド焼結体は、炭化タングステン基材上に担持されている、請求項20に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項22】
前記多結晶ダイヤモンド要素は、前記スラスト面内に埋め込まれている、又は、前記スラスト面に取り付けられている、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項23】
前記多結晶ダイヤモンド要素は、前記スラスト面に直接取り付けられている、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項24】
前記多結晶ダイヤモンド要素は、ろう付け、接着、圧入、焼ばめ、又は螺着によって、前記スラスト面に直接取り付けられる、請求項23に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項25】
前記多結晶ダイヤモンド要素は、スタンドアロンの多結晶ダイヤモンド要素である、請求項1に記載のスラスト軸受組立体。
【請求項26】
軸方向荷重を担う方法であって、
係合面を有する多結晶ダイヤモンド要素が結合されたスラスト面を提供するステップと、
前記係合面をラップ仕上げ、研磨、又は、ラップ仕上げ及び研磨をするステップと、
前記スラスト面を対向するスラスト面と係合させるステップを含み、
前記対向するスラスト面は、金属であるダイヤモンド反応性材料を有する金属面を含み、前記ダイヤモンド反応性材料は、前記ダイヤモンド反応性材料の総重量を基準として少なくとも2wt.%のダイヤモンド触媒又はダイヤモンド溶媒を含み、前記スラスト面の前記係合面は、前記対向するスラスト面の前記金属面と摺動するように接触する、方法。
【請求項27】
前記スラスト面を前記対向するスラスト面と結合するステップは、前記多結晶ダイヤモンド要素と前記対向するスラスト面との間のエッジ及び点接触を回避するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記スラスト面及び前記対向するスラスト面を結合する前に、前記多結晶ダイヤモンド要素の前記係合面のエッジを処理して、エッジ半径を提供するステップを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記エッジ半径が少なくとも0.050インチの半径である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記スラスト面及び前記対向するスラスト面を結合する前に、前記対向するスラスト面を炭素で飽和させるステップを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記スラスト面及び前記対向するスラスト面を結合する前に、前記対向するスラスト面を固体潤滑剤で潤滑するステップを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記ダイヤモンド反応性材料は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、クロム、マンガン、銅、チタン、又はタンタルを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記係合面を前記ラップ仕上げ、研磨、又は、ラップ仕上げ及び研磨をするステップは、前記係合面のラッピング、研磨またはラッピング研磨は、前記係合面が20μinRa以下の表面仕上げを有するまで行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
組立体であって、
係合面を有するスタンドアロンの多結晶ダイヤモンド焼結体であって、前記多結晶ダイヤモンド焼結体の前記係合面が研磨されている多結晶ダイヤモンド焼結体と、
超硬材料よりも柔らかい金属であるダイヤモンド反応性材料を有する金属面を含む、対向する要素と、
を備え
前記ダイヤモンド反応性材料は、前記ダイヤモンド反応性材料の総重量を基準として少なくとも2wt.%のダイヤモンド触媒又はダイヤモンド溶媒を含み、
前記係合面が、前記金属面と摺動するように接触し、前記金属面から軸方向荷重を受け、前記金属面と前記係合面のエッジとの間の接触が排除されるように、前記多結晶ダイヤモンド焼結体が前記対向する要素と係合する、組立体。
【請求項35】
前記係合面は、20μinRa以下の表面仕上げを有する、請求項34に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年7月30日に出願された(係属中の)米国特許出願第16/049,617号の利益を主張し、この全体が引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2017年2月10日に出願され且つ本出願と同じ譲受人である、名称が「Drilling Machine」の米国特許出願第15/430,254号の関連出願であり、当該特許出願は全てが記載されたように全体が本明細書に組み込まれる。本出願はまた、名称が「Roller Ball Assembly with Superhard Elements」である同時出願の米国特許出願、名称が「Cam Follower with Polycrystalline diamond Engagement Element」である同時出願の米国特許出願、及び名称が「Polycrystalline diamond Radial Bearing」である同時出願の米国特許出願の関連出願であり、これらの各々は本出願と同じ譲受人に譲受され、全てが記載されたように全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
適用せず
【0004】
(技術分野)
本開示は、スラスト軸受、スラスト軸受を含む装置及びシステム、並びにスラスト軸受の製造、組み立て、及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0005】
スラスト軸受は、少なくとも主として軸方向荷重を担うために工具、機械及び構成要素において使用される。炭化タングステンによって担持されるか又は担持されない熱的に安定した多結晶ダイヤモンド(TSP)及び多結晶ダイヤモンド焼結体(PDC又はPCD)は、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、クロム、マンガン、銅、チタン、又はタンタルを含む、微量を超えるダイヤモンド触媒又は溶媒元素を含む鉄ベース金属及び他の金属、金属合金、複合材料、表面硬化、コーティング又はめっきを含む、ダイヤモンド反応性材料の機械加工での使用には禁忌であるものと見なされてきた。更に、多結晶ダイヤモンドの使用に関するこの従来の禁忌は、微量を超えるダイヤモンド触媒又は溶媒元素を含む鉄ベース、コバルトベース、及びニッケルベース超合金を含む、いわゆる「超合金」にまで及ぶ。このような材料の機械加工において通常使用される表面速度は、典型的には、約0.2m/s~約5m/sの範囲にある。これらの表面速度は特に高くはないが、切削先端などで発生する荷重及びそれに伴う温度は、ダイヤモンドの黒鉛化温度(すなわち、約700°C)を超えることが多く、ダイヤモンド触媒又は溶媒元素の存在下では、構成要素の急激な摩耗及び故障につながる可能性がある。理論に縛られることなく、特定の故障メカニズムは、炭素含有ダイヤモンドと機械加工されている炭素誘引材料との化学的相互作用に起因すると考えられている。金属もしくは合金を含むダイヤモンド触媒又は溶媒機械加工のための多結晶ダイヤモンドの禁忌に関する例示的な参考文献は、米国特許第3,745,623号であり、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。ダイヤモンド触媒又はダイヤモンド溶剤含有材料を機械加工するための多結晶ダイヤモンドの禁忌は、このような材料との全ての接触用途での多結晶ダイヤモンドの使用の回避を長期にわたり引き起こしてきた。
【0006】
時間の経過に伴って、多結晶ダイヤモンド軸受が開発されるにつれて、軸受製造業者は、非鉄いわゆる超硬材料と、より一般的には緊密に対面する相補的な多結晶ダイヤモンド面と多結晶ダイヤモンド軸受面を適合させた多結晶ダイヤモンド軸受を開発した。図1は、多結晶ダイヤモンドと多結晶ダイヤモンドの界接面を有するスラスト軸受100の部分断面図を示す。本明細書で使用する場合、「超硬」材料は、少なくとも炭化タングステンと同程度の硬い材料(例えば、超硬炭化タングステン又は炭化タングステンタイル)又はより硬い材料として定義され、限定ではないが、炭化タングステン、浸潤炭化タングステンマトリックス、炭化ケイ素、窒化ケイ素、立方晶窒化ホウ素、及び多結晶ダイヤモンドを含む。当業者には理解されるように、硬度は、ASTM E10-14によるなど、ブリネルスケールを使用して決定することができる。多結晶ダイヤモンドスラスト軸受に関する参考文献は、Nagelへの米国特許第4,468,138号;Geczyへの米国特許第4,560,014号;Gonzalezへの米国特許第9,702,401号;及びOffenbacherへの米国防衛公開T102,90であり、これらのそれぞれの全体は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0007】
ダウンホール掘削及びポンピング、又は風力タービンのエネルギーユニットなどの過酷な環境向けに特別に設計された高性能多結晶ダイヤモンドスラスト軸受は、典型的には、スライド(滑り)し嵌合した重なり合う多結晶ダイヤモンド要素を利用する。これには、多数の多結晶ダイヤモンド要素が必要であり、各々が対向する多結晶ダイヤモンド要素のセットと厳密に平坦に係合している。多結晶ダイヤモンド要素は、嵌合したスライド係合を保証するために、正確に規定された高さ又は暴露で取り付ける必要がある。従来技術における目標は、軸受領域としての両面での多結晶ダイヤモンド要素の全面接触である。位置合わせ及び暴露の不良は、多結晶ダイヤモンド要素が互いに回転して破損した要素を生成し、最終的には軸受故障を生じるので、点荷重、不均一な荷重分散、又は「エッジ衝突」を引き起こす可能性がある。多結晶ダイヤモンドは、ダイヤモンド反応性材料(以下で定義される)よりも脆弱で、衝撃による損傷を受けやすい。
【0008】
以下の表1は、乾燥した静的状態と潤滑された静止状態の両方における研磨された多結晶ダイヤモンドを含む様々な材料の摩擦係数の要約を示しており、ここで、「第1の材料」は、「第2の材料」に対して移動されて、第1の材料のCoFを決定する。
表1*

*参考文献としては、Machinery’s Handbook;Sexton TN, Cooley CH、ダウンホールオイル及びガス掘削工具、Wear2009;267:1041-5が挙げられる。
【0009】
本出願の技術の背景に関する情報を提供する追加の重要な参考文献は、「Polishing of polycrystalline diamond by the technique of dynamic friction, part 1: Prediction of the interface temperature rise」及び「Part 2, Material removal mechanism」(2005及び2006)という表題のMachine Tools&Manufacture46及び47のInternational Journalから提供される。これらの参考文献は、炭素誘因スチールディスクを使用した荷重下での乾式スライド接触を利用したPDC面の動的摩擦研磨について報告している。これらの参考文献の重要な知見は、研磨速度が荷重よりもスライド速度に敏感であること、並びにダイヤモンド面の表面仕上げが改善されるにつれて、スチールディスクとダイヤモンド面の間の熱化学反応の速度が大幅に低下することを示している。著者らは、Iwai, Manabu & Uematsu, T & Suzuki, K & Yasunaga, N. (2001)、「High efficiency polishing of PCD with rotating metal disc」、ISAAT2001の講演論文集、231-238を参照し、ここでは、スチールディスクとPDC面の間の熱化学反応は、27MPaの圧力で10.5m/s未満のスライド速度では発生しないと結論付けている。これらの参考文献は、全て記載されているかのように、引用により本明細書に組み込まれる。上記の数値は空気中での乾燥稼働に基づいていることを強調しておく必要がある。明らかに、液冷、潤滑環境での稼働の場合、熱化学反応を開始することなく、より高い速度及び荷重を達成することができる。また、研磨された多結晶ダイヤモンド面の熱化学応答が低いことも注目に値する。銅及びチタンは、通常はダイヤモンド合成に関する初期のGeneral Electricの文献には記載されていなかったが、後で追加された。関連参考文献には、「Diamond Synthesis from Graphite in the Presence of Water and SiO2」、Dobrzhinetskaya and Green、II International Geology Review Vol.49、2007、及び「Non-metallic catalysts for diamond synthesis under high pressure and high temperature」、Sun et al、Science in China 1999年8月が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第3,745,623号明細書
【文献】米国特許第4,468,138号明細書
【文献】米国特許第4,560,014号明細書
【文献】米国特許第9,702,401号明細書
【文献】米国特許第5,447,208号明細書
【文献】米国特許第5,653,300号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】「Polishing of polycrystalline diamond by the technique of dynamic friction, part 1: Prediction of the interface temperature rise」、Machine Tools&Manufacture46、International Journal
【文献】「Part 2, Material removal mechanism」、Machine Tools&Manufacture47、International Journal
【文献】Iwai, Manabu & Uematsu, T & Suzuki, K & Yasunaga, N. (2001)、「High efficiency polishing of PCD with rotating metal disc」、ISAAT2001の講演論文集、231-238
【文献】「Diamond Synthesis from Graphite in the Presence of Water and SiO2」、Dobrzhinetskaya and Green、II International Geology Review Vol.49、2007
【文献】「Non-metallic catalysts for diamond synthesis under high pressure and high temperature」、Sun et al、Science in China 1999年8月
【発明の概要】
【0012】
本開示の幾つかの態様は、スラスト軸受組立体を含む。スラスト軸受組立体は、多結晶ダイヤモンド要素を有するスラスト面を含む。多結晶ダイヤモンド要素は、係合面を有する。スラスト軸受組立体は、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む対向するスラスト面を含む。スラスト面は、係合面が対向するスラスト面と接触するように、対向するスラスト面と結合される。
【0013】
本開示の他の態様は、軸方向荷重を担う方法を含む。スラスト面を対向するスラスト面に結合する方法である。スラスト面は、共に結合される多結晶ダイヤモンド要素を含む。多結晶ダイヤモンド要素は、係合面を有する。対向するスラスト面は、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む。スラスト面は、係合面が対向するスラスト面と接触するように、対向するスラスト面と結合される。
【0014】
本開示の別の態様は、スラスト面を定めるスラストリングを含むスラスト軸受組立体を含む。多結晶ダイヤモンド要素は、スラスト面と結合され、係合面を定める。スラスト軸受組立体はまた、対向するスラスト面を定める対向スラストリングを含む。対向スラストリングは、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む。係合面は、対向するスラスト面と接触している。
【0015】
本開示のシステム、装置、及び/又は方法の特徴及び利点をより詳細に理解することができるように、上記で概略的に要約されたより具体的な説明は、本明細書の一部を形成する添付図面において例示された実施形態を参照することにより行われた。しかしながら、図面は、様々な例示的な実施形態を例示しているに過ぎず、従って、他の効果的な実施形態も含むことができるので、開示された概念を限定するものと見なすべきではない点に留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術の多結晶ダイヤモンドと多結晶ダイヤモンドの界接スラスト軸受の部分断面図である。
図2A】本出願の技術の1つの実施形態のスラスト軸受の多結晶ダイヤモンドスラスト面の上面図である。
図2B】少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む対向するスラスト面とスライド接触している、図2Aの多結晶ダイヤモンドスラスト面の側面図である。
図3A】本出願の技術の1つの実施形態のスラスト軸受の多結晶ダイヤモンドスラスト面の上面図である。
図3B】少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む対向するスラスト面とスライド接触している、図3Aの多結晶ダイヤモンドスラスト面の側面図である。
図4】本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素の側面図である。
図5】本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素の側面図である。
図6】本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素の側面図である。
図7】本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素の側面図である。
図8】本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素の側面図である。
図9】エッジ処理されていない、鋭いコーナーを有する多結晶ダイヤモンド要素の側面図である。
図10A】エッジ処理を受けた多結晶ダイヤモンド要素と対向するスラスト面との間のエッジ接触の簡略図である。
図10B】鋭いコーナーを有するエッジ処理を受けていない多結晶ダイヤモンド要素と対向するスラスト面との間のエッジ接触の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示によるシステム、装置、及び方法について、様々な例示的な実施形態を示す添付図面を参照しながらより完全に説明する。しかしながら、本開示による概念は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の例示の実施形態によって限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全且つ網羅し、様々な概念の範囲を当業者及び最良で好ましい実施方法に対して完全に伝えるように提供される。
【0018】
本開示の特定の態様は、スラスト軸受及びスラスト軸受組立体、更に、これらを含む装置及びシステム、並びにこれらを製造、組み立て、及び使用する方法を含む。スラスト軸受では、一方のスラスト面は、少なくとも一部の多結晶ダイヤモンドで形成されるか又はこれを含み、他方の対向するスラスト面が、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む。
【0019】
(ダイヤモンド反応性材料)
本明細書で使用する場合、「ダイヤモンド反応性材料」は、微量を超える量のダイヤモンド触媒又はダイヤモンド溶媒を含む材料である。本明細書で使用する場合、「ダイヤモンド反応性材料」は、微量を超える量のダイヤモンド触媒又はダイヤモンド溶媒を含む材料である。本明細書で使用する場合、「微量」を超える量のダイヤモンド触媒又はダイヤモンド溶媒を含むダイヤモンド反応性材料は、少なくとも2重量パーセント(wt.%)のダイヤモンド反応性材料を含む。幾つかの態様において、本明細書で開示されるダイヤモンド反応性材料は、2~100wt.%、又は5~95wt.%、又は10~90wt.%、又は15~85wt.%、又は20~80wt.%、又は25~75wt.%、又は25~70wt.%、又は30~65wt.%、又は35~60wt.%、又は40~55wt.%、又は45~50wt.%のダイヤモンド触媒又はダイヤモンド溶媒を含む。本明細書で使用する場合、「ダイヤモンド触媒」は、荷重下で且つダイヤモンドの黒鉛化温度(すなわち、約700°C)以上の温度などで、多結晶ダイヤモンドの黒鉛化を触媒することができる化学元素、化合物、又は材料である。本明細書で使用する「ダイヤモンド溶媒」とは、荷重下で且つダイヤモンドの黒鉛化温度以上の温度などで多結晶ダイヤモンドを可溶化できる化学元素、化合物、又は材料である。従って、ダイヤモンド反応性材料は、荷重下で且つダイヤモンドの黒鉛化温度以上の温度で、ダイヤモンドチップツールなどの少なくとも一部の多結晶ダイヤモンドで形成されるか又はこれを含む構成要素の摩耗、場合によっては急速な摩耗、及び故障につながる可能性のある材料を含む。
【0020】
ダイヤモンド反応性材料には、微量を超えるダイヤモンド触媒又は溶媒元素を含む金属、金属合金、及び複合材料が含まれるが、これらに限定されない。幾つかの態様において、ダイヤモンド反応性材料は、表面硬化、コーティング又はめっきの形態である。例えば、限定ではないが、ダイヤモンド反応性材料は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、クロム、マンガン、銅、チタン、タンタル、又はこれらの合金とすることができる。幾つかの態様において、ダイヤモンド反応性材料は、限定ではないが、鉄ベース、コバルトベース及びニッケルベースの超合金を含む超合金である。特定の態様において、ダイヤモンド反応性材料は、いわゆる「超硬材料」ではない、及び/又は含まない(すなわち、具体的に除外する)。当業者には理解されるように、「超硬材料」は、材料の硬度によって定義される材料のカテゴリーであり、ブリネル、ロックウェル、ヌープ及び/又はビッカーススケールに従って決定することができる。例えば、超硬材料は、ビッカース硬度試験により測定されたときの硬度値が40ギガパスカル(GPa)を超える材料を含む。本明細書で使用する場合、超硬材料は、ブリネルスケールなどのこれらの硬度スケールの1つに従って決定されるような、少なくとも炭化タングステンタイル及び/又は超硬炭化タングステンと同程度の硬い材料を含む。当業者であれば、例えば、ブリネルスケール試験がASTM E10-14に従って実施できること、ビッカース硬度試験は、例えば、ASTM E384に従って実施できること、ロックウェル硬度試験は、例えば、ASTM E18に従って実施できること、及びヌープ硬度試験は、例えば、ASTM E384に従って実施できることを理解するであろう。本明細書で開示される「超硬材料」には、限定ではないが、炭化タングステン(例えば、タイル又は超硬)、浸潤炭化タングステンマトリックス、炭化ケイ素、窒化ケイ素、立方晶窒化ホウ素、及び多結晶ダイヤモンドを含む。従って、幾つかの態様では、「ダイヤモンド反応性材料」は、ブリネルスケールなど、これらの硬度試験の内の1つに従って決定された場合、炭化タングステン(例えば、タイル又は超硬)よりも硬くないなどの超硬材料よりも柔らかい(硬くない)材料(例えば、金属、金属合金、複合材料)で部分的又は全体的に構成される。
【0021】
(多結晶ダイヤモンドとダイヤモンド反応性材料の界接)
幾つかの態様において、本開示は、多結晶ダイヤモンド要素がダイヤモンド反応性材料と接触した状態でスラスト面と対向するスラスト面との間の係合を界接することを提供する。例えば、多結晶ダイヤモンド要素は、他の対向するスラスト面と接触するように一方のスラスト面上に位置付けて配置することができ、ここで他方の対向するスラスト面は、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料から形成されるか又はこれを含む。多結晶ダイヤモンド要素は、ダイヤモンド反応性材料の対向する係合面と係合するための係合面を有することができる。本明細書で使用する場合、「係合面」とは、スラスト軸受組立体の動作中に、係合面が2つの構成要素間(例えば、スラスト面と対向するスラスト面との間)の接触を界接するようにスラスト軸受組立体内に位置付けられて配置される材料(例えば、多結晶ダイヤモンド又はダイヤモンド反応性材料)の表面を指す。「係合面」はまた、本明細書では「スラスト軸受面」又は「軸方向軸受面」もしくは「スラスト面」と呼ぶことができる。
【0022】
幾つかの態様では、対向する係合面は、少なくとも2wt.%のダイヤモンド反応性材料、又は2~100wt.%、又は5~95wt.%、又は10~90wt.%、又は15~85wt。%、又は20~80wt.%、又は25~75wt.%、又は25~70wt.%、又は30~65wt.%、又は35~60wt.%、又は40から55wt.%、又は45から50wt.%のダイヤモンド反応性材料を含むか、又はこれから構成される。特定の用途では、多結晶ダイヤモンド要素又は少なくともその係合面は、ラップ仕上げ又は研磨され、任意選択的に、高度にラップ仕上げ又は研磨される。少なくとも一部の用途では高度に研磨された多結晶ダイヤモンド要素が好ましいが、本開示の範囲は、高度に研磨された多結晶ダイヤモンド要素に限定されず、高度にラップ仕上げ又は研磨された多結晶ダイヤモンド要素を含む。本明細書で使用する場合、表面は、約18~約22μinに及ぶ表面仕上げなどのように、20μin又は約20μinの表面仕上げを有する場合に「高度にラップ仕上げされた」と定義される。本明細書で使用する場合、表面は、約10μin未満又は約2~約10μinの表面仕上げを有する場合に「研磨された」と定義される。本明細書で使用する場合、表面は、約2μin未満、又は約0.5μinから約2μin未満の表面仕上げを有する場合に、「高度に研磨された」と定義される。幾つかの態様において、係合面は、0.5μin~40μin、2μin~30μin、5μin~20μin、8μin~15μin、又は20μin未満、又は10μin未満、2μin未満、又はこれらの間の任意の範囲の表面仕上げを有する。0.5μinの表面仕上げに研磨された多結晶ダイヤモンドは、表面仕上げが20~40μinで標準的なラップ仕上げの多結晶ダイヤモンドの約半分の摩擦係数を有する。Lundらに対する米国特許第5,447,208号及び第5,653,300号(その全体が引用により本明細書に組み込まれる)は、多結晶ダイヤモンドの研磨に関する開示を提供する。当業者には理解されるように、表面仕上げは、プロフィロメータ(表面形状測定装置)又は原子間力顕微鏡法で測定することができる。
【0023】
(例示的なスラスト軸受)
ここで図に目を向けると、スラスト軸受の例示的で非限定的な実施形態が記載される。図全体を通して、同様の参照番号は同様の要素を示す。例えば、図2A及び2Bにおいて、参照番号202は、多結晶ダイヤモンド要素の係合面を指し、図3A及び3Bにおいて、参照番号302は、多結晶ダイヤモンド要素の係合面を指す。
【0024】
図2Aは、本出願の技術の1つの実施形態による、スラスト面201を有するスラストリング220の上面図を示す。スラスト面220(多結晶ダイヤモンドスラスト面とも呼ばれる)は、スラスト面220内に埋め込まれる、取り付けられる、或いは結合及び/又は係合される多結晶ダイヤモンド要素202を含む。多結晶ダイヤモンド要素202は、限定ではないが、ろう付け、接着、圧入、焼きばめ、又は螺着を含む、当技術分野で知られる方法を介してスラスト面220に直接取り付けることができる。スラスト面220は、3つの多結晶ダイヤモンド要素202を有するものとして図示され説明されているが、当業者であれば、スラスト面220が3つより多いか又は少ない多結晶ダイヤモンド要素202を含むことができることを理解するであろう。また、多結晶ダイヤモンド要素202間の間隔は、等間隔であるように示されているが、当業者であれば、均一又は不均一とすることができることを理解するであろう。更に、当業者は、多結晶ダイヤモンド要素202間の間隔は、図2Aに示されるものよりも多いか又は少ないものとすることができることを理解するであろう。
【0025】
各多結晶ダイヤモンド要素202は、係合面222を含む。係合面222は、ラップ仕上げされた、研磨された、高度にラップ仕上げされた、又は高度に研磨された多結晶ダイヤモンドの表面層とすることができる。幾つかの態様において、係合面222は、平面又は凸面とすることができる。
【0026】
図2Bは、対向スラストリング203の対向するスラスト面204とスライド接触したスラストリング220のスラスト面201を含む、スラスト軸受組立体200を示す。スラストリング203及び対向するスラスト面204は、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されか又はこれを含む。従って、動作中、スラスト軸受組立体200が荷重を担っているときに、係合面222は、対向するスラスト面204(対向する係合面とも呼ばれる)とスライド接触している。
【0027】
スラストリング220及び203の両方がリングの形状を有するように示されているが、当業者であれば、本明細書で開示されるスラスト面が、特定の用途に応じてスラスト軸受に適した他の形状のスラスト構成要素上に形成することができることを理解するであろう。
【0028】
図3Aは、本出願の技術の1つの実施形態による、複数の多結晶ダイヤモンド要素302が結合された、スラスト面302を有するスラストリング320の上面図を示す。本実施形態では、スラスト面302は、各々が係合面322を有する12個の多結晶ダイヤモンド要素302を有して設定される。
【0029】
図3Bは、スラスト面304とスライド接触している図3Aのスラスト面302を含み、係合面322が、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む対向するスラスト面304とスライド接触しているようになる、側面図のスラスト軸受組立体300を示す。
【0030】
(エッジ半径を有する多結晶ダイヤモンド層)
図4は、本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素402の側面図を示す。この実施例では、多結晶ダイヤモンド要素402は、炭化タングステン基材426によって担持された多結晶ダイヤモンド層424を含む。ダイヤモンドと基材の界接ラインは405で示されている。
【0031】
多結晶ダイヤモンド層424と炭化タングステン基材426との間の界接面の反対側(すなわち、ダイヤモンドと基材の界接ライン405の反対側)には、係合面422が、多結晶ダイヤモンド層424上に形成される。係合面422は、ラップ仕上げされ、研磨され、高度にラップ仕上げされ、又は高度に研磨された多結晶ダイヤモンド層424の上面とすることができる。図示のように、ダイヤモンドと基材の界接ライン405から係合面422までサイドエッジ428に沿って、多結晶ダイヤモンド層424は、比較的大きなエッジ半径406を有する。当業者であれば、本明細書で開示される多結晶ダイヤモンド層がこの特定の形状に限定されず、炭化タングステン上に担持されるか又は全く担持されないことに限定されない点を理解するであろう。
【0032】
(弓形エッジを備えた多結晶ダイヤモンド層)
図5は、本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素502の側面図を示す。この実施例では、多結晶ダイヤモンド層524は、炭化タングステン基材526によって担持され、ダイヤモンドと基材との界接ライン505にて界接面を形成する。多結晶ダイヤモンド要素502は、多結晶ダイヤモンド層524がエッジ半径406と比較して、より弓形のエッジ507を有することを除いて、多結晶ダイヤモンド要素402と実質的に類似している。多結晶ダイヤモンド層524の弓形エッジ507は、当技術分野で知られているように、弓形エッジ処理を介して提供することができる。サイドエッジ528もまた示されている。
【0033】
(大きなエッジ半径を有する多結晶ダイヤモンド層)
図6は、本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素602の側面図を示す。この実施例では、多結晶ダイヤモンド層624は、炭化タングステン基材626によって担持されており、ダイヤモンドと基材との界接ラインが605で示されている。多結晶ダイヤモンド要素602は、多結晶ダイヤモンド層624が大きな半径のエッジ607を有することを除いて、多結晶ダイヤモンド要素402と実質的に同様である。大きな半径エッジ607は、当技術分野で知られているように、大きな半径エッジ処理を介して提供することができる。サイドエッジ628もまた示されている。
【0034】
(大きなエッジ半径を有する多結晶ダイヤモンド層)
図7は、本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素702の側面図を示す。この実施例では、多結晶ダイヤモンド層724は、炭化タングステン基材726によって担持されており、ダイヤモンドと基材との界接ラインが705で示されている。多結晶ダイヤモンド要素702は、多結晶ダイヤモンド層724が、当技術分野で知られているように、大半径エッジ処理を介して提供することができる、更に大きな半径エッジ709を有することを除いて、多結晶ダイヤモンド要素602と実質的に類似している。この実施例では、エッジ半径は、多結晶ダイヤモンド要素602の場合のように多結晶ダイヤモンド層724ではなく、接点710において炭化タングステン基材726で始まる。サイドエッジ728もまた示されている。
【0035】
(多成分エッジを備えた多結晶ダイヤモンド層)
図8は、本出願の技術の1つの実施形態の例示的な多結晶ダイヤモンド要素802の側面図を示す。この実施例では、多結晶ダイヤモンド層824は、炭化タングステン基材826により担持され、ダイヤモンドと基材の界接ラインが805にて示されている。多結晶ダイヤモンド層824は、追加のエッジ半径813に接続された面取り角812につながるエッジ半径811を含む、多成分エッジ処理によって処理されている。
【0036】
従って、幾つかの実施形態では、本出願のスラスト軸受は、高性能スラスト軸受であり、ここで対向するスラスト面のダイヤモンド反応性材料は、別のスラスト面に取り付けられた少なくとも1つの多結晶ダイヤモンド要素とスライド接触状態にされる。スラスト面の多結晶ダイヤモンド要素は、好ましくは、平面であるが、凸状であってもよい。更に、3以上の多結晶ダイヤモンド要素が好ましいが、本出願の技術は、僅か1又は2の多結晶ダイヤモンド要素で実施することができる。対向するダイヤモンド反応性材料の表面とスライド接触した単一の多結晶ダイヤモンド要素を使用しても、スラスト軸受表面(スラスト面)間の摩擦係数の低下を生じる可能性があり、表面間のかじりを破壊又は低減するように作用する場合がある。
【0037】
本明細書で開示されるスラスト軸受の少なくとも一部の実施形態は、過酷な環境での使用に適している。本明細書で開示されるスラスト軸受の少なくとも一部の実施形態は、多結晶ダイヤモンドと多結晶ダイヤモンドの係合を有するスラスト軸受と比較して、多結晶ダイヤモンドの破壊の影響を受けにくい。従って、本出願の技術によって提供されるスラスト軸受は、多結晶ダイヤモンドと多結晶ダイヤモンドの係合を有するスラスト軸受と比較して、サービス価値が向上した過酷な環境に適したスラスト軸受である。
【0038】
(エッジ接触の排除)
ここで開示されているスラスト軸受の少なくとも一部の実施形態の重要な性能基準は、多結晶ダイヤモンド軸受要素と、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む対向する構成要素(すなわち、対向するスラスト面)との間のエッジ接触を排除するように構成(すなわち、位置付け、配置)されることである。この重要な性能基準を達成するための1つの好ましい方法は、比較的大きなエッジ半径を有する多結晶ダイヤモンド要素を使用することである。多結晶ダイヤモンド要素のエッジ半径は、片方又は両方のスラスト面の傾斜又は位置ずれが発生した場合、多結晶ダイヤモンド要素のエッジ半径は、ダイヤモンド反応性材料の表面の機械加工又は切断又はスクライビングにつながる可能性のある鋭いエッジを示すのではなく、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む対向するスラスト面に対して鈍い表面を示すようなものである。本開示を限定することなく、特定の実施形態では、従来の面取りされた多結晶ダイヤモンドエッジ処理は好ましくない。
【0039】
図4~8を参照して示され説明された多結晶ダイヤモンドエッジ処理は、それぞれの多結晶ダイヤモンド要素の他の平面(係合面422、522、622、722、822)のエッジを鈍化する非限定的な方法を提供する。平面のエッジのこのような鈍化により、多結晶ダイヤモンドスラスト面(係合面)とダイヤモンド反応性材料の対向するスラスト面の何れかが傾斜又は位置ずれが生じた場合など、対向するスラスト面間での機械加工又は切削の発生が回避される。このような傾斜又は位置ずれが発生し、多結晶ダイヤモンド要素の多結晶ダイヤモンド層が、図9に示すように、処理されたエッジではなく鋭いエッジ930を有する場合、鋭いエッジ930は、対向するスラスト面を機械加工又は切断するか、或いは対向するスラスト面と他の望ましくない係合をする可能性がある。また、図9における多結晶ダイヤモンド要素902の描写では、係合面922、サイドエッジ928、多結晶ダイヤモンド層924、ダイヤモンドと基材の界接ライン905、及び炭化タングステン基材926も示されている。
【0040】
図10A及び10Bは、それぞれ、エッジ処理された多結晶ダイヤモンド要素とエッジ処理されていない多結晶ダイヤモンド要素の使用を示している。図10Aは、スラスト軸受組立体1000aの一部を描いており、スラストリング1003aとスライド接触している多結晶ダイヤモンド要素1002aを示している(その一部のみが示されている)。図10Aにおいて、スラストリング1003aは、多結晶ダイヤモンド要素1002aに対して傾斜又は位置ずれし、スラスト面1004aによって規定される平面が係合面1022aによって規定される平面に対してある角度になる。従って、スラスト面1004aは、多結晶ダイヤモンド要素1002aのエッジ1050と係合した。
【0041】
図10Aと同様に、図10Bは、スラスト軸受組立体1000bの一部を示し、スラストリング1003bとスライド接触している多結晶ダイヤモンド要素1002bを示している(その一部のみが示されている)。図10Bにおいて、スラストリング1003bは、多結晶ダイヤモンド要素1002bに対して傾斜又は位置ずれし、スラスト面1004bによって規定される平面が係合面1022bによって規定される平面に対してある角度になる。従って、スラスト面1004bは、多結晶ダイヤモンド要素1002bのエッジ1030と係合した。しかしながら、多結晶ダイヤモンド要素1002aはエッジ処理を受けているので、エッジ1050は鋭利なエッジ1030に比べて鈍い。エッジ1030は鋭利であるので、エッジ1030は、スラスト面1004bを機械加工又は切断するか、又は他の方法で望ましくない係合をする可能性がある。しかしながら、図10Aに示す実施形態では、エッジ1050が鈍いので、このような機械加工又は切断の発生が低減又は排除される。
【0042】
特定の態様では、本明細書で開示されるスラスト軸受は、少なくとも0.050インチの半径であるエッジ半径を有する多結晶ダイヤモンド層を含む。特定の態様では、本明細書で開示されるスラスト軸受は、少なくとも0.060インチの半径、又は少なくとも0.070インチの半径、又は少なくとも0.080インチの半径、又は少なくとも0.090インチの半径のエッジ半径を有する多結晶ダイヤモンド層を含む。
【0043】
(多結晶ダイヤモンド要素)
特定の用途において、本明細書で開示される多結晶ダイヤモンド要素は、当技術分野で知られているように、外側の多結晶ダイヤモンド面と担持する炭化タングステンスラグとの間のコバルト含有量遷移層が増加している。
【0044】
多結晶ダイヤモンド要素は、炭化タングステンによって担持することができ、又は担持されていない、軸受構成要素(例えば、スラストリング)に直接取り付けられた「スタンドアロン」の多結晶ダイヤモンド要素とすることができる。
【0045】
多結晶ダイヤモンド要素は、非浸出、浸出、浸出及び埋め戻し、熱的安定性、化学蒸着(CVD)によるコーティング、又は当技術分野で知られている様々な方法で処理することができる。
【0046】
(多結晶ダイヤモンド要素-形状、サイズ、及び配置)
多結晶ダイヤモンド要素は、軸受の用途並びに構成及び直径に応じて、3mm(約1/8インチ)ほどの小ささ又は75mm(約3インチ)ほどの大きさの直径を有することができる。通常、多結晶ダイヤモンド要素は、8mm(約5/16インチ)から25mm(約1インチ)の直径を有する。
【0047】
多結晶ダイヤモンド要素は円筒形が最も一般的に利用可能であるが、本出願の技術は、正方形、長方形、楕円形、図を参照して本明細書に記載された形状の何れか、又は当技術分野で知られている他の適切な形状の多結晶ダイヤモンド要素で実施することができることは理解される。
【0048】
幾つかの用途では、多結晶ダイヤモンド要素は、軸受構成要素(すなわち、スラストリング)に沿ってリング状に展開される。本技術の多結晶ダイヤモンド軸受要素は、展開されたスラスト面の周りにリング状に展開することができる。非限定的な実施例は、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む対向するスラスト面と係合するための5つの平面の多結晶ダイヤモンド軸受要素のリングである。理論に拘束されることなく、(多結晶ダイヤモンドスラスト面からダイヤモンド反応材料スラスト面とは対照的に)多結晶ダイヤモンドスラスト面から多結晶ダイヤモンドスラスト面を有する同等のスラスト軸受は、軸方向荷重を担うために、20以上又は30よりも多くの全多結晶ダイヤモンド要素を必要とする可能性がある。従って、本出願の技術の幾つかの実施形態は、多結晶ダイヤモンドスラスト対多結晶ダイヤモンドスラスト面接触を有するスラスト軸受にて達成可能であるよりも、個々の多結晶ダイヤモンド要素間のより大きな間隔を有する多結晶ダイヤモンドスラスト軸受を提供する。本出願の技術により、多結晶ダイヤモンド要素は、対向する軸受面上の多結晶ダイヤモンド面との重なり合う接触の必要性を懸念することなく、所望の担持を提供するために任意のパターン、レイアウト、間隔、又は交互して配置することができる。
【0049】
(多結晶ダイヤモンド要素-取り付け)
前述のように、多結晶ダイヤモンド要素は、限定ではないが、ろう付け、接着、圧入、焼きばめ、又は螺着を含む、当技術分野で知られる方法を介して軸受要素(例えば、スラストリング)に直接取り付けることができる。多結晶ダイヤモンド要素は、別の1又は複数のリング状に取り付けることができる。次に、1又は複数のリングは、接着、圧入、ねじロック、又はろう付けを含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている方法を介して軸受要素上に展開することができる。
【0050】
平面又はドーム型の多結晶ダイヤモンド要素は、これらが自己の軸線を中心に回転できるように取り付けることができる。多結晶ダイヤモンド要素が対象材料と面接触しながらそれ自体の軸線の周りを回転可能にする方法の非限定的な例として、Shenらの米国特許第8,881,849号を参照する。
【0051】
(対向する係合面の処理)
幾つかの態様において、ダイヤモンド反応性材料の対向する係合面は、炭素で事前飽和されている(例えば、係合面との係合の前に)。このような事前飽和は、多結晶ダイヤモンドの表面の黒鉛化を通じて、ダイヤモンド反応性材料が炭素を引き付ける能力を低下させる。ダイヤモンド反応性材料の表面接触領域の事前飽和は、当技術分野で知られている何れかの方法を介して達成することができる。
【0052】
特定の用途では、固体潤滑剤供給源、例えば、黒鉛又は六方晶窒化ホウ素スティック又は介在物は、励起又は非励起かにかかわらず、少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料で形成されるか又はこれを含む対向する係合面と接触している。
【0053】
潤滑環境では、軸受組立体は、潤滑剤の流体力学的効果の恩恵を受けて、軸受組立体の可動要素と静止要素の間にクリアランスを作成することができる。
【0054】
(例示的な試験)
出願人らが先に参照した米国特許出願第15/430,254号(「254出願」)の「Drilling Machine」で使用するための堅牢なカム従動子界接を開発する目的で、出願人らは、高度な試験ベンチを設計及び構築した。試験ベンチは、表面硬化の鉄ステータハウジング内部で表面硬化の鉄ロータマンドレルを駆動する200RPMの電動ギアモータを採用した。マンドレルは、その長さに沿った途中に非表面硬化のオフセットカムシリンダを組み込んだ。ロータ/ステータ組立体には、容積式ポンプを使用して循環流体が供給された。候補カム従動子界接機構が、ロータマンドレルのカムシリンダとシール接触及び荷重下で配置された。試験ベンチを使用して、候補界接機構は、清浄水又は砂を含んだ掘削流体の何れかにおいて500~3000lbfの範囲の荷重下での生存性及び摩耗について試験された。
【0055】
出願人らは、有害な作用又は明らかな化学的相互作用なしで、研磨された多結晶ダイヤモンド面とスライド接触した鉄カムシリンダの試験を実施した。鉄材料などの少なくとも一部のダイヤモンド反応性材料は、入手が容易であること、成形及び機械加工が容易であること、高弾性、及びいわゆる超硬材料よりも低コストであることに起因して、軸受用途に魅力的である。
【0056】
出願人らによって実施された試験プログラムは、比較的高い荷重及び高いRPM速度でも、多結晶ダイヤモンドとダイヤモンド反応性材料との間の上首尾な荷重界接が軸受用途で利用できることが実証された。
【0057】
重要な知見は、機械加工及び化学的相互作用につながる可能性があると考えられる、多結晶ダイヤモンド要素がダイヤモンド反応性材料とエッジ又は点接触状態にしない限り、多結晶ダイヤモンドは、多くの用途で要求される典型的な軸受荷重と速度でダイヤモンド反応性材料とのスライド接触を生じる可能性があることである。出願人らの試験のこの予想外の驚くべき成功は、新しい高性能ラジアル軸受の開発につながった。
【0058】
試験プログラムには、回転下での平面多結晶ダイヤモンドとの高荷重面線形領域接触における湾曲した鉄表面の試験が含まれていた。この試験では、多結晶ダイヤモンドの1/2インチ幅の面全体に沿って、約0.250インチ幅のPDCの面上に僅かに変色したヘルツ接触領域が生成された。接触領域の幅は、カムオフセット、システム内の振動、及び荷重下での鉄金属の僅かな変形によって説明することができる。所与の時点での1/2インチ多結晶ダイヤモンド要素面の総接触面積は、多結晶ダイヤモンド要素面の総面積の約7%以下であると推定される。試験で採用された構成は、多結晶ダイヤモンド要素の面上の小さな表面積でも大きな荷重がかかる可能性があることを示している。
【0059】
平面多結晶ダイヤモンド面に対して荷重及び回転下での球形の鉄球の更なる試験により、多結晶ダイヤモンド要素の中心に直径約0.030の小さな変色したヘルツ接触領域が生成された。上記の接触の説明と同様に、理論にとらわれることなく、変色の直径は、試験装置の僅かな振動及び荷重下での鉄金属の僅かな変形の結果であると考えられる。
【0060】
以下の表2は、スライディング界接の様々な構成について出願人によって実行された試験を要約したデータを記載している。
表2
【0061】
試験1及び2は、荷重下で鋼製カップ内を転がる個々の鋼製ボールの不合格の試験を要約している。試験3は、鋼製カップ内の単一の研磨されたPDC要素によって担持された鋼製ボールの合格した試験の結果を要約したものである。試験4は、鋼製カップ内の3つの研磨された多結晶ダイヤモンド要素のアレイによって担持された単一の鋼製ボールの極めて合格した試験を要約したものである。試験5~9は、回転する鉄製カム面とスライド接触した単一の研磨された多結晶ダイヤモンド要素のそれぞれについてより厳格な試験を要約したものである。試験10は、回転する鉄製カム面とそれぞれがスライド接触した、単一の研磨された多結晶ダイヤモンド要素と単一の未研磨の多結晶ダイヤモンド要素の比較試験を要約したものである。最終試験では、未研磨の多結晶ダイヤモンド要素を使用した場合の摩擦係数の大幅な増加を示している。表2に示されている条件及び結果は、ダイヤモンド反応性材料での多結晶ダイヤモンドの可能性のある使用を象徴するものであり、限定ではなく、本出願の技術を完全に包含すると見なされるべきではない。
【0062】
(試験の結論)
理論に拘束されることなく、動作中、液冷された潤滑環境でカムとカム従動子を稼働すると、熱化学反応を開始することなく、より高い速度及び荷重を加えることができる。更に、特に研磨された多結晶ダイヤモンド面は、熱化学的応答が低くなる。
【0063】
上記の説明及び図から、本出願の軸受組立技術は、ダウンホール環境を含む広範囲の用途に使用できることが容易に理解できる。本明細書で提供される技術は、他の産業用途にも幅広く適用される。
【0064】
更に、スラスト軸受組立体の表面間の係合に関連して図示され説明されているが、当業者であれば、本開示がこの特定の用途に限定されないこと、及び本明細書で開示される概念が、ダイヤモンド材料の表面と係合した何れかのダイヤモンド反応性材料の表面間の係合に適用できることを理解するであろう。
【0065】
本実施形態及び利点について詳細に説明してきたが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換、及び改変を行うことができることを理解されたい。更に、本出願の範囲は、本明細書に記載されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者であれば、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行するか又は実質的に同じ結果を達成する、現在既存の又は今後開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又はステップが本開示に従って利用することができることは、本開示から容易に理解されるであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、その範囲内にこのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、又はステップを含むものとする。
【符号の説明】
【0066】
200 スラスト軸受組立体
201 スラスト面
202 多結晶ダイヤモンド要素の係合面
203 対向スラストリング
204 対向するスラスト面
220 スラストリング
222 係合面
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B