(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-09
(45)【発行日】2024-12-17
(54)【発明の名称】肌カウンセリングを実現する遺伝子検査方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20241210BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20241210BHJP
【FI】
G16H50/30
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2021539254
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2020030258
(87)【国際公開番号】W WO2021029332
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019147470
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】天野 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉川 達也
(72)【発明者】
【氏名】安田 知永
(72)【発明者】
【氏名】分島 望
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-050406(JP,A)
【文献】特表2016-538825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068904(US,A1)
【文献】特表2010-515489(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101449(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SNPの情報及び環境要因の情報と、肌状態との関係に基づいて学習され、肌状態に寄与する重みづけをされた学習モデルを介して、肌状態を決定する学習部と、入力部とを備えたコンピュータにより実行される肌評価方法であって、
入力部から入力された対象者のSNPの情報及び環境要因の情報を学習部に入力する工程、
前記学習部に、前記対象者の肌状態を決定させる工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記学習部が、SNPについての情報及び環境要因についての情報を説明変数とし、肌状態の測定値を目的変数として、重回帰分析により各説明変数について目的変数に対する重みづけをされた学習モデルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンピュータがさらに処理部及び出力部を含み、
前記学習部に、肌状態についての情報として、肌状態を決定するとともに、年齢を変数とした数式を決定させ、
前記処理部に、数式に基づき年齢に対する肌状態の変遷のグラフを作成させ、及び
前記出力部に、処理された肌状態として年齢に対する肌状態の変遷のグラフを出力させる工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンピュータがさらに処理部及び出力部を含み、前記学習部に、肌状態についての情報として、肌状態を決定するとともに、年齢及び行動要因を変数とした数式を出力させ、
前記処理部に、数式に基づいて、行動要因を変化させた場合の年齢に対する肌状態スコアの変遷のグラフを作成させ、及び
前記出力部に、処理された肌状態として年齢に対する肌状態の変遷のグラフを出力させる指令を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
行動要因が、紫外線への対策及び喫煙習慣である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記学習部が、肌状態の測定値に基づいて決定された高値群と非高値群に分け、高値群と非高値群との分類結果を目的変数とし、被験者のSNPについての情報及び環境要因についての情報からロジスティック回帰により重みづけされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記学習部が、肌状態の測定値に基づいて決定された低値群と非低値群に分け、低値群と非低値群との分類結果を目的変数とし、被験者のSNPについての情報及び環境要因についての情報からロジスティック回帰により重みづけされる、請求項1又は6に記載の方法。
【請求項8】
処理部、入力部と、学習部と、出力部とを備えた肌の評価システムであって、
個人のSNPについての情報と、年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる環境要因についての情報とが入力される入力部、
SNPについての情報及び環境要因についての情報と、肌状態との関係に基づいて学習され、肌状態に寄与する重みづけをされた学習モデルを用いて肌状態についての情報を決定する学習部、
学習部により決定された肌状態について処理を行う処理部、及び
処理された肌状態を出力する出力部
を含み
、入力部から入力された前記個人のSNPについての情報と、前記環境要因についての情報を学習部に入力させ、学習部において肌状態についての情報を決定させ、そして処理部において決定された肌状態についての情報の処理を行わせ、出力部に処理された肌状態を出力させる、肌の評価システム。
【請求項9】
前記学習部が、SNPについての情報及び環境要因についての情報を説明変数とし、肌状態の測定値を目的変数として、重回帰分析により各説明変数について目的変数に対する重みづけをされた学習モデルを含む、請求項8に記載の評価システム。
【請求項10】
前記学習部が、肌状態についての情報として、肌状態を決定するとともに、年齢を変数とした数式を決定し、
前記処理部が、数式に基づき年齢に対する肌状態の変遷のグラフを作成し、
前記出力部が、処理された肌状態として年齢に対する肌状態の変遷のグラフを出力する、
を含む、請求項9に記載の評価システム。
【請求項11】
前記学習部が、肌状態についての情報として、肌状態を決定するとともに、年齢及び行動要因を変数とした数式を出力し、
前記処理部が、数式に基づいて、行動要因を変化させた場合の年齢に対する肌状態スコアの変遷のグラフを作成し、
前記出力部が、処理された肌状態として年齢に対する肌状態の変遷のグラフを出力する、
を含む、請求項9に記載の評価システム。
【請求項12】
行動要因が、紫外線への対策及び喫煙習慣である、請求項11に記載の評価システム。
【請求項13】
前記学習部が、肌状態の測定値に基づいて決定された高値群と非高値群に分け、高値群と非高値群との分類結果を目的変数とし、被験者のSNPについての情報及び環境要因についての情報からロジスティック回帰により重みづけされる、請求項8に記載の評価システム。
【請求項14】
前記学習部が、肌状態の測定値に基づいて決定された低値群と非低値群に分け、低値群と非低値群との分類結果を目的変数とし、被験者のSNPについての情報及び環境要因についての情報からロジスティック回帰により重みづけされる、請求項8又は13に記載の評価システム。
【請求項15】
SNPについての情報及び環境要因についての情報と、肌状態との関係に基づいて学習され、肌状態に寄与する重みづけをされた学習モデルを介して、肌状態を決定する学習部と、入力部と、出力部と、処理部とを備えた肌の評価システムを制御するプログラムであって、
以下の指令:
入力部から入力された個人のSNPについての情報並びに年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる環境要因についての情報を学習部に入力させ、
学習部に、入力されたSNPについての情報及び環境要因についての情報について、肌体質に寄与する重みづけをされた学習モデルを介して決定された肌状態についての情報を決定させ、
処理部に、決定された肌状態についての情報の処理を行わせ、
出力部に、処理された肌状態を出力させる
を含む、前記プログラム。
【請求項16】
前記学習部が、SNPについての情報及び環境要因についての情報を説明変数とし、肌状態の測定値を目的変数として、重回帰分析により各説明変数について目的変数に対する重みづけをされた学習モデルを含む、請求項15に記載のプログラム。
【請求項17】
前記学習部に、肌状態についての情報として、肌状態を決定するとともに、年齢を変数とした数式を決定させ、
前記処理部に、数式に基づき年齢に対する肌状態の変遷のグラフを作成させ、及び
前記出力部に、処理された肌状態として年齢に対する肌状態の変遷のグラフを出力させる指令を含む、請求項15に記載のプログラム。
【請求項18】
前記学習部に、肌状態についての情報として、肌状態を決定するとともに、年齢及び行動要因を変数とした数式を出力させ、
前記処理部に、数式に基づいて、行動要因を変化させた場合の年齢に対する肌状態スコアの変遷のグラフを作成させ、及び
前記出力部に、処理された肌状態として年齢に対する肌状態の変遷のグラフを出力させる指令を含む、請求項15に記載のプログラム。
【請求項19】
行動要因が、紫外線への対策及び喫煙習慣である、請求項18に記載のプログラム。
【請求項20】
前記学習部が、肌状態の測定値に基づいて決定された高値群と非高値群に分け、高値群と非高値群との分類結果を目的変数とし、被験者のSNPについての情報及び環境要因についての情報からロジスティック回帰により重みづけされる、請求項15に記載のプログラム。
【請求項21】
前記学習部が、肌状態の測定値に基づいて決定された低値群と非低値群に分け、低値群と非低値群との分類結果を目的変数とし、被験者のSNPについての情報及び環境要因についての情報からロジスティック回帰により重みづけされる、請求項15又は
20に記載のプログラム。
【請求項22】
処理部、入力部と、学習部と、出力部とを備えた肌評価を行う情報処理装置であって、 個人のSNPについての情報と、年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる環境要因についての情報とが入力される入力部、
SNPについての情報及び環境要因についての情報と、肌状態との関係に基づいて学習され、肌状態に寄与する重みづけをされた学習モデルを用いて肌状態についての情報を決定する学習部、
学習部により決定された肌状態について処理を行う処理部、及び
処理された肌状態を出力する出力部
を含み、入力部から入力された前記個人のSNPについての情報と、前記環境要因についての情報を学習部に入力させ、学習部において肌状態についての情報を決定させ、そして処理部において決定された肌状態についての情報の処理を行わせ、出力部に処理された肌状態を出力させる、前記情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子検査に基づく、肌の評価方法、肌の評価システム、及び肌状態評価システムの制御プログラムに関する。本発明の評価方法、システム、及びプログラムに基づき、肌カウンセリングが可能となる。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子のSNP解析に基づく肌検査が提案されており、特に肌質に直接関与するタンパク質をコードする遺伝子について、SNPと肌質との関係性が研究されている(特許文献1~4)。その結果、SNP解析結果に基づき、肌特性や、肌トラブルを予測する方法が提供されてきている。これらの研究では、肌質、例えばシワ、シミに直接関わることが明らかになっている遺伝子を対象として、SNPが調べられている。このような対象の遺伝子としては、例えば、MC1R、MMP1、SOD2、GPX1、ASIPなどが標的とされている。一方で、皮膚の肌特性に影響を与える遺伝子は、多岐に渡ることから、より多くの遺伝子におけるSNPと肌特性との関係についても調べられている(特許文献1:国際公開第2018/101449号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SNP解析に基づく肌検査は、生まれ持った肌の体質を示しているが、肌の状態は、生活習慣による環境要因からの影響が大きいことが知られている。したがって、SNP解析により評価される肌体質のみでは、現状の肌状態を判定することは難しかった。また、現状の肌状態は、将来の肌状態と密接に関係していることから、遺伝要因のみに基づく将来の肌状態の予測精度が低いことを見出した。そこで、本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであり、遺伝要因及び環境要因に基づいて現在の肌状態を判定する方法、及び将来の肌状態を予測する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、SNP解析などにより決定される遺伝要因と、生活習慣などの環境要因とを組み合わせることで、現在の肌状態を判定する方法及び将来の肌状態を予測する方法について研究開発を行い、現在又は将来の肌状態の評価方法を確立した。
【0006】
そこで本発明は、個人のSNPについての情報と、年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる少なくとも1の環境要因についての情報とを使用した、肌の評価方法であって、
SNPについての情報及び環境要因についての情報について、肌状態に寄与する重みづけにより、肌状態を決定する
を含む、肌の評価方法に関する。また、本発明は、肌を評価する方法を実行する、肌評価システム、及び肌評価システムを制御するプログラムや制御方法にも関する。
【発明の効果】
【0007】
SNPについての情報と、環境要因についての情報とを組み合わせることにより、従来から行われている遺伝情報のみに基づく肌体質の決定方法に比較し、より正確に現在又は将来の肌状態を評価することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、入力部と、記憶部と、処理部と、学習部と、出力部とを備えた情報処理装置を模式的に表した図である。
図1Bは、学習部が情報処理装置の外部の学習装置に存在するシステムを模式的に表した図である。
【
図2】
図2は、肌状態スコアを決定する学習モデル作成のための流れを示す模式図である。
【
図3】
図3は、肌状態(シワ)の測定値から、高値側と低値側の一定の割合に属する対象を高値群と低値群とに分類して表示したグラフを示す。
【
図4】
図4は、肌体質を判定する学習モデルを作成するための流れを示す模式図である。
【
図5A】
図5Aは、肌状態スコアを決定する学習モデルの作成にあたり、処理部においてデータセットを学習データセットと検証データセットに分割し、分割された学習データセットに基づいて学習部において学習モデルを構築し、構築された学習モデルを検証する流れを示す模式図である。
【
図5B】
図5Bは、肌体質を判定する学習モデルの作成にあたり、処理部においてデータセットを学習データセットと検証データセットに分割し、分割された学習データセットに基づいて学習部において学習モデルを構築し、構築された学習モデルを検証する流れを示す模式図である。
【
図6A-B】
図6Aは、肌体質を判定する学習モデルの検証の際に作成された、感度と特異度の関係を示すROC曲線のグラフである。
図6Bは、肌状態スコアを決定する学習モデルの検証の際に作成された決定係数R2を作成するためのグラフである。
【
図6C】
図6Cは、学習モデルの検証の際に作成された、SNP出現頻度についてのグラフである。
【
図7】
図7は、肌状態スコアを決定する学習モデルを利用した将来の肌状態の予測のための流れを示す模式図である。
【
図8】
図8は、肌体質を判定する学習モデルを利用した肌体質を判定するための流れを示す模式図である。
【
図9A】
図9Aは、肌状態スコアを決定する学習モデルを利用した、将来の肌状態スコアの変遷のグラフを示す。
【
図9B】
図9Bは、アプリケーション上での表示を示し、年齢についてのスライドバーや、日焼け対策及び喫煙習慣を選択することで、肌状態スコアの予測変化が表示される。
【
図10】
図10Aは、各肌体質を判定する学習モデルを利用して判定された肌体質を示すグラフである。
図10Bは、肌体質をなり易さとなり難さの両方の性質から評価して示す扇形グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、個人のSNPについての情報(以下、遺伝情報ともいう)と、環境要因についての情報(以下、環境情報ともいう)とを使用した、肌の評価方法に関する。遺伝情報と、環境情報とを組み合わせることにより、より正確に現在又は将来の肌状態を評価することができる。肌の評価方法は、具体的に、遺伝情報及び環境情報について、肌状態に寄与する重みづけにより、肌状態を決定する工程を含む。肌状態に寄与する重みづけは、具体的に、遺伝情報及び環境情報と、予め測定された肌状態の測定値との関係性を機械学習にかけ、特定の肌状態に寄与する重み付けがされた学習モデルに対して、遺伝情報及び環境情報を入力することにより行われる。
【0010】
本発明の方法は、入力部と、学習部と、処理部と、出力部とを備えた肌の評価システムにより実現されうる。本発明の別の態様は、当該肌の評価システムに関する。肌の評価システムは、具体的に、下記の:
個人のSNPについての情報と、年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる環境要因についての情報とが入力される入力部、
SNPについての情報及び環境要因についての情報と、肌状態との関係に基づいて学習され、肌状態に寄与する重みづけをされた学習モデルを用いて肌状態についての情報を決定する学習部、及び
学習部により決定された肌状態について処理を行う処理部
処理された肌状態を出力する出力部
を含む。本発明のさらに別の態様は、本発明の肌の評価システムを制御するプログラム又は制御する方法にも関する。
【0011】
本発明の肌状態評価システムを制御するプログラムは、入力されたSNPについての情報及び環境要因についての情報について、肌状態に寄与する重みづけをされた学習モデルを介して、肌状態についての情報を決定する学習部と、入力部と、出力部と、処理部とを備えた肌の評価システムの制御プログラムであって、以下の指令:
入力部から入力された個人のSNPについての情報並びに年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる環境要因についての情報を学習部に入力させ、
学習部に、入力されたSNPについての情報及び環境要因についての情報について、肌状態に寄与する重みづけをされた学習モデルを介して決定された肌状態についての情報を決定させ、
処理部に、決定された肌状態についての情報の処理を行わせ、
出力部に、処理された肌状態を出力させる
を含む、前記プログラムに関する。
【0012】
図1Aは、入力部12と、記憶部11と、処理部14と、学習部13と、出力部15とを備えた情報処理装置10/システム20を模式的に表した図である。学習部13が、情報処理装置10内に存在しているが、学習部13が外部の学習装置30に存在し、通信部を介して情報処理装置10と接続されて全体としてシステム20を形成していてもよい(
図1B)。作成された学習モデルを含む学習部13は、他の情報処理装置に移設することもできる。外部の学習装置30と情報処理装置10との接続は、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。1例として、イントラネットやインターネットを介して接続されていてもよい。本発明においてシステムは、装置を包含しうる。
【0013】
図2及び
図4は、学習モデル作成にあたり、入力部12、記憶部11、処理部14及び学習部13において行われる処理の流れの一例を示す模式図である。遺伝情報及び環境情報と、予め測定された肌状態の測定値とを含むデータセットが入力部12から入力され、記憶部11に記憶されたのちに、処理部14及び学習部13において処理される。処理部14において、データセットを学習用データセットと検証用データセットへのデータセットの分割が行われうるが、別の態様では、別途検証用データセットが提供されてもよい。学習部13では、入力された肌状態の測定値又は測定値について前処理済みのデータを目的変数とし、環境情報と遺伝情報とを説明変数として、目的変数を得るために重みづけがされた学習モデルを作成する。また、学習モデルの作成に先立ち、変数選択がされうる。
【0014】
一般に、SNPは、遺伝子型から、劣性ホモ、ヘテロ、優性ホモとして分類されるが、1のSNPが他のSNPの存在により交互作用を受けることがある。そこで、各SNPについて、劣性モデル、優性モデル、相加モデル、及び相乗モデルからなる4つの遺伝モデルとし、それぞれ説明変数として用いて解析を行うことで、各SNPについて最適なモデルを選択することができる。この解析は、Elastic Netにより正則化することで行われうる。本発明に係る学習モデルの作成に先立ち、遺伝モデルの決定をすることで、よりSNPによる肌体質の決定の精度があがることが期待される。
【0015】
1の実施態様では、肌状態の測定値を目的変数とし、79種のSNPについての情報及び年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる少なくとも1の環境要因についての情報をそれぞれ説明変数とし、各説明変数に対して重みづけが行われる(
図2)。この重みづけは、重回帰分析により行われうる。こうして作成された学習モデルを含む学習部に対して、個人の遺伝情報及び環境情報を入力すると、学習部は肌状態スコアを出力することができる。したがって、肌状態スコアを出力する学習部を、肌状態スコアを決定する学習部と呼ぶことができる。この際、環境情報のうち年齢を変動させて入力することで、学習部は将来の肌状態スコアを出力する。こうして、処理部は、遺伝情報、及び年齢を変数とした環境情報を学習部13に入力することで、学習部13から出力された肌状態スコアに基づいて、年齢を変数として肌状態の変遷を表示したグラフを作成することができる。さらに、環境情報のうち喫煙や紫外線対策などの行動要因を変動させて学習部に入力することで、学習部はそうした行動要因を反映した場合の肌状態スコアを出力し、それにより将来の肌状態の予測が可能となる。したがって、肌状態スコアを決定する学習部は、肌状態の変化を予測する学習モデルということもできる。
【0016】
別の実施態様は、被験者の肌状態の測定値について前処理済みのデータを目的変数とすることができる。前処理の一例として、肌状態の測定値に基づいて、高値側又は低値側の一定の割合を高値群又は低値群とし、対象を各肌状態について高値群と非高値群又は低値群と非低値群とに分類が行われる(
図3)。そして、高値群又は低値群へ属するか否かを目的変数とすることができる(
図3)。高値群と非高値群又は低値群と非低値群への分類は、通常処理部14で行われうる。高値群と低値群は、年齢に応じて、例えば年齢幅を10歳おき、5歳おき、及び2歳おきとして決定されうる。高値群及び低値群を、一例としてX%高値群、X%低値群とすることができ、ここでX%は、任意の数値を選択することができるが、例えば5%、10%、15%、20%、25%、及び30%からなる群から選ばれうる。選択される肌状態に応じて年齢幅及びXはそれぞれ異なっていてもよい。
【0017】
この前処理を経たのちに、学習部13では、高値群と非高値群において、高値群に寄与する要因を、被験者のSNPについての情報及び/又は環境要因についての情報からロジスティック解析により決定することができる。一例として、ある肌状態について高値群の被験者を1と定義し、非高値群の被験者を0と定義して目的変数とし、79種のSNPについての情報及び環境要因についての情報からなる説明変数について重みづけされて、学習モデルが作成される。同様に、学習部13は、低値群と非低値群において、低値群に寄与する要因を、被験者のSNPの情報及び/又は環境要因についての情報からロジスティック解析により決定することができる。一例として、ある肌状態について低値群の被験者を1と定義し、非低値群の被験者を0と定義して目的変数とし、79種のSNPについての情報及び/又は環境要因についての情報からなる説明変数について重みづけされて、学習モデルが作成される。これらの学習モデルの構築には、ロジスティック回帰が行われうる。このように各肌状態について、高値群又は低値群判定のための学習モデルが構築され、学習部13はこれらの学習モデルを保持する。学習モデルを含む学習部13に対し、被験者のSNPについての情報及び/又は環境要因についての情報を入力することで、学習部13は、ある肌状態について、対象が高値群又は低値群に属するかを出力する。一例として、ある肌状態について高値群の被験者を1と定義し、非高値群の被験者を0と定義して目的変数とした場合には、対象が高値群に属する可能性を0~1の範囲の数値として出力する。同様にある肌状態について低値群の被験者を1と定義し、非低値群の被験者を0と定義して目的変数とした場合には、対象が低値群に属する可能性を0~1の範囲の数値として出力する。こうして、ある肌状態について高値群と低値群についてそれぞれ高値群/低値群判定のための学習モデルを作成することで、ある肌状態についての高値群に属する可能性と、低値群に属する可能性の両面から肌体質が決定されうる。
【0018】
学習部13における学習の前に、被験者のSNPの情報及び/又は環境要因についての情報と、被験者の数値化された肌状態についての情報を含むデータセットから、学習用データセットと検証用データセットへの分割が行われてもよい。学習用データセットと、検証用データセットとに分割することで、任意の数xの交差検証用データセットを構築することができる(
図5)。この前処理は、処理部14において行われうる。この前処理を行うことにより、データセットNに基づいて、複数回の学習処理/検証処理を行うことが可能になり、限られたデータセットにおいても、より精度の高いモデルの構築が可能になる。
【0019】
学習用データセットと検証用データセットへの分割が行われる前処理を含む、学習モデルの構築方法は、下記の工程を含む:
(i) 学習用データセットnを選択する工程、
(ii) 学習用データセットnと、検証用データセットN-nとに分割する工程、
(iii) 学習用データセットnについて、学習モデルを構築する工程、
(iv) 検証用データセットN-nを用いて構築されたモデルを検証する工程
を含み、所望の回数X、学習データセット(n1・・・nX)を選択し、工程(i)~(iv)を繰り返す、ことが行われうる。この構築方法は、情報処理装置10/システム20により行なうことができる。
【0020】
具体的に、情報処理装置/システムは、
説明変数と目的変数を含むデータセットNを記憶する記憶部、
記憶されたデータセットの一部を選択して学習用データセットとして、学習部に入力するとともに、検証用データセットの説明変数を構築された学習モデルを含む学習部に入力して出力された値を検証用データセットの目的変数に基づいて、学習モデルを検証する処理部
入力された学習用データセットの説明変数と目的変数とから、説明変数を入力したときに目的変数を出力するように学習された学習モデルを構築する学習部、を含み、
(i) 前記処理部が、記憶部に記憶されたデータセットNから、学習用データセットnを選択し、学習用データセットnと、検証用データセットN-nとに分割して、学習用データセットnを学習部に入力する工程、
(ii) 前記学習部が学習用データセットnについて、説明変数を入力したときに目的変数を出力するように学習された学習モデルを構築する工程、
(iii) 前記処理部が、検証用データセットN-nを構築された学習モデルを含む学習部に入力する工程
(iv)学習部が出力した値と、検証用データセットN-nの目的変数を用いて、構築されたモデルを検証する工程
を含み、所望の回数X、学習データセット(n1・・・nX)を選択し、工程(i)~(iv)を繰り返す、
工程を含む。
【0021】
検証は、構築された学習モデルに対し、検証データを入力し、出力された値と、検証データの目的変数とについて統計処理を行うことで、検証することができる。検証としては、ROC曲線の作成や、決定係数R2又は相関係数rを算出することでなされうる。データセットが分割されており、x個の交差検証用データセットがあることから、作成された最大x個の学習モデルについて、最大x回の統計処理が得られる(
図6A及びB)。また、作成された最大x個の学習モデルにおいて、各SNPについて、の出現頻度が示される(
図6C)。これらの情報をもとに、またさらに生化学的知見を考慮したうえで、最適な学習モデルを選択することができる。
【0022】
1の態様では、データセットNを、学習データセットnと、検証データセットN-nに分割する際、多変量解析の説明変数に含まれる、年代、紫外線への暴露情報、喫煙情報、肌測定試験の施設が可能な限り均等になるように分配することができる。これにより、より精度の高いモデルの構築が可能となる。また、各条件でのデータ件数が2件に満たない場合、当該データは学習データとして分配される。これにより、多変量解析に基づいてモデルを構築する工程、及び、構築されたモデルを検証する工程における、学習データセットと検証データセットの不均衡による問題(多変量解析の回帰係数が推定できずモデルが構築できない、学習データセットに対する過剰適合が生じモデルの汎化能力が不足する)を解決することができる。
【0023】
本発明の評価システムが、遺伝情報と環境情報とを入力して、将来の肌状態を予測する流れを
図7に示す。本発明の方法、評価システム、及びプログラムは、構築された肌状態の変化を予測する学習モデルを利用する。本発明の方法、評価システム、及びプログラムは、入力部12を介して環境情報と遺伝情報を入力することができる。入力された環境情報及び遺伝情報は、学習部13に送られ、学習部13により肌状態スコアを出力する。処理部において、環境情報のうち、年齢及び行動要因を変動させて学習部に入力することにより、学習部は、各場合における肌状態スコアを出力する。処理部14において、年齢に対して出力された肌状態スコアをプロットすることにより、年齢を変化させた際の肌状態スコアの変遷グラフの作成が可能となり、さらに行動要因を変化させた場合の肌状態スコアの変遷のグラフを作成することができる。処理部14において作成されたグラフが出力部15に送られ、出力部15においてグラフが出力される。各工程の処理の結果は、それぞれ記憶部11に記憶してもよい。
【0024】
本発明の評価システムが、遺伝情報と環境情報とを入力して、肌体質を判定する流れを
図8に示す。本発明の方法、評価システム、及びプログラムは、構築された肌体質を判定する学習部を利用する。肌体質を判定する学習部は、高値群に属する可能性を出力する高値群判定のための学習モデルと、低値群に属する可能性を出力する低値群判定のための学習モデルを有する。本発明の方法、評価システム、及びプログラムは、入力部12を介して環境情報と遺伝情報を入力することができる。入力された環境情報及び遺伝情報は、学習部13に送られ、学習部13は、学習部13の高値群判定のための学習モデルにより高値群に属する可能性を出力するとともに、低値群判定のための学習モデルにより低値群に属する可能性をそれぞれ出力する。処理部14は、出力された高値群に属する可能性と低値群に属する可能性を示すグラフを作成する。処理部14において作成されたグラフが出力部に送られ、出力部15においてグラフが出力される。各工程の処理の結果は、それぞれ記憶部11に記憶してもよい。
【0025】
肌状態の変化を予測する学習モデルを用いる場合、学習部13において肌状態スコアを出力するための数式についても出力することができる。この数式において、処理部14において、年齢をX軸に表し、Y軸に肌状態スコアを現した肌状態遷移の予測グラフを作成することもできる。さらに、行動要因、例えば喫煙習慣や紫外線対策を変更した場合の、肌状態の遷移予測グラフを作成することができる(
図9)。
図9Aは、一例として肌状態としてシワを選択した場合における、年齢を変数とした肌状態(シワ)の遷移予測グラフであり、さらに日焼け対策による変遷を表示している。
図9Bは、顧客へ提示する表示の一例であり、将来(数年後)を選択することで、肌状態(シワ)スコアの変化を視覚的に表示することができる。さらに、紫外線対策や喫煙情報などの行動要因を入力することで、将来の肌状態スコアの変遷を表示することができる。これらのグラフは、店頭の端末において表示してもよいし、顧客の端末においてWeb上で表示してもよい。解析結果のレポートとして紙に印刷して送付してもよい。紫外線対策については、日焼け対策、例えば日焼け止めの使用について、最大限に避けた場合、過去と同程度、積極的実施した場合について、肌状態の遷移を表示することができる。
【0026】
肌体質を判定する学習部13を用いた場合、学習部13では、肌体質について高値群及び/又は低値群への属する可能性を出力する。一例として、肌状態として、シミを選択した場合、シミ測定値(Visiaによるシミインデックス)の高値群とは、シミができやすい指標となり、シミ測定値(Visiaによるシミインデックス)の低値群はシミができにくい指標となる。よって、環境情報及び遺伝情報を学習部13へと入力すると、シミについてできやすさ(高値群に属する可能性)とできにくさ(低値群に属する可能性)の両面からシミについての肌体質を判定することができる。学習部13により決定された高値群に属する可能性と低値群に属する可能性を処理部14により処理して、できやすさ(高値群に属する可能性)とできにくさ(低値群に属する可能性)をそれぞれ表すグラフを生成してもよいし(
図10A)、できやすさ(高値群に属する可能性)とできにくさ(低値群に属する可能性)それぞれ直交する軸とした扇形グラフを生成することもできる(
図10B)。
【0027】
出力部15から出力された、肌体質又は将来の肌状態に基づいて、カウンセリングを行うことができる。カウンセリングにおいて、肌体質に適した美容成分やその濃度、あるいは肌体質に適した化粧料を提示することができる。また、肌体質に適した化粧料に加えて、その使用頻度方法についての情報も提供することができる。肌体質と、美容成分とその濃度、又は化粧料との関係が表として予め記憶部11に記憶しておいてもよく、肌体質の出力と併せて、美容成分とその濃度、又は化粧料の情報を提供することができる。
【0028】
環境要因についての情報は、アンケート調査による結果が入力される。アンケートは、一例として、年齢、身長、体重、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる少なくとも1の情報が挙げられる。紫外線への暴露歴情報及び喫煙情報についてはアンケートにより調査される。紫外線暴露情報は、現在の日焼けに関するアンケートと、過去の日焼けにおけるアンケートにより調査される。一例として、現在の日焼けに関するアンケートでは4段階、過去の日焼けに関するアンケートでは3段階に分類が行われうる。喫煙情報については、現在又は過去の喫煙の有無、喫煙していた場合には1日あたりの本数、及び喫煙期間について調査されうる。一例として、喫煙歴無し、過去に1日あたり20本以上の喫煙歴有、過去に1日あたり20本未満の喫煙歴有という3群に分けて調査が行われうる。紫外線への暴露情報のうち現在の日焼けに関する情報並びに現在の喫煙情報は、行動要因として、将来の肌状態の変化予測に用いることができる。
【0029】
肌状態の測定値は、評価される肌状態に応じて適宜計測手段を選択して計測される。具体的には、シミ、しわ及びハリ、水分、きめ、肌の色味、及び皮脂からなる群から選択される肌状態についての測定値が使用される。これらの肌状態は、さらにサブグループに分類することもできる。例えば、シミについては、Visiaによる測定値(Visiaによるシミインデックス)に加え、皮膚画像計測機器によるシミの数、シミ面積に分類することができる。シワ、はりについては、Visiaによるシワ測定値(Visiaによるシワインデックス)、レプリカ解析(目じりシワ)、皮膚の弾力値に分類することができる。水分量については、専用の市販機器を用いて角層水分量、及び経皮水分蒸散量(バリア機能)に分類することができる。肌の色味については、色差計による頬の肌色(メラニン量、肌の明るさ、黄み)と上腕内側の肌色に分類することができる。これらの測定値は、測定する肌状態に応じて本技術分野に既知の任意の手法を用いて計測される。一の例として、シミ、シワ、きめについては、皮膚画像計測機器、例えばVISIA(登録商標)等を用いることで、数値化して測定することができる。肌水分や皮脂については、皮膚測定器、例えばCorneometer、Vapometer、Sebumeterを用いることで数値化して測定することができる。
【0030】
肌状態として、シミ、シワ、ハリ、肌水分、きめ、肌の色味、及び皮脂からなる群から選ばれる少なくとも1が決定されうる。決定される肌状態に応じて、SNPが選択されうる。本発明で使用されるSNPについての情報は、下記の79種のSNPについての情報である:
rs1800629、rs2108622、rs1047781、rs12203592、rs16891982、rs3760776、rs9340799、rs12913832、rs17822931、rs964184、rs1801133、rs2228479、rs10515552、rs10741657、rs10882272、rs11057830、rs11234027、rs12272004、rs12377462、rs12785878、rs12931267、rs1540771、rs1667255、rs1993116、rs2060793、rs2227564、rs2282679、rs2298585、rs3829251、rs41281112、rs4654748、rs492602、rs602662、rs1030868、rs1126643、rs1256062、rs12934922、rs1485766、rs1501299、rs17577、rs1799724、rs1800012、rs1800414、rs2010963、rs2234693、rs2241145、rs2285053、rs2287074、rs2287076、rs2987983、rs3918242、rs4065、rs4252125、rs6152、rs7201、rs74653330、rs7501331、rs8110862、rs8326、rs833061、rs1050565、rs1799750、rs4880、rs1050450、rs6058017、rs1061622、rs2046571、rs2232228、rs3785079、rs2246416、rs1107946、rs11568737、rs41303970、rs12051272、rs182052、rs3865188、rs6810075、rs7799039、rs1137101。
【0031】
一例として、肌状態がシミである場合に、Visiaによるシミの測定値(Visiaによるシミインデックス)に加え、皮膚画像計測機器によるシミ数、及びシミ面積についてそれぞれ学習モデルが作成されうる。これらの肌状態の評価に用いるSNPは以下のとおりである。下記の表に列挙されたSNPからなる群から選ばれる1又は複数のSNPが学習モデルの作成、及び学習モデルを利用した肌状態(シミ)の評価に使用されうる。
【表1】
【表2】
【表3】
【0032】
一例として、肌状態が肌色である場合に、色差計によるメラニン量、肌の明るさ、黄みについてそれぞれ学習モデルが作成されうる。これらの肌状態の評価に用いるSNPは以下のとおりである。下記の表に列挙されたSNPからなる群から選ばれる1又は複数のSNPが学習モデルの作成、及び学習モデルを利用した肌状態(肌色1~4)の評価に使用されうる。
【表4】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
一例として、肌状態がシワである場合に、Visiaによるシワの測定値(Visiaによるシワインデックス)を用い、2種の母集団を作成し、それぞれ学習モデルが作成されうる。これらの肌状態の評価に用いるSNPは以下のとおりである。下記の表に列挙されたSNPからなる群から選ばれる1又は複数のSNPが学習モデルの作成、及び学習モデルを利用した肌状態(シワ1~2)の評価に使用されうる。
【0037】
【0038】
【0039】
一例として、肌状態がきめである場合に、Skinvisiomによるきめ測定値(Skinvisiomによるきめスコア)についてそれぞれ学習モデルが作成されうる。これらの肌状態の評価に用いるSNPは以下のとおりである。下記の表に列挙されたSNPからなる群から選ばれる1又は複数のSNPが学習モデルの作成、及び学習モデルを利用した肌状態(きめ)の評価に使用されうる。
【表10】
【0040】
一例として、肌状態が弾力性である場合に、Cutometerによる弾力性についてそれぞれ学習モデルが作成されうる。これらの肌状態の評価に用いるSNPは以下のとおりである。下記の表に列挙されたSNPからなる群から選ばれる1又は複数のSNPが学習モデルの作成、及び学習モデルを利用した肌状態(弾力性)の評価に使用されうる。
【表11】
【0041】
一例として、肌状態が皮脂量である場合に、Sebumeterによる皮脂量測定値についてそれぞれ学習モデルが作成されうる。これらの肌状態の評価に用いるSNPは以下のとおりである。下記の表に列挙されたSNPからなる群から選ばれる1又は複数のSNPが学習モデルの作成、及び学習モデルを利用した肌状態(皮脂量)の評価に使用されうる。
【表12】
【0042】
一例として、肌状態(頬、前腕内側)が水分量である場合に、Corneometerによる水分量測定値及びVapometerによる経皮水分蒸散量についてそれぞれ学習モデルが作成されうる。これらの肌状態の評価に用いるSNPは以下のとおりである。下記の表に列挙されたSNPからなる群から選ばれる1又は複数のSNPが学習モデルの作成、及び学習モデルを利用した肌状態(水分量1及び2)の評価に使用されうる。
【表13】
【0043】
【0044】
一例として、肌状態(頬、前腕内側)がバリア機能である場合に、Vapometerによる経皮水分蒸散量(バリア機能)についてそれぞれ学習モデルが作成されうる。これらの肌状態の評価に用いるSNPは以下のとおりである。下記の表に列挙されたSNPからなる群から選ばれる1又は複数のSNPが学習モデルの作成、及び学習モデルを利用した肌状態(バリア1及び2)の評価に使用されうる。
【表15】
【0045】
【0046】
一例として、目尻のシワのシワ面積、シワ体積、シワ最大深さである場合には、レプリカ解析による測定値についてそれぞれ学習モデルが作成されうる。これらの肌状態の評価に用いるSNPは以下のとおりである。下記の表に列挙されたSNPからなる群から選ばれる1又は複数のSNPが学習モデルの作成、及び学習モデルを利用した肌状態(シワ面積、シワ体積、シワ最大深さ)の評価に使用されうる。
【表17】
【0047】
【0048】
【0049】
本発明のさらなる態様では、以下の:rs1800629、rs2108622、rs1047781、rs12203592、rs16891982、rs3760776、rs9340799、rs12913832、rs17822931、rs964184、rs1801133、rs2228479、rs10515552、rs10741657、rs10882272、rs11057830、rs11234027、rs12272004、rs12377462、rs12785878、rs12931267、rs1540771、rs1667255、rs1993116、rs2060793、rs2227564、rs2282679、rs2298585、rs3829251、rs41281112、rs4654748、rs492602、rs602662、rs1030868、rs1126643、rs1256062、rs12934922、rs1485766、rs1501299、rs17577、rs1799724、rs1800012、rs1800414、rs2010963、rs2234693、rs2241145、rs2285053、rs2287074、rs2287076、rs2987983、rs3918242、rs4065、rs4252125、rs6152、rs7201、rs74653330、rs7501331、rs8110862、rs8326、rs833061、rs1050565、rs1799750、rs4880、rs1050450、rs6058017、rs1061622、rs2046571、rs2232228、rs3785079、rs2246416、rs1107946、rs11568737、rs41303970、rs12051272、rs182052、rs3865188、rs6810075、rs7799039、rs1137101からなる群から選ばれる個人のSNPについての情報と、年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる少なくとも1の環境要因についての情報とを使用した、肌の評価方法であって、
SNPの情報及び環境要因についての情報について、肌状態に寄与する重みづけにより、肌状態を決定する
を含む、肌の評価方法にも関する。評価する肌状態に応じて、使用するSNPを適宜選択することができる。より具体的に、評価する肌状態と、使用するSNPとの関係は、表1~19に記載された通りである。
【0050】
本発明において、SNPは、rs番号(Reference SNP ID number)で表示されている。各rs番号に対応するSNPの詳細情報(染色体上の位置や変異)については、米国国立生物工学情報センター(NCBI)により管理されており、NCBIのホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)において参照可能である。
【0051】
SNPの検出は、公知である任意の方法で行われてよい。一例として、被験者の生体試料、例えば唾液、血液、粘膜、組織片、毛髪等から、定法に基づき、被験者の核酸を精製し、精製された核酸においてSNPが検出される。したがって、本発明の肌特性の決定方法には、試料調製工程、核酸精製工程がさらに含まれていてもよい。核酸は、DNA又はRNAであってよく、RNAの場合、精製後に逆転写を行い、DNAを調製することが好ましい。SNP検出工程では、精製された核酸においてSNPの検出を可能にする手法であれば、任意の方法を用いることができる。対象となるSNPの位置周辺の配列決定を行って、SNPを検出することもできるし、PCR法をベースとした手法、DNAプローブを用いた手法、質量分析を用いた手法を用いて検出することもできる。PCRをベースとした手法として、SNPタイピング法、TaqMan PCR法、一塩基伸長法、Pyrosequencing法、Exonuclease Cycling Assay法などが挙げられる。DNAプローブを用いた手法としては、Invader法などが挙げられる(網羅的遺伝子多型解析(SNP)日薬理誌、125, 148-152, 2005)。SNPは、連鎖不平衡にある別のSNPを伴うことがある。目的とするSNPと連鎖不平衡にあるSNPを検出することで、目的とするSNPを検出することができる。したがって、本発明において、SNPの検出とは、目的とするSNPを直接検出することに限定されず、連鎖不平衡にあるSNPを検出することで、目的とするSNPを検出することも含まれるものとする。
【0052】
また、既に配列決定がされた個人の塩基配列に基づきSNPの存在を検出することもできる。この場合、既に決定された塩基配列のデータ内で、SNPの存在する位置の配列を調べることで、SNPの存在を検出できる。したがって、この場合のSNPの検出は、SNP情報が記憶されたコンピュータに、塩基配列データを入力することで行われてもよい。より好ましい態様では、入力は、端末からインターネットを介して入力され、サーバー上でSNPが検出され、インターネットを介して当該端末に検出結果を出力することができる。
【0053】
入力部12は、インターフェイスを含む。インターフェイスは、例えば、キーボード、マウス等の操作部、通信部、CD-ROM、DVD-ROM、BD-ROM、メモリースティックなどの外部記憶装置に接続されていてもよい。SNPに関する情報及び環境要因についての情報が入力部から入力されて、記憶部に記憶されてもよい。SNPについての情報に代えて、対象の遺伝配列情報が、入力部から入力されてもよく。入力された配列情報は、いったん記憶部に記憶されてもよいし、そのまま処理部に送られてもよい。対象の遺伝配列情報は、対象の全ゲノム配列であってもよいし、目的の一部配列のみ、あるいはSNP情報のみであってもよい。操作部を介して、入力部から処理部における処理の指示を与えることができる。
【0054】
出力部15は、インターフェイスを含む。インターフェイスは、学習装置が出力する肌体質や肌状態を出力する。学習装置において、肌体質に関わるSNPについての情報も、肌体質や肌状態とともに出力されうる。出力部は、学習システムの結果を直接表示する液晶ディスプレイ等の表示装置、プリンタ等の出力手段であってもよいし、外部記憶装置への出力又はネットワークを介して出力するための通信部であってもよい。
【0055】
通信部は、情報処理装置をネットワークに接続するためのLANやポート等の通信インターフェイスに関し、入力部及び/又は出力部として機能しうる。
【0056】
記憶部11は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ装置、ハードディスクドライブ等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置などを有する。記憶部は、入力部から入力されたデータ及び指示、学習システムでの処理結果等の他、コンピュータの各種処理に用いられるプログラム、データベース、出力フォームなどを記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体や、インターネットを介してインストールされてもよい。コンピュータプログラムは、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部にインストールされる。
【0057】
処理部14は、入力部から入力されたSNPの情報と、環境要因の情報を、入力取得部を介して、学習システムに入力し、学習システムから出力された肌体質及び肌状態を、通信部を介して取得するように情報処理装置を制御する。処理部は、記憶部に記憶しているプログラムに従って各種の演算処理を実行する。演算処理は処理部に含まれるプロセッサによりおこなわれる。このプロセッサは、入力部、記憶部、通信部及び出力部を制御する機能モジュールを含み、各種の制御を行うことができる。これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェアなどで構成されてもよい。処理部により検出されたSNPの存在についての情報は、一旦、記憶部に記憶される。処理部は、SNPの情報の代わりに、対象の遺伝配列情報が入力された場合に、遺伝配列情報中におけるSNPの存在を検出するように作動することもできる。より具体的に、処理部は、記憶部に予め記憶されたSNPの配列情報と、入力部から入力された対象の配列情報とから、対象の配列情報中におけるSNPの存在を検出することができる。記憶部に記憶されたSNPの配列情報と、入力部から入力された対象の配列情報との比較、又は入力部から入力された対象の配列情報中での記憶部に記憶されたSNPの配列情報を検索することにより、SNPの存在を検出することができる。
【0058】
学習部13は、公知の統計解析技術や機械学習技術を用いて、環境情報及びSNPについての遺伝情報と、予め測定された肌状態実測データとの関係性を学習する。本発明では、Elastic Netを用いて変数選択し、一般化線形回帰(ロジスティック回帰、重回帰)を用いて学習モデル構築する。
【0059】
本発明のさらに別の態様では、以下の:rs1800629、rs2108622、rs1047781、rs12203592、rs16891982、rs3760776、rs9340799、rs12913832、rs17822931、rs964184、rs1801133、rs2228479、rs10515552、rs10741657、rs10882272、rs11057830、rs11234027、rs12272004、rs12377462、rs12785878、rs12931267、rs1540771、rs1667255、rs1993116、rs2060793、rs2227564、rs2282679、rs2298585、rs3829251、rs41281112、rs4654748、rs492602、rs602662、rs1030868、rs1126643、rs1256062、rs12934922、rs1485766、rs1501299、rs17577、rs1799724、rs1800012、rs1800414、rs2010963、rs2234693、rs2241145、rs2285053、rs2287074、rs2287076、rs2987983、rs3918242、rs4065、rs4252125、rs6152、rs7201、rs74653330、rs7501331、rs8110862、rs8326、rs833061、rs1050565、rs1799750、rs4880、rs1050450、rs6058017、rs1061622、rs2046571、rs2232228、rs3785079、rs2246416、rs1107946、rs11568737、rs41303970、rs12051272、rs182052、rs3865188、rs6810075、rs7799039、rs1137101からなる群から選ばれる、少なくとも1のSNPの存在に基づき、肌特性を決定する方法 及びコンピュータ、さらには当該コンピュータを制御するプログラム又は方法に関する。列挙されたSNPのなかでも、rs1047781、rs1050450、rs1137101、rs12203592、rs12934922、rs182052、rs2287076、rs3918242、rs41303970、rs4252125、rs602662、rs6152、及びrs6810075からなる群から選ばれる、少なくとも1を使用しうる。
【0060】
より具体的に、肌特性を決定する方法は、以下の:
上述の少なくとも1のSNPを検出する工程、
検出されたSNPに基づき、肌特性を決定する工程
を含む。
【0061】
より具体的に肌特性を決定するコンピュータは、
上述の少なくとも1のSNPに関する情報と、当該SNPと関連する肌特性の情報とを記憶させた記憶部、
利用者のDNA情報を入力する入力部、
入力されたDNA情報中において、記憶されたSNPの存在を検出する処理部、
検出されたSNPに関連する肌特性の情報を出力する出力部
を含む。
【0062】
より具体的に、肌特性を決定するコンピュータを制御するプログラム又は方法は、
上述の少なくとも1のSNPに関する情報と、当該SNPと関連する肌特性の情報とを記憶部に記憶させ、
入力部から、利用者のDNA情報を入力させ、
処理部に、入力されたDNA情報において記憶されたSNPの存在を検出させ、
出力部に、検出されたSNPに関連する肌特性の情報を出力させること
を含む。本発明のさらなる態様では、かかる制御プログラムを格納した記憶媒体にも関する。
【0063】
本発明に係るコンピュータは、肌特性決定装置であってもよい。本発明に係る評価システムやコンピュータは、サーバーと端末装置とを含むシステムを構成してもよい。サーバーと端末装置を構成する場合、入力部及び出力部は、それぞれインターフェイス部又は通信部を介して、ネットワークに接続される。この場合、ネットワークに接続された個別の端末装置から利用者の遺伝情報及び/又環境情報が入力され、サーバーにおいて処理され、同一または別の端末装置へと肌状態や肌特性の情報が出力される。利用者の遺伝情報は、ゲノムの情報やゲノムの一部の配列情報を提供してもよいし、特定されたSNPの情報のみを提供してもよい。ゲノムの全て又は一部の情報が提供された場合、サーバーの処理部において記憶部に記憶されたSNPに基づいて、SNPの存在を検出する。なお、システムにおいて、クラウドコンピューティングの形態でサービスを提供できるように、ネットワーク上に複数のサーバを分散して配置し、各サーバに協働させて、処理部や学習部での処理を分担させてもよい。これにより、評価システムは、より効率よく処理を実行することができる。
【0064】
ここで、肌特性 とは、肌形状特性、肌質、及び肌の色特性からなる群から選ばれうる。肌形状特性は、さらにシワ、キメ、及びハリからなる群から選ばれうる。肌質は、さらに皮脂量、水分量、及び皮膚バリア機能からなる群から選ばれうる。肌の色特性は、さらに肌の地色、紫外線曝露部の肌の色、シミ、明るさ及び黄色みからなる群から選ばれうる。本発明の肌特性の決定方法や、肌特性を決定するコンピュータにより決定された肌特性に基づき、化粧料、サプリメント、及び/又は美容法を提供することができる。
【0065】
単一のSNPを検出することで、肌特性を決定することもできるが、より優れた感度を達成する観点では、複数のSNPを検出して、肌特性を決定することが好ましい。複数のSNPの検出に基づき、肌特性を決定するためには、一例として、そのSNPが、当該肌特性にポジティブ又はネガティブの作用を与えるかを明らかにし、その存在に応じてポイントを付することで、SNPスコアを算出することにより行われる。SNPスコアと肌特性との関連を予め決定しておくことで、SNPスコアから、肌特性を決定することができる。
【0066】
肌特性としては、肌形状特性、肌質、及び肌の色特性からなる群から選ばれる少なくとも一つについて、決定することができる。SNPとこれらの肌特性との関係は、SNPのヘテロ又はホモでの存在が、これらの肌特性に対し、ネガティブに働く場合と、ポジティブに働く場合がある。ネガティブに働くSNPの数と、ポジティブに働くSNPの数とに基づきSNPスコアを算出することができる。一例として、ポジティブに働くSNPの数から、ネガティブに働くSNPの数を減じることで、SNPスコアを算出することができる。別の例として、その逆、すなわちネガティブに働くSNPの数から、ポジティブに働くSNPの数を減じることで、SNPスコアを算出してもよい。肌特性とSNPスコアとの関係を、予め決定しておくことで、被験者における肌特性を、算出されたSNPスコアに基づき決定することができる。
【0067】
本発明の肌特性決定方法により肌特性が決定された場合、このような肌特性についての情報に基づき、カウンセリングを行うことができる。したがって、本発明の一態様は、カウンセリング方法にも関する。こうしたカウンセリングにおいて、生活習慣や使用する化粧料やサプリメントの選択についてアドバイスを提供することができる。一例として、肌の色特性のうち、上腕のメラニン量は、そのヒトのもつ本来の肌の地色と関係があり、顔面のメラニン量は紫外線により影響された肌の色と関係がある。したがって、SNP解析により、上腕のメラニン量が低くなりやすい一方で、顔面のメラニン量が増えていた対象は、色白である一方で、紫外線の影響を受けやすいため、紫外線に対するケアをより必要とする対象であると決定できる。そのような対象には、紫外線を避ける生活習慣を提案するとともに、より強い紫外線保護剤のはいった化粧料を使用することを提案することができる。
【0068】
シワが生じやすいと判定された場合には、コラーゲン、エラスチンなどの膠原繊維や弾性線維の産生を増強可能であるか及び/又はマトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤など、弾性線維の分解を抑制可能である成分を含む化粧料やサプリメントを提供することができる。そのような成分として、細胞外マトリクス分解阻害剤、例えばマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、更に限定するとコラゲナーゼ阻害剤などが挙げられる。具体的な成分としてレチノール、シカクマメエキス、マンゴスチンエキスなどが挙げられる(化粧品の有用性 評価技術の進歩と将来展望、薬事日報社、(2001)第7節、しわ対応化粧品、162~177頁)。
【0069】
シミなどの肌の色特性に関するトラブルが生じやすいと判定された場合には、UVカット作用、メラニン生成抑制作用、及び/又は角質のターンオーバーの促進作用を有する成分を含む化粧料やサプリメントを提供することができる。そのような成分として、例えばUV保護剤、ビタミンC誘導体、ハイドロキノン、トラネキサム酸、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、アルブチン、コウジ酸、ルシノール、ビタミンC誘導体などが挙げられる(化粧品の有用性 評価技術の進歩と将来展望、薬事日報社、(2001)、第6節、美白化粧品、144~161頁)。また、適切な化粧下地、化粧料の提案や、メークアップ方法の提案をすることもできる。
【0070】
キメ、はり、皮脂、水分量、皮膚バリア機能などの皮膚機能が劣っていると判定された場合には、皮膚機能を高めることができる成分を含む化粧料やサプリメントを提供することができる。キメやはりの改善剤、皮脂低下剤、水分量増加促進剤、皮膚バリア機能改善剤などはそれぞれ知られている。そのような成分として、例えば保湿剤、トラネキサム酸、シカクマメエキスなどが挙げられる。
【0071】
本発明の別の態様では、肌特性の決定のためのキットにも関する。当該キットは、以下の:rs1800629、rs2108622、rs1047781、rs12203592、rs16891982、rs3760776、rs9340799、rs12913832、rs17822931、rs964184、rs1801133、rs2228479、rs10515552、rs10741657、rs10882272、rs11057830、rs11234027、rs12272004、rs12377462、rs12785878、rs12931267、rs1540771、rs1667255、rs1993116、rs2060793、rs2227564、rs2282679、rs2298585、rs3829251、rs41281112、rs4654748、rs492602、rs602662、rs1030868、rs1126643、rs1256062、rs12934922、rs1485766、rs1501299、rs17577、rs1799724、rs1800012、rs1800414、rs2010963、rs2234693、rs2241145、rs2285053、rs2287074、rs2287076、rs2987983、rs3918242、rs4065、rs4252125、rs6152、rs7201、rs74653330、rs7501331、rs8110862、rs8326、rs833061、rs1050565、rs1799750、rs4880、rs1050450、rs6058017、rs1061622、rs2046571、rs2232228、rs3785079、rs2246416、rs1107946、rs11568737、rs41303970、rs12051272、rs182052、rs3865188、rs6810075、rs7799039、rs1137101からなる群から選ばれる少なくとも1のSNP、またはその連鎖不平衡にあるSNPを検出するための核酸試薬を含む。かかるキットは、さらに核酸抽出試薬及び精製試薬を含んでもよい。また、検出されたSNPと肌状態との関係を説明する使用説明書を含んでもよい。列挙されたSNPのなかでも、rs1047781、rs1050450、rs1137101、rs12203592、rs12934922、rs182052、rs2287076、rs3918242、rs41303970、rs4252125、rs602662、rs6152、及びrs6810075からなる群から選ばれる、少なくとも1を使用しうる。
【0072】
このような核酸試薬として、一例としては、SNPを選択的に増幅可能なプライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP、そして場合により増幅緩衝液を含む。SNPを増幅可能なプライマーは、各SNPに対して、任意に設計することができる。
【0073】
核酸試薬として、核酸プローブを使用する場合、前記キットがさらに、プローブ検出試薬を含んでもよい。かかる核酸プローブは、未固定のプローブを用いてもよいし、DNAチップ上に固定されたものを用いて、複数のSNPを同時に検出することができる。このような核酸プローブは、特定のSNPを検出可能なように標識されていてもよい。
【0074】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0075】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例】
【0076】
実施例1:解析対象
20~79歳の女性ボランティアを対象とした。解析に先立ち、年齢、身長、体重、BMI(身長と体重から定法に従って算出)、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報についてのアンケート調査を行った。紫外線への暴露情報については、現在の日焼け意識を4段階(2段階の日焼け志向、2段階の非日焼け志向)に分類し、さらに、紫外線に対する対応を詳しく把握するため、生まれてから現在まで(1-14歳、15-19歳、20-24歳、25-29歳、及びそれ以降を10年単位で)の日焼け対策を3段階(紫外線対策せず積極的に、強い日差しには紫外線対策、弱い日差しも紫外線対策実施)で分類して調査が行われた。喫煙情報については、喫煙歴無し、過去に1日あたり20本以上の喫煙歴有、過去に1日あたり20本未満の喫煙歴有という3群に分けて調査が行われた。
【0077】
実施例2:解析対象における肌実測データの取得
肌特性値として、20~79歳の女性ボランティアを対象として、肌のシワ状態、シミ状態、肌色(頬メラニン量、地肌(上腕内側)メラニン量、明るさ、黄身)、肌状態(バリア機能、皮脂量、はり、きめ状態)を計測した。それぞれの測定は、シワ状態とシミ状態はVisia Evolution(Canfield Scientific社製)を用いて、撮影画像から専用の解析法にてシワ、シミのインデックス値を算出するとともに、シミは皮膚画像計測機器によるシミの数、シミ面積も算出し、解析に用いた。肌色は、分光測色計CM-700d(コニカミノルタ社)を用いて解析し、頬のメラニン量、明るさ(L*・測色値)、黄色(b*・測色値)を計測した。また、日光に暴露されない部位である上腕内側の肌色も測定し、メラニン量を算出した。肌状態は、専用の市販機器を用いて、角層水分量(Corneometer)、経皮水分蒸散量(バリア機能)(Vapometer)、皮脂量(Sebumeter)、はり(Cutometer)を測定し、きめ状態はオリジナル計測機器であるSkinvisiomを用い、専用の解析ソフトを用いて、きめの乱れぐらいを計測した。目じりのシワは、さらに、シリコンで皮膚表面のレプリカを作成し、3次元計測して、データをコンピュータに取り込み、独自の解析システムにより画像処理して、シワの深さ、体積、面積を算出した。
【0078】
実施例3:解析対象におけるSNPの決定
解析対象とするSNPは過去の皮膚科学知見から肌特性値への影響が期待される下記の79種を選択した:
rs1800629、rs2108622、rs1047781、rs12203592、rs16891982、rs3760776、rs9340799、rs12913832、rs17822931、rs964184、rs1801133、rs2228479、rs10515552、rs10741657、rs10882272、rs11057830、rs11234027、rs12272004、rs12377462、rs12785878、rs12931267、rs1540771、rs1667255、rs1993116、rs2060793、rs2227564、rs2282679、rs2298585、rs3829251、rs41281112、rs4654748、rs492602、rs602662、rs1030868、rs1126643、rs1256062、rs12934922、rs1485766、rs1501299、rs17577、rs1799724、rs1800012、rs1800414、rs2010963、rs2234693、rs2241145、rs2285053、rs2287074、rs2287076、rs2987983、rs3918242、rs4065、rs4252125、rs6152、rs7201、rs74653330、rs7501331、rs8110862、rs8326、rs833061、rs1050565、rs1799750、rs4880、rs1050450、rs6058017、rs1061622、rs2046571、rs2232228、rs3785079、rs2246416、rs1107946、rs11568737、rs41303970、rs12051272、rs182052、rs3865188、rs6810075、rs7799039、rs1137101。
選択基準は、表皮、基底膜、真皮、皮下脂肪組織、全身(ホルモン、ビタミン等)において機能する因子、酵素、細胞外マトリックスタンパク質等を選択し、その中からSNPをもつ遺伝子を候補として選択した。これらSNPは、皮膚の各種形質に影響している可能性が考えられる。
次に、上記79種の各SNPについて、劣性モデル、優性モデル、相加モデル、及び相乗モデルからなる4種の遺伝モデルを設定し、79種のSNPについて計316種の遺伝モデルを考慮したSNPを遺伝情報とした。この遺伝情報及び環境情報を説明変数として、Elastic Netを用いて変数選択を実施することで、各SNPについて最適な遺伝モデルを決定した。本発明に係る学習モデルの作成に先立ち、遺伝モデルの決定をすることで、よりSNPによる肌体質の決定の精度があがることが期待される。
【0079】
解析対象におけるSNPの決定においては、検体として唾液を用いた。唾液はOragene(登録商標) DNA OG-500(DNA Genotek Inc.)を用いて採取し、DNAを安定化させた。唾液よりDNAを精製し、DNAアレイを用い、SNPを決定し、予め選択した上記の79種のSNPの情報を取得した。
【0080】
実施例4:肌状態の測定値を目的変数とした、肌状態スコアを決定する学習モデルの作成
シワ、シミ、頬メラニン量、地肌(上腕内側)メラニン量、明るさ、黄身、バリア機能、皮脂量、はり、きめ状態、シワ面積、シワ体積、シワ最大深さからなる群から選ばれる肌状態の測定値をそれぞれ目的変数とし、SNPについての遺伝情報と、年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報についての環境要因についての情報とを説明変数とし、重回帰分析を行って、肌状態スコアを決定する学習モデルの作成を行った(
図2)。学習モデルの作成において、使用されるSNPの数nとした。n=1~4と5~10でそれぞれ作成した。この肌状態スコアを決定する学習モデルでは、各説明変数について定数項が決定されており、説明変数を入力することで目的変数である肌状態を出力することができる。この際に、説明変数のうちの1又は複数の変数(例えば、年齢、紫外線への暴露情報、喫煙情報など)を変化させることで、将来の肌状態の変化の予測が可能となる。
【0081】
実施例5:高値群と非高値群(又は低値群と非低値群)とに分類し、分類結果を目的変数とした肌体質を判定する学習モデルの作成
シワ、シミ、頬メラニン量、地肌(上腕内側)メラニン量、明るさ、黄身、バリア機能、皮脂量、はり、きめ状態からなる群から選ばれる肌状態測定値に基づいて、肌状態の高値群及び低値群をそれぞれの測定値の分布から年代ごとに決定した。具体的には、肌体質のなり易さ(例えば、対象となる肌体質がシミの場合は、シミのでき易さ)を判定する高値群モデルの場合、肌検査により得られた肌の測定値が各年代(年齢の5歳区切りの範囲)に含まれる全データの上位25%である場合を1、それ以外の場合(非高値群)を0と定義した(
図3)。また、肌体質のなり難さ(例えば、対象となる肌体質がシミの場合は、シミのでき難さ)を判定する低値群モデルの場合、肌検査によって得られた肌の測定値が各年代(年齢の5歳区切りの範囲)に含まれる全データの下位25%である場合を1、それ以外を0と定義した(
図3)。
【0082】
目的変数として、高値群判定モデルの場合、高値群を1、非高値群を0として、説明変数として79種のSNPについての情報、アンケート結果に基づく環境要因についての情報を入力し、ロジスティック回帰分析を行って、肌体質を判定する学習モデルを作成した。学習モデルの作成において、使用されるSNPの数nとした。n=1~4と5~10でそれぞれ作成した。肌体質を判定する学習モデルでは、各説明変数について定数項が決定されており、説明変数を入力することで目的変数である肌体質のなり易さ(肌状態の高値群に属する可能性)及び/又は肌体質のなり難さ(肌状態の低値群に属する可能性)を出力することができる。
【0083】
実施例6:学習モデルの検証
学習モデルの作成にあたり、解析対象のデータセットのうち、80%のデータセットを学習データセットとし、20%のデータセットを検証データセットとして分割した。こうして、学習データセット及び検証データセットからなる交差検証用データセットを100通り作成した。実施例4及び5の操作に基づき、肌状態スコアを決定する学習モデル及び肌体質を判定する学習モデルを作成しており、結果としてそれぞれ100通りの学習モデルが作成された。各肌状態に対する作成された各学習モデルにおいて使用されたSNPは、下記の通りであった。下記の表において、100通りの肌状態スコアを決定する学習モデルにおいて使用されたSNPを、「linear」の欄に列挙した。また、肌体質のなり易さ(肌状態の高値群に属する可能性)を決定する100通りの肌体質を判定する学習モデルに使用されたSNPを「upper」の欄に列挙した。さらに、肌体質のなり難さ(肌状態の低値群に属する可能性)を決定する100通りの肌体質を判定する学習モデルに使用されたSNPを「lower」の欄に列挙した。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
作成された肌体質を判定する学習モデルに対して、検証データの説明変数を入力することで出力される肌体質のなり易さ(又はなり難さ)と、検証データの肌状態の高値群(又は低値群)への分類に基づいて、ROC曲線を得て、ROC曲線下面積(AUC)及び感度(Sensitivity)を求めた(
図6A)。感度は、ROC曲線から求められる最適カットオフ値(ROC曲線の左上隅(特感度、特異度ともに1となる点)との距離が最小となる点の値など)やROC曲線に依らず設定した値(例えば、予測モデルから得られる肌体質スコアは確率値であるので、カットオフ値を0.5に設定するなど)を用いた。こうして作成された100通りの肌体質を決定する学習モデルにおいて、SNPの出現頻度を調べた(
図6C)。SNPの出現頻度と生化学的知見に基づき、学習モデルに使用されるSNPを選択し、作成された学習モデルのなかから、かかるSNPを利用しつつ、AUCの高い学習モデルを選択した(
図5B)。
【0098】
作成された肌状態スコアを決定する学習モデルに対して、検証データの説明変数を入力することで出力される肌状態スコアと、検証データの肌状態測定値から決定係数(R
2)を求めた(
図6B)。こうして作成された100通りの学習モデルにおいて、SNPの出現頻度を調べた(
図6C)。SNPの出現頻度と、生化学的知見に基づき、学習モデルに使用されるSNPを選択し、作成された学習モデルのなかから、かかるSNPを利用しつつ、R
2の高い学習モデルを選択した(
図5A)。
【0099】
以上の操作により、肌状態に関与するSNPを選択した。肌状態の測定値を目的変数とした場合に選ばれたSNPをLinearとして表示した。また、高値群への分類結果を目的変数とした場合に選ばれたSNPをupperとして表示した。低値群への分類結果を目的変数とした場合に選ばれたSNPをlowerとして表示した。使用されるSNP数を1~4とした場合、及び5~10とした場合に用いられる両方のSNPを列挙した。コードで表示したSkin01~16、及びSkin 21~23の肌状態は下記の表のとおりである。
【表39】
【0100】
実施例7:作成された肌状態スコアを決定する学習モデルを用いた、肌状態の評価法
実施例4において作成され、実施例6にて検証された肌状態スコアを決定する学習モデルを含む学習部を用いて、被験者の肌状態を評価した。具体的に、シミ1~3、肌色1~4、シワ1~2、きめ、弾力性、皮脂量、水分量1~2、バリア機能1~2、シワ面積、シワ体積、シワ最大深さからなる群から選択される肌状態のスコアを求めるために作成された学習部に、SNPに関する遺伝情報及び年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる環境要因についての情報を説明変数として入力した。学習部は、学習モデルの数式に対し、遺伝情報及び環境情報を説明変数として入力することで、現在の肌状態のスコアを出力した。さらに、学習モデルの数式に対して、年齢や行動要因を変化させることで、将来の肌状態の変化を予測した。行動要因として、日焼け対策及び喫煙行動を選択することで、年齢変化に対する肌状態のスコアを予測することが可能になった(
図9A及びB)。
【0101】
実施例8:作成された肌体質を判定する学習モデルを用いた、肌体質の判定
実施例5において作成され、実施例6にて検証された肌体質を判定する学習モデルを含む学習部を用いて、被験者の肌状態を評価した。具体的に、シミ1~3、肌色1~4、シワ1~2、きめ、弾力性、皮脂量、水分量1~2、バリア機能1~2、シワ面積、シワ体積、シワ最大深さからなる群から選択される肌状態のスコアを求めるために作成された学習部に、SNPに関する遺伝情報及び年齢、身長、体重、BMI、紫外線への暴露情報、及び喫煙情報からなる群から選ばれる環境要因についての情報を入力した。学習部は、学習モデルの数式に対し、遺伝情報及び環境情報に関する説明変数を入力することで目的変数である肌体質のなり易さ(肌状態の高値群に属する可能性)及び/又は肌体質のなり難さ(肌状態の低値群に属する可能性)を出力した。出力された肌体質のなり易さ(肌状態の高値群に属する可能性)及び/又は肌体質のなり難さ(肌状態の低値群に属する可能性)をそれぞれ、プロット図及び扇形グラフとして表示した(
図10A、
図10B)。
【0102】
符号の説明
10 情報処理装置
11 記憶部
12 入力部
13 学習部
14 処理部
15 出力部
20 評価システム
30 学習装置